説明

熱強化ガラスの製造方法

本発明は熱強化ガラスの製造方法に関する。このタイプの表面処理は、特に適用される、機械的性質特に強度が要求されるところに、例えば自動車産業や建築や太陽エネルギーの利用に適用される。本発明は、2.8mm未満の厚みを持った熱強化ガラスの製造方法の発展の問題に対処する。好適には、制御された急冷の利用により少ないエネルギー入力で熱強化ガラスを製造することができるように当該方法が行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文部分に記載された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面処理されたガラスは、より大きな経済的な役割を果たしており、熱強化ガラスが、その製品カテゴリーの主な部分を占めている。このタイプの表面処理は、例えば、自動車産業や建築や太陽エネルギー利用において、機械的性質が、特に強度が要求されるところに特に適用される。「単一窓ガラスの安全ガラス」(SPSG: Single-pane safety glass)は、特別な基準でその性質やテスト方法などに関して規定されている。この基準は、ドイツ工業規格DIN EN 12150-1(熱的にあらかじめ応力の加えられたソーダ石灰の単一窓ガラスの安全ガラス、2000年11月)において特定される。3mmの最小厚さを備えたガラスに対してだけこの基準が存在することは注目すべきである。市場分析は、2.8mm厚以上のSPSGガラスだけが市場に出て入手可能なことを示す。かなり2.8mm未満の厚みで、SPSGガラスと同じかさらに著しく改善された機械的性質を持った薄くて熱強化ガラスは、減量、コスト削減および透過率(transmission)特性の改善から物流(ロジスティックス)の利点までの最も多様な応用分野の戦略的最適化に帰着するだろう。かかるガラスが、合わせガラス(laminated safety glass:VSG)、強化ガラスあるいは真空断熱ガラスのような製品の構成要素として用いられるとき、多くの新しい応用分野、市場およびコスト削減が想定される。
【0003】
したがって、そのような高い内在圧縮応力を備えた薄い熱強化ガラスがなぜ存在しないについての疑問が提起される。その疑問に答えるために、製造プロセスを考える必要がある。SPSGガラスは、フロート・ガラスのような普通のソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物の場合に、おおよそ680℃までまず加熱される。その次に、空気が初めに表面を急冷する急冷がその表面で続く。当該急冷の過程で、温度勾配が生成される。当該急冷は、全ガラス体が室温まで冷えるとき、表面圧縮応力に変わる表面引張応力を今度はもたらす。これらのプロセスは、非特許文献1において、詳細且つ定量的に記載されている。熱強化されている薄いガラスについては、より大きな温度勾配が同じ圧縮応力を達成するのに必要であり、より強力な冷却で可能である。これは例えば液体冷却により基本的には可能であるが、それは、冷却中に表面上に一時的な引張応力を生成してガラスの破壊に導くことをもたらす。液体冷却は、例えばホウケイ酸ガラスの場合には用いられるが、ホウケイ酸ガラスが、普通の市販の入手可能なフロート・ガラスの熱膨張係数の約40%だけになる非常に低い熱膨張係数を有するので、このことが可能である。しかしながら、これは、室温での引張応力および永久に内在する圧縮応力が同じ冷却の方策(measure)に対して相応に低い値を有することを意味する。ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスがより迅速に冷却されるならば、ガラス・バッチにおける強度分布に応じて、ますます多くのガラスが冷却過程の間に破壊されるであろう。基本原理として、このことは、2mm厚のガラスが想定されるが、ガラス・バッチのほんの一部分がこの処理工程によって破壊されないことを意味する。それにより、かかるガラスに対する強い市場の関心があるにもかかわらず、かかるガラスの産業上の非存在が説明される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ガラステクニカルレポート、57巻、9号、221−228頁、1984年に発刊されたW.キーファーの「低熱膨張ガラスの熱強化」(W. Kiefer: “Thermisches Vorspannen von Glasern niedriger Warmeausdehnung”, Glastechnische Berichte 57 (1984) No. 9, pp. 221−228)
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、2.8mm未満の厚みを持った熱強化ガラスの製造方法を発展させる(develop)ことである。この目的は、請求項1の特徴に係る方法によって達成される。
【0006】
新しい製造方法の基本概念は、加熱プロセスの間に、熱強化されるガラスにガラスの強度を高める方法を施すことである。
【0007】
本発明の発展(development)において、市販されているレーザー切断方法のような方法が適切である。当該方法は、曲げ強度を100%以上高めて、端部から発生する破壊の原因を低減する。さらにあるいはその代わりに、WO2004/096724 A1に開示されるように、火炎磨きあるいはAlCl3との処理が行われてもよい。WO2004/096724 A1における実開示は、参照することにより本願の実開示に組み込まれる。このように達成された強度の増加により、冷却段階でのより大きな引張応力、その結果より大きな温度勾配、そして最終的に、同じ厚みに対するより大きな圧縮応力あるいはより薄い厚みに対する同じ圧縮応力のいずれか、あるいは特性における両方の改善の組合わせ、を可能にする。これは400W/m2Kより大きな使用中の伝熱係数を有する媒体で急冷することにより達成することができる。様々な冷却方法が、ガラステクニカルレポート、57巻、9号、221−228頁、1984年に発刊されたW.キーファーの「低熱膨張ガラスの熱強化」(W. Kiefer: Thermisches Vorspannen von Glasern niedriger Warmeausdehnung; Glastechnische Berichte 57 (1984) No. 9, pp. 221−228)に記載されている。様々な冷却方法は、単独であるいは組合わせで用いられてもよい。当該刊行物における開示は、参照することにより本発明の開示に組み込まれる。
【0008】
ガラス強度を高めるためのアップストリームの方策(upstream measure)に基づくこの方法は、あらゆるガラス組成物に対しても可能である。また、冷却速度は、もとの膨脹係数に基づいて、一時的な強度増加が冷却操作の間に有効である程度までそれぞれ増加することができる。
【0009】
ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを熱強化するために液相を用いるという可能性は、実質的なコスト削減に加えて追加の利点を潜在的に備えている。表面処理は、例えば視覚特性あるいは耐薬品性に関して、しばしば所望される。先行技術から分かるように、これは表面上にSiO2を富化することにより永続的に得ることが可能であり、低減された屈折率が、反射率ロスの低下及び透過率の増大をもたらし、耐薬品性を同時に増加させる。このことは、2つの基礎的な方策(measure)で得られる。
【0010】
1.他の要素の量を減少させること(例えば脱アルカリ)。実施例:3重量%の硫酸アンモニウム溶液で冷却することによって、加水分解の安定性が2倍になり、反射を犠牲にして0.5%だけ透過率曲線を改善する。
【0011】
2.冷却中に水溶液と一体となった(with)SiO2懸濁液を加えること。そこでは、ゾルーゲル技術から知られた水溶液が、機械的特性、化学的特性および視覚的特性に関するさらなる最適化を達成するために用いられる。
【0012】
この反応性薄膜析出は、高い熱膨脹係数を持ったガラスを含むガラスを冷却するために液相を用いることによって可能になる、熱強化の方法と結合される。そして、高い熱膨脹係数を持ったガラスは、ガラスの強度を高める方策(measure)を適用することだけにより可能になる。
【0013】
特に好ましい1つの変形例は、本発明の概念に係る熱強化ガラスを製造するための方法の更なる発展(development)、あるいは先に説明されたようなものの発展(development)に基づく。
【0014】
上述された概念は、特に、2.8mm未満の厚みを備えた熱強化ガラスを製造するための方法を発展させる(develop)問題に対処する(address)。基本的な概念は、加熱プロセスの間に、熱強化されるガラスにガラスの強度を高める方法を施すことである。かかる方法に適切なものは、市販されているレーザー切断方法である。レーザー切断方法は、曲げ強度を100%以上高めるとともに、端から発生する破壊の原因を低減する。さらにあるいはその代わりに、火炎磨きあるいはAlCl3との処理が行なわれてもよい。このように達成された強度の増大は、冷却段階の間により大きな引張応力を可能にし、そしてその結果、より大きな温度勾配を可能にし、そして、最終的には、同じ厚みに対してより大きな圧縮応力を可能にするか、あるいはより薄い厚みに対して同じ圧縮応力を可能にするか、あるいは特性における両方の改善の組合わせを可能にする。これは、400W/m2Kより大きな使用中の伝熱係数(heat transfer coefficient in use)を有する媒体で急冷することにより達成される。
【0015】
制御された冷却に関する限り液状媒体での急冷を取り扱うことが難しいことは、本発明の発展(development)によって認識されている。それは、ガラスの破壊を防ぐために安全範囲が順守され(complied with)なければならないことを意味する。加熱と冷却のプロセスにより、熱強化ガラスの製造は、実質的なエネルギー量を消費する。
【0016】
制御された急冷を用いて、より少ないエネルギー入力で熱強化ガラスが製造されるように、本発明の概念に係る方法を発展させることが、特に好ましい発展(development)の目的である。
【0017】
本目的は、冷却状態のガラスを加熱能力を備えた板状クーラーに挿入し、ガラスの変態温度(transformation temperature)よりも高温に当該ガラスを加熱することにより達成される。そこでは、ガラスに接する材料表面は、ガラスが108.5Pa・sより大きな粘性を有する最高温度を有してもよい。前記の加熱の後、ガラスを制御された冷却にさらし、冷却状態にあるガラスを板状クーラーから除去することにより達成される。用いられる板状クーラーは、銅やアルミニウムや鋼やその他の金属(それらの合金を含む)のような異なった金属から構成されてもよい。この板状クーラーは、異なった種類のガラス(化学成分や厚みに関して)を製造するために必要とされるガラスにおける各温度勾配を調節できるために加熱及び冷却が可能であるべきである。適切な加熱貫通係数(heat penetration coefficient)に加えて、材料は、単一体の材料としてあるいは材料の組合わせとして、例えば基本的材料(basic material)のまわりのブレース(brace)として、連続的な温度変化に耐えてその形状を保持するべきである。制御された冷却は、冷却中のガラス面とガラスの中間部分との間の温度差を測定し、冷却プロセスを制御するためにこの変動(variable)を用いることにより達成される。その表面温度は、板状クーラー表面での熱電素子(thermoelement)、あるいは5μm範囲での高温計(pyrometer)の測定によってセットすることができる。冷却中の最高温度が同定される、及び/又は、ガラスの断面を横切る温度プロフィールは、ガラスの厚みを横切って横方向に前後に移動される合焦した高解像度の高温計を用いて検出される。ガラスプレートは、その厚みに関して黒体を表わす。それは、厚みを横切る安定な温度分布を仮定すると、全ての冷却プロセスの間に全表面を横切る内側温度を安定的に測定することが可能であることを意味する。フロート・ガラスの8mm厚のガラス板上での旋回(pivoting)する高温計測定から得られた結果が、図11の図面に示される。測定された内側温度は、冷却プロセスを制御するために用いられる。
【0018】
導入される温度勾配は、ガラスの厚みや、膨脹係数、有効熱伝導率および弾性特性のような温度に依存したガラスに特有な特性に基づく。伝熱を制御するために、及び、均一な接触のために、例えばアルミニウム石鹸(aluminium soap)や脱アルカリ物質(実施例:硫酸塩(硫酸アンモニウム)あるいは塩化物(塩化アルミニウム))のような特別な「潤滑剤(lubricant)」の使用が勧められる。冷却および加熱のための直接の方法および間接の方法が用いられる。加熱は、抵抗加熱、誘導加熱、火炎加熱であり、冷却は、水、塩類(凝集変換熱(aggregation conversion heat)を利用する)、空冷、およびこれらの様々な方法の組合わせ)である。
【0019】
板状クーラーは、薄い窓ガラスを平行形状に強いることにより薄い窓ガラスに対する波形問題をなくす。フレキシブルな板では、冷却によって熱強化が始まる前にガラスを形作ることが可能である。このように、熱強化を備えた非平面構造(nonplanar geometry)が可能になる。
【0020】
(本発明の)変形例が、図面を参照して説明される。当該変形例は、スケールに従って示されるように必ずしも意図されていない。もっと正確に言えば、図面は、模式的に、及び/又は、わずかに変形した形態で提供される。図面から直ちに明白でない技術原理に関する細部に対する適切な先行技術について申し述べる。本発明の一般的な概念から逸脱することなく、多くの改造、および形状への変更、及び変形例の細部がなされることを考慮されるべきである。詳細な説明、図面、および請求項において示された本発明の特徴は、本発明の発展(development)に対して別々に及びいずれかの組合わせで必須で(essential)あってもよい。さらに、詳細な説明、図面および/または請求項に示された特徴の少なくとも2つの全ての組合わせは、本発明の範囲内にある。本発明についての一般的な概念は、以下に説明された好ましい変形例の正確な形状または細部に制限されないし、請求項における主題との比較において制限されるであろう1つの主題に制限されない。測定範囲が明示されるとき、指定された限界内の値が閾値として開示され、随意に適用され且つ主張されてもよい。簡略化のために、同じ参照数字が、同一か類似の部分に対して、あるいは、同一又は類似の機能を持った部分に対して用いられる。
【0021】
本発明の更なる利点、特徴および細部は、図面を参照して、好ましい変形例の次の説明から導き出す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の方法の好ましい変形例で処理された4mm厚のガラス板(glass pane)にダメージを与えたときの写真を示す。
【図2】実施例2の方法の好ましい変形例で処理された2mm厚のガラス板(glass pane)にダメージを与えたときの写真を示す。
【図3】実施例3の方法の好ましい変形例で処理された2mm厚のガラス板(glass pane)にダメージを与えたときの写真を示す。
【図4】本発明の方法の特に好ましい推進の1つの変形例のために板状ヒーターおよび板状クーラーを備えるシステムを説明する模式図を示す。
【図5】本発明の方法の特に好ましい推進の1つの変形例のためにタンデム・システムを説明する模式図を示す。
【図6】直接接触冷却で、本発明の方法の特に好ましい推進の1つの変形例に従って処理されたガラス板(glass pane)の破壊パターンを説明する写真を示す。
【図7】本発明の方法の特に好ましい推進の1つの変形例に従って熱強化及び/又は直接接触冷却のあとに、4mm厚み(左側)および2mm厚み(右側)のガラス板(glass pane)を比較して、破壊パターンを説明する写真を示す。
【図8】直接接触冷却で、本発明の方法の特に好ましい推進の1つの変形例に従って処理されたガラス板(glass pane)の破壊パターンを説明する写真を示す。
【図9】直接接触冷却で、本発明の方法の特に好ましい推進の1つの変形例に従って処理された2mm厚のガラス板(glass pane)の引張試験画像を説明する写真を示す。
【図10】自動車ガラスの従来の通りに処理されたガラス板(glass pane)の引張試験画像を示す。
【図11】本発明の方法の特に好ましい推進の1つの変形例に従って処理されたフロート・ガラスの8mm厚のガラス板(glass pane)で高温計測定を旋回する結果を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の概念に係る方法は、以下の実施例を参照して説明される。
【0024】
実施例1
4mm厚であるとともにレーザー切断によって切断されて寸法構成された、市販のソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを主成分とするフロート・ガラス板(glass pane)は、680℃の全体温度(integral temperature)に加熱され、加熱炉から取り除かれたあと、10cm×10cmサイズの表面上に1リッター/分を用いて、最大30秒間にわたって両面に噴霧冷却することによって冷却される。図1に示されたクラッキングの写真は、標準で市販のインパクト・パンチ工具を用いて得られる。噴霧冷却が適用されたとき、レーザー切断によって切断及び寸法構成されない類似のフロート・ガラス板は壊れた。
【0025】
実施例2
2mm厚であるとともにレーザー切断によって切断されて寸法構成された、市販のソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを主成分とするフロート・ガラス板(glass pane)は、680℃の全体温度(integral temperature)に加熱され、加熱炉から取り除かれたあと、10cm×10cmサイズの表面上に2リッター/分を用いて、最大30秒間にわたって両面に噴霧冷却することによって冷却される。
【0026】
図2に示された欠陥は、標準で市販のインパクト・パンチ工具を用いて得られる。噴霧冷却が適用されたとき、レーザー切断によって切断及び寸法構成されない類似のフロート・ガラス板は壊れた。
【0027】
実施例3
2mm厚であるとともにレーザー切断によって切断されて寸法構成された、市販のソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを主成分とするフロート・ガラス板(glass pane)は、680℃の全体温度(integral temperature)に加熱される。加熱炉から取り除かれたあと、10cm×10cmサイズの表面上に4リッター/分を用いて、最大30秒間にわたって両面に噴霧冷却することによって冷却される。図3に示された破壊の写真は、標準で市販のインパクト・パンチ工具を用いて得られる。噴霧冷却が適用されたとき、レーザー切断によって切断及び寸法構成されない類似のフロート・ガラス板は壊れた。
【0028】
次の実施例は、本発明の特に好ましい発展(development)に係る方法について説明する。
【0029】
図4は、本発明の方法に係る熱強化のためのシステムの原理を示す。当該方法の特に有利な変形例は、熱の移動(thermal transfer)および貯蔵媒体を用いて、交互に冷却および加熱を行うことにより、タンデム・システムとして2つの板状クーラーが組み合わせられたものである。システムAが貯蔵媒体で冷却される場合、システムBが貯蔵媒体で加熱され、その逆もまた然りである。原理は図5に示される。
【0030】
実施例4
4mm厚であるとともにレーザー切断によって10cm×10cmサイズに切断されて寸法構成された、市販のソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを主成分とするフロート・ガラス板(glass pane)は、750℃の炉内温度(integral temperature)、4分間にわたって、マッフル炉の耐火支持体の上で加熱される。
【0031】
耐火支持体とガラス板との間にある熱電素子(thermoelement)を用いる測定は、ガラス板の温度が少なくとも700℃に達していたことを明らかに示した。ガラス板が加熱された後、ガラス板は、耐火支持体でマッフル炉から取り出され、冷却板の間に挿入された。この操作は、熱損失をできるだけ少なくするために迅速に実行されなければならない。試験において、マッフル炉の中にある位置から冷却板の間にある位置までガラス板を移動させるのに要した時間は、4秒未満であった。冷却板の間にある滞留時間は、2mm厚の窓ガラス板の場合には、2分だった。
【0032】
実験室試験において、2つの異なった材料(すなわちグラファイト及び鋼)で作られていた冷却板が用いられた。ガラスから冷却板への熱の移動があまり極端にならないことを保証するために、鋼製の冷却板が約90℃の温度に加熱された。グラファイト製の冷却板は別々に加熱されなかったが、少しの試運転の間に独力で非常に良好に暖まった。ガラス板の表面品質ができるだけ良好であることを保証するとともに、ガラスと冷却板との間の接触が良好であることを保証するために、冷却板(グラファイト製の冷却板、鋼製の冷却板)は一方の面が磨かれた。いくつかのガラス板は、破壊パターンを評価するためにバネ荷重の(spring-loaded)パンチで破壊された。表面欠陥は、ガラス板の真中に正確に置かれる。
【0033】
得られた破壊パターン(図6及び7)は、単一の窓ガラスの安全ガラス(DIN 12150; 熱的にあらかじめ応力の加えられたソーダ石灰の単一の窓ガラスの安全ガラス(SPSG))に対するDIN(ドイツ工業規格)基準によって要求されたものよりかなり良好であった。
【0034】
実施例5
2mm厚を持った、市販のソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを主成分とするフロート・ガラスのガラス板は、実施例4に類似して処理された。鋼製の冷却板は、80℃の温度に加熱された。いくつかのガラス板は、破壊パターンを評価するために、バネ荷重のパンチを用いて破壊された。表面欠陥は、ガラス板の真中に正確に置かれる。
【0035】
得られた破壊パターン(図7と8)は、単一の窓ガラスの安全ガラス(DIN 12150; 熱的にあらかじめ応力の加えられたソーダ石灰の単一の窓ガラスの安全ガラス(SPSG))に対するDIN基準によって要求されたものよりかなり良好であった。図9は、2mm厚のガラス板の引張試験の画像を示す。比較として、図10は、通常の処理をした自動車のガラス板の引張試験の画像を示す。
【0036】
実施例6
ガラス板に化学的な処理を施すために、冷却板はアルミニウム石鹸(Aluminium soap)を擦り込まれた。そして、硫酸アンモニウム溶液がマッフル炉に加えられた。これらのオプションは、別々にそして組合わせでテストされた。処理の結果を評価するために、ガラスの加水分解の強さが各ケースにおいて決定された。試験条件は、キャビネット型乾燥器において90℃、48時間である。ハイ・レベルの導電率は、耐薬品性が低いことを意味する。次の結果が得られた。
【0037】
【表1】

【0038】
処理の結果として導電率が著しく減少することが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスが第一段階で加熱されるとともに第二段階で急冷される、熱強化ガラスの製造方法であって、ガラスの強度を増加させる方策が、第一段階より前にあるいは第一段階の間に実行され、第二段階での急冷が使用中に400W/m2Kより大きな伝熱係数を有する媒体を用いて行なわれることを特徴とする熱強化ガラスの製造方法。
【請求項2】
前記ガラスがガラス板として、特にフロート・ガラスとして提供されることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ガラスが完全に処理され、特に、前記ガラスの強度が全体的に増加することを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ガラスが完全に処理され、特に、前記ガラスに対する急冷が2次元的に行なわれることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項5】
前記ガラスが、ソーダ石灰ケイ酸塩を主成分として形成されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項6】
前記ガラスの厚みが、2.8mm未満であり、特に2mm以下であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項7】
前記方法の第一段階より前にあるいは第一段階の間に、前記ガラスが、レーザー切断プロセスおよび/または火炎磨きおよび/またはAlCl3の処理を施されることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項8】
前記第二段階での急冷が、液相を用いて行なわれ、特に、噴霧冷却によって行われることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項9】
前記第二段階での急冷が、硫酸アンモニウム溶液を用いて行なわれることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項10】
前記第二段階での急冷が、亜硫酸を用いて行なわれることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項11】
前記第二段階での急冷が、水性SiO2懸濁液を用いて行なわれることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項12】
前記第二段階での急冷が、水蒸気を用いて行なわれることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項13】
前記ガラスは、前記ガラスの変態温度より高温度に加熱された、加熱能力を備えた板状クーラーに冷却状態で挿入され、前記ガラスに接する材料表面は、ガラスが108.5Pa・sより大きな粘性を有する最高温度を有し、そして、制御された冷却が施されて、冷却状態で板状クーラーから除去されることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項14】
前記ガラスの表面と真ん中との間の温度差が冷却中に測定され、この変動が、冷却プロセスを制御するために用いられ、前記冷却プロセスは、ガラス厚みとガラスのタイプとに依存することを特徴とする、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
潤滑剤が、前記板状クーラーに配置されていることを特徴とする、請求項13または14に記載の製造方法。
【請求項16】
硫酸アンモニウムまたは塩化アルミニウムのようなアルミニウム石鹸および脱アルカリ物質が、潤滑剤として用いられることを特徴とする、請求項12乃至15のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項17】
熱の移動の媒体および貯蔵体を用いながら交互に冷却および加熱を行うことにより、2つの板状クーラーがタンデム・システムとして組み合わせられることを特徴とする、請求項12乃至16のいずれか1つに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−501943(P2012−501943A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525571(P2011−525571)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061611
【国際公開番号】WO2010/026258
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(510108870)
【氏名又は名称原語表記】TU BERGAKADEMIE FREIBERG
【Fターム(参考)】