説明

熱安定化されたバグハウスフィルターおよび媒体

フィルターバッグを被せた支持構造を有するバグフィルター。このフィルターバッグの生地は、少なくとも1つの基材層と、そこに対面する関係で結合された少なくとも1つのナノウェブとの複合体である。このナノウェブは、フィルターバッグが粒子を含む高温の気体流に最初に曝される面に配置されており、坪量が約0.1gsmを超えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば産業用ガス流のような流体流から固形物を濾過する際のフィルターおよびフィルターとして有用な複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
バグハウスとしても知られる集塵機は、一般に、産業排水または排ガスから粒子状物質を濾過する目的で使用されている。一旦濾過されて浄化された排ガスは大気中に放散することも再利用することもできる。このようなバグハウス集塵機の構造には、通常、キャビネットまたは類似の構造内に支持された1またはそれ以上の可撓性フィルターの列が含まれる。このようなフィルターのキャビネットおよび列においては、排水がバッグを効率的に通過し、それによって同伴粒子が除去されるように、フィルターバッグがキャビネット内に固定されて定位置に維持されているのが一般的である。キャビネット内に固定されたフィルターバッグは、典型的には、空気の上流側と下流側とを隔てるとともに、効率的な運転が維持されるようにフィルターバッグを支持する構造体に支持されている。
【0003】
より具体的には、いわゆる「バグハウスフィルター」においては、気体流が濾過媒体に誘導されて通過するに伴い、この流れから粒子状物質が除去される。典型的な用途においては、濾過媒体は全体的に袖に似た筒状形状を有しており、濾過された粒子がこの袖体の外側に堆積するように気体流が配向される。この種の用途において、濾過媒体は、パルス状の逆流に媒体を曝すことによって定期的に洗浄され、この作用により、濾過された粒子状物質は袖体の外側から払い落とされてバグハウスフィルター構造体の下部に回収される。米国特許第4,983,434号明細書には、バグハウスフィルターの構造および先行技術のフィルター積層体が例示されている。
【0004】
産業流体流中の粒子状不純物の分離は布フィルターを用いて達成される場合が多い。このような布系濾過媒体によって粒子が流体から除去される。フィルター上に粒子が堆積することによって布体前後の流れ抵抗または圧力損失が顕著になったら、フィルターを洗浄して粒子のケークを取り除かなければならない。
【0005】
工業濾過市場においては、フィルターバッグの種類を洗浄方法によって特徴付けるのが一般的である。最も一般的な洗浄技法の種類は、エア逆洗(reverse air)、シェーカー、およびパルスジェットである。エア逆洗およびシェーカー技法は低エネルギー洗浄技法とみなされている。
【0006】
エア逆洗技法は、フィルターバッグの内側に集積したダストを空気で穏やかに逆洗するものである。この逆洗によってバッグが潰れ、ダストケークが破壊されてバッグの底からホッパへ排出される。
【0007】
シェーカー機構も同様に、バッグの内側に集積した濾過ケークを洗浄する。バッグの上端が振動アームに取り付けられており、これがバッグ内に正弦波を生じさせることによってダストケークが払い落とされる。
【0008】
パルスジェット洗浄技法は、筒状フィルターの上端部から内側へ圧縮空気を短いパルス状に流入させるものである。パルス状の浄化空気が管状のベンチュリを通過するに伴い2次的な空気が吸い込まれ、結果として得られる空気の塊によってバッグが急激に膨張し、回収されたダストケークが払い落とされる。通常、バッグは即座に支持ケージの位置にパチンと戻り、すぐに粒子回収に使用できる状態に戻るであろう。
【0009】
この3種の洗浄技法の中で最も濾過媒体にかかる負荷が大きいのがパルスジェットである。しかしながら、近年、パルスジェット式バグハウスを選択する工業プロセス技師(industrial process engineer)がますます増えてきている。
【0010】
バグハウスは、高温(200℃まで)、熱的安定性および耐薬品性を有する濾過媒体を必要とするため、濾過媒体の選択の幅が狭く、パルスジェット用途に実用可能な候補は数種類しかない。一般的な高温用布体には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ガラス繊維、またはポリイミド(ポリイミドは260℃で連続使用しても安定である)が含まれる。高温の作用が酸化剤、酸、または塩基の作用と複合した場合、ガラス繊維およびポリイミド媒体は早期に破損する傾向がある。したがって、PTFEを使用することが好ましい。市販のPTFE布帛は支持体を有するPTFE繊維のニードルフェルトである。このようなフェルトは、通常、坪量が20〜26oz/yd2であり、マルチフィラメントを織成したスクリム(4〜6oz/yd2)で補強されている。フェルトは、長さが2〜6インチのステープル繊維(通常、6.7デニール/フィラメントまたは7.4dtex/フィラメント)から作製されている。この製品は、初期にダストケークがバッグを「最適化(season)」するという点で他の多くのフェルト化された媒体と同様に機能する。この最適化は、深層濾過(in−depth filtration)と称される場合もあり、媒体がより効率的な濾過を行うようになるが、使用中に媒体前後の圧力損失を増大させるという欠点を有している。最終的にバッグは目詰まりすなわち閉塞することとなり、バッグを洗浄するか交換しなければならなくなるであろう。一般に、この媒体の難点は、濾過効率の低さ、目詰まり、および高温下における寸法不安定性(収縮)にある。
【0011】
高温用に設計された他の種類の構造が米国特許第5,171,339号明細書に記載されている。フィルターバッグを被せたバッグリテーナーを備えるバグフィルターが開示されている。上記フィルターバッグの生地は、ポリ(m−フェニレンイソフタラミド)、ポリエステル、またはポリフェニレンスルフィド繊維のフェルトにポリ(p−フェニレンテレフタラミド)繊維の薄い不織布がニードリングされた積層体を含み、フィルターバッグが粒子を含んだ高温の気体流に最初に曝される面にポリ(p−フェニレンテレフタラミド)布帛が配置されている。ポリ(p−フェニレンテレフタラミド)布帛は、坪量が1〜2oz/yd2であってもよい。
【0012】
多孔質延伸PTFE繊維の織布に多孔質延伸PTFE膜(ePTFE)を積層した2層製品も使用されている。この製品は商業的な成功を収めておらず、その理由は幾つかあるが、主として、繊維織布の裏張りがパルスジェット支持ケージ上で長持ちしないことによる。織成された糸が互いに滑り合うことによって膜に過度の応力が生じ、その結果として膜に亀裂が生じる。
【0013】
不織布は、濾過媒体の製造に有利に用いられてきた。通常、この種の用途に用いられる不織布は、機械的ニードルパンチ(「ニードルフェルト化(needle−felting)」と称される場合もある)により交絡一体化されており、これは、繊維ウェブ構造体にバーブのついた針の挿抜を繰り返すことを伴うものである。この種の加工は繊維構造体を一体化して一体性をもたせるように作用するが、バーブのついた針が多くの構成繊維を剪断することは避けられず、繊維構造体に望ましくない穿孔が生じてしまい、これがフィルターの一体性を損なうように作用し、効率的な濾過を阻害する可能性がある。ニードルパンチはまた、結果として得られる布帛の強度を損なう可能性もあり、濾過用途に十分な強度を持たせるためにより坪量の高い好適な不織布が必要となる。
【0014】
Kirayogluに付与された米国特許第4,556,601号明細書には、高耐久性ガスフィルターとして使用してもよい水流交絡された不織布が開示されている。しかし、この濾材は、収縮工程に付すことができない。ここに記載された布帛を収縮工程に付すと、濾材の物理的性能に悪影響が及ぼされると考えられている。
【0015】
米国特許第6,740,142号明細書には、バグハウスフィルターに使用するためのナノ繊維が開示されている。可撓性のバッグは、坪量が0.005〜2.0グラム毎平方メートル(gsm)であり、厚みが0.1〜3μmの層で少なくとも一部が覆われている。この層は、直径が約0.01〜約0.5ミクロンの高分子微細繊維を含むが、この製造に用いられる方法が限られているため坪量に限界がある。’142号特許の層は坪量に限界があるため、濾過媒体の寿命が大幅に低下し、フィルターが洗浄サイクルに耐える能力が極度に低下する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の実施形態は、フィルターバッグを被せた支持構造を備えるバグフィルターであり、上記フィルターバッグの生地は、少なくとも1つの基材層と、それと対面する関係で結合された坪量が約0.1gsmを超える第1ナノウェブ層との複合体を含む。このナノウェブは、有効量の酸化防止剤が添加されたポリアミドから紡糸されたナノ繊維を含む。
【0017】
本発明の他の実施形態は、フィルターバッグを被せた支持構造を備えるバグフィルターであり、上記フィルターバッグの生地は、坪量が約0.1gsmを超えるナノウェブ層と対面する関係で結合された第1基材層と、このナノウェブ層に結合された第2基材層との複合体を備え、このナノウェブは、フィルターバッグの上流側に配置されている。このナノウェブは、有効量の酸化防止剤が添加されたポリアミドナノ繊維を含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、水流交絡、ニードルパンチ、または他の結合手段によってナノウェブ層を基材に結合させることにより形成される濾過媒体に関する。この構成により、米国特許第6,740,142号明細書の製品に見られる性能の限界を示すことのない、要求された強度特性を有する濾過媒体が得られる。本発明の濾過媒体はまた、費用対効果の高い使用に非常に望ましい均一性および長期間の使用にわたる安定性も示す。
【0019】
本明細書で使用される「ナノ繊維」という用語は、約1000nm未満、さらには約800nm未満、さらには約50nm〜500nmの間、そしてさらには約100〜400nmの間の数平均直径または断面を有する繊維を指す。本明細書で使用される直径という用語は、非円形形状の最大断面を含む。
【0020】
「不織布」という用語は、ランダムに分布した多数の繊維を含むウェブを意味する。通常、繊維は互いに結合させてもよく、あるいは結合させなくてもよい。繊維は、ステープル繊維または連続繊維であり得る。繊維は、単一の材料または多数の材料(異なる繊維の組合せとして、あるいはそれぞれが異なる材料で構成された類似の繊維の組合せとして)を含むことができる。「ナノウェブ」とは、ナノ繊維を含む不織ウェブである。
【0021】
「基材」は支持層であり、ナノウェブ層を結合、接着、または積層することができる任意の平面構造を有していてもよい。有利には、本発明に有用な基材層はスパンボンド不織層であるが、不織繊維のカードウェブ等から作製されていてもよい。
【0022】
酸化防止剤の「有効量」とは、フィルターに物理的または外観特性により判断される所望の水準の熱的安定性を付与する量を意味する。
【0023】
本発明の目的は、排ガスのダスト回収用バグフィルター装置に用いるための、熱的に安定な、効率の高いダスト回収用濾布を提供することと、この濾布を備えるバグフィルターを提供することとにある。このフィルターは、機械的に安定なフィルター構造において少なくとも1つの基材層と結合されたナノウェブ層を少なくとも1つ含む。これらの層を一緒にすることで、濾過媒体を通過する際の流量制御を最小限に抑えながら極めて優れた濾過効率および高い粒子捕捉効率が得られる。基材は、流体流の上流側、下流側、または内層に配してもよい。
【0024】
一実施形態においては、フィルターは、坪量が約0.1gsmを超えるかまたは約0.5gsmを超えるかまたは約5gsmを超えるかまたは約10gsmさえも超え、最大で約90gsmである、熱安定化されたナノウェブ層を含む濾過媒体を含む。濾過媒体は、ナノウェブが対面する関係で結合された基材をさらに含む。有利には、ナノウェブ層は、フィルターバッグの上流表面すなわち上流側、すなわち粒子を含む高温の気体流に最初に曝される表面に配置される。
【0025】
さらなる実施形態においては、フィルターは、熱安定化されたナノウェブが対面する関係で結合された第1基材層と、このナノウェブ層に結合された第2基材層との複合体を備え、このナノウェブは、フィルターバッグの上流側、すなわちフィルターバッグが粒子を含む高温の気体流に最初に曝される表面に配置されており、このナノウェブは坪量が約0.1gsmを超える。場合によっては、第2基材層がナノウェブおよび第1基材層の間に配置されていると有利であり、それ以外の場合は、ナノウェブ層が第1および第2基材層の間に配置されていることが望ましい。
【0026】
本発明のナノ繊維ウェブのエレクトロブローイングに有用なポリマーはポリアミド(PA)であり、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,12、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、半芳香族ポリアミド(耐熱性ポリアミド)、およびこれらの任意の組合せまたはブレンドからなる群から選択されるポリアミドである。本発明のブレンド組成物の調製に使用されるポリアミド(PA)は当該技術分野において周知である。代表的なポリアミドとしては、例えば、米国特許第4,410,661号明細書、米国特許第4,478,978号明細書、米国特許第4,554,320号明細書、および米国特許第4,174,358号明細書に記載されている、分子量が少なくとも5,000である半結晶性および非晶質ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0027】
本発明によれば、上述のポリマーのうちの2種の共重合より得られるポリアミド、上述のポリマーもしくはその構成モノマーの三元共重合により得られるポリアミド、例えば、アジピン酸、イソフタル酸、およびヘキサメチレンジアミンの共重合体、またはPA6,6およびPA6の混合物等のポリアミドのブレンド混合物も使用してもよい。好ましくは、ポリアミドは線状であり、融点または軟化点が200℃を超える。
【0028】
繊維の紡糸に使用されるポリアミドは、酸化防止剤等の熱安定剤を含む。本発明に使用するのに好適な酸化防止剤は、ポリアミドが溶液から紡糸される場合は、ポリアミドを含む紡糸溶媒に可溶な任意の材料である。この種の材料の例としては、ハロゲン化銅およびヒンダードフェノールが挙げられる。「ヒンダードフェノール」とは、分子構造にフェノール環を含み、そのヒドロキシル部分に対しシス位にある炭素原子の一方または両方がアルキル基を有する化合物を意味する。好ましくは、アルキル基は第3級ブチル部分であり、隣接する両方の炭素原子が第3級ブチル部分を有している。
【0029】
本発明に有用な酸化防止剤としては、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−(tert)−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)(Irganox 1098)等のフェノール性アミド;様々な変性ベンゼンアミン(例えば、Irganox 5057)等のアミン;エチレンビス(オキシエチレン)ビス−(3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)−プロピオネート(Irganox 245)(いずれもCiba Specialty Chemicals Corp.(Tarrytown,NY)より入手可能)等のフェノール性エステル;Polyad 201として(Ciba Specialty Chemicals Corp.(Tarrytown,NY)より)入手可能なヨウ化第一銅、ヨウ化カリウム、およびオクタデカン酸の亜鉛塩の混合物ならびにPolyad 1932−41として(Polyad Services Inc.(Earth City,MO)より)入手可能な酢酸第二銅、臭化カリウム、およびオクタデカン酸のカルシウム塩の混合物等の有機または無機塩;1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、N,N’’’−[1,2−エタン−ジイル−ビス[[[4,6−ビス−[ブチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]イミノ]−3,1−プロパンジイル]]ビス[N’,N’’−ジブチル−N’,N’’−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)(Chimassorb 119 FL)、1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−および2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンのポリマーと、N−ブチル−1−ブタンアミン、N−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物(1,6−hexanediamine,N,N’−bis(2,2,6,6−tetramethyl−4−piperidinyl)−polymer with 2,4,6−trichloro−1,3,5−triazine,reaction products with N−butyl−1−butanamine an N−butyl−2,2,6,6−tetramethyl−4−piperidinamine)(Chimassorb 2020)、ポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]−1,6−ヘキサンジイル[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]])(Chimassorb 944)(いずれもCiba Specialty Chemicals Corp.(Tarrytown,NY)より入手可能)等のヒンダードアミン;2,2,4トリメチル−1,2ジヒドロキシキノリン(Chemtura Corporation(Middlebury,CT,06749)の系列会社であるCrompton CorporationからのUltranox 254)等の高分子ヒンダードフェノール;ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Chemtura Corporation(Middlebury,CT,06749)の系列会社であるCrompton CorporationからのUltranox 626)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)ホスファイト(Ciba SpecialtyChemicals Corp.(Tarrytown,NY)からのIrgafos 168)等のヒンダード型ホスファイト(hindered phosphite);3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸(Ciba Specialty Chemicals Corp.(Tarrytown,NY)より入手可能なFiberstab PA6);ならびにこれらの組合せおよびブレンドが挙げられる。
【0030】
フィルターの性能を望ましく改善するためには、本発明の方法において安定剤として使用される酸化防止剤の濃度は、好ましくは、ポリアミドに対し0.01〜10重量%、特に好ましくは0.05〜5重量%である。酸化防止剤の濃度が、使用されるポリアミドに対し0.2〜2.5重量%である場合に、特に良好な結果が得られる。
【0031】
本発明のフィルターは、ダスト回収用パルス洗浄型および非パルス洗浄型フィルター、ガスタービンおよびエンジン吸気(air intake)または吸気(air induction)系、ガスタービン吸気(intake)または吸気(induction)系、高負荷エンジン吸気(intake)または吸気(induction)系、小型乗用車用エンジン吸気(intake)または吸気(induction)系、Zeeフィルター、自動車用キャビンエア、オフロード車用キャビンエア、ディスクドライブ用エア、写真複写機用トナー除去、HVAC用フィルター(商業用および住宅用濾過用途のいずれも)、ならびに掃除機用途を含む様々な濾過用途に使用することができる。
【0032】
本発明の基材層は、綿、麻、他の天然繊維等のセルロース繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、もしくはポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリオレフィン等の有機繊維、または他の従来の繊維もしくは高分子材料およびこれらの混合物等の様々な従来の繊維から形成してもよい。
【0033】
本発明のフィルターバッグの基材層は、織物であっても不織物であってもよい。織物バッグの場合は、典型的には、典型的な織物の構成になるように繊維を絡み合わせて繊維の網目を形成する。不織布は、典型的には、繊維を特定の向きに配向させずに緩く成形した後、この繊維を結合させて濾布にすることによって作製される。本発明の構成要素を構成する好ましい1つの形態には、基材としてフェルト媒体を用いることが含まれる。フェルトは圧縮された多孔質の不織布であり、不連続な天然または合成繊維を敷き詰め、当業者に知られているであろう一般的に利用可能なフェルト結合技法を用いて繊維を圧縮してフェルト層にすることにより作製される。
【0034】
布帛を生成するのに使用される繊維は、典型的には、極めて優れた復元力および空気が通過する作用に対する抵抗力および粒子捕捉を示すものである。この布帛は、化学物質粒子に対する安定性を有していてもよく、かつバグハウスを通過する空気およびフィルター表面に運ばれる粒子の温度の両方の様々な温度に対する安定性を有していてもよい。
【0035】
本発明のフィルター構造は、典型的には、基材とナノウェブ層とを合わせた複合体を好適な支持構造(バッグくびれ部分のリテーナー等)で支持することによって、有用な自由端形状(open shape)に維持されているが、支持構造をバッグの内側に配置してもよい。このような支持体は、線状部材を巻線形態またはケージ様構造に形成したものであってもよい。別法として、支持体は、バッグの形状に似た穿孔を有するセラミックまたは金属構造体を備えていてもよい。支持構造の表面積のかなりの割合がフィルター基材と接触している場合、支持構造は、この構造を通過する空気に対し透過性であるべきであり、フィルターバッグ前後で圧力損失を漸増させるべきではない。この種の支持構造は、フィルターバッグが効率的な濾過形状または確証を維持するように、フィルターバッグの内側全体と接触するように形成してもよい。
【0036】
ナノウェブ層を基材と結合させることにより本複合体構造を製造する方法は特に限定されるものではない。ナノウェブ層のナノ繊維を基材層に物理的に絡ませてもよいし、あるいは、ナノウェブ層の繊維と基材の繊維とを、例えば、加熱、接着剤、または超音波積層または結合によって互いに融合させることによりこれらを結合させてもよい。
【0037】
基材層をナノウェブ層またはナノウェブを基材と合わせた層に結合させる熱的方法としては、カレンダー加工が挙げられる。「カレンダー加工」は、2つのロール間のニップ内にウェブを通過させる方法である。ロールは互いに接触していてもよいし、ロール表面の間に固定または可変の間隙が存在してもよい。カレンダー加工工程において、ニップは、ソフトロールとハードロールの間に形成されるのが有利である。「ソフトロール」は、カレンダー内で2つのロールを一緒に保持するために印加される圧力下で変形するロールである。「ハードロール」は、この方法の圧力下で本方法または製品に対して著しい影響を有する変形が生じない表面を有するロールである。「無地(unpatterned)」ロールは、これらを製造するために使用される方法の能力内で滑らかな表面を有するロールである。ポイントボンディングロールとは違って、ウェブがニップを通過する際にウェブ上に意図的にパターンを生じるようなポイントまたはパターンは存在しない。本発明に用いられるカレンダー加工工程におけるハードロールは、パターン形成されていても無地であってもよい。
【0038】
接着剤積層は、低温、例えば室温下で、溶剤系接着剤の存在下に、カレンダー加工を併用するかまたは他の手段により積層体を加圧することによって実施してもよい。別法として、高温でホットメルト接着剤を使用してもよい。当業者であれば、本発明の方法に使用することができる好適な接着剤を容易に認識するであろう。
【0039】
上のような物理的結合によって繊維を絡合させる方法には、例えば、ニードルパンチ加工およびウォータージェット加工(他に、水流交絡またはスパンレースとしても知られる)がある。ニードルパンチング(またはニードリング)は、米国特許第3,431,611号明細書および米国特許第4,955,116号明細書に開示されているように、独立した繊維の小さな束を、カーディングされた繊維のバットに対し、凝集性のある布体構造が形成されるような多数の穿孔数で押し込むことから基本的になる。
【0040】
本発明のフィルターの製造方法においては、不織布の高密度層(基材)側からニードルパンチ加工(またはウォータージェット加工)を行うことが望ましい。ニードルパンチ加工を低密度層(ナノウェブ)側から行った場合と比較すると、高密度層側からのニードルパンチ加工は、絡合に付随する細孔の破壊または変形だけでなく、望ましくない細孔サイズの拡大を抑制することができ、それによって、より細かい粒子に対する初期の浄化効率の低下が抑えられる。細孔径の望ましくない拡大を抑制するとともに十分な絡合操作を実施するためには、単位面積当たりのニードルの数(穿孔数)を約40〜約100穿孔/cm2の範囲に設定することが好ましい。さらに、穿孔は、低密度層の表面積の約25%を超えるべきではない。
【0041】
紡糸されたままの状態のナノウェブは、主としてまたは排他的にナノ繊維を含み、これは、有利には、電界紡糸(標準的な電界紡糸やエレクトロブローイング等)によって製造されるか、あるいは、特定の状況下においては、メルトブローイングまたは他のこの種の好適な方法によって製造される。標準的な電界紡糸は、米国特許第4,127,706号明細書において説明される技術であり、ナノ繊維および不織マットを作るために、溶液中のポリマーに高電圧が印加される。しかしながら、電界紡糸法は総処理量が低すぎるため、より坪量の高いナノウェブの形成を商業的に実現することはできない。
【0042】
「エレクトロブローイング」法は、国際公開第03/080905号パンフレットに開示されている。ポリマーおよび溶媒を含む高分子溶液の流れは貯蔵タンクから紡糸口金内の一連の紡糸ノズルに供給され、紡糸ノズルには高電圧が印加されて、紡糸ノズルから高分子溶液が排出される。その間、任意で加熱された圧縮空気が、紡糸ノズルの側面または周囲に配設された空気ノズルから放出される。空気は、新たに放出される高分子溶液を包囲し送り出して繊維ウェブの形成を促進する噴出ガス流としてほぼ下方に向けられ、繊維ウェブは真空チャンバの上側の接地した多孔質捕集ベルト上に捕集される。エレクトロブローイング法によって、比較的短い時間の間に、約1gsmを超える、さらには約40gsmまたはそれ以上もの坪量で商業的なサイズおよび量のナノウェブを形成することが可能になる。
【0043】
紡糸されたナノ繊維のウェブが基材上で捕集されて結合されるように、基材をコレクタ上に配置してもよい。基材の例としては、様々な不織布(メルトブローン不織布、ニードルパンチまたはスパンレース不織布等)、織布、編布、紙等を挙げることができ、基材上にナノ繊維層を追加することが可能な限り、制限なく使用することができる。不織布は、スパンボンド繊維、乾式繊維、湿式繊維、セルロース繊維、メルトブローン繊維、ガラス繊維、またはこれらのブレンドを含んでいてもよい。別法として、ナノウェブ層をフェルト基材上に直接堆積させてもよい。
【0044】
有利には、繊維ポリマーのTgを低下させることを目的として、当該技術分野において周知の可塑剤を上述した様々なポリマーに添加してもよい。好適な可塑剤は、電界紡糸またはエレクトロブローイングされるポリマーだけでなく、ナノウェブを導入することとなる具体的な最終用途にも依存するであろう。例えば、ナイロンポリマーの可塑化には、水を用いてもよいし、電界紡糸またはエレクトロブローイング工程から残留した溶媒さえも用いてもよい。ポリマーのTgを低下させるのに有用な可能性がある当該技術分野において周知の他の可塑剤としては、これらに限定されるものではないが、脂肪族グリコール、芳香族スルホンアミド(sulphanomides)、フタル酸エステル(これらに限定されるものではないが、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジドデカニル、およびフタル酸ジフェニルからなる群から選択されるもの等)等が挙げられる。本発明に使用することができる他のポリマー/可塑剤の組合せが、参照によって本明細書に援用される、The Handbook of Plasticizers、George Wypych編、2004年、Chemtec Publishingに開示されている。
【実施例】
【0045】
試験方法
以下の非限定的な実施例において報告する様々な特性および性状は以下の試験方法を用いて測定したものである。ASTMは、米国材料試験協会(American Society of Testing Materials)を指す。ISOは、国際標準化機構(International Standards Organization)を指す。TAPPIは、紙パルプ技術協会(Technical Association of Pulp and Paper Industry)を指す。
【0046】
濾過効率、圧力損失、およびサイクル時間をVDI 3926に従い測定した。この本文を参照によって本明細書に援用する。
【0047】
VDI 3926に従い、濾過効率(ダスト漏れとも称される)をマイクログラム毎立方メートル、圧力損失をパスカル(Pa)、サイクル時間を秒(s)で測定する。濾過効率は、フィルターを通過するダストの量を表す。圧力損失は、フィルターの2つの面間の差圧である。サイクル時間は、ダストケークを放出する2回のパルス間の間隔である。特定の圧力損失が得られると(VDI 3926においては、最大圧力損失は1000Paに設定されている)、逆流パルスが自動的に生成される。VDI 3926の手順は、最初に30サイクル、次いでフィルターのエージングを模擬した10,000サイクル、最後にさらなる30サイクルを行うことに基づいている。濾過効率、圧力損失、およびサイクル時間は最後の30サイクルの終了時に測定される。
【0048】
通気性は、ISO 9237に従って測定し、l/dm2/分単位で報告する。坪量は、ISO 3801に従い測定した。
ウェブの坪量は、ASTM D−3776(参照によって本明細書に援用する)に従って測定し、g/m2で報告した。
【0049】
繊維径は以下のように測定した。走査型電子顕微鏡(SEM)の5000倍の画像を各ナノ繊維層試料について10回ずつ撮影した。この写真からはっきりと識別できる11本のナノ繊維について直径を測定して記録した。欠陥(すなわち、ナノ繊維の塊、ポリマー滴、ナノ繊維の交差)は含めないものとした。各試料の繊維径の平均値(算術平均)を求めた。
【0050】
引張強さは、ASTM D5035−95「繊維布の破断力および伸びに関する標準試験法(ストリップ法)(Standard Test Method for Breaking Force and Elongation of Textile Fabrics(Strip Method))」に従って測定し、kg/cm2で報告した。
【0051】
実施例1〜5
ナノウェブの熱安定性を試験するために、国際公開第03/080905号パンフレットの方法を用いて、ポリアミドPA6/6(Zytel 3218、DuPont(Wilmington,DE))ナノ繊維から紡糸された坪量が15グラム毎平方メートル(gsm)のナノウェブを製造した。繊維径の平均値は約400nmであった。見本試料(hand sample)(20cm×25cm)を140℃の強制循環式オーブン内に吊り下げた。試料を毎日取り出して色および収縮を調査し、引張強さおよび伸びを試験した。試料および使用した酸化防止剤の量ならびに140℃で21日間エージングした後の色を表1にまとめた。使用した酸化防止剤はN,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド(Irganox 1098、(Ciba(Tarrytown,NY))または臭化銅(PolyAD 1932(供給業者))である。
【0052】
収縮測定は、試料の片側の長さを測定し、初期試料長の百分率で表すことによって実施した。
【0053】
【表1】

【0054】
酸化防止剤を含む試料はエージングによる変色に対する耐性が大幅に改善され、これは、酸化防止剤を含まない対照試料(試料1)と比較して熱安定性が大幅に改善されたことを示していると考えられる。
【0055】
表2に、21日間エージングした後の引張強さの保持率(初期引張強さの百分率として)および絶対伸び(absolute elongation)を示す。エージング前の試料の初期の破断伸びの平均値は23%であった。
【0056】
【表2】

【0057】
酸化防止剤を含む試料は、高温でエージングした後の引張強さの保持率が、対照試料1と比較して著しく改善された。
【0058】
積層体の熱安定性を試験するため、以下の実施例6〜10に記載するようにナノウェブ試料とフェルトとの積層体も作製した。
【0059】
実施例6〜10
坪量が約10gsmの5種類の異なるナノウェブ(それぞれ、Irganox 1098を0.75%、1%、2%含むもの、PolyAd 1932を0.2%含むもの、および酸化防止剤を含まないもの)を製造した。平均径は約400nmであった。このナノウェブを、坪量が14oz/yd2のポリエステルフェルトの試料に、以下に示す接着積層によって結合させた。
【0060】
ポリウレタン接着剤の不連続な層をグラビアロールを用いてフェルトの一方の表面に塗布した。フェルトの接着剤を塗布した表面がナノウェブと接するようにして、フェルトおよびナノウェブを二本ロールのニップ間に供給した。ロールの温度を144℃とし、ニップ圧を40ポンド毎平方インチ(psi)とし、ラインスピードを3メートル毎分とした。複合体を巻き取って試験に用いた。酸化防止剤を含まない対照試料を市販の機械で積層した。ニップロールの温度を290°Fとし、ラインスピードを3メートル毎分とした。
【0061】
すべての試料および対照を150℃のオーブンで70時間試験し、最後に色を記録した。
【0062】
表3に、熱エージング前の通気性、坪量、通気性、および圧力損失を示す。表4に、エージング前の濾過効率およびサイクル時間のデータならびにエージング後のナノウェブの色を示す。VDI 3926に従って測定された濾過効率、圧力損失、およびサイクル時間を以下の表5に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
Irganoxを含むウェブの積層工程は許容できるものであり、その製品は、他の特性を劣化させることなく高温耐久性が改善されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルターバッグを被せた支持構造を備えるバグフィルターであって、前記フィルターバッグの生地が、少なくとも1つの基材層と、それと対面する関係で結合された坪量が約0.1gsmを超える第1ナノウェブ層との複合体を含み、前記ナノウェブが、有効量の酸化防止剤が添加されたポリアミドナノ繊維を含むバグフィルター。
【請求項2】
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール、ハロゲン化銅、フェノール性アミド、フェノール性エステル、銅の有機塩、ヨウ化カリウムおよびステアラートの混合物、酢酸銅および臭化カリウムの混合物、ヒンダードアミン、高分子ヒンダードフェノール、ヒンダード型ホスファイト、ならびにこれらの組合せまたはブレンドからなる群から選択される請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項3】
前記酸化防止剤がヒンダードフェノールである請求項2に記載のバグフィルター。
【請求項4】
前記ヒンダードフェノールがN,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)である請求項3に記載のバグフィルター。
【請求項5】
前記ナノウェブが、前記フィルターバッグの上流側に配置されている請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項6】
前記フィルターをVDI 3926に付して30サイクルを経た後も、前記基材層およびナノウェブ層が結合したままである請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項7】
前記基材層の前記第1ナノウェブ層が結合された面と反対側の面に結合された第2ナノウェブ層をさらに含む請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項8】
前記第2ナノウェブ層に結合され、前記フィルターバッグの上流側に位置する第2基材層をさらに含む請求項7に記載のバグフィルター。
【請求項9】
少なくとも1つのナノウェブ層および少なくとも1つの基材層が、超音波接着、加熱結合、接着剤結合、ニードルパンチ、および水流交絡からなる群から選択される方法によって結合されている請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項10】
前記基材層および前記ナノウェブ層が約40〜100穿孔/cm2でニードルパンチされており、前記ナノウェブ層の25%以下が穿孔される請求項7に記載のバグフィルター。
【請求項11】
各基材層が、ポリエステル繊維、炭素繊維、ポリイミド繊維、ガラス繊維、およびこれらの混合物から選択される繊維を独立して含む請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項12】
フィルターバッグを被せた支持構造を備えるバグフィルターであって、前記フィルターバッグの生地が、坪量が約0.1gsmを超えるナノウェブ層と対面する関係で結合された第1基材層と、前記ナノウェブ層に結合された第2基材層との複合体を含み、前記ナノウェブが、前記フィルターバッグの上流側に位置し、前記ナノウェブが、有効量の酸化防止剤が添加されたポリアミドナノ繊維を含むバグフィルター。
【請求項13】
前記第2基材層が前記ナノウェブと前記第1基材層との間に位置する請求項12に記載のバグフィルター。
【請求項14】
前記ナノウェブ層が前記第1基材層と前記第2基材層との間に位置する請求項12に記載のバグフィルター。
【請求項15】
前記フィルターをVDI 3926に付して30サイクルを経た後も、前記基材層およびナノウェブ層が結合したままである請求項12に記載のバグフィルター。

【公表番号】特表2011−502767(P2011−502767A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533273(P2010−533273)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082770
【国際公開番号】WO2009/062017
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】