説明

熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン

少なくとも1種のリン系オキソ酸部分を含む少なくとも1種の添加剤を含む熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンが提供される。この添加剤は、少なくとも1種のリン系オキソ酸部分と少なくとも1種のイオウ系オキソ酸部分を含むこともできる。これらの熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンの製造方法及びこれらの熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンを含む製品も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のリン系オキソ酸部分(phosphorous−based oxo acid moiety)を含む少なくとも1種の添加剤を含む熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンに関する。より詳細には、本発明は、少なくとも1種のリン系オキソ酸部分及び少なくとも1種のイオウ系オキソ酸部分(sulfur−based oxo acid moiety)を含む少なくとも1種の添加剤を含む熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンに関する。
【0002】
本発明はまた、熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンの製造方法及び熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンを含む製品に関する。
【背景技術】
【0003】
種々の型の官能化ポリオレフィンの水性エマルジョンが、1950年代後半から商業的に使用されている。低分子量ポリオレフィンを乳化させるための種々の方法が、特許文献1、非特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0004】
官能化ポリオレフィンのエマルジョンには種々の用途がある。例えば、官能化ポリオレフィンのエマルジョンは、フロアポリッシュ及びカーポリッシュ、一時金属コーティング、コルゲーテッド・コーティング(corrugated coating)及び紙用コーティング、繊維用柔軟剤及び潤沢剤、ガラス繊維サイズ剤、ペーパー・カレンダリング(paper calendaring)潤沢剤及び柑橘類コーティングに使用される。しかし、官能化ポリオレフィンエマルジョンを乾燥させると、乾燥エマルジョンは、暗色を示す場合が多い(例えば、G8より大きいガードナーカラーを有する)。これは、官能化ポリオレフィンエマルジョンの種々の用途に悪影響をもたらす可能性がある。
【0005】
例えば、高分子量マレイン化ポリプロピレンのエマルジョンは、ポリプロピレン複合材料中に使用されるガラス繊維のサイズ処理に使用でき、この場合には、マレイン化ポリプロピレンは繊維を結合させる結合剤(バインダー)として働き、また、その後にポリプロピレンマトリックスへのガラス繊維のカップリング改善する働きをする。約30,000〜約90,000の範囲の重量平均分子量を有する高分子量マレイン化ポリプロピレンのエマルジョンは、より低分子量のマレイン化ポリプロピレンのエマルジョンでサイズ処理された対応するガラス繊維に比べて、優れた機械的性質を示すことができる。しかし、この型のサイズ剤配合物の主な欠点は、加熱後の色相安定性がよくないことである。乾燥された高分子量マレイン化ポリプロピレンエマルジョンは、空気中で180℃におけるわずか30分又はそれ以下の時間の状態調節後に、淡色フィルムから、ガードナーカラーが約8〜約12の非常に濃い色の材料に変化した。従って、この濃色のため、高分子量マレイン化ポリプロピレンエマルジョンは典型的には黒色成分中に使用される。
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,912,673号(Force)
【特許文献2】米国特許第3,655,353号(Nalleyら)
【非特許文献1】von Bramerら,”Polish Emulsion by Pressure Method”、Soap and Chemical Specialties,December,1966
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、低色度(low color)を有する官能化ポリオレフィンエマルジョンが当業界で必要とされている。
【0008】
本発明の目的は、熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンを提供することにある。
【0009】
本発明の目的は、また、熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンを製造するための方法を提供することにある。
【0010】
本発明の更なる目的は、熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンを含むサイズ剤組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の更に別の目的は、熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンを含む製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施態様によれば、少なくとも1種のリン系オキソ酸部分を含む少なくとも1種の添加剤を含む熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンが提供される。
【0013】
本発明の別の実施態様によれば、熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンを含む組成物が提供され、前記官能化ポリオレフィンエマルジョンは熱老化時に約6又はそれ以下のガードナーカラーを有する。
【0014】
本発明の別の実施態様によれば、少なくとも1種の官能化ポリオレフィン、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、少なくとも1種の中和用塩基、少なくとも1種のカルボン酸共界面活性剤、少なくとも1種のリン系オキソ酸部分である少なくとも1種の添加剤、及び水を含む熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンが提供される。別の実施態様において、添加剤は、少なくとも1種のリン系オキソ酸部分及び少なくとも1種のイオウ系オキソ酸部分を含む。
【0015】
本発明の別の実施態様によれば、熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンを製造するための方法が提供される。この方法は、少なくとも1種の官能化ポリオレフィン、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、少なくとも1種の中和用塩基、少なくとも1種のカルボン酸共界面活性剤、少なくとも1種のリン系オキソ酸部分である少なくとも1種のリン系添加剤、及び水を接触させることを含む。別の実施態様において、添加剤は少なくとも1種のリン系オキソ酸部分及び少なくとも1種のイオウ系オキソ酸部分を含む。
【0016】
本発明の実施態様は、熱老化後の色(熱老化カラー)が6又はそれ以下のガードナーカラーによって示されるような許容され得るものである官能化ポリオレフィンエマルジョンを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書の開示において使用する用語は、以下のように定義する。用語「熱安定性の」又は「熱安定性」は官能化ポリオレフィンエマルジョンの熱老化カラーが、本明細書の開示の実施例部分に記載した方法によって測定した場合に、6又はそれ以下であることを意味する。
【0018】
用語「熱老化カラー」又は「熱老化後の色」は、本明細書の実施例部分において概説された熱老化カラー法に従って熱老化後に測定したガードナーカラーを意味する。
【0019】
用語「許容され得る色」又は「許容され得る熱老化カラー」は、本明細書の開示の実施例部分において熱老化カラー法に従って測定したガードナーカラーが6又はそれ以下である官能化ポリオレフィンエマルジョンと定義する。
【0020】
用語「許容され得るエマルジョン」は、5%超の透過率を有するエマルジョンと定義する。透過率は、本明細書の開示の実施例部分の方法によって測定する。
【0021】
用語「安定なエマルジョン」は、成分が分離せず且つ粒子が凝集塊を生じないエマルジョンと定義する。
【0022】
本発明の一実施態様において、少なくとも1種のリン系オキソ酸部分を含む少なくとも1種の添加剤を含む官能化ポリオレフィンエマルジョンが提供される。
【0023】
官能化ポリオレフィンエマルジョンは当業界で知られた任意のものであることができる。一般に、官能化ポリオレフィンエマルジョンは、少なくとも1種の官能化ポリオレフィン、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、少なくとも1種の中和用塩基、少なくとも1種のカルボン酸共界面活性剤及び水を含む。
【0024】
官能化ポリオレフィンは、当業界で知られた任意の官能化ポリオレフィンであることができる。本明細書中で使用する「ポリオレフィンの官能化(functionalization of polyolefins)」は、官能化剤によってポリオレフィンの酸基を付加することを意味する。官能化は、当業界で知られた任意の方法によって達成できる。例えば、熱酸化及びグラフト化が、使用できる方法である。
【0025】
本発明の一実施態様において、官能化するポリオレフィンは、炭素数2〜約8、好ましくは2〜約6の少なくとも1種のオレフィンモノマーを含む。このようなポリオレフィンの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリヘキセンが挙げられるが、これらに限定するものではない。官能化するポリオレフィンは、ホモポリマー、コポリマー又はターポリマーであることができる。好ましいポリオレフィンは低密度、中密度及び高密度ポリエチレンのホモポリマー及びコポリマー並びに結晶性及び非結晶質ポリプロピレンのホモポリマー及びコポリマーである。より好ましいのは、プロピレンの結晶性ホモポリマー又はコポリマーである。他の適当なポリオレフィンとしては、熱可塑性エラストマー、例えばエチレン−プロピレンゴム(EPR)及びエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0026】
官能化剤は当業界で知られた任意のものであることができる。一実施態様において、官能化剤は、ポリオレフィンを官能化することができる1個若しくはそれ以上のカルボン酸又は酸無水物基を含む任意の不飽和モノマーであることができる。適当な官能化剤の例はカルボン酸、例えばアクリル酸及びメタクリル酸、並びに酸無水物、例えば無水マレイン酸である。更なる官能化剤としては、不飽和モノカルボン酸、ポリカルボン酸及び環状酸無水物が挙げられるが、これらに限定するものではない。具体的には、これらに含まれるのは、マレイン酸、フルマル酸(flumaric acid)、ハイミック酸(himic acid)、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸のような酸並びに無水マレイン酸及びハイミック酸無水物のような酸無水物である。本発明の一実施態様において、ポリプロピレンの官能化には無水マレイン酸の使用が好ましい。本発明には、官能化剤の混合物を使用できる。
【0027】
本発明の一実施態様において、官能化ポリオレフィンは、官能化ポリオレフィンの重量に基づき、グラフト化官能化剤約0.5〜約2.5重量%、好ましくは約1.2〜約2重量%のグラフト化レベルを有する。本発明の別の実施態様において、官能化ポリオレフィンがマレイン化ポリプロピレンである場合には、グラフト化レベルは、マレイン化ポリプロピレンの重量に基づき、グラフト化無水マレイン酸約0.5〜約2.5重量%、好ましくは約1〜約2.5重量%、最も好ましくは1.3〜2.0重量%の範囲であることができる。グラフトレベル(官能化ポリオレフィンの重量に基づく、グラフト化官能化剤の重量%)は、酸価から計算する。グラフトレベルが低いほど、淡色を有するマレイン化ポリプロピレンを生じる。更にまた、グラフトレベルが低いほど、ポリマー分解を最小化することができる。
【0028】
本発明の一実施態様において、高品質の官能化ポリオレフィンエマルジョンを生成するためには、官能化ポリオレフィンのグラフト分布は均一性が良好でなければならない。例えば、無水マレイン酸が反応して高グラフト化オリゴマー種を形成し且つ相当量のポリオレフィンが未改質のままであるマレイン化ポリプロピレンに関しては、酸価によって計算されたグラフトレベルが所望の範囲の無水マレイン酸含量を示すことができたとしても、官能化ポリオレフィンは乳化が困難か又は不可能である可能性がある。
【0029】
グラフト化レベルに関係するのは、官能化ポリオレフィンの酸価である。酸価は、存在する官能基1ミリモル当たり、水酸化カリウム1ミリモルを消費するように試験が設計されている場合に、官能化ポリオレフィン1g中に存在するカルボン酸官能基を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。
【0030】
グラフト化レベルは、官能化ポリオレフィンの酸価から計算する。官能化ポリオレフィンの酸価は、存在する官能基1ミリモル当たり、水酸化カリウム1ミリモルを消費するように試験が設計されている場合に、官能化ポリオレフィン1g中に存在する官能基を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。例えば、グラフト化無水マレイン酸基を滴定する場合には、無水マレイン酸が二酸を形成できるとしても、各マレイン酸官能基は水酸化カリウムを1個しか消費しないように、水酸化カルシウムのメタノール溶液を用いる。酸価は、還流キシレン中に溶解された官能化ポリオレフィンの秤量サンプルを、指示薬としてフェノールフタレインを用いて、水酸化カリウムのメタノール溶液で滴定することによって得られる。水を含まない系で測定される酸価は、水性系で測定される鹸化価とは区別される。官能化ポリオレフィンの滴定に水性系を用いると、官能化剤は加水分解され、中和には2倍の量の水酸化カリウムが必要である。従って、鹸化価は、酸価の2倍である。
【0031】
本発明の一実施態様において、官能化ポリオレフィンの酸価は約4〜約14、好ましくは6〜12である。マレイン化ポリプロピレンの酸価は、約4〜約14、好ましくは7〜12の範囲であることができる。
【0032】
ポリマーの強度は、分子量と正の相関があり;従って、比較的高分子量の官能化ポリオレフィンは一般に、比較的低分子量の官能化ポリオレフィンよりも多くの望ましい物理的性質を有する。本発明の一実施態様において、官能化ポリオレフィンの重量平均分子量は、前述の用途のほとんどについて、約30,000〜約90,000、好ましくは40,000〜70,000の範囲であることができる。マレイン化ポリプロピレンの重量平均分子量は、約30,000〜約90,000、好ましくは40,000〜70,000の範囲であることができる。
【0033】
官能化ポリオレフィンの190℃における溶融粘度は、官能化ポリオレフィンエマルジョンの用途において有用な性質を得るのに充分なものである。190℃における溶融粘度は、Brookfield Instrument Company製のThermosel粘度計を用いて測定した。本発明の一実施態様において、190℃における溶融粘度は10,000センチポアズより大きく、好ましくは約20,000〜約150,000センチポアズ、最も好ましくは40,000〜100,000センチポアズの範囲である。マレイン化ポリプロピレンの溶融粘度は、約20,000〜約150,000、好ましくは40,000〜100,000の範囲であることができる。
【0034】
示差走査熱量測定法によって測定される官能化ポリオレフィンのピーク融点は、官能化ポリオレフィンエマルジョンの個々の用途において有用な性質を得るのに充分なものである。本発明の一実施態様において、官能化ポリオレフィンのピーク融点は130℃より大きく、好ましくは150℃より大きい。マレイン化ポリプロピレンのピーク融点は、約130〜約165℃、好ましくは155〜165℃であることができる。
【0035】
官能化ポリオレフィンの量は、官能化ポリオレフィンエマルジョンの個々の用途において有用な性質を得るのに充分なものである。本発明の一実施態様において、官能化ポリオレフィンの量は、官能化ポリオレフィンエマルジョンの重量に基づき約10〜約35重量%、好ましくは20〜30重量%の範囲であることができる。マレイン化ポリプロピレンエマルジョンに関しては、マレイン化ポリプロピレンの量は、マレイン化ポリプロピレンエマルジョンの重量に基づき、約10〜約35重量%、好ましくは約20〜約30重量%の範囲であることができる。
【0036】
官能化ポリオレフィンは、当業界で知られた任意の方法で製造できる。この方法は回分式又は連続式で実施できる。回分法では、一般に、反応体及び生成物は全て、全回分製造時間の間、反応器中に保持される。連続法では、成分はプロセスに連続的な速度で供給される。
【0037】
官能化ポリオレフィンの製造のための典型的な方法としては、固相、溶媒又は押出法が挙げられるが、これらに限定するものではない。固相法においては、ポリオレフィンは、ポリオレフィンの融点未満の温度に加熱する。次いで、加熱されたポリオレフィンに官能化剤及び開始剤を添加して、官能化ポリオレフィンを生成する。米国特許第4,595,726号及び第5,140,074号(引用することによって本明細書中の記載と矛盾しない程度にその全体を本明細書中に組み入れる)は、固相法(solid phase process)を使用する。
【0038】
溶媒法においては、官能化剤による官能化を可能にするようにポリオレフィンを膨潤させるために、溶媒を添加する。米国特許第4,675,210号及び第4,599,385号(引用することによって本明細書中の記載と矛盾しない程度にその全体を本明細書中に組み入れる)は、溶媒法を使用する。
【0039】
押出法においては、ポリオレフィン、官能化剤及び少なくとも1種の開始剤を押出ゾーンに供給し、そこでグラフト化が行われる。押出ゾーンは少なくとも1つの押出機を含む。米国特許第5,955,547号、第6,046,279号及び第6,218,476号(引用することによって本明細書中の記載と矛盾しない程度にその全体を本明細書中に組み入れる)は、官能化ポリオレフィン、特にマレイン化ポリプロピレンを製造するための押出法を記載している。
【0040】
官能化ポリオレフィン、特にマレイン化ポリプロピレンはまた、官能化ポリオレフィンの反応時の又は処理における溶媒として溶媒を使用するか否かに応じて2つの生成物型に特徴付けることができる。米国特許第3,414,551号;第4,506,056号;及び第5,001,197号(引用することによって本明細書中の記載と矛盾しない程度にその全体を本明細書中に組み入れる)において、官能化ポリオレフィンの処理は、溶媒への官能化ポリオレフィンの溶解とそれに続く沈澱、又は溶媒による洗浄を含む。この処理は可溶性成分を除去し、従って、見かけの分子量及び酸価を共に変える。
【0041】
本発明の1つの特定の実施態様において、マレイン化ポリプロピレンを、135℃より高いピーク融点を有するポリプロピレンを用いて押出法によって製造する。ポリプロピレンはメルトの状態で、ポリプロピレン100重量部当たり、約1.0〜約2.5重量部のレベルで添加される無水マレイン酸と合し、過酸化物開始剤を、ポリプロピレンの重量に基づき、約2.0重量%以下のレベルで添加する。ポリプロピレン、無水マレイン酸及び過酸化物開始剤を、押出機中で約160〜約250℃の範囲の温度で混合する。ストリッピングによって未反応無水マレイン酸を除去した後のマレイン化ポリプロピレンは一般的に、KOHメタノール溶液を用いて酸滴定によって測定された場合に、約1.2%超の反応(グラフト化)無水マレイン酸を示す。
【0042】
非イオン性界面活性剤は、官能化ポリオレフィンを乳化できる、当業界で知られた任意のものであることができる。非イオン性界面活性剤としては、エチレンオキシド及びアルキルフェノールに基づく化合物、C8〜C20直鎖アルコールのエトキシル化誘導体、エトキシル化C9〜C18合成分岐鎖アルコール、エトキシル化アルキルフェノール誘導体、脂肪族カルボン酸のモノエステル及び、種々の分子量のポリエチレンオキシドオリゴマー並びにポリヒドロキシ物質の同様なモノ−又はジ−エステル、例えば、ソルビトール−モノラウレートが挙げられるが、これらに限定するものではない。この群のうち、アルコール又はアルキルフェノールとエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はこれら2つの混合物との反応に基づく非イオン性界面活性剤が、親水性末端と疎水性末端を結合させるエーテル結合が安定であるため、最も好ましい。
【0043】
官能化ポリオレフィンの重量に基づき、官能化剤2.5%未満のグラフトレベルを有する官能化ポリオレフィンに関しては、使用する非イオン性界面活性剤は、安定な官能化ポリオレフィンエマルジョンを生成するためには、官能化ポリオレフィンのグラフトレベルに基づいて適切なHLB特性を有さなければならない。安定な官能化ポリオレフィンエマルジョンは、成分が分離もしないし、粒子が凝集もしないものである。好ましくは、官能化ポリオレフィンエマルジョンは5%より大きい透過率を有する。透過率の測定方法は、本明細書の開示の実施例部分において後述する。
【0044】
両親媒性であり且つ疎水性末端及び親水性エチレンオキシドセグメントの両方を含む非イオン性界面活性剤に関しては、HLBは、界面活性剤中の親水性セグメントと疎水性セグメントの相対量の指標である。界面活性剤中の親水基の百分率は、(HLB/20)×100にほぼ等しい。例えば、HLBが10に等しい非イオン性界面活性剤は、その分子の約50%が極性エチレンオキシド基からなるのに対して、HLBが15に等しい非イオン性界面活性剤はその構造の約75%を極性エチレンオキシド単位として有する。
【0045】
Epolene E−43又はG−3015マレイン化ポリプロピレン(Eastman Chemical Company製)のような、官能化ポリオレフィンの重量に基づき、官能化剤が2.5重量%超であるグラフトレベルを有する官能化ポリオレフィンを乳化するためには、典型的には、約11〜約15のHLB値を有する非イオン性界面活性剤を用いる。低いグラフト化レベル及び高い分子量を有する官能化ポリオレフィンほど、乳化が難しい。官能化ポリオレフィンの重量に基づき、官能化剤が約2.5重量%又はそれ以下であるグラフトレベルを有するこれらの官能化ポリオレフィンを乳化するためには、より高いHLB値を有するイオン性界面活性剤を使用すべきだと推測されるであろうが、意外なことに、後述するようにこの場合にはそうではない。
【0046】
例えば、マレイン化ポリプロピレンの重量に基づき、約1.4重量%のグラフト化無水マレイン酸を含む、Eastman Chemical Company製のEpolene G−3003マレイン化ポリプロピレンは、約8〜約9の平均HLB値を有する非イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤混合物を用いて充分に乳化される。官能化ポリオレフィンのグラフト化レベルが増加すると、グラフトレベルの増加を伴って非イオン性界面活性剤の最適HLBが増加し、良好な透過率及び濾過性によって示されるような、最適な官能化ポリオレフィンが生成される。良好な透過率及び濾過性については、本明細書の開示の実施例部分で定義する。例えば、約3%のグラフト化無水マレイン酸を含む、Eastman Chemical Company製のEpolene G−3015マレイン化ポリプロピレンを乳化するための非イオン性界面活性剤に関する最適HLBは、約11〜約14の範囲である。しかし、これらの同じ非イオン性界面活性剤は、1.4%のグラフト化レベルを有するEpolene G−3003マレイン化ポリプロピレンと共に用いる場合には、安定な官能化ポリオレフィンエマルジョンを生成できない。
【0047】
本発明の一実施態様において、乳化されている官能化ポリオレフィンが、官能化ポリオレフィンの重量に基づき、約0.5〜約2.5重量%のグラフト化レベルを有する場合には、非イオン性界面活性剤は、約4〜約10の範囲のHLBを有する、当業界で知られた任意の非イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤混合物であることができる。前述のように、最適な官能化ポリオレフィンエマルジョンは、官能化ポリオレフィンのグラフト化レベルに基づいて適切なHLB範囲を選択することによって得られる。好ましくは、非イオン性界面活性剤のHLB値は、約6〜約10、最も好ましくは7〜10の範囲であることができる。
【0048】
好ましくは、HLB値が約8〜約9の範囲である非イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤混合物は、Epolene G−3003マレイン化ポリプロピレンを乳化する場合に最も効果的である傾向がある。最も好ましくは、Eastman Chemical Comapny製のEpolene G−3003マレイン化ポリプロピレン(マレイン化ポリプロピレンの重量に基づき、無水マレイン酸1.4重量%)のエマルジョンを生成するための非イオン性界面活性剤は、Uniquema Chemical Companyから入手されるBrij 30とBrij 72とのほぼ70/30の混合物であり、このブレンドの計算HLBは約8.5である。更に低いHLB値を有する非イオン性界面活性剤は、安定なエマルジョンの生成にはより高レベルのカルボン酸共界面活性剤を必要とする傾向があることがわかった。
【0049】
非イオン性界面活性剤の組合せも使用できる。例えば、高HLB値を有する非イオン性界面活性剤と低HLB値を有する非イオン性界面活性剤との組合せは、個々の官能化ポリオレフィンの乳化に必要なHLBを得るのに使用できる。
【0050】
官能化ポリオレフィンエマルジョン中に存在する非イオン性界面活性剤の量は、安定なエマルジョンを得るのに充分な量である。安定な官能化ポリオレフィンエマルジョンについては、本明細書の開示中で前に定義した。好ましくは、官能化ポリオレフィンエマルジョン中に存在する非イオン性界面活性剤の量は、少なくとも5%の透過率で示されるような許容され得るエマルジョンを得るのに充分な量である。一実施態様において、非イオン性界面活性剤の量は、官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約6〜約25重量部、好ましくは約10〜約20重量部、最も好ましくは12〜18重量部の範囲であることができる。
【0051】
カルボン酸共界面活性剤は、安定な官能化ポリオレフィンエマルジョンを生成することができる、当業界で知られた任意のものであることができる。特定の理論にとらわれるつもりはないが、カルボン酸共界面活性剤は、中和用塩基によって中和してアニオン性界面活性剤種を形成する。
【0052】
本発明の一実施態様において、カルボン酸共界面活性剤は、直鎖有機カルボン酸及び脂環式有機カルボン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種であることができる。用語「直鎖有機カルボン酸」は、環状基も多環式基も含まず且つ環状単位を含まない分岐鎖構造を含むことができる任意のカルボン酸構造を意味する。直鎖有機カルボン酸は、官能化ポリオレフィンを乳化して安定な官能化ポリオレフィンエマルジョンを生成できる、当業界において知られた任意のものであることができる。安定な官能化ポリオレフィンエマルジョンについては、本明細書の開示中で前に定義した。直鎖有機カルボン酸の好ましい例としては、C16〜C18脂肪酸、例えばオレイン酸、ステアリン酸又はパルミトレイン酸が挙げられるが、これらに限定するものではない。飽和カルボン酸は不飽和カルボン酸ほど酸化されず、従って、不飽和カルボン酸ほど官能化ポリオレフィンの色に影響を与えないので、飽和カルボン酸が好ましい。
【0053】
脂環式有機カルボン酸は、官能化ポリオレフィンを乳化して安定な官能化ポリオレフィンエマルジョンを生成することができる、当業界で知られた任意のものであることができる。脂環式有機カルボン酸の例としては、ロジン酸類が挙げられるが、これに限定するものではない。水素化ロジン酸類、例えばEastman Chemical Comapny製のForal AX−Eロジン酸は、水素化によって淡色及び安定性が付与されるので、本発明に適切である。
【0054】
本発明の一実施態様において、官能化ポリオレフィンの重量に基づき、グラフト化官能化剤が約0.5〜約2.5重量%の範囲であるグラフト化レベルを有する官能化ポリオレフィンを乳化する場合には、直鎖有機カルボン酸の量は、官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約16重量部又はそれ以下である。直鎖有機カルボン酸の量が官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約16重量部又はそれ以下である場合には、安定な官能化ポリオレフィンエマルジョンを得るために脂環式有機カルボン酸の添加は必要ない。好ましくは、脂環式カルボン酸を用いずにエマルジョン配合物中に単独で使用する場合には、直鎖有機カルボン酸の量は、官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約2〜約16重量部、最も好ましくは8〜12重量部の範囲であることができる。実施例の部分に示すように、高レベルの直鎖有機カルボン酸の使用が乳化を妨げ且つより低品質のエマルジョンを生成することは予期しないことであった。
【0055】
しかし、本発明の一実施態様において、官能化ポリオレフィンの重量に基づき、約0.5〜約2.5重量%の範囲のグラフト化レベルを有する官能化ポリオフィンを、直鎖有機カルボン酸を官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約16重量部又はそれ以下の量で用いて乳化する場合には、少なくとも1種の脂環式有機カルボン酸を更に直鎖有機カルボン酸と組合せて使用すると、透過率のような改善されたエマルジョン特性を得ることができる。エマルジョン中のカルボン酸共界面活性剤の総レベルが官能化ポリオレフィン100重量部当たり、8重量部より多い場合には、脂環式有機カルボン酸と直鎖有機カルボン酸との混合物を用いるのが好ましい。直鎖有機カルボン酸と脂環式有機カルボン酸を共に用いる場合には、官能化ポリオレフィンエマルジョン中のカルボン酸共界面活性剤の総量は、好ましくは官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約8〜約25重量部、最も好ましくは10〜16重量部の範囲である。これらの改善されたエマルジョン特性を得るためには、脂環式有機カルボン酸の量は、カルボン酸共界面活性剤の総量の約1〜約99重量%、好ましくは25〜75重量%の範囲であることができる。
【0056】
本発明の別の実施態様において、官能化ポリオレフィンの重量に基づき、官能化剤が約0.5〜約2.5重量%であるグラフト化レベルを有する官能化ポリオレフィンに関して、総有機カルボン酸の量が官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約16重量部より多い場合には、ロジン酸のような脂環式有機カルボン酸の添加は官能化ポリオレフィンの乳化を助けるが、樹脂100部当たり16部を超える直鎖有機カルボン酸の更なる添加はエマルジョンの品質を悪化させることがわかった。本発明の一実施態様において、カルボン酸共界面活性剤の総量が官能化ポリオレフィン100重量部当たり、16重量部より多い場合には、直鎖有機カルボン酸の最大量は官能化ポリオレフィン100重量部当たり、16重量部でなければならず、また、カルボン酸共界面活性剤の残りは脂環式有機カルボン酸でなければならない。
【0057】
本発明の別の実施態様において、カルボン酸共界面活性剤は少なくとも1種の脂環式有機化カルボン酸である。脂環式有機カルボン酸の量は、安定な官能化ポリオレフィンエマルジョンを生成するのに充分なものである。本発明の一実施態様において、脂環式有機化カルボン酸の量は、官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約5〜約25重量部、好ましくは10〜16重量部の範囲であることができる。
【0058】
官能化ポリオレフィンを乳化するためには、中和用塩基を更に使用する。特定の理論にとらわれるつもりはないが、中和用塩基はカルボン酸共界面活性剤を中和して、本発明の方法のための乳化剤として働く石けんを形成すると考えられる。更にまた、中和用塩基は官能化ポリオレフィン上の官能基を中和すると考えられる。好ましい塩基は、炭素数1〜約10個の炭素原子、アミノ基及びヒドロキシル基を有する有機化合物である。好ましい塩基としては、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−ジメチルアミノ−1−プロパノール又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0059】
更に、マレイン化ポリプロピレンエマルジョンを乾燥させる場合には、中和用塩基は、蒸発するのに充分な揮発性を有することができ、それは、マレイン化ポリプロピレン中の無水物基をより高温において再形成させることができる。エマルジョンサイズ剤を乾燥時に無水物型に再転化し、マレイン化ポリプロピレンをガラス繊維上に直接付着されるカップリング剤として働かせることもできるので、この挙動はガラス繊維サイズ剤用途において重要であり得る。
【0060】
中和用塩基の量は、カルボン酸共界面活性剤の一部をアニオン性界面活性剤に転化し且つ官能化ポリオレフィンの酸基の一部を中和するのに充分なものである。一般に、官能化ポリオレフィンエマルジョン中の中和用塩基の量は決まった量ではなく、カルボン酸共界面活性剤並びにグラフト化官能基の酸度及び任意のエマルジョン添加剤の酸度の組合せである官能化ポリオレフィンエマルジョンの総酸度によって異なる。エマルジョン中の総酸度の約80〜100%を中和するのに充分な塩基を用いるのが好ましい。
【0061】
官能化ポリオレフィンエマルジョンの残りは水である。
【0062】
本発明の別の実施態様において、使用する官能化ポリオレフィンエマルジョンは、少なくとも1種の官能化ポリオレフィン、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、少なくとも1種の中和用塩基、少なくとも1種のカルボン酸共界面活性剤及び水を含み;官能化ポリオレフィンは、官能化ポリオレフィンの重量に基づき、官能化剤が約0.5〜約2.5重量%であるグラフト化レベルを有し;カルボン酸共界面活性剤は少なくも1種の脂環式カルボン酸を含む。
【0063】
官能化ポリオレフィン及び少なくとも1種の中和用塩基については、本明細書の開示中に既に記載した。
【0064】
非イオン性界面活性剤についても、本明細書の開示中に既に記載した。これは、官能化ポリオレフィンのグラフトレベルに基づいて選択する。
【0065】
カルボン酸共界面活性剤は、少なくとも1種の脂環式有機カルボン酸である。脂環式有機カルボン酸については、本明細書の開示中に既に記載した。本発明の別の実施態様において、カルボン酸共界面活性剤は、少なくとも1種の直鎖有機カルボン酸及び少なくとも1種の脂環式有機カルボン酸である。
【0066】
本発明の別の実施態様において、使用する官能化ポリオレフィンエマルジョンは、少なくとも1種の官能化ポリオレフィン、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、少なくとも1種の中和用塩基、少なくとも1種のカルボン酸共界面活性剤及び水を含み;官能化ポリオレフィンは、官能化ポリオレフィンの重量に基づき、官能化剤が約0.5〜約2.5重量%であるグラフト化レベルを有し;官能化ポリオレフィンエマルジョンは少なくとも5%の%透過率を有する。官能化ポリオレフィンエマルジョンはまた、良好な濾過性を有することができる。「良好な濾過性」については、本明細書の開示の実施例部分において後で定義する。
【0067】
本発明の一実施態様において、エマルジョン粒子の大きさは非常に微細であるので、官能化ポリオレフィンエマルジョンは容易に濾過されて、微細なコーティングを製造するための非常に清浄な生成物を生成することができる。濾材の孔より大きい粒子は濾過器を詰まらせるので、濾過が非常に困難になる。官能化ポリオレフィンエマルジョンは、本明細書の開示において後述する濾過性試験に合格するならば、良好な濾過性を有する。
【0068】
一般に、官能化ポリオレフィンエマルジョンは、5%超の、好ましくは15%超の、最も好ましくは30%超の透過率値を有する。
【0069】
マレイン化ポリプロピレンエマルジョンは5%より大きい、好ましくは10%より大きい透過率値を示すのが非常に望ましく、20%超の透過率を有するマレイン化ポリプロピレンエマルジョンがより好ましく、30%超の透過率値を示すマレイン化ポリプロピレンエマルジョンが最も望ましい。通常は2%より高いグラフト化レベルを有するポリプロピレンをより高度にマレイン化する場合には特に、60%又はそれ以上の透過率値を示すマレイン化ポリプロピレンのエマルジョンを生成できる。約20〜約35%又はそれ以上の範囲の透過率値を有するマレイン化ポリプロピレンエマルジョンは典型的には、この型のエマルジョンに望ましいコーティング及び濾過挙動を示す。
【0070】
本発明の官能化ポリオレフィンエマルジョンは、当業界で知られた任意の方法によって生成できる。本発明の一実施態様において、官能化ポリオレフィンエマルジョンは、少なくとも1種の官能化ポリオレフィン、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、少なくとも1種の中和用塩基、少なくとも1種のカルボン酸共界面活性剤及び水を加熱して前記官能化ポリオレフィンエマルジョンを生成することを含む方法によって生成し;前記官能化ポリオレフィンは、官能化ポリオレフィンの重量に基づき、約0.5〜約2.5重量%の範囲のグラフト化レベルを有し;前記非イオン性界面活性剤は約4〜約10の範囲のHLBを有し;カルボン酸共界面活性剤は、少なくとも1種の直鎖有機カルボン酸を、前記官能化ポリオレフィン100重量部当たり、16重量部又はそれ以下の量で含む。
【0071】
本発明の別の実施態様において、官能化ポリオレフィンエマルジョンは、少なくとも1種の官能化ポリオレフィン、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、少なくとも1種の中和用塩基、少なくとも1種のカルボン酸共界面活性剤及び水を加熱して前記官能化ポリオレフィンエマルジョンを生成することを含む方法によって生成し;前記官能化ポリオレフィンは、官能化ポリオレフィンの重量に基づき、約0.5〜約2.5重量%の範囲のグラフト化レベルを有し;前記非イオン性界面活性剤は約4〜約10の範囲のHLBを有し;カルボン酸共界面活性剤は、少なくとも1種の直鎖有機カルボン酸及び少なくとも1種の脂環式有機カルボン酸を含み;総有機カルボン酸共界面活性剤の量は、前記官能化ポリオレフィン100重量部当たり16重量部超の量である。
【0072】
本発明の別の実施態様において、官能化ポリオレフィンエマルジョンは、少なくとも1種の官能化ポリオレフィン、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、少なくとも1種の中和用塩基、少なくとも1種のカルボン酸共界面活性剤及び水を加熱して前記官能化ポリオレフィンエマルジョンを生成することを含む方法によって生成し;カルボン酸共界面活性剤は、少なくとも1種の脂環式カルボン酸を含む。
【0073】
本発明の別の実施態様において、少なくとも1種の官能化ポリオレフィン、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、少なくとも1種の中和用塩基、少なくとも1種のカルボン酸共界面活性剤及び水を加熱して官能化ポリオレフィンエマルジョンを生成することを含む、官能化ポリオレフィンエマルジョンを製造するための方法が提供され;前記官能化ポリオレフィンは、約0.5〜約2.5重量%の範囲のグラフト化レベルを有し;前記官能化ポリオレフィンエマルジョンは少なくとも5%の%透過率を有する。
【0074】
官能化ポリオレフィンエマルジョンを製造するための前述したこれらの方法の全てにおいて、エマルジョンは直接法又は間接法によって製造できる。直接法又はバッチ法においては、官能化ポリオレフィン、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、少なくとも1種の中和用塩基、少なくとも1種のカルボン酸共界面活性剤及び水を、バッチの開始時に乳化容器に加えて、乳化混合物を生成する。次いで、乳化容器を、水の蒸気圧下において所望の乳化温度に加熱する。乳化混合物の温度は一般に、官能化ポリオレフィンの融点より高い。乳化混合物の温度は約140〜約185℃、好ましくは165〜180℃の範囲であることができ、官能性オレフィンの融点に強く依存する。
【0075】
直接法の利点は、加圧しながら乳化容器に材料を装入する必要がないことである。更に、それは、官能化ポリオレフィンエマルジョンの製造コストを増す追加工程を排除する単純な方法である。
【0076】
間接法においては、最初に、官能化ポリオレフィン及び少なくとも1種の他のエマルジョン成分の一部を、官能化ポリオレフィンの融点より高温に加熱する。次いで、残りのエマルジョン成分を、高温で任意の順序で又は一緒に添加する。
【0077】
本発明の別の実施態様においては、官能化ポリオレフィンの生成の間に脂環式カルボン酸を官能化ポリオレフィンに混和し、官能化ポリオレフィンと配合し、又は乳化プロセスの任意の時点で添加することができる。
【0078】
リン系オキソ酸部分は、リンの酸化状態が4又はそれ以下の任意のリン系オキソ酸部分である。リン系オキソ酸部分の例としては、亜リン酸、次亜リン酸及びこれらの酸の中和塩が挙げられるが、これらに限定するものではない。官能化ポリオレフィンがマレイン化ポリプロピレンである場合には、好ましいリン系オキソ酸部分は次亜リン酸である。
【0079】
イオウ系オキソ酸部分は、イオウの酸化状態が4又はそれ以下の任意のイオウ系オキソ酸部分である。イオウ系オキソ酸部分の例としては、亜硫酸ナトリウム及びメタ重亜硫酸ナトリウム(二亜硫酸ナトリウム)が挙げられるが、これらに限定するものではない。リン系オキソ酸部分と相乗的に作用して熱老化カラーを改善することができる他のイオウ系オキソ酸部分も使用できる。官能化ポリオレフィンがマレイン化ポリプロピレンである場合には、好ましいイオウ系オキソ酸部分はメタ重亜硫酸ナトリウムである。
【0080】
官能化ポリオレフィンエマルジョンにおいて熱老化色相安定性を達成するのに必要なリン系オキソ酸部分及びイオウ系オキソ酸部分の量及び型は、決まった値でも予測可能な値でもなく、官能化ポリオレフィンのグラフト化レベル及び中に含まれる色素体不純物によってかなり異なる。更に、エマルジョンの成分及び製造方法が、エマルジョンの熱安定性又は熱老化カラーにいくぶん影響を及ぼす。
【0081】
リン系オキソ酸部分の量は、エマルジョン中の官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約0.1〜約3重量部、好ましくは約0.1〜約1重量部、最も好ましくは0.2〜0.6重量部の範囲であることができる。官能化ポリオレフィンがマレイン化ポリプロピレンである場合には、リン系オキソ酸部分の量は、官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約0.1〜約3重量部、好ましくは約0.1〜約1重量部、最も好ましくは0.2〜0.9重量部の範囲であることができる。
【0082】
イオウ系オキソ酸部分の量は、エマルジョン中の官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約0.1〜約3重量部、好ましくは約0.2〜約1重量部、最も好ましくは0.2〜0.6重量部の範囲であることができる。官能化ポリオレフィンがマレイン化ポリプロピレンである場合には、イオウ系オキソ酸部分の量は、エマルジョン中の官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約0.1〜約3重量部、好ましくは約0.2〜約1重量部、最も好ましくは0.2〜0.6重量部の範囲であることができる。
【0083】
熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンの製造に好ましい官能化ポリオレフィンは、淡色を生じ且つ熱老化時の酸化によって暗色化する可能性のある色素体前駆体を最も少なく含むように製造されたものである。官能化ポリオレフィンの黄色度指数は50以下、好ましくは40未満であることができる。マレイン化ポリプロピレンのこの目標値を達成するためには、マレイン化ポリプロピレンは、マレイン化ポリプロピレンの重量に基づき、約2.0重量%未満のグラフト化無水マレイン酸を含み且つグラフト化による酸価が約11mg KOH/g未満であるのが好ましい。ポリオレフィン分解量はグラフトレベルの増加と共に増加する。
【0084】
本発明の一実施態様において、官能化ポリオレフィンが40未満の黄色度指数を有する場合には、イオウ系オキソ酸部分を用いずにリン系オキソ酸部分のみを添加することによって安定化させて、熱老化時に6又はそれ以下のガードナーカラーを得ることができる。しかし、一般的には、追加のイオウ系オキソ酸部分が官能化ポリオレフィンエマルジョンの熱老化カラーを更に改善できることがわかっている。
【0085】
酸化防止剤、螢光増白剤及び着色剤を含む(これらに限定するものではない)他の添加剤も、色を更に改善するために官能化ポリオレフィンエマルジョンに含ませることができる。
【0086】
酸化防止剤は官能化ポリオレフィンの分解を減少させることができる、当業界で知られた任意の化合物を含む。酸化防止剤としては、亜燐酸エステル及びチオジプロピオニエート(tiodipropioniate)エステルが挙げられるが、これらに限定するものではない。具体的な市販例としては、General Electricから入手されるWeston 619酸化防止剤及びCromptonから入手されるジ−ラウリルチオジプロピオネート(DLTDP)が挙げられるが、これらに限定するものではない。しかし、酸化防止剤は、リン系オキソ酸部分の不存在下では、官能化ポリオレフィンエマルジョンの熱老化カラーを改善して6又はそれ以下のガードナーカラーを生じることはできない。
【0087】
螢光増白剤は、官能化ポリオレフィンエマルジョンの色を改善する、当業界で知られた任意の化合物であることができる。螢光増白剤の例は、Plastics Additives,Gachter/Muller,3rd Edition,Hansen Publishers,1990(引用することによって本明細書中に組み入れる)に示されている。市販の螢光増白剤の具体例は、Eastman Chemical Companyから入手されるOB−1 Optical Brightenerである。螢光増白剤の効果は、リン系オキソ酸部分、イオウ系オキソ酸部分及び酸化防止剤も官能化ポリオレフィンエマルジョンに添加される場合には、目視できる。
【0088】
好ましい実施態様において、官能化ポリオレフィンエマルジョンは、エマルジョン中の官能化ポリオレフィンの重量に基づき、約0.2〜約0.8重量部の次亜リン酸(純粋ベース)、エマルジョン中の官能化ポリオレフィンの重量に基づき、約0.2〜約0.6重量部のメタ重亜硫酸ナトリウム、及び少なくとも1種の亜リン酸エステル又はチオジプロピオン酸エステル二次酸化防止剤を含むことができる。官能化ポリオレフィンエマルジョンはまた、少なくとも1種の螢光増白剤を、エマルジョン中の官能化ポリオレフィンの重量に基づき、約10〜約100重量ppmの範囲の量で含むことができる。
【0089】
これらのエマルジョン配合物において、これらの添加剤はいずれも、添加剤を含まないエマルジョン配合物に比較して、熱老化カラーにおいて更なる改善をもたらすが、低レベルの少なくとも1種のリン系オキソ酸部分を添加しなければ、望ましい熱老化色相安定性を得ることはできない。メタ重亜硫酸ナトリウム、二次酸化防止剤及び螢光増白剤のどのような組合せであっても、リン系オキソ酸部分がエマルジョン配合物中に含まれる場合に一貫して得られる優れた色相安定性を提供しない。別法として、亜硫酸ナトリウムのような他のイオウ系オキソ酸部分も、リン系オキソ酸部分と相乗的に作用して、官能化ポリオレフィンエマルジョンに良好な熱老化色相安定性を与えることができる。
【0090】
本発明の別の実施態様において、熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンを製造するための方法が提供される。この方法は、少なくとも1種のリン系オキソ酸部分を含む少なくとも1種の添加剤を官能化ポリオレフィンエマルジョンに添加することを含む。添加剤は、更に、少なくとも1種のイオウ系オキソ酸部分を含むことができる。
【0091】
本発明の別の実施態様において、熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンを製造するための方法が提供される。この方法は、少なくとも1種の官能化ポリオレフィン、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、少なくとも1種のカルボン酸共界面活性剤、少なくとも1種の中和用塩基、水及び少なくとも1種のリン系オキソ酸部分を含む少なくとも1種の添加剤を接触させて、熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンを生成することを含む。添加剤は更に、少なくとも1種のイオウ系オキソ酸部分を含むことができる。
【0092】
これらの方法のいずれにおいても、添加剤はエマルジョンの製造中又は製造後に添加することもできるし、或いは添加剤の一部を、エマルジョンの製造中と製造後の両方に添加することもできる。
【実施例】
【0093】
本発明を、その好ましい実施態様についての以下の実施例によって更に説明することができるが、これらの実施例は説明のためにのみ記載するのであって、特に断らない限り、本発明の範囲を制限するものではない。
【0094】
試験方法
官能化ポリオレフィンエマルジョンの熱老化カラーは、以下の標準的方法によって測定した。マレイン化ポリプロピレンエマルジョン12.0gを、公称高さ1cmの9cm(内径)パイレックス(登録商標)培養皿のそれぞれに量り入れた。パイレックス(登録商標)皿中のエマルジョンサンプルのセットを、182℃+/−1℃の温度の強制空気循環炉に入れ、50分間状態調整した。炉の空気流及び加熱容量は、オーブン中で12〜15分後に、各エマルジョンが182℃+/−1℃の空気温度において完全に乾燥し且つ完全な溶融状態となるのに充分なものであった。
【0095】
182℃+/−1℃において完全に乾燥した、溶融状態で約30+分(最小)に相当する状態調整時間の後、パイレックス(登録商標)皿を鉗子で除去後、水浴上に2秒間載せ、次いで水中に完全に浸漬して、溶融エマルジョンを急冷して、エマルジョンフィルムを形成した。エマルジョンフィルムを皿から取り出し、乾燥させた。
【0096】
各エマルジョンフィルムの黄色度指数とb*値を、Hunter Ultra−Scan分光光度計を用いて、厚さが>17milのエマルジョンフィルムの(4)ランダム領域を測定することによって測定した。Hunter Ultra−Scan分光光度計は、計測器のマニュアルに従って較正した。
【0097】
目視ガードナーカラーを、炭化水素樹脂及びロジン樹脂の色を測定するのに典型的に用いられるガードナーカラーホイール比色計を用いて測定した。
【0098】
官能化ポリオレフィンの乳化
以下の方法を用いて、Eastman Chemical Comapny製のEpolene G−3003マレイン化ポリプロピレンを乳化させた。Epolene G−3003マレイン化ポリプロピレンは、マレイン化ポリプロピレンの重量に基づき無水マレイン酸が約1.4重量%であるグラフト化レベルを有する。表Iは、例中で使用するEpolene G−3003マレイン化ポリプロピレンエマルジョンの典型的な配合を示す。以下の成分は全て、300ccのParr圧力反応器に加えた。
【0099】
【表1】

【0100】
中和用塩基は、80重量%溶液(水20%)として使用した2−ジメチルアミノ−2−メチルプロパノール(DMAMP−80)であった。Foral AX−Eは、Eastman Chemical Comapnyから入手した水素化ロジン酸である。Brij 30及びBrij 72界面活性剤は、Uniquema Chemical Companyから入手した非イオン性界面活性剤である。成分は、加圧下で激しく撹拌しながら約178℃まで加熱して、マレイン化ポリプロピレンエマルジョンを生成した。このエマルジョンを、178℃で60分間、激しく撹拌しながらかき混ぜた。次いで、マレイン化ポリプロピレンエマルジョンを約2℃/分で130℃に冷却した。最後に、エマルジョンを約5〜10℃/分の冷却速度で50℃に冷却し、次にエマルジョンを細かいペイントストレーナーを通して排出して、固形分を除去した。
【0101】
乾燥エマルジョンにおける熱老化着色に対する種々の添加剤の効果を評価するために、この方法を用いて種々のマレイン化ポリプロピレンエマルジョンを生成した。General Electricから入手したWeston 619酸化防止剤とCromptonから入手したDLTDP酸化防止剤との50/50配合物を、酸化防止剤を添加する例において用いた。以後の表中の全ての添加剤の量は、マレイン化ポリプロピレンエマルジョンの重量に基づく重量%で示す。
【0102】
比較例1〜2,実施例1〜3
表II中の比較例1においては、使用する添加剤が二次酸化防止剤のみであるマレイン化ポリプロピレンエマルジョンを生成させた。表II中の比較例2は、添加剤として0.2重量%の二次酸化防止剤及び0.14重量%のメタ重亜硫酸ナトリウムを用いた。実施例1では、添加剤として0.2重量%の二次酸化防止剤及び0.11重量%の次亜リン酸(純粋ベース)を用いた。実施例2は、実施例1と同じ添加剤を用いたが、更に0.09%のメタ重亜硫酸ナトリウムも用いた。実施例3は、実施例2と非常に類似しているが、安定剤添加剤として25ppmのEastman OB−1螢光増白剤を含んでいた。状態調整したエマルジョンフィルムの熱老化カラー値を測定し、表IIに示した。
【0103】
二次酸化防止剤のみを含む比較例1及び二次酸化防止剤と0.14重量%のメタ重亜硫酸ナトリウムのみを含む比較例2は、約G8の暗色の熱老化カラーを示した。
【0104】
これに対して、次亜リン酸及び二次酸化防止剤のみを含む本発明の実施例1は、G5のより淡色のガードナーカラーを示した。実施例1と同じ添加剤と追加の0.09%のメタ重亜硫酸ナトリウムを含む実施例2は、次亜リン酸と共にメタ重亜硫酸ナトリウムを添加したため、G3+の更に改善されたガードナーカラーを示した。実施例2と同じ添加剤と追加の25ppmのEastman OB−1螢光増白剤を含む実施例3は、G2の更に改善された熱老化カラーを示した。
【0105】
要約すると、この型のエマルジョンに典型的に指定される標準的なメタ重亜硫酸ナトリウム添加剤のみを含むEpolene G−3003マレイン化ポリプロピレンのエマルジョンは不満足な熱老化カラーを示したが、エマルジョン添加剤として次亜リン酸を含む本発明の実施例は非常に良好な熱老化カラーを示した。
【0106】
【表2】

【0107】
比較例3及び4,実施例4及び5
表III中の比較例3は、Eastman Epolene E−43、低分子量マレイン化ポリプロピレンワックスのエマルジョンの熱老化カラーを示す。これは、約G10の暗色の熱老化カラーを示した。同様に、比較例4においては、添加剤としてメタ重亜硫酸ナトリウムのみを含む、50,000の重量平均分子量を有し且つ、マレイン化ポリプロピレンの重量に基づき、無水マレイン酸が約3重量%であるグラフトレベルを有する高分子量Eastman Epolene G−3015マレイン化ポリプロピレンの標準的エマルジョンが暗色のG12の熱老化カラーを示した。これに対して、実施例4においては、0.09%のメタ重亜硫酸ナトリウムの他に0.11%の次亜リン酸を含む同じEpolene G−3015マレイン化ポリプロピレンエマルジョンはG5まで大幅に低下された熱老化カラーを示した。実施例5においては、低レベルの螢光増白剤及び二次酸化防止剤の添加が、実施例4に比較して熱老化カラーをわずかだけ改善した。
【0108】
これに対して、非常に淡色の熱老化カラーを示したEpolene G−3003エマルジョンへの25重量ppmの螢光増白剤の添加(実施例2及び3)は、カラーのはるかに予測できない低下を引き起こし、黄色度指数を8.7から約4まで低下させた。これは、肉眼でも容易に確認される。螢光増白剤の添加は、妨げるべき色素体がごく少量である場合には、材料の目視「白色度」の改善に最も効果的である。エマルジョンフィルムがかなり黄変している場合には螢光増白剤の効果は限られるが、エマルジョンフィルムが螢光増白剤を用いなくても色が薄い場合には螢光増白剤はカラーをかなり改善することができる。
【0109】
【表3】

【0110】
実施例6〜8
表IV中の本発明の実施例6は、0.20%の二次酸化防止剤及び0.11%の次亜リン酸及び0.11%のメタ重亜硫酸ナトリウムを添加剤として添加したEpolene G−3003エマルジョンの熱老化カラー特性を示す。G3の非常に良好な熱老化カラーが測定された。本発明の実施例7は、二次酸化防止剤が存在しない点においてのみ異なる、非常に類似したエマルジョンを比較した。熱老化カラーは、実施例6の場合よりもわずかだけ暗色であった。これは、二次酸化防止剤が熱老化時のカラーの最小化において果たす役割は限られるが、最も安定な型のマレイン化ポリプロピレンエマルジョンを得るためには添加剤として望ましいことを示している。
【0111】
表IV中の本発明の実施例8においては、Eastman Epolene G−3003マレイン化ポリプロピレンから、二次酸化防止剤及び螢光増白剤が共に乳化前にマレイン化ポリプロピレンと配合された標準的なエマルジョンを生成した。このエマルジョンは、良好な熱老化カラーを得るのに効果的な量の次亜リン酸及びメタ重亜硫酸ナトリウムを含んでいた。これに比べて、本発明の実施例3においては、同じ添加剤が同じレベルでエマルジョン中に存在したが、ただし、螢光増白剤及び二次酸化防止剤は乳化工程の間に添加し、マレイン化ポリプロピレン中に予備配合しなかった。これらの結果は、2つの場合に熱老化カラーに有意差がないことを示した。このことは、螢光増白剤及び二次酸化防止剤のような補助添加剤は乳化工程の間に効果的に添加でき、マレイン化ポリプロピレン中に予め混和する必要がないことを示している。
【0112】
【表4】

【0113】
比較例5,実施例9〜12
表V中の比較例5においては、Epolene G−3003マレイン化ポリプロピレンから、添加剤として0.14%の亜リン酸を添加したエマルジョンを製造した。熱老化カラーはG8であった。本発明の実施例9においては、0.09%のメタ重亜硫酸ナトリウム及び0.2%の二次酸化防止剤を更に含む同様なエマルジョンを熱老化法で試験し、より淡色のG5が測定された。本発明の実施例10においては、乳剤中にメタ重亜硫酸ナトリウムの代わりに0.11%の亜硫酸ナトリウムを用いた同様なエマルジョンを製造した。本発明の実施例10の結果は、本発明の実施例9の熱老化カラーと極めて類似していた。このことは、亜硫酸ナトリウムの使用は、メタ重亜硫酸ナトリウムの使用よりも特に有利でも不利でもないことを示している。本発明の実施例11においては、エマルジョン中に0.11重量%の次亜リン酸及び0.13重量%のメタ重亜硫酸ナトリウムを添加剤として含む、匹敵するEpolene G−3003エマルジョンを生成した。熱老化カラーはG3であり、亜リン酸をエマルジョン安定剤として用いた匹敵する実施例9よりも著しく改善された。亜リン酸は、メタ重亜硫酸ナトリウム又は同様な添加剤と併用すると、高分子量マレイン化ポリプロピレンエマルジョンにおいては良好な熱老化カラーを示すことができるが、リン系オキソ酸として次亜リン酸を用いると、より良好なカラーの結果を観察することができる。
【0114】
本発明の実施例12においては、次亜リン酸の他に0.13%の亜硫酸ナトリウムを含むEpolene G−3003マレイン化ポリプロピレンエマルジョンを製造した。エマルジョンが次亜リン酸のみを含み、イオウ系オキソ酸部分を含まない実施例1における熱老化カラーよりも薄い、約G3+の熱老化カラーが観察された。しかし、この熱老化カラーは、イオウ系オキソ酸部分としてメタ重亜硫酸ナトリウムを用いた実施例11の結果よりもわずかに劣っていた。従って、熱老化後に良好なカラーを保持するために高分子量マレイン化ポリプロピレンのエマルジョン中に次亜リン酸と共に使用するのに好ましいイオウ系オキソ酸部分はメタ重亜硫酸ナトリウムである。
【0115】
【表5】

【0116】
実施例13〜19−マレイン化ポリプロピレンマリンエマルジョン中への添加剤の使用による色の改善
実施例13においては、マレイン化ポリプロピレン生成物を、Epolene G−3003マレイン化ポリプロピレンの製造に使用された方法によって生成した。反応体流(無水マレイン酸及び過酸化物)を15%増加させて、Eastman Chemical Comapny製の標準的なEpolene G−3003マレイン化ポリプロピレン中に存在するレベルよりも名目上は15%大きいグラフトレベルを有し且つ10.5mg KOH/gの酸価値を特徴とする材料を生成した。この方法によって生成したこのマレイン化ポリプロピレンを、表VI中にG−3003Xとして示す。
【0117】
表VI中の実施例14〜17においては、公称酸価が9mg KOH/gである、Eastman Chemical Comapny製の従来のEpolene G−3003マレイン化ポリプロピレンから、マレイン化ポリプロピレンエマルジョンを製造した。このマレイン化ポリプロピレンエマルジョンは、172℃において撹拌しながら直接法によって生成した。このマレイン化ポリプロピレンの乳化に使用した成分を表VIに示す。エマルジョン配合物は非常に類似しており、唯一の違いは実施例14が次亜リン酸(HPA)も水酸化カリウム(KOH)も含まないことであった。実施例15は、低レベルの次亜リン酸及びメタ重亜硫酸ナトリウムを含んでいた。実施例16は実施例15の2倍の量のHPA+KOHを含んでいた。実施例17は、実施例15の3倍の量の添加剤を含んでいた。マレイン化ポリプロピレンエマルジョンは全て非常に良好な品質であり、残渣がなく、高速濾過特性を有していた。これらの配合物の透過率値は、マレイン化ポリプロピレンエマルジョン中のHPA及びKOHの量に非常に影響されやすかったが、実施例16と17との間での増加はわずかであった。
【0118】
Eastman Chemical Comapny製の市販のEpolene G−3003マレイン化ポリプロピレンは、本明細書中に記載した方法に従って効果的に乳化させることができる。エマルジョン配合物への低レベルの水酸化カリウム中和次亜リン酸又は次亜リン酸単独の添加は、安定剤としてマレイン化ポリプロピレンエマルジョンの熱老化カラーを改善する役割をすると共に、エマルジョンの品質を改善する役割をし、エマルジョンの透過率を改善することができる。
【0119】
実施例13のマレイン化ポリプロピレンは、表VIに記載した成分を用いて直接法で乳化させた。実施例18おいては、エマルジョン装入材料に次亜リン酸を添加しなかったが、実施例19においては次亜リン酸及びKOHを示したレベルで添加した。実施例18及び19のマレイン化ポリプロピレンエマルジョンに関して、次亜リン酸色相安定剤の添加による透過率値の有意な増加はなかった。市販のEpolene G−3003マレイン化ポリプロピレンは、本明細書中に記載した方法に従って充分に乳化させることができるが、マレイン化生成物のマレイン化を25%まで約15%だけ増加させると、乳化特性を更に改善でき、乳化プロセスは配合物又は追加成分の小さな変化にほとんど影響されなくすることができる。
【0120】
【表6】

【0121】
実施例20〜23−マレイン化ポリプロピレンエマルジョン中のカルボン酸共界面活性剤としての飽和脂肪酸の使用
実施例16に前述したようにして、標準的なEastman Epolene G−3003マレイン化ポリプロピレンから、カルボン酸共界面活性剤としてForal AX−Eロジン酸及びオレイン酸を用いてマレイン化ポリプロピレンエマルジョンを生成した。実施例20においては、不飽和オレイン酸をステアリン酸で置き換えた同様なマレイン化ポリプロピレンエマルジョンを製造した。オレイン酸を用いた実施例16の場合よりも更に高い透過率値を有する優れたエマルジョンが得られた。実施例21においては、装入材料中のForal AX−Eロジン酸の1/3を更に等量のステアリン酸で置き換える以外は実施例20と同様にして、マレイン化ポリプロピレンエマルジョンを製造した。この場合も、前の2つのマレイン化ポリプロピレンエマルジョンと同様な性質を有する優れたエマルジョンが得られた。これらの実施例は、本発明の使用する直鎖脂肪酸が、純粋な状態では典型的には結晶性ワックスである飽和型の脂肪酸であることができることを示すのに役立つ。飽和されており且つ酸化を受けにくいことは、色相安定性が重要な場合にはこの型のカルボン酸共界面活性剤に有利であることができる。
【0122】
前の実施例19においては、グラフトレベルが15%高い以外はEastman Epolene G−3003と同様な、実施例13によるマレイン化ポリプロピレンを、カルボン酸共界面活性剤としてForal AX−Eロジン酸及びオレイン酸を両方用いて乳化させた。実施例22においては、Foral AX−Eロジン酸の量を減少させ且つオレイン酸をステアリン酸とUniqemaから入手したPrisorine 3501イソステアリン酸との混合物と置き換えた、同様なマレイン化ポリプロピレンエマルジョンを実施例19と同様にして製造した。実施例19と同様な性質を有する優れたエマルジョンが得られた。実施例23においては、C18飽和脂肪酸の78%がイソステアリン酸であるようにステアリン酸の量とイソステアリン酸の量を逆転させる以外は実施例22と同様にして、マレイン化ポリプロピレンエマルジョンを製造した。この場合もやはり、実施例19及び22と同様な性質を有する優れたエマルジョンが得られた。イソステアリン酸は分岐鎖脂肪酸であり、非結晶性である。本発明において非晶性である飽和脂肪酸を使用するのは有利であることができ、そのレベルで本発明の制限に従って使用する場合には、それらは効果的なカルボン酸共界面活性剤であることが示された。
【0123】
【表7】

【0124】
実施例24〜28−アミノシランと配合したマレイン化ポリプロピレンエマルジョンの色相安定性
ガラス繊維にコーティングするためのサイズ剤配合物において、サイズ剤配合物はオルガノシラン及びポリマーエマルジョンを含み;ポリマーエマルジョンはサイズ剤の役割をする。この場合において、ポリマーエマルジョンがマレイン化ポリプロピレンを含む場合には、好ましいシランはアミノシラン、最も好ましくはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)である。特定の理論にとらわれるつもりはないが、シラン官能基は、ガラス表面とカップリングして、ガラスにカップリングされたオルガノシラン表面層を形成し、アミノ基はエマルジョン中のポリプロピレンのグラフト化マレイン酸基と相互作用し、最終的には化学反応してポリプロピレンと共有結合を形成する。乾燥後、サイジングフィルムは、アミノシランオリゴマーと化学反応したマレイン化ポリプロピレンを含む。アミノシランの存在は、熱老化後の官能化ポリプロピレンの色に劇的な影響を与える。官能化ポリオレフィンエマルジョンとアミノシランと結合されたエマルジョンを共に含むサイズ剤組成物において着色量を減少させることができれば非常に望ましいであろう。
【0125】
実施例24においては、脱イオン水80部、APTS 0.85部及びHuntsman Chemical Companyから入手したSurfonic TDA−3B 界面活性剤0.40部の混合物を合して、周囲温度で1時間老化させてから、実施例14のマレイン化ポリプロピレンエマルジョン20部を添加した。実施例14において製造したマレイン化ポリプロピレンエマルジョンは、メタ重亜硫酸ナトリウムを含むが、次亜リン酸は含まなかった。成分を合した後、配合物を4時間老化させてから、前記配合物1.15gを、水平面に置いた1.5インチ×3.0インチのスライドガラス上に付着させて、ガラス表面に均一にコーティングした。液体コーティングを周囲温度で数時間かけて乾燥させ、水平面の上でスライドガラス上に乾燥コーティングを70〜75mgのコーティング重量で付着させた。コーティングしたスライドガラスを183℃の強制空気循環炉中に入れ、35分間状態製造した。状態調整の最後において、スライド上の付着層の黄色度を、製造業者の仕様書に従って較正したHunter Ultra Scan分光光度計を用いて測定した。厚さのばらつきを補償するためにスライドガラス全表面にわたって3回の走査を行い、黄色度値、b*及びYIをコーティング全体について平均した。黄色度値を表VIIIに記載する。
【0126】
実施例25においては、マレイン化ポリプロピレンエマルジョンが0.10%のSMBの他に0.055%の次亜リン酸を含む実施例15のエマルジョンである配合物を、実施例24にならって作った。熱老化塗膜に関するこれらの黄色度値を、表VIIIに記載する。実施例26においては、SMBの他に0.18%の高レベルの次亜リン酸を含む実施例17のマレイン化ポリプロピレンエマルジョンを用いて実施例24及び25にならって同様な配合物を作った。熱老化後のこの配合物の黄色度測定値を表VIIIに記載する。
【0127】
実施例27においては、マレイン化ポリプロピレンエマルジョンが、より高いグラフトレベルを有するマレイン化ポリプロピレンから製造された実施例18のエマルジョンである配合物を、実施例24〜26に準じて製造した。エマルジョンは次亜リン酸を含んでいなかった。老化後のこの配合物の黄色度値も表VIIIに記載する。実施例28においては、0.10%のSMBと共に0.12%の次亜リン酸を含む以外は実施例27のエマルジョンと同様な実施例19のマレイン化ポリプロピレンエマルジョンを用いて、前記配合物と同様にして配合物を製造した。老化後のこのエマルジョンの黄色度値を表VIIIに記載する。
【0128】
いずれの場合にも、配合物中に次亜リン酸を含ませると、HPAを含まないエマルジョンに比較して色が著しく改善された。アミノシランを含むエマルジョン配合物中におけるHPAの安定化作用は、アミノシランを含まないエマルジョンポリマーの熱安定性が熱老化後に測定された前記例ほどは劇的ではない。しかし、SMBと共に次亜リン酸安定剤を混和することによる黄色度の低下は大きく、熱老化度に黄変する傾向がより少ない、サイズ処理ガラス繊維が得られるであろう。この場合には、次亜リン酸安定剤は乳化プロセスの間に混和した。HPA安定剤は水溶性であるため、乳化後に又は追加の成分と配合中に、必要なHPA安定剤の全て又は一部をエマルジョン組成物に添加することもできる。次亜リン酸添加剤を含む高分子量官能化ポリオレフィンエマルジョンを安定化する2つの方法は同等と考えられ、本発明の一部である。
【0129】
【表8】

【0130】
実施例29〜35−飽和直鎖カルボン酸を含むエマルジョンを含む更なる例
実施例29においては、[脱イオン水75部+γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)1.0部+Pegosperse 100界面活性剤(Lonza Chemical)0.6部]からなるアミノシラン混合物を製造した。シランの加水分解を可能にするために混合物を1時間老化させた後に、実施例14のエマルジョン25部を添加した。このエマルジョンは安定剤として次亜リン酸を含まなかった。合した混合物を周囲温度で4時間老化させた後に、水平面上で1.5インチ×3.0インチのスライドガラスに配合物0.80gをコーティングし且つ配合物を周囲温度で数時間乾燥させてガラス表面に均一な付着層を形成することによって、熱老化のための検体を製造した。コーティングされたこのスライドガラスを、183℃の強制空気循環炉中に入れ、30分間状態調整した。老化させた検体を、製造業者の取扱説明書に従って較正及び操作されるHunter Ultra Scan分光光度計を用いてb*及びYI値を測定することによって黄色度の強さに関して評価した。この老化サンプルの黄色度値を表IXに記載する。
【0131】
実施例30においては、マレイン化ポリプロピレンエマルジョンが色相安定剤として次亜リン酸を含む実施例17のエマルジョンである、アミノシランを含む配合物を、実施例29と同様にして製造し、試験した。実施例31においては、エマルジョンが次亜リン酸を含み且つまた、前記実施例17に含まれる不飽和のオレイン酸共界面活性剤に取って代わるカルボン酸共界面活性剤としてステアリン酸を含む実施例21のエマルジョンである配合物を、実施例29と同様にして製造し、試験した。老化後のこれらのコーティングのカラー値を表IXに記載する。
【0132】
実施例32においては、エマルジョンが実施例18のエマルジョンである配合物を、実施例29と同様にして製造した。このエマルジョンは、前記の3つのエマルジョンよりも15%高いマレイン化レベルを有するマレイン化ポリプロピレン材料から製造し、エマルジョン中には次亜リン酸は添加しなかった。実施例33においては、添加剤として次亜リン酸を含み且つ共界面活性剤として飽和直鎖カルボン酸を用いる以外は実施例17と同様なマレイン化ポリプロピレンから作った実施例22のエマルジョンを用いて、実施例32と同様にして配合物を作り、試験した。実施例34は、実施例32及び33と同様なマレイン化ポリプロピレン材料から生成した実施例23のエマルジョンを用いて、実施例32及び33と同様にして製造した。同様に、実施例35は、HPAを含み且つ共界面活性剤としてオレイン酸を使用する実施例19のエマルジョンを用いる以外は実施例32〜34と同様にして製造し、試験した。これらの配合エマルジョンのそれぞれについて測定した黄色度値を表IXに記載する。
【0133】
いずれの場合にも、エマルジョン配合物中への次亜リン酸の混和は、塗布フィルムの熱老化黄変を有意に減少させた。更に、飽和直鎖カルボン酸共界面活性剤の使用は、カルボン酸共界面活性剤として不飽和オレイン酸を含むエマルジョンに比較して更なる小さな改善をもたらした。
【0134】
【表9】

【0135】
本発明を、特にその好ましい実施態様に関して詳述したが、本発明の精神及び範囲内で変形及び変更が可能なことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のリン系オキソ酸部分を含む少なくとも1種の添加剤を含んでなる熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項2】
前記添加剤が少なくとも1種のリン系オキソ酸部分及び少なくとも1種のイオウ系オキソ酸部分を含む請求項1に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項3】
前記リン系オキソ酸部分が亜リン酸、次亜リン酸及びこれらの酸の中和塩基からなる群から選ばれる請求項1に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項4】
前記リン系オキソ酸部分が次亜リン酸である請求項3に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項5】
前記イオウ系オキソ酸部分が亜硫酸ナトリウム又はメタ重亜硫酸ナトリウムである請求項2に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項6】
前記リン系オキソ酸部分の量が、前記エマルジョン中の官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約0.1〜約3重量部の範囲である請求項1に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項7】
前記リン系オキソ酸部分の量が、前記エマルジョン中の官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約0.2〜約0.9重量部の範囲である請求項1に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項8】
前記イオウ系オキソ酸部分の量が、前記エマルジョン中の官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約0.1〜約3重量部の範囲である請求項2に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項9】
前記イオウ系オキソ酸部分の量が、前記エマルジョン中の官能化ポリオレフィン100重量部当たり、約0.2〜約0.6重量部の範囲である請求項2に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項10】
前記官能化ポリオレフィンの黄色度指数が50以下である請求項1に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項11】
前記官能性ポリオレフィンの黄色度指数が40未満である請求項10に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項12】
前記熱安定性官能化ポリオレフィンが6又はそれ以下のガードナーカラーを有する請求項10に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項13】
前記官能化ポリオレフィンが、マレイン化ポリプロピレンの重量に基づき、約2.0重量%未満のグラフト化無水マレイン酸を含むマレイン化ポリプロピレンであり且つ約11mg KOH/g未満の酸価を示す請求項1に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項14】
前記官能化ポリオレフィンエマルジョンが、少なくとも1種の官能化ポリオレフィン、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、少なくとも1種の中和用塩基、少なくとも1種のカルボン酸共界面活性剤及び水を含む請求項1に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項15】
前記官能化ポリオレフィンが、前記官能化ポリオレフィンの重量に基づき、グラフト化官能化剤が約0.5〜約2.5重量%の範囲のグラフト化レベルを有し;前記非イオン性界面活性剤が約4〜約10の範囲のHLBを有し;前記カルボン酸共界面活性剤が少なくとも1種の直鎖有機カルボン酸を、前記官能化ポリオレフィン100部当たり、16部又はそれ以下の量で含む請求項14に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項16】
前記官能化ポリオレフィンが、前記官能化ポリオレフィンの重量に基づき、グラフト官能化剤が約0.5〜約2.5重量%の範囲であるグラフト化レベルを有し;前記非イオン性界面活性剤が約4〜約10の範囲のHLBを有し;前記カルボン酸共界面活性剤が少なくとも1種の直鎖有機カルボン酸及び少なくとも1種の脂環式有機カルボン酸を含み;前記カルボン酸共界面活性剤の総量が、前記官能化ポリオレフィン100部当たり、16部超である請求項14に記載の安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項17】
前記カルボン酸共界面活性剤が少なくとも1種の脂環式有機カルボン酸を含む請求項14に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項18】
前記官能化ポリオレフィンが、前記官能化ポリオレフィンの重量に基づき、グラフト化官能化剤が約0.5〜約2.5重量%であるグラフト化レベルを有し;前記官能化ポリオレフィンエマルジョンが少なくとも5%の%透過率を有する熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項19】
前記ポリオレフィンが炭素数2〜約8の少なくとも1種のオレフィンモノマーを含む請求項15〜18のいずれか1項に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項20】
前記ポリオレフィンがポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリヘキセンからなる群から選ばれる請求項19に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項21】
前記官能化ポリオレフィンが官能化剤でグラフト化され;前記官能化剤が1個又はそれ以上のカルボン酸又は酸無水物基を含む任意の不飽和モノマーである請求項15〜18のいずれか1項に記載の安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項22】
前記官能化剤がカルボン酸及び酸無水物からなる群から選ばれる請求項21に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項23】
前記官能化剤がアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フルマル酸、ハイミック酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、無水マレイン酸及びハイミック酸無水物からなる群から選ばれる請求項22に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項24】
前記官能化剤が無水マレイン酸である請求項23に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項25】
前記官能化ポリオレフィンがマレイン化ポリプロピレンであり且つ前記マレイン化ポリプロピレンのグラフト化レベルが、前記マレイン化ポリプロピレンの重量に基づき、グラフト化マレイン化無水物約1〜約2.5重量%の範囲である請求項15〜18のいずれか1項に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項26】
前記官能化ポリオレフィンの酸価が約4〜約14の範囲である請求項15〜18のいずれか1項に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項27】
前記官能化ポリオレフィンの重量平均分子量が約30,000〜約90,000の範囲である請求項15〜18のいずれか1項に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項28】
前記官能化ポリオレフィンの190℃における溶融粘度が約20,000〜約150,000センチポアズの範囲である請求項15〜18のいずれか1項に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項29】
前記官能化ポリオレフィンのピーク融点が約135℃より高い請求項15〜18のいずれか1項に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項30】
前記官能化ポリオレフィンエマルジョンに含まれる官能化ポリオレフィンの量が、前記官能化ポリオレフィンエマルジョンの重量に基づき、約10〜約35重量%の範囲である請求項15〜18のいずれか1項に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項31】
前記非イオン性界面活性剤が約6〜約10の範囲のHLB値を有する請求項15〜18のいずれか1項に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項32】
前記非イオン性界面活性剤が約7〜約10の範囲のHLB値を有する請求項31に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項33】
前記非イオン性界面活性剤がエチレンオキシド又はアルキルフェノールに基づく少なくとも1種の化合物を含む請求項15〜18のいずれか1項に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項34】
前記非イオン性界面活性剤がC8〜C20合成直鎖アルコールのエトキシル化誘導体、エトキシル化C9〜C18合成分岐鎖アルコール、エトキシル化アルキルフェノール誘導体、脂肪族カルボン酸のモノエステル、種々の分子量のポリエチレンオキシドオリゴマー、ポリヒドロキシ材料の同様なモノ−又はジ−エステル及びそれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項33に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項35】
前記非イオン性界面活性剤がアルコール又はアルキルフェノールとエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はこれら2つの混合物との反応に基づく請求項34に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項36】
前記官能化ポリオレフィンエマルジョン中に存在する前記非イオン性界面活性剤の量が、官能化ポリオレフィン100部当たり、約6部〜約25部の範囲である請求項15〜18のいずれか1項に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項37】
前記カルボン酸共界面活性剤が直鎖有機カルボン酸及び脂環式有機カルボン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項15〜18のいずれか1項に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項38】
前記直鎖有機カルボン酸が直鎖C16〜C18脂肪酸からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項37に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項39】
前記脂環式有機カルボン酸が少なくとも1種のロジン酸である請求項37に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項40】
前記脂環式有機酸が少なくとも1種の水素化ロジン酸である請求項39に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項41】
前記カルボン酸共界面活性剤が官能化ポリオレフィン100部当たり約2〜約16部の範囲の量の少なくとも1種の直鎖有機カルボン酸である請求項15に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項42】
前記カルボン酸共界面活性剤が少なくとも1種の有機カルボン酸及び少なくとも1種の脂環式有機カルボン酸である請求項15〜18のいずれか1項に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項43】
前記官能化ポリオレフィンエマルジョン中のカルボン酸共界面活性剤の総量が、官能化ポリオレフィン100部当たり、8部より多い請求項15〜18のいずれか1項に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項44】
前記官能化ポリオレフィンエマルジョン中のカルボン酸共界面活性剤の総量が、官能化ポリオレフィン100部当たり、約8〜約25部の範囲である請求項43に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項45】
前記脂環式有機カルボン酸の量がカルボン酸共界面活性剤の総量の約1〜約99重量%の範囲である請求項42に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項46】
前記脂環式有機カルボン酸の量がカルボン酸共界面活性剤の総量の約25〜約75重量%の範囲である請求項45に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項47】
前記カルボン酸共界面活性剤の最大量が、官能化ポリオレフィン100部当たり、16部であり且つカルボン酸共界面活性剤の残りが脂環式カルボン酸である請求項16に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項48】
前記脂環式有機カルボン酸の量が、官能化ポリオレフィン100部当たり、約5〜25部の範囲である請求項17に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項49】
前記熱安定性官能化ポリオレフィンが酸化防止剤、螢光増白剤及び着色剤からなる群から選ばれた少なくとも1種を更に含む請求項1に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項50】
前記酸化防止剤が亜リン酸エステル又はチオジプロピオニエートエステルである請求項49に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョン。
【請求項51】
熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンを含んでなり、前記官能化ポリオレフィンエマルジョンが熱老化時に6又はそれ以下のガードナーカラーを有する組成物。
【請求項52】
官能化ポリオレフィンエマルジョンに、少なくとも1種のリン系オキソ酸部分を含む少なくとも1種の添加剤を、添加することを含んでなる熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンの製造方法。
【請求項53】
前記添加剤が少なくとも1種のリン系オキソ酸部分及び少なくとも1種のイオウ系オキソ酸部分を含む請求項52に記載の方法。
【請求項54】
少なくとも1種の官能化ポリオレフィン、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、少なくとも1種のカルボン酸共界面活性剤、少なくとも1種の中和用塩基、水、及び少なくとも1種のリン系オキソ酸部分を含む少なくとも1種の添加剤を接触させることを含んでなる、熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンの製造方法。
【請求項55】
請求項1に記載の熱安定性官能化ポリオレフィンエマルジョンを含んでなる製品。

【公表番号】特表2008−514798(P2008−514798A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534790(P2007−534790)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/035147
【国際公開番号】WO2006/039465
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】