説明

熱硬化性樹脂材料の製造方法

【課題】
自動車用部品、航空機用部品、電子・電子機器用部品、建築材料等に好適に使用することができ、特に各種車輌や産業機械等のブレーキパッド、ブレーキライニングやクラッチフェーシング等の摩擦材として使用した場合に、その成形時や摩擦制動時に熱分解性が低い、耐熱性に優れた熱硬化性樹脂材料を製造する方法を提供する。
【解決手段】
チタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材の存在下で、熱硬化性樹脂原料モノマーを重合することを特徴とする熱硬化性樹脂材料の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂材料の製造方法に関する。
さらに詳しくは、本発明は、耐熱性に優れ、自動車用部品、航空機用部品、電子・電子機器用部品、建築材料等に使用し得る熱硬化性樹脂材料を製造する方法に関し、特に本発明は、摩擦材として好適に用いられる熱硬化性樹脂材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラスチック材料やゴム材料といった樹脂材料に、各種の充填材、例えばクレー、タルク、ケイ藻土、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、カーボンブラック、有機繊維や無機繊維等の繊維状物質などを配合し複合化してなる樹脂材料が知られていた。これ等の樹脂材料は、各種の充填材を含有することにより、成形体の機械的、電気的、化学的諸性質を向上させたものであり、例えば、特許文献1に開示されているフェノール樹脂複合材料においては、フェノール樹脂中にフィラーと有機化層状粘土鉱物を分散させることにより、成形体の耐熱性を向上させている。
【0003】
このように各種充填材を複合化してなる樹脂材料は、自動車用部品、航空機用部品、電子・電子機器用部品、建築部材等に広く用いられている。例えば、各種車輌や産業機械等のブレーキパッド、ブレーキライニング、クラッチフェーシング等に広く使用される摩擦材として、熱硬化性樹脂粉末等からなる樹脂バインダー材料に、無機・有機充填材、摩擦調整材および耐熱性有機繊維等の繊維材料等を配合し複合化した樹脂材料が知られており、該樹脂材料を常温にて所定圧力で成形(予備成形)し、次いで所定温度にて熱成形し、熱処理(アフタキュア)及び仕上げ処理すること等により、所望の成形体に成形されている。
【特許文献1】特開2002−212386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記摩擦材としても、より耐熱性の高いものが求められているが、本発明者等が検討したところ、特許文献1に記載のフェノール樹脂複合材料を摩擦材として用いた場合、フェノール樹脂複合材料を構成する有機物成分の分解温度が低いことから、摩擦材の成形時や摩擦制動時に熱分解してしまい、所望の性能を得ることができないばかりか、環境面からも好ましくないことが判明した。
本発明は、このような事情のもとで、耐熱性が高く、特に摩擦材として好適に用いることができる熱硬化性樹脂材料の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、チタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材の存在下で、熱硬化性樹脂原料モノマーを重合することにより、耐熱性の高い熱硬化性樹脂複合材料を製造し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)チタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材の存在下で、熱硬化性樹脂原料モノマーを重合することを特徴とする熱硬化性樹脂材料の製造方法、
(2)前記層状粘土鉱物複合材が、層状粘土鉱物の層間にチタニア粒子が挿入されたものである上記(1)に記載の熱硬化性樹脂材料の製造方法、
(3)前記チタニア粒子の平均粒径が、3〜200nmである上記(1)または(2)に記載の熱硬化性樹脂材料の製造方法、
(4)前記層状粘土鉱物複合材において、層状粘土鉱物に対するチタニア粒子の含有比が質量比で0.1〜3.5である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂材料の製造方法、
(5)前記層状粘土鉱物複合材の平均粒径が、1〜30μmである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂材料の製造方法、
(6)前記熱硬化性樹脂原料モノマーが、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂から選ばれる1種以上の樹脂の原料モノマーである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂材料の製造方法、および
(7)層状粘土鉱物複合材の含有割合が1〜15質量%である熱硬化性樹脂材料を得る上記(1)〜(6)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂材料の製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐熱性が高く、特に摩擦材として好適に用いることができる熱硬化性樹脂材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の熱硬化性樹脂材料の製造方法は、チタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材の存在下で、熱硬化性樹脂原料モノマーを重合することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の方法において、チタニア粒子を構成するチタニア(酸化チタン)としては、特に制限はなく、アナターゼ型やルチル型のいずれのものも用いることができる。チタニア粒子の平均粒径は3〜200nmであることが好ましい。なお、本明細書において、平均粒径とは体積平均粒径を意味し、体積平均粒径は、例えば粒度分布測定器等で測定することができる。
【0010】
本発明の方法において、層状粘土鉱物複合材を構成する層状粘土鉱物としては、陽イオン交換能を有する、天然粘土鉱物および合成粘土鉱物を挙げることができる。上記天然粘土鉱物および合成粘土鉱物としては、カオリナイト、スメクタイト、バーミキュライト、雲母、脆雲母、緑泥石等を挙げることができ、スメクタイトとしては、モンモリロナイト、サポナイト、パイデライト、ノントロナイト等を挙げることができる。また、雲母をフッ素処理した合成フッ素雲母等を挙げることもでき、この合成フッ素雲母は、品質のバラツキが小さいことから層状粘土鉱物として好適であり、合成フッ素雲母としては、ナトリウム四ケイ酸フッ素雲母(NaMg2.5Si10)を例示することができる。これらの層状粘土鉱物は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
チタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材において、層状粘土鉱物に対するチタニア粒子の含有比(チタニア粒子含有量/層状粘土鉱物含有量)は、質量比で、0.1〜3.5であることが好ましい。チタニア粒子の含有比のより好ましい範囲は、チタニア粒子の平均粒径によって異なり、例えば、平均粒径が3〜20nmの範囲である場合、質量比で0.1〜1であり、平均粒径が20〜200nmである場合、質量比で2〜3.5である。
【0012】
上記層状粘土鉱物複合材の平均粒径は1〜30μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましく、1〜5μmであることがさらに好ましい。
【0013】
上記層状粘土鉱物複合材は、層状粘土鉱物の層間に、チタニア粒子が挿入された構造を有するものであることが好ましい。
【0014】
本発明の方法において、得られる熱硬化性樹脂材料は、上記層状粘土鉱物複合材を有する耐熱性が高いものであるため、摩擦材として用いた場合であっても、成形時や摩擦制動時に熱分解を生ずることなく、所望の性能を発揮することが可能になる。
【0015】
本発明の方法において、チタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材を製造する方法としては、例えば、水等で膨潤、分散させた層状粘土鉱物と、酢酸水溶液等で希釈した加水分解性チタン化合物とを、室温または加熱条件下で混合、攪拌して反応させる方法を挙げることができる。
【0016】
加水分解性チタン化合物としては、式
TiX4−n
(式中、nは0〜3の整数であり、Rは、炭化水素基であり、官能基を含有していてもよく、Xは、加水分解性基または水酸基であり、RおよびXのいずれかが複数ある場合、RおよびXは同一であっても異なっていてもよい)
で表されるものを用いることが好ましい。
【0017】
上記RTiX4−nで表される加水分解性チタン化合物において、nは0〜3の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0〜1の整数であることがより好ましい。
【0018】
上記RTiX4−nで表される加水分解性チタン化合物において、Rは炭化水素基である。炭化水素基としては、直鎖または分岐鎖を有する飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基を挙げることができ、これら炭化水素基は一価のものでも多価のものでもよい。
【0019】
炭化水素基の炭素数は、脂肪族炭化水素基である場合は、1〜25個、特に1〜3個が好ましく、芳香族炭化水素基である場合は、6〜25個、特に6〜10個が好ましく、脂環式炭化水素である場合は、3〜25個、特に3〜6個が好ましい。
【0020】
また、上記炭化水素基は、官能基を含有していてもよく、官能基としては、ビニル基、エステル基、エーテル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、メルカプト基、スルホニル基、スルフェニル基、ニトロ基、ニトロソ基、ニトリル基、ハロゲン原子、水酸基等を挙げることができる。
【0021】
上記加水分解性チタン化合物において、Rが複数ある場合、Rは同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
上記RTiX4−nで表される加水分解性チタン化合物において、Xは、加水分解性基または水酸基であり、加水分解性基としては、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、ケトオキシム基、アシルオキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、ハロゲン原子を挙げることができる。
【0023】
上記加水分解性チタン化合物において、Xが複数ある場合、Xは同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
上記加水分解性チタン化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
層状粘土鉱物と加水分解性チタン化合物は、質量比で、加水分解性チタン化合物/層状粘土鉱物が、0.1〜3.5となるように使用することが好ましく、0.1〜1となるように使用することがより好ましく、0.3〜0.7となるように使用することがさらに好ましい。
【0026】
層状粘土鉱物は、結晶構造が繊維状あるいは平板状であって、その構造は約1000℃程度まで維持されるが、上述したような方法により層状粘土鉱物と加水分解性チタン化合物とを反応させる場合には、加水分解性チタン化合物の疎水基の耐熱性を考慮して、混合、攪拌時の温度を決定する必要があり、層状粘土鉱物とチタン化合物との反応温度としては、室温〜100℃程度が好ましい。また、反応時間は10〜300分が好ましい。
【0027】
上記方法により得られた反応物に、適宜、加熱、粉砕、分級処理を加えることにより、所望粒径を有する層状粘土鉱物複合材を得ることができる。加水分解性チタン化合物が疎水基を有するものである場合は、その耐熱性を考慮して、上記加熱処理は500℃以下で行うことが好ましく、250℃以下で行うことがより好ましい。
【0028】
本発明の方法においては、上記層状粘土鉱物複合材の存在下で、熱硬化性樹脂原料モノマーを重合する。
【0029】
熱硬化性樹脂原料モノマーとしては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂から選ばれる1種以上の樹脂の原料モノマーを挙げることができる。
【0030】
フェノール樹脂の原料モノマーとしては、フェノールモノマーおよびホルムアルデヒドを挙げることができる。上記原料モノマーを重合してなるフェノール樹脂としては、レゾール型およびノボラック型を例示することができるが、いずれのものであってもよい。レゾール型のフェノール樹脂は、硬化剤等を用いることなく硬化することができ、硬化材の使用による層状粘土鉱物の分散性への影響も回避し得るため、好適である。
【0031】
エポキシ樹脂の原料モノマーとしては、ビスフェノールAとエピクロロヒドリン、ビスフェノールFとエピクロロヒドリン等を挙げることができる。このような原料モノマーを重合してなるエポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型樹脂、グリシジルエステル樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、含ブロムエポキシ樹脂、フェノール−ノボラック型またはクレゾール−ノボラック型のエポキシ樹脂等を挙げることができ、これらのエポキシ樹脂のうち、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合反応物、またはビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの縮合反応物であるグリシジルエーテル型樹脂が好ましい。
【0032】
ポリエステル樹脂の原料モノマーとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、β−オキシプロピオン酸等のカルボン酸とを挙げることができる。これらの原料モノマーを重合してなるポリエステル樹脂としては、平均分子量が、500〜100,000であるものが好ましく、2,000〜80,000であるものがより好ましい。ポリエステル樹脂の融点は、50〜200℃であるものが好ましく、80〜150℃であるものがより好ましい。
【0033】
アクリル樹脂の原料モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸またはその誘導体からなるモノマーを挙げることができ、上記各モノマーとともに、スチレンなどの他のモノマーを用いてもよい。
【0034】
ポリベンゾオキサジン樹脂の原料モノマーとしては、フェノール性水酸基を有する化合物と1級アミン類とホルムアルデヒド類が挙げられる。
【0035】
フェノール性水酸基を有する化合物としては、芳香環上の水酸基のオルト位の少なくとも一方に水素原子を有する1価または2価以上の多価フェノール類を挙げることができ、具体的には、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、p−tert−ブチルフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール、p−フェニルフェノールなどの1価フェノール類;カテコール、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン(ビスフェノールF)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)などの2価フェノール類や、トリスフェノール化合物、テトラフェノール化合物、フェノール樹脂などの3価以上の多価フェノール類等を挙げることができる。これらの中では、得られるポリベンゾオキサジン樹脂の性能の観点から、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましい。
【0036】
一方、1級アミン類としては、脂肪族アミンおよび芳香族アミンがあるが、脂肪族アミンであると、得られるポリベンゾオキサジン樹脂は、耐熱性の劣るものとなるため、芳香族アミンが好ましい。この芳香族アミンとしては、例えばアニリン、トルイジン、キシリジン、アニシジンなどを挙げることができる。
【0037】
ホルムアルデヒド類としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなどを挙げることができる。
【0038】
上記樹脂原料モノマーの重合反応時には、上記層状粘土鉱物複合材の他に、硬化剤を共存させてもよい。
【0039】
硬化剤としては、ポリアミン系、ジシアンジアミド系、フェノール系、アミノアミド系、ブロックドイソシアネート系、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)系、エポキシ系(ポリエポキシド、エポキシ樹脂)のもの等が挙げられ、ポリアミン系、ジシアンジアミド系、フェノール系のものが特に好ましい。また、必要に応じて、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイドなどの重合開始剤の存在下に反応させてもよい。
【0040】
重合時の温度は、反応開始温度以上硬化温度以下の温度範囲とすることが好ましく、具体的には、50〜100℃が好ましく、60〜80℃がより好ましく、65〜75℃がさらに好ましい。また、反応時間は、1〜20時間が好ましく、2〜10時間がより好ましく、3〜8時間がさらに好ましい。
【0041】
本発明の方法においては、層状粘土鉱物複合材の存在下、熱硬化性樹脂原料モノマーを重合して熱硬化性樹脂材料を製造することにより、単に層状粘土鉱物複合材と熱硬化性樹脂とを溶融、混合して熱硬化性樹脂材料を製造する場合に比べ、分散性が向上し、層状粘土鉱物複合材同士の凝集が抑制され、製造コストを低減した熱硬化性樹脂材料を得ることができるという効果を得ることができる。
【0042】
本発明の方法においては、層状粘土鉱物複合材の含有割合が1〜15質量%である熱硬化性樹脂材料を得ることが好ましく、2〜10質量%である熱硬化性樹脂材料を得ることがより好ましく、3〜6質量%である熱硬化性樹脂材料を得ることがさらに好ましい。
【0043】
一般に、摩擦材は、降坂時や高速からの繰り返し制動において高温にさらされると摩擦係数が低下しフェード現象が発現することから600℃における耐熱性が高い(熱減量が小さい)ことが求められるが、本発明の方法で得られる熱硬化性樹脂材料は、従来の材料に比較して600℃での耐熱性が高い(熱減量が小さい)ことから、特に摩擦材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0045】
実施例1
(1)チタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材の作製工程
層状粘土鉱物である合成フッ素雲母(コープケミカル社製、ME−100)10gを蒸留水1000mL中に投入し、室温下で24時間攪拌し、膨潤させて、合成フッ素雲母液を調製した。
一方、テトラエトキシチタン42gを80%酢酸水溶液500mL中に投入し、60℃で1時間攪拌し、冷却して、テトラエトキシチタン液を調製した後、上記合成フッ素雲母液全量を投入して、混合した。
この混合液を室温下で3時間攪拌した後、pH>5になるまで遠心分離と水洗を繰り返してから、550℃で72時間加熱して、反応物を得た。
上記反応物を粉砕、分級することにより、チタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材(層状粘土鉱物に対するチタニア粒子の含有比(チタニア粒子含有量/層状粘土鉱物含有量)が質量比で0.67、平均粒径が3μmであるもの)を作製した。
得られた層状粘土鉱物複合材を電子顕微鏡(日立株式会社製HD−2000)により観察したところ、チタニア粒子の平均粒径は15nmであり、層状粘土鉱物の層間にチタニア粒子が均一に挿入され、分散していることが確認できた。
【0046】
(2)フェノール樹脂モノマーの重合工程
容量1000mLの四口フラスコ中に、熱硬化性樹脂原料モノマーであるフェノールモノマー500gおよびホルムアルデヒド324gを加え、さらにシュウ酸二水和物1.8g、消泡剤0.2mLを加えた。この四口フラスコ中に(1)で作製したチタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材15gを加えて、攪拌しながら還流下(100℃)で8時間重合反応を行った後、減圧蒸留により水と未反応物を除去して、重合反応物(層状粘土鉱物複合材含有ノボラック樹脂)を得た。
得られた重合反応物450gをバットに移して冷却した後、硬化剤であるヘキサメチレンジアミン50gを加えて粉砕することにより、層状粘土鉱物複合材の含有割合が3質量%である熱硬化性樹脂材料500gを得た。
【0047】
実施例2
(1)テトラエトキシチタンの投入量を42gから132gに変更し、80%酢酸水溶液の量を500mLから1570mLに変更した以外は、実施例1(1)と同様に操作して、層状粘土鉱物に対するチタニア粒子の含有比(チタニア粒子含有量/層状粘土鉱物含有量)が質量比で2.1、平均粒径が9μmであるチタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材を作製した。
得られた層状粘土鉱物複合材を電子顕微鏡(日立株式会社製HD−2000)により観察したところ、チタニア粒子の平均粒径は60nmであり、層状粘土鉱物の層間にチタニア粒子が均一に挿入され、分散していることが確認できた。
【0048】
(2)四口フラスコ中へのチタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材の投入量を15gから31gに変更した以外は、実施例1(2)と同様に操作して、層状粘土鉱物複合材の含有割合が6質量%である熱硬化性樹脂材料を得た。
【0049】
実施例3
(1)テトラエトキシチタン42gを80%酢酸水溶液500mL中に投入する代わりに、テトライソプロポキシチタン25gを80%酢酸水溶液300mL中に投入した以外は、実施例1(1)と同様に操作して、層状粘土鉱物に対するチタニア粒子の含有比(チタニア粒子含有量/層状粘土鉱物含有量)が質量比で0.4、平均粒径が5μmであるチタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材を作製した。
得られた層状粘土鉱物複合材を電子顕微鏡(日立株式会社製HD−2000)により観察したところ、チタニア粒子の平均粒径は5nmであり、層状粘土鉱物の層間にチタニア粒子が均一に挿入され、分散していることが確認できた。
【0050】
(2)得られた層状粘土鉱物複合材を用い、実施例1(2)と同様に操作して、層状粘土鉱物複合材の含有割合が3質量%である熱硬化性樹脂材料を得た。
【0051】
実施例4
(1)実施例1(1)と同様に操作して、チタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材を作製した。
(2)容量1000mLの四口フラスコ中に、熱硬化性樹脂原料モノマーであるビスフェノールA250g、アニリン200g、ホルムアルデヒド140gを加えるとともにトルエン250gを加えた。
この四口フラスコ中に(1)で作製したチタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材15gを加えて、攪拌しながら還流下(100℃)で5時間重合反応を行った後、減圧蒸留により、水、トルエンおよび未反応物を除去して重合反応物(層状粘土鉱物複合材含有ポリベンゾオキサジン樹脂)を得た。
得られた重合反応物450gをバットに移して冷却した後、粉砕することにより、層状粘土鉱物複合材の含有割合が3質量%である熱硬化性樹脂材料を得た。
表1に、実施例1〜実施例4における熱硬化性樹脂材料の製造条件をまとめている。
【0052】
【表1】

【0053】
比較例1
チタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材を用いなかった以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂原料モノマーを重合させて、熱硬化性樹脂材料500gを得た。
【0054】
比較例2
チタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材に代えて、モンモリロナイトとドデシルトリメチルアンモニウムクロライドを4:1の質量比で水中で攪拌混合し、遠心分離機により回収し、乾燥して得た有機化モンモリロナイト15gを用い、それ以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂原料モノマーを重合させて、有機化モンモリロナイトの含有割合が3質量%である熱硬化性樹脂材料500gを得た。
【0055】
表2に、実施例1〜4および比較例1〜2で得られた熱硬化性樹脂材料の物性値をまとめている。
【0056】
【表2】

【0057】
(耐熱性評価)
実施例1〜4および比較例1〜2で得た熱硬化性樹脂材料の耐熱性を、以下の方法により評価した。
各熱硬化性樹脂材料を、それぞれ、予め150℃で60分間加熱した後、さらに250℃で60分間加熱して硬化しておき、熱分析装置TG−DTA(Mac Science社製 2000S)を用い、空気雰囲気下、10℃/分で400℃および600℃まで昇温したときの各試料の重量保持率((400℃または600℃における試料重量/昇温前における試料重量)×100)をそれぞれ求めた。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
表3より、本発明の方法により得られた熱硬化性樹脂材料は、400℃および600℃における重量保持率が高く、耐熱性が高いものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の方法で得られた熱硬化性樹脂材料は、高い耐熱性を有するものであることから、自動車用部品、航空機用部品、電子・電子機器用部品、建築材料等に好適に使用することができ、特に、摩擦材として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタニア粒子を含む層状粘土鉱物複合材の存在下で、熱硬化性樹脂原料モノマーを重合することを特徴とする熱硬化性樹脂材料の製造方法。
【請求項2】
前記層状粘土鉱物複合材が、層状粘土鉱物の層間にチタニア粒子が挿入されたものである請求項1に記載の熱硬化性樹脂材料の製造方法。
【請求項3】
前記チタニア粒子の平均粒径が、3〜200nmである請求項1または請求項2に記載の熱硬化性樹脂材料の製造方法。
【請求項4】
前記層状粘土鉱物複合材において、層状粘土鉱物に対するチタニア粒子の含有比が質量比で0.1〜3.5である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂材料の製造方法。
【請求項5】
前記層状粘土鉱物複合材の平均粒径が、1〜30μmである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂材料の製造方法。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂原料モノマーが、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂から選ばれる1種以上の樹脂の原料モノマーである請求項1〜請求項5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂材料の製造方法。
【請求項7】
層状粘土鉱物複合材の含有割合が1〜15質量%である熱硬化性樹脂材料を得る請求項1〜請求項6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂材料の製造方法。





【公開番号】特開2009−126946(P2009−126946A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303534(P2007−303534)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】