説明

熱安定性炭酸脱水酵素及びその用途

本発明は、CO2抽出、例えば排ガス、バイオガス又は天然ガスからのCO2抽出における高温での熱安定性炭酸脱水酵素の使用に関する。本発明はまた、前記ポリヌクレオチドを含んで成る核酸コンストラクト、ベクター、及び宿主細胞に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2抽出、例えば煙道ガス、バイオガス又は天然ガスからのCO2抽出における高温での熱安定性炭酸脱水酵素の使用に関する。本発明はまた、二酸化炭素を抽出するためのバイオリアクターに関する。更に、本発明は、高温で炭酸脱水酵素活性を有する単離ポリペプチド及び当該ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド、並びに当該ポリペプチドの製剤に関する。本発明はまた、前記ポリヌクレオチドを含んで成る核酸コンストラクト、ベクター、及び宿主細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸脱水酵素(carbonic anhydrase)(CA, EC 4.2.1.1, これはcarbonate dehydrataseとも称される)は、二酸化炭素と炭酸水素との間の相互変換を触媒する。
【化1】

当該酵素は、1933年に牛の血中で発見され(Meldrum and Roughton, 1933, J. Physiol. 80: 113-142)、そしてこの発見以降あらゆる生命の領域で天然に広く分布していることが明らかとなっている。これらの酵素は、α、β及びγクラスと称される3つの異なるクラス、潜在的にはδクラスも含め4つのクラスに分類されている。これらのクラスは、独立した起源(細菌、古細菌、真核生物)から進化したものであり、そして触媒部位にある1つの亜鉛原子を除き、重要な配列又は構造上の同一性を有していない(概説については、Tripp et al., 2001 , J. Biol. Chem. 276: 48615-48618を参照のこと)。α−CAについては、11超のアイソザイムが哺乳類で同定されている。α−炭酸脱水酵素は全ての哺乳類組織で豊富に存在しており、この中でのCO2の除去を当該酵素が容易にしている。β−CAは藻類及び植物に広く存在しており、この中で、当該酵素は光合成のためのCO2吸収及び固定化に寄与している。CAのγクラスは最初に進化したものと考えられている。これまでに単離され、そしてキャラクタライズされた唯一のγ−CAは、古細菌メタノサルシナ・サーモフィラのTM−1株由来のものである(Alber and Ferry, 1994, Proc. Natl. Acad. Sd. USA 91 : 6909-6913)。しかしながら、多数のγ型炭酸脱水酵素がParisi et al., 2004, Plant MoI. Biol. 55: 193- 207で提唱されている。原核生物では、3つのCAクラス全てをコードする遺伝子が同定されている。但し、β及びγクラスが優勢である。多くの原核生物が複数のクラス由来の炭酸脱水酵素遺伝子又は同一クラスの複数の遺伝子を含んでいる(概説については、Smith and Ferry, 2000, FEMS Microbiol. Rev. 24: 335-366; Tripp et al., 2001. J. Biol. Chem. 276: 48615-48618を参照のこと)。
【0003】
二酸化炭素(CO2)排出は、地球温暖化現象の主要原因である。二酸化炭素は燃焼の際の副産物であり、これが業務上、経済上及び環境上の問題を作り出している。CO2排出は、大気中に放出される前にCO2を回収することで制御可能である。CO2排出を制御するための複数の化学的アプローチが存在している。しかしながら、これらのアプローチの多くは、エネルギー消費が多く、過程が遅く、そして環境上問題となり得る化合物や毒性のある化合物を使用するというような欠点を有する。
【0004】
非常に高速でCO2を炭酸水素へと変換するために炭酸脱水酵素の能力を用いた酵素ベースの溶液(ターンオーバーが最大105分子のCO2/秒)は、CO2の回収に関連する速度及び環境の問題に対処している。ガス、例えば燃焼ガス又は呼気からCO2を抽出するために炭酸脱水酵素を用いる技術的な解決方法は、WO 2006/089423, US 6,524,842, WO 2004/007058, WO 2004/028667, US 2004/0029257, US 7,132.090, WO 2005/114417, US 6,143,556, WO 2004/104160, US 2005/214936に記載されている。通常、これらの技術は、可溶性の又は固定化された炭酸脱水酵素を、気相又は液相のいずれかにあるであろうCO2と接触することで機能する。当該炭酸脱水酵素は、CO2を炭酸水素又は炭酸イオンに変換するのを触媒する。当該イオンは、藻類又は他の微生物の増殖を助け、その後の化学的プロセスのための活性化剤として炭酸水素/炭酸を提供するために利用され、又は炭酸塩として沈殿され、あるいは純粋なCO2へと逆に変換され、これはその後(例えば原油の二次回収、尿素の産生、食品及び飲料の製造、あるいはCO2をグリーンハウスに供給するために)使用し、(例えば閉じられた生命維持環境、例えば潜水艦又は宇宙船から)放出し、(例えばパイプラインを通じて輸送するために)圧縮し、あるいは(例えば地下層又は深海層において)圧縮された状態で保存することができる。
【0005】
哺乳類、植物及び原核生物の炭酸脱水酵素(α及びβクラスのCA)は、生理学的温度(37℃)以下の温度で通常機能する。しかしながら、それらが溶解される燃焼ガス又はその液体の温度は、CO2を回収するのに使用される炭酸脱水酵素にとって最適な温度を容易に超えることがある。従って、酵素ベースの溶液を用いる欠点のうちの1つは、CO2含有ガス/液体と炭酸脱水酵素とを接触させる前に大規模な冷却が必要とされることがあること、そして冷却がエネルギーを消費するプロセスであること、である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つの観点は、二酸化炭素含有媒体から二酸化炭素を抽出するための、メタノサルシナ・サーモフィラ (Methanosarcina thermophila) 株TM-1 (DSM 1825)由来のγクラスの炭酸脱水酵素を除く細菌又は古細菌又は真菌を起源とする熱安定性炭酸脱水酵素の使用、である。本発明で有用な熱安定性炭酸脱水酵素は、少なくとも15分間45℃超の温度で活性を維持するものである。当該熱安定性炭酸脱水酵素は、特に、燃焼によって、あるいは天然ガス又は合成ガス又はバイオガスから排出されるCO2を抽出することができるバイオリアクターで使用される。この熱安定性は、使用の間、又は休止期間、例えば暑い倉庫で保存の間に温度が45℃を超えるような環境に炭酸脱水酵素を曝露する場合にも有用である。
【0007】
別の観点において、本発明は、高温で炭酸脱水酵素を有する単離ポリペプチドであって:
a)配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも94%の同一性を、あるいは番号6のアミノ酸配列と少なくとも91%の同一性を、あるいは番号8のアミノ酸配列と少なくとも96%の同一性を、あるいは番号10のアミノ酸配列と少なくとも87%の同一性を、あるいは配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド;
b)中程度にストリンジェントな条件のもと、
i)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10及び配列番号12から成る群から選択される成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、
ii)成熟酵素をコードする、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の領域から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列、
iii)成熟酵素をコードする、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の領域から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列に含まれるcDNA配列、
iv)少なくとも100個の連続した配列から成る、(i)、(ii)又は(iii)の部分配列、あるいは
v)(i)、(ii)、(iii)又は(iv)の相補鎖、
とハイブリダイズする核酸配列がコードするポリペプチド;及び
c)炭酸脱水酵素活性を有する(a)又は(b)のフラグメント、
から成る群から選択される、単離ポリペプチド、を提供する。
【0008】
別の観点において、本発明は、本発明のポリペプチドを含んで成る組成物、及び本発明のポリペプチドを賦形剤と混合することを含んで成る前記組成物の製造方法を提供する。
【0009】
別の観点において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する単離ポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドを含んで成る核酸コンストラクト並びに当該核酸コンストラクトを含んで成る組換えベクター又は組換え宿主細胞、を提供する。
【0010】
別の観点において、本発明は、野生型の状態で前記ポリペプチドを産生することができる株を培養し、あるいは本発明のポリペプチドをコードする組換え発現ベクターを含んで成る組換え宿主細胞を、当該ポリペプチドの産生を誘導する条件下で培養し、そして当該ポリペプチドを回収することで本発明のポリペプチドを産生するための方法、を提供する。
【0011】
別の観点において、本発明は、二酸化炭素を抽出するのに適したバイオリアクターを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、液膜含有中空糸バイオリアクターの略図である。番号は以下の事項を表す:1.二酸化炭素(CO2)タンク;2.窒素(N2)タンク又はメタン(CH4)タンク;3.質量流量制御装置(MFC);4.膜液体貯蔵庫;5.液体ポンプ;6.圧力計;7.中空糸膜バイオリアクター(モジュール);8.廃棄物;9.フィードガス;10.洗浄済みガス(scrubbed gas);11.質量流量計(MFM);12.ガス採取バルブ;13.ガスクロマトグラフィー;14.フィードガス入り口;15.洗浄済みガス出口;16.液体入り口;17.液体出口。
【0013】
本発明の詳細な説明
本発明の1つの観点は、CO2含有媒体、例えばガス、液体又は多相混合物からCO2を抽出するための熱安定性炭酸脱水酵素の使用に関する。本発明は、特に、CO2含有媒体の温度が、ヒト又はウシ赤血球から単離した市販の炭酸脱水酵素、例えばCA−I又はCA−IIの至適温度を超える場合に有用である。
【0014】
本発明の別の観点は、ヒト又はウシ赤血球から単離した市販の炭酸脱水酵素、例えばCA−I又はCA−IIの至適温度を超える温度の気相又は溶液からCO2を抽出するのに適した熱安定性炭酸脱水酵素を提供することにある。本発明の熱安定性炭酸脱水酵素は、好ましくは細菌又は古細菌又は真菌起源のものであり、メタノサルシナ・サーモフィラ (Methanosarcina thermophila) 株TM-1 (DSM 1825)由来のγクラスの炭酸脱水酵素を除く異なるCAクラス;α、β、γ又はδのいずれかであってもよい。好ましい態様において、前記炭酸脱水酵素はα又はβクラスに属し、そしてより好ましくはそれらはαクラスに属する。
【0015】
定義
用語「古細菌起源」とは、古細菌由来の分子、例えばポリペプチド、核酸、DNA及びRNAを含む。修飾された又は突然変異した分子であって、親分子が本来古細菌に由来していたものを含むことも意図されている。前記の修飾された又は突然変異した分子の起源は尚も認識可能なものであるべきであり、好ましくはポリペプチド及び核酸配列は少なくとも親分子と少なくとも60%同一であり、より好ましくは親分子と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。
【0016】
用語「細菌起源」とは、細菌由来の分子、例えばポリペプチド、核酸、DNA及びRNAを含む。修飾された又は突然変異した分子であって、親分子が本来細菌に由来していたものを含むことも意図されている。前記の修飾された又は突然変異した分子の起源は尚も認識可能なものであるべきであり、好ましくはポリペプチド及び核酸配列は少なくとも親分子と少なくとも60%同一であり、より好ましくは親分子と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。
【0017】
用語「炭酸脱水酵素活性」又は「CA活性」は、本明細書では、二酸化炭素と炭酸水素との間の相互変換
【化2】

を触媒する、EC4.2.1.1活性として定義される。本発明の目的を達成するために、CA活性は実施例3又は4に記載の手順に従い決定される。CA活性の1ユニットはWilbur法で規定される[1U = (1/tc)-(1/tu) x 1000](式中、Uはユニットであり、そしてtc及びtuは、それぞれ触媒反応及び無触媒反応の時間(秒)である)(Wilbur, 1948, J. Biol. Chem. 176: 147-154)。本発明のポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸配列から成るポリペプチドのCA活性の少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より更に好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、そしてより最も好ましくは少なくとも100%を有する。
【0018】
用語「CO2含有媒体」は、少なくとも0.001%CO2、好ましくは少なくとも0.01%、より好ましくは少なくとも0.1%、より好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも5%、最も好ましくは10%、より更に好ましくは少なくとも20%、そしてより最も好ましくは少なくとも50%のCO2を含み得る任意の材料を説明するために使用される。好ましくは、CO2含有媒体は、45℃〜100℃、より好ましくは45℃〜80℃、より更に好ましくは45℃〜60℃、そして最も好ましくは45℃〜55℃の間の温度を有する。CO2含有媒体は、特に気相、液体又は多相混合物であるが、固体であってもよい。CO2含有気相は、例えば油田、ガス井、及びコンデンセート井から得られる天然ガス、炭素含有燃料(例えばメタン)をCO又はH2を含んで成るガス状生成物へとガス化することによって生じる合成ガス、あるいは燃焼過程由来、例えば炭素を燃料とする発電プラント、又はそのようなプラント、工業用炉、ストーブ、オーブン、若しくは暖炉の煙突、又は飛行機若しくは自動車の排ガスに由来する排気流である。CO2含有気相は、あるいは、哺乳類、生きた植物及び他のCO2を排出する種の呼吸過程、特に温室由来のものであってもよい。CO2含有気相は、好気性又は嫌気性発酵、例えば醸造、エタノールのような有用製品を製造するための発酵、又はバイオガスの製造に由来するオフガスであってもよい。このような発酵過程は、好熱性微生物によって促進される場合、高温で行うことができ、これは、例えばバイオガスの製造で見られる。CO2含有気相は、あるいは、使用又は貯蔵のためにCO2濃度の高い気相であってもよい。上述の気相は、ガスがある程度の流体(例えば水又は他の溶媒)及び/又は固形材料(例えば灰又は他の粒子)と共存している多相混合物として発生することもある。CO2含有液体は、測定可能な量のCO2を、好ましくは上述した量のうちの1つの量で含む任意の溶液又は流体、特に水溶液である。CO2含有液体は、CO2含有気体又は個体(例えば、ドライアイス又は可溶性の炭酸含有塩)を液体に通過させることで得られる。CO2含有流体は、(混入物、例えばドライクリーニング液を含む)CO2液、又は超臨界CO2、又はCO2溶媒液、例えばイオン液体に圧縮されることもある。
【0019】
用語「CO2抽出」とは、CO2含有媒体からCO2を減少させるものとして理解されるべきである。そのような抽出はある媒体から別の媒体へと、例えば気体から液体、液体から気体、気体から液体、そしてこの液体から気体、液体から液体、又は液体から固体へと実施してもよいが、抽出は、同一媒体内でのCO2から炭酸水素又は炭酸への変換であってもよい。CO2回収という用語も、ある媒体から別のものにCO2を抽出し、あるいはCO2を炭酸水素又は炭酸へと変換するのを示すために使用される。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「コード配列」とは、ヌクレオチド配列であって、そのタンパク質のアミノ酸配列を直接特定するものを指す。コード配列の境界は、オープンリーディングフレームによって通常決定され、これは通常ATG開始コドン又は別の開始コドン、例えばGTG及びTTGで開始する。コード配列は、DNA、cDNA、mRNA、又は組換えヌクレオチド配列であってもよい。
【0021】
用語「ポリペプチドの機能的フラグメント」とは、より長いポリペプチド、例えば成熟ポリペプチドに由来し、且つ親ポリペプチドのフラグメントを生成するようN末端領域又はC末端領域のいずれか、あるいはその両方の領域で切断されているポリペプチドを説明するために使用される。機能的なポリペプチドであるためには、当該フラグメントは、親ポリペプチドのCA活性の少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、そしてより最も好ましくは少なくとも100%を維持しなければならない。
【0022】
用語「真菌起源」には、真菌由来の分子、例えばポリペプチド、核酸、DNA及びRNAが含まれる。修飾された又は突然変異した分子であって、親分子が本来細菌に由来していたものを含むことも意図されている。前記の修飾された又は突然変異した分子の起源は尚も認識可能なものであるべきであり、好ましくはポリペプチド及び核酸配列は少なくとも親分子と少なくとも60%同一であり、より好ましくは親分子と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。
【0023】
用語「同一性」とは、2つのアミノ酸配列間又は2つの核酸配列間の関係を説明するために使用される。本発明の場合、2つのアミノ酸配列のアラインメントは、EMBOSSパッケージ(http://emboss.org)バージョン2.80のNeedleプログラムを用いて決定される。Needleプログラムは、Needleman and Wunsch, 1970, J. MoI. Biol. 48: 443-453に記載されているグローバルアラインメントアルゴリズムを実装している。使用した置換マトリックスはBLOSUM62であり、ギャップオープニングペナルティは10であり、そしてギャップエクステンションペナルティは0.5である。2つのアミノ酸配列の同一性の程度は、最も短い配列の長さで割った、2つの配列の完全一致の数として算出される。この結果は同一性(%)で表す。完全一致は、「第一配列」と「第二配列」とがオーバーラップの同一の位置に同一のアミノ酸を有している場合に生じる(以下のアラインメント例において、これは「|」で表される)。以下の純粋な仮説に基づくアラインメント例において、オーバーラップは配列1のアミノ酸配列「HTWGERNL」であるか、又は配列2のアミノ酸配列「HGWGEDANL」である。この例において、ギャップは「-」で示す。
【化3】

【0024】
2つのアミノ酸配列間の同一性の程度は、上述したものと同じアルゴリズム、ソフトウェアパッケージ及び設定を用いて決定される。
【0025】
用語「発現」とは、ポリペプチドの産生に関与する任意のステップを含んでおり、限定しないが、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、及び分泌を含む。
【0026】
用語「発現ベクター」は、本発明のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含んで成り、且つその発現を提供する追加のヌクレオチドと作用可能に連結している線形又は環状のDNA分子として本明細書で定義される。
【0027】
用語「熱安定性」(heat-stable又はthermostable)は、酵素、例えば炭酸脱水酵素に関連して本明細書で使用する場合、当該酵素が、高温、すなわち45℃超、好ましくは50℃超、より好ましくは55℃超、より好ましくは60℃超、さらにより好ましくは65℃超、最も好ましくは70℃超、最も好ましくは80℃超、最も好ましくは90℃超、そしてより最も好ましくは100℃超で機能的又は活性であることを指す。炭酸脱水酵素の温度安定性は、製剤方法によって、例えば酵素の固定化によってある程度増大させることができる。酵素は、高温で少なくとも15分、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも7日、さらにより好ましくは少なくとも14日、最も好ましくは少なくとも30日、より最も好ましくは少なくとも50日の間活性が維持されている場合熱安定性であるとみなされる。通常、活性のレベルは高温で所定の時間経過後に測定される。活性は、温度を上げる前の酵素活性と比較してもよい。好ましくは、当該活性は高温で所定の時間経過後に少なくとも40%であり、より好ましくは、当該活性は高温で所定の時間経過後に少なくとも50%であり、より好ましくは、当該活性は高温で所定の時間経過後に少なくとも60%であり、さらにより好ましくは、当該活性は高温で所定の時間経過後に少なくとも70%であり、最も好ましくは、当該活性は高温で所定の時間経過後に少なくとも80%であり、より最も好ましくは、当該活性は高温で所定の時間経過後に少なくとも90%であり、そして絶対的に最も好ましくは、当該活性は高温で所定の時間経過後に少なくとも同一又は未変化である。
【0028】
用語「宿主細胞」は、本明細書で使用する場合、本発明のポリヌクレオチドを含んで成る核酸コンストラクトによる形質転換、トランスフェクション、形質導入等によって影響を受けやすい任意の細胞の型を含む。
【0029】
本明細書で使用する用語「単離ポリペプチド」は、SDS−PAGEで決定する場合、少なくとも20%純粋、好ましくは少なくとも40%純粋、より好ましくは少なくとも60%純粋、さらにより好ましくは少なくとも80%純粋、最も好ましくは少なくとも90%純粋、そしてより最も好ましくは少なくとも95%純粋であるポリペプチドを指す。
【0030】
用語「作用可能に連結」とは、本明細書では、制御配列がポリペプチドのコード配列の発現に指示を与えるように、当該制御配列がポリヌクレオチド配列のコード配列に対し適切な位置に据えられている配置を表す。
【0031】
用語「成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の領域」は、本明細書で使用する場合、成熟ポリペプチドの最初のアミノ酸をコードするトリプレットから、成熟ポリペプチドの最後のアミノ酸をコードする最後のトリプレットまでを合計したヌクレオチド配列の領域を意味する。
【0032】
用語「ポリペプチドフラグメント」は、本明細書では、1又は複数のアミノ酸が、本発明の配列又はその相同配列のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端から欠失している、CA活性を有するポリペプチドとして定義される。
【0033】
用語「分泌ポリペプチド」とは、本明細書で使用する場合、細胞内で発現した後に、周囲の細胞外培地に輸送されて放出されているか、あるいは当該ポリペプチドの少なくとも一部が周囲の細胞外培地に曝露されるように細胞膜内に付随/包埋されているポリペプチドとして理解されるべきである。
【0034】
用語「実質的に純粋なポリペプチド」とは、本明細書では、自然に付随している他のポリペプチド材料が重量当たり最大10%、好ましくは最大8%、より好ましくは最大6%、より好ましくは最大5%、より好ましくは最大4%、最大3%、より更に好ましくは最大2%、最も好ましくは最大1%、そしてより最も好ましくは最大0.5%含まれているポリペプチド調製物を表す。従って、好ましくは、実質的に純粋なポリペプチドは、当該調製物中に存在する合計のポリペプチド材料の重量当たり少なくとも92%純粋、好ましくは少なくとも94%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、より好ましくは少なくとも96%純粋、より好ましくは少なくとも96%純粋、より好ましくは少なくとも97%純粋、より好ましくは少なくとも98%純粋、より更好ましくは少なくとも99%純粋、最も好ましくは少なくとも99.5%純粋、そしてより最も好ましくは100%純粋である。本発明のポリペプチドは、好ましくは実質的に純粋な状態にある。特に、前記ポリペプチドが「本質的に純粋な状態」にあること、すなわち、前記ポリペプチド調製物が、自然に付随するほかのポリペプチド材料を本質的に含まないことが好ましい。これは、例えば前記ポリペプチドを周知の組換え法又は古典的な精製法によって調製することで達成できる。
【0035】
従って、用語「実質的に純粋なポリペプチド」とは、「単離ポリペプチド」及び「単離状態のポリペプチド」と同義である。
【0036】
用語「合成ガス」(Syngas又はsynthesis gas)は、炭素含有燃料(例えばメタン又は天然ガス)を、発熱量を有する気体生成物へとガス化することによって生成した、様々な量の一酸化炭素及び水素を含むガス混合物を説明するために使用される。CO2は合成ガス反応中で生成し、そして発熱量を増大させるために除去されなければならない。
【0037】
用語「好熱性」とは、生物との関連で、比較的高温、すなわち45℃超で繁殖する生物を説明するものである。超好熱性の生物は、極めて高温の環境、すなわち、約60℃よりも高い環境で繁殖し、但し、至適温度は80℃超である。
【0038】
熱安定性炭酸脱水酵素の使用
現在、2つの熱安定性炭酸脱水酵素、すなわち、最大75℃まで熱安定であると報告されているメタノバクテリウム・サーモアウトトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)ΔH由来のβクラスのAC(Cab)(Smith and Ferry, 1999, J. Bacteriol. 181 : 6247-6253)及びメタノサルシナ・サーモフィラのTM−1由来のγクラスの炭酸脱水酵素(Cam)が知られている。Camは1994年に最初に単離され(Alber and Ferry, 1994, Proc. Natl. Acad Set. USA 91 : 6909-1913)、そして1996年には、15分間55℃で加熱して安定であることが証明された(Alber and Ferry, 1996, J. Bacteriol. 178: 3270-3274)。Camは、γクラスで唯一単離された酵素であり、その発見以来多くのキャラクタリゼーション研究に使用されている。しかしながら、これらの酵素の熱安定性をなんらかの技術的用途に活用することが示唆されたことはない。US2004/025913は、CO2可溶化及び濃縮過程におけるCam並びに熱安定性でないヒトCAのアイソフォームIVの使用を開示しているがCamがCA−IVより好ましいことは何ら示唆されていない。
【0039】
本発明者が知る限り、天然の生物から単離されたαクラスの熱安定性炭酸脱水酵素(天然の熱安定性α炭酸脱水酵素)は今日まで記載されていない。US 2006/0257990は、ある程度の熱安定性を有するヒト炭酸脱水酵素IIの変異体を開示している。
【0040】
本発明の1つの観点は、CO2含有媒体、例えばガス、液体又は多相混合物からの二酸化炭素の抽出における熱安定性炭酸脱水酵素の技術的応用である。好ましくは、CO2は、最初の媒体から分離した別の媒体、ガス又は液体に抽出されるが、この抽出は、同一媒体内でのCO2から炭酸水素への変換であってもよい。本発明は、CO2含有媒体が、約37℃の至適温度を有する市販の炭酸脱水酵素、例えばヒト又はウシの赤血球から単離されたCA−I又はCA−IIにとって最適な温度を超える点で特に有用である。
【0041】
本発明の1つの態様において、CO2の抽出に利用されるべき熱安定性炭酸脱水酵素は、メタノサルシナ・サーモフィラTM-1 (DSM 1825)由来のγクラスの炭酸脱水酵素を除く細菌又は古細菌又は真菌起源のものである。別の態様において、CO2の抽出に利用されるべき熱安定性炭酸脱水酵素は、異なるCAクラス;α、又はβ、又はγのいずれかに由来してもよく、好ましくはこれらはα又はβクラスに属する。
【0042】
別の態様において、CO2の抽出に利用されるべき熱安定性炭酸脱水酵素はαクラスに属し、特に、天然のαクラス炭酸脱水酵素が好ましい。本発明における使用にとって好ましい他の熱安定性炭酸脱水酵素は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14及び配列番号16から成る群から選択される炭酸脱水酵素あるいはバチルス・クラウシイKSM−K16由来の炭酸脱水酵素(NCBI受入番号Q5WD44)又はバチルス・ハロデュランス由来の炭酸脱水酵素(NCBI受入番号Q9KFW1)と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である酵素である。αクラスの炭酸脱水酵素は通常モノマーであり、スルホンアミドによって阻害され、そしてエステラーゼ活性を有する(ヒトCA−IIIは、このアイソマーがスルホンアミドに対し感受性がなく、且つp−ニトロフェニルアセテートを加水分解しないため例外である)。更に、α炭酸脱水酵素は、それらの共通配列モチーフ:S-E-[HN]-x-[LIVM]-x(4)-[FYH]- x(2)-E-[LIVMGA]-H-[LIVMFA](2)によって同定される。α炭酸脱水酵素は通常分泌され、これは、工業規模での発現が必要とされる場合に有利である。更に、αクラスの炭酸脱水酵素は、1秒当たり最大105分子という最高のターンオーバーを有するCAクラスである。高い活性を有する酵素は通常有利であり、これは、必要とされる酵素の量を減少させてもよいためであるか、あるいは、あまり活性でない酵素よりも工程がより速まるためである。
【0043】
別の態様において、CO2の抽出に利用されるべき熱安定性炭酸脱水酵素はβクラスに属する。本発明で使用するのに好ましい熱安定性炭酸脱水酵素は、メタノバクテリウム・サーモアウトトロフィカムΔH由来のβ炭酸脱水酵素(NCBI受入番号Q50565)、バチルス・クラウシイKSM−K16由来のβ炭酸脱水酵素(NCBI受入番号YP_176370/Q5WE01)、バチルス・ハロデュランス由来のβ炭酸脱水酵素(NCBI受入番号NP_244152/Q9K7S3)、及びアスペルギルス・フミガツス由来のβ炭酸脱水酵素(NCBI受入番号Q4WPJ0、A4DA32、Q4WQ18又はA4DA31)から成る群から選択される炭酸脱水酵素と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である酵素である。βクラスの炭酸脱水酵素はダイマー、テトラマー、ヘキサマー及びオクタマーとして存在している。通常、β炭酸脱水酵素は細胞内タンパク質であり、それらのターンオーバーは1秒当たり約2×104分子である。幾つかのβ炭酸脱水酵素は、Expasy homepageにおいてprosite documentation number PDOC00586のもと開示されている(www.expasy.org/cgi- bin/prosite-search-ac?PDOC00586)、以下の共通配列モチーフ:C - [SA] - D - S - R - [LIVM] - x - [AP]によって同定することもできる。
【0044】
他の態様において、CO2の抽出に利用されるべき熱安定性炭酸脱水酵素は、メタノサルシナ・サーモフィラのTM−1株由来の炭酸脱水酵素(DSM1825)(Cam)(Alber and Ferry, 1994, Proc. Natl. Acad. Sd. USA 91 : 6909-6913)以外のγクラスの炭酸脱水酵素に属する。γクラスの炭酸脱水酵素は、三量体であり、スルホンアミドに対し1000〜10000倍感受性がなく、そしてエステラーゼ活性を持たない。幾つかのγ炭酸脱水酵素は分泌されることが知られており、それらのターンオーバーは、1秒当たり最大7×104分子のCO2である。通常、γクラスの炭酸脱水酵素は非常に多様なタンパク質群であり、左巻きのパラレルなβへリックス(LβH)の折り畳みを特徴とする配列モチーフを共有している(Parisi et a/., 2000, Molecular Phylogenetics and Evolution 12: 323-334)。
【0045】
特定の炭酸脱水酵素において、特に熱安定性炭酸脱水酵素は、CO2排気流、例えば、発電プラントにおける炭素ベースの又は炭化水素ベースの燃焼を燃料とする発電プラント、又はそのようなプラント、工業用炉、ストーブ、オーブン、若しくは暖炉の煙突、又は飛行機若しくは自動車の排ガスに由来する排気流からの二酸化炭素抽出に使用されうる。炭酸脱水酵素、特に熱安定性炭酸脱水酵素は、工業ガス、例えばアセチレン(C22)、一酸化炭素(CO)、塩素(Cl2)、水素(H2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、プロパン(C38)、二酸化硫黄(SO2)、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、及び酸素(O2)の調製においてCO2を除去するのに使用してもよい。炭酸脱水酵素は、天然ガスの加工の間、未処理の天然ガスからCO2を除去するのにも使用することができる。未処理の天然ガスからのCO2の除去は、天然ガス中のメタン(CH4)含量を増大させて、これにより1立方メートル当たりの熱量単位を増加させる役割を果たすであろう。天然ガスは、常用の方法により地質にある天然ガス貯留層から得られる場合、3〜10%のCO2を含んでいる。炭酸脱水酵素は、CO2を実質的に含まないように、例えば、例えばCO2含量が1%未満、好ましくは0.5%、0.2%、0.05%未満、最も好ましくは0.02%未満となるように天然ガスを浄化するのに使用することもできる。天然ガス中のメタン濃縮に類似して、炭酸脱水酵素は、バイオガス中のメタンが含量を増大させることにも使用できる。バイオガスは、常にかなりのCO2を含んでいるが、これは発酵プロセスで使用する細菌がメタン(60〜70%)及びCO2(30〜40%)を産生するためである。バイオガスの製造は、中温性又は好熱性の微生物を実施されることがある。中温性の菌株のための処理温度は、約25℃〜40℃、好ましくは30℃〜35℃である。この温度範囲内で、炭酸脱水酵素がウシ又はヒト起源のものであってもよいのは、当該酵素の熱安定性に対する要件がないためである。しかしながら、より高温に耐える炭酸脱水酵素は、中温性の菌株を利用するバイオガスプロセスに関連した実際の用途及び保存において優れたロバスト性を提供するであろう。熱安定性菌株は、高温、例えば40℃〜80℃、好ましくは50℃〜70℃、より更に好ましくは55℃〜60℃での発酵を可能にする。そのようなプロセスにおいて、熱安定性炭酸脱水酵素は、メタンからCO2を除去するのに特に有用である。本発明は、バイオガス中の二酸化炭素含量を減少させるための炭酸脱水酵素の使用を提供するものであり、好ましくは、CO2含量は、少なくともこれが25%未満、より好ましくは20%、10%、15%、5%、2%、1%、0.5%未満を構成するよう、最も好ましくは0.1%未満を構成するよう減少される。好ましい態様において、炭酸脱水酵素は熱安定性である。更に、炭酸脱水酵素は、炭素含有燃料(例えばメタン又は天然ガス)をガス化することで生じたCO2を除去し、合成ガスのCO、H2含量を増大させるすることで、合成ガスの製造にも利用可能である。合成ガスの製造が高温で行われる場合、熱安定性炭酸脱水酵素を使用することは1つの利点である。本発明は、合成ガス製造において二酸化炭素含量を減少させるための炭酸脱水酵素の使用を提供する。好ましくは、CO2含量は、少なくともこれが25%未満、より好ましくは20%、10%、15%、5%、2%、1%、0.5%未満を構成するよう、最も好ましくは0.1%未満を構成するよう減少される。好ましい態様において、炭酸脱水酵素は熱安定性である。好ましくは、上述のCO2抽出に使用される炭酸脱水酵素は、45℃超、好ましくは50℃超、より好ましくは55℃超、より好ましくは60℃超、さらにより好ましくは65℃超、最も好ましくは70℃超、最も好ましくは80℃超、最も好ましくは90℃超、そしてより最も好ましくは100℃超の温度で、少なくとも15分、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも7日、さらにより好ましくは少なくとも14日、最も好ましくは少なくとも30日、より最も好ましくは少なくとも50日の間高温で活性を維持する。炭酸脱水酵素の温度安定性は、製剤方法によって、例えば酵素の固定化によってある程度増大させることができる。
【0046】
本発明の1つの観点において、CO2含有媒体からのCO2抽出は、酵素ベースのバイオリアクターで実施される。二酸化炭素含有媒体は、バイオリアクターで処理される前に、酵素反応を妨害し、又は他の方法でバイオリアクターの機能を妨げ得る夾雑物、例えば出口又は膜を固まらせることで妨げ得る夾雑物から分離されるよう精製してもよい。燃焼過程から排出された気体/多相混合物、例えば煙道ガス又は排ガスは、バイオリアクター内を通過する前に、好ましくは灰、粒子、NOx及び/又はSO2が除かれる。異なる地域に由来する天然ガスは異なる組成及び分離要件を有することがある。好ましくは、油、コンデンセート、水及び液体天然ガスが天然ガス中に存在している場合、酵素ベースのバイリアクター中でのCO2抽出前に除去される。天然ガス由来のCO2は、硫黄除去と同一のプロセスで抽出してもよく、あるいは、完全に異なるプロセスで抽出してもよい。この時点の天然ガスが本発明の炭酸脱水酵素の至適温度を超えている場合、ある程度冷却が必要なこともある。好ましくは、反応温度は、45℃〜100℃、より好ましくは45℃〜80℃、より更に好ましくは45℃〜60℃、そして最も好ましくは45℃〜55℃である。しかしながら、本発明の酵素の熱安定性に起因して、冷却の必要性は、ヒト又はウシ赤血球から単離したCA−I又はCA−IIがバイオリアクターに利用される場合、少なくとも5℃未満である。
【0047】
本発明で有用なバイオリアクターの1つのタイプは、混合ガス流(例えば、酸素、窒素及び二酸化炭素を含むもの)が前記酵素、すなわち炭酸脱水酵素と気液界面で接触して、ガス中に含まれる二酸化炭素が炭酸水素又は炭酸へと触媒されるプロセスをベースとしている。かかるバイオリアクター内の気液界面は、例えば酵素ベースの中空糸膜バイオリアクター(HFMB)によって提供することができる。HFMBの一例は、液膜を含む中空糸(HFCLM)であり、これはMajumdar et al., 1988, AIChE 1135-1145に記載されている。CLMは、コアの液体を2つのポリマー膜間に挟むことで作られる。コアの液体は、好ましくは液膜のリザーバーを通じて繰り返し再供給される。バイオリアクターに有用な酵素ベースのCLM浸透装置の別のタイプは、Cowan et al., 2003, Ann. NY Acad. ScL 984: 453-469に記載されている(本明細書で援用する)。要約すると、この文献のバイオリアクターは、炭酸脱水酵素を含むリン酸緩衝液を、2つの疎水性微多孔ポリプロピレン膜で挟むことにより構築される液膜を含んで成る(例えば、Celgard PP-2400)。CA含量は、好ましくは100〜166マイクロMであり、緩衝液は50〜75mMのリン酸塩濃度を有しており、6.4〜8.0のpHを有する。CA及び緩衝液の好ましい濃度は、フィードCO2濃度の関数である。至適pHは、CO2濃度とバッファー強度との関数である。水相の厚さは好ましくは330マイクロmであるが、環状のスペーサーを使用することで70マイクロm〜670マイクロmの間で変化することもある。好ましい膜の厚さは、第一に他の気体、例えばNO2又はO2に対する所望の選択性によって、第二に所望の性能によって決定される。液膜の液量は、リザーバーから静水を添加することで維持され、これにより一定の液膜厚さが確保され、そしてポリマー膜と金属支持体との分離が防止される。CLMの一方の面(フィード膜)は、CO2含有フィードガス流と接触し、そしてCLMの他方の面(スイープ膜)は、CO2を含まないスイープガス流、例えばアルゴンと接触する。このバイオリアクター内で、フィードガス流由来のCO2は、液相中で炭酸水素へと変換され、そしてCO2としてスイープガス流に戻され、ここでは圧縮CO2の形態で保存することができる。全プロセスが炭酸脱水酵素で触媒される。上述のCLM浸透装置は、フィードガス流からCO2を回収して0.1%CO2まで低下させることができる。別のCLM浸透装置は、疎水性微多孔ポリプロピレン膜の代わりに中空糸膜マット、例えばCelgard X40-200又はX30-240から構成される。同一のCA濃度、緩衝液濃度及びpHを中空糸CLMに使用することができる。この中空糸浸透装置は、異なるデザインにアレンジすることができる。あるデザインにおいては、浸透装置は熱交換器に酷似したものにアレンジされ、そして多数の組み合わせの中空フィードファイバー及び中空スイープファイバーとを直角に配置したものから成り、一方、分散媒はフィードファイバー及びスイープファイバーの束の間の空間を埋める(例えば、Majumdar et at., 1988, AIChE 1135-1145を参照のこと)。別のデザインはらせん状の中空糸デザインであり、これは並流又は逆流のいずれかで作動することができる。WO 04/104160はこれらや他の中空糸浸透装置のデザインをより詳細に記載しており、特に、図1〜14を参照のこと(本明細書で援用する)。WO 04/104160は、膜液体としてのリン酸緩衝液の使用を記載している。炭酸脱水酵素が膜液体に添加される場合、これはリン酸緩衝液か又は1M NaHCO3のいずれかに溶解された。
【0048】
本発明者は、膜液体として炭酸水素緩衝液を用いる場合に、当該緩衝液のpHが、排ガスから抽出することができるCO2の量にとって重要であることを見出した。炭酸水素溶液のpHの増大は、二酸化炭素を炭酸水素へと水和させる速度を増大させる。本発明の好ましい態様において、膜液体は炭酸水素緩衝液、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、又は別の適当な炭酸水素塩である。炭酸水素緩衝液のpHは、好ましくは8.5超、より好ましくは9.0超、よりさらに好ましくは9.5超、よりさらに好ましくは9.95超、そして最も好ましくは10.5又は11超である。緩衝液のpHの増大により、フィードガスからのCO2の抽出に必要な炭酸脱水酵素の量が減少する。好ましくは、炭酸脱水酵素の量は、膜液体1L当たり酵素2g未満であり、より好ましくは1.5g/L未満、より更に好ましくは1g/L未満、より更に好ましくは0.6g/L未満、より更に好ましくは0.3g/L未満、より更に好ましくは0.1g/L未満であり、そして最も好ましくは0.01g/L未満、より最も好ましくは0.001g/L未満である。
【0049】
本発明において有用であろうバイオリアクターの別のタイプは、気相又は多相混合物が、気相中のCO2を、炭酸脱水酵素によって炭酸水素へと変換する液相に吸収させる条件のもとで液相と接触されるプロセスをベースにしている。好ましくは、反応温度は、45℃〜100℃、より好ましくは45℃〜80℃、より更に好ましくは45℃〜60℃、そして最も好ましくは45℃〜55℃である。炭酸水素が濃縮された液体は、連続流によってバイオリアクターから除去され、これにより、CO2と炭酸水素との間の平衡がCO2の連続的な変換へとシフトすることが保証される。液相内への気相の溶解は、気体と液体との間の表面接触面積に依存する。大きな接触面積は、液体とCO2含有ガスを充填カラムに通過させるか、あるいは、CO2含有ガスを液体を通過させて泡立て、高圧を反応チャンバー内で発生させることのいずれかによって達成することができる。これらのタイプのリアクターは、それぞれ米国特許第6,523,843号及びWO2004/007058に記載されている;両文献はそれらの全体が本明細書で援用される。要約すると、充填カラムは、パッキング、例えばラシヒリング、バールサドル(Berl saddle)、インタロックスメタル(Intalox metal)、インタロックスサドル(Intalox saddle)、パールリング(Pall ring)から構成することができる。充填材料は、ポリマー、例えばナイロン、ポリスチレン、ポリエチレン、セラミック、例えばシリカ、又は金属、例えばアルミニウムであってもよい。両リアクターのタイプにおいて、液体は連続して交換され、そのため炭酸脱水酵素は種々の手段によりリアクター内に保持されなければならない。充填カラムにおいて、炭酸脱水酵素は充填材料上に固定することができる(CAを固定化する方法については、例えばWO2005/114417を参照のこと)。「バブリング」リアクターにおいて、炭酸脱水酵素は、多孔性物質、例えば不溶性ゲル粒子、例えばシリカ、アルギン酸塩、アルギン酸キトサン、アルギン酸塩/カルボキシメチルセルロース内に取り込むことができ、あるいは、炭酸脱水酵素は(充填カラムで見られるような)液体中で懸濁された固体パッキング上に固定化することができ、あるいは、炭酸脱水酵素は、アルブミン又はPEGネットワーク中で化学的に結合させることもできる。リアクターが作動中の場合、水性又は有機性の溶媒が一方の端、好ましくは頂上から進入し、そして他方の末端、好ましくは底へと流れ、そしてCO2含有ガス流(フィードガス)が一方の端、好ましくは溶媒の反対側(底)に進入し、そしてガスは液体を通過し、そして反対端(好ましくはリアクターの頂上)にあるガス出口から出る。リアクターから出る溶媒/液体は炭酸水素が濃縮されており、そして出ガスはフィードガスと比較してCO2含量が減少している。炭酸水素含有溶液は、例えば、純粋なCO2又は炭酸塩沈殿物、例えばCaCOを生成させるために次の反応で処理してもよい。出ガスは、次のラウンドのCO2抽出にかけてもよい。本発明の好ましい態様において、リアクターの液体は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、又は別の適当な炭酸水素塩等の炭酸水素緩衝液である。炭酸水素緩衝液のpHは、好ましくは8.5超、より好ましくは9.0超、よりさらに好ましくは9.5超、よりさらに好ましくは9.95超、そして最も好ましくは10.5又は11超である。
【0050】
本発明において有用なバイオリアクターの第三のタイプは、本明細書で援用する米国特許7,132,090号に記載されている。要約すると、気体のCO2、又は多相混合物由来の気体のCO2は、気体のCO2をガス拡散膜に通過させることで回収液体中に分散される。CO2は(圧力の力を借りた)分散によって液体中に入ってもよく、あるいは、その移動は、拡散膜上に固定された炭酸脱水酵素の力を借りてもよく、これは例えば炭酸脱水酵素含有ゲル又はポリマーマトリックスを拡散膜に架橋させるか、あるいは付着させることで行ってもよい。炭酸脱水酵素は溶解したCO2と特異的に反応するため、溶解したCO2と水との反応を促進して炭酸を形成させ、これによりCO2を迅速に除去し、そしてフィードガス流に由来するガスからのCO2を他の方法よりも多く水に溶解させることで気体のCO2を液体に移動させることが好ましい。好ましくは、ガス拡散膜は、気体のCO2が大量に膜を通過することが容易になるよう高表面積を有する。適当な膜には、ポリプロプレンガス交換膜、ePTFE(GORE−TEX)、ナフィオン膜、ゼオライト、キトサン、ポリビニルピロリンジン(polyvinylpyrollindine)、セルロースアセテート、及び固定化液膜がある。ガス拡散膜から出てくるCO2/炭酸水素に富む液体、炭酸脱水酵素を含むマトリックスを通過させられる。好ましくは、当該マトリックスは、拡散膜を含むチャンバーとは分離されたチャンバー内に含まれる。適当なマトリックスの例には、ビーズ、繊維、ファイバー、膜、粒子、多孔性表面、ロッド及びチューブがある。適当なマトリックスの具体例には、アルミナ、ベントナイト、バイオポリマー、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムゲル、カーボン、セルロース、セラミック支持体、クレー、コラーゲン、ガラス、ハイドロキシアパタイト、イオン交換樹脂、カオリン、ナイロン、フェノール性ポリマー、ポリアミノスチレン、ポリアクリルアミド、ポリプロピレン、ポリマーハイドロゲル(polymerhydrogel)、セファデックス、セファロース、シリカゲル、及びTEFLON(登録商標)ブランドのPTFEがある。炭酸脱水酵素はマトリックスに固定されていてもよく、あるいはこの中に取り込まれていてもよい。一旦CO2が液体内に入ると、炭酸、炭酸水素、及び炭酸イオンの間の平衡が確立され、このプロセスは炭酸脱水酵素によって触媒される。続いて、塩基(例えばOH-イオン)を添加して平衡を移動させ、炭酸イオンの形成に有利に働くようにすることもできる。最終的なステップにおいて、無機イオンが溶液に添加されて炭酸塩が沈殿する。あるいは、塩基は添加されず、これにより主に炭酸水素イオンが発生し、これをイオン交換樹脂又は膜で濃縮することもできる。炭酸水素は、続いて、ナトリウム、マグネシウム又はカルシウムイオンを用いて沈殿させることができる。本発明の好ましい態様において、回収する液体は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、又は別の適当な炭酸水素塩等の炭酸水素緩衝液である。炭酸水素緩衝液のpHは、好ましくは8.5超、より好ましくは9.0超、よりさらに好ましくは9.5超、よりさらに好ましくは9.95超、そして最も好ましくは10.5又は11超である。本発明の好ましい態様において、バイオリアクターは定常状態で作動し、これにより、炭酸脱水酵素によって提供されるCO2取り込み速度の向上は、バイオリアクターの効率の全体的な向上をもたらす。
【0051】
本発明の熱安定性炭酸脱水酵素を含む上述した酵素ベースのバイオリアクターは、より特殊な用途、例えばパイロットのコックピット、潜水艦、水中で用いる装置、安全装置及び消防設備並びに宇宙飛行士の宇宙服において、呼気が毒性のあるCO2レベルとならないように維持するために利用される。他の用途は、限定空間からCO2を除去すること、醸造所及び発酵を行っている密閉された建物の中から、そしてCO2に敏感な環境、例えば美術館及び図書館から有害なCO2レベルを減少させること、CO2が本や芸術品に対し酸による損傷を与えないようにすることである。
【0052】
炭酸脱水酵素は、独立したCO2抽出触媒として使用することもでき、あるいはこれを代替的に常用のCO2抽出技術、例えばアミンベースの溶媒又はアンモニア水又は物理溶媒、例えばSelexol(登録商標)(Union Carbide)又はポリエチレングリコールエーテルを介した化学吸着と組み合わせてもよい。本発明者は、炭酸脱水酵素をMEA溶液に添加することで、スクラビングの効率が有意に増大することを証明した。本発明の別の態様において、炭酸脱水酵素、好ましくは熱安定性炭酸脱水酵素は、二酸化炭素吸収化合物、例えばアミンベースの化合物、例えば水溶性アルカノールアミン、例えばモノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)、2−アミノ−2メチル−1−プロパノール(AMP)、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(AHPD)又は他の第一級、第二級、第三級アミン若しくはヒンダードアミンをベースとする溶媒、あるいはグリシン及びタウリンの水溶性塩又は他の液体吸収剤、例えば水溶性NaOH、KOH、LiOH、炭酸又は炭酸水素溶液であって異なるイオン強度のもの、あるいは水溶性電解質溶液及びプロモーター、例えばピペラジン、あるいはポリエチレングリコールエーテル、あるいはそれらの混合物又は類似体又はそれらの混合物と組み合わされる。この組合せは、上述のバイオリアクター内で利用してもよく、あるいはより一般的な技術をベースとした既存のCO2スクラビング設備に利用してもよい。常用のバイオリアクターにおいて、アルカノールアミン濃度は、典型的に15〜30重量%である。常用のプロセスにおいて、特許で保護された阻害剤、例えばFLuor Daniel's EconAmineを添加することで、アミン濃度を増大させつつ腐食の危険性を軽減することができる。上述したバイオリアクターにおいて、アルカノールアミンの濃度は好ましくは15%(V/V)未満、より好ましくは12%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.2%未満、最も好ましくは0.1%(V/V)未満である。
【0053】
本発明の別の観点は、バイオガスの製法であって、バイオガスを上述のとおりバイオリアクター内を通過させる代わりに、CO2抽出がバイオガスの発酵ブロス中で直接実施される製法に関する。炭酸脱水酵素を嫌気性ブロスに対し添加することで、気相由来のCO2をより多く、メタン生成古細菌によるメタン産生のための基質である炭酸水素へと変換することができる。メタノサルシナ・サーモフィラのTM−1株については、炭酸水素がメタン産生にとって限定要因であろうことが証明されており、例えば、炭酸水素の少ない溶液(0.6mM)中で生育したM.サーモフィラのTM−1株の培養液は、炭酸水素量が10倍高い培養液(6mM)と比較して、考慮すべき遅滞期が見られた(すなわち、メタン産生の開始が遅かった)。更に、メタンの全収量は炭酸水素量が低いと25倍少なかった(Murray and Zinder, 1985, Appl. Environ. Microbiol. 50: 49-55)。
【0054】
本発明の別の観点は、発酵ブロスに対する炭酸脱水酵素の添加であり、特に、当該ブロス中の炭酸水素濃度が限定因子である場合である。炭酸脱水酵素の添加はメタン産生を増大させることができる。特に、メタノサルシナ属はしばしば好熱性のバイオガス消化装置に存在している(Mladenovska and Ahring, 2000, FEMS Microbiol. Ecol. 3: 225-229)。従って、耐熱性炭酸脱水酵素は、バイオガス産生が、1又は複数の好熱性の微生物、例えば成長及びメタン生成の炭素源としてCO2/炭酸水素を使用することができるメタン生成菌、例えばメタノサルシナ属の菌種を用いて高温で実施される場合に特に有用であろう。
【0055】
本発明の別の態様は、炭酸脱水酵素、特に熱安定性炭酸脱水酵素の、バイオガス発酵ブロス中での添加物としての使用である。
【0056】
ポリペプチド
本発明の配列と類似の、バチルス・クラウシイKSM−K16由来のポリペプチド配列は、NCBIデータベースにおいて受入番号Q5WD44で開示されている(配列番号14として表す)。当該配列は、Kaoが実施した、バチルス・クラウシイKSM−K16についてのゲノム配列決定プロジェクトに由来するヌクレオチド配列から翻訳されたものである。他のαクラス炭酸脱水酵素との類似性に基づき、このヌクレオチド配列はαクラスに割り当てられたが、本発明者の知る限りでは、未だ発現もキャラクタリゼーションも行われていない。従って、本明細書の実施例において初めてこのヌクレオチド配列をクローニングし、そしてそのポリペプチドを発現させ、そして当該ポリペプチドが50℃超の温度に15分〜2時間加熱した後も炭酸脱水酵素を保持していることを証明した。
【0057】
本発明の1つの観点は、αクラス型の新規な熱安定性炭酸脱水酵素に関する。1つの態様は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12のアミノ酸配列に対し、少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する単離ポリペプチドであって、炭酸脱水酵素活性を有するポリペプチド(以後「相同ポリペプチド」)に関する。好ましい態様において、相同ポリペプチドは、7個のアミノ酸、好ましくは5個のアミノ酸、より好ましくは4個のアミノ酸、より更に好ましくは3個のアミノ酸、最も好ましくは2個のアミノ酸、より最も好ましくは1個のアミノ酸が配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12のアミノ酸配列と異なっているアミノ酸配列を有する。配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12の10〜237位のアミノ酸を有するポリペプチドは、本発明の組換えポリペプチドである。更に好ましい態様において、本発明の相同ポリペプチドは、高温、すなわち45℃超、好ましくは50℃超、より好ましくは55℃超、より好ましくは60℃超、さらにより好ましくは65℃超、最も好ましくは70℃超、最も好ましくは80℃超、最も好ましくは90℃超、そしてより最も好ましくは100℃超で炭酸脱水酵素活性を有する。
【0058】
本発明のポリペプチドは、好ましくは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、及び配列番号12から成る群から選択される成熟ポリペプチド又は組換えポリペプチド、あるいはその対立変異体;あるいは炭酸脱水酵素活性を有する、好ましくは高温で有するそのフラグメント、のアミノ酸を含んで成り、より好ましくは当該アミノ酸から成る。好ましい態様において、ポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、及び配列番号12から成る群から選択されるアミノ酸配列を含んで成り、好ましくは当該アミノ酸配列から成る。別の好ましい態様において、ポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、及び配列番号12から成る群から選択される成熟ポリペプチド又は組換えポリペプチド、あるいはその対立変異体;あるいは炭酸脱水酵素活性を有する、好ましくは高温で有するそのフラグメント、のアミノ酸配列のアミノ酸1〜237又は10〜237を含んで成り、好ましくは当該アミノ酸から成る。より更に好ましい態様において、ポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、及び配列番号12から成る群から選択されるアミノ酸配列のアミノ酸10〜237から成り、且つ、各配列の位置に示されたアミノ酸とは無関係に、最もN末端のアミノ酸としてロイシンを有するN末端アミノ酸配列LKASWを有する。
【0059】
別の態様において、本発明は、炭酸脱水酵素活性を、好ましくは高温で有する単離ポリペプチドであって、非常に低ストリンジェントな条件、好ましくは低ストリンジェントな条件、より好ましくは中程度にストリンジェントな条件、より好ましくは中から高度にストリンジェントな条件、より更に好ましくは高ストリンジェントな条件、最も好ましくは非常に高ストリンジェントな条件のもと、
(i)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10及び配列番号12から成る群から選択される成熟酵素をコードするヌクレオチド、
(ii)成熟酵素をコードする、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の領域から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列、
(iii)成熟酵素をコードする、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の領域から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列に含まれるcDNA配列、
(iv)少なくとも100個の連続した配列から成る、(i)、(ii)又は(iii)の部分配列、あるいは
(v)(i)、(ii)、(iii)又は(iv)の相補鎖、
とハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、に関する(Sambrook, Fritsch, and Maniatis, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d edition, Cold Spring Harbor, New York)。
【0060】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、又は配列番号11の部分配列は、少なくとも100個の連続したヌクレオチド、又は、好ましくは少なくとも00個の連続したヌクレオチドを含む。更に、当該部分配列は、炭酸脱水酵素活性を、好ましくは高温で有するポリペプチドフラグメントをコードしていてもよい。
【0061】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列、あるいはその部分配列、並びに、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10及び配列番号12から成る群から選択されるアミノ酸配列、あるいはそのフラグメントを使用して、炭酸脱水酵素活性を、好ましくは高温で有するポリペプチドをコードするDNAを、炭酸脱水酵素をコードすることが予想される生物から同定してクローニングするための核酸プローブを、当業界で周知の方法に従い設計してもよい。炭酸脱水酵素を産生する生物は、真核生物、例えば哺乳類、藻類、真菌及び植物、原核生物、例えば異なる属又は種の細菌株、並びに古細菌であってもよい。好ましくは、そのような生物は、好熱性又は超好熱性である。より更に好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、バチルス・クラウシイKSM−K16以外の好熱性バチルス・クラウシイ株から得られる。特に、前記プローブは、標準的なサザンブロッティングの手順に従い、注目の属又は種のゲノムDNA又はcDNAとのハイブリダイゼーションに使用することができ、これにより、相当の遺伝子をその中で同定して単離することができる。かかるプローブは全配列よりもかなり短いことがあるが、少なくとも14個、好ましくは少なくとも25個、より好ましくは少なくとも35個、そして最も好ましくは少なくとも70個のヌクレオチド長であるべきである。しかしながら、核酸プローブは、少なくとも100個のヌクレオチド長であるのが好ましい。例えば、核酸プローブは、少なくとも200ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも300ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも400ヌクレオチド長、又は最も好ましくは少なくとも500ヌクレオチド長であってもよい。DNAプローブ及びRNAプローブは共に使用することができる。当該プローブは、相当の遺伝子を検出するために通常(例えば32P、3H、35S、ビオチン、又はアビジンで)標識される。かかるプローブは本発明に含まれる。
【0062】
前記生物から調製したゲノムDNA又はcDNAライブラリーは、そのため、上述のプローブとハイブリダイズし、且つ炭酸脱水酵素を、好ましくは高温で有するポリペプチドをコードするDNAのためにスクリーニングされることがある。前記生物由来のゲノムDNA又は他のDNAは、アガロース又はポリアクリルアミドゲルの電気泳動によって、又は他の分離技術によって分離してもよい。前記ライブラリー由来のDNA又は分離したDNAは、ニトロセルロース又は他の適当な担体材料に移され、そしてその上に固定してもよい。番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11から成る群から選択される配列、あるいはその部分配列と相同のクローン又はDNAを同定するために、前記担体材料がサザンブロットで使用される。
【0063】
本発明では、ハイブリダイゼーションとは、ヌクレオチド配列が、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、又は配列番号11に示されているヌクレオチド配列、その相補鎖、又はその部分配列に相当する標識核酸プローブと、非常に低ストリンジェントな条件から非常に高ストリンジェントな条件でハイブリダイズすることを指す。核酸プローブがこれらの条件でハイブリダイズする分子は、X線フィルムを用いて検出することができる。
【0064】
好ましい態様において、核酸プローブは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、又は配列番号11のヌクレオチド1〜237、ヌクレオチド238〜474、ヌクレオチド475〜711である。別の好ましい観点において、核酸プローブは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12のポリペプチド、あるいはその部分配列をコードするポリヌクレオチド配列である。別の好ましい観点において、核酸プローブは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、又は配列番号11の成熟ポリペプチドコード領域である。
【0065】
少なくとも100ヌクレオチド長の長いプローブの場合、非常に低ストリンジェントな条件から非常に高ストリンジェントな条件は、42℃、5X SSPE1、0.3% SDS、200 micro-g/ml剪断され、且つ変性したサケ精子DNA、及び、非常に低ストリンジェンシー及び低ストリンジェンシーの場合25%ホルムアミド、中程度のストリンジェンシー及び中程度〜高度のストリンジェンシーの場合35%ホルムアミド、あるいは高ストリンジェンシー及び非常に高ストリンジェンシーの場合50%ホルムアミドの中でプレハイブリダイセーション及びハイブリダイゼーションをし、そして12〜24時間任意にサザンブロッティングすることと定義される。担体材料は最終的に、2×SSC、0.2%SDSを用い、好ましくは少なくとも45℃(非常に低ストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも50℃(低ストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも55℃(中ストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも60℃(中〜高ストリンジェンシー)、より更に好ましくは少なくとも65℃(高ストリンジェンシー)、そして最も好ましくは少なくとも70℃(非常に高ストリンジェンシー)で3回各15分間洗浄される。特定の態様において、洗浄は、0.2×SSC、0.2%SDSを用い、好ましくは少なくとも45℃(非常に低ストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも50℃(低ストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも55℃(中ストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも60℃(中〜高ストリンジェンシー)、より更に好ましくは少なくとも65℃(高ストリンジェンシー)、そして最も好ましくは少なくとも70℃(非常に高ストリンジェンシー)で実施される。別の特定の態様において、前記洗浄は、0.1×SSC、0.2%SDSを用い、好ましくは少なくとも45℃(非常に低ストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも50℃(低ストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも55℃(中ストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも60℃(中〜高ストリンジェンシー)、より更に好ましくは少なくとも65℃(高ストリンジェンシー)、そして最も好ましくは少なくとも70℃(非常に高ストリンジェンシー)で実施される。
【0066】
約15ヌクレオチド長から約70ヌクレオチド長の短いプローブの場合、ストリンジェントな条件は、Bolton及びMcCarthyの計算を用いて算出したTm(1962, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 48:1390)から約5℃〜約10℃低い温度での、0.9 M NaCl、0.09 M Tris-HCI pH 7.6、6 mM EDTA、0.5% NP−40、1Xデンハルト溶液、 1 mMピロリン酸ナトリウム、1 mM リン酸一ナトリウム、0.1 mM ATP、及び0.2 mgの酵母RNA中でのプレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーション後洗浄、続く、標準的なサザンブロッティング手順として定義される。担体材料は、6xSSC及び0.1% SDS中で15分間1回洗浄され、そして6xSSCを用いて、算出したTmよりも5℃〜10℃低い温度で2回、それぞれ15分間洗浄される。
【0067】
別の観点において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、及び配列番号12から成る群から選択されるアミノ酸配列、あるいはその成熟又は組換えポリペプチドに対してなされている1又は複数のアミノ酸の保存的置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成る人工変異体に関する。好ましくは、アミノ酸の変化は軽度のものであり、すなわち、タンパク質のフォールディング及び/又は活性に重大な影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換又は挿入;軽度な欠失、典型的には1〜約30個のアミノ酸の欠失;軽度のアミノ−又はカルボキシル−末端の伸長、例えばアミノ末端のメチオニン残基の伸長;最大約20〜25残基の小さいリンカーペプチド;あるいは正味電荷又は別の機能、例えばポリヒスチジントラクト、抗原性エピトープ又は結合ドメインを変化させることにより精製を容易にする軽度な伸長、である。保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン及びアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン及びバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)、及び小さいアミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、スレオニン及びメチオニン)の範囲内である。比活性を通常変化させないアミノ酸置換は当業界で知られており、例えばNeurath and Hill, 1979, In, The Proteins, Academic Press, New Yorkに記載されている。最も一般的に生じる交換は、Ala/Ser, Val/lle, Asp/Glu, Thr/Ser, Ala/Gly, Ala/Thr, Ser/Asn, Ala/Val, Ser/Gly, Tyr/Phe, Ala/Pro, Lys/Arg, Asp/Asn, Leu/lle, Leu/Val, Ala/Glu, 及びAsp/Glyである。20個の標準的なアミノ酸に加え、標準的でないアミノ酸(例えば4−ヒドロキシプロリン、6−N−メチルリジン、2−アミノイソ酪酸、イソバリン、及びαメチルセリン)で野生型ポリペプチドのアミノ酸残基が置換されることもある。限られた数の非保存的アミノ酸、遺伝コードによってコードされていないアミノ酸、及び非天然アミノ酸でアミノ酸残基が置換されることもある。「非天然アミノ酸」は、タンパク質合成後に修飾されており、そして/あるいはそれらの側鎖に標準的なアミノ酸と異なる化学構造を有している。非天然アミノ酸は化学合成することができ、好ましくは市販されており、そしてピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、デヒドロプロリン、3−及び4−メチルプロリン、並びに3,3−ジメチルプロリンを含む。
【0068】
親ペプチド中の必須アミノ酸は、当業界で知られている手順、例えば部位指定突然変異誘発又はアラニンスキャニング突然変異誘発に従い同定することができる(Cunningham and Wells, 1989, Science 244: 1081-1085)。後者の技術では、1つのアラニン置換が分子の残基毎に導入され、そして生じた変異体分子は生体活性(すなわち炭酸脱水酵素)について試験され、これにより当該分子の活性に必須のアミノ酸残基が同定される。Hilton et al., 1996, J. Biol. Chem. 271 : 4699-4708も参照のこと。酵素の活性部位又はほかの生物学的な相互作用も、核磁気共鳴、結晶学、電子回折、又は光親和性標識のような技術と、推定される接触部位のアミノ酸の突然変異とを組み合わせることによって決定されるように、物理的な構造解析によって決定することができる。例えば、de Vos et al., 1992, Science 255: 306-312; Smith et al., 1992, J. MoI. Biol. 224: 899-904; Wlodaver et al., 1992, FEBS Lett. 309: 59-64を参照のこと。多数のこれらの解析が炭酸脱水酵素について既に行われており、最も重要なことは、例えばTripp et al., 2001 , J. Biol. Chem. 276: 48615-48618 and Lindskog, 1997, Pharmacol. Ther. 74: 1-20で概説されている。必須アミノ酸の同一性は、本発明のポリペプチドと関連しているポリペプチドとの同一性の解析からも推測することができる。
【0069】
1つ又は多数のアミノ酸置換が、既知の突然変異誘発法、組換え法、及び/又はシャッフリング法、続いて、関連のスクリーニング手順、例えばReidhaar-Olson and Sauer, 1988, Science 241: 53- 57; Bowie and Sauer, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 2152-2156; WO 95/17413;又はWO 95/22625で開示されているものを用いることによって行うことができ、そしてそれらの置換について試験することができる。使用可能な他の方法には、エラープローンPCR、ファージディスプレー(例えば、Lowman et al., 1991 , Biochem. 30:10832-10837; 米国特許第5,223,409; WO92/06204)、及び領域指定突然変異誘発(Derbyshire et al., 1986, Gene 46:145; Ner et a/., 1988, DNA 7:127)
などがある。
【0070】
突然変異誘発/シャッフリング法は、ハイスループットの自動スクリーニング法と組み合わせることができ、これにより宿主細胞によって発現した、クローン化され、突然変異誘発されたポリペプチドの活性を検出することができる。活性ポリペプチドをコードする、突然変異誘発されたDNA分子は宿主細胞から回収することができ、当業界で標準的な方法を用いて迅速に配列決定することができる。これらの方法により、注目のポリペプチドの個々のアミノ酸残基の重要性についての迅速な決定が可能となり、そしてこれを未知の構造のポリペプチドに利用することができる。
【0071】
本発明の1つの態様は、高温で炭酸脱水酵素活性を有する単離ポリペプチドであって:(a)配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも94%の同一性を、あるいは番号6のアミノ酸配列と少なくとも91%の同一性を、あるいは番号8のアミノ酸配列と少なくとも96%の同一性を、あるいは番号10のアミノ酸配列と少なくとも89%の同一性を、あるいは番号12のアミノ酸配列と少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド;(b)中程度にストリンジェントな条件のもと、(i)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10及び配列番号12から成る群から選択される成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド、(ii)成熟酵素をコードする、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の領域から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列、(iii)成熟酵素をコードする、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の領域から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列に含まれるcDNA配列、(iv)少なくとも100個の連続した配列から成る、(i)又は(ii)の部分配列、あるいは(v)(i)、(ii)、(iii)又は(iv)の相補鎖、
とハイブリダイズする核酸配列がコードするポリペプチド;及び(c)炭酸脱水酵素活性を有する(a)又は(b)のフラグメント、から成る群から選択される、単離ポリペプチド、である。
【0072】
本発明の特定の態様は、高温で炭酸脱水酵素活性を有する単離ポリペプチドであって:(a)配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも94%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、又はその機能的フラグメント;(b)中程度にストリンジェントな条件のもと:(i)配列番号2又は配列番号4の成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド、(ii)成熟酵素をコードする、配列番号1又は配列番号3のポリヌクレオチド配列、(iii)成熟酵素をコードする、配列番号1又は配列番号3の領域のポリヌクレオチド配列に含まれるcDNA配列、(iv)少なくとも100個の連続した配列から成る、(i)又は(ii)の部分配列、あるいは(v)(i)、(ii)、(iii)又は(iv)の相補鎖、とハイブリダイズする核酸配列がコードするポリペプチド;及び(c)高温で炭酸脱水酵素活性を有する(a)又は(b)のフラグメント、から成る群から選択される、単離ポリペプチド、に関する。好ましい態様において、前記ポリペプチドは、11個のアミノ酸、好ましくは9個のアミノ酸、より好ましくは7個のアミノ酸、より好ましくは5個のアミノ酸、より更に好ましくは3個のアミノ酸、最も好ましくは1個のアミノ酸が配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する。
【0073】
本発明の別の特定の態様は、高温で炭酸脱水酵素活性を有する単離ポリペプチドであって:(a)配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも94%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、又はその機能的フラグメント;(b)中程度にストリンジェントな条件のもと:(i)配列番号6の成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド、(ii)成熟酵素をコードする、配列番号5の領域のポリヌクレオチド配列、(iii)成熟酵素をコードする、配列番号5の領域のポリヌクレオチド配列に含まれるcDNA配列、(iv)少なくとも100個の連続した配列から成る、(i)又は(ii)の部分配列、あるいは(v)(i)、(ii)、(iii)又は(iv)の相補鎖、とハイブリダイズする核酸配列がコードするポリペプチド;及び(c)高温で炭酸脱水酵素活性を有する(a)又は(b)のフラグメント、から成る群から選択される、単離ポリペプチド、に関する。好ましい態様において、前記ポリペプチドは、11個のアミノ酸、好ましくは9個のアミノ酸、より好ましくは7個のアミノ酸、より好ましくは5個のアミノ酸、より更に好ましくは3個のアミノ酸、最も好ましくは1個のアミノ酸が配列番号6のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する。
【0074】
本発明の別の特定の態様は、高温で炭酸脱水酵素活性を有する単離ポリペプチドであって:(a)配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも94%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、又はその機能的フラグメント;(b)中程度にストリンジェントな条件のもと:(i)配列番号8の成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド、(ii)成熟酵素をコードする、配列番号7の領域のポリヌクレオチド配列、(iii)成熟酵素をコードする、配列番号7の領域のポリヌクレオチド配列に含まれるcDNA配列、(iv)少なくとも100個の連続した配列から成る、(i)又は(ii)の部分配列、あるいは(v)(i)、(ii)、(iii)又は(iv)の相補鎖、とハイブリダイズする核酸配列がコードするポリペプチド;及び(c)高温で炭酸脱水酵素活性を有する(a)又は(b)のフラグメント、から成る群から選択される、単離ポリペプチド、に関する。好ましい態様において、前記ポリペプチドは、11個のアミノ酸、好ましくは9個のアミノ酸、より好ましくは7個のアミノ酸、より好ましくは5個のアミノ酸、より更に好ましくは3個のアミノ酸、最も好ましくは1個のアミノ酸が配列番号8のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する。
【0075】
本発明の別の特定の態様は、高温で炭酸脱水酵素活性を有する単離ポリペプチドであって:(a)配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも89%、好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも94%、さらにより好ましくは少なくとも96%、より更に好ましくは少なくとも98%、より更に好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、又はその機能的フラグメント;(b)中程度にストリンジェントな条件のもと:(i)配列番号10の成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド、(ii)成熟酵素をコードする、配列番号9の領域のポリヌクレオチド配列、(iii)成熟酵素をコードする、配列番号9の領域のポリヌクレオチド配列に含まれるcDNA配列、(iv)少なくとも100個の連続した配列から成る、(i)又は(ii)の部分配列、あるいは(v)(i)、(ii)、(iii)又は(iv)の相補鎖、とハイブリダイズする核酸配列がコードするポリペプチド;及び(c)高温で炭酸脱水酵素活性を有する(a)又は(b)のフラグメント、から成る群から選択される、単離ポリペプチド、に関する。好ましい態様において、前記ポリペプチドは、11個のアミノ酸、好ましくは9個のアミノ酸、より好ましくは7個のアミノ酸、より好ましくは5個のアミノ酸、より更に好ましくは3個のアミノ酸、最も好ましくは1個のアミノ酸が配列番号10のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する。
【0076】
本発明の別の特定の態様は、高温で炭酸脱水酵素活性を有する単離ポリペプチドであって:(a)配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも97%、好ましくは少なくとも97.5%、より好ましくは少なくとも98%、より更に好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、又はその機能的フラグメント;(b)中程度にストリンジェントな条件のもと:(i)配列番号12の成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド、(ii)成熟酵素をコードする、配列番号11の領域のポリヌクレオチド配列、(iii)成熟酵素をコードする、配列番号11の領域のポリヌクレオチド配列に含まれるcDNA配列、(iv)少なくとも100個の連続した配列から成る、(i)又は(ii)の部分配列、あるいは(v)(i)、(ii)、(iii)又は(iv)の相補鎖、とハイブリダイズする核酸配列がコードするポリペプチド;及び(c)高温で炭酸脱水酵素活性を有する(a)又は(b)のフラグメント、から成る群から選択される、単離ポリペプチド、に関する。好ましい態様において、前記ポリペプチドは、11個のアミノ酸、好ましくは9個のアミノ酸、より好ましくは7個のアミノ酸、より好ましくは5個のアミノ酸、より更に好ましくは3個のアミノ酸、最も好ましくは1個のアミノ酸が配列番号12のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する。
【0077】
本発明のポリペプチドは単離ポリペプチドであり、好ましくは本発明のポリペプチドの調製品は、最大90重量%の他のポリペプチド材料を含んでおり、これは天然に付随している場合であってもよい(他のポリペプチド材料はよりパーセンテージが低いことが好ましく、例えば、最大80重量%、最大60重量%、最大50重量%、最大40重量%、最大30重量%、最大20重量%、最大10重量%、最大9重量%、最大8重量%、最大6重量%、最大5重量%、最大4重量%、最大3重量%、最大2重量%、最大1重量%、最大0.5重量%である)。従って、本発明の単離ポリペプチドは、実質的に92%純粋であることが好ましく、すなわち、本発明のポリペプチドは、調製品に存在する合計のポリペプチド材料の重量当たり少なくとも92%を構成し、そしてより高いパーセンテージが好ましく、例えば少なくとも94%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも96%純粋、少なくとも96%純粋、少なくとも97%純粋、少なくとも98%純粋、少なくとも99%純粋、最大99.5%純粋である。特に、前記ポリペプチドが「本質的に純粋な状態」にあること、すなわち、前記ポリペプチド調製物が、自然に付随するほかのポリペプチド材料を本質的に含まないことが好ましい。これは、例えば前記ポリペプチドを周知の組換え法又は古典的な精製法によって調製することで達成できる。
【0078】
本発明のポリペプチドは、合成によって作られてもよく、天然であってもよく、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。特定の態様において、本発明のポリペプチドは、微生物、例えば原核細胞、古細菌細胞又は真核細胞、特に真菌細胞から得てもよい。当該細胞は更に、遺伝子操作によって修飾されていてもよい。
【0079】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、ポリヌクレオチド、特に単離ポリヌクレオチドであって、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んで成るか、又は当該ヌクレオチド配列から成る単離ポリヌクレオチドに関する。好ましい観点において、本発明のヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11から成る群から選択される。別の好ましい観点において、ヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11から成る群から選択されるポリヌクレオチドの成熟ポリペプチドコード領域である。本発明はまた、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10及び配列番号12から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド又はその成熟ポリペプチドであり、これはそれぞれ、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11とはそれぞれ遺伝コードの縮重が原因で異なる。本発明はまた、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の群から選択される部分配列であって、それぞれ、炭酸脱水酵素活性を好ましくは高温で有する配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12のフラグメントをコードする部分配列に関する。
【0080】
本発明はまた、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の群から選択される部分配列をコードする成熟ポリペプチドにおいて少なくと別の突然変異を含んで成る突然変異ポリヌクレオチドであって、それぞれ配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12のアミノ酸10〜237から成るポリペプチドをコードする突然変異ポリヌクレオチドに関する。
【0081】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを単離又はクローニングするのに使用される技術は当業界で既知であり、ゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製、又はそれらの組合せが挙げられる。そのようなゲノムDNAからの本発明のポリヌクレオチドのクローニングは、例えば周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は発現ライブラリーの抗体スクリーニングを用いて、共有の構造的特徴を有するクローニングしたDNAフラグメントを検出することで実行され得る。例えば、Innis et al., 1990、「PCR : A Guide to Methods and Application」Academic Press, New Yorkを参照のこと。その他の核酸増幅法、例えばリガーゼ連鎖反応(LCR)、結合活性化転写(LAT)及び核酸配列ベース増幅(NASBA)も使用され得る。前記ポリヌクレオチドは、炭酸脱水酵素をコードしていると予測することができる任意の生物、からクローニングしてもよく、かかる生物は、真核生物、例えば哺乳類、藻類、真菌及び植物、原核生物、例えば異なる属又は種の細菌株、並びに古細菌であってもよい。好ましくは、そのような生物は、好熱性又は超好熱性である。より更に好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、バチルス・クラウシイKSM−K16以外の好熱性バチルス・クラウシイ株から得られる。
【0082】
本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の修飾はポリペプチドの合成にとって必要な場合があり、これは配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12に含まれる成熟ポリペプチドから選択されるアミノ酸配列と比較した場合の少なくとも別の置換、欠失及び/又は挿入を有するアミノ酸配列を含んで成る。
【0083】
当業者にとって、かかる修飾が前記酵素の機能を保存するために行うことができること、すなわち酵素の機能に必須の外側の領域に行われることは自明であろう。機能に必須のアミノ酸残基は、そのため、好ましくは修飾、例えば置換にかけられない。機能に必須のアミノ酸は、当業界で既知の手順、例えば部位指定突然変異誘発又はアラニンスキャニング突然変異誘発に従い同定することができる(Cunningham and Wells, 1989, Science 244: 1081-1085)。後者の技術では、1つのアラニン置換が分子の残基毎に導入され、そして生じた変異体分子は炭酸脱水酵素について試験され、これにより当該分子の活性に必須のアミノ酸残基が同定される。基質−酵素の相互作用部位は、核磁気共鳴、結晶学、電子回折、又は光親和性標識のような技術によって決定することができるように、三次元構造解析によって決定することができる(例えば、de Vos et al., 1992, Science 255: 306-312; Smith et al., 1992, J. MoI. Biol. 224: 899-904; Wlodaver et al., 1992, FEBS Lett. 309: 59-64を参照のこと)。更に、本発明の酵素をコードするヌクレオチド配列は、当該ヌクレオチド配列によってコードされない酵素の別のアミノ酸配列を生じさせないが、当該酵素の産生用の宿主生物のコドン使用頻度に相当するヌクレオチド置換の導入によって修飾されることがある。あるヌクレオチドを別のヌクレオチドと交換するためのヌクレオチド配列内への突然変異の導入は、当業界で既知の方法のいずれかを用いる部位指定突然変異誘発によって達成してもよい。特に有用なのは、所望の突然変異を含む注目の2つの合成プライマーが挿入された、スーパーコイルの二本鎖DNAベクターを利用する手順である。それぞれベクターの逆鎖と相補的なオリゴヌクレオチドプライマーは、Pfu DNAポリメラーゼによって温度サイクリングの間伸長する。プライマーを組み込むと、ねじれ型のニックを含む突然変異プラスミドが生成する。温度サイクリングの後、生成物を、メチル化DNA及びヘミメチル化DNAに特異的なDpnIで処理して親のDNA鋳型を消化し、そして突然変異を含む合成DNAを選択する。当業界で知られている他の手順も使用可能である。ヌクレオチド置換の一般的な説明については、Ford et al., 1991 , Protein Expression and Purification 2: 95-107を参考にしてもよい。
【0084】
本発明は、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んで成る、好ましくは当該ヌクレオチド配列から成る単離ポリヌクレオチドであって、非常に低ストリンジェントな条件、好ましくは低ストリンジェントな条件、より好ましくは中程度にストリンジェントな条件、より好ましくは、中から高ストリンジェントな条件、より更に好ましくは高ストリンジェントな条件、最も好ましくは非常に高ストリンジェントな条件のもと:
i)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の領域から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列、
ii)列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の領域から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列に含まれるcDNA配列、
iii)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10及び配列番号12に含まれる相当の成熟ポリペプチドの機能を有する分泌型成熟ポリペプチドをコードする(i)又は(ii)の部分配列、あるいは
iv)(i)、(ii)、又は(iii)又はの相補鎖、
とハイブリダイズする単離ポリヌクレオチド、に関する(Sambrook, Fritsch, and Maniatis, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d edition, Cold Spring Harbor, New York)。
【0085】
理解されるとおり、ヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションに関する細部及び詳細は、本明細書における本発明の表題「ポリペプチド」の項目で論述したハイブリダイゼーションと同一又は類似であろう。
【0086】
本発明はまた、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列又は本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列、特に本発明のポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列のいずれかの情報を、電子形式又はデジタル形式、例えば2進コード又は他のデジタルコードで含んで成る、電子機器、好ましくはデジタル機器に使用するのに適した記憶媒体を包含する。当該記憶媒体は適当には磁気ディスク又は光ディスクであってもよく、そして前記電子機器は計算装置であってもよく、そして前記情報は、特に、記憶媒体上にデジタル形式で保存されてもよい。
【0087】
組換え発現ベクター
本発明はまた、本発明の核酸コンストラクトを含んで成る組換え発現ベクターに関する。本発明の核酸コンストラクトは、本発明の単離ポリヌクレオチドであって、好ましくは1又は複数の制御配列と適合する条件のもと適当な宿主細胞においてコード配列の発現を指示する当該制御配列と作用可能に連結したものを含んで成る。あるいは、本発明のポリヌクレオチド配列又は当該ポリヌクレオチド配列を含んで成る核酸コンストラクトは、発現に適したベクター内に挿入されてもよい。発現ベクターを作る際、コード配列は、当該コード配列が発現に適した制御配列と作用可能に連結されるようベクター内に配置される。制御配列は、ベクターによって、又はベクター内に挿入された核酸コンストラクトによって提供されうる。
【0088】
制御配列は、適当なプロモーター配列、すなわち本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現のための宿主細胞によって認識されるヌクレオチド配列であってもよい。当該プロモーターは、選択した宿主細胞において転写活性を示す任意のヌクレオチド配列であってもよく、例えば突然変異プロモーター、切断されたプロモーター、及びハイブリッドプロモーターを含み、そして、宿主細胞にとって同種又は異種の細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得てもよい。制御配列はまた、適当な転写ターミネーター配列、すなわち、宿主細胞によって認識される、転写を終結するための配列であってもよい。ターミネーター配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の3’末端と作用可能に連結している。選択した宿主細胞において機能的な任意のターミネーターを本発明で使用してもよく、そのようなターミネーターは当業界で周知である。制御配列はまた、適当なリーダー配列、すなわち、宿主細胞による翻訳にとって重要なmRNAの非翻訳領域であってもよい。リーダー配列は、前記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の5’末端と作用可能に連結される。選択した宿主細胞において機能的な任意のリーダー配列を本発明に使用してもよく、かかるリーダー配列は当業界で周知である。制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端と連結したアミノ酸配列をコードし、且つコードされたポリペプチドを細胞の分泌経路に方向付けるシグナルペプチドのコード領域であってもよい。前記ヌクレオチド配列のコード配列の5’末端は、翻訳リーディングフレームにおいて、分泌されたポリペプチドをコードするコード領域のセグメントと天然に連結したシグナルペプチドのコード領域を本質的に含んでもよい。あるいは、コード配列の5’末端は、当該コード配列にとって外来であるシグナルペプチドコード領域を含んでもよい。外来のシグナルペプチドコード領域は、コード配列が天然にシグナルペプチドコード領域を含んでない場合に必要とされることがある。あるいは、外来のシグナルペプチドコード領域は、ポリペプチドの分泌を促進するために、天然のシグナルペプチドコード領域と単純に置き換わっていてもよい。しかしながら、発現したポリペプチドを選択した宿主細胞の分泌経路へと方向付ける任意のシグナルペプチドコード領域が本発明で使用されうる。制御配列はポリアデニル化配列、すなわち、ヌクレオチド配列の3’末端と作用可能に連結しており、転写された場合、シグナルとして宿主細胞によって認識されポリアデノシン残基を転写されたmRNAに付加する配列であってもよい。選択した宿主細胞において機能的な任意のポリアデニル化配列を本発明で使用してもよい。宿主細胞の生育と関連するポリペプチドの発現の制御を可能にする制御配列を付加することも望ましい場合がある。制御系の例として、化学的又は物理的な刺激、例えば制御化合物の存在に応答して遺伝子をオン又はオフにするものがある。
【0089】
本発明のポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドは、当該ポリペプチドの発現を提供するために種々の方法で操作されることがある。ベクター内に挿入する前のポリヌクレオチド配列の操作は、発現ベクターによっては望ましく、又は必要な場合がある。組換えDNA法を利用してポリヌクレオチド配列を修飾するための技術は当業界で周知である。更に、ポリペプチドの精製又は固定化の助けとなるタグが当該ポリペプチドに付加されることもある。かかるタグは、例えば、ポリヒスチジンタグ(Hisタグ)であってもよい。好ましくは、タグは当該ポリペプチドのN末端又はC末端に位置しており、そしてベクターにコードされていることもある。あるいは、タグは、ポリペプチドの機能に影響を及ぼさない限り、ポリペプチドの内部に位置していてもよい。
【0090】
組換え発現ベクターは、都合よく組換えDNA手順にかけることができ、且つヌクレオチド配列の発現をもたらすことができる任意のベクター(例えばプラスミド、ファージミド、ファージ又はウイルス)であってもよい。ベクターの選択は、典型的には、ベクターと、当該ベクターが導入されるべき宿主細胞との適合性に依存するであろう。
【0091】
ベクターは、直鎖又は閉環状のプラスミドであってもよい。ベクターは自己複製ベクター、すなわち、染色体外の物体として存在するベクターであって、複製が染色体の複製から独立しているもの、例えばプラスミド、染色体外因子、ミニ染色体、又は人工染色体であってもよい。
【0092】
ベクターは、自己複製を確保するための任意の手段を含んでもよい。あるいは、ベクターは、宿主細胞内に導入した場合、ゲノム内に組み込まれ、そして組み込まれた染色体と一緒に複製するものであってもよい。更に、1つのベクター又はプラスミド、あるいは2又はそれ以上のベクター又はプラスミドであって、宿主細胞のゲノム内に組み込まれるべき全てのDNAを一緒に含むもの、あるいはトランスポゾンが使用されることもある。
【0093】
本発明のベクターは、好ましくは、形質転換した細胞の選択を容易にする1又は複数の選択マーカーを含む。選択マーカーは、その産物が殺生物性又はウイルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求株に対する原栄養性等を提供する遺伝子である。細菌性選択マーカーの例には、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)又はバチルス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のdal遺伝子、抗生物質に対する耐性、例えばアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール又はテトラサイクリンに対する耐性を賦与するマーカーである。酵母宿主細胞に適したマーカーは、ADE2, HIS3, LEU2, LYS2, MET3, TRP1 , 及びURA3である。糸状菌宿主細胞で使用するための選択マーカーとして、限定しないが、mdS (アセトアミダーゼ)、argB (オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar (ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hygB (ハイグロマイシンホスフォトランスフェラーゼ)、 niaD (硝酸レダクターゼ)、pyrG (オロチジン5'-リン酸脱炭酸酵素)、sC (硫酸アデニルトランスフェラーゼ)、trpC (アントラニル酸合成酵素)、並びにその等価物がある。アスペルギルス細胞で使用するのに好ましいのは、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)又はアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)のamdS遺伝子及びpyrG遺伝子、並びにストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)のbar遺伝子である。
【0094】
本発明のベクターは、好ましくは宿主細胞のゲノムにベクターを安定的に組み込み、又はゲノムとは独立して細胞内でベクターを自己複製することを可能にする因子を含む。
【0095】
宿主細胞ゲノムに組み込むために、ベクターは、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、あるいは相同又は非相同組換えによってゲノム内にベクターを安定的に組み込むためのベクターの任意な他の因子に依拠することがある。あるいは、ベクターは、相同組換えによって宿主細胞のゲノムに組み込むことを指示するための追加のヌクレオチド配列を含んでもよい。この追加のヌクレオチド配列により、ベクターが染色体における正確な位置で宿主細胞ゲノムに組み込まれることが可能になる。正確な位置での組み込みの可能性を増大させるために、その組み込み因子は、好ましくは、相同組換えの可能性を増強するために相当の標的配列と高度に相同性のある、十分な数のヌクレオチド、例えば100〜1,500塩基対、好ましくは400〜1,500塩基対、最も好ましくは800〜1,500塩基対を含む。組み込み因子は、宿主細胞のゲノム内の標的配列と相同な任意の配列であってもよい。更に、組み込み因子は、非コード又はコードヌクレオチド配列であってもよい。他方、ベクターは、非相同組換え、又はランダムな組み込みによって宿主細胞のゲノム内に組み込まれることがある。
【0096】
自己複製のために、ベクターは、問題の宿主細胞においてベクターが自己複製することを可能にする複製起点を更に含んでもよい。細菌の複製起点の例は、E.コリ(E. coli)における複製を可能にするプラスミドpBR322, pUC19, pACYC177, 及びpACYC184、並びにバチルスにおける複製を可能にするpUB110, pE194, pTA1060, 及びpAMβ1の複製起点である。酵母宿主細胞において使用するための複製起点の例として、複製の2ミクロン起点、すなわちARS1, ARS4, ARS1及びCEN3の組み合わせ、及びARS4及びCEN6の組み合わせがある。糸状菌細胞において有用な複製起点の例として、AMA1及びANS1がある(Gems など., 1991, Gene 98: 61-67; Cullen など., 1987, NucleicAcids Research 15: 9163-9175; WO 00/24883号)。AMA1遺伝子の単離、及び前記遺伝子を含むプラスミド又はベクターの構築は、WO00/24883号に開示される方法に従って達成することができる。複製起点は、宿主細胞において、その機能を感温性にさせる突然変異を有するものでもよい(例えば、Ehrlich, 1978, Procedings of the National Academy of Sciences USA 75: 1433を参照のこと)。ベクターは、2又はそれ以上の複製起点であって、それぞれの起点が異なる宿主細胞における複製を可能にするものを含んでもよく、例えば細菌起源及び酵母起源のものである。
【0097】
本発明のヌクレオチド配列の1以上のコピーが、遺伝子産物の産生を高めるために宿主細胞中に挿入されることがある。ヌクレオチド配列のコピー数の増大は、宿主細胞ゲノム中に配列の少なくと別の追加のコピーを組み込むことによって、又はヌクレオチド配列と共に増幅可能な選択マーカー遺伝子を含むことによって得られ、ここで、選択マーカー遺伝子の増幅されたコピーを含み、そしてそれにより、ヌクレオチド配列の追加のコピーを含む細胞が、適切な選択剤の存在下で前記細胞を培養することによって選択することができる。
【0098】
上記因子をライゲーションして本発明の組換え発現ベクターを構成するために使用される方法は、当業者にとって周知である(例えば、Sambrookなど., 1989(上掲)を参照のこと)。
【0099】
組換え宿主細胞:
本発明はまた、本発明の核酸コンストラクトを含んで成る組換え宿主細胞であって、ポリペプチドの組換え産生に有利に使用される細胞に関する。本発明のヌクレオチド配列を含んで成るベクターは、当該ベクターが上述のように染色体組込み体として又は自己複製染色体外ベクターとして維持されるよう宿主細胞内に導入される。
【0100】
宿主細胞は、原核生物、例えば細菌細胞、古細菌又は真核生物、例えば真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、又は哺乳類細胞であってもよい。
【0101】
有用な原核生物は、細菌細胞、例えばグラム陽性細菌、例えば、限定しないが、バチルス細胞、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans)、バチルス・ラウタス(Bacillus lautus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・リシェニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びバチルス・サーリンジェンシス(Bacillus thuringiensis)、又はストレプトマイセス細胞、たとえばストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトマイセス・ムリナス(Streptomyces murinus)、あるいはグラム陰性細菌、例えばE.コリ及びシュードモナス属の種である。好ましい態様において、細菌宿主細胞は、バチルス・レンタス、バチルス・ステアロサーモフィラス、又はバチルス・サブチリスである。別の好ましい態様において、バチルス細胞は好アルカリ性バチルスである。
【0102】
細菌宿主細胞中へのベクターの導入は、例えば、プロトプラスト形質転換(例えば、Changand Cohen, 1979, Molecular General Genetics 168: 111-115を参照のこと)により、コンピテント細胞(例えば、Young and Spizizin, 1961, Journal of Bacteriology 81: 823-829, 又はDubnau and Davidoff-Abelson, 1971, Journal of Molecular Biology 56: 209-221 を参照のこと)を用いてエレクトロポレーション(例えば、Shigekawa and Dower, 1988, Biotechniques 6: 742-751を参照のこと)又はコンジュゲーション(例えば、Koehler and Thorne, 1987, Journal of Bacteriology 169: 5771-5278を参照のこと)を用いて達成することができる。
【0103】
好ましい態様において、宿主細胞は真菌細胞である。本明細書で使用する場合、「真菌」には、子嚢菌門、担子菌門、ツボカビ門、及び接合菌門(Hawksworth など., Ainsworth and Bisby’s Dictionary of the Fungi, 8th edition, 1995, CAB International, University Press, Cambridge, UKにより定義されるとおり)、及び卵菌類(Hawksworth など., 1995, 前記、171ページに引用される)、並びに全ての栄養胞子形成真菌(Hawksworth et al., In, Ainsworth and Bisby's Dictionary of The Fungi, 8th edition, 1995, CAB International, University Press, Cambridge, UK)が含まれる。より好ましい態様において、真菌細胞は酵母細胞である。「酵母」には、本明細書で使用する場合、子嚢胞子酵母(Endomycetals)、担子胞子酵母、及び不完全菌類(Blastomycetes)に属する酵母が含まれる。酵母の分類は将来変化する場合があるため、本発明では、酵母は、Biology and Activities of Yeast (Skinner, F.A., Passmore, S.M., and Davenport, R.R., eds. Soc. App. Bacteriol. Symposium Series No. 9, 1980) に記載のとおり定義される。
【0104】
より更に好ましい態様においては、酵母宿主細胞は、カンジダ(Candida)、ハンセヌラ(Hunsenula)、クレベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)又はヤロウィア(Yarrowia)の細胞である。最も好ましい態様においては、酵母宿主細胞は、サッカロマイセス・カルスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyses cerevisiae)、サッカロマイセス・ジアスタチカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロマイセス・ドウグラシイ(Saccharomyces douglasii)、サッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロマイセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensisi)、又はサッカロマイセス・オビホルミス(Saccharomyces oviformis)細胞である。別の最も好ましい態様においては、酵母宿主細胞は、クルイベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)である。別の最も好ましい態様においては、酵母宿主細胞は、ヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)細胞である。
【0105】
別のより好ましい態様において、真菌宿主細胞は糸状菌細胞である。「糸状菌」とは、真菌門及び卵菌門の亜門の糸状形のものを包含する(Hawksworthなど., 1995, 前記により定義されているとおり)。糸状菌は一般的に、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン及び他の複合多糖類から構成される菌子体壁を特徴とする。栄養増殖は、菌子拡張によっておこり、そして炭素代謝は絶対好気性である。対照的に、酵母、たとえばサッカロマイセス・セレビシアエによる栄養増殖は、単細胞葉状体の発芽によっておこり、そして炭素代謝は発酵性であってもよい。より更に好ましい態様において、糸状真菌宿主細胞は、限定しないが、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス(Aspergillus)、フサリウム(Fusarium)、フミコラ(Humicola)、ムコル(Mucor)、マイセリオフソラ(Myceliophthora)、ニューロスポラ(Neurospora)、ペニシリウム(Penicilium)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)又はトリコデルマ(Trichoderma)属の種の細胞である。最も好ましい態様において、糸状菌宿主細胞は、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ホエチダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)の細胞である。別の最も好ましい態様において、糸状菌宿主細胞は、フサリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フサリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フサリウム・クロックウェレンズ(Fusarium crookwellense)、フサリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、フサリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)、フサリウム・グラミニウム(Fusarium graminum)、フサリウム・ヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)、フサリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フサリウム・レチキュラタム(Fusarium reticulatum)、フサリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フサリウム・サムブシウム(Fusarium sambucinum)、フサリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フサリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フサリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フサリウム・トルロサム(Fusarium torulosum)、フサリウム・トリコセシオイデス(Fusarium trichothecioides)又はフサリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)の細胞である。より最も好ましい態様において、糸状菌親細胞は、フサリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)(Nirenberg sp. nov.)細胞である。より最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)、ムコル・ミエヘイ(Mucor miehei)、マイセリオフソラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・プルプロゲナム(Penicillium purpurogenum)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンジブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)の細胞である。
【0106】
真菌細胞は、プロトプラスト形質転換、プロトプラストの形質転換、及びそれ自体知られている方法での細胞壁の再生、を伴うプロセスにより形質転換され得る。アスペルギルス及びトリコデルマ宿主細胞の形質転換にとって適当な方法は、EP238023号及びYeltonなど., 1984, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 81; 1474-1874に記載されている。フサリウム種を形質転換するのに適した方法は、Malardierなど., 1989, Gene78: 147-156, 及びWO96/00787号に記載されている。酵母は、Becker and Guarente. In Abelson, J.N. and Simon, M.I., editors, Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology, Methods in Enzymology, Volume 194, pp 182-187, Academic Press, Inc., New York; Ito など, 1983, Journal of Bacteriology 153: 163; 及びHinnen など, 1978, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75; 1920に記載の方法を用いて形質転換され得る。
【0107】
本発明の特定の態様は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13及び配列番号15から成る群から選択されるポリヌクレオチドで形質転換した組換え宿主細胞である。好ましくは、かかる宿主細胞は固有の炭酸脱水酵素コード遺伝子を含んでおらず、あるいはそのような遺伝子は破壊されている。その結果、当該組換え炭酸脱水酵素は、本発明の組換え宿主細胞によって産生した炭酸脱水酵素のみである。
【0108】
炭酸脱水酵素の調製方法
本発明はまた、本発明の炭酸脱水酵素を調製する方法であって、(a)炭酸脱水酵素をコードするヌクレオチド配列を含んで成る宿主細胞であって、当該炭酸脱水酵素を発現し、分泌することができる宿主細胞の株を培養し、そして(b)炭酸脱水酵素を回収すること、を含んで成る方法に関する。特定の態様において、宿主細胞は、野生型のバチルス・クラウシイ株であり、これは炭酸脱水酵素コード遺伝子を本質的に含んでいる。より好ましい野生型の株は、NCIB10309として寄託されたバチルス・クラウシイ株である。別の態様において、宿主細胞は上述の組換え宿主細胞である。
【0109】
本発明のこれらの方法において、細胞は、当業界で知られている方法を用いて、酵素の産生に適した栄養培地中で培養される。例えば、細胞は、振盪フラスコ培養、小規模又は大規模発酵(例えば連続培養、バッチ培養、フェドバッチ培養、又は固体培養)によって、研究室又は産業用発酵槽において培養され、これは適当な培地中で、且つポリペプチドを発現及び/又は単離することが可能な条件で実施される。培養は、炭素源及び窒素源並びに無機塩を含む適当な栄養培地において、当業界で知られている手順を用いて行われる。適当な培地は供給業者から入手可能であり、あるいは(例えばAmerican Type Culture Collectionのカタログ内で)公開されている組成物に従い調製してもよい。酵素が栄養培地に分泌される場合、酵素を直接培地から回収することができる。酵素が分泌されない場合、細胞は細胞可溶化物から回収することができる。
【0110】
酵素は、ポリペプチドに特異的な、当業界で知られている方法を用いて検出されうる。これらの検出法には、特異的な抗体の使用、酵素産物の形成、酵素基質の消失などが含まれうる。例えば酵素アッセイを使用して炭酸脱水酵素活性を決定してもよく、例えばWilbur, 1948, J. Biol. Chem. 176: 147-154に記載の方法が用いられる。設定は、方程式1
【化4】

に示すとおり、二酸化炭素からの炭酸水素の形成に起因するアッセイ混合物のpHの変化をベースとする。この活性アッセイを実施するための特定の方法はChirica et a/., 2001 , Biochim. Biophys. Acta 1544: 55-63に記載されている。更に、炭酸脱水酵素の動態は、パラニトロフェノールアセテートをニトロフェノールと酢酸に開裂することができる能力によって評価してもよい。
【0111】
本発明の酵素は、当業界で知られている種々の手順、例えば限定しないが、クロマトグラフィー(例えばイオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング、及びサイズ排除)、電気泳動法(例えば調製用の等電点電気泳動)、溶解度差(例えば硫安沈殿)、SDS−PAGE、又は抽出によって精製してもよい(例えば、Protein Purification, Janson and Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照のこと)。
【0112】
ポリペプチドを含んで成る組成物及びそれらの調製方法
本発明は、本発明の炭酸脱水酵素及び好ましくは賦形剤を含んで成る組成物、並びに当該組成物を調製するための方法であって、本発明のポリペプチドと賦形剤とを混合することを含んで成る方法、を提供する。
【0113】
特定の態様において、本発明の炭酸脱水酵素は、前記組成物、例えば単一成分組成物の主要(ポリペプチド)成分である。この文脈での賦形剤は、前記組成物を製剤化するのに使用される任意の助剤又は化合物と解されるべきであり、溶媒(例えば水、無機塩、充填剤、色素、ワックス)、担体、安定化剤、架橋剤、粘着剤、保存剤、緩衝液等が含まれる。
【0114】
前記組成物は、更に1又は複数の追加の酵素、例えばアミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デカルボキシラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、インバーターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、モノオキシゲナーゼ、ニトリラーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ又はキシラナーゼを含んで成ることもある。
【0115】
前記組成物は、当業界において知られている方法に従って調製され、そして溶液又は固体組成物の形態であってもよい。例えば、酵素組成物は、ポリペプチド及び/又は医薬品を、当業界において知られている方法を用いて、被覆されているか又は被覆されていない顆粒又は微小顆粒へと製剤化され得る。従って、本発明のポリペプチドは、顆粒、好ましくは無粉塵性顆粒、液体、特に安定化された液体、スラリー又は保護されたポリペプチドの形で提供され得る。
【0116】
特定の用途について、前記ポリペプチドの固定化が好ましい場合がある。固定化酵素は、2つの本質的機能、すなわち、分離を補助するよう設計されている非触媒性の機能(例えば、応用環境からの触媒の単離、触媒の再利用、及び当該プロセスの制御)並びに所望の時間及び空間内で標的化合物(又は基質)を変換するよう設計されている触媒機能を含んで成る(Cao, Carrier-bound Immobilized Enzymes: Principles, Applications and Design, Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim, Germany, 2005)。酵素が固定化される場合、酵素は、変換を助ける標的化合物(例えば基質)及び使用する溶媒に対し不溶性にされる。固定化酵素品は、その再利用を促進し、又は必要な酵素量を減少させ、又は基質が連続的に送達され、そして生成物が連続的に酵素の近傍から除去されるプロセスで酵素を使用するために応用環境から分離することができ、これにより例えば酵素のコストが減少する。更に、酵素はしばしば固定化により安定化される。固定化酵素を伴うプロセスはしばしば連続的であり、これにより容易なプロセス制御が促進される。固定化酵素は、機械的手段により、又は限られた空間に封入することで、不均一触媒として保持することができる。後者は、マイクロカプセル化、例えば半透膜中でのマイクロカプセル化によって、UF系内への封入によって、例えば中空糸モジュール等を用いた封入によって行うことができる。多孔性担体への固定化も一般的に使用される。これには、担体に対する酵素の結合、例えば吸着、錯体結合/イオン結合/共有結合による結合、又は当該担体上への可溶性酵素の極めて単純な吸収及びその後の溶媒の除去、が含まれる。酵素の架橋も固定化の手段として使用することができる。担体内への封入による酵素の固定化も工業上利用可能である(Buchholz et al., Biocatalysts and Enzyme Technology, Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim, Germany, 2005)。酵素、例えば炭酸脱水酵素を固定化する具体的な方法には、限定しないが、WO2007/036235(本明細書で援用する)に記載のように当該酵素を、多官能性アミンを含んで成る液体媒体及び架橋剤を含んで成る液体媒体と共に、粒子状の多孔性担体上に噴霧すること、WO2005/114417(本明細書で援用する)に記載のように炭酸脱水酵素を架橋剤(例えばグルタルアルデヒド)でオボアルブミン層に架橋し、続いてこれをポリマー性の支持体上の接着層に接着させること、又は炭酸脱水酵素を、米国特許第5,776,741に記載のようにシリカ担体にカップリングさせ、あるいはシラン、又はCNBr活性化担体表面、例えばガラスにカップリングさせること、あるいはBhattacharya et al., 2003, Biotech[pi]ol. Appl. Biochem. 38: 111-117(本明細書で援用する)に記載のようにポリマービーズ上に炭酸脱水酵素とメタクリラートとを共重合化させること、が含まれる。本発明の一態様において、炭酸脱水酵素はマトリックス上に固定されている。当該マトリックスは、例えば、ビーズ、繊維、ファイバー、中空糸、膜、粒子、多孔性表面、ロッド及びチューブがある。適当なマトリックスの具体例には、アルミナ、ベントナイト、バイオポリマー、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムゲル、カーボン、セルロース、セラミック支持体、クレー、コラーゲン、ガラス、ハイドロキシアパタイト、イオン交換樹脂、カオリン、ナイロン、フェノール性ポリマー、ポリアミノスチレン、ポリアクリルアミド、ポリプロピレン、ポリマーハイドロゲル(polymerhydrogel)、セファデックス、セファロース、シリカゲル、及びTEFLON(登録商標)ブランドのPTFEがある。本発明の一態様において、炭酸脱水酵素は、本明細書で援用するMethods in Enzymology volume XLIV (section in the chapter: Immobilized Enzymes, pages 118-134, edited by Klaus Mosbach, Academic Press, New York, 1976)に記載の技術に従うナイロンマトリックス上に固定化される。
【0117】
前記組成物に含めるべきポリペプチドは、当業界で知られている方法に従い、例えば抗酸化剤又は還元剤を添加してポリペプチドの酸化を制限することで、前記ポリペプチドを組成物中で安定化することで安定化してもよく、あるいは、ポリマー、例えばPVP、PVA、PEG、糖類、オリゴマー、多糖類、あるいは、固体又は液体組成物中でのポリペプチドの安定性にとって有益であることが知られている他の適当なポリマーを添加することで安定化してもよい。保存剤、例えばProxelを添加して貯蔵寿命又は利用の際の性能を拡大することもできる。
【0118】
別の態様において、本発明の組成物は、二酸化炭素の回収に利用可能な組成物である。
【実施例】
【0119】
実施例1
B.クラウシイ炭酸脱水酵素のクローニング及びB.サブチリスにおける発現
炭酸脱水酵素配列は、異なるバチルス・クラウシイ株由来のゲノムDNAをPCRスクリーニングすることで同定した。B.クラウシイ株由来のゲノムDNAは、Qiagen Blood DNAキットを用い、取扱説明書のプロトコールに従うことで調製した。
【0120】
PCRスクリーニング
PCR(1)は総量50マイクロリットルで実施し、以下の試薬を添加した。1マイクロリットルのゲノムDNA調製物(鋳型)、10ピコモルの各プライマー(Bcaf1及びBcar1)、dNTP及びExpandポリメラーゼ/バッファー#1(Roche)。PCR条件は94℃で2分間;94℃で15秒間を9サイクル;55℃で45秒間;68℃で1分間;続いて68℃で10分間;4℃で20分間、そしてPCRプログラムの終了まで15℃であった。
【0121】
PCRスクリーニングに使用したプライマーは:
【化5】

であった。
【0122】
得られたPCR産物(配列番号1、3、5、7、9、11及び13)は、約700bpの長さを有しており、サイズ排除され、そして同一のプライマーで配列決定された。PCR(1)由来のPCR産物のアミノ酸翻訳物は、配列番号2、4、6、8、10、12及び14に相当する。この成熟天然酵素は、配列番号2、4、6、8、10、12及び14の1位から開始する。以下の表1は、前記PCR産物から翻訳された当該天然酵素間のポリペプチドレベルでの同一性を示している。
【0123】
表1:同一性マトリックス
【表1】

【0124】
SOE PCRのためのPCRフラグメントの生成
PCR(2)は、プライマー及び鋳型がそれぞれ10pmolの各プライマーblcaTSP及びbvl1362rev並びに1μlのPCR(1)(配列番号1、7、9、11及び13)由来の精製産物で置き換えられた点を除き、PCR(1)と同一のパラメーターを用いて実施した。
【化6】

【0125】
PCR産物は約700bpの長さを有しており、そして当該PCR産物は精製された。当該PCR産物は、その後のSOE PCR融合反応に適当なものであった(PCR(3)を参照のこと)。プライマーbclaTSPの性質に起因して、このPCR(2)産物の翻訳後のアミノ酸配列は、LLPHSAAALKASW...(ここで、LLPHSAAAはamyL遺伝子のフラグメントを表し(以下のSOE融合反応を参照のこと)、そしてLKASWはCAの組換え発現によって得られた、切断型の成熟ペプチドのN末端を表す)に変化した。したがって、全てのクローニングされたCAの成熟組換えペプチドは、配列番号2、8、10、12及び14において10位から開始し、そして、各配列のその位置に示されたアミノ酸とは無関係に、最もN末端のアミノ酸としてロイシンを有するN末端アミノ酸配列LKASWを有している。
【0126】
SOE融合
PCR(3)において、B. リシェニフォルミス由来のαアミラーゼ(AmyL)のシグナルプチドを、WO99/43835(本明細書で援用する)に記載のSOE融合によって、PCR(2)で得られた炭酸脱水酵素をコードするDNAとインフレームで融合した。炭酸脱水酵素をコードする配列を含む、PCR(3)から得られたヌクレオチドフラグメントは、相同組換えによって、バチルス・サブチリスの宿主細胞ゲノム内に組み込まれた。この遺伝子コンストラクトを、トリプルプロモーターシステム(WO99/43835に記載のもの)の制御下で発現させた。クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子はマーカーとして使用した(Diderichsen et al., 1993, Plasmid ZQ: 312-315 Diderichsen et al., 1993, Plasmid ZQ: 312-315に記載のとおり)。
【0127】
クロラムフェニコール耐性形質転換体は、前記コンストラクトの正確なDNA配列を確認するためにDNA配列決定により解析した。各組換え配列につき1つの発現クローンを選択した(LKASWで10位から開始する配列番号2、8、10、12及び14)。
【0128】
個々の炭酸脱水酵素発現クローンは、ロータリーシェーキングテーブル上で、400mlのダイズベースの培地に34mg/lのクロラムフェニコールを添加したものをそれぞれ含む1Lのバッフル付きエルレンマイヤーフラスコ中で発酵させた。クローンは37℃で4日間発酵させた。培養ブロス中の炭酸脱水酵素活性は、Wilbur, 1948, J. Biol. Chem. 176: 147-154に従い決定した(実施例4を参照のこと)。あるいは、炭酸脱水酵素活性は、Chirica et al., 2001 , Biochim. Biophys. Acta 1544に従い、基質としてパラニトロフェノールアセテートを用いてエステラーゼ活性として測定した(実施例5を参照のこと)。
【0129】
実施例2
B.ハロデュランス由来のCAのクローニング
B.ハロデュランス由来のCA(配列番号16)は、実施例1に従い、以下の修飾を加えてクローニングした。スクリーニングは実施しなかった。その代わりに、B.ハロデュランスのC−125株(JCM9153)のゲノムDNAを鋳型として使用し、PCR(2)のプライマーは、
【化7】

とした。
【0130】
プライマーcahTSPの性質に起因して、このPCR(2)産物の翻訳後のアミノ酸配列は、LPHSAAAPSTEPVD...(ここで、LPHSAAAはamyL遺伝子のフラグメントを表し(以下のSOE融合反応を参照のこと)、そしてPSTEPVDはCAの組換え発現によって得られた成熟ペプチドのN末端を表す)に変化した。最終的なSOE PCRは、実施例1に従い行った。
【0131】
実施例3
酵素精製
6個の組換え炭酸脱水酵素(実施例1に記載のとおりクローニングした配列番号2、8、10、12及び14並びに実施例2に記載のとおりクローニングした配列番号16)は、同一の手順で精製した。培養ブロスを遠心し(26,000×g、20分)、そして上清をWhatman 0.45 micro-mフィルターででろ過した。0.45 micro-mのろ液は約pH7であり、そして伝導度は約20mS/cmであった。0.45 micro-mのろ液をG25セファデックスクロマトグラフィーにより10mMのHEPES/NaOH、pH7.0に移し、そして10mMのHEPES/NaOH、pH7.0で平衡化した100mLのQ−セファロースFFカラムにアプライした。カラムを平衡バッファーで洗浄した後、結合したタンパク質を線形のNaCl勾配(0→0.5M)により3倍超のカラム量で溶出した。画分は溶出の間回収し、そしてこれらの画分は炭酸脱水酵素活性について試験した(実施例4を参照のこと)。CA活性を有する2つのピークを同定した。N末端の配列決定により、最初の溶出ピークがスーパーオキシドジスムターゼを含んでおり、そして第二の溶出ピーク(ピークB)は炭酸脱水酵素を含んでいたことが明らかとなった。ピークBは、脱イオン水で7回希釈し、そして、10mMのHEPES/NaOH、pH7.0で平衡化した40mlのSOURCE 30Qカラムにアプライした。カラムを平衡バッファーで洗浄した後、結合したタンパク質を線形のNaCl勾配(0→0.5M)により3倍超のカラム量で溶出した。当該カラム由来の溶出画分をCA活性について試験し、そしてポジティブな画分をSDS−PAGEによって解析した。クーマシーブルー染色したSDS−PAGEゲル上で支配的なバンドを示すことが明らかとなった画分を炭酸脱水酵素バッチ内にプールした。配列番号2、8、10及び12に相当するCAの酵素純度は80%純粋であると推定され、そして配列番号14及び16に相当する酵素は95%超純粋であった。
【0132】
実施例4
炭酸脱水酵素活性の検出
炭酸脱水酵素の検出のための試験は、Wilbur, 1948, J. Biol. Chem. 176: 147-154に記載されていたものである。条件設定は、式1
【化8】

に示した二酸化炭素からの炭酸水素の発酵に起因する、アッセイ混合物のpHの変化をベースとしている。
【0133】
本研究で使用した活性アッセイは、Chirica et al., 2001 , Biochim. Biophys. Acta 1544(1-2): 55-63の手順から導いた。約60〜70mMのCO2を含む溶液は、当該アッセイの45分〜1時間前に、シリンジの先端を用いて、CO2を100mlの蒸留水中で泡立てることで調製した。CO2溶液は、氷水浴中で冷却した。炭酸脱水酵素の存在について試験するために、2mlの25mMのTris、pH8.3(はっきりと目に見える青色を呈示するのに十分なブロモチモールブルーを含むもの)を、氷浴中で冷却した2本の13×100mmの試験管に添加した。一方の試験管に対し、10〜50μlの酵素含有溶液(例えば培養ブロス又は精製酵素)を添加し、そして等量のバッファーを第二の試験管に対し添加してコントロールとしての役割を果たさせた。2mlのシリンジ及び長いカニューレを用い、2mlのCO2溶液を非常に迅速且つ滑らかに各試験管の底に添加した。CO2溶液の添加と同時に、ストップウォッチを開始させた。溶液が青色から黄色へ変化するのにかかった時間を記録した(ブロモチモールブルーの転移点はpH6〜7.6である)。CO2水和反応の間の水素イオンの産生は、ブロモチモールブルーの色の点移転に達するまで溶液のpHを低下させる。色の変化にかかった時間は、サンプル中に存在している炭酸脱水酵素量に反比例している。試験管は、結果について再現性があるように、アッセイの間氷浴中に浸したままでなければならない。典型的には、触媒されなかった反応(コントロール)は、色の変化が生じるのに約二分かかり、一方、前記酵素で触媒された反応は、添加した酵素量に依存して、5〜15秒後に完了する。色の変化の検出はやや主観的であるが、三回の測定についての誤差は触媒された反応について0〜1秒の差の範囲内であった。1ユニットは、Wilbur法で規定される[1U = (1/tc)-(1/tu) x 1000](式中、Uはユニットであり、そしてtc及びtuは、それぞれ触媒反応及び無触媒反応の時間(秒)である)(Wilbur, 1948, J. Biol. Chem. 176: 147-154)。これらのユニットは、Wilbur-Anderson units (WAU)とも称される。
【0134】
実施例5
pニトロフェニルアセテートによる炭酸脱水酵素活性についての動態アッセイ
実施例3に記載のようにして得られた20マイクロリットルの精製CA酵素サンプル(0.01%のTriton X−100で希釈したもの)をマイクロタイタープレート(MTP)ウェルの底に据えた。本アッセイは、室温において、200マイクロリットルのパラ−ニトロフェノールアセテート(pNp−アセテート、Sigma, N-8130)基質溶液をMTPウェルに添加することで開始した。当該基質溶液は、アッセイ直前に、100マイクロリットルのpNP−アセテートストック溶液(50mg/mlのpNPアセテート/DMSO。冷凍保存)と、4500マイクロリットルのアッセイバッファー(0.1M Tris/HCl、pH8.0)とを混合することで調製した。OD405の増大をモニタリングした。当該アッセイに、バッファーブラインド(CAサンプルの代わりに20マイクロリットルのアッセイバッファー)を含めた。前記サンプルとバッファーブラインドとの間のOD405の増大の差異を炭酸脱水酵素活性の尺度とした(CA活性=ΔOD405(サンプル)−ΔOD405(バッファー))。
【0135】
実施例6
温度安定性アッセイ
精製したCA酵素(実施例3に記載のとおりに得られた配列番号2、8、10、12、14及び16)を50mMのHEPES/NaOH、pH7.5で10回平衡化し、そしてアリコートを15分間異なる温度(15〜80℃)でインキュベートした。配列番号14のCA酵素は更に、異なる温度で2時間インキュベートした。温度安定性アッセイの結果を表2に示す。M.サーモフィラ、B.ハロデュランス及びB.クラウシイ由来のCAは、はっきりと、ヒトCAIIよりも高い温度安定性を示した。更に、B.クラウシイのCAは、M.サーモフィラのCAよりも温度安定性の点で優れていた。ヒトCAII及びM.サーモフィラについてのデータはAlber and Ferry, 1996, J. Bacteriol. 178: 3270-3274のものを採用した。
【0136】
表2.異なる炭酸脱水酵素の温度安定性
【表2】

n.d.=未決定
【0137】
示差走査熱量測定(DSC)
精製したCA酵素(実施例3に記載のとおりに得られた配列番号14及び16)を50mMのHEPES/NaOH、pH7.5中で約1mg/mlに希釈した。DSCは90℃/時間のスキャン速度及び20℃〜90℃のスキャン範囲で実施した。B.クラウシイ(配列番号14)及びB.ハロデュランス(配列番号16)のCAの融点は、それぞれ67.4℃及び63.1℃であった。
【0138】
実施例7
アミノ末端タンパク質配列決定
精製した組換えCA(実施例3に記載のとおりに得られた配列番号2、8、10、12、14及び16)は、エドマン配列決定により配列決定した。決定した配列を表3に示す。B.ハロデュランス由来のCA(配列番号16)(配列番号16の18位から開始する切断型の酵素が精製後に得られた)を除く、全ての配列が予想した成熟ペプチド配列と一致していた。組換えCAのタンパク質の分子量は、エレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析(ES−TOF−MS)によって決定した。
【0139】
表3:組換えCAのN末端配列
【表3】

【0140】
実施例8
Wilbur-Andersonアッセイを用いた熱安定性
配列番号2、8、10、12及び14に相当する精製したCA酵素及びウシ炭酸脱水酵素(Sigma、カタログ番号C3934)の熱安定性を測定した。CAは、実施例3に記載のように得られた。
【0141】
熱安定性は以下のように測定した:10マイクロリットルの各酵素を1MのNaHCO3溶液(pH8.05)中で10倍希釈し、そして所望の温度で15分又は2時間インキュベートした。1MのNaHCO3溶液も、コントロールとして同じ温度で加熱した。溶液は、アッセイを実施する前に室温にまで冷却した。加熱した酵素溶液のWilbur-Anderson活性は、以下の若干の変更を伴い、実施例5の手順に従い測定した。CO2溶液はアッセイの30分前に調製し、氷浴は4℃の水浴に置き換え、酵素量は10マイクロリットルであり、そして触媒されなかった反応(コントロール)は40〜50秒間行った。高温でのインキュベーション後の残留活性を表4に提示する。
【0142】
表4:異なる炭酸脱水酵素の温度安定性
【表4】

n.d.=未決定
【0143】
実施例9
中空糸バイオリアクター内での混合ガス流からのCO2の抽出
排ガスと似ているガス流からCO2を選択的に回収するよう、研究室規模の液膜含有中空糸バイオリアクター(HFB)を配置した。
【0144】
中空糸膜バイオリアクターの設定
多孔性疎水性中空糸膜は、ガス流と膜液体との間に高い接触表面積を提供する。その結果、液体の炭酸化又は液体からのCO2の除去が容易になる。選択したモジュールは、0.18m2の活性表面積及び0.01×0.04micro-mの平均孔径を有する2300のパラレルな中空糸から成る(Membrana, North Carolina, USAから購入したLiquicel(登録商標)MiniModule(登録商標) 1x5.5)。これらの膜は工業規模にスケールアップするのが容易であり、そして廃水処理及び飲料用の炭酸化のための産業で使用されている。バイオリアクターの配置の略図を図1に示す。当該配置において、膜液体を、容積移送式ポンプを用いて中空糸の内腔を通過させた。液体の流速は約2ml/分に設定した。15%CO2(9立方センチメーター/分(CCM))及び85%N2(51CCM)(フィードガス)の混合物を含むガス流は、中空糸のフィード側に逆流して進入し、処理したガス流(洗浄済みガス)は、中空糸のスィープ側でモジュールを励起させた。2つの質量流量制御装置を使用して、実験を通じて一貫した濃度を有する窒素と二酸化炭素とを混合した。質量流量計を使用して、洗浄したガス及びフィードガスがリアクターを出る際の流れをモニタリングした。ガス並びに液体の流れ及び圧力は、液体が、前記モジュール内の気相及び液相の泡に進入するのを防ぐために調節された。
【0145】
この配置の目的は、CO2を炭酸水素に水和し、これは、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いてフィードガス及び洗浄済みガス中の濃度を解析することで測定した。
【0146】
ガスクロマトグラフィー法(GC−TCD)
島津2010ガスクロマトグラフと熱伝導検出器及びガスサンプリングバルブをCO2濃度測定に使用した。キャピラリーCarboxen Plot1010カラムを使用して窒素及び二酸化炭素を検出した。カラムを等温となるよう35℃で7分間加熱し、温度を20℃/分の速度で200℃にまで増大させ、そしてこれを200℃で2分間維持した。インジェクターと検出器の温度を230℃で維持した。カラムの流速を1ml/分とし、分割比を10対1とし、そしてキャリアーガスをヘリウムとした。窒素及び二酸化炭素のピークは、それぞれ6.4分及び15.3分の保持時間で検出した。CO2ピークは、Scott Specialty gases (Pennsylvania, USA)から購入した、3つの二酸化炭素のスタンダード、1000pm、1%及び10%CO2/窒素を用いて較正した。
【0147】
膜液体
最初に、1Mの炭酸水素ナトリウム(pH8)を膜液体として選択した。しかしながら、炭酸水素ナトリウム溶液はこのpHでCO2により飽和していることが明らかとなり、その結果、水和反応(炭酸化)に全く適していなかった。pH9以上の1M炭酸水素ナトリウム溶液は、二酸化炭素/炭酸水素で飽和していなかったので、CO2水和により適していた。1Mの炭酸水素ナトリウム(pH9.0)を、酵素を含まないコントロール溶液として使用した。別の実験では、中空糸を脱イオン(DI)水ですすいだ後、8部の1M炭酸水素ナトリウム(pH9.6)+2部の配列番号14の炭酸脱水酵素(0.6gの純粋な酵素タンパク質/Lの最終的なCA濃度に相当)の溶液を膜液体として使用した。これらの膜液体を用いたフィードガス及び洗浄済みガス中CO2濃度はGCで解析した。各実験は、異なるモジュールを用いて少なくとも3回繰り返し、そしてGCに対し少なくとも3回のインジェクションを行った。
【0148】
結果
表5は、各膜液体を用いて集めたデータを示す。HFCLMBを出た洗浄済みガス中の二酸化炭素濃度は、膜液体中の炭酸水素ナトリウムコントロール溶液のpHに大きく依存していることが明らかとなった。炭酸水素溶液のpHの増大は、二酸化炭素から炭酸水素への水和速度を増大させる。
【0149】
更に、配列番号14の炭酸脱水酵素を炭酸水素ナトリウム溶液に室温で添加した場合、洗浄済みガス中のCO2量が有意に減少し、そしてCO2についてのリアクターの選択性が実質的に増大していることが明らかとなった。pH9.95の酵素−炭酸水素溶液も膜液体として試験したが、洗浄済みガス中でCO2ピークは検出されなかった。言い換えると、pH9.95でほぼ完全にフィードガスからのCO2の除去が観察された。
【0150】
表5:中空糸膜バイオリアクターを出るガス流のCO2濃度に対する膜液体の効果
【表5】

【0151】
これらの結果は、配列番号14の炭酸脱水酵素が、少量であっても(〜0.6g酵素タンパク質/L)、コントロールと比較した場合に中空糸膜リアクターの効率を有意に増大させることを示唆している。
【0152】
実施例10
中空糸CLMバイオリアクター内の混合ガス流からのCO2抽出
バイオガス組成と似ているガス流からCO2を選択的に回収するよう、研究室規模の液膜含有中空糸バイオリアクター(HFB)を配置した。
【0153】
バイオリアクターの配置は、ガス流が40%CO2(8CCM)及び60%CH4(12CCM)の混合物を含み、これが中空糸のフィード側に進入する点を除き、実施例9に記載のものと本質的に同一のものとした。中空糸膜を出るガスは、この配置の目的が、産生したガス流からCO2を回収する、炭酸脱水酵素含有バイオリアクターを用いてバイオガス流中のメタンのパーセンテージを増大させることができることを示すことにあるため、濃縮ガスと命名する。これは、前記ガス混合物のCO2成分を液相で炭酸水素に選択的に水和することで可能とされる。この後処理の効率は、ガスクロマトグラフ(GC)を用いてフィードガス及び濃縮ガス中のメタン濃度を解析することで測定した。
【0154】
ガスクロマトグラフィー法(GC−FID)
島津2010ガスクロマトグラフと水素炎イオン化検出器及びガスサンプリングバルブをCH4濃度測定に使用した。キャピラリーCarboxen Plot1010カラムを使用してメタンを検出した。カラムを等温となるよう200℃で3.5分間加熱した。インジェクターと検出器の温度を230℃で維持した。カラムの流速を2.35ml/分とし、分割比を20対1とし、そしてキャリアーガスをヘリウムとした。水素及び空気の流量は、それぞれ45mL/分及び450mLとした。メタンのピークは、1.9分の保持時間で検出した。CH4ピークは、Scott Specialty gasesから購入した、4つのメタンのスタンダード、1000pm、1%、10%及び99%メタン/窒素を用いて較正した。
【0155】
膜液体
使用した膜液体は、コントロールについては、1Mの炭酸水素ナトリウム(pH9.3)であった。炭酸脱水酵素及び濃度は実施例9に記載のとおりとした。
【0156】
結果
表6は、CO2−CH4混合物を用いて集めたデータを示す。これから、ガス流から除去したCO2量が、炭酸脱水酵素を膜液体に添加した場合、室温では実質的に増大したことが分かる。従って、バイオリアクター内で回収されたCO2量は有意に増大し、その結果、出ガス流中のメタン含量は有意に増大した。
【0157】
表6.中空糸膜バイオリアクターから出るバイオガス流のメタン濃度に対する膜液体の効果
【表6】

【0158】
実施例11
膜液体中にMEAを含む中空糸膜バイオリアクター内での混合ガス流からのCO2の抽出
本実験は、常用の二酸化炭素吸収剤に対する炭酸脱水酵素の添加の効果を実証するものである。
【0159】
バイオリアクターの配置は、ガス流が28.6%のCO2(20CCM)及び71.4%のN2(50CCM)の混合物を含み、これが中空糸のフィード側に進入する点を除き、実施例9に記載のものと本質的に同一のものとした。ガスクロマトグラフィー法は実施例9と同一のものとした。
【0160】
膜液体
使用したコントロールの膜液体は、モノエタノールアミン溶液(MEA)/水とした(1%v/v)。これを、0.3gの純粋な酵素タンパク質/L溶液に相当する10部のCAと1部のMEAと89部の水とを含むMEA−CA水溶液から構成される膜液体と比較した。
【0161】
結果
データを表7に示す。要約すると、1%MEA溶液を含むHFBは、フィードガス中の全CO2の48.6%を除去することができた。0.3g/Lの炭酸脱水酵素を添加することで、1%MEA溶液中のCO2除去が84.3%に増大した。
【0162】
これは、配列番号14の炭酸脱水酵素がMEAの存在下で活性であり、MEA含有液体におけるCO2吸収を有意に改善することができることを示している。驚くべきことに、CAが存在している場合、当業界で知られているものと比較して、高レベルのCO2除去を達成するのにわずかな量のMEAのみが溶液中で必要とされる。典型的な水溶性アミンベースのCO2吸収溶液は15〜30%の範囲でアミンを含んでいる。
【0163】
表7.中空糸膜を出るガス流のCO2濃度に対する膜液体の効果
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素含有媒体から二酸化炭素を抽出するための、メタノサルシナ・サーモフィラ株TM-1 (DSM 1825)由来のγクラスの炭酸脱水酵素を除く、細菌又は古細菌又は真菌を起源とする熱安定性炭酸脱水酵素の使用。
【請求項2】
前記炭酸脱水酵素が、炭酸脱水酵素のα、β、及びγクラスから選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記炭酸脱水酵素がαクラスの炭酸脱水酵素又はβクラスの炭酸脱水酵素である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記炭酸脱水酵素がαクラスの炭酸脱水酵素である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
α炭酸脱水酵素がバチルス・クラウシイKSM−K16由来の炭酸脱水酵素(NCBI受入番号Q5WD44又は配列番号14)又はバチルス・ハロデュランス由来の炭酸脱水酵素(NCBI受入番号Q9KFW1又は配列番号16)と少なくとも60%同一である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記αクラスの炭酸脱水酵素が:
a)配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも94%の同一性を、あるいは番号6のアミノ酸配列と少なくとも91%の同一性を、あるいは番号8のアミノ酸配列と少なくとも96%の同一性を、あるいは番号10のアミノ酸配列と少なくとも89%の同一性を、あるいは番号12のアミノ酸配列と少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド;
b)中程度にストリンジェントな条件のもと、
i)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10及び配列番号12から成る群から選択される成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、
ii)成熟酵素をコードする、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の領域から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列、
iii)成熟酵素をコードする、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の領域から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列に含まれるcDNA配列、
iv)少なくとも100個の連続した配列から成る、(i)、(ii)又は(iii)の部分配列、あるいは
v)(i)、(ii)、(iii)又は(iv)の相補鎖、
とハイブリダイズする核酸配列がコードするポリペプチド;及び
c)炭酸脱水酵素活性を有する(a)又は(b)のフラグメント、
から成る群から選択される、単離ポリペプチドである、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
前記αクラスの炭酸脱水酵素が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12と少なくとも97%同一のアミノ酸配列を有する単離ポリペプチド、あるいはその機能的フラグメントである、請求項4〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記炭酸脱水酵素がβクラスの炭酸脱水酵素である、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
β炭酸脱水酵素が、メタノバクテリウム・サーモアウトトロフィカムΔH由来のβクラスの炭酸脱水酵素(NCBI受入番号Q50565)、又はNCBI受入番号Q5WE01として同定されたバチルス・クラウシイKSM−K16由来のβクラスの炭酸脱水酵素、又はバチルス・ハロデュランス由来のβクラスの炭酸脱水酵素(NCBI受入番号Q9K7S3)と少なくとも60%同一である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記熱安定性炭酸脱水酵素が、少なくとも45分間、45℃超の温度で活性を維持する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記熱安定性炭酸脱水酵素がバイオリアクター内で使用される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記バイオリアクターが含有液膜(CLM)を含んで成る、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記膜液体が、少なくとも9.0のpHを有する炭酸水素バッファーである、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
前記二酸化炭素含有媒体がガスである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記二酸化炭素含有媒体が多相混合物である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
二酸化炭素含有ガス又は多相混合物が燃焼から放出される、請求項14又は15に記載の使用。
【請求項17】
前記ガスが煙道ガスである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記二酸化炭素含有ガス又は多相混合物が天然ガス又は合成ガスである、請求項14又は15に記載の使用。
【請求項19】
前記二酸化炭素含有ガスがバイオガスである、請求項14に記載の使用。
【請求項20】
前記二酸化炭素含有媒体が液体である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
二酸化炭素の抽出が45℃〜60℃の温度で実施される、請求項1〜20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
高温で炭酸脱水酵素を有する単離ポリペプチドであって:
a)配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも94%の同一性を、あるいは番号6のアミノ酸配列と少なくとも91%の同一性を、あるいは番号8のアミノ酸配列と少なくとも96%の同一性を、あるいは番号10のアミノ酸配列と少なくとも89%の同一性を、あるいは番号12のアミノ酸配列と少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド;
b)中程度にストリンジェントな条件のもと、
i)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10及び配列番号12から成る群から選択される成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、
ii)成熟酵素をコードする、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の領域から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列、
iii)成熟酵素をコードする、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の領域から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列に含まれるcDNA配列、
iv)少なくとも100個の連続した配列から成る、(i)、(ii)又は(iii)の部分配列、あるいは
v)(i)、(ii)、(iii)又は(iv)の相補鎖、
とハイブリダイズする核酸配列がコードするポリペプチド;及び
c)炭酸脱水酵素活性を有する(a)又は(b)のフラグメント、
から成る群から選択される、単離ポリペプチド。
【請求項23】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12のアミノ酸配列に対し、少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項22に記載のポリペプチド。
【請求項24】
前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、成熟酵素をコードする、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の領域から成る群から選択されるか、あるいは遺伝子コードの縮重が原因で異なっているその配列、から選択される、請求項22に記載のポリペプチド。
【請求項25】
炭酸脱水酵素活性が、45℃超の温度で少なくとも15分間維持される、請求項22〜24のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項26】
炭酸脱水酵素活性が、45℃超の温度で少なくとも30日間維持される、請求項25に記載のポリペプチド。
【請求項27】
請求項22〜26のいずれか1項に記載のポリペプチドを含んで成る組成物。
【請求項28】
炭酸脱水酵素がマトリックス上に固定されている、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記マトリックスが、ビーズ、繊維、ファイバー、膜、粒子、多孔性表面、ロッド及びチューブの群から選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
二酸化炭素の回収に利用可能であることを特徴とする、請求項27〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
請求項22〜25のいずれか1項で規定されているポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する、単離ポリヌクレオチド。
【請求項32】
a)中程度にストリンジェントな条件のもと、DNA群と、
i)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列、
ii)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列に含まれているcDNA配列、あるいは
iii)(i)又は(ii)の相補鎖、
とをハイブリダイズさせ;そして
b)ハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、高温で炭酸脱水酵素活性を有するポリペプチドをコードするものを単離すること、
によって得られる単離ポリヌクレオチド。
【請求項33】
発現宿主において前記ポリペプチドの産生を指示する1又は複数の制御配列と作用可能に連結した、請求項31又は32のポリヌクレオチドを含んで成る核酸コンストラクト。
【請求項34】
請求項33に記載の核酸コンストラクトを含んで成る組換え発現ベクター。
【請求項35】
請求項33に記載の核酸コンストラクト、又は請求項34に記載の組換え発現ベクター、を含んで成る組換え宿主細胞。
【請求項36】
a)野生型の状態で前記ポリペプチドを産生することができる株を培養して、当該ポリペプチドを産生し;そして
b)当該ポリペプチドを回収すること、
を含んで成る、請求項22〜26のいずれか1項に記載のポリペプチドを産生するための方法。
【請求項37】
a)請求項35で規定された組換え宿主細胞を、前記ポリペプチドの産生を誘導する条件のもと培養し;そして
b)当該ポリペプチドを回収すること、
を含んで成る、請求項22〜26のいずれか1項に記載のポリペプチドを産生するための方法。
【請求項38】
前記リアクターが、少なくとも9.0のpHを有する炭酸水素バッファー及び炭酸脱水酵素を含んで成る、二酸化炭素を抽出するためのバイオリアクター。
【請求項39】
前記バッファーがアミンベースのCO2吸収化合物を更に含んで成る、請求項38に記載のバイオリアクター。
【請求項40】
前記炭酸水素バッファーが、膜液体の構成成分である、請求項38又は39に記載のバイオリアクター。
【請求項41】
前記膜液体が含有液膜(CLM)に含まれている、請求項40に記載のバイオリアクター。
【請求項42】
前記炭酸脱水酵素が、膜液体1L当たり1g未満の濃度で添加される、請求項40又は41に記載のバイオリアクター。
【請求項43】
前記炭酸脱水酵素が熱安定性炭酸脱水酵素である、請求項38〜42のいずれか1項に記載のバイオリアクター。
【請求項44】
前記熱安定性炭酸脱水酵素が、請求項44に記載の炭酸脱水酵素である、請求項38〜42のいずれか1項に記載のバイオリアクター。
【請求項45】
前記アミンベースのCO2吸収化合物が10%未満である、請求項39〜44のいずれか1項に記載のバイオリアクター。
【請求項46】
前記アミンベースの吸収化合物がモノエタノールアミンである、請求項45に記載のバイオリアクター。

【図1】
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【公表番号】特表2010−517533(P2010−517533A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548438(P2009−548438)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/052567
【国際公開番号】WO2008/095057
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】