説明

熱活性により接着可能な平面要素

本発明は、少なくとも一種の熱活性可能な接着料、少なくとも一種の誘導加熱可能な材料、及び少なくとも一種の熱伝導性フィラー材を含む平面要素であって、該フィラー材の材料が、少なくとも0.5W/(m*K)の熱伝導性を有することを特徴とする平面要素に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にプラスチックとプラスチックを接着するための高い接着力を有する熱活性により接着可能な平面要素並びにそのような接着のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱活性により接着可能な平面要素(熱活性化可能平面要素)は、接合部品の高強度の結合を得るために用いられる。このような平面要素は、より薄い接着接合部の場合に、感圧接着料系だけを含む平面要素によってもたらされ得る強度と同等か又はそれより高い強度を達成するのに特に適している。このような高強度の接合は、例えば、家庭用電子機器、娯楽用電子機器又は通信用電子機器の分野で、例えば、携帯電話、PDA、ノート型パソコン及びその他の計算機、デジタルカメラ及び表示機器、例えばディスプレイ及び電子書籍端末のような電子機器の小型化が進む際にとりわけ重要となる。
【0003】
なかでも、携帯用の家庭用電子機器製品における接着結合の加工性及び安定性に対する要求が高まっている。一方で、これは、そのような物品の寸法が絶えずより小さくなっているため、接着結合に利用できる面積も減少していることに関連している。他方では、このような機器における接着結合は特に安定していなければならない。というのも、携帯用の物品は、例えば衝突や落下のような強い機械的負荷に耐えなければならず、加えて幅広い温度範囲において使用されるからである。
【0004】
そのことから、そのような製品では、熱活性により接着可能な接着料、つまり室温では自己接着性を示さないか又はせいぜい僅かな自己接着性しか示さないが、熱の影響下ではその時々の接着基材(接合相手、接着下地)への接合に必要な接着力を生じさせる接着料を有する熱活性により接着可能な平面要素を使用することが好ましい。そのような熱活性化接着性接着料は、室温ではしばしば固体形態で存在しているが、接合の間、温度の影響によって接着力の高い状態に可逆的又は不可逆的に移行する。可逆的に、熱活性により接着する接着料は、例えば熱可塑性ポリマーをベースとする接着料であり、他方、不可逆的に熱活により接着する接着料は、例えば熱活性化により架橋反応のような化学反応が進行する、例えば反応性接着料であり、そのことによりこの接着料は、永続的で高強度の接合に特に適している。
【0005】
その際に、特に、より薄い接着テープへの要求が常にあるが、その際に、強度要求が減少するわけではない。現在提供されている熱活性可能なフィルムの厚さの範囲は非常に幅があり、例えば、30〜250μmの厚さは珍しくない。
【0006】
すべての熱活性により接着可能な接着料系に共通しているのは、接着する際にこれら接着料を加熱しなければならないことである。特に、接着料系が接着基材を外面的に、完全に覆っている場合の接合の際、該接着料を溶融又は活性化するのに要する熱を接合面に急速に輸送することが非常に重要である。その際、接着基材の一方が良好な熱伝導体であれば、その接着基材を外部の熱源、例えば直接的な熱伝達器、赤外線ヒータ等によって加熱することができる。
【0007】
ただし、公知の接着料を急速で均質に加熱するのに必要な短い加熱時間は、このような直接的な加熱又は接触加熱の場合、熱源と接着基材との間の大きな温度勾配でしか実現できない。そのため、加熱すべき接着基材自体は、温度の影響を受けにくいことが望ましく、しかも温度は、部分的に、接着料の溶融または活性化に本来必要であるよりかなり高くなる可能性がある。つまり、プラスチックとプラスチックを接着するために熱活性化性接着フィルムを使用することには問題がある。特に家庭用電子機器では、プラスチックとして、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、またはこれらのプラスチックをベースとするブレンドが使用される。
【0008】
要するに、例えば多くのプラスチックの場合のように、また電子部品、例えば半導体部品又は液晶モジュールの場合のように、熱を十分に伝導する接着基材がないとき、あるいは接着基材が比較的高い温度に対して影響を受けやすいときでは状況は異なる。それ故、ほとんど熱を通さないか、または熱の影響を受けやすい材料から成る接着基材を接着するために、熱活性化接着可能な平面要素自体が、加熱のための内在的な機構を備えることが提案され、これにより接着に必要な熱は、外部から導入する必要がなく、平面要素自体の内部で直接生成される。従来技術から、このような内部加熱を実現可能な様々な機構が、例えば電気抵抗加熱による、又は磁気誘導による、又はマイクロ波照射との相互作用による加熱として知られている。
【0009】
交流磁場内での加熱は、一つには導電性受容体内で誘導される渦電流により、もう一つには、モデルとして説明すれば、交流場内で反転する原子磁石のヒステリシス損失により達成される。ただし渦電流を発生させるには、最小限の大きさの導電性領域が必要とされる。この最小限の大きさは、交流場の周波数が低いほどより大きくなる。受容材料(Rezeptormaterial)に応じて、両方の効果を一緒に発生させたり(例えば、磁性金属)、又は一方の効果だけをそれぞれ発生させたりする(例えば、アルミニウムは渦電流だけ、酸化鉄粒子はヒステリシスだけ)。
【0010】
原理的には、誘導加熱のための様々な加熱装置が知られている。これらの装置は、とりわけそれぞれの加熱装置によって生成される交流磁場が有する周波数に基づいて区別することができる。すなわち、誘導加熱は、その周波数が、約100Hz〜約200kHzの周波数範囲(いわゆる中周波;MF)内の磁場を用いて行うことができるか、又は約300kHz〜約100MHzの周波数範囲(いわゆる高周波;HF)内の磁場を用いて行うこともできる。それ以外にも特殊な例として、マイクロ波範囲の周波数、例えば2.45GHzのマイクロ波標準周波数の磁場を用いた加熱装置も知られている。
【0011】
使用する交流場の周波数と共に、交流場を生成するために行わなければならない技術的な手間が増え、したがって加熱装置にかかる費用が上昇する。中周波の設備でも市場価格は目下のところ約5,000ユーロであり、高周波の設備に関しては少なくとも25,000ユーロを考慮しなければならない。それだけでなく、加熱設備に対する安全性の要求も周波数と共に高くなり、したがって高周波の設備では必然的に、比較的高い購入費用に加え、安全性に関する設備技術を施すための比較的高い費用も発生する。
【0012】
これに加え、電子機器内の部品を接着するために高周波を使用する場合、交流電磁場の印加中により、これらの機器内の電子部品に望ましくない損傷が生じる可能性がある。
【0013】
誘導加熱の使用例としては、接着、継ぎ目塞ぎ(Nachtabdichtung)、硬化、焼入れ(Anlassen)などの分野のための製造プロセスが利用できる。その際に一般に行われている技術とは、例えば欧州特許出願公開第1056312A2号(特許文献1)又はドイツ国実用新案出願公開第202007003450U1号(特許文献2)によれば、誘電子が部品を完全に又は部分的に含み、そして全体にわたって一様に又は要求に応じて意図的に不均一に加熱するような方法を用いることである。
【0014】
ドイツ国実用新案出願公開第202007003450U1号(特許文献2)には、例えば容器の開口部をシーリングフィルムで融合する方法も示されており、この方法では、シーリングフィルムの金属充填部分(metallische Einlage)が誘導を使って加熱され、そして熱伝導によりシーリング接着剤が溶融される。該容器は、ねじ止め可能な又は係合可能な蓋によって閉じられ、該蓋は、金属フィルム及び隣接して配置されるプラスチック製シーリングフィルムを含む。誘導コイルにより金属フィルム内に渦電流を発生させ、この渦電流が金属フィルムを加熱する。金属フィルムとシーリングフィルムとの間の接触によってシーリングフィルムも加熱され、そしてそれにより容器の開口部と融合させる。トンネル状の誘導コイルは、平坦なコイルと比べて、コイルが金属フィルムに対して側面から影響を及ぼすことから、金属フィルムと蓋上縁との間隔が広い容器でもシーリングできるという利点を有する。
【0015】
この方法の欠点は、純粋な接着剤体積よりもはるかに大きい部品体積の部分及び金属フィルムが、電磁場を通って誘導され、それゆえ、望ましくない部位で加熱が生ずる場合があるために、電子部品の場合には損傷の可能性が排除されない。さらに、蓋フィルム全体が加熱されることが不利であり、その際、接着するには、容器と接触している周縁領域だけで十分であろう。つまり、接着面積に対する加熱面積の比が大きく、25mmの口径及び2mmの接着幅を有する典型的な飲み物用ボトルについて、この比は、例えば6.5である。一般に、同様に変わることのない接着領域の場合、容器直径が大きいほど、この比も大きくなる。
【0016】
近年、特にプラスチックにプラスチックを接着する際の誘導加熱に関し、誘導加熱可能な熱活性可能な接着フィルム(HAF)が新たな関心の中心になっている。その理由は、今では入手可能なナノ粒子系、例えばMagSilica(商標)(Evonik AG)を求めることができ、該ナノ粒子系は加熱すべき物体の材料中に投入でるため、それにより物体の機械的安定性をさほど損なうことなく、物体をその全体積にわたって加熱することが可能になる。
【0017】
しかしながら、このナノスケールの系の小さなサイズに起因して、このような製品を中周波範囲の周波数の交流磁場内で効率よく加熱することは不可能である。むしろこの新種の系には高周波範囲の周波数が必要である。しかしながら、まさにこの周波数の場合に、交流磁場内で電子部品が損傷する問題が特に強く現れる。そのうえ、高周波範囲内の周波数の交流磁場を生成するには、装置のための費用がより多く必要とされ、したがって経済的に不利である。さらに、後のリサイクルの際にナノ粒子状のフィラー材は周囲の材料からほとんど分離できないことから、ナノ粒子状のフィラー材の使用はエコロジーの観点からも問題がある。それだけでなく、ナノ粒子系は非常に集塊を形成しやすいことから、ナノ粒子系により生成された膜はたいてい非常に不均質であり、それ故、この粒子を非常に薄い膜内で使用することは困難である。
【0018】
更に、そして上述の問題点を回避するため、誘導により加熱可能であるべき熱活性可能なフィルム(HAF)に、金属の、又は金属被覆された平面形成物を充填することができる。全面にわたる金属フィルムを使用する際、このやり方は中周波範囲内でも非常に効率がよく、高い加熱速度を達成することができ、これにより0.05〜10秒の間の誘導時間を実現できる。その際、非常に薄い0.25μm〜75μmの間の導電性フィルムを使用することもできる。
【0019】
HAFの母材が通り抜けることができる、打抜き用金属フィルム、ワイヤーネット、エキスパンドメタル、金属不織布又は繊維の使用も知られており、これにより、複合体の凝集性が改善される。ただしこれにより加熱効率は低下する。
【0020】
携帯用電子機器内部における接着に関し、誘導加熱可能なナノ粒子を含む製品である、Lohmann社のDuolplocoll RCDが知られている。この製品は、高周波範囲内でしか工業的に利用可能に加熱することができない。粒子及び高周波交流場の使用に関する上述の欠点は、この製品にも当てはまる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1056312A2号
【特許文献2】ドイツ国実用新案公開第202007003450U1号
【特許文献3】ドイツ国特許出願公開第102006042816A1号
【特許文献4】欧州特許出願公開第1475424A1号
【特許文献5】欧州特許出願公開第1956063A2号
【特許文献6】欧州特許出願公開第456428A2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の課題は、非常に良好な接着強度での接着、特にプラスチック−プラスチックの接着を実現できる、熱活性可能な平面要素を提供することである。この平面要素は、誘導加熱を有利に用いて、高いサイクル速度で、特に従来技術の欠点を回避しながら接着可能であるべきである。
【0023】
とりわけ、電子機器中での使用には、平面要素が、接着面に対して垂直な、つまり、平面要素の(平均的な)面の広がり対して垂直な方向で高い絶縁耐力を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この課題の解決法として、少なくとも一種の誘導加熱可能な材料並びに少なくとも一種の熱活性可能な接着料を含む、熱活性可能な接着テープ、特に、プラスチックに対してプラスチックを高強度で接合させるための接着テープが提案され、その際、該熱活性可能な接着料は、平面要素の(平均的な)面の広がりに対して垂直な方向(以下、“z方向”ともいう)において高い熱伝導性を有する。絶縁耐力を得るには、z方向の導電性がゼロかまたは少なくとも無視できるほど小さいときが非常に有利である。
【0025】
上記の課題は、本発明により、特に、少なくとも一種の熱活性可能な接着料、少なくとも一種の誘導加熱可能な材料及び少なくとも一種の熱伝導性フィラー材(“熱伝導性添加剤”ともいう)を含み、その際、該フィラー材の材料が、少なくとも0.5W/(m*K)の熱伝導性を有する熱活性により接着可能な平面要素によって解決される。
【0026】
熱伝導性フィラー材は、熱活性可能な感圧接着料の層内部で、特にz方向において熱伝導性を生ずる添加剤である。熱伝導性フィラー材は、全体的又は少なくとも部分的に、熱伝導性(thermische Leitfaehigkeit)に優れた材料から成ることが有利である。
【0027】
有利には、熱活性により接着可能な平面要素は、z方向において少なくとも0.4W/(m*K)、特に0.8W/(m*K)超の熱伝導性を有する。有利な手順において、熱伝導性フィラー材は、熱活性可能な接着料がz方向において少なくとも0.4W/(m・K)、特に0.8W/(m*K)超の熱伝導率を有するように選択され、及び/又はそのような量で添加される。
【0028】
熱伝導性フィラー材の材料は、0.5W/(m*K)超、好ましくは5W/(m*K)超、特に好ましくは10W/(m*K)超であることが有利である。添加剤の熱伝導率が上昇するにつれ、特定の熱エネルギーを達成するための添加量を減らすことができ、したがって接着料の接着性の低下がより小さくなる。
【0029】
非常に好ましくは、熱伝導性添加剤が、非導電性であるか、又は非常に低い導電性しか示さないように選択される。これにより、平面要素の高い熱伝導性が生じると同時に絶縁耐力が得られる。
【0030】
特に有利には、両面が熱活性により接着可能な平面要素である。
【0031】
驚くべきことに、本発明の平面要素の接着強度は、添加剤を含まない及び/又は熱伝導性の値を満たさない同等の平面要素の場合と比較してより大きいことが分かった。誘導加熱可能な材料、特に導電層の良好な熱誘導によって、局所的な過熱の危険性はより低く、かつより高い加熱速度を適用することができる。
【0032】
0.4〜0.8W/(m*K)の範囲の熱伝導率を有する接着料については、接着強度と必要なフィラー材含有率との間での良好な妥協点が見出された。0.8W/(m*K)以上の熱伝導率を有する接着料の場合、その高い熱伝導率が特に良好な熱分布をもたらし、その結果、とりわけ局所的な加熱に起因する上述の欠点を、特に良好に回避することができる。
【0033】
熱活性可能な接着料
少なくとも一種の熱活性により接着可能な接着料として、基本的に、全ての慣用的熱活性により接着可能な接着料系を使用することができる。熱活性により接着可能な接着料は、原理的には、二つのカテゴリーに分類される。すなわち、熱可塑性の、熱活性により接着可能な接着料(溶融接着材料)、及び反応性の熱活性により接着可能な接着料(反応性接着材料)である。この分類は、両方のカテゴリーに分類できる、つまり反応性の熱可塑性熱活性により接着可能な接着料(反応性溶融接着材料)も含まれる。
【0034】
熱可塑性接着料は、加熱すると可逆的に軟化し、そして冷却中に再び凝固するポリマーをベースとする。これに対し、反応性で熱活性により接着可能な接着料は、反応性成分を含んでいる。後者の成分は“反応性樹脂”ともいい、この成分中では加熱により架橋プロセスが引き起こされ、架橋反応の終了後、圧力下でも永続的な安定した接合が保証される。好ましくは、このような熱可塑性接着料は、例えば合成ニトリルゴムのような弾性成分も含んでいる。このような弾性成分は、その高い流動粘度の故に、熱活性により接着可能な接着料に、圧力下でも非常に高い寸法安定性を付与する。
【0035】
以下に、本発明に関して特に有利であると判明したいくつかの典型的な系の熱活性により接着可能な接着料を、純粋に例として説明する。
【0036】
熱可塑性で熱活性により接着可能な接着料は、それゆえ熱可塑性のベースポリマーを含んでいる。このベースポリマーは、低い押圧力での良好な流動挙動を既に有しており、そのため永続的な接着を保たせるのに重要な最終接着力が短い押圧時間内に生じ、そしてそれ故、粗面状の又はその他の臨界的な下地に対しても迅速な接着が可能となる。熱可塑性で熱活性により接着可能な接着料として、従来技術から知られている全ての熱可塑性接着料を使用することができる。
【0037】
例えば、ドイツ国特許出願公開第102006042816A1号(特許文献3)に記載されている熱活性可能な接着料が適しているが、これを提示することに制限の意図はない。
【0038】
組成の例は、例えば欧州特許出願公開第1475424A1号(特許文献4)に記載されている。すなわち熱可塑性接着料は、例えば、以下の成分、すなわち、ポリオレフィン、エチレン−ビニルアセテート−コポリマー、エチレン−エチルアクリレート−コポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン又はブタジエン−スチレン−ブロックコポリマーの一種又は複数種を含むことができるか、又はこれらの成分から成ることさえできる。好ましくは、例えば、欧州特許出願公開第1475424A1号(特許文献4)の段落[0027]に挙げられている熱可塑性接着料が使用される。更に、特に、特殊な使用分野、例えば、ガラスからなる接着基材の接合に特に適した熱可塑性接着料が、欧州特許出願第1956063A2号(特許文献5)に記載されている。好ましくは、レオロジー添加剤、例えば、混合成分として、発熱性のケイ酸、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及び/又はさらなるポリマーの添加によってその溶融粘度が引き上げられた熱可塑性接着料を使用することである。
【0039】
これに対し、反応性の熱活性により接着可能な接着料は、エラストマーのベースポリマー及び変性樹脂を有利に含み、その際、該変性樹脂は、接着樹脂及び/又は反応性樹脂を含む。エラストマーのベースポリマーの使用により、寸法安定性に秀でた接着層を得ることが可能となる。反応性の熱活性により接着可能な接着料としては、それぞれの具体的用途に応じて、従来技術から知られている全ての熱活性により接着可能な接着料を使用することができる。
【0040】
これには、例えば、ニトリルゴム又はその誘導体、例えばニトリルブタジエンゴムをベースとするか、又はこのベースポリマーに例えばフェノール樹脂のような反応性樹脂を加えた混合物(ブレンド)をベースとする、反応性の熱活性により接着可能なフィルムも含まれており、このような製品は、例えばtesa8401の名称で市場から入手可能である。そのニトリルゴムは、その高い流動粘度に起因して、熱活性により接着可能なフィルムに顕著な寸法安定性をもたらし、それによって、架橋反応の実施後、プラスチック表面への高い接着力を実現することができる。
【0041】
もちろん、その他の反応性の熱活性により接着可能な接着料を使用することもでき、例えば、接着可能なポリマーを質量割合50〜95重量%、及びエポキシド樹脂又は複数のエポキシド樹脂の混合物を質量割合5〜50重量%含む接着料を使用してもよい。この場合、接着可能なポリマーは、一般式CH=C(R)(COOR)(式中、Rは、H及びCHを含む群から選択される残基であり、そしてRは、H及び1〜30個の炭素原子を有する直線状又は分枝状のアルキル鎖を含む群から選択される残基である。)のアクリル酸化合物及び/又はメタクリル酸化合物を40〜94重量%、少なくとも一つの酸性基、特にカルボン酸基及び/又はスルホン酸基及び/又はホスホン酸基を有する第一の共重合可能なビニルモノマーを5〜30重量%、少なくとも一つのエポキシド基又は酸無水物官能基を有する第二の共重合可能なビニルモノマーを1〜10重量%、及び該第一の共重合可能なビニルモノマーの官能基及び該第二の共重合可能なビニルモノマーの官能基とは異なる、少なくとも一つの官能基を有する第三の共重合可能なビニルモノマーを0〜20重量%を有利に含む。このような接着料は、短時間内で既に最終接着力に達する迅速な活性化での接着を可能にし、その結果全体として、非極性の下地に良好に対して付着して接合させることが保証されている。
【0042】
特別な利点を提供するさらなる使用可能な反応性の熱活性により接着可能な接着料は、アクリレート含有のブロックコポリマーを40〜98重量%、樹脂成分を2〜50重量%、及び硬化成分を0〜10重量%含んでいる。該樹脂成分は、接着力を増大させる(粘着性付与の)エポキシド樹脂、ノボラック樹脂及びフェノール樹脂を含む群から選択される一種又は複数種の樹脂を含む。該硬化成分は、上記の樹脂成分からの樹脂を架橋するのに使用される。このような調合物は、ポリマー中の強い物理的架橋により、全体として接着の負荷耐性を損なうことなく全体厚のより大きい接着層が得られるという特別な利点を提供する。したがって、この接着層は、下地の起伏を均すのに特に適している。そのうえこのような接着料は、良好な耐老化性及び僅かなガス放出挙動しか示さず、これは電子機器分野での多くの接合の際に特に望ましいことである。
【0043】
ただし、原則的には、既に上で言及したように、これらの特に有利な接着料だけでなくその他の全ての熱活性により接着可能な接着料も、接着に関するその時々の要求プロフィルに応じて選択かつ使用することができる。
【0044】
熱伝導性フィラー材
熱伝導性フィラー材は、接着料内で良好な分布を可能にするよう改質される、すなわわち、特に(とりわけ微細化された)粒子(“フィラー材粒子”)又は固体物の形態で添加されることが好ましい。
【0045】
したがって熱伝導性フィラー材としては、例えば炭素繊維、特に欧州特許出願公開第456428A2号(特許文献6)に記載されているような炭素繊維を使用することができる。このような炭素繊維は、繊維を含んだ接着料に基づいて20〜60重量%の量で有利に使用できること。
【0046】
熱伝導性フィラー材としては、一次粒子から構成され、かつ単位質量当たりの比表面積が1.3m/g以下の粒子を含むか、又はこの粒子からなるフィラー材を使用するのが好ましい。特に、このような比表面積が1.3m/g未満の粒子状添加剤の場合、同じ材料からなるが表面積のより大きな粒子状添加剤に比べて、熱活性化性接着料中の熱伝導性が明らかに高くなることが観察された。
【0047】
普通はこれとは逆に、接着料の熱伝導率は熱伝導性添加剤の比表面積に伴って上昇すると予測されるであろう。というのも、より大きな表面積は、より大きな熱伝達面積をもたらし、その結果母材ポリマーから熱伝導性添加剤への熱伝達の向上が想定され得るからである。
【0048】
しかしながらこれに関する実験では、このような熱伝導性の強い熱伝導性の構成物は、個々の添加剤粒子が、さらに個々の一次粒子の集積体として形成され、それ故不規則に成形された平滑でない表面を有する場合に初めて、十分に高い内部結合を有することが示された。粒子がこのような空間構造を有する場合に初めて、生じる熱伝導性の構成物が全体的に高い凝集性を示し、そしてその凝集性が比較的高い温度でも機械的負荷により喪失しないよう粒子はポリマーマトリクス中で堅固に構造的に固定される。
【0049】
ここで、一次粒子の平均径が少なくとも1μm、又はそれどころか2μm超の場合がとりわけ有利であることが分かった。というのも、こうすることで良好な熱伝導性の接着料が得られるからであり、この接着料の凝集性が、ポリマーマトリクスの粘性が、低下する高温でも依然として全体的に安定な結合を保証するのに十分なほど高いからである。
【0050】
その際、熱伝導性添加剤の粒子の単位質量当たりの比表面積がせいぜい1.0m/gとさらに小さい場合には、接着料の特に高い熱伝導率を達成することができる。
【0051】
有利な一実施形態において、熱伝導性添加剤は、少なくとも本質的に酸化アルミニウム粒子及び/又は窒化ホウ素粒子を含むか、又はそれからなる。特に好ましくは、一次粒子から構成され、かつ単位質量当たりの比表面積が1.3m/g以下の酸化アルミニウム粒子及び/又は窒化ホウ素粒子が使用される。
【0052】
酸化アルミニウム粒子及び/又は窒化ホウ素粒子のような不活性添加剤の使用により、化学的耐性の高い接着料が得られ、この接着料はさらに、この材料が容易に取扱い可能で、その際に非毒性であり、かつ他の使用可能な添加剤に比べて、高い熱伝導性に関して良好な妥協点を少ない費用で提供するため、経済的な観点でもエコロジーの観点でも有利である。
【0053】
添加剤が、酸化アルミニウムを含むか又は酸化アルミニウムである場合について、酸化アルミニウム粒子が、95重量%超の割合で、特に97重量%以上の割合でα−酸化アルミニウムからなる場合が特に有利であることが判明している。このやり方で、接着料中のアクリル酸又はメタクリル酸又はそのエステルをベースとするポリマー成分が予定より早く架橋又はゲル化するのを防止することが可能となる。この早期の架橋又はゲル化は、混合装置内において既に発生している可能性があり、粘度を著しく上昇させる結果となる。さらに、α−酸化アルミニウムの割合が高いことを考慮すると、生成する混合物は、その後も卓越した加工性も維持する。これに対し、アクリル酸又はメタクリル酸のエステルをベースとするポリマーの場合、γ−酸化アルミニウム又はβ−酸化アルミニウムの割合が少なくとも5重量%上昇すると、溶融物中に添加剤が投入されている間にポリマーのゲル化又は架橋が既に起こってしまい、その結果、得られる接着料は、もはや形成できないか又は均質な層として塗布できないことが分かった。
【0054】
実験による調査の結果によれば、本発明の効果が、β−酸化アルミニウムやγ−酸化アルミニウムに比べて、α−酸化アルミニウムのポリマー相との相互作用が低いことによるものであり、それ故、いくつかのポリマー分子から上位の架橋物が形成されることはないと推測される。酸化アルミニウム粒子の総質量に対するγ−酸化アルミニウム(及び/又は場合によってはβ−酸化アルミニウム)の質量割合が5重量%未満の場合(α−酸化アルミニウム含有率95重量%超に相当)、接着料体積全体に行き渡る架橋物を形成することができないため、完全なゲル化は阻止される。
【0055】
こうすることで、熱伝導性感圧接着料中の、アクリル酸又はメタクリル酸又はそのエステルをベースとするポリマー成分が予定より早く架橋又はゲル化するのを回避できる。この早期架橋又はゲル化は、混合装置内で既に発生している可能性があり、粘度を著しく上昇させる結果となる。さらに、α−酸化アルミニウムの割合が高いことを考慮すると、生成される混合物は、その後も卓越した加工性を維持する。
【0056】
これに関し、粘度上昇の問題が特に大きい接着料系がいくつか存在しており、これは、この接着剤系のポリマー母材が特に容易にゲル化するためである。この理由から、このような容易にゲル化する接着料には、本発明による概念の適用が特に有利であることが分かった。
【0057】
後からゲル化することは、遊離酸基又は遊離ヒドロキシ基を含むポリマーの場合には酸化アルミニウムとの相互作用が特に強いことから、まさに問題である。したがってこの系でも、本発明の有利な作用が特に大きい。
【0058】
少なくとも弱酸性で、例えばアクリレート、メタクリレート、そのエステル、及びその誘導体であるモノマー単位からポリマー料が構成されているとき、特に、ポリマー料中の該モノマー単位が接着料のポリマー部分の質量に対して少なくとも50重量%の高い割合で存在しているときには、ゲル化がしばしば起こる。このようなポリマー料はとりわけ、粘度の特に高い接着料を実現することが重要な場合に使用される。したがって本発明による概念は、このような組成の高凝集性接着料の場合にも特に有利である。
【0059】
ポリマー料のベースポリマーの平均分子質量Mが、少なくとも500,000g/mol、特に1,000,000g/mol超と高い場合はゲル形成の進行が速く、したがって本発明はこのような接着料の場合にも特に有意義である。
【0060】
さらに、熱伝導性添加剤の材料の熱伝導性が1W/(m・K)超、特に10W/(m・K)超、有利な場合には25W/(m・K)超、又は100W/(m・K)超の場合でさえも熱伝導性組成物が特に適している。こうすることで、添加剤含有率が低くても熱伝導性組成物が高い熱伝達を可能にすることが保証される。したがって接着料中の熱伝導性添加剤の割合を低く保つことができ、これにより高凝集性の接着料を実現することができる。
【0061】
その際、接着料中の熱伝導性添加剤が、それぞれ接着料中の熱伝導性添加剤の体積に基づいて少なくとも5体積%乃至最大70体積%の割合で、特に少なくとも15体積%乃至最大50体積%の割合で存在する場合が特に有用である。酸化アルミニウム粒子の場合は、酸化アルミニウム粒子が高凝集性の熱伝導性接着料中で、感圧接着料中の酸化アルミニウム粒子の質量に基づいて少なくとも20重量%乃至最大90重量%の割合で存在する場合が非常に有利である。酸化アルミニウム粒子に関しては、40重量%〜80重量%の含有率が特に良好な妥協点である。
【0062】
前述の添加剤量により、熱伝導性組成物が全体として、熱源から放熱体へのスムーズな熱輸送を可能にすることが保証される。これは一方では、このような接着剤の高い熱伝導性によるものであるが、他方では、この条件下でのポリマー母材の内部結合が十分に高いことにもよるためであり、この結合が、機械的応力下でも熱源及び放熱体の表面に対する確実な熱接触を提供する。
【0063】
しかしながらそれだけでなく、酸化アルミニウム粒子を少なくとも20重量%乃至最大40重量%の割合で含む熱伝導性接着剤が有利なこともあり、それはすなわち接着性能が特に高い接着料を実現すべき場合には有利であることができ、あるいは酸化アルミニウム粒子を少なくとも80重量%乃至最大90重量%の割合で含む熱伝導性接着料が有利なこともあり、これはすなわち特に高い熱伝導性が必要な場合には有利であることができる。
【0064】
さらに、粒子の平均径が2μm〜500μmの範囲内、特に2μm〜200μmの範囲内、又は40μm〜150μmの範囲内にある場合でさえも有利である。添加剤のこの形成により、粒子は、一方では熱源及び放熱体の表面形状に正確に適合するのに十分なほど小さく、しかしもう一方では、熱伝導性組成物の全体的な内部結合を低下させることなく高い熱伝導性を達成するのに十分なほど大きくもあるので、熱源及び放熱体に対する熱接触がさらに改善される。
【0065】
誘導加熱可能な材料
誘導加熱可能な材料としては、従来技術からそれ自体がこのために知られているような平面形成物(特に導電層)も粒子状の材料(粒子)も使用することができる。ただし導電性粒子の場合、加熱のための場が生成されると他方でマイグレーション(Migration)が生じ、したがって絶縁耐力の上昇の問題が再び生じる。
【0066】
導電層と見なされるのは、23℃で少なくとも1mS/mの導電性(電子及び/又は正孔)を有する、つまり電流が流れ得る少なくとも一種の材料から成るあらゆる層である。これには、特に金属、半金属、ならびに電気抵抗の低いその他の金属性材料及び場合によっては半導体も含まれる。すなわち導電層の電気抵抗は、一方では層内を電流が流れる際に層を加熱させ得るに十分なほど高く、しかしもう一方では、そもそも層を通る電流の流れを生み出すのに十分なほど低くもある。特殊な例としては、磁気抵抗が低い(したがって導磁率又は透磁率が高い)材料、例えばフェライトから成る層も導電層と見なすことができる。ただしこの材料は、低周波交流ではたいてい電気抵抗が比較的高く、したがってこの場合、大抵は交流磁場周波数が比較的高い傾向を示す場合に初めて加熱が達成される。
【0067】
例えば導電性の平面的な材料(平面形成物)を使用することが好ましい。なぜならこの材料は低周波で加熱できるからであり、これは結果として、磁場の侵入深度を比較的深くし、設備費用を比較的少なくする。導電性平面形成物の厚さが小さくなるにつれて接着テープがより柔軟になり、特に厚さが非常に小さければ十分な絶縁耐力が得られるので、この導電性平面形成物の厚さは100μm未満、特に50μm未満、とりわけ20μm未満であることが好ましい。
【0068】
したがって熱活性により加熱可能な材料は、導電性平面形成物、特に導電層であることが特に有利である。これらは少なくとも片面を、特に両面を、本発明により改質された熱活性可能な接着剤でコーティングされる。これにより秀でた絶縁耐力が達成される。
【0069】
有利な一実施形態では、熱活性により接着可能な平面要素の導電層は、平面要素の加熱速度を特に簡単なやり方で制限するため、その層厚が20μm未満、特に10μm未満である。それだけでなく、平面要素はさらなる熱活性接着性の接着料層を備えることができる。このような平面要素は、二つの面で接着可能な平面要素として、二つの接着基材を互いに結合させるのに特に適している。
【0070】
その際、導電層は、さらに磁性、特にフェロ磁性又は常磁性も示すことが好ましい。このような材料に関しては、渦電流の誘導に加えヒステリシス損失による加熱も発生し、全体的な加熱速度がより高くなることが予測されたのだが、この予測に反しニッケル又は磁性鋼のような電流を良く通す磁性材料でさえ、例外なく電流を非常に良く通すがそれ自体は磁性を示さない材料、例えば銅又はアルミニウムより加熱速度が低いことが観察された。したがって、磁性で電流を通す材料を使用することにより、加熱をより容易にコントロールでき、接着接合部から離れたところでの加熱効果の発生を減らすことができる。
【0071】
さらに、300Kについてそれぞれ測定した場合、導電層が20mS/m超(これは例えばアルミニウムの使用により達成可能)、特に40mS/m超(これは例えば銅又は銀の使用により達成可能)の導電率を有する場合が有利である。これにより、高強度の接着結合の生成に必要な接着接合部内の十分に高い温度、及び均質で全体的な加熱を、非常に薄い平面要素でも実現することができる。意外にも、誘導された渦電流による加熱は、導電性が増すにつれて上昇し、予測したように電気抵抗が増すにつれて上昇するのではないことが観察された。
【0072】
平面要素の構造
本願の意味における平面要素としては、特に、実質的に平面的な広がりを有するすべての一般的で適切な形成物が当てはまる。この形成物は、平面的な接着を可能にし、様々な、特に柔軟な、接着フィルム、接着テープ、接着ラベルとして、又は成形ダイカットとして形成することができる。平面要素は、誘導加熱中に接着基材が熱によって損傷する危険性を低減するため、接着面の形状に合わせて裁断した平面要素として形成することができる。
【0073】
本発明の意味における平面要素は、いずれも二つの面、すなわち前面と後面とを備える。その際、前面及び後面という概念は、平面要素の主拡張方向(面の拡張方向、主広がり面)に平行な、平面要素の両方の表面に関するものであり、平面要素が向かい合って配置されたこの両方の面を区別するために用いられるだけであり、この概念の選択により両方の面の絶対的な空間配置が規定されることはなく、したがって前面は、平面要素のうち空間的に後ろに置かれた側面であってもよく、つまりその場合、これに対応して後面は、平面要素のうち空間的に前に置かれた側面である。
【0074】
この熱活性により接着可能な平面要素は、接着基材上に接着されるべきである。このため平面要素は両方の側面の少なくとも一方に、好ましくは両方の側面にさえも、熱活性により接着性の接着料を備えている。熱活性により接着する接着料とは、温度が上昇すると高温状態で接着し、冷却後に機械的応力に耐え得る結合を提供するすべての接着料である。この接着料は一般的に接着料層の形で存在している。
【0075】
層とは、特に、機能に統一性のある系の平面状の構成を指しており、その寸法は、一つの空間方向(厚さ又は高さ)が、主拡張方向を定義する別の二つの空間方向(長さ及び幅)より有意に小さい。このような層は、隙間なくもしくは透かし構造にも形成することができ、かつ単一の材料からなることも、あるいは特にこの層の機能の統一性に寄与する場合には様々な材料からなることもできる。層は、その面の広がり全体にわたって一定の厚さまたは様々な厚さを有することができる。それだけでなく層はもちろん複数の機能を有することができる。
【0076】
本発明において接着すべき平面要素は、少なくとも二つの異なる層、つまり少なくとも一つの導電層及び少なくとも一つの熱活性により接着性の接着料層を含むことが有利である。
【0077】
原理的には、少なくとも一つの導電層を、任意に適切に、例えば薄い、全面的で隙間のない層、又は透かし構造の層として(例えば、格子として)形成することができる。導電層の層厚は、50μm未満、特に20μm未満、または10μm未満であることさえも好ましい。層厚の方が、加熱速度の上限を比較的簡単に制限することができる。
【0078】
導電層は、すべての一般的で適切な材料、例えばアルミニウム、銅、金、ニッケル、ミューメタル、アルニコ、パーマロイ、フェライト、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びその類似物から構成することができる。その際、導電層は、さらに磁性、特にフェロ磁性又は常磁性も示すことが好ましい。この導電層はその際、それぞれ300Kに対して決定された導電性が、20mS/m超(固有抵抗が50mΩ・mm/m未満に相当)、特に40mS/m超(固有抵抗が25mΩ・mm/m未満に相当)であることが有利である。
【0079】
もちろん平面要素は、少なくとも一つの導電層に加え、この少なくとも一つの導電層と同一でも又は異なっていてもよいさらなる導電層を備えることもできる。
【0080】
全体的に、熱活性により接着可能な平面要素は、任意に適切に形成することができる。すなわち平面要素は、前述の両方の層に加えてさらなる層を含むことができ、例えば永続的な支持体又は一時的な支持体を含むことができる。さらに平面要素は、その両方の側面の一方でのみ接着可能に、または両方の側面で接着可能に、例えば片面又は両面で接着可能な接着テープとして形成することができる。後者の場合、平面要素は少なくとも一つの熱活性接着性の接着料と同一でも又は異なっていてもよい少なくとも一つのさらなる接着料層を備えている。したがってこのさらなる接着料層は、例えば熱活性接着性の接着料を含むことができ、または感圧接着料でさえも含むことができる。
【0081】
十分な絶縁耐力を達成するには、熱活性可能な接着剤の層は少なくとも10μm厚であることが有利であり、十分な接着強度での十分な絶縁耐力を保証するには、厚さは20〜50μmの間が好ましい。これに対し、特に固定的な接着結合のためには50〜200μmの厚さが有利である。
【0082】
本発明による平面要素の有利な実施形態は、
・平面要素の厚さが70μm未満、特に50μm未満、とりわけ30μm未満であり、
・及び/又は導電性の平面的な材料の厚さが30μm未満、特に20μm未満、とりわけ15μm未満であり、
・その際、好ましくは、磁気誘導による接着テープの加熱によって接着させることに基づく、ポリカーボネート上での静的せん断試験における接着強度が400MPa超であることを特色とする。
【0083】
さらに、十分な絶縁耐力を保証するため、導電性の平面的な材料を両側から熱活性化性接着材料でコーティングすることが有利である。
【0084】
方法
本発明の対象はさらに、熱活性により接着可能な平面要素と特定の種類の接着基材とを接合させるための方法である。
【0085】
この接着基材はその際、原理的には、熱活性接着料で接着可能な(つまり特に、その際にもたらされ得る温度に耐えられる)あらゆる材料からなることができる。接着すべき材料は同一でも又は異なっていてもよい。
【0086】
特に有利なのは、本発明による方法を用いて、二つの同一又は二つの異なるプラスチックが互いに接着されることである。
【0087】
この方法は、第一の実施形態において、本発明による平面要素を使用することを特徴とする。
【0088】
有利なのは、本発明による熱活性可能な平面要素を、この平面要素が50℃超、特に100℃超の加熱速度で加熱される方法で使用することである。本発明による接着テープは、その熱伝導性により余分な熱を放散することができ、したがって局所的な過熱の危険性が低いので(上を参照)、高い加熱速度に対して特に適している。つまり熱分散の改善により、比較的高い加熱速度を実現することができる。
【0089】
使用
本発明による平面要素は、電子機器の構造ユニット、例えば家庭用電子機器、娯楽用電子機器、又は通信用電子機器の分野からの(例えば携帯電話、PDA、ラップトップコンピューター及びその他の計算機、デジタルカメラ並びに表示機器、例えばディスプレイ、電子書籍端末、もしくは有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)のための、並びに太陽電池モジュール、例えば電気化学的な色素太陽電池、有機太陽電池、もしくは薄膜電池のための)構造ユニットを接着するために使用されるのが好ましい。本明細書で構造ユニットとは、電子機器内で使用されるすべての構成要素および構成要素の集合体のことであり、例えば電子部品(個別部品および集積された部品)、ハウジング部品、電子モジュール、アンテナ、表示パネル、保護スクリーン、未実装基板及び/又は実装基板、並びにその類似物のことである。
【0090】
本発明による平面要素は、誘導加熱のために一般的な誘導加熱手段(誘電子(Induktors)を使用して実施することができる。誘導加熱手段(誘電子)としては、すべての一般的で適切な構成が考慮され、つまり例えば交流電流が貫流するコイル、導体ループ又導体であり、これらは電流が流れることで適切な強さの交流磁場を生成する。つまり加熱に必要な磁場強度は、相応の電流により貫流される相応の巻数およびコイル長の、例えばポイントインダクタとしてのコイル構成によって提供することができる。このコイル構成は、フェロ磁性の磁心なしで形成することができ、あるいは例えば鉄又は圧縮されたフェライト粉末からなる磁心を備えることができる。こうして生成された磁場に予備複合体を直接曝すことができる。もちろんその代わりに、上記のコイル構成を、磁場伝達器(変圧器)の一次側の一次巻線として配置することも可能であり、この磁場伝達器の二次側では、二次巻線が対応してより高い電流を提供する。したがって予備複合体のすぐ近くに配置される本来の界磁コイルは、電流がより高いので、交流磁場の強さを低下させることなく巻数をより少なくすることができる。
【0091】
誘導加熱中に予備複合体にプレス圧を掛ける場合のために、さらにプレス装置が必要である。プレス装置としては、プレス圧を掛けるのに適したすべての装置を使用することができ、例としては不連続的に動作するプレス機、例えば空気圧式もしくは液圧式のプレス、偏心プレス、クランクプレス、トグルレバープレス、ねじプレス、又はその類似物であり、あるいは連続的に動作するプレス機、例えばプレスローラである。この装置は、独立したユニットとして提供することができ、あるいは誘電子と連結させて存在することもできる。例えば、第一のプレス工具として少なくとも一つのプレススタンプ要素を含む装置が用いられ、このプレススタンプ要素がさらに誘導加熱手段を備えていることが好ましい。これにより誘導場を、形成すべき接着部位の非常に近くに近づけることができ、したがって空間的にもこの接着部位の面に制限することができる。
【0092】
結果
本発明による平面要素により、誘導加熱を用いて、高いサイクル速度で、従来技術の欠点を回避しながら二つの基材を互いに接着すること、特にプラスチックとプラスチックとを接着することをとりわけ良好に実現することができる。驚くべきことに、本発明による平面要素の接着強度は、従来技術に基づく接着テープによる既知の接着の場合より高いことが分かった。本発明による平面要素により、導電性平面形成物(誘導加熱可能な材料)及び/又は熱伝導性添加剤から、(誘導加熱の最中に生じる)熱をよりうまく放散させることができ、したがって局所的な過熱の危険性がより低くなり、比較的高い加熱速度を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
実験による調査
熱伝導性補助物質を含む接着料の熱伝導性を測定するため、ISO規格案22007−2に基づく方法を実施した(検体の厚さ:平面的な発熱素子の両面で10mm)。
【0095】
接着強度は、DIN53283に準拠した動的引張せん断試験において、23℃及び試験速度1mm/分で算出した。
【0096】
熱伝導性組成物を用いて得られた感圧接着性平面要素の電気絶縁耐力の測定は、VDE0100に基づいて行った。
【0097】
下記の熱活性化性接着料を使用した。
【0098】
【表1】

【0099】
下記の熱伝導性を高めるためのフィラー材を選択した。
【0100】
【表2】

【0101】
MagSilica50−85:ナノ粒子、Evonik社、マトリクス SiO、磁気ドメイン 酸化鉄、ドメイン含有率80〜92重量%、表面積40〜50m/g、直径82±11nm、密度3.72g/cm、粒子中のマグネタイト体積割合40体積%
【0102】
下記の熱伝導性接着料および対応する比較例を製造した。
【0103】
【表3】

【0104】
接着料タイプ1及び2の場合、熱伝導性接着料を製造するため、接着テープを室温でブタノン中に溶解し、固体含有率を30重量%に調整した。Ultraturraxタイプの高速回転式撹拌装置でフィラー材を分散させた。続いてドクターブレードにより接着材料膜を薄く塗布して乾燥させ、これにより約100μmの膜厚を生じさせた。
【0105】
例12に関しては、熱伝導性フィラー材に加えてさらに誘導加熱可能なフィラー材を10重量%加えた。
【0106】
接着料タイプ3及び4の場合、Haake社の実験用混練機内でフィラー材を180℃で溶融物中に加えた。続いて150℃の真空プレス内で厚さ約100μmの平面的なプレス加工品を製造した。
【0107】
誘導加熱のための導電性平面形成物としては、厚さ36μmのアルミニウムフィルムを使用した。例1〜11およびV1〜V4用に、この金属フィルムの両面に、それぞれ接着剤層を約90〜115℃の温度で、それぞれの接着剤系に従ってラミネートした。このとき接着剤1及び2については、化学的な架橋反応はまだ開始されておらず、ただ付着しているだけである。
【0108】
本発明による接着テープ1のための接着基材として、幅20mm、長さ100mm及び厚さ3mmの二つのポリカーボネートプレート2を使用し、このポリカーボネートプレートは、接着接合部3で10mm重なっていた(図1を参照)。つまりこの場合、接着面は、辺の長さが10×20mmの長方形を含んでいた。接着テープの差異のある分離を調べるため、同じ材料から成る接合相手材を選択した。図1にはさらに、下側のプレススタンプ要素4、上側のプレススタンプ要素5、および力Fが概略的に示されている。
【0109】
本接着方法は、例12を除いて、IFF GmbH社、IsmaningのEW5Fタイプの誘導設備を改変したものを用いて実施した。ここでは、交流磁場を局所的に提供するためのインダクタとして、水冷式で電流が貫流する1つの導体だけから成る誘導場伝達器を用い、この導体は、磁場伝達用変圧器の二次コイル側として使用され、同軸変圧器において一次コイル側で生成された伝達場と相互作用する。この誘導場伝達器をポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から成る母材内に埋め込み、こうして得られた構成を、プレス装置の下側のプレススタンプ要素4として使用した。このプレス装置はさらに上側のプレススタンプ要素5を備えている。下側のプレススタンプ要素4と上側のプレススタンプ要素5の間で予備複合体を熱活性により接着可能な平面要素の側面に対して垂直に加圧する力Fによる押圧力は、それぞれ2MPaであった。
【0110】
試験のため、改変した誘導設備を用い、70%のパルス幅で、30kHzの周波数の交流磁場を生成した。パルス幅は、交流磁場の周期全体の時間(パルス持続時間と隣接する2つのパルスの間の休止時間の合計)に対する交流磁場のパルス持続時間(パルス長)の割合を百分率で示したものである。
【0111】
熱活性により接着可能な平面要素がパルス状の交流磁場に曝された時間(つまり誘導加熱時間)は、3〜9秒の範囲内であった。
【0112】
さらに、全ての試験(例12を除く)が8秒の後プレス時間を加えて実施され、後プレス時間中は、接着料の熱活性化の場合と同じ周波数の交流磁場内で、パルス幅20%(パルス持続時間と休止時間の比が1:4の場合に相当する)で後誘導加熱を行った。
【0113】
例12に関してはCeles社の高周波誘導設備を使用した。この設備は3.5巻きの皿形インダクタにより586kHzの周波数で動作し、消費電力20kWで稼働する。ガラス繊維強化プラスチックから成る0.25mm厚のプレートで覆われた皿形インダクタ上に試料を置き、約20Nの重量で負荷を掛けた。この重量はプラスチック棒を介して接合部位に伝えられた。
【0114】
結果
結果はそれぞれ5つの試験接着からの平均値である。
【0115】
【表4】

【0116】
結果は、熱伝導性の上昇により接着強度が改善されること示している。これは予想外である。というのも、熱伝導性を上昇させるためにフィラー材を高い体積割合で添加しなければならず、したがって当業者は接着強度が下がると予測するからである。
【0117】
VDE0100に基づく電気絶縁耐力の試験も、試験11を除いてすべての本発明による試料が合格した。これに基づき本発明による熱伝導性組成物は、非導電性に実施することができ、したがって熱伝導性に結合されたコンポーネントの電気絶縁性が求められる例えば電子機器内でも使用できることが明らかである。さらに、内部にある金属フィルムは電気絶縁耐力を低下させない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の熱活性可能な接着料、少なくとも一種の誘導加熱可能な材料、及び少なくとも一種の熱伝導性フィラー材を含む平面要素であって、
該フィラー材の材料が、少なくとも0.5W/(m*K)の熱伝導率を有することを特徴とする、平面要素。
【請求項2】
前記熱伝導性フィラー材の材料が電気的に非伝導性であることを特徴とする、請求項1に記載の平面要素。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラー材が、フィラー材粒子の形で使用される、及び/又はフィラー材粒子を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の平面要素。
【請求項4】
前記フィラー材粒子が、95重量%超までの割合でα−酸化アルミニウムからなる酸化アルミニウム粒子であることを特徴とする、請求項3に記載の平面要素。
【請求項5】
酸化アルミニウム粒子の割合が、前記フィラー材を有する熱活性可能な接着料に基づいて、20〜90重量%の範囲内、特に40〜80重量%の範囲内であることを特徴とする、請求項4に記載の平面要素。
【請求項6】
前記フィラー材粒子が、1.3m以下、特に1.0m以下の単位質量当たりの比表面積を有する一次粒子であることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか一つに記載の平面要素。
【請求項7】
前記一次粒子の割合が、前記フィラー材を有する熱活性可能な接着料に基づいて、5〜70体積%の範囲内、好ましくは15〜50体積%の範囲内であることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか一つに記載の平面要素。
【請求項8】
前記フィラー材粒子が、少なくとも1μm、好ましくは2μm〜500μm、非常に好ましくは2μm〜200μm、就中好ましくは40μm〜150μmの平均径を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の平面要素。

【図1】
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【公表番号】特表2013−515113(P2013−515113A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545204(P2012−545204)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069057
【国際公開番号】WO2011/085874
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】