熱接着性複合繊維及びそれを用いた不織布
【課題】耐圧縮性に優れた熱接着性複合繊維及びこれを用いた不織布を提供する。具体的には、低加重下での不織布の嵩高性が高加重下でもより良く維持することができ、低加重下と高加重下における嵩高性の低下する割合を抑えることができる熱接着性複合繊維及びこれを用いた不織布を提供する。
【解決手段】ポリエステル系樹脂を含む第1成分が芯を構成し、及び前記ポリエステル系樹脂の融点より15℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂を含む第2成分が鞘を構成する、偏心芯鞘構造をとっている複合繊維であり、所定の測定方法で算出される120℃での熱処理後の収縮率が20%以上であることを特徴とする、熱収縮性を有する熱接着性複合繊維;上記熱接着性複合繊維と、別の1種類以上の熱接着性繊維とが混綿された不織布であって、上記熱接着性複合繊維が10〜60質量%の混綿率で含まれる不織布。
【解決手段】ポリエステル系樹脂を含む第1成分が芯を構成し、及び前記ポリエステル系樹脂の融点より15℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂を含む第2成分が鞘を構成する、偏心芯鞘構造をとっている複合繊維であり、所定の測定方法で算出される120℃での熱処理後の収縮率が20%以上であることを特徴とする、熱収縮性を有する熱接着性複合繊維;上記熱接着性複合繊維と、別の1種類以上の熱接着性繊維とが混綿された不織布であって、上記熱接着性複合繊維が10〜60質量%の混綿率で含まれる不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱接着性複合繊維に関し、より具体的には熱収縮性を有した熱接着性複合繊維に関する。また、本発明は、該熱接着性複合繊維を用いて作製した耐圧縮性に優れた不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱風や加熱ロール等の熱エネルギーを利用して、熱融着による成形が出来る熱接着性複合繊維は、嵩高性を得ることが容易であることからおむつ、ナプキン、パッド等の衛生材料、或いは生活用品やフィルター等の産業資材等に広く用いられている。特に衛生材料は、人肌に直接触れる物であることから、風合いや肌触り、尿、経血等の液体を素早く吸収する必要性から吸液性が要求され、それらの性能を醸し出すことが可能な嵩高性を有する繊維及び不織布を得る方法が数多く提案されている。
このような先行技術の中には圧縮回復性を改善したものもいくつか提案されている。例えば、特許文献1では熱可塑性エラストマーを用いて繊維に弾性を持たせ圧縮回復性を改善している。しかしこの方法では熱可塑性エラストマーを使用することが必須である為、エラストマー特有のベタツキ感がある点で、人肌に直接ふれる衛生材料に使用することは難しい。一方、特許文献2では繊維断面をサイド・バイ・サイド(並列)型にすることで潜在倦縮を発生させ圧縮回復性を改善しているものの、この方法では繊維断面をサイド・バイ・サイド(並列)型に維持するために相溶性がよい樹脂の組み合わせに限定されてしまう。またこれらの先行技術は圧縮時からの回復性を向上させる方法であり、耐圧縮性、すなわち、低加重下と高加重下における嵩高性の低下する割合を抑える方法はほとんどみられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001‐11763号公報
【特許文献2】特許第2908454号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の目的は、耐圧縮性に優れた熱接着性複合繊維及びこれを用いた不織布を提供することである。本発明の目的は具体的には、低加重下での不織布の嵩高性が高加重下でもより良く維持することができ、低加重下と高加重下における嵩高性の低下する割合を抑えることができる熱接着性複合繊維及びこれを用いた不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、一定以上の熱収縮率を有する熱接着性複合繊維を製造すること、及びそれら熱接着性複合繊維を一定割合で不織布の原料とすることで、上記課題を解決することができることを見出した。
すなわち、本発明は以下のように構成される。
(1)ポリエステル系樹脂を含む第1成分が芯を構成し、及び前記ポリエステル系樹脂の融点より15℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂を含む第2成分が鞘を構成する、偏心芯鞘構造をとっている複合繊維であり、下記測定方法で算出される120℃での熱処理後の収縮率が20%以上であることを特徴とする、熱収縮性を有する熱接着性複合繊維。
収縮率(%)={(25(cm)−h1(cm))/25(cm)}×100
(h1は、縦25cm×横25cmで目付が200g/m2のウェブを5分間熱処理した後の縦もしくは横のいずれか短いほうの長さ。)
(2)上記熱接着性複合繊維の好ましい実施態様として、上記の測定方法で算出される100℃、120℃及び145℃での熱処理後の収縮率が、下記2つの式を満たすような上記(1)に記載の熱接着性複合繊維。
120℃での収縮率≧145℃での収縮率
120℃での収縮率≧100℃での収縮率
(3)熱接着性複合繊維の繊度が1.0〜8.0dtexである、上記(1)又は(2)の熱接着性複合繊維。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかの熱接着性複合繊維と、別の1種類以上の熱接着性繊維とが混綿された不織布であって、上記(1)〜(3)のいずれかの熱接着性複合繊維が10〜60質量%の混綿率で含まれる不織布。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱接着性複合繊維は、ウェブに加工した状態で測定する熱収縮率が所定の範囲にあって、その熱接着性複合繊維を用いて作製した不織布は、低加重下での嵩高性が高加重下でもより良く維持されて、低加重下と高加重下における嵩高性の低下する割合が抑えられている。すなわち、本発明の熱接着性複合繊維は、耐圧縮性に優れた不織布を提供することができる。本発明の熱接着性複合繊維において、さらに無機微粒子を添加することによって、嵩高性、耐圧縮性と同時に柔軟性をも併せ持つ、いっそう優れた不織布が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明の複合繊維は熱可塑性樹脂から構成され、ポリエステル系樹脂を含む第1成分が芯を構成し、及び前記ポリエステル系樹脂の融点より15℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂を含む第2成分が鞘を構成する、偏心芯鞘構造をとっている複合繊維である。
【0008】
本発明の熱接着性複合繊維(以下、単に複合繊維とも呼ぶ)の芯を構成するポリエステル系樹脂は、ジオールとジカルボン酸とから縮重合によって得ることができる。ポリエステル樹脂の縮重合に用いられるジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等を挙げることができる。また、用いられるジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
本発明で使用するポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましく利用できる。また、上記芳香族ポリエステルの他に脂肪族ポリエステルも用いることができ、好ましい樹脂としてポリ乳酸やポリブチレンアジペートテレフタレートが挙げられる。これらのポリエステル樹脂は、単独重合体だけでなく、共重合ポリエステル(コポリエステル)でもよい。このとき、共重合成分としては、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸成分、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のジオール成分、L−乳酸等の光学異性体が利用できる。更に、これらポリエステル樹脂の2種以上を混合して用いても良い。原料コスト、得られる繊維の熱安定性などを考慮すると、ポリエチレンテレフタレートのみで構成された未変性ポリマーが最も好ましい。
【0009】
本発明の熱接着性複合繊維の鞘を構成するポリオレフィン系樹脂として、例えば高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、プロピレンを主成分とするエチレン−プロピレン共重合体、プロピレンを主成分とするエチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、ポリブテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリメチルペンテン、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエンが利用できる。
更にこれらの単独重合体に、単独重合体を構成する単量体以外のエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1または4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンが共重合成分として少量含有されていてもよい。また、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、スチレン及びα−メチルスチレン等の他のエチレン系不飽和モノマーが共重合成分として少量含有されていてもよい。また上記ポリオレフィン樹脂を2種以上混合して使用してもよい。これらは、通常のチーグラーナッタ触媒から重合されたポリオレフィン樹脂だけでなく、メタロセン触媒から重合されたポリオレフィン樹脂、及びそれらの共重合体も好ましく用いることができる。また、好適に使用できるポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと略す)は、紡糸可能な範囲であれば特に限定されることはないが、1〜100g/10分が好ましく、より好ましくは、5〜70g/10分である。
【0010】
上記MFR以外のポリオレフィンの物性、例えばQ値(重量平均分子量/数平均分子量)、ロックウェル硬度、分岐メチル鎖数等の物性は、本発明の要件を満たすものであれば、特に限定されない。
【0011】
本発明における第1成分/第2成分の組み合わせとしては、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/低密度ポリエチレンなどが例示できる。この中でより好ましい組み合わせは、ポリエチレンテレフタレート/高密度ポリエチレンである。またポリエチレンテレフタレートの他にも、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸を用いても良い。
【0012】
本発明に用いる熱可塑性樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲内でさらに、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料及び可塑剤等の添加剤を適宣必要に応じて添加してもよい。
【0013】
また、本発明の複合繊維中には、本発明の効果を妨げない範囲内で自重に由来するドレープ感や滑らかな触感を与え、ボイドやクラック等繊維内外の空隙を生成することによる柔軟性に優れた繊維を得るために無機微粒子を適宣必要に応じて添加してもよく、好ましくは糸中に0〜10質量%であり、より好ましくは1〜5質量%の範囲である。
【0014】
上記無機微粒子については、比重が高く、溶融樹脂中での凝集が起こり難い物であれば特に限定されないが、一例を挙げれば酸化チタン(比重 3.7〜4.3)、酸化亜鉛(比重5.2〜5.7)、チタン酸バリウム(比重5.5〜5.6)、炭酸バリウム(比重4.3〜4.4)、硫酸バリウム(比重4.2〜4.6)、酸化ジルコニウム(比重5.5)、ケイ酸ジルコニウム(比重4.7)、アルミナ(比重3.7〜3.9)、酸化マグネシウム(比重3.2)或いはこれらとほぼ同等の比重を持つ物質が挙げられ、中でも酸化チタンが好ましく用いられる。これら無機微粒子は、隠蔽性、抗菌性または消臭性などを目的に、繊維中に添加し用いることが一般に知られている。用いられる無機微粒子は、当然、紡糸工程や延伸工程で糸切れ等の不具合を生じさせない粒径や形状のものである。本発明に用いられる無機微粒子の粒径等も、繊維中に添加して用いられるこれら一般の無機微粒子のもので良い。
【0015】
無機微粒子の添加方法としては第1成分や第2成分中にパウダーを直接添加、或いはマスターバッチ化して練り込む方法などを挙げることができる。マスターバッチ化に用いる樹脂は、第1、第2成分と同じ樹脂を用いる事が最も好ましいが、本発明の要件を満たすものであれば特に限定されず、第1、第2成分と異なる樹脂を用いても良い。
【0016】
本発明の複合繊維は、例えば、上記第1成分と第2成分を用いて溶融紡糸法により未延伸繊維を得た後、延伸工程で一部配向結晶化を進めた上で捲縮工程において捲縮を付与し、その後熱風乾燥機等を用いて所定の温度で一定時間熱処理を施すことで好適に得ることができる。
【0017】
本発明における“収縮率”について説明する。熱接着不織布の耐圧縮性は、例えば繊度、断面形状、捲縮形態等の繊維物性と、複合繊維を構成する熱可塑性樹脂の融点、分子量、及び結晶化度等、樹脂由来の特性から判断される。しかし実際にこれらの特性を満たす複合繊維を用いて熱接着不織布を作製しても、十分な耐圧縮性が得られない現象がしばしば確認されていた。
そこで様々な検証を行った結果、繊維からなるウェブを不織布化するために実施する熱接着処理工程において、その構成繊維がどの程度の捲縮を発現しうるかが、不織布の耐圧縮性を左右する大きな要因であることを見出した。本発明で規定する、熱接着性複合繊維から作製した所定のウェブにおける下記“収縮率”は、これを指標化したものである。
収縮率(%)={(25(cm)−h1(cm))/25(cm)}×100
(h1は、縦25cm×横25cmで目付が200g/m2のウェブを5分間熱処理した後の縦もしくは横のいずれか短いほうの長さ。)
【0018】
複合の形態等に起因して繊維が潜在的に有している捲縮能(潜在捲縮性)が、不織布化時の熱接着処理工程の加熱によって具現化する、いわゆる、繊維に潜在していた捲縮が、不織布化時の熱接着処理工程の加熱によって顕在化(発現)する性能(潜在捲縮発現性)が高ければ、加熱後のウェブ長さh1は小さい値を示す。上記測定方法と実際に得られる不織布の耐圧縮性との関係を検証した結果、上記式にて算出される120℃での熱処理後の収縮率が20%以上であれば、不織布作製の際の加熱接着時に安定して潜在捲縮が発現し、耐圧縮性に優れる不織布を得られることが判った。収縮率が30%以上、特に40%以上、更に好ましくは50%以上のときに、更に高い潜在捲縮の発現性を有するので好ましい。また、収縮率は80%以下であれば不織布の地合ムラや幅入りが起こることがないので好ましい。より好ましくは60%以下である。
【0019】
従来の手法は、例えば、カーディング処理によってウェブを構成するなどのために、予め、繊維にスタッフィングボックス型クリンパーロール等の方法によって、12〜20山/2.54cm程度の捲縮を付与したのち、この繊維を十分に高い温度(最大で熱接着成分の融点より5℃以上低い温度)で加熱することで高度に結晶化を進行させ、これによって耐圧縮性に優れた剛性の高い繊維を得ようとしていた。しかし、この手法では、配向結晶化が高度に進行する結果、この繊維からなるウェブを不織化する目的で行う熱接着処理工程での繊維の潜在捲縮の発現性が抑制されたものとなり、不織布の耐圧縮性への寄与が難しくなってしまう。
逆に、ウェブを不織化する目的で行う熱接着処理工程での潜在捲縮の発現を高めるために捲縮付与後の加熱温度を下げると、繊維の剛性が低下し、それに伴って、この繊維を用いて得られる不織布の耐圧縮性・嵩高性は損なわれてしまう。また、配向結晶化を抑制する為に延伸倍率を必要以上に下げた場合、繊維強度・剛性が低下してしまい、この場合も不織布の耐圧縮性・嵩高性が損なわれてしまう。
【0020】
本発明の複合繊維を製造するに当たって、ウェブを形成する前に、延伸し更に捲縮を付与するまでの工程において、配向結晶化を若干抑制させ、且つ繊維強度を維持させて、潜在捲縮が発現しない程度に加熱することが好ましく、これによって、不織布化における熱接着処理工程で充分な潜在捲縮が発現し、耐圧縮性・嵩高性に優れた不織布を得ることが可能となる。本発明の複合繊維を製造するに当たって、具体的には、延伸から捲縮付与までの工程は、延伸倍率は未延伸繊維における破断延伸倍率の65〜85%で延伸することが好ましく、また延伸時の加熱温度は第1成分のガラス転移点(Tg)+10℃以上〜第2成分の融点−10℃以下の範囲で行うのが好ましい。
【0021】
本発明の繊維は、ウェブを形成する前に、捲縮が顕在化していても、いなくてもよい。ウェブを形成する前に、繊維に付与させる捲縮としては、機械捲縮であってもよいし、不織布化時の熱接着処理において充分な潜在捲縮発現性を温存しているという条件のもとでは一部の潜在捲縮の発現によって形成された捲縮であってもよいし、この両者の混在であっても構わない。捲縮は、ジグザグの機械捲縮などの形状が例示でき、例えばカーティング処理を行う場合には、12〜20山/2.54cmの捲縮数の範囲とするのが好ましい。
上記の延伸−捲縮工程の後、熱風乾燥機等を用いて、好ましくは第2成分の融点より20℃〜40℃低い温度、より好ましくは第2成分の融点より25℃〜35℃低い温度で熱処理させる。熱処理には、熱風循環型乾燥機、熱風通気式熱処理機、リラクシング式熱風乾燥機、熱板圧着式乾燥機、ドラム型乾燥機、赤外線乾燥機等公知のものを用いることができる。
その後、繊維を短繊維にカットすることができる。短繊維の繊維長は、用途に応じて選択でき特に限定されないが、カーティング処理を行う場合には20〜102mmが好ましく、より好ましくは30〜51mmである。
【0022】
熱接着性複合繊維から作製した所定のウェブにおける、上記測定方法による145℃での収縮率が120℃での収縮率より高い場合には、不織布化時の熱接着処理の加熱によって繊維間が熱融着した以降も不織布の収縮が進行し易く、不織布の幅入りや地合の悪化につながる。このため下記関係式[1]が成り立っている事が好ましく、145℃での収縮率10〜40%の範囲が好ましいが、関係式[1]を満たせば何ら限定されるものではない。
また100℃での収縮率が120℃での収縮率より高い場合には、潜在捲縮が十分に発現した後に繊維間が熱融着することとなる為、不織布強度・風合い・地合などが悪化することから下記関係式[2]が成り立っていることが好ましく、100℃での収縮率は0〜10%の範囲であることが特に好ましいが、関係式[2]を満たせば何ら限定されるものではない。
[1] 120℃での収縮率≧145℃での収縮率
[2] 120℃での収縮率≧100℃での収縮率
【0023】
本発明の複合繊維の断面形状としては、偏心芯鞘型、偏心中空型などの芯側と鞘側の重心が異なるものが例示でき、その偏心比は紡糸性や潜在捲縮の発現性から0.05〜0.50が好ましく、より好ましくは0.15〜0.30である。尚、ここで偏心比とは特開2006−97157号公報に記載されている下記式にて表される。
偏心比=d/R
ここでd及びRは次のとおりである。
d:複合繊維の中心点と芯を構成する第1成分の中心点との距離
R:複合繊維の半径
また、芯側の断面形状は円形断面だけでなく、異形断面形状にすることもでき、例えば、星形、楕円形、三角形、四角形、五角形、多葉形、アレイ形、T字形及び馬蹄形等を挙げることができるが、潜在捲縮の発現性から芯側の断面形状は円形、半円形、楕円形が好ましく、不織布強度の観点から円形が特に好ましい。
【0024】
本発明の複合繊維の長さ方向に直角する方向の繊維断面において、芯を構成する第1成分と鞘を構成する第2成分との複合比は10/90容量%〜90/10容量%の範囲にすることが好ましく、より好ましくは30/70容量%〜70/30容量%、特に好ましいのは40/60容量%〜50/50容量%である。かかる範囲の複合比とすることにより、熱による潜在捲縮が発現しやすくなる。尚、以下の説明においても複合比の単位は容量%である。
【0025】
本発明の複合繊維の繊度は、1.0〜8.0dtexが好ましく、より好ましくは1.7〜6.0dtex、さらに好ましくは2.6〜4.4dtexである。かかる範囲の繊度とすることにより嵩高性と耐圧縮性との両立を可能とすることができる。
【0026】
本発明の複合繊維を不織布中に混綿率10〜60質量%の範囲で含ませることが、低加重での嵩高性を維持しつつも、耐圧縮性を向上させることができる点で好ましく、より好ましくは15%〜40質量%である。不織布中に含ませてもよいその他の繊維としては、特に限定されないが、PETやPPなどの単一繊維やPET/PEやPP/PEの複合繊維などを例示できる。当該その他の繊維として、不織布の強度や嵩高性の点で、複合繊維を用いることが好ましい。また、当該その他の繊維について、本発明の複合繊維の収縮率を求めるのと同様の条件で測定する収縮率が、すなわち、当該繊維から作製した縦25cm×横25cmで目付が200g/m2のウェブを5分間、120℃で熱処理した際の収縮率が、風合いや地合の点で、20%未満であることが好ましく、より好ましくは10%未満である。
【0027】
本発明の複合繊維を用いて製造した不織布は、例えばおむつ、ナプキン、失禁パット等の吸収性物品、ガウン、術衣等の医療衛生材、壁用シート、障子紙、床材等の室内内装材、カバークロス、清掃用ワイパー、生ゴミ用カバー等の生活関連材、使い捨てトイレ、トイレ用カバー等のトイレタリー製品、ペットシート、ペット用おむつ、ペット用タオル等のペット用品、ワイピング材、フィルター、クッション材、油吸着材、インクタンク用吸着材等の産業資材、一般医療材、寝装材、介護用品など、嵩高性及び耐圧縮性が要求される様々な繊維製品への用途に利用することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、各例において物性評価は以下に示す方法で行った。
[実施例1〜17、比較例1〜6]
表1に示される条件に基づいて複合繊維(実施例1〜7、比較例1〜4)を製造し、及びその繊維を用いた不織布(実施例8〜17、比較例5〜8)を得、それらの性能を評価、測定した。複合繊維の製造条件、繊維の物性の測定方法、不織布の製造条件、及び不織布の物性の測定方法を以下に説明し、さらに評価結果と合わせて下記表1及び表2に示す。
【0029】
(熱可塑性樹脂)
繊維を構成する熱可塑性樹脂として以下の樹脂を用いた。
樹脂1:密度0.96g/cm3、MFR(190℃ 荷重21.18N)が16g/10min、融点が130℃である高密度ポリエチレン(略記号PE)
樹脂2:密度0.94g/cm3、MFR(190℃ 荷重21.18N)が20g/10min、融点が122℃である直鎖状低密度ポリエチレン(略記号L-LDPE)
樹脂3:MFR(230℃ 荷重21.18N)が7g/10min、融点が162℃であるポリプロピレン(略記号PP-1)
樹脂4:MFR(230℃ 荷重21.18N)が5g/10min、融点が163℃である結晶性ポリプロピレン(略記号PP-2)
樹脂5:MFR(230℃ 荷重21.18N)が16g/10min、融点が162℃である結晶性ポリプロピレン(略記号PP-3)
樹脂6:MFR(230℃ 荷重21.18N)が16g/10min、融点が131℃であるエチレン含有量4.0質量%、1−ブテン含有量2.65質量%のエチレン−プロピレン−1−ブテン3元共重合体(略記号Co−PP)
樹脂7:固有粘度(η)が0.64、ガラス転移点が70℃であるポリエチレンテレフタレート(略記号PET)
【0030】
(メルトフローレート(MFR)の測定)
JIS K 7210に準拠し、上記樹脂1〜6のメルトフローレートの測定を行った。ここで、MIは、附属書A表1の条件D(試験温度190℃、荷重2.16kg)に準拠し、MFRは、条件M(試験温度230℃、荷重2.16kg)に準拠して測定した。
【0031】
(複合繊維の製造)
表1に示す熱可塑性樹脂を用い、第1成分を芯側、第2成分を鞘側に配し、無機微粒子としては、マスターバッチ化された二酸化チタンを第1成分及び第2成分に表1記載の量を練りこむ方法で含有させ、同様に表1に示す押出温度と、複合比(容量比)、断面形状で紡糸し、その際、アルキルフォスフェートK塩を主成分とする繊維処理剤をオイリングロールに接触させて、該処理剤を付着させた。得られた未延伸繊維を、延伸温度(熱ロールの表面温度)90℃に設定し、表1に示す条件で延伸工程−捲縮付与工程を経た後、熱風循環型乾燥機を用いて表1に示す熱処理温度で5分間熱処理工程を施して繊維を得た。捲縮付与は、スタッフィングボックス型クリンパーロールによって、ジグザグの機械捲縮を12〜20山/2.54cmの捲縮数の範囲にて付与させた。
該繊維をカッターで表1中の長さ(カット長)にカットし短繊維とし、これを試料繊維として用いた。得られた試料繊維は、ローラーカード試験機にて目付200g/m2のカードウェブを作成し、収縮率の測定に用いた。
【0032】
(無機微粒子の添加方法)
無機微粒子として、繊維中に添加し使用される市販のTiO2を用い、上記複合繊維へ配合した。繊維への無機微粒子の添加方法は、以下の方法を用いた。
無機微粒子の粉体をマスターバッチ化後、第1成分及び/または第2成分へ添加する。マスターバッチ化に用いる樹脂は、第1、第2成分と同じ樹脂を用いた。表1に記載された添加率は、「第1成分における質量%/第2成分における質量%」を表す。
【0033】
(収縮率)
試料繊維をローラーカード試験機にてカードウェブとし、目付200g/m2のウェブを作製した。同ウェブを縦25×横25cmにカットし、この状態で市販の熱風循環ドライヤーを用いて120℃で5分間熱処理を行った。
熱処理後のカードウェブを放冷後、縦もしくは横のいずれか短いほうの長さを3箇所(上部、中央部、下部)に分けて測定し、値の平均h1(cm)を求め、以下の式から収縮率を算出した。
収縮率(%)={(25(cm)−h1(cm))/25(cm)}×100
【0034】
(不織布化)
上記工程で得られた表1に示す各種試料繊維A〜Kを用いて、表2に示す原綿1と原綿2の割合(質量%)で混綿し、別途ローラーカード試験機にてカードウェブとし、このウェブをサクションドライヤーで、130℃でスルーエアー加工(略称TA)して、不織布を得た。
得られた不織布の均一性を、下記の4段階で官能的に評価した。
良好 ◎ > ○ > △ > × 不良
◎・・・地合ムラ(目付ムラ)が見られない。
○・・・若干の地合ムラ(目付ムラ)が見られる。
△・・・地合ムラ(目付ムラ)が見られる。
×・・・地合ムラ(目付ムラ)や不織布の幅入りが見られる。
【0035】
(圧縮試験)
上記工程で得られた不織布を縦5cm×横5cmでカットし、この不織布を4枚重ね、0.05cm/secの速度で圧縮加重が70gf/cm2になるまで圧縮し、10gf/cm2時及び70gf/cm2時の厚み(mm)から、比容積(cm3/g)を算出した。また圧縮率を下記式より求めた。
圧縮加重を10gf/cm2及び70gf/cm2としたのは、不織布がオムツ等の衛生材料として使用されている状況を想定したものであり、特に70gf/cm2は椅子や床に座っている状況を想定したものである。
この圧縮率の値が小さいほ程、耐圧縮性に優れていると判断する。
圧縮率(%)={(X10−X70)/X10}×100
ここでX10及びX70は次のとおりである。
X10:10gf/cm2加重時の比容積(cm3/g)
X70:70gf/cm2加重時の比容積(cm3/g)
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の複合繊維によれば、加熱処理後の収縮率が20%以上に保たれることで、不織布化時における加熱接着の際に潜在捲縮が発現し、嵩高性、耐圧縮性に優れた不織布を作製することができる。さらに複合繊維に無機微粒子を添加することによって、嵩高性、耐圧縮性と同時に柔軟性をも併せ持つ不織布が得られ、本来の無機微粒子添加の作用効果からは予期せぬ優れた効果を奏するものとなる。
本発明の熱接着性複合繊維から得られる不織布は優れた嵩高性、耐圧縮性を有し、且つ柔軟性にも優れているので、嵩高性、耐圧縮性と柔軟性を要求される用途、例えばおむつ、ナプキン、失禁パット等の吸収性物品、ガウン、術衣等の医療衛生材、壁用シート、障子紙、床材等の室内内装材、カバークロス、清掃用ワイパー、生ゴミ用カバー等の生活関連材、使い捨てトイレ、トイレ用カバー等のトイレタリー製品、ペットシート、ペット用おむつ、ペット用タオル等のペット用品、ワイピング材、フィルター、クッション材、油吸着材、インクタンク用吸着材等の産業資材、一般医療材、寝装材、介護用品など、嵩高性、耐圧縮性を要求される様々な繊維製品への用途に利用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱接着性複合繊維に関し、より具体的には熱収縮性を有した熱接着性複合繊維に関する。また、本発明は、該熱接着性複合繊維を用いて作製した耐圧縮性に優れた不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱風や加熱ロール等の熱エネルギーを利用して、熱融着による成形が出来る熱接着性複合繊維は、嵩高性を得ることが容易であることからおむつ、ナプキン、パッド等の衛生材料、或いは生活用品やフィルター等の産業資材等に広く用いられている。特に衛生材料は、人肌に直接触れる物であることから、風合いや肌触り、尿、経血等の液体を素早く吸収する必要性から吸液性が要求され、それらの性能を醸し出すことが可能な嵩高性を有する繊維及び不織布を得る方法が数多く提案されている。
このような先行技術の中には圧縮回復性を改善したものもいくつか提案されている。例えば、特許文献1では熱可塑性エラストマーを用いて繊維に弾性を持たせ圧縮回復性を改善している。しかしこの方法では熱可塑性エラストマーを使用することが必須である為、エラストマー特有のベタツキ感がある点で、人肌に直接ふれる衛生材料に使用することは難しい。一方、特許文献2では繊維断面をサイド・バイ・サイド(並列)型にすることで潜在倦縮を発生させ圧縮回復性を改善しているものの、この方法では繊維断面をサイド・バイ・サイド(並列)型に維持するために相溶性がよい樹脂の組み合わせに限定されてしまう。またこれらの先行技術は圧縮時からの回復性を向上させる方法であり、耐圧縮性、すなわち、低加重下と高加重下における嵩高性の低下する割合を抑える方法はほとんどみられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001‐11763号公報
【特許文献2】特許第2908454号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の目的は、耐圧縮性に優れた熱接着性複合繊維及びこれを用いた不織布を提供することである。本発明の目的は具体的には、低加重下での不織布の嵩高性が高加重下でもより良く維持することができ、低加重下と高加重下における嵩高性の低下する割合を抑えることができる熱接着性複合繊維及びこれを用いた不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、一定以上の熱収縮率を有する熱接着性複合繊維を製造すること、及びそれら熱接着性複合繊維を一定割合で不織布の原料とすることで、上記課題を解決することができることを見出した。
すなわち、本発明は以下のように構成される。
(1)ポリエステル系樹脂を含む第1成分が芯を構成し、及び前記ポリエステル系樹脂の融点より15℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂を含む第2成分が鞘を構成する、偏心芯鞘構造をとっている複合繊維であり、下記測定方法で算出される120℃での熱処理後の収縮率が20%以上であることを特徴とする、熱収縮性を有する熱接着性複合繊維。
収縮率(%)={(25(cm)−h1(cm))/25(cm)}×100
(h1は、縦25cm×横25cmで目付が200g/m2のウェブを5分間熱処理した後の縦もしくは横のいずれか短いほうの長さ。)
(2)上記熱接着性複合繊維の好ましい実施態様として、上記の測定方法で算出される100℃、120℃及び145℃での熱処理後の収縮率が、下記2つの式を満たすような上記(1)に記載の熱接着性複合繊維。
120℃での収縮率≧145℃での収縮率
120℃での収縮率≧100℃での収縮率
(3)熱接着性複合繊維の繊度が1.0〜8.0dtexである、上記(1)又は(2)の熱接着性複合繊維。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかの熱接着性複合繊維と、別の1種類以上の熱接着性繊維とが混綿された不織布であって、上記(1)〜(3)のいずれかの熱接着性複合繊維が10〜60質量%の混綿率で含まれる不織布。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱接着性複合繊維は、ウェブに加工した状態で測定する熱収縮率が所定の範囲にあって、その熱接着性複合繊維を用いて作製した不織布は、低加重下での嵩高性が高加重下でもより良く維持されて、低加重下と高加重下における嵩高性の低下する割合が抑えられている。すなわち、本発明の熱接着性複合繊維は、耐圧縮性に優れた不織布を提供することができる。本発明の熱接着性複合繊維において、さらに無機微粒子を添加することによって、嵩高性、耐圧縮性と同時に柔軟性をも併せ持つ、いっそう優れた不織布が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明の複合繊維は熱可塑性樹脂から構成され、ポリエステル系樹脂を含む第1成分が芯を構成し、及び前記ポリエステル系樹脂の融点より15℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂を含む第2成分が鞘を構成する、偏心芯鞘構造をとっている複合繊維である。
【0008】
本発明の熱接着性複合繊維(以下、単に複合繊維とも呼ぶ)の芯を構成するポリエステル系樹脂は、ジオールとジカルボン酸とから縮重合によって得ることができる。ポリエステル樹脂の縮重合に用いられるジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等を挙げることができる。また、用いられるジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
本発明で使用するポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましく利用できる。また、上記芳香族ポリエステルの他に脂肪族ポリエステルも用いることができ、好ましい樹脂としてポリ乳酸やポリブチレンアジペートテレフタレートが挙げられる。これらのポリエステル樹脂は、単独重合体だけでなく、共重合ポリエステル(コポリエステル)でもよい。このとき、共重合成分としては、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸成分、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のジオール成分、L−乳酸等の光学異性体が利用できる。更に、これらポリエステル樹脂の2種以上を混合して用いても良い。原料コスト、得られる繊維の熱安定性などを考慮すると、ポリエチレンテレフタレートのみで構成された未変性ポリマーが最も好ましい。
【0009】
本発明の熱接着性複合繊維の鞘を構成するポリオレフィン系樹脂として、例えば高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、プロピレンを主成分とするエチレン−プロピレン共重合体、プロピレンを主成分とするエチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、ポリブテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリメチルペンテン、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエンが利用できる。
更にこれらの単独重合体に、単独重合体を構成する単量体以外のエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1または4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンが共重合成分として少量含有されていてもよい。また、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、スチレン及びα−メチルスチレン等の他のエチレン系不飽和モノマーが共重合成分として少量含有されていてもよい。また上記ポリオレフィン樹脂を2種以上混合して使用してもよい。これらは、通常のチーグラーナッタ触媒から重合されたポリオレフィン樹脂だけでなく、メタロセン触媒から重合されたポリオレフィン樹脂、及びそれらの共重合体も好ましく用いることができる。また、好適に使用できるポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと略す)は、紡糸可能な範囲であれば特に限定されることはないが、1〜100g/10分が好ましく、より好ましくは、5〜70g/10分である。
【0010】
上記MFR以外のポリオレフィンの物性、例えばQ値(重量平均分子量/数平均分子量)、ロックウェル硬度、分岐メチル鎖数等の物性は、本発明の要件を満たすものであれば、特に限定されない。
【0011】
本発明における第1成分/第2成分の組み合わせとしては、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/低密度ポリエチレンなどが例示できる。この中でより好ましい組み合わせは、ポリエチレンテレフタレート/高密度ポリエチレンである。またポリエチレンテレフタレートの他にも、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸を用いても良い。
【0012】
本発明に用いる熱可塑性樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲内でさらに、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料及び可塑剤等の添加剤を適宣必要に応じて添加してもよい。
【0013】
また、本発明の複合繊維中には、本発明の効果を妨げない範囲内で自重に由来するドレープ感や滑らかな触感を与え、ボイドやクラック等繊維内外の空隙を生成することによる柔軟性に優れた繊維を得るために無機微粒子を適宣必要に応じて添加してもよく、好ましくは糸中に0〜10質量%であり、より好ましくは1〜5質量%の範囲である。
【0014】
上記無機微粒子については、比重が高く、溶融樹脂中での凝集が起こり難い物であれば特に限定されないが、一例を挙げれば酸化チタン(比重 3.7〜4.3)、酸化亜鉛(比重5.2〜5.7)、チタン酸バリウム(比重5.5〜5.6)、炭酸バリウム(比重4.3〜4.4)、硫酸バリウム(比重4.2〜4.6)、酸化ジルコニウム(比重5.5)、ケイ酸ジルコニウム(比重4.7)、アルミナ(比重3.7〜3.9)、酸化マグネシウム(比重3.2)或いはこれらとほぼ同等の比重を持つ物質が挙げられ、中でも酸化チタンが好ましく用いられる。これら無機微粒子は、隠蔽性、抗菌性または消臭性などを目的に、繊維中に添加し用いることが一般に知られている。用いられる無機微粒子は、当然、紡糸工程や延伸工程で糸切れ等の不具合を生じさせない粒径や形状のものである。本発明に用いられる無機微粒子の粒径等も、繊維中に添加して用いられるこれら一般の無機微粒子のもので良い。
【0015】
無機微粒子の添加方法としては第1成分や第2成分中にパウダーを直接添加、或いはマスターバッチ化して練り込む方法などを挙げることができる。マスターバッチ化に用いる樹脂は、第1、第2成分と同じ樹脂を用いる事が最も好ましいが、本発明の要件を満たすものであれば特に限定されず、第1、第2成分と異なる樹脂を用いても良い。
【0016】
本発明の複合繊維は、例えば、上記第1成分と第2成分を用いて溶融紡糸法により未延伸繊維を得た後、延伸工程で一部配向結晶化を進めた上で捲縮工程において捲縮を付与し、その後熱風乾燥機等を用いて所定の温度で一定時間熱処理を施すことで好適に得ることができる。
【0017】
本発明における“収縮率”について説明する。熱接着不織布の耐圧縮性は、例えば繊度、断面形状、捲縮形態等の繊維物性と、複合繊維を構成する熱可塑性樹脂の融点、分子量、及び結晶化度等、樹脂由来の特性から判断される。しかし実際にこれらの特性を満たす複合繊維を用いて熱接着不織布を作製しても、十分な耐圧縮性が得られない現象がしばしば確認されていた。
そこで様々な検証を行った結果、繊維からなるウェブを不織布化するために実施する熱接着処理工程において、その構成繊維がどの程度の捲縮を発現しうるかが、不織布の耐圧縮性を左右する大きな要因であることを見出した。本発明で規定する、熱接着性複合繊維から作製した所定のウェブにおける下記“収縮率”は、これを指標化したものである。
収縮率(%)={(25(cm)−h1(cm))/25(cm)}×100
(h1は、縦25cm×横25cmで目付が200g/m2のウェブを5分間熱処理した後の縦もしくは横のいずれか短いほうの長さ。)
【0018】
複合の形態等に起因して繊維が潜在的に有している捲縮能(潜在捲縮性)が、不織布化時の熱接着処理工程の加熱によって具現化する、いわゆる、繊維に潜在していた捲縮が、不織布化時の熱接着処理工程の加熱によって顕在化(発現)する性能(潜在捲縮発現性)が高ければ、加熱後のウェブ長さh1は小さい値を示す。上記測定方法と実際に得られる不織布の耐圧縮性との関係を検証した結果、上記式にて算出される120℃での熱処理後の収縮率が20%以上であれば、不織布作製の際の加熱接着時に安定して潜在捲縮が発現し、耐圧縮性に優れる不織布を得られることが判った。収縮率が30%以上、特に40%以上、更に好ましくは50%以上のときに、更に高い潜在捲縮の発現性を有するので好ましい。また、収縮率は80%以下であれば不織布の地合ムラや幅入りが起こることがないので好ましい。より好ましくは60%以下である。
【0019】
従来の手法は、例えば、カーディング処理によってウェブを構成するなどのために、予め、繊維にスタッフィングボックス型クリンパーロール等の方法によって、12〜20山/2.54cm程度の捲縮を付与したのち、この繊維を十分に高い温度(最大で熱接着成分の融点より5℃以上低い温度)で加熱することで高度に結晶化を進行させ、これによって耐圧縮性に優れた剛性の高い繊維を得ようとしていた。しかし、この手法では、配向結晶化が高度に進行する結果、この繊維からなるウェブを不織化する目的で行う熱接着処理工程での繊維の潜在捲縮の発現性が抑制されたものとなり、不織布の耐圧縮性への寄与が難しくなってしまう。
逆に、ウェブを不織化する目的で行う熱接着処理工程での潜在捲縮の発現を高めるために捲縮付与後の加熱温度を下げると、繊維の剛性が低下し、それに伴って、この繊維を用いて得られる不織布の耐圧縮性・嵩高性は損なわれてしまう。また、配向結晶化を抑制する為に延伸倍率を必要以上に下げた場合、繊維強度・剛性が低下してしまい、この場合も不織布の耐圧縮性・嵩高性が損なわれてしまう。
【0020】
本発明の複合繊維を製造するに当たって、ウェブを形成する前に、延伸し更に捲縮を付与するまでの工程において、配向結晶化を若干抑制させ、且つ繊維強度を維持させて、潜在捲縮が発現しない程度に加熱することが好ましく、これによって、不織布化における熱接着処理工程で充分な潜在捲縮が発現し、耐圧縮性・嵩高性に優れた不織布を得ることが可能となる。本発明の複合繊維を製造するに当たって、具体的には、延伸から捲縮付与までの工程は、延伸倍率は未延伸繊維における破断延伸倍率の65〜85%で延伸することが好ましく、また延伸時の加熱温度は第1成分のガラス転移点(Tg)+10℃以上〜第2成分の融点−10℃以下の範囲で行うのが好ましい。
【0021】
本発明の繊維は、ウェブを形成する前に、捲縮が顕在化していても、いなくてもよい。ウェブを形成する前に、繊維に付与させる捲縮としては、機械捲縮であってもよいし、不織布化時の熱接着処理において充分な潜在捲縮発現性を温存しているという条件のもとでは一部の潜在捲縮の発現によって形成された捲縮であってもよいし、この両者の混在であっても構わない。捲縮は、ジグザグの機械捲縮などの形状が例示でき、例えばカーティング処理を行う場合には、12〜20山/2.54cmの捲縮数の範囲とするのが好ましい。
上記の延伸−捲縮工程の後、熱風乾燥機等を用いて、好ましくは第2成分の融点より20℃〜40℃低い温度、より好ましくは第2成分の融点より25℃〜35℃低い温度で熱処理させる。熱処理には、熱風循環型乾燥機、熱風通気式熱処理機、リラクシング式熱風乾燥機、熱板圧着式乾燥機、ドラム型乾燥機、赤外線乾燥機等公知のものを用いることができる。
その後、繊維を短繊維にカットすることができる。短繊維の繊維長は、用途に応じて選択でき特に限定されないが、カーティング処理を行う場合には20〜102mmが好ましく、より好ましくは30〜51mmである。
【0022】
熱接着性複合繊維から作製した所定のウェブにおける、上記測定方法による145℃での収縮率が120℃での収縮率より高い場合には、不織布化時の熱接着処理の加熱によって繊維間が熱融着した以降も不織布の収縮が進行し易く、不織布の幅入りや地合の悪化につながる。このため下記関係式[1]が成り立っている事が好ましく、145℃での収縮率10〜40%の範囲が好ましいが、関係式[1]を満たせば何ら限定されるものではない。
また100℃での収縮率が120℃での収縮率より高い場合には、潜在捲縮が十分に発現した後に繊維間が熱融着することとなる為、不織布強度・風合い・地合などが悪化することから下記関係式[2]が成り立っていることが好ましく、100℃での収縮率は0〜10%の範囲であることが特に好ましいが、関係式[2]を満たせば何ら限定されるものではない。
[1] 120℃での収縮率≧145℃での収縮率
[2] 120℃での収縮率≧100℃での収縮率
【0023】
本発明の複合繊維の断面形状としては、偏心芯鞘型、偏心中空型などの芯側と鞘側の重心が異なるものが例示でき、その偏心比は紡糸性や潜在捲縮の発現性から0.05〜0.50が好ましく、より好ましくは0.15〜0.30である。尚、ここで偏心比とは特開2006−97157号公報に記載されている下記式にて表される。
偏心比=d/R
ここでd及びRは次のとおりである。
d:複合繊維の中心点と芯を構成する第1成分の中心点との距離
R:複合繊維の半径
また、芯側の断面形状は円形断面だけでなく、異形断面形状にすることもでき、例えば、星形、楕円形、三角形、四角形、五角形、多葉形、アレイ形、T字形及び馬蹄形等を挙げることができるが、潜在捲縮の発現性から芯側の断面形状は円形、半円形、楕円形が好ましく、不織布強度の観点から円形が特に好ましい。
【0024】
本発明の複合繊維の長さ方向に直角する方向の繊維断面において、芯を構成する第1成分と鞘を構成する第2成分との複合比は10/90容量%〜90/10容量%の範囲にすることが好ましく、より好ましくは30/70容量%〜70/30容量%、特に好ましいのは40/60容量%〜50/50容量%である。かかる範囲の複合比とすることにより、熱による潜在捲縮が発現しやすくなる。尚、以下の説明においても複合比の単位は容量%である。
【0025】
本発明の複合繊維の繊度は、1.0〜8.0dtexが好ましく、より好ましくは1.7〜6.0dtex、さらに好ましくは2.6〜4.4dtexである。かかる範囲の繊度とすることにより嵩高性と耐圧縮性との両立を可能とすることができる。
【0026】
本発明の複合繊維を不織布中に混綿率10〜60質量%の範囲で含ませることが、低加重での嵩高性を維持しつつも、耐圧縮性を向上させることができる点で好ましく、より好ましくは15%〜40質量%である。不織布中に含ませてもよいその他の繊維としては、特に限定されないが、PETやPPなどの単一繊維やPET/PEやPP/PEの複合繊維などを例示できる。当該その他の繊維として、不織布の強度や嵩高性の点で、複合繊維を用いることが好ましい。また、当該その他の繊維について、本発明の複合繊維の収縮率を求めるのと同様の条件で測定する収縮率が、すなわち、当該繊維から作製した縦25cm×横25cmで目付が200g/m2のウェブを5分間、120℃で熱処理した際の収縮率が、風合いや地合の点で、20%未満であることが好ましく、より好ましくは10%未満である。
【0027】
本発明の複合繊維を用いて製造した不織布は、例えばおむつ、ナプキン、失禁パット等の吸収性物品、ガウン、術衣等の医療衛生材、壁用シート、障子紙、床材等の室内内装材、カバークロス、清掃用ワイパー、生ゴミ用カバー等の生活関連材、使い捨てトイレ、トイレ用カバー等のトイレタリー製品、ペットシート、ペット用おむつ、ペット用タオル等のペット用品、ワイピング材、フィルター、クッション材、油吸着材、インクタンク用吸着材等の産業資材、一般医療材、寝装材、介護用品など、嵩高性及び耐圧縮性が要求される様々な繊維製品への用途に利用することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、各例において物性評価は以下に示す方法で行った。
[実施例1〜17、比較例1〜6]
表1に示される条件に基づいて複合繊維(実施例1〜7、比較例1〜4)を製造し、及びその繊維を用いた不織布(実施例8〜17、比較例5〜8)を得、それらの性能を評価、測定した。複合繊維の製造条件、繊維の物性の測定方法、不織布の製造条件、及び不織布の物性の測定方法を以下に説明し、さらに評価結果と合わせて下記表1及び表2に示す。
【0029】
(熱可塑性樹脂)
繊維を構成する熱可塑性樹脂として以下の樹脂を用いた。
樹脂1:密度0.96g/cm3、MFR(190℃ 荷重21.18N)が16g/10min、融点が130℃である高密度ポリエチレン(略記号PE)
樹脂2:密度0.94g/cm3、MFR(190℃ 荷重21.18N)が20g/10min、融点が122℃である直鎖状低密度ポリエチレン(略記号L-LDPE)
樹脂3:MFR(230℃ 荷重21.18N)が7g/10min、融点が162℃であるポリプロピレン(略記号PP-1)
樹脂4:MFR(230℃ 荷重21.18N)が5g/10min、融点が163℃である結晶性ポリプロピレン(略記号PP-2)
樹脂5:MFR(230℃ 荷重21.18N)が16g/10min、融点が162℃である結晶性ポリプロピレン(略記号PP-3)
樹脂6:MFR(230℃ 荷重21.18N)が16g/10min、融点が131℃であるエチレン含有量4.0質量%、1−ブテン含有量2.65質量%のエチレン−プロピレン−1−ブテン3元共重合体(略記号Co−PP)
樹脂7:固有粘度(η)が0.64、ガラス転移点が70℃であるポリエチレンテレフタレート(略記号PET)
【0030】
(メルトフローレート(MFR)の測定)
JIS K 7210に準拠し、上記樹脂1〜6のメルトフローレートの測定を行った。ここで、MIは、附属書A表1の条件D(試験温度190℃、荷重2.16kg)に準拠し、MFRは、条件M(試験温度230℃、荷重2.16kg)に準拠して測定した。
【0031】
(複合繊維の製造)
表1に示す熱可塑性樹脂を用い、第1成分を芯側、第2成分を鞘側に配し、無機微粒子としては、マスターバッチ化された二酸化チタンを第1成分及び第2成分に表1記載の量を練りこむ方法で含有させ、同様に表1に示す押出温度と、複合比(容量比)、断面形状で紡糸し、その際、アルキルフォスフェートK塩を主成分とする繊維処理剤をオイリングロールに接触させて、該処理剤を付着させた。得られた未延伸繊維を、延伸温度(熱ロールの表面温度)90℃に設定し、表1に示す条件で延伸工程−捲縮付与工程を経た後、熱風循環型乾燥機を用いて表1に示す熱処理温度で5分間熱処理工程を施して繊維を得た。捲縮付与は、スタッフィングボックス型クリンパーロールによって、ジグザグの機械捲縮を12〜20山/2.54cmの捲縮数の範囲にて付与させた。
該繊維をカッターで表1中の長さ(カット長)にカットし短繊維とし、これを試料繊維として用いた。得られた試料繊維は、ローラーカード試験機にて目付200g/m2のカードウェブを作成し、収縮率の測定に用いた。
【0032】
(無機微粒子の添加方法)
無機微粒子として、繊維中に添加し使用される市販のTiO2を用い、上記複合繊維へ配合した。繊維への無機微粒子の添加方法は、以下の方法を用いた。
無機微粒子の粉体をマスターバッチ化後、第1成分及び/または第2成分へ添加する。マスターバッチ化に用いる樹脂は、第1、第2成分と同じ樹脂を用いた。表1に記載された添加率は、「第1成分における質量%/第2成分における質量%」を表す。
【0033】
(収縮率)
試料繊維をローラーカード試験機にてカードウェブとし、目付200g/m2のウェブを作製した。同ウェブを縦25×横25cmにカットし、この状態で市販の熱風循環ドライヤーを用いて120℃で5分間熱処理を行った。
熱処理後のカードウェブを放冷後、縦もしくは横のいずれか短いほうの長さを3箇所(上部、中央部、下部)に分けて測定し、値の平均h1(cm)を求め、以下の式から収縮率を算出した。
収縮率(%)={(25(cm)−h1(cm))/25(cm)}×100
【0034】
(不織布化)
上記工程で得られた表1に示す各種試料繊維A〜Kを用いて、表2に示す原綿1と原綿2の割合(質量%)で混綿し、別途ローラーカード試験機にてカードウェブとし、このウェブをサクションドライヤーで、130℃でスルーエアー加工(略称TA)して、不織布を得た。
得られた不織布の均一性を、下記の4段階で官能的に評価した。
良好 ◎ > ○ > △ > × 不良
◎・・・地合ムラ(目付ムラ)が見られない。
○・・・若干の地合ムラ(目付ムラ)が見られる。
△・・・地合ムラ(目付ムラ)が見られる。
×・・・地合ムラ(目付ムラ)や不織布の幅入りが見られる。
【0035】
(圧縮試験)
上記工程で得られた不織布を縦5cm×横5cmでカットし、この不織布を4枚重ね、0.05cm/secの速度で圧縮加重が70gf/cm2になるまで圧縮し、10gf/cm2時及び70gf/cm2時の厚み(mm)から、比容積(cm3/g)を算出した。また圧縮率を下記式より求めた。
圧縮加重を10gf/cm2及び70gf/cm2としたのは、不織布がオムツ等の衛生材料として使用されている状況を想定したものであり、特に70gf/cm2は椅子や床に座っている状況を想定したものである。
この圧縮率の値が小さいほ程、耐圧縮性に優れていると判断する。
圧縮率(%)={(X10−X70)/X10}×100
ここでX10及びX70は次のとおりである。
X10:10gf/cm2加重時の比容積(cm3/g)
X70:70gf/cm2加重時の比容積(cm3/g)
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の複合繊維によれば、加熱処理後の収縮率が20%以上に保たれることで、不織布化時における加熱接着の際に潜在捲縮が発現し、嵩高性、耐圧縮性に優れた不織布を作製することができる。さらに複合繊維に無機微粒子を添加することによって、嵩高性、耐圧縮性と同時に柔軟性をも併せ持つ不織布が得られ、本来の無機微粒子添加の作用効果からは予期せぬ優れた効果を奏するものとなる。
本発明の熱接着性複合繊維から得られる不織布は優れた嵩高性、耐圧縮性を有し、且つ柔軟性にも優れているので、嵩高性、耐圧縮性と柔軟性を要求される用途、例えばおむつ、ナプキン、失禁パット等の吸収性物品、ガウン、術衣等の医療衛生材、壁用シート、障子紙、床材等の室内内装材、カバークロス、清掃用ワイパー、生ゴミ用カバー等の生活関連材、使い捨てトイレ、トイレ用カバー等のトイレタリー製品、ペットシート、ペット用おむつ、ペット用タオル等のペット用品、ワイピング材、フィルター、クッション材、油吸着材、インクタンク用吸着材等の産業資材、一般医療材、寝装材、介護用品など、嵩高性、耐圧縮性を要求される様々な繊維製品への用途に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂を含む第1成分が芯を構成し、及び前記ポリエステル系樹脂の融点より15℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂を含む第2成分が鞘を構成する、偏心芯鞘構造をとっている複合繊維であり、下記測定方法で算出される120℃での熱処理後の収縮率が20%以上であることを特徴とする、熱収縮性を有する熱接着性複合繊維。
収縮率(%)={(25(cm)−h1(cm))/25(cm)}×100
(h1は、縦25cm×横25cmで目付が200g/m2のウェブを5分間熱処理した後の縦もしくは横のいずれか短いほうの長さ。)
【請求項2】
請求項1に記載の測定方法で算出される100℃、120℃及び145℃での熱処理後の収縮率が、下記2つの式を満たすような請求項1に記載の熱接着性複合繊維。
[1] 120℃での収縮率≧145℃での収縮率
[2] 120℃での収縮率≧100℃での収縮率
【請求項3】
熱接着性複合繊維の繊度が1.0〜8.0dtexである、請求項1又は2に記載の熱接着性複合繊維。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱接着性複合繊維と、別の1種類以上の熱接着性繊維とが混綿された不織布であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱接着性複合繊維が10〜60質量%の混綿率で含まれる不織布。
【請求項1】
ポリエステル系樹脂を含む第1成分が芯を構成し、及び前記ポリエステル系樹脂の融点より15℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂を含む第2成分が鞘を構成する、偏心芯鞘構造をとっている複合繊維であり、下記測定方法で算出される120℃での熱処理後の収縮率が20%以上であることを特徴とする、熱収縮性を有する熱接着性複合繊維。
収縮率(%)={(25(cm)−h1(cm))/25(cm)}×100
(h1は、縦25cm×横25cmで目付が200g/m2のウェブを5分間熱処理した後の縦もしくは横のいずれか短いほうの長さ。)
【請求項2】
請求項1に記載の測定方法で算出される100℃、120℃及び145℃での熱処理後の収縮率が、下記2つの式を満たすような請求項1に記載の熱接着性複合繊維。
[1] 120℃での収縮率≧145℃での収縮率
[2] 120℃での収縮率≧100℃での収縮率
【請求項3】
熱接着性複合繊維の繊度が1.0〜8.0dtexである、請求項1又は2に記載の熱接着性複合繊維。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱接着性複合繊維と、別の1種類以上の熱接着性繊維とが混綿された不織布であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱接着性複合繊維が10〜60質量%の混綿率で含まれる不織布。
【公開番号】特開2011−47077(P2011−47077A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196796(P2009−196796)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(506276907)ESファイバービジョンズ株式会社 (16)
【出願人】(506276712)イーエス ファイバービジョンズ ホンコン リミテッド (16)
【出願人】(506275575)イーエス ファイバービジョンズ リミテッド パートナーシップ (16)
【出願人】(506276332)イーエス ファイバービジョンズ アーペーエス (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(506276907)ESファイバービジョンズ株式会社 (16)
【出願人】(506276712)イーエス ファイバービジョンズ ホンコン リミテッド (16)
【出願人】(506275575)イーエス ファイバービジョンズ リミテッド パートナーシップ (16)
【出願人】(506276332)イーエス ファイバービジョンズ アーペーエス (16)
【Fターム(参考)】
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