説明

熱接合されたガラス−セラミック/ガラス積層材、防護具の利用分野におけるその使用およびその製造方法

本発明は、1つ以上のガラス層に対しガラス−セラミックを直接接合して透明積層材を形成して、ガラス−セラミックとガラス層の間そして2つ以上のガラス層が存在する場合には透明積層材の個々のガラス層の間においてポリマー中間層のうちの1つ以上を排除することに関する。直接的接合は、透明積層材内にガラス−セラミック/ガラスおよびガラス/ガラス接合を設けるためにポリマー中間層が使用される場合に発生し得る温度および湿度のあらゆる悪影響を排除するかまたは最低限におさえる。接合は、「より軟質の」または「より低い軟化点の」材料、典型的にはガラス材料の軟化点と歪点の間の温度で環境大気中において実施され、かつポリマー中間層または接着剤を使用したりあるいは電圧を印加したりすることなく実施される。ガラス−セラミック/ガラス積層材は、特にガラス−セラミック層から最も遠位のガラス層に接合される破片捕捉層と組合わされた場合、透明な防護具の利用分野において使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本発明は、2007年5月21日付けの米国特許出願第11/804,856号の、米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、弾道防護利用分野を含めたさまざまな利用分野のために使用可能な透明ガラス−セラミック/ガラス積層材に関する。詳細には、本発明は、ガラス−セラミックおよびガラス層が、ポリマーまたは接着剤中間層を使用したりあるいは接合プロセス中に電圧を印加したりすることなく互いに直接熱接合されているガラス−セラミック/ガラス積層材に関する。このガラス−セラミック/ガラス積層材は、可視光および赤外線(暗視)電磁スペクトル範囲の両方において透明性を保ちながら、弾道防護を提供するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
透明防護具は、光学的な透明性を保ちながら弾道防護を提供するように設計されている材料である。この種の材料は、戦闘および非戦闘状況(例えば暴動の取締まり)において、窓(車両および建物の両方)、防護バイザーおよびその他の用途、特に検知用装置といったような機器向けの防護カバーのために使用できる。各特定の用途について具体的な要件が存在するかもしれないが、大部分のシステムまたは装置に共通の要件がある。具体的には、透明防護具についての主たる要件は、それが特定の脅威を無効化するだけでなく、打撃を受けた周辺の部域内で視野を乱すことなく多数の打撃を受ける能力をも有する、という点にある。最適化の必要があり得る追加の要件は、その防護具が使用される特定の利用分野に左右される。これらの追加の要件としては、重量、空間効率およびコストパフォーマンスが含まれる。透明防護具の数多くの問題点は、防護具の厚みを増大させることによって矯正できるものの、この解決法は、人または車両が担持すべき重量を増大させ、歪曲を増大させ、こうして材料の厚みに起因して透明度が低減することから望ましくなく、車両内では空間制限に起因して非実用的である。
【0004】
弾道防護(防護具)のために使用される透明材料としては、(1)従来のガラス、例えば、典型的にはフロート法を用いて製造されるソーダ石灰およびホウケイ酸ガラス;(2)オキシ窒化アルミニウム(ALON)、スピネルおよびサファイアといったような結晶質材料;および(3)ガラス−セラミック材料(GC)が含まれる。典型的な透明防護具システムにおいては、ガラス材料の1枚以上のシートが、複合重層構造へと積層され、裏材または「破片捕捉体」として厚いポリマー材料が利用される。例えば、図1は、一般的な重層透明防護具複合材10を示している。入来する発射体は、矢印12の方向にあり、この発射体は、4つのガラス層14のうちの最初のものである打撃面を打撃する(矢印14は4つの層のうち第1と第4の層を示している)。ポリマー中間層または、接着剤16が、例示的な4つのガラス層の間に位置づけされている。最後の層18は、「裏材層」または「破片捕捉体」、典型的にはポリカーボネートなどのポリマー材料である。ポリマー/接着剤層16は、破片捕捉体と最終ガラス層の間にも置かれる。一変形形態においては、徹甲弾丸といったようなより強力な脅威に対する弾道性能を改善するべく打撃表面として、硬質セラミック材料を使用してもよい。厚いガラスを利用できる場合を除き、ポリマーシートを多数のガラス層の間に積層させて、指定された脅威を無効化するのに必要とされる厚みを構築する。これらのポリマー層は、厚みを変化させることができ、軟質または硬質のいずれかの材料で構成され得る。
【0005】
図1のポリマーシートおよび中間層接着材料は、現在の防護具技術において使用されている材料から選択される。弾道性能に加えて、考慮事項の一部として以下のものが含まれる:
(1)ガラスまたはセラミックと整合する屈折率、
(2)ガラス/セラミック−セラミクスとの熱膨張不整合に対応する能力、および
(3)潜在的な使用環境範囲内での防護具システムにおける環境性能。
【0006】
環境性能に関するこの最後の要件は、特に、防護具システムが受ける可能性のある温度および湿度の範囲が広いことから見て、問題の多いものであることがわかっている。防護具システムのために規定された温度範囲は、例えば−40°F〜+140°F(−40℃〜+60℃)を包含し、上限温度要件を上昇させることに関して議論されている。ガラスとポリマー中間層の間の熱膨張不整合が、このほぼ200°F(約110℃)の範囲によって増幅されているばかりでなく、ポリマーの本質的に高いdn/dTならびに熱および日光により損傷を受け易い性質のため、中間層の不均一な変色、亀裂および層間剥離を導き、透明度/視程の損失がもたらされる。さらに、硬質ガラス系の2枚のシート間のポリマー中間層が一定の厚み例えば0.015インチ(約0.38mm)を超える場合、前方のガラス層を堅固に支持する力がポリマーに欠如しているために積層材は弾道性能を喪失し、その結果、引張荷重が加わり、衝撃下でガラスシートは破壊される。より薄いポリマー中間層を使用すると問題は軽減されるが、これは実用的でないと同時に、典型的な市販材料ではガラスシートが平担でないことに起因して実施が困難である。ポリマー中間層を用いた理想的な設計においては、可能なかぎりポリマー中間層の使用を最小限におさえることが望ましいが、この設計は未だ達成されていない。
【0007】
ガラスおよびポリマー材料といったような弾道材料層を有する複合材である典型的な透明な防護具システムにおいては、接合は典型的に接着性材料を用いて行なわれる。技術文献、特許公報および交付済み特許を精査しても、防護具システムのためのガラスまたはガラス−セラミックの溶融接合としても知られる熱接合の使用に関する言及は見出されなかった。(「接合」という用語の一般的に使用される同義語には、結合(joining)および封止(sealing)がある。)非特許文献1を参照のこと。ガラス接合方法についての論文としては次のものがある:(1)低温ケイ素系ゾルゲル接合(非特許文献2)(2)陽極接合(非特許文献3)、および(3)フリット接合法(非特許文献4)。Conzoneによって提案されている低温ゾル−ゲル接合は、精確な寸法的安定性が必要とされるほぼ無膨張に近い精密光学部品の結合用である。接合には、各基板について清潔で研磨済みの表面が必要とされ、Conzoneによって引用された利用分野は、ミラーブランクおよびマイクロリソグラフィステージ用の継手アセンブリであった。
【0008】
ウェーハ接合、特にガラス対金属ウェーハおよびガラス対半導体(シリコン)ウェーハのためには、陽極接合が一般に使用されるが、これはPyrex(登録商標)などのナトリウム含有ガラスのガラス−ガラス接合用としても記述されてきた[上記非特許文献3を参照のこと]。この方法においては、外部電圧が印加され、基板はマイクロ電子加工と相容性ある温度範囲に付される。接合電圧によって生成される静電気力は、2つの基板を密に接触させ接合するための駆動力であり、これは表面が平滑で平担であることを必要とする(Weiらは、1.5nm未満のRaおよび500μm超の平担度をもつホウケイ酸塩ウェーハを使用した)。
【0009】
フリット封止は、ガラスを金属に、金属を金属に、セラミックをセラミックに結合するためそして、精密光学部品向けのガラス対ガラス封止を含めたHudecekが記述した通りのこれらのさまざまな組合せのために使用されてきた[非特許文献5]。この技術には、ガラスフリットを軟化および流動させるのに充分高い温度が必要である。さまざまなディスプレイおよびソーラーモジュールの利用分野のための特殊ガラスシートを融合させるために、関連技術が使用されている。(非特許文献6)。
【0010】
現在の複合防護具システムがもつ全ての欠点、特に防護具複合材のさまざまな層を合わせて接合するためにポリマー接着材料を使用することによってひき起こされる問題点を考慮すると、複合防護具のさらなる改善が望まれる。本発明は、ガラス−セラミックをガラス材料に対して熱接合して、ポリマー材料をガラス−セラミックおよびガラスの層の間に使用する必要性を排除する方法を開示し、さらに、この方法を用いて製造される製品を開示する。本書で開示されている方法は、特に、ポリマー中間層の劣化により変色および層間剥離をひき起こし得る透明な防護具システムのために用いられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“Ceramic Armor Materials By Design,”James W.McCauley et al.,Eds.,Ceramic Transactions,Vol.134(2002)
【非特許文献2】S.D.Conzone et al.,“Low temperature bonding of Zerodur and SiO2 for optical device manufacture’;Inorganic Materials III [conference],A Marker et al.,Eds.,Proc.SPIE Vol.4452(2001),pages 107−114
【非特許文献3】J.Wei et al.,“Glass−to−glass anodic bonding process and electrostatic forces”,Thin Solid Films Vols. 462−463 (2004),pages 487−491
【非特許文献4】C.Hudecek,“Sealing Glasses”,Engineered Materials Handbook,Vol. 4,Ceramics and Glasses(ASM International,1991), pages 1069−1073参照)
【非特許文献5】H.A.Miska,“Aerospace and military applications,”Engineered Materials Handbook,Vol.4,Ceramics and Glasses(ASM International,1991),pages 1016−1020
【非特許文献6】B.G.Song et al.,“Development of in−site laser vacuum annealing and sealing processes for an application to field emission displays,”IEEE (2001),pages 219−220).
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ガラス−セラミック層を有する透明積層材および少なくとも1つのガラス層または複数のガラス層を有する透明積層材において、ガラス−セラミック層および隣接するガラス層が互いに直接熱接合され、これによりポリマー中間層のうちの1つ以上を排除しかつ温度および湿度のあらゆる悪影響を最小限にする透明積層材に向けられ、さらにはこの透明積層材の調製方法にも関する。さらに、積層材の製造にあたり複数のガラス層が使用される場合、ガラス層は同様に、ガラス層間にポリマーまたは接着剤中間層を使用したりあるいは接合プロセス中に電圧を印加したりすることなく互いに熱接合される。本発明の透明積層材は、弾道防護を提供するために特に適しており、透明防護具の利用分野における使用に適する。接合は、環境大気内または真空下で、「より軟質の」または「より低い軟化点をもつ」材料(すなわちガラス)の軟化点と歪点の間の温度で実施される。ガラス−セラミック/ガラス積層材は破片捕捉体材料と組合されて、透明防護具積層材を形成することができる。戦闘状況における弾道防護に加えて、本発明に係るガラス−セラミック/ガラス積層材は、強風が飛行物体を作り出し通常の窓または個人用防護具に侵入し得るハリケーンや竜巻などの状況において建物、車両および人間に対し防護を提供する目的で、非戦闘状況下で使用可能である。
【0013】
ガラス−セラミック/ガラス積層材は、防護具の利用分野で使用される場合、ガラス−セラミック打撃面層および1つ以上のガラス層を有し、ガラス−セラミック層およびガラス層は、層間にガラス−セラミックまたは接着剤を使用したりあるいは接合プロセス中に電圧を印加したりすることなく、互いに熱接合されている。入来する発射体はまず最初にガラス−セラミック層を打撃する。本発明に係る透明ガラス−セラミック/ガラス積層材は、さらに、ガラス−セラミック層から最も遠位のガラス層に接合された破片捕捉層を含むことができ、この破片捕捉層は、例えばポリカーボネート、アクリレートおよびメタクリレートおよびその他の当該技術分野で公知の透明ポリマー材料からなる群から選択される材料などの透明ポリマー材料である。
【0014】
透明防護具として使用するかまたはその他の利用分野向けであるかに関わらず、透明ガラス−セラミック積層材は、
透明ガラス−セラミック材料のシートまたは層を提供するステップと;
透明ガラス材料のシートまたは層を提供するステップと;
ガラスシートまたは層がガラス−セラミック材料と接触するような形でガラスセラミック材料の上面にガラス材料のシートまたは層を置くステップと;
炉内のガラス−セラミック層およびガラス層を、ガラスの軟化点とガラスの焼鈍点の間の温度まで、ガラス−セラミックおよびガラス層が共に熱接合するのに充分な時間だけ加熱するステップと;
接合された材料を周囲温度まで冷却して、各ガラス層が少なくとも一つの隣接層に熱接合されている一つ以上のガラス層及びガラス−セラミック層を有する透明な積層材を生み出すステップと、を少なくとも有する方法により製造することができる。以上の追加の実施形態においては、複数のガラスシートを提供し、ガラスシートの1枚がガラス−セラミックと接触し、複数のガラスシートの各々が隣接ガラスシートと接触するように、ガラス−セラミックの上面にこれらを置くことができる。ガラスシートは、ガラス−セラミックシートをそれに隣接するガラスシートに接合するプロセスの間に互いに接合される。さらに、ガラス−セラミック層とガラス層の間の接合またはガラス層間の接合は環境大気内か真空下のいずれかで実施可能である。
【0015】
この方法の熱接合は、ポリマーまたは接着剤の中間層を使用したりあるいは接合プロセス中に電圧を印加したりすることなく実施される。ガラス−セラミック材料のシートおよびガラス材料の1枚以上のシートを提供することは、2つの材料の間の熱膨張係数が2.5ppm/℃以下であるガラス−セラミック材料とガラス材料を提供することを意味する。かかる材料の一例としては、限定されないが、結晶相がスピネルであるガラス−セラミックがある。この方法はさらに、最も外側のガラス層に対し透明破片捕捉層を接合するステップを含むことができ、この接合は、ポリマー中間層または接着剤を用いて実施される。破片捕捉体材料の例としては、限定されないが、透明なポリカーボネート、アクリレート、メタクリレートおよび当該技術分野において公知のその他の透明なポリマー材料が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ガラスおよび破片捕捉層の間にポリマー中間層を有する従来の透明防護具積層材を示す。
【図2】ガラス−セラミックおよびガラス層が共に熱接合され、破片捕捉体が熱によってかまたはポリマー中間層を用いて最後のガラス層に接合されている、本発明に係る透明な防護具積層材を示す。
【図3】厚み1mmのガラス−セラミック打撃板と厚み1cmのホウケイ酸塩ガラス層の間の熱接合を示す。
【図4】ガラス−セラミック打撃板(CTE=3.5ppm)とソーダ石灰ガラス板(CTE=9.0ppm)の間に有意な熱膨張不整合が存在する場合に冷却中に結果として発生する熱亀裂を示す。
【図5】複数のガラス層を有するガラス−セラミック/ガラス積層材中でガラス−セラミック対ガラスおよびガラス対ガラスを接合するためにフリットまたはフリット材料を使用した積層材を示す。
【図6】接合中の層の間に封止されたギャップを形成させながらガラス−セラミック対ガラスおよびガラス対ガラスを接合するのに使用され得る成形されたフリット物体を示す。
【図7】共に接合された2スタックの積層材を有する積層材システムを示す。
【図8】共に接合された2スタックの積層材を有する積層材システムを付加的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本書で使用する「周囲温度」および「周囲圧力」という用語は、炉の周囲環境の温度および/または圧力を意味する。「層」という用語は、長さL、幅Wそして厚みまたは奥行Tを有する材料を記述するために用いられ、TはLまたはWより小さい。「部域」および「面」という用語は、L×Wを意味し、さらに(a)入来する発射体が打撃する面または部域および/または(b)本明細書中で記述されている手段により別の層(またはスタック)の面に接合されて積層材を形成する面または部域を意味する。全ての層は突き合わせで接合される。最後に、全ての図において、太い矢印で表わされている要素12は入来発射体であり、それが打撃する最初の面または部域は、当該技術分野において「打撃面」として公知である。
【0018】
本発明は、熱接合されたガラス−セラミック対ガラスの複合積層材の使用、そしてガラス対ガラスの接合と同様にガラス−セラミックをガラスに熱接合するために使用できる方法に関する。透明積層材は、任意のタイプの発射体からの防護が望まれるあらゆる利用分野で使用するのに適している。本発明に係る複合防護具を作るのに用いられるガラスおよびガラス−セラミック材料は、密に整合した熱膨張係数を有していなければならない。例えば、複合防護具は、Pyrex(登録商標)(Corning Incorporated)および当該技術分野において公知の類似のホウケイ酸塩ガラスなどの市販のホウケイ酸塩ガラスに接合されたコード9665のスピネルガラス−セラミック(Corning Incorporated)を熱接合することにより製造することができる。熱接合によって、高温または低温で層間剥離または不均一な変色といった問題を発生させ易い1つ以上のポリマー中間層を排除することができる。利用分野としては、陸上車両および航空機用ならびに個人用防護装置用の防護具システムが含まれ得る。
【0019】
典型的な透明防護具の構成においては、ガラス材料の1枚以上のシートが、裏材または「破片捕捉体」としてのポリマー材料との複合重層構造の形に積層される。厚いガラスが利用できる場合を除き、多数のガラスプライ間に比較的薄いポリマーシートを積層させて、指定された脅威を無効化するのに必要な厚みを構築する。これらのポリマー層は、厚みを変えることができ、軟質または硬質のいずれでもあり得る。弾道性能に加えて、接着剤の選択のための考慮事項の一部として、(a)ガラスまたはセラミックと整合する屈折率、ガラス/セラミック−セラミクスとの熱膨張不整合に対処する能力、および一定範囲の環境条件にわたる防護具システムの一貫した性能、が含まれる。
【0020】
しかしながら、この最後の要件は、防護具システムが受ける可能性のある温度および湿度の範囲が広いことからみて特に問題があることが判明した。例えば、規定の温度範囲は、−40°F〜+140°F(−40℃〜+60℃)を包含し、上限温度要件を上昇させることについては幾分か議論されている。ガラスとポリマー中間層の間の熱膨張不整合は、熱および太陽輻射により損傷を受け易い性質およびポリマーの本質的に高いdn/dTと同様、このほぼ200°F(約110℃)の範囲によって増幅され、中間層の不均一な変色、亀裂、および層間剥離を導き、結果として透明度/視程の漸進的または壊滅的な損失がもたらされる。その上、硬質ガラス系の2枚のシート間のポリマー中間層が、例えば0.015インチ(約0.38mm)という一定の厚みを上回った場合、前方のガラス層を堅固に支持する力がポリマーに欠如しているために、積層材は弾道性能を喪失し、その結果、引張荷重が加わり、衝撃下でガラスシートは破壊される。より薄いポリマー中間層を使用することで問題は軽減されるが、これは、典型的な市販の材料ではガラスシートが平担でないことに起因して、実際には困難である。理想的な設計においては、ポリマー中間層の使用を可能なかぎり最小限におさえることが望ましい。これは、軍用としては重大な問題である。図1は、打撃面14[斜線ハッチング]、複数のガラス層15、破片捕捉体18層、および幅広黒線16で表わした層間の複数のポリマー中間層を有する従来設計の透明な防護具積層材を示している。
【0021】
熱接合されたガラス−セラミック/ガラス積層材を使用すると、ガラス−セラミック打撃面とそのガラス裏材層の間のポリマー層および存在する可能性のあるあらゆる追加のガラス層を排除することにより、発生し得る透明度/視程の問題を排除することができる。図2は、本発明に係る熱接合された透明防護具積層材を示している。図2に示されている通り、積層材はガラス−セラミック打撃面24(垂直ハッチング)、番号25で表わした複数のガラス層および破片捕捉体材料28を有する。ガラス−セラミックおよびガラス層は、本明細書中で教示されている通り、接着剤またはポリマー中間層を使用せずに直接熱接合されている。典型的にポリカーボネートまたはアクリル材料である破片捕捉体は、接着性ポリマー中間層を用いて接合される。本発明の透明な複合材(積層材)の光学特性は、大部分の軍用防護具システムに対する可視透明度ならびに近赤外線透明度要件を満たしている。厳しい表面前処理は全く必要とされない。本発明は、1つまたは複数のガラス中間層により裏材とガラス−セラミック打撃面を組合せ、全ガラスまたは全ガラス−セラミック構成に比べ優れた弾道性能を提供し、以下のものを含めたいくつかの重要な属性を提供する:
(1)より小さい厚みで、ガラスと同等の弾道性能を達成し、これにより防護具システムにきわめて重要な軽量化を提供する能力;
(2)現在の透明防護具に用いられるものと同じ積層材厚みでより優れた弾道性能を達成する能力;
(3)極度の高温または低温における不均一な変色、層間剥離および亀裂を起こし易い傾向と合わせて、少なくとも1つのポリマー中間層を排除するという追加の利点と共に、これらの属性を提供する能力。
【0022】
本発明によって提示されるこのコンセプトは、全てのポリマー界面層を排除する目的でガラス対ガラスの接合と組わせてもよい。
【0023】
ガラス−セラミックは、ガラスの制御された失透によって生成される微結晶固体である。ガラスは、融解され、成形加工され、次に熱処理によって主として結晶質であるセラミックへと転換される。制御された結晶化の基礎は、効率の良い内部核生成にあり、これが、空隙、微小亀裂またはその他の多孔性の無い細かくランダム配列された結晶粒の発達を可能にする。ガラスおよびセラミクスと同様、ガラス−セラミックは、破断を生み出す歪に至るまで弾性挙動を示す脆性材料である。しかしながら、結晶質微細構造の性質のため、強度、弾性、破壊靭性および耐摩耗性を含めた機械的特性は、ガラスよりもガラス−セラミックの方が高い。ガラス−セラミック全体を通して均一に分布した結晶が存在するため、亀裂の偏向および鈍化がひき起こされ、これにより破壊伝播耐性が増強される。
【0024】
本発明は、防護具システムにおいて使用するための熱接合されたガラス−セラミック対ガラスの複合積層材の使用に関する。ガラスおよびガラス−セラミックは、密に整合した熱膨張係数を有していなければならない。典型的には、ガラス−セラミック層は1〜9ppm/℃(1〜9×10−6/℃)の範囲内の熱膨張係数を有する。かかるシステムの限定されない一例としては、Pyrex(登録商標)(軟化点約820℃、焼鈍温度約565℃)またはBorofloat(登録商標)(Schott Glass、軟化点約820℃、焼鈍温度約560℃)などの市販のホウケイ酸塩ガラスに接合されたコード9664のスピネルガラス−セラミックがある。これらのホウケイ酸塩材料は共に、25℃〜500℃の温度範囲にわたり約3.5ppmの熱膨張係数を有する。熱接合によって、高温または低温での層間剥離または不均一な変色などが問題となる傾向にある1つ以上のポリマー中間層を排除することができる。
【0025】
接合は、ガラスシートの軟化温度と焼鈍温度の間の温度で環境大気(空気)中で実施される。図3は、厚み1mmのガラス−セラミック円形ウェーハ(Corningコード9665)を厚み1cmのホウケイ酸塩ガラスシートに接合した後に得られる結果を示す。[形状は、2つの材料を図中でより良く識別できるように選択された。接合されたガラス−セラミック/ガラス積層材は、接合した材料の清澄度を示すべくマット上に置かれている]。図3中で示されている実施例については、小型電気炉内にガラス−セラミックウェーハまたはブロックを入れた。ガラス−セラミックの表面よりわずかに上(約2mm)のところで、ホウケイ酸塩ガラスシートをその四隅で小さな耐火ブロックから吊り下げた。その後炉を300℃/時の速度で765℃まで加熱し、4時間この温度に保った。その後、炉の加熱器を切り、炉の自然冷却速度で周囲温度まで試料を冷却した。このプロセス中、ガラスはガラス−セラミック上に「軟化して」それと接合し、結果としての複合材つまり積層材を、記述されている通り、室温まで冷却させる。結果として得られたガラス−セラミックとホウケイ酸塩ガラスの間のボンドは強く、ガラス−セラミックおよびガラスの透明度は保たれ、結果として、透明ガラス−セラミック/ガラス積層材が得られる。
【0026】
以上の実施例は、単一のホウケイ酸塩ガラスウェーハまたはシートに対する単一のガラス−セラミックウェーハまたはシートの接合を示したものの、ガラス−セラミックおよび単一のガラスシートを接合するために上述のものと同じ方法を用いて複数のガラス層を裏材とする打撃面としてガラス−セラミックを用いて、完全で中間層の無いガラス−セラミック/ガラス積層材を形成することも可能である。例えば、「ガラス−セラミック/n−ガラス」積層材を形成させることができ、ここでnは1以上の整数である。典型的には、ガラス−セラミック/ガラス積層材において、「n」は、個々のガラス層の厚みおよび/または重量に応じて1〜6の範囲内の値を有する。ガラス層に対するガラス−セラミックの接合および「n」個のガラス層同士の接合は、ガラス層を互いに重層させることによって1ステップ内で実施でき、あるいはガラス層を互いに順次接合させることもできる。
【0027】
ガラス−セラミック層とガラス層の間またはガラス層と別のガラス層の間の接合は、環境大気中かまたは真空を適用して実施可能である。例えば、限定されないが、ガラス−セラミック層およびガラス層を真空オーブン内に入れ、オーブンを選択された圧力まで排気することができ、ガラス−セラミックおよびガラス層を、低融点材料(典型的にはガラス)の軟化温度と焼鈍温度の間の選択された温度まで加熱し、1〜4時間の範囲内の時間、真空下で選択された温度に保持してガラス−セラミック層にガラス層を接合させ、その後周囲温度まで冷却する。周囲温度まで冷却した後、空気を真空オーブン内に取入れる。接合を実施する選択圧力は50mmHg未満であり、好ましくは1mmHg未満である。このとき、ガラス−セラミック/ガラス積層材は、同時にまたは後続して、本明細書中で記述される通り真空下または環境大気中のいずれかでガラス−セラミック/ガラス積層材のガラス層に接合されたさらなるガラス層を有してもよい。冷却は、所望の通り、炉の自然冷却速度かまたは20℃/時以下の速度で行なわれる。一般的には、ガラス−セラミック/ガラス積層材は、周囲温度で炉から取出されるものの、これらを100℃未満の任意の温度で取出し、積層材への損傷無く室温(周囲温度)までより急速に冷却させることもできる。接合が真空下で実施された場合には、同時に炉をその真空条件から環境大気圧力まで戻しながら冷却を助けるために、乾燥空気をゆっくりと取込むことができる。
【0028】
ガラス−セラミックおよびガラスの熱接合を成功させる鍵は、これら2つが類似の熱膨張特性を有することにある。図4は、コード9965のガラス−セラミック(CTE約3.5ppm)をソーダ石灰ガラス(CTE=9.0ppm)に接合する構成を示す[註:図4の部分品は実証を目的としてマット上に置かれている]。ガラス−セラミックとソーダ石灰ガラスは、(もとのガラスウェーハの円形輪郭の見え方によって明らかであるように)実際に接合したものの、2つの材料の間の高い熱膨張差は、冷却プロセス中の重大な亀裂をもたらす結果となった。
【0029】
接合は、ガラスシートの軟化温度と焼鈍温度の間の温度で環境大気で実施される。図3は、ホウケイ酸塩ガラスに対するCorningコード9665のガラス−セラミックの接合を示す。図3では、厚み1mmのガラス−セラミックウェーハが厚み1cmのガラスウェーハに接合されている。ガラス−セラミックの表面よりわずかに(約2mm)上のところで、小さな耐火ブロックから四隅でホウケイ酸塩ガラスを吊り下げることによって接合を実施した。その後炉をおよそ300℃/時の速度で765℃まで加熱し、1〜4時間の範囲内の時間この温度に保った。その後、炉の加熱器を切り、試料を炉の自然冷却速度で冷却するか、あるいは25℃/時未満の速度で室温(周囲温度)まで冷却する。このプロセス中、ガラスはガラス−セラミック上に「軟化して」それと接合し、結果としての複合材つまり積層材は、記述されている通り室温まで冷却される。結果として得られたガラス−セラミックとホウケイ酸塩ガラスの間のボンドは強く、ガラス−セラミックおよびガラスの透明度は保たれ、結果として、透明ガラス−セラミック/ガラス積層材が得られる。以上の実施例は、単一のホウケイ酸塩ガラスウェーハまたはシートに対する単一のガラス−セラミックウェーハまたはシートの接合を示したものの、複数のガラスシートを有するガラス−セラミック/ガラス積層材を形成するために同じ方法を用いことができる。例えば、「ガラス−セラミック/ガラス/n−ガラス」積層材を形成させることができ、ここでnは1以上の整数である。典型的には、ガラス−セラミック/ガラス積層材において、「n」は、個々のガラス層の厚みおよび/または重量に応じて1〜6の範囲内の値を有する。
【0030】
代替的方法においては、ガラス−セラミック材料および1枚以上のガラス材料シートは互いに接触状態に置かれ、炉内に置かれるかまたは機械的に炉の中に移動させられ、そこで、350〜400℃/時の範囲内の速度で、典型的にはガラスである低融点材料の軟化点と焼鈍点の間の温度まで加熱され、1〜6時間の範囲内の時間低融点材料の軟化点と焼鈍点の間の選択温度に保たれ、次に25℃以下の速度で室温(周囲温度)まで冷却される。ひとたびガラス−セラミック/ガラス積層材が形成された時点で、さらなるステップにおいて、透明なポリマー中間層または接着剤を用いてガラス−セラミック/ガラス積層材に対し破片捕捉体材料が接合される。
【0031】
ガラス−セラミックおよびガラス材料の熱接合を成功させる鍵は、ガラス−セラミックとガラスが類似の熱膨張特性を有することにある。図4は、ガラス−セラミックとガラスが異なる熱膨張係数を有する一実施例を示す。図4では、コード9965のガラス(CTE=3.5ppm)をソーダ石灰ガラス(CTE=9.0ppm)に接合する。ガラス−セラミックとソーダ石灰ガラスは、(もとのガラス−セラミックの円形輪郭の見え方によって明らかであるように)その間で実際に確実に接合したものの、2つの材料の間の高い熱膨張差は、冷却プロセス中に重大な亀裂を引き起こした。一般的には、ガラス−セラミックとガラスの間の熱膨張係数は、可能なかぎり小さくなければならず、一般的にこの差は、ガラス−セラミック材料およびガラス材料の選択の如何に関わらず約2.5ppm/℃未満とすべきである。1つの実施形態においては、差は2ppm/℃以下の範囲内になければならない。例えば、ガラス−セラミックのCTEが4ppm/℃である場合、ガラス材料のCTEは2〜6ppm/℃の範囲内になければならない。別の実施形態においては、CTEの差は1ppm以下とすべきである。
【0032】
本発明は同様に、接合剤を用いて共に接合される複数の積層材スタックを有する積層材システムにも関する。上述のとおりのガラス−セラミック層および1つ以上のガラス層(最後のガラス層に接合された破片捕捉体層が存在するものまたはしないもの)を有する単一の積層材スタックは、単一の発射体がこの積層材を打撃するものと予想される状況にとって最も有用である。かかるシステムは同様に、多数の発射体が積層材を打撃する可能性がある状況においても防護を提供するものの、多重打撃防護を改善することが強く望まれる。これは、複数の積層材スタックを有する積層材システムを用いて達成可能である。かかるマルチスタックシステムの全てにおいて、接合プロセス中に電圧を使用せずにガラス−セラミック層が1つのガラス層に熱接合されかつ複数のガラス層が使用される場合には接合プロセス中に電圧を印加することなく隣接するガラス層に対して各ガラス層が熱接合されているガラス−セラミック層と1つ以上のガラス層を有する第1のスタック(スタックA)が提供されている。スタックAは、限定されないが、ポリマー中間層、接着剤、フリットペースト材料または成形されたフリット材料を含む接合材料を用いて、複数の追加のスタック(B、C、…など)の1つに接合され得る。追加のスタックB、C、…などは、スタックAと同じ構成を個別に有することができ、または、スタックAのものとは異なる構成を個別に有することができる。例えば、B、C、…などのスタックのうち1つ以上は、そのスタックの層がポリマー中間層または接着剤を用いて共に接合されているガラス−セラミック/ガラスまたはガラス/ガラススタックであり得、そうでなければ、層は本明細書中で教示されているようにポリマー中間層または接着剤を使用することなく熱接合され得、そうでなければ層は上述のものの組合せによって接合され得る。最後に、防護具の利用分野といったような特殊な利用分野については、入来する発射体を受ける面から最も遠いスタックに対し最終層として破片捕捉層を任意に追加することができ、破片捕捉体は本明細書の他の箇所で記述されている通りに接合される。図7および図8は、限定されないが、本発明に係る可能な組合せの2スタックの組合せを表わしている。
【0033】
図7は、ポリマー中間層、接着剤、フリットペーストまたは成形フリット材料230を用いてスタックAおよびBが接合されている2スタックシステム200、A+Bを示す。スタックAは、本明細書中で教示されている通り単一のガラス層に熱接合されたガラス−セラミック層210を有し、スタックBは、互いに熱接合された2つのガラス層240を有する。ガラス層240のガラスは、層220のガラスと同じであっても異なるものであってもよい。図7は、同様に、ポリマー中間層または接着剤を用いてスタックBの外部層240に接合される任意の破片捕捉体290の存在を示している。
【0034】
図8は、ポリマー中間層、接着剤、フリットペーストまたは成形されたフリット材料330を用いてスタックA’+B’が接合されている2スタックシステム300、A’+B’を示す。スタックA’およびB’は各々、ガラス−セラミック層310および2つのガラス層320を有し、層310/320/320は本明細書において教示されている通り熱接合されている。図8は同様に、ポリマー中間層または接着剤を用いてスタックB外部属240に接合されている任意の破片捕捉体390の存在を示している。図8の別の実施形態(図示せず)においては、スタックB’を図7に示されている通りスタックBで交換することができる。以上の図7および8は、例示を目的とするものであり、本発明を限定するものとみなされるべきではない。追加組合せの限定されない実施例としては、1つ以上のガラス層を有する付加的なガラス/ガラスまたはガラス−セラミック/ガラススタックを追加することがある。さらに、スタックを互いに接合させて、この接合の結果として以下に記述するようにスタック間にギャップを発生させることができる。以下で記述するようにこのギャップには、流体、例えば空気その他の気体または屈折率修復流体またはゲルを充填することができる。
【0035】
本発明のさらなる実施形態においては、ガラス−セラミック層を、本明細書中で教示されている通りに互いに熱接合された複数のガラス層を含む第1のガラス層と交換することができる。この熱接合された第1のガラス層を次に、存在する場合にはポリマー中間層、接着剤などの接合材料を除いて全ガラスシステムを生み出すべく、ポリマー中間層、接着剤、熱接合プロセス中に電圧を使用しない熱接合、フリットペーストまたは成形されたフリット材料を用いて、追加の1つ以上のガラス層に接合することができる。記述された通りに熱接合された第1のガラス層でガラス−セラミック層を交換した結果として、ガラス−セラミック/ガラスシステムよりもコストの低い全ガラス透明システムが得られる。全ガラスシステムの使用に応じて、それが提供する防護の量は、発射体の侵入を防止するのに適切なものであり得る。例えば、それは、主たる危険が自然のまたは人工的な事象の結果として飛来する残屑または破片に由来する状況における建物の窓としての使用のためには充分であり得る。透明防護具の利用分野においては、任意の透明破片捕捉体材料層が、熱接合された第1のガラス層から最も遠いガラス層に接合される。「追加の1つ以上のガラス層」を、ポリマー中間層、接着剤熱接合プロセス中に電圧を使用しない熱接合、フリットペーストまたは成形されたフリット材料を用いて、互いに接合することができる。ポリマー中間層または接着剤を用いて第1のガラス層から最も遠いガラス層に破片捕捉層を接合させることができる。
【0036】
上述の熱接合積層材および方法に加えて、ガラス−セラミック/ガラス積層材は、非晶質ガラスまたは失透(ガラス−セラミック)シールまたはフリット(本明細書では「フリット接合」とも呼ばれている)を用いてガラス−セラミック層およびガラス層を熱接合することにより調製され、これにより、1つ以上のポリマー中間層を排除し、ポリマー中間層に対して温度および湿度が有する悪影響を最小限におさえることができる。本明細書中でさらに記述されているように、ペーストまたは成形されたフリット材料のいずれかとして、フリット材料を応用することができる。
【0037】
フリット接合は、ガラス−セラミック層および1つ以上のガラス層を有するガラス−セラミック/ガラス積層材の中に存在してよいポリマー中間層のうちの1つ以上を排除するために使用できる熱プロセスである。積層材を形成するために複数のガラス層が使用される場合には、第1のガラス層はガラス−セラミック層にフリット接合され、残りのガラス層は互いにおよび第1のガラス層に対してフリット接合される。フリット接合は、ガラスを金属に、ガラス−セラミックをガラスに、そしてガラスをガラスに結合させるため、そして以上のもののさまざまな組合せのために用いられてきた。例えば、初期のテレビ受像機の主要構成要素であったブラウン管のパネルおよびファンネルを接合するためには、失透(結晶化)ガラスシールが使用された。具体的接合利用分野向けの高いまた低い熱膨張などの所望の特性を提供するように、接合材料の化学的性質を設計することができる。さまざまな利用分野向けのフリットまたはフリット材料およびフリット接合技術の用途が、例えば米国特許第3,951,669号明細書、5,281,560号明細書、および6,998,776号明細書および国際公開第2006/044383号パンフレットの中に記載されている。
【0038】
フリット接合技術には、非晶質ガラスまたはガラス−セラミックフリットの軟化および流動に影響をおよぼすのに充分高い加工温度が必要とされる。初期の数多くのガラスフリットは、鉛−亜鉛−ホウ酸塩ファミリー内の低加工温度(約450℃)のhd組成物(これらは一般に「はんだガラス」と呼ばれた)と適合性を有するように開発された。最近では、錫−亜鉛−リン酸塩ファミリー内の無鉛フリットが、類似の低温利用分野のために開発された(米国特許第5,281,560号明細書を参照のこと)。これらのシールのバルク熱膨張は、適切な充填剤を添加することにより調整可能である。しかしながら、約450℃の加工温度が非実用的であるかさらには不可能である状況も存在する。後者の一例は、高温に対する曝露により有機材料が分解するOLED(有機発光ダイオード)デバイスのための密閉シールの調製の場合である。これらの問題は、結合すべき部品の縁部周囲に適切にドープしたガラスフリットをレーザー封止することなどのスポット封止によって軽減できる[例えば米国特許第6,998,776号明細書および国際公開第2006/044383号パンフレット]。これらのような場合においては、フリットは、遷移金属元素などの、特定の波長で電磁放射線(レーザー、赤外線など)を吸収する元素でドープされ、これによりフリットは適切な波長に曝露された場合に軟化し、強いボンドを形成する。さまざまなディスプレイおよびソーラーモジュールの利用分野のためにガラスシートを融合させる目的で関連技術が使用される[B.G. Song et al., “Development of in−site laser vacuum annealing and sealing processes for an application to field emission displays,” Proceedings of the 14th International Vacuum Microelectronics Conference, IEEE (2001), pages 219−220)]。
【0039】
フリット接合技術は同様に、ガラス−セラミックとガラスシートの間、または第1のガラスと第2のガラスシートの間の信頼性の高い封止を行い、シート間に液密ギャップを形成することもできる。この液密シールは、ギャップ内に光学的機能をもつ特殊な流体を導入させることを可能にする。特別な1つの機能としては、ガラス−セラミックまたはガラス−セラミック層が発射体の衝撃を受けた場合に透明度を改善するべくガラスおよび/またはポリマー中間層層内の亀裂を埋めるために、屈折率整合された流体が用いられる、「自己修復特性」がある。さらに、衝撃または発射体によってもたらされる前方ショック波を散逸させるために、流体を使用することができる。シール材料の制御されたギャップサイズおよび環境ロバスト性のため、通常の使用中はギャップ内の流体を透明積層材の不可視部分とすることができる。発射体の衝撃後に透明積層材がひとたび亀裂を発生させると、(発射体によって生み出されたショック波に由来する)圧力ならびにメニスカスカの下で流体は、亀裂を充填し透明積層材を「光学的に修復」することができる。防護具の利用分野の場合には、この特徴によりユーザーは、衝撃を受けた後に反応するのに必要な時限の間透明積層材を通して外を見ることができる。流体の粘度は、主要な損傷部域内の潜在的な流体損失に対して亀裂充填速度を平衡化させるように選択される。典型的な弾道利用分野においては、ユーザーが危険な状況から脱出できるように窓が透明度を維持しなくてはならない時間は、典型的には数分から数時間までの範囲、例えば5分〜4時間の範囲内である。
【0040】
封止は、当業者にとって公知のプロセスを用いて実施される。例えば、板Aを板Bに接合するためには、板の一方または両方の上に適切なガラスフリットペーストを被着させ、板を相互に積重ねる。次にアセンブリは、例えばオーブン内で、フリットの軟化温度より高い温度まで加熱される。あるいは、適切な元素でドープされているガラスフリットのペーストを、ガラス板の一方または両方の上に被着させ、板を相互に積重ねる。その後、アセンブリまたはそのフリット化された部分のみが、ドープされたフリットによって吸収されるべき適切な波長の電磁放射線の照射を受け、ガラスフリットの局所的加熱と軟化がひき起こされる。このプロセスは、環境大気内で行なわれ、特別な清浄は全く必要とされない。結果として得たボンドは強力であり、透明度は保たれる。当然のことながら、代替的なフリット封止方法も想定してよい。ガラス−セラミックおよびガラスが類似の膨張特性を有することが、接合の成功の鍵である。図5は、ガラス−セラミック打撃面または層110および2つのガラス層140を有し、ここで層は成形済みフリット120(図6参照)かまたはフリットペースト130のいずれかを用いて接合されている、代表的なフリット接合されたガラス−セラミック/ガラス積層材の側面図である。図6は、長さL、幅W、厚みT(双頭矢印で表わされている)および深さD(図示せず)を有する三次元成形済みフリット120の2次元上面図である。選択された長さおよび幅は、その利用分野に適した任意の値であり得る。厚みTは、利用分野に適した任意の値であり得、典型的には5〜15mmの範囲内にあり、深さ(D)は、利用分野に適した任意の値であり得、典型的には2〜10mmの範囲内にある。フリット120が2つの積層材層の間で接合された時点で、ギャップまたは容積(図5または6では付番または図示せず)が画定される。このギャップまたは容積には、空気、窒素、またはその他の選択された気体または気体の混合物または透明ゲルまたは流体を含めた流体またはゲル、例えば、屈折率整合流体および/またはが上述の通りの自己修復性かつ/または発射体の前方ショック波を散逸させるための屈折率整合性流体が入っている可能性がある。
【0041】
複数のガラス層を裏材とするガラス−セラミック打撃面をもつ構成のために、完全にポリマー中間層の無いガラス−セラミック/ガラス積層材も想定可能である。この場合、2つの同一のガラス層の間でフリット封止を利用することもできる。ガラス−セラミック層とその隣接ガラス層の間および複数のガラス層のうちのガラス層間(ガラス−ガラス接合)の間のボンドは、同時に加工(焼成)可能である。防護具の利用分野においては、1つ以上のガラス層を有するガラス−セラミック/ガラス積層材のガラス−セラミック層から最も遠位にあるガラス層に破片捕捉体層を接合することができる。
【0042】
したがって、詳細な実施形態においては、本発明は、
ガラス−セラミック層と、
1つ以上のガラス層と、
ガラス−セラミック層を1つのガラス層に接合するためおよび/または複数のガラス層が存在する場合にはこれらの複数のガラス層のうちのガラス層を互いに接合するための1つ以上のフリット層と、
を含む熱接合された透明ガラス−セラミック/ガラス積層材において、
フリット層が、ポリマー中間層または接着剤を使用したりあるいは接合プロセス中に電圧を印加したりすることなく、これらのガラス−セラミックおよびガラス層に対し熱接合されており;
フリット層が、成形済みフリットおよびフリットペーストからなる群から選択され、かつ
このフリット層が成形済みフリット層である場合、フリット層をガラス−セラミック層およびガラス層または2つのガラス層に接合した後、フリット層はそれが接合されている層と共に1つの容積を画定する、熱接合された透明ガラス−セラミック/ガラス積層材について記述している。この容積は上述の通りに充填され得る。
【0043】
本発明について限られた数の実施形態に関して記述してきたが、本開示の利益を受ける当業者であれば、本明細書において開示された通りの本発明の範囲から逸脱しないその他の実施形態を考案することができるということを認識するであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス−セラミック層および少なくとも1つのガラス層を含む透明ガラス−セラミック/ガラス積層材であって、前記ガラス−セラミック層および前記ガラス層が、層間にポリマー中間層または接着剤を使用したりあるいは接合プロセス中に電圧を印加したりすることなく互いに熱接合されている積層材であって;
該積層材が、前記ガラス−セラミック層から最も遠位の前記ガラス層に接合された破片捕捉層をさらに含み、前記破片捕捉層が、ポリカーボネート、アクリレートおよびメタクリレートからなる群から選択される透明ポリマー材料であることを特徴とする、透明ガラス−セラミック/ガラス積層材。
【請求項2】
前記ガラス−セラミック層の熱膨張係数と前記ガラス層の熱膨張係数の差が2.5ppm/℃以下の範囲内にあり;
前記ガラス−セラミック層が、1〜9ppm/℃の範囲内の熱膨張係数を有することを特徴とする、請求項1に記載の透明ガラス−セラミック/ガラス積層材。
【請求項3】
前記ガラス−セラミックの熱膨張係数と前記ガラスの熱膨張係数の差が1ppm/℃以下の範囲内にあり;
前記ガラス−セラミック層が、1〜9ppm/℃の範囲内の熱膨張係数を有すること特徴とする、請求項1に記載の透明ガラス−セラミック/ガラス積層材。
【請求項4】
前記ガラス−セラミック層がスピネル結晶のガラス−セラミックであることを特徴とする、請求項1に記載の透明ガラス−セラミック/ガラス積層材。
【請求項5】
透明ガラス−セラミック/ガラスの製造方法において、
透明ガラス−セラミック材料のシートを提供するステップと;
透明ガラス材料の少なくとも1枚のシートを提供するステップと;
ガラスシートがガラス−セラミック材料と接触するような形で、ガラス−セラミック材料の上面にガラス材料のシートを置くステップと;
炉の中に前記ガラス−セラミックシートおよび前記ガラスシートを置くステップと;
炉内の前記ガラス−セラミックシートおよび前記ガラスシートを、該ガラス−セラミックおよびガラスシートが共に熱接合してガラス−セラミック層とガラス層を有するガラス−セラミック/ガラス積層材を形成するのに充分な時間だけ、ガラスの軟化点とガラスの焼鈍点の間の温度まで加熱するステップと;
接合された層を周囲温度まで冷却して、互いに熱接合された前記ガラス−セラミック層と前記ガラス層を有する透明な積層材を生み出すステップと、
を有してなる方法であって、
前記熱接合が、層間にポリマーまたは接着剤中間層を使用したりあるいは電圧を印加したりすることなく実施されること;
少なくとも1枚のガラスシートを提供するステップが複数のガラスシートを提供するステップを意味し、前記複数のガラスシートは、互いに接触し、前記ガラスシートのうち1枚は前記ガラス−セラミックシートと接触しており;シートを炉内に置くこと、指示された通りシートを加熱してシート間を熱接合させること、そして接合したシートを冷却して、層が隣接層に熱接合されている前記ガラス−セラミック層と前記複数のガラス層を有するガラス−セラミック/ガラス積層材を形成することによって、前記ガラス−セラミックおよびガラスシートが共に接合されて接合したガラス−セラミック/ガラス積層材を形成すること;および
前記ガラス−セラミック材料と前記ガラス材料の熱膨張係数の差が2.5ppm/℃以下であること、
を特徴とする方法。
【請求項6】
前記ガラス−セラミック材料と前記ガラスの材料の熱膨張係数の差が1ppm/℃以下であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記炉内において大気圧で実施されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
真空下で実施されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
形成され冷却された積層材の最も外側のガラス層に対し破片捕捉材料を接合するさらなるステップを含み、前記接合がポリマー中間層または接着剤を使用して実施されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
積層材料を少なくとも2スタック含む透明ガラス−セラミック/ガラス積層材システムにおいて、
第1のスタックは、ガラス−セラミック打撃面層と1つ以上のガラス層を有し、前記ガラス−セラミック層は、層間にポリマー中間層または接着剤を使用したりあるいは接合プロセス中に電圧を印加したりすることなくガラス層に対し熱接合されており、複数のガラス層が存在する場合、前記ガラス層の各々は、層間にポリマー中間層または接着剤を使用したりあるいは接合プロセス中に電圧を印加したりすることなく、隣接するガラス層に熱接合され;かつ
少なくとも2スタックの積層材料の残りの各スタックは、
(a)ガラス−セラミック層および1つ以上のガラス層と、
(b)複数のガラス層と、
を有する積層材からなる群から独立して選択され、
前記ガラス−セラミック層は、層間にポリマー中間層または接着剤を使用したりあるいは接合プロセス中に電圧を印加したりすることなくガラス層に対して熱接合され、複数のガラス層が存在する場合、前記ガラス層の各々は、層間にポリマー中間層または接着剤を使用したりあるいは接合プロセス中に電圧を印加したりすることなく、隣接するガラス層に熱接合され;
前記スタックは、ポリマー中間層、接着剤、フリットペーストおよび成形されたフリット材料からなる群から選択される1つを用いて共に接合されることを特徴とする、透明ガラス−セラミック/ガラス積層材システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−510832(P2011−510832A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509345(P2010−509345)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/006297
【国際公開番号】WO2008/150355
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】