説明

熱硬化性樹脂組成物及び電気電子部品

【課題】本発明は、熱伝導性が高い硬化物を与えると共に、硬化時の収縮が小さい樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、(a)多官能(メタ)アクリレートと、(b)高熱伝導率充填材と、(c)硬化剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、前記(b)高熱伝導率充填材の含有量が、前記(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して800〜1600質量部であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物及び電気電子部品に関するものであり、特に、モータやコイル等の電気電子部品を封止するために使用される熱硬化性樹脂組成物、及びこれを用いて封止したモータやコイル等の電気電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、防振性による静寂性向上、一体成形による工程の簡略化等を目的として、モータやコイル等の電気電子部品を、樹脂組成物を用いて封止することが行なわれている。このようにして封止された電気電子部品は、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、OA機器、エアコン及び冷蔵庫等の種々の用途で一般的に使用されており、その使用用途も増加の一途を辿っている。
このような電気電子部品を封止するための樹脂組成物には、近年、様々な特性を付与することが要求されている。例えば、電気電子部品の小型化及び薄型化に伴い、電気電子部品の発熱密度が高まっているため、発熱を抑制すると共に、熱を外部に効率良く移動させることが重要となっている。そのため、熱伝導性の高い硬化物を与える樹脂組成物が必要とされている。また、樹脂組成物は、硬化時の収縮によってクラックが生じることがあるため、硬化時の収縮が小さいことも必要とされている。
そこで、これらの特性を有する樹脂組成物として、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂を主体とした樹脂組成物がいくつか提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−8867号公報
【特許文献2】特開2001−226573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂を主体とする従来の樹脂組成物では、熱伝導性が高い硬化物を得ることができても硬化時の収縮が大きすぎたり、また、硬化時の収縮が小さくても硬化物の熱伝導性が十分でなかったりするという問題があった。すなわち、硬化物の熱伝導性と硬化時の収縮性とを両立した樹脂組成物は依然として得られていないというのが実情である。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、熱伝導性が高く、且つ成形収縮が小さな硬化物を与える樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、主体となる樹脂成分に多官能(メタ)アクリレートを用いることで、樹脂組成物を低粘度化して充填材を高充填化させ得るという知見に基づき、この多官能(メタ)アクリレートを、所定の充填材及び硬化剤と共に所定の割合で配合することにより、上記の問題を解決し得ることに想到し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(a)多官能(メタ)アクリレートと、(b)高熱伝導率充填材と、(c)硬化剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、前記(b)高熱伝導率充填材の含有量が、前記(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して800〜1600質量部であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、熱伝導性が高く、且つ成形収縮が小さな硬化物を与える熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(a)多官能(メタ)アクリレートと、(b)高熱伝導率充填材と、(c)硬化剤とを含有する。
本発明に用いられる(a)多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されることはなく、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、及び1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0008】
中でも、硬化物の熱伝導性及び成形収縮をより一層改善する観点から、(a)多官能(メタ)アクリレートは、下記式(I):
CH=CRCO−(RO)−OCOCR=CH (I)
で表される二官能ジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。式中、nは1以上の数であり、Rは炭素原子が1〜14個のアルキレン鎖又はポリメチレン鎖であり、Rは水素又はメチル基を示す。
【0009】
或いは、(a)多官能(メタ)アクリレートは、上記式(I)で表される二官能ジ(メタ)アクリレートと、エポキシ(メタ)アクリレートとから成ることが好ましい。
ここで、本発明に用いられるエポキシ(メタ)アクリレートとは、1分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有するもので、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とをエステル化触媒の存在下で反応させて得られるものである。
エポキシ樹脂としては、例えば、エーテル型ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、エステル系の芳香族エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、エーテル・エステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、これらのハロゲン化物、フェノール類、二塩基酸で分子鎖延長したもの等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
エポキシ(メタ)アクリレートの調製では、(メタ)アクリル酸が用いられるが、その他の不飽和一塩基酸、例えば、桂皮酸、クロトン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノ(2−エチルヘキシル)又はソルビン酸などを併用することができる。
エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応は、好ましくは60〜140℃、より好ましくは80〜120℃の温度にて、エステル化触媒を用いて行われる。
エステル化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン及びジアザビシクロオクタン等の3級アミンや、トリフェニルホスフィン、並びにジエチルアミン塩酸塩等の公知の触媒を用いることができる。
なお、エポキシ(メタ)アクリレートとして市販品を用いることも可能である。
【0011】
二官能ジ(メタ)アクリレートとエポキシ(メタ)アクリレートとの質量比は、10:1〜3:1であることが好ましい。エポキシ(メタ)アクリレートの割合が少なすぎると、所望の熱伝導率が得られないことがある。一方、エポキシ(メタ)アクリレートの割合が多いと、成形収縮率が大きくなったり、混練性が低下することがある。
【0012】
本発明に用いられる(b)高熱伝導率充填材は、好ましくは20〜250W/m・K、より好ましくは30〜200W/m・Kの熱伝導率を有する無機充填材である。(b)高熱伝導率充填材としては、上記の熱伝導率を有していれば特に限定されることはなく、例えば、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、及びホウ化チタン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、熱伝導性の観点から、酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムが好ましく、酸化マグネシウムがより好ましい。
(b)高熱伝導率充填材は、熱硬化性樹脂組成物における分散性の観点から、粒子形状を有していることが好ましい。(b)高熱伝導率充填材が粒子形状を有する場合、その平均粒径は、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは1〜10μmである。
【0013】
本発明の熱硬化性樹脂組成物における(b)高熱伝導率充填材の含有量は、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して800〜1600質量部、好ましくは1000〜1400質量部である。(b)高熱伝導率充填材の含有量が800質量部未満であると、所望の熱伝導性が得られない。一方、(b)高熱伝導率充填材の含有量が1600質量部を超えると、(b)高熱伝導率充填材の混練性が低下し、(b)高熱伝導率充填材が均一に分散した熱硬化性樹脂組成物が得られない。
【0014】
本発明に用いられる(c)硬化剤としては、特に限定されることはなく、公知のものを適宜選択することができる。例えば、(c)硬化剤として、t−ブチルパーオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、及びジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物を使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
本発明の熱硬化性樹脂組成物における(c)硬化剤の含有量は、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜6質量部である。(c)硬化剤の含有量が0.5質量部未満であると、熱硬化性樹脂組成物が十分に硬化しないことがある。一方、(c)硬化剤の含有量が10質量部を超えると、(c)硬化剤の飽和によって(c)硬化剤の多くが無駄になることがある。
【0016】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記(a)〜(c)成分を必須成分として含有するが、所望の物性を高める観点から、他の成分を配合することができる。
他の成分としては、特に限定されることはなく、熱硬化性樹脂組成物に一般的に使用されている成分を配合することができる。例えば、他の成分として、(d)熱可塑性樹脂、(e)低収縮剤、(f)湿潤分散剤、及び(g)繊維材料が挙げられる。
【0017】
(d)熱可塑性樹脂は、混練性を高める観点から、本発明の熱硬化性樹脂組成物に配合することができる。(d)熱可塑性樹脂としては、特に限定されることはなく、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、スチレン−酢酸ビニルブロック共重合体、飽和ポリエステル、スチレン−ジエン系ブロック共重合体、セルロース・アセテート・ブチレート、セルロース・アセテート・プロピオネート、液状ゴム、及び合成ゴム等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明の熱硬化性樹脂組成物における(d)熱可塑性樹脂の含有量は、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して好ましくは5〜40質量部、より好ましくは10〜20質量部である。(d)熱可塑性樹脂の含有量が5質量部未満であると、(d)熱可塑性樹脂を配合することによる効果が十分でない場合がある。一方、(d)熱可塑性樹脂の含有量が40質量部を超えると、熱伝導率が低下したり、混練性が低下することがある。
【0019】
(e)低収縮剤は、硬化時の収縮をより一層低減する観点から、本発明の熱硬化性樹脂組成物に配合することができる。本発明に使用可能な(e)低収縮剤としては、低分子量(具体的には、数平均分子量が好ましくは4000以下、より好ましくは1000以下)の炭化水素化合物であり、例えば、プロセスオイル、ペースト状オイル、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、高級アルコール、脂肪油、及び塩素化パラフィン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明の熱硬化性樹脂組成物における(e)低収縮剤の含有量は、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して好ましくは3〜20質量部、より好ましくは5〜15質量部である。(e)低収縮剤の含有量が3質量部未満であると、(e)低収縮剤を配合することによる効果が十分でないことがある。一方、(e)低収縮剤の含有量が20質量部を超えると、熱伝導率が低下することがある。
【0021】
(f)湿潤分散剤は、(b)高熱伝導率充填材の混練性を高める観点から、本発明の熱硬化性樹脂組成物に配合することができる。(f)湿潤分散剤としては、特に限定されることはなく、例えば、リン酸エステル結合を有する飽和ポリエステルのコポリマー等が挙げられる。また、BYK−W985、W995、W996等という商品名(BYK Chemie社製)で販売されている市販品を用いることも可能である。これらは、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明の熱硬化性樹脂組成物における(f)湿潤分散剤の含有量は、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して好ましくは1〜10質量部、より好ましくは3〜8質量部である。(f)湿潤分散剤の含有量が1質量部未満であると、(f)湿潤分散剤を配合することによる効果が十分でないことがある。一方、(f)湿潤分散剤の含有量が10質量部を超えると、熱伝導率が低下したり、(f)湿潤分散剤の多くが無駄になることがある。
【0023】
(g)繊維材料は、硬化物(成形品)の強度を高めたり、成形収縮率を低下させる観点から、本発明の熱硬化性樹脂組成物に配合することができる。(g)繊維材料としては、特に限定されることはなく、例えば、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、フェノール繊維、及びカーボン繊維等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性の観点からガラス繊維が好ましい。このガラス繊維は、ガラスチョップ、ミルドガラス、ロービングガラス等のいずれの種類でもよい。
繊維材料の繊維長は、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは0.05〜3mmである。特に、繊維長が1.5mm以下の繊維材料を用いることで、混練時の練り性低下を防ぐことができる。
【0024】
本発明の熱硬化性樹脂組成物における(g)繊維材料の含有量は、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して好ましくは50〜300質量部、より好ましくは100〜150質量部である。(g)繊維材料の含有量が50質量部未満であると、(g)繊維材料を配合することによる効果が十分でないことがある。一方、(g)繊維材料の含有量が300質量部を超えると、混練性が低下することがある。
【0025】
上記(d)〜(g)の成分以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲において、(b)高熱伝導率充填材以外の充填材、離型剤、増粘剤、顔料等を必要に応じて用いることができる。
【0026】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記の成分を用いて一般的な製造方法に従って調製することができる。例えば、例えば、双碗型ニーダを用いて必須成分(a)〜(c)及び任意成分(d)〜(f)を混練した後、任意成分(g)を加えてさらに混練することにより調製することができる。特に、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(a)多官能(メタ)アクリレートを用いることによって低粘度化させているので、(b)高熱伝導率充填材を多量に含有していても混練が十分可能である。
【0027】
このようにして調製される本発明の熱硬化性樹脂組成物は、2.0W/m・K以上の熱伝導率、0.1%以下の成形収縮率を有する硬化物を与える。そのため、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化物の高熱伝導性及び低収縮性の両立が要求されている電気電子部品を封止するための封止材料として使用するのに適している。封止可能な電気電子部品としては、特に限定されることはなく、モータやコイル等が挙げられる。
【0028】
電気電子部品の封止方法としては、特に限定されることはなく、本発明の熱硬化性樹脂組成物を圧縮成形、トランスファー成形、及び射出成形等の成形手段で成形した後、硬化させることによって電気電子部品を封止すればよい。具体的には、電気電子部品が収容されたケース内に本発明の熱硬化性樹脂組成物を各種の成形手段で成形した後、所定の温度に加熱することによって硬化させればよい。
硬化条件は、本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いる原料に応じて適宜設定すればよいが、一般的に、硬化温度が120〜160℃、硬化時間が1分〜30分である。
このようにして得られる電気電子部品は、熱伝導性に優れ、且つクラックが生じない封止材料で封止されているので、電気電子部品の動作が安定化し、信頼性が高くなる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例および比較例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の例に何ら限定されるものではない。
(実施例1〜10)
双碗式ニーダを用いて表1及び2に示す成分(ガラス繊維を除く)を各配合割合で混練した後、さらにガラス繊維を所定の配合割合で加えて混練することによって、熱硬化性樹脂組成物を調製した。なお、表中の配合量の単位は質量部である。
(比較例1〜2)
比較例1〜2では、(b)高熱伝導率充填材の含有量が所定の範囲外である熱硬化性樹脂組成物を調製した。具体的には、双碗式ニーダを用いて表2に示す成分(ガラス繊維を除く)を各配合割合で混練した後、さらにガラス繊維を所定の配合割合で加えて混練することによって、熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0030】
実施例1〜10及び比較例1〜2で得られた熱硬化性樹脂組成物について混練性を評価し、また、その硬化物について成形収縮率及び熱伝導率を評価した。各評価の方法を以下に示す。
(1)成形収縮率
JIS K6911に規定される収縮円盤を、成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間3分で圧縮成形を行い、JIS K6911に基づいて成形収縮率を算出した。
(2)熱伝導率
成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間15分の条件下で圧縮成形により150×150×厚さ20mmの平板を成形し、QTM法(測定機:京都電子製QTM−500(SDK製QTM−DII))により熱伝導率を測定した。
(3)混練性
双碗式ニーダを用いて混練を行った結果、混練性が特に優れていたものを◎、混練可能であったものを○、混練不可であったものを×とした。
上記の評価結果を表1及び2に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
表1及び2の結果に示されているように、(a)多官能(メタ)アクリレートを用いると共に、(b)高熱伝導率充填材の含有量を所定の範囲内にした実施例1〜10の熱硬化性樹脂組成物は、混練性が良好であると共に、熱伝導率が高く、且つ低成形収縮率が小さな硬化物を与えた。これに対して、(b)高熱伝導率充填材の含有量が低すぎる比較例1の熱硬化性樹脂組成物は、混練性は良好であったものの、熱伝導率が低かった。また、(b)高熱伝導率充填材の含有量が高すぎる比較例2の熱硬化性樹脂組成物は、十分な混練性が得られなかった。
以上の結果からわかるように、本発明によれば、熱伝導性が高く、且つ成形収縮が小さな硬化物を与える樹脂組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)多官能(メタ)アクリレートと、(b)高熱伝導率充填材と、(c)硬化剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、
前記(b)高熱伝導率充填材の含有量が、前記(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して800〜1600質量部であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(a)多官能(メタ)アクリレートが、下記式(I):
CH=CRCO−(RO)−OCOCR=CH (I)
(式中、nは1以上の数であり、Rは炭素原子が1〜14個のアルキレン鎖又はポリメチレン鎖であり、Rは水素又はメチル基を示す)で表される二官能ジ(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(a)多官能(メタ)アクリレートが、下記式(I):
CH=CRCO−(RO)−OCOCR=CH (I)
(式中、nは1以上の数であり、Rは炭素原子が1〜14個のアルキレン鎖又はポリメチレン鎖であり、Rは水素又はメチル基を示す)で表される二官能ジ(メタ)アクリレートと、エポキシ(メタ)アクリレートとから成ることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(d)熱可塑性樹脂、(e)低収縮剤、(f)湿潤分散剤、及び(g)繊維材料からなる群より選択される1種以上の成分をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
2.0W/m・K以上の熱伝導率、及び0.1%以下の成形収縮率を有する硬化物を与えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物で封止してなることを特徴とする電気電子部品。

【公開番号】特開2010−280746(P2010−280746A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132914(P2009−132914)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】