説明

熱硬化性組成物

【課題】 シリコーン樹脂系粘着剤に対する離型性が優れ、環境を害するフロン系溶媒を用いずに、基材に対する密着性が高い離型材層を形成するための熱硬化性組成物の提供。
【解決手段】 シリコーン樹脂系粘着剤に対する離型性が優れ、環境を害するフロン系溶媒を用いずに、基材に対する密着性が高い離型材層を形成するための熱硬化性組成物により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱硬化性組成物、当該組成物を硬化させて形成された硬化膜、当該硬化膜を有する剥離紙やフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリジメチルシロキサンを主成分としたシリコーン樹脂系粘着剤は、耐熱性、耐寒性、耐水性、耐候性、再粘着性、電気絶縁性等に優れ、さらに、一般の有機系粘着剤では粘着が困難であるポリイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーンゴム等に対する粘着性が優れているため、各種用途の粘着剤として広く用いられている。また、シリコーン樹脂系粘着剤は、アクリル系粘着剤のような皮膚刺激性がなく、無毒性である為、近年、絆創膏などの医療用粘着テープとしても用いられており、例えば、救急絆創膏等の感圧粘着テープ用途が開示されている[特開平7−052326号公報(特許文献1)、特公平7−008554号公報(特許文献2)、特開平3−200885号公報(特許文献3)]。
【0003】
しかしながら、これらのシリコーン樹脂系粘着剤は、表面張力が低く、粘着力がきわめて強いため、従来の硬化性シリコーン樹脂からなる離型剤では付与される離型性が不十分である場合がある。具体的には、ポリジメチルシロキサンを主成分とする粘着剤を用いた粘着テープや粘着ラベルの粘着剤面に離型紙等のセパレーターを貼付して長期間保存すると、巻き回された粘着テープから巻き出す際、すなわち捲回された下層テープの背面から巻き出すテープ部分の粘着剤層を剥離しつつ巻き出す際、粘着剤面から離型紙を剥離するための剥離力が著しく増大する結果、粘着剤層内で破壊が生じ、粘着テープや粘着ラベルとしての使用できなくなる場合がある。
【0004】
そこで、シリコーン樹脂系粘着剤用のセパレーターに用いられる離型剤としては、(ポリフルオロ)アルキルビニル単量体と、分子中にエチレン性不飽和結合およびケイ素官能性基を有するシラン単量体との共重合体[特開昭61−228078号公報(特許文献4)]や、フッ化ビニリデンおよび/またはテトラフルオロエチレンとエチレン性不飽和結合を有する他のフッ素含有単量体との共重合体および上記公報に用いられた共重合体とを含有する組成物[特開平2−281063号公報(特許文献5)]が挙げられる。
【0005】
しかしながら、これらの離型剤に用いられる共重合体はフッ素系であり、それ自体が高価である。さらに、フッ素系の共重合体は炭化水素のような通常の有機溶媒には溶解しないためフロン系溶媒に溶解させて塗工する必要があるが、フロン系溶媒は揮発してオゾン層の破壊をもたらすので環境の点から好ましくない。そのため、通常の有機溶媒に溶解する離型剤を用いることが望まれている。また、(ポリフルオロ)アルキルビニル単量体と、分子中にエチレン性不飽和結合およびケイ素官能性基を有するシラン単量体との共重合体は、プラスチックフィルム等の基材に対する接着性及び塗膜強度が十分ではなく、離型材層そのものが使用条件によっては剥脱し易いという問題点がある。
【特許文献1】特開平7−052326号公報
【特許文献2】特公平7−008554号公報
【特許文献3】特開平3−200885号公報
【特許文献4】特開昭61−228078号公報
【特許文献5】特開平2−281063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の状況の下、例えば、シリコーン樹脂系粘着剤に対する離型性が優れ、環境を害するフロン系溶媒を用いずに、基材に対する密着性が高い離型材層を形成するための熱硬化性組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、ポリアミド酸、ポリエステル−ポリアミド酸もしくはポリエステルポリイミドとフッ素を含む重合体とを含有する組成物が、シリコーン樹脂系粘着剤に対する離型性に優れ、基材によく密着する離型材層を形成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。本発明は以下のような熱硬化性組成物等を提供する。
【0008】
[1] 下記一般式(1)
【化12】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素数2〜100の有機基である。)
で表される構成単位を有する化合物(B)とフッ素を含む重合体(C)を含有する熱硬化性組成物。
[2] 化合物(B)が、少なくとも、ジアミン(b1)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)とを用いて合成される、[1]に記載の熱硬化性組成物。
[3] ジアミン(b1)が、少なくとも4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル][3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル][3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、および式(4)
【化13】

(式中、R4およびR5は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、R6は独立してはメチレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンである。xは独立して1〜6の整数であり、yは1〜10の整数である。)
で表される化合物からなる群から選ばれる1以上であり、
酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)が、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物および3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1以上である、[2]に記載の熱硬化性組成物。
ここで、上記式(4)中のR6において、「アルキル置換されたフェニレン」における「アルキル」は、炭素数2〜10のアルキルであることが好ましく、炭素数2〜6のアルキルであることが更に好ましい。アルキルの例としては、制限するわけではないが、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0009】
[4] 化合物(B)100重量部に対して、フッ素を含む重合体(C)を1〜500重量部含む[2]に記載の熱硬化性組成物。
[5]下記一般式(1)および(2)
【化14】

(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数2〜100の有機基である。)
で表される構成単位を有する化合物(A1)およびそのイミド化物である化合物(A2)からなる群から選ばれる1以上、ならびに、フッ素を含む重合体(C)を含有する熱硬化性組成物。
[6] 化合物(A2)が、下記一般式(3)および(2)
【化15】

(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数2〜100の有機基である。)
で表される構成単位を有する、[5]に記載の熱硬化性組成物。
[7] 化合物(A1)が、少なくとも多価ヒドロキシ化合物(a1)とジアミン(a2)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)とを用いて合成される、[5]または[6]に記載の熱硬化性組成物。
【0010】
[8] 多価ヒドロキシ化合物(a1)がエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびジペンタエリスリトール、からなる群から選ばれる1以上であり、
ジアミン(a2)が,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル][3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル][3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンおよび式(4)
【化16】

(式中、R4およびR5は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、R6独立してはメチレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンである。xは独立して1〜6の整数であり、yは1〜10の整数である。)
で表される化合物からなる群から選ばれる1以上であり、
酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)が、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物および3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1以上である、[7]に記載の熱硬化性組成物。
ここで、上記式(4)中のR6において、「アルキル置換されたフェニレン」における「アルキル」は、炭素数2〜10のアルキルであることが好ましく、炭素数2〜6のアルキルであることが更に好ましい。アルキルの例としては、制限するわけではないが、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
[9] 多価ヒドロキシ化合物(a1)が1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールからなる群から選ばれる1以上であり、
ジアミン(a2)が3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび式(4)
【化17】

(式中、R4およびR5は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、R6独立してはメチレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンである。xは独立して1〜6の整数であり、yは1〜10の整数である。「アルキル置換されたフェニレン」における、「アルキル」は、炭素数2〜10のアルキルであることが好ましく、炭素数2〜6のアルキルであることが更に好ましい。アルキルの例としては、制限するわけではないが、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。)
で表される化合物からなる群から選ばれる1以上であり、
酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)がピロメリット酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物およびブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1以上である、[7]に記載の熱硬化性組成物。
【0011】
[10] 3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、および4,4’−ジアミノジフェニルメタンからなる群から選ばれる1以上のジアミン(b1)と、ピロメリット酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物およびブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1以上の酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)とを用いて合成される 下記一般式(1)
【化18】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素数2〜100の有機基である。)
で表される構成単位を有する化合物(B)、および、フッ素を含む重合体(C)を含有する熱硬化性組成物。当該熱硬化性組成物に含有される化合物(B)は、少なくとも、ジアミン(b1)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)とを用いて合成されるが、その他に1価アルコール等をさらに用いて合成されてもよい。
[11] 1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールからなる群から選ばれる1以上の多価ヒドロキシ化合物(a1)と、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、および4,4’−ジアミノジフェニルメタンからなる群から選ばれる1以上のジアミン(a2)と、ピロメリット酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物およびブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1以上の酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)とを用いて合成される、下記一般式(1)および(2)
【化19】

(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数2〜100の有機基である。)
で表される構成単位を有する化合物(A1)、および、そのイミド化物である化合物(A2)からなる群から選ばれる1以上、ならびに、フッ素を含む重合体(C)を含有する熱硬化性組成物。当該熱硬化性組成物に含有される化合物(A1)は、少なくとも、多価ヒドロキシ化合物(a1)とアミン(a2)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)とを用いて合成されるが、その他に1価アルコール等をさらに用いて合成されてもよい。
【0012】
[12] フッ素を含む重合体(C)が、一般式X−Y
(式中、Xはラジカル重合性官能基であり、Yはフッ素含有基である。)
で表されるフッ素を有するラジカル重合性モノマー(c1)と、その他のラジカル重合性モノマー(c2)との共重合体である、[1]〜[11]のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
[13] ラジカル重合性官能基Xが、CH2=C(CH3)−COO−またはCH2=CH−COO−であり、
フッ素含有基Yが、任意のメチレンが酸素で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のフルオロアルキル、1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数6〜20のフルオロアリールまたはアリール中の1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数7〜20のフルオロアリールアルキルである、[12]に記載の熱硬化性組成物。
[14] フッ素含有基Yが、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、または3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシルである、[13]に記載の熱硬化性組成物。
[15] ラジカル重合性官能基Xが、CH2=C(CH3)−COO−、またはCH2=CH−COO−であり、
フッ素含有基Yが、一般式(5)
−[(Rg -SiO1.5)(Rf-SiO1.5n-1] (5)
(式中、Rgは、単結合、または任意のメチレンが酸素に置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキレンであり、
fは、任意のメチレンが酸素で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のフルオロアルキル、1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数6〜20のフルオロアリール、アリール中の1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数7〜20のフルオロアリールアルキル、任意のメチレンが酸素で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状のフッ素を含まないアルキル、炭素数6〜20のフッ素を含まないアリールまたは炭素数7〜20のフッ素を含まないアリールアルキルであり、かつRfの1つ以上はフルオロアルキル、フルオロアリールまたはフルオロアリールアルキルであり、
nは、4〜24の整数である)
で表される、[1]〜[12]に記載の熱硬化性組成物。
【0013】
[16] フッ素含有基Yが下記式(I)
【化20】

(式(I)中、Rg は、単結合、または任意のメチレンが酸素に置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキレンであり、
f1〜Rf7はそれぞれ独立して、任意のメチレンが酸素で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のフルオロアルキル、1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数6〜20のフルオロアリール、アリール中の1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数7〜20のフルオロアリールアルキル、任意のメチレンが酸素で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状のフッ素を含まないアルキル、炭素数6〜20のフッ素を含まないアリールまたは炭素数7〜20のフッ素を含まないアリールアルキルを示し、Rf1〜Rf7の少なくとも1つはフルオロアルキル、フルオロアリールまたはフルオロアリールアルキルである)
で表される、[15]に記載の熱硬化性組成物。
[17] Rgがエチレン、プロピレンまたはブチレンであり、
f1〜Rf7がそれぞれ独立して、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、または3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシルである、[16]に記載の熱硬化性組成物。
【0014】
[18] その他のラジカル重合性モノマー(c2)が架橋性官能基を有する、[12]〜[17]のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
[19] 架橋性官能基が、オキシランおよび/またはオキセタンである、[18]に記載の熱硬化性組成物。
[20] ラジカル重合性モノマー(c2)がグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、および(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1以上である、[18]に記載の熱硬化性組成物。
[21] フッ素を含む重合体(C)が、一般式X−Y
[式中、Xが、CH2=C(CH3)−COO−またはCH2=CH−COO−であり、Yが下記式(I)
【化21】

(式(I)中、Rgがエチレン、プロピレンまたはブチレンであり、
f1〜Rf7がそれぞれ独立して、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、または3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシルである。)]
で表されるフッ素を有するラジカル重合性モノマー(c1)と、
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、および(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1以上であるラジカル重合性モノマー(c2)との共重合体である、[1]〜[11]のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
[22] 化合物(A1)およびそのイミド化物である化合物(A2)との合計100重量部に対して、フッ素を含む重合体(C)を1〜500重量部含む[1]〜[21]のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
[23] さらにエポキシ樹脂(D)を含有する、[1]〜[22]に記載の熱硬化性組成物。
[24] エポキシ樹脂(D)が下記式(D1)〜(D4)
【化22】

(式中、nは0〜10の整数である。)
で表される化合物からなる群から選ばれる1以上である、[23]に記載の熱硬化性組成物。
【0015】
[25] さらに酸発生剤(E)を含有する、[1]〜[24]に記載の熱硬化性組成物。
[26] [1]〜[25]に記載の熱硬化性組成物を硬化させて形成された硬化膜。
[27] [26]に記載の硬化膜を有する剥離紙。
[28] [26]に記載の硬化膜を有するフィルム。
【0016】
なお、本明細書中「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称を表す。
【発明の効果】
【0017】
本発明の好ましい態様に係る熱硬化性組成物は、例えば、シリコーン樹脂系粘着剤に対する離型性が優れている。また、本発明の好ましい態様に係る熱硬化性組成物は、例えば、環境を害するフロン系溶媒を用いずに基材に対する密着性が高い離型材層を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
1 本発明の熱硬化性組成物
本発明は、ポリアミド酸である化合物(B)とフッ素を含む重合体(C)とを含有する熱硬化性組成物を提供する。また、本発明はポリエステル−ポリアミド酸である化合物(A1)およびそのイミド化物である化合物(A2)からなる群から選ばれる1以上、ならびに、フッ素を含む重合体(C)を含有する熱硬化性組成物を提供する。
【0019】
1.1 化合物(B) (ポリアミド酸)
1.1.1 化合物(B)に含まれる構成単位
化合物(B)は上記式(1)の構成単位を有する化合物である。
上記式(1)において、R1は炭素数2〜100の有機基であるが、このR1は酸無水物基を2つ以上有する化合物の残基であり、好ましくはテトラカルボン酸二無水物残基またはスチレン−無水マレイン酸共重合体残基である。また、上記式(1)において、R2は炭素数2〜100の有機基であるが、このR2は多価ヒドロキシ化合物残基であり、好ましくはジオール残基である。
【0020】
本発明の熱硬化性組成物の耐薬品性は高分子量である方が好ましい一方、他方、溶媒に対する溶解性は低分子量である方が好ましいため、化合物(B)の重量平均分子量は1,000〜200,000であることが好ましく、2,000〜150,000がより好ましい。
【0021】
本発明において熱硬化性組成物における化合物(B)の濃度は特に限定されないが、1〜50重量%が好ましく、2〜40重量%であると、熱硬化性組成物の粘度が適当となり、各種の塗布方法で均一な塗膜を形成できるので好ましい。
【0022】
1.1.2 化合物(B)の製造方法
本発明の熱硬化性組成物に含まれる化合物(B)は、例えば、少なくとも、ジアミン(b1)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)と反応させることにより得られ、さらに1価アルコール等を加えて反応させて得ることもできる。
【0023】
(1)ジアミン(b1)
本発明において、化合物(B)の合成に用いることができるジアミン(b1)は、アミノを2つ有していれば特に限定されるものではないが、例えば、一般式NH2−R−NH2(式中、Rは炭素数2〜100の有機基である)で表される化合物が挙げられる。当該一般式で表される化合物の具体例としては、下記一般式(II)〜(VIII)で表される化合物が挙げられる。
【0024】
【化23】

[式(II)および(IV)中、
1は、−(CH2m−であり、ここでmは1〜6の整数であり、
式(VI)〜(VIII)中、
1は、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO2−、−CO−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH32−、−C(CF32−、−(CH2m−、−O−(CH2m−O−、−S−(CH2m−S−であり、ここでmは1〜6の整数であり、
2は、単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH32−、−C(CF32−または炭素数1〜3のアルキレンであり、
シクロヘキサン環またはベンゼン環に結合している水素は、−F、−CH3と置き換えられていてもよい。]
【0025】
一般式(II)で表されるジアミンとしては、例えば式(II−1)〜(II−3)で表されるジアミンが挙げられる。
【0026】
【化24】

【0027】
一般式(III)で表されるジアミンとしては、例えば式(III−1)、(III−2)で表されるジアミンが挙げられる。
【化25】

【0028】
一般式(IV)で表されるジアミンとしては、例えば式(IV−1)〜(IV−3)で表されるジアミンが挙げられる。
【化26】

【0029】
一般式(V)で表されるジアミンとしては、例えば式(V−1)〜(V−5)で表されるジアミンが挙げられる。
【化27】

【0030】
一般式(VI)で表されるジアミンとしては、例えば式(VI−1)〜(VI−30)で表されるジアミンが挙げられる。
【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【0031】
一般式(VII)で表されるジアミンとしては、例えば式(VII−1)〜(VII−6)で表されるジアミンが挙げられる。
【化32】

【0032】
一般式(VIII)で表されるジアミンとしては、例えば式(VIII−1)〜(VIII−11)で表されるジアミンが挙げられる。
【化33】

【0033】
一般式(II)〜(VIII)で表されるジアミン(b1)の上記具体例の中でも、より好ましくは、式(V−1)〜(V−5)、式(VI−1)〜(VI−12)、式(VI−26)、式(VI−27)、式(VII−1)、式(VII−2)、式(VII−6)、式(VIII−1)〜(VIII−5)で表されるジアミンが挙げられ、さらに好ましくは式(V−6)、式(V−7)、式(VI−1)〜(VI−12)で表されるジアミンが挙げられる。
【0034】
本発明において、化合物(B)の合成に用いられるジアミン(b1)としては、さらに一般式(IX)で表されるジアミンが挙げられる。
【化34】

[式(IX)中、
3は、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−または−(CH2m−(式中、mは1〜6の整数である)であり、
6は、炭素数1〜30の有機基であり、該有機基の末端は−Hまたはハロゲンであってもよく、好ましくは、該有機基はステロイド骨格を有する基、下記式(X)で表される基、または、ベンゼン環に結合している2つのアミノの位置関係がパラ位のときは炭素数1〜20のアルキル、もしくは該位置関係がメタのときは炭素数1〜10のアルキルまたはフェニルであり、
該アルキルにおいては、任意の−CH2−が−CF2−、−CHF−、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、−CH3が−CH2F、−CHF2または−CF3で置き換えられていてもよく
該フェニルの環形成炭素に結合している水素は、−F、−CH3、−OCH3、−OCH2F、−OCHF2または−OCF3と置き換えられていてもよい。]
【化35】

[式(X)中、
4およびA5はそれぞれ独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−または炭素数1〜12のアルキレンであり、
7およびR8はそれぞれ独立して、−Fまたは−CH3であり、
環Sは1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイルまたはアントラセン−9,10−ジイルであり、
9は−H、−F、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のフッ素置換アルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、−CN、−OCH2F、−OCHF2または−OCF3であり、
aおよびbはそれぞれ独立して0〜4の整数を表し、
c、dおよびeはそれぞれ独立して0〜3の整数を表し、eが2または3であるとき複数の環Sは同一の基であっても異なる基であってもよく、
fおよびgはそれぞれ独立して0〜2の整数を表し、かつ
c+d+e≧1である。]
【0035】
一般式(IX)において、2つのアミノはフェニル環炭素に結合しているが、好ましくは、2つのアミノの結合位置関係は、メタ位またはパラ位であることが好ましい。さらに2つのアミノはそれぞれ、「R6−A3−」の結合位置を1位としたときに3位と5位、または2位と5位に結合していることが好ましい。
一般式(IX)で表されるジアミンとしては、例えば下記式(IX−1)〜(IX−11)で表されるジアミンが挙げられる。
【化36】

【化37】

【0036】
上記式(IX−1)、(IX−2)、(IX−7)および(IX−8)中、R18は炭素数3〜12のアルキルまたは炭素数3〜12のアルコキシであるが、これらの中でも炭素数5〜12のアルキルまたは炭素数5〜12のアルコキシが好ましい。また、上記式(IX−3)〜(IX−6)および(IX−9)〜(IX−11)中、R19は炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数1〜10のアルコキシであるが、これらの中でも炭素数3〜10のアルキルまたは炭素数3〜10のアルコキシが好ましい。
【0037】
一般式(IX)で表されるジアミンとしては、さらに、例えば下記式(IX−12)〜(IX−17)で表されるジアミンが挙げられる。
【化38】

【0038】
上記式(IX-12)〜(IX-15)においてR20は炭素数4〜16のアルキルであり、炭素数6〜16のアルキルが好ましい。式(IX-16)と式(IX-17)においてR21は炭素数6〜20のアルキルであり、炭素数8〜20のアルキルが好ましい。
【0039】
一般式(IX)で表されるジアミンとしては、さらに、例えば下記式(IX−18)〜(IX−38)で表されるジアミンが挙げられる。
【0040】
【化39】

【化40】

【化41】

【0041】
上記式(IX-18)、(IX-19)、(IX-22)、(IX-24)、(IX-25)、(IX-28)、(IX-30)、(IX-31)、(IX-36)および(IX-37)においてR22は炭素数1〜12のアルキルまたは炭素数1〜12のアルコキシであり、炭素数3〜12のアルキルまたは炭素数3〜12のアルコキシが好ましい。また、上記式(IX-20)、(IX-21)、(IX-23)、(IX-26)、(IX-27)、(IX-29)、(IX-32)〜(IX-35)および(IX-38)において、R23は−H、−F、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、−CN、−OCH2F、−OCHF2または−OCF3であり、炭素数3〜12のアルキルまたは炭素数3〜12のアルコキシがさらに好ましい。上記式(IX-33)と(IX-34)において、A9は炭素数1〜12のアルキレンである。
【0042】
一般式(IX)で表されるジアミンとしては、さらに、例えば下記式(IX−39)〜(IX−48)で表されるジアミンが挙げられる。
【化42】

【化43】

【0043】
一般式(IX)で表されるジアミン(b1)のうち、式(IX−1)〜式(IX−11)で表されるジアミンが好ましく、式(IX−2)、式(IX−4)、式(IX−5)、式(IX−6)で表されるジアミンがさらに好ましい。
【0044】
本発明において、化合物(B)の合成に用いられるジアミン(b1)は、さらに下記一般式(XI)および(XII)で表される化合物が挙げられる。
【化44】

[式(XI)と(XII)中、
10は−Hまたは−CH3であり、
11はそれぞれ独立して、−Hまたは炭素数1〜20のアルキルもしくは炭素数2〜20のアルケニルであり、
6はそれぞれ独立して、単結合、−C(=O)−または−CH2−であり、
13およびR14はそれぞれ独立して、−H、炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルである。]
【0045】
前記一般式(XI)において、2つの「NH2−Ph−A6−O−」の一方はステロイド核の3位に結合し、もう一方は6位に結合していることが好ましい。また、2つのアミノはそれぞれ、フェニル環炭素に結合しており、A6の結合位置に対して、メタ位またはパラ位に結合していることが好ましい。
一般式(XI)で表されるジアミンとしては、例えば式(XI−1)〜(XI−4)で表されるジアミンが挙げられる。
【化45】

【0046】
一般式(XII)において、2つの「NH2−(R14−)Ph−A6−O−」は、それぞれフェニル環炭素に結合しているが、好ましくはステロイド核が結合している炭素に対してメタ位またはパラ位の炭素に結合している。また、2つのアミノはそれぞれフェニル環炭素に結合しているが、A6に対してメタ位またはパラ位に結合していることが好ましい。
一般式(XII)で表されるジアミンとしては、例えば式(XII−1)〜(XII−8)で表されるジアミンが挙げられる。
【化46】

【化47】

【0047】
本発明において、化合物(B)の合成に用いられるジアミン(b1)は、さらに一般式(XIII)、(XIV)で表される化合物が挙げられる。
【化48】

[式(XIII)中、R15は−Hまたは炭素数1〜20のアルキルであり、該アルキルのうち炭素数2〜20のアルキルの任意の−CH2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、
7はそれぞれ独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり、
8は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり、
環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、
hは0または1である。]
【化49】

[式(XIV)中、
16は炭素数2〜30のアルキルであり、
17は−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり、
7はそれぞれ独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンである。]
【0048】
前記一般式(XIII)において、2つのアミノはそれぞれフェニル環炭素に結合しているが、A7に対してメタ位またはパラに結合していることが好ましい。
一般式(XIII)で表されるジアミンとしては、例えば式(XIII−1)〜(XIII−9)で表されるジアミンが挙げられる。
【化50】

【化51】

上記式(XIII-1)〜(XIII-3)において、R24は炭素数−H、1〜20のアルキルが好ましく、(XIII-4)〜(XIII-9)においてR25は−H、炭素数1〜10のアルキルがさらに好ましい。
【0049】
前記一般式(XIV)において、2つのアミノはそれぞれフェニル環炭素に結合しているが、A7に対してメタ位またはパラ位に結合していることが好ましい。
一般式(XIV)で表されるジアミンとしては、例えば(XIV−1)〜(XIV−3)で表されるジアミンが挙げられる。
【化52】

【0050】
(XIV−1)〜(XIV−3)式中、R26は炭素数2〜30のアルキルであり、これらの中でも炭素数6〜20のアルキルが好ましく、R27は−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり、これらの中でも−Hまたは炭素数1〜10のアルキルがさらに好ましい。
【0051】
上述のとおり、本発明において、化合物(B)の合成に用いられるジアミン(b1)は、例えば、一般式(I)〜(XIV)で表されるジアミンを用いることができるが、これらのジアミン以外のジアミンも用いることができる。例えば、ナフタレン構造を有するナフタレン系ジアミン、フルオレン構造を有するフルオレン系ジアミン、またはシロキサン結合を有するシロキサン系ジアミンなどを単独または他のジアミンと混合して用いることができる。
【0052】
シロキサン系ジアミンは特に限定されるものではないが、下記式(4)で表されるものが本発明において、好ましく使用され得る。
【化53】

(式中、R4およびR5は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、R6は独立してはメチレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンであり、xは独立して1〜6の整数であり、yは1〜70の整数である。ここで、より好ましいyは1〜15の整数である。)
ここで、「アルキル置換されたフェニレン」における、「アルキル」は、炭素数2〜10のアルキルであることが好ましく、炭素数2〜6のアルキルであることが更に好ましい。アルキルの例としては、制限するわけではないが、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0053】
一般式(I)〜(VIII)および一般式(4)で表されるジアミンの中でも、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル][3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル][3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、上記式(4)で表される化合物等を用いると、得られる熱硬化性組成物の硬化膜の離型性が高くなるので好ましい。
これらの中でも、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび2,2’−ジアミノジフェニルプロパンおよび上記式(4)で表される化合物を用いて得られる熱硬化性組成物の硬化膜の離型性が高くなるので好ましい。
【0054】
なお、本発明の熱硬化性組成物に含まれる化合物(B)を合成するために用いることができるジアミン(b1)は、本明細書のジアミンに限定されることなく、本発明の目的が達成される範囲内で他にも種々の形態のジアミンを用いることができる。
また、本発明の熱硬化性組成物に含まれる化合物(B)を合成するために用いることができるジアミン(b1)は、1種単独、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。すなわち、2種以上の組み合わせとしては、上記ジアミン同士、上記ジアミンとそれ以外のジアミン、または、上記ジアミン以外のジアミン同士を用いることができる。
【0055】
(2)酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)
本発明において、化合物(B)の合成に用いることができる)酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)の具体例としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−無水マレイン酸−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−無水イタコン酸共重合体、スチレン−無水イタコン酸−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−無水イタコン酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−無水イタコン酸−(メタ)アクリル酸共重合体、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4ージカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびエチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)(商品名;TMEG−100、新日本理化(株)製)等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、エタンテトラカルボン酸二無水物、4―(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、および下記式b2−1〜b2−73で表される化合物等のテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【化54】

【化55】

【化56】

【化57】

【化58】

【化59】

【化60】

【化61】

【化62】

【化63】

【化64】

【化65】

【0056】
酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)の上記具体例の中でも、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体、ピロメリット酸二無水物(b2−1)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(b2−14)、ブタンテトラカルボン酸二無水物(b2−18)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(b2−20)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(b2−8)、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物および3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(b2−6)等を用いると、得られる熱硬化性組成物の硬化膜の離型性が高くなるから好ましい。
これらの中でも、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ピロメリット酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物および3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物を用いて得られる熱硬化性組成物の硬化膜の離型性が高くなるので好ましい。
【0057】
なお、本発明の熱硬化性組成物に含まれる化合物(A1)を合成するために用いることができる酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)は、本明細書の化合物に限定されることなく、本発明の目的が達成される範囲内で他にも種々の形態の酸無水物基を有する化合物を用いることができる。
また、本発明の熱硬化性組成物に含まれる化合物(A1)を合成するために用いることができる酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)は、1種単独、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。すなわち、2種以上の組み合わせとしては、上記酸無水物基を有する化合物同士、上記酸無水物基を有する化合物とそれ以外の酸無水物基を有する化合物、または、上記酸無水物基を有する化合物以外の酸無水物基を有する化合物同士を用いることができる。
【0058】
(3)1価アルコール
本発明で用いられる化合物(B)が、分子末端に酸無水物基を有している場合には、1価アルコールを投入して反応させることが好ましい。ジアミン(b1)もしくは酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)と同時、または、ジアミン(b1)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)を投入後に、1価アルコールを反応系に投入する。1価アルコールを投入して反応させて得られた化合物(B)は、平坦性が良好となり好ましい。
投入される1価アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、フェノール、ボルネオール、マルトール、リナロール、テルピネオール、ジメチルベンジルカルビノール、乳酸エチル、グリシドール、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン等を挙げることができる。
これらの中でも、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンが好ましく、ベンジルアルコールを用いると、得られるポジ型感光性組成物の塗膜が平坦になり好ましい。
【0059】
(4) その他の原料
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、4−アミノブチルメチルジエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジメトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、m−アミノフェニルメチルジエトキシシラン等のシリコン含有モノアミン、または、4−アミノ安息香酸等のカルボキシル基含有モノアミンを、分子末端に酸無水物基を有する化合物(B)と反応させると、得られるポジ型感光性組成物の塗膜の耐薬品性が改善されて好ましい。
また、シリコン含有モノアミンを1価アルコールと同時に反応系に投入して、化合物(B)と反応させることもできる。
【0060】
(5) 反応条件
化合物(B)は、ジアミン(b1)のアミノ1モルに対して、酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)の無水物が0.8〜1.2モル反応させて得られることが好ましく、0.9〜1.1モル反応させて得られることがさらに好ましい。
【0061】
また、化合物(B)の合成反応に用いられる溶媒は特に限定されるものではないが、化合物(B)を溶解できる溶媒が好ましい。
【0062】
化合物(B)を合成するための反応溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、およびN,N−ジメチルアセトアミドなどを挙げることができる。これらの中でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルおよびN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0063】
これらの反応溶媒は単独、または2種以上の混合溶媒として使用できる。また、50重量%以下の割合であれば上記反応溶媒以外に他の溶媒を混合して用いることもできる。
【0064】
ジアミン(b1)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)、および、任意に含まれる1価アルコール、モノアミン等の合計100重量部に対し反応溶媒を100重量部以上使用すると、合成反応がスムーズに進行するので好ましい。反応は40℃〜200℃で、0.2〜20時間反応させるのがよい。シリコン含有モノアミンを反応させる場合には、ジアミン(b1)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)との反応が終了した後に、反応液を40℃以下まで冷却した後、シリコン含有モノアミンを投入し、10〜40℃で0.1〜6時間反応させるとよい。
なお、ポリアミド酸(B)に1価アルコールを添加して反応させてもよい。
【0065】
(6) 反応系への投入順序
反応原料の反応系への投入順序に特に限定されない。すなわち、ジアミン(b1)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)とを同時に反応溶媒に加える、ジアミン(b1)を反応溶媒中に溶解させた後に酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)を投入する、酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)を反応溶媒中に溶解させた後にジアミン(b1)を投入するなどいずれの方法も用いることができる。
【0066】
1.2 化合物(A1) (ポリエステル−ポリアミド酸)
1.2.1 化合物(A1)に含まれる構成単位
化合物(A1)は上記式(1)と(2)の構成単位を有する化合物である。
上記式(1)と(2)において、R1はそれぞれ炭素数2〜100の有機基であるが、このR1は酸無水物基を2つ以上有する化合物の残基であり、好ましくはテトラカルボン酸二無水物残基またはスチレン−無水マレイン酸共重合体残基である。また、上記式(1)と(2)において、R2とR3はそれぞれ炭素数2〜100の有機基であるが、このR2とR3は多価ヒドロキシ化合物残基であり、好ましくはジオール残基である。
【0067】
本発明の熱硬化性組成物の耐薬品性は高分子量である方が好ましい一方、他方、溶媒に対する溶解性は低分子量である方が好ましいため、化合物(A1)の重量平均分子量は1,000〜200,000であることが好ましく、2,000〜150,000がより好ましい。
【0068】
本発明において熱硬化性組成物の化合物(A1)の濃度は特に限定されないが、1〜50重量%が好ましく、2〜40重量%であると、熱硬化性組成物の粘度が適当となり、各種の塗布方法で均一な塗膜を形成できるので好ましい。
【0069】
1.2.2 化合物(A1)の製造方法
本発明の熱硬化性組成物に含まれる化合物(A1)は、例えば、少なくとも多価ヒドロキシ化合物(a1)とジアミン(a2)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)とを反応させることにより得られ、さらに1価アルコール等を加えて反応させて得ることもできる。
このような方法で得られた化合物(A1)は上記式(1)と(2)の構成単位を有することが好ましいが、当該構成単位を有することに限定されない。
【0070】
化合物(A1)を得るために用いることができるジアミン(a2)は、化合物(B)を得るために用いることができるジアミン(b1)と同様である。また、化合物(A1)を得るために用いることができる酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)は、化合物(B)を得るために用いることができる酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)と同様である。そこで、以下に、化合物(A1)を得るために用いることができる多価ヒドロキシ化合物(a1)を説明する。
【0071】
(1)多価ヒドロキシ化合物(a1)
本発明において、化合物(A1)の合成に用いることができる多価ヒドロキシ化合物(a1)としてはジオールが好ましい。多価ヒドロキシ化合物(a1)の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、分子量1,000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、分子量1,000以下のポリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2,7−ヘプタントリオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、3,6−オクタンジオール、1,2,8−オクタントリオール、1,2−ノナンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2,9−ノナントリオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,2,10−デカントリオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ビスフェノールA(商品名)、ビスフェノールS(商品名)、ビスフェノールF(商品名)、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミン、SEO−2(商品名、日華化学(株)製)、SKY CHDM、リカビノールHB(以上商品名、新日本理化(株)製)、サイラプレーンFM−4411(商品名、チッソ(株)製)等が挙げられる。
【0072】
多価ヒドロキシ化合物(a1)の上記具体例の中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、が好ましく、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、および1,6−ヘキサンジオールを用いると、得られる熱硬化性組成物の基体への密着性が高くなり好ましい。
【0073】
なお、本発明のポジ型感光性組成物に含まれる化合物(A1)を合成するために用いることができる多価ヒドロキシ化合物(a1)は、本明細書の多価ヒドロキシ化合物に限定されることなく、本発明の目的が達成される範囲内で他にも種々の形態の多価ヒドロキシ化合物を用いることができる。
また、本発明のポジ型感光性組成物に含まれる化合物(A1)を合成するために用いることができる多価ヒドロキシ化合物(a1)は、1種単独、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。すなわち、2種以上の組み合わせとしては、上記多価ヒドロキシ化合物同士、上記多価ヒドロキシ化合物とそれ以外の多価ヒドロキシ化合物、または、上記多価ヒドロキシ化合物以外の多価ヒドロキシ化合物同士を用いることができる。
【0074】
(2) 1価アルコール
本発明で用いられる化合物(A1)が、分子末端に酸無水物基を有している場合には、1価アルコールを投入すると、得られる熱硬化性組成物を塗布したときの平坦性が涼子となるため好ましい。用いることができる1価アルコールは、化合物(A1)の合成に用いられる1価アルコールと同様である。
【0075】
(3) その他の原料
化合物(A1)と同様に、上述した具体例を含むシリコン含有モノアミン、または、4−アミノ安息香酸等のカルボキシル基含有モノアミンを分子末端に酸無水物基を有する化合物(A1)と反応させると、得られる熱硬化性組成物の塗膜の耐薬品性が改善されて好ましい。
【0076】
(4) 反応条件
化合物(A1)は多価ヒドロキシ化合物(a1)のヒドロキシ1モルに対して、ジアミン(a2)のアミノを0.1〜10モル、酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)の無水物を1〜10モル反応させて得られることが好ましい。また、化合物(A1)は、多価ヒドロキシ化合物(a1)のヒドロキシ1モルに対して、ジアミン(a2)のアミノを0.2〜5モル、酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)の無水物を1.1〜6モル反応させて得られることがさらに好ましい。
【0077】
また、当該反応に用いられる溶媒は特に限定されるものではないが、酸無水物基を2つ以上有する化合物(a1)、ジアミン(a2)と多価ヒドロキシ化合物(a3)とを溶解できる溶媒が好ましい。
【0078】
化合物(A1)を合成するための反応溶媒は、化合物(B)を合成するための反応溶媒と同様である。
【0079】
酸無水物基を2つ以上有する化合物(a1)とジアミン(a2)と多価ヒドロキシ化合物(a3)、および、任意に含まれる、1価アルコール、モノアミン等の合計100重量部に対し反応溶媒を100重量部以上使用すると、合成反応がスムーズに進行するので好ましい。反応は40℃〜200℃で、0.2〜20時間反応させるのがよい。
シリコン含有モノアミンを反応させる場合には、酸無水物基を2つ以上有する化合物(a1)とジアミン(a2)と多価ヒドロキシ化合物(a3)との反応が終了した後に、反応液を40℃以下まで冷却した後、シリコン含有モノアミンを投入し、10〜40℃で0.1〜6時間反応させるとよい。また、1価アルコールは多価ヒドロキシ化合物と同時に投入することが好ましい。
【0080】
(5) 反応系への投入順序
反応原料の反応系への添加順序に特に限定されない。すなわち、多価ヒドロキシ化合物(a1)とジアミン(a2)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)とを同時に反応溶媒に加える、ジアミン(a2)と多価ヒドロキシ化合物(a1)を反応溶媒中に溶解させた後に酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)を添加する、多価ヒドロキシ化合物(a1)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)をあらかじめ反応させて共重合体を合成した後に、その共重合体にジアミン(a2)を添加する、ジアミン(a2)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)をあらかじめ反応させて共重合体を合成した後に、その共重合体に多価ヒドロキシ化合物(a1)を添加する、などいずれの方法も用いることができる。
【0081】
1.3 化合物(A2) (ポリエステル−ポリイミド)
1.3.1 化合物(A2)に含まれる構成単位
化合物(A2)は化合物(A1)のイミド化物であれば特に限定されないが、好ましくは、上記式(3)と(2)の構成単位を有する化合物である。
上記式(3)と(2)において、R1はそれぞれ炭素数2〜100の有機基であるが、このR1は酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)の残基であり、好ましくはテトラカルボン酸二無水物残基またはスチレン−無水マレイン酸共重合体残基である。また、上記式(3)のR2は炭素数2〜100の有機基であるが、このR2はジアミン(a2)の残基であり、上記式(2)中のR3は炭素数2〜100の有機基であるが、このR3は多価ヒドロキシ化合物(a1)の残基である。
【0082】
本発明の熱硬化性組成物の耐薬品性は高分子量である方が好ましい一方、他方、溶媒に対する溶解性は低分子量である方が好ましいため、化合物(A2)の重量平均分子量は1,000〜200,000であることが好ましく、2,000〜150,000がより好ましい。
【0083】
本発明において熱硬化性組成物の化合物(A1)の濃度は特に限定されないが、1〜50重量%が好ましく、2〜40重量%であると、熱硬化性組成物の粘度が適当となり、各種の塗布方法で均一な塗膜を形成できるので好ましい。
【0084】
1.3.2 化合物(A2)の製造方法
化合物(A2)は、例えば、化合物(A1)をイミド化することによって得られる。イミド化は、例えば、化合物(A1)を約220℃で約20時間加熱する等により行われる。
【0085】
1.4 フッ素を含む重合体(C)
フッ素を含む重合体(C)は、フッ素原子を含む重合体であれば特に限定されない。
本発明の熱硬化性組成物の耐薬品性は高分子量である方が好ましい一方、他方、溶媒に対する溶解性は低分子量である方が好ましいため、化合物(C)の重量平均分子量は2,000〜500,000であることが好ましく、3,000〜100,000がより好ましい。また、フッ素を含む重合体(C)の分子量分布Mw/Mnは、通常、1.2〜20であることが好ましい。
【0086】
本発明において熱硬化性組成物のフッ素を含む重合体(C)の濃度は特に限定されないが、0.1〜30重量%であると、本発明の熱硬化性組成物を塗布して得られる塗膜のシリコーン樹脂系粘着剤に対する離型性が高くなるために好ましく、0.5〜20重量%であるとさらに好ましい。
【0087】
1.4.1 フッ素を含む重合体(C)の製造方法
フッ素を含む重合体(C)の製造方法は特に限定されないが、例えば、一般式X−Y(式中、Xはラジカル重合性官能基であり、Yはフッ素含有基である。)で表されるフッ素を有するラジカル重合性モノマー(c1)と、その他のラジカル重合性モノマー(c2)とを共重合させることによって得ることができる。
【0088】
ラジカル重合性官能基Xとして、例えばCH2=CH−、CH2=CHO−、CH2=C(CH3)−COO−、CH2=CH−COO−、および下記式(6)
【化66】

に示される基が挙げられる。これらの中でも、官能基Xは、CH2=C(CH3)−COO−、またはCH2=CH−COO−であることが好ましい。
【0089】
フッ素含有基Yはフッ素を含有する基であれば、特に限定されない。フッ素含有基Yの例には、1)任意のメチレンが酸素で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のフルオロアルキル、2)1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数6〜20のフルオロアリール、3)アリール中の1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数7〜20のフルオロアリールアルキルが含まれる。
【0090】
フッ素含有基Yの1)フルオロアルキルの例としては、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、2,2,2-トリフルオロ-1-トリフルオロメチルエチル、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、ノナフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロヘキシル、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル、トリデカフルオロ−1,1,2,2-テトラヒドロオクチル、ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル、パーフルオロ-1H,1H,2H,2H-ドデシル、パーフルオロ-1H,1H,2H,2H-テトラデシル、テトラデシル-1,1,2,2-テトラヒドロドデシル、(3-ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルが挙げられる。
【0091】
フッ素含有基Yの2)フルオロアリールの例としては、ペンタフルオロフェニルおよびα,α,α-トリフルオロトリルが挙げられる。
【0092】
フッ素含有基Yの3)フルオロアリールアルキルの例としては、ペンタフルオロフェニルプロピルが挙げられる。
【0093】
フッ素含有基Yの好ましい例としては、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル、および3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルが含まれ;さらに好ましい例には、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシルが挙げられる。
【0094】
また、フッ素含有基Yは、一般式(5)
−[(Rg -SiO1.5)(Rf-SiO1.5n-1] (5)
で表される基が好ましい。式(5)中、Rgは、単結合または炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜10)のアルキレンであり、アルキレンにおける任意のメチレンが酸素に置き換わっていてもよく、また、任意の水素がフッ素に置き換わっていてもよい。また、式(5)中、Rfは、a)任意のメチレンが酸素で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状のフルオロアルキル、b)少なくとも1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数6〜20のフルオロアリール、c)アリール中の1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数7〜20のフルオロアリールアルキル、またはd)任意のメチレンが酸素で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル;炭素数6〜20のアリール;もしくは炭素数7〜20のアリールアルキル、から独立して選択される基であり、Rfの1つ以上は、a)〜c)のいずれかである。Rfは、それぞれ異なっていてもよく、すべて同一であってもよい。また、式(5)中、nは4〜24の整数であることが好ましく、8であることがより好ましい。
【0095】
上記式(5)のRfとして挙げられているフルオロアルキルとしては、例えば、フッ素含有基Yの1)上記フルオロアルキルの例があげられる。
また、上記式(5)のRfとして挙げられているフルオロアリールとしては、例えば、フッ素含有基Yの2)上記フルオロアリールの例があげられる。
また、上記式(5)のRfとして挙げられているフルオロアリールアルキルとしては、例えば、フッ素含有基Yの3)上記フルオロアリールアルキルの例があげられる。
【0096】
上記式(5)で表されるフッ素含有基Yは、好ましくは上記式(I)で示されるように、T8型のシルセスキオキサン骨格を有する基である。
上記式(I)において、Rf1〜Rf7はそれぞれ、式(5)におけるRfに対応する。
【0097】
式(I)において、好ましくは、Rf1〜Rf7はそれぞれ独立して、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、2,2,2-トリフルオロ-1-トリフルオロメチルエチル、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、ノナフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロヘキシル、トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル、ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル、パーフルオロ-1H,1H,2H,2H-ドデシル、パーフルオロ-1H,1H,2H,2H-テトラデシル、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル等のフルオロアルキル、またはフェニル、プロピル、ブチル、メチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル等の炭化水素基であるが、ただし、Rf1〜Rf7のうち少なくとも1つはフルオロアルキルから選択される。
また、Rf1〜Rf7は全て、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、または3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシであることが好ましい。
さらに、Rf1〜Rf7は全て、3,3,3-トリフルオロプロピルあるいは3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシルであることが好ましい。
【0098】
また式(I)のRgは炭素数1〜10のアルキレン(任意のメチレンが酸素に置き換わってもよく、また、任意の水素がフッ素に置き換わってもよい)であることが好ましい。式(I)のRgは、エチレン、プロピレンまたはブチレンであることがさらに好ましく、これらの中でもプロピレンであることが特に好ましい。
【0099】
フッ素を含む重合体(C)の合成に用いることができるその他のラジカル重合性モノマー(c2)はラジカル重合性官能基を有していれば特に限定されない。その他のラジカル重合性モノマー(c2)に含まれるラジカル重合性官能基は、フッ素を有するラジカル重合性モノマー(c1)に含まれるラジカル重合性官能基Xと同様である。その他のラジカル重合性モノマー(c2)は、(メタ)アクリル酸誘導体またはスチレン誘導体であることが好ましい。
【0100】
その他のラジカル重合性モノマー(c2)は架橋性官能基を含むことが好ましい。当該架橋性官能基の例としては、グリシジルなどのオキシラン、オキセタン、イソシアネート、酸無水物、カルボキシル、ヒドロキシルなどが挙げられるが、これらの中でもオキシランおよびオキセタンが好ましい。
架橋性官能基を含むその他のラジカル重合性モノマー(c2)の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3-エチル-3-(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリレート-2-アミノエチルなどの(メタ)アクリル酸誘導体、および、グリシジルビニルベンジルエーテルなどのスチレン誘導体等が挙げられる。
【0101】
フッ素を含む重合体(C)は、フッ素を有するラジカル重合性モノマー(c1)とその他のラジカル重合性モノマー(c2)との共重合体であることが好ましいが、その配列様式は特に限定されず、例えば、ブロック共重合体などの定序性共重合体でも、ランダム共重合体でもよい。
また、フッ素を有するラジカル重合性モノマー(c1)由来の構造単位と、その他のラジカル重合性モノマー(c2)由来の構造単位の重量比率は2:98〜70:30であることが好ましい。
【0102】
1.4.2 フッ素を含む重合体(C)の製造するための重合反応
フッ素を含む重合体(C)は、ラジカル重合性モノマー(c1)とその他のラジカル重合性モノマー(c2)とを付加重合させることによって製造できる。
付加重合は、重合開始剤を用いて行うことができる。重合開始剤の例としては2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-ブチロニトリル)、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)などのアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエートなどの過酸化物、および、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのジチオカルバメートが挙げられる。さらに、重合開始剤の例としては、光重合開始剤、およびリビングラジカル重合開始剤なども挙げられる。
付加重合において用いられる重合開始剤の量は、特に制限されないが、モノマーの総重量に対して0.1〜10重量%であることが好ましい。
【0103】
前記付加重合において、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることで、分子量を適切に制御することができる。連鎖移動剤の例としては、チオ-β-ナフトール、チオフェノール、n-ブチルメルカプタン、エチルチオグリコレート、メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、イソプロピルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ドデカンチオール、チオリンゴ酸、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトアセテート)などのメルカプタン類;ジフェニルジサルファイド、ジエチルジチオグリコレート、ジエチルジサルファイドなどのジサルファイド類;などのほか、トルエン、メチルイソブチレート、四塩化炭素、イソプロピルベンゼン、ジエチルケトン、クロロホルム、エチルベンゼン、塩化ブチル、sec−ブチルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、塩化プロピレン、メチルクロロホルム、t−ブチルベンゼン、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、酢酸、酢酸エチル、アセトン、ジオキサン、四塩化エタン、クロロベンゼン、メチルシクロヘキサン、t−ブチルアルコール、ベンゼンなどが挙げられる。
これらの連鎖移動剤の中でも、メルカプタン類の連鎖移動剤が好ましく、特にメルカプト酢酸は、重合体の分子量を下げて、分子量分布を均一にさるので好ましい。
連鎖移動剤は単独でも、または2種以上を混合しても使用することができる。
【0104】
本発明のフッ素を含む重合体(C)は、通常の付加重合体の重合方法を用いて製造され、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、塊状−懸濁重合法、超臨界CO2を用いた重合法を用いることができる。
溶液重合法による場合には、例えば、適切な溶媒中に、フッ素を有するラジカル重合性モノマー(c1)、他のラジカル重合性モノマー(c2)、重合開始剤および連鎖移動剤を溶解して、加熱または光を照射して付加重合反応させてフッ素を含む重合体(C)が得られる。
【0105】
フッ素を含む重合体(C)を得るための重合反応に用いられる溶媒の例としては、炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエンなど)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼンなど)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなど)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなど)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート系溶媒(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ハイドロクロロフルオロカーボン系溶媒(HCFC−141b、HCFC−225)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)系溶媒(炭素数2〜4、5および6以上のHFCs)、パーフルオロカーボン系溶媒(パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン)、脂環式ハイドロフルオロカーボン系溶媒(フルオロシクロペンタン、フルオロシクロブタン)、酸素含有フッ素系溶媒(フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロケトン、フルオロアルコール)、芳香族系フッ素溶媒(α,α,α-トリフルオロトルエン、ヘキサフルオロベンゼン)、水が挙げられる。
これらを単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
用いられる溶媒の量は、単量体濃度を10〜50重量%とする量であればよい。
【0106】
重合反応温度は特に制限されないが、0〜200℃が好ましく、15℃〜150℃がさらに好ましい。また、重合反応は、単量体の種類や、溶媒の種類に応じて、減圧、常圧または加圧下で行うことができる。
【0107】
重合反応において、発生したラジカルが酸素と接触して失活し、重合速度が低下するのを抑制し、分子量が適切に制御された重合体を得るため、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。また、重合反応は、減圧下で溶存酸素を除去された重合系内で行ってもよい。減圧下で溶存酸素を除去した後、そのまま減圧下において重合反応を行ってもよい。
【0108】
溶液中に得られた重合体は、常法により精製または単離されてもよい。
【0109】
フッ素を含む重合体(C)は、本発明の熱硬化性組成物で形成される膜に、撥水性および/または撥油性を付与することができる。また、架橋性官能基を含むその他のラジカル重合性モノマー(c2)を用いて得られたフッ素を含む重合体(C)は架橋性官能基を含むため、このようにして得られる熱硬化性組成物から形成される膜のレジストパターンの耐薬品性は向上する。
【0110】
なお、フッ素を有するラジカル重合性モノマー(c1)と、その他のラジカル重合性モノマー(c2)はそれぞれ、一種類単独の化合物から構成されてもよく、二種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0111】
1.5 エポキシ樹脂(D)
本発明の熱硬化性組成物は、さらにエポキシ樹脂(D)を含んでもよい。本発明で用いられるエポキシ樹脂(D)は、オキシランを有すれば特に限定されないが、オキシランを2つ以上有する化合物が好ましい。
【0112】
エポキシ樹脂(D)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、オキシランを有するモノマーの重合体、および、オキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体、などが挙げられる。
【0113】
エポキシ樹脂(D)の具体例としては、商品名「エピコート807」、「エピコート815」、「エピコート825」、「エピコート827」、上記式(D4)で表される化合物である「エピコート828」、「エピコート190P」、「エピコート191P」(以上、油化シェルエポキシ(株)製)、商品名「エピコート1004」、「エピコート1256」(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、商品名「アラルダイトCY177」、上記式(D1)で表される化合物である「アラルダイトCY184」(日本チバガイギー(株)製)、上記式(D2)で表される化合物である商品名「セロキサイド2021P」、「EHPE−3150」(ダイセル化学工業(株)製)、上記式(D3)で表される化合物である商品名「テクモアVG3101L」(三井化学(株)製)などを挙げることができる。
これらの中でも、上記式(D4)で表される化合物である「エピコート828」、上記式(D1)で表される化合物である「アラルダイトCY184」(日本チバガイギー(株)製)、上記式(D2)で表される化合物である商品名「セロキサイド2021P」(ダイセル化学工業(株)製)を用いると、熱硬化性組成物から得られる塗膜の耐熱性、耐薬品性が良好隣好ましい。
【0114】
また、エポキシ樹脂(D)を得るために用いられるオキシランを有するモノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びメチルグリシジル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0115】
エポキシ樹脂(D)を得るために、オキシランを有するモノマーと共重合を行う他のモノマーとの具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド及びN−フェニルマレイミドなどを挙げることができる。
【0116】
エポキシ樹脂(D)として用いることができるオキシランを有するモノマーの重合体の好ましい具体例としては、ポリグリシジルメタクリレートなどを挙げることができる。また、エポキシ樹脂(D)として用いることができ、オキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体の好ましい具体例としては、メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、ベンジルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、ブチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体及びスチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を挙げることができる。
【0117】
熱硬化性組成物から得られる塗膜の耐熱性、耐薬品性が良好となるため、本発明において熱硬化性組成物中のエポキシ樹脂(D)の濃度は0.5〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がさらに好ましい。
【0118】
1.5 酸発生剤(E)
本発明の熱硬化性組成物は、さらに酸発生剤(E)を含んでもよい。
酸発生剤(E) は、熱硬化性組成物中で均一に溶解し、熱硬化性組成物を分解したりせず、硬化膜の皮膜透明性を低下させないものが好ましい。酸発生剤(E)としては、例えば、トリアリールスルホニウム塩等の芳香族ヨードニウム塩、ジアリールヨードニウム塩等の芳香族ヨードニウム塩などのオニウム塩、ルホン酸のニトロベンジルエステルなどの非イオン性の開始剤が挙げられる。
本発明において熱硬化性組成物中の酸発生剤(E)の濃度は10重量%以下が好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。
【0119】
1.6 本発明の熱硬化性組成物に添加される添加剤
本発明の熱硬化性組成物は、化合物(B)とフッ素を含む重合体(C)を混合させて、または、化合物(A1)とそのイミド化物である化合物(A2)とからなる群から選ばれる1以上とフッ素を含む重合体(C)とを混合させて得られるが、さらに、目的とする特性によっては、本発明の熱硬化性組成物は、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、トリメリット酸等のエポキシ硬化剤、アミノシリコン化合物、溶媒、その他の添加剤を必要により選択して添加し、それらを均一に混合溶解することにより得ることができる。
【0120】
(1)界面活性剤
例えば、塗布性の向上を望むときには、かかる目的に沿った界面活性剤を添加できる。本発明の熱硬化性組成物に添加される界面活性剤の具体例としては、商品名「Byk−300」、「Byk−306」、「Byk−335」、「Byk−310」、「Byk−341」、「Byk−344」、「Byk−370」(ビック・ケミー(株)製)などのシリコン系界面活性剤、商品名「Byk−354」、「ByK−358」、「Byk−361」(ビック・ケミー(株)製)などのアクリル系界面活性剤、商品名「DFX−18」、「フタージェント250」、「フタージェント251」(ネオス(株)製)などのフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
これらの帯電防止剤は、一種のみを用いてもよく、また、二種以上を混合して用いてもよい。
界面活性剤は、下地基板への濡れ性、平坦性、または塗布性を向上させるために使用するものであり、熱硬化性組成物中0.01〜1重量%添加して用いられることが好ましい。
【0121】
(2)帯電防止剤
本発明の熱硬化性組成物に添加することができる帯電防止剤は、特に限定されるものではなく、通常の帯電防止剤を用いることができる。具体的には、酸化錫、酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物、酸化錫・酸化インジウム複合酸化物等の金属酸化物や四級アンモニウム塩等が挙げられる。
これらの帯電防止剤は、一種のみを用いてもよく、また、二種以上を混合して用いてもよい。
帯電防止剤は、帯電を防止するために使用するものであり、熱硬化性組成物中0.01〜1重量%添加して用いられることが好ましい。
【0122】
(3)カップリング剤
本発明の熱硬化性組成物に添加することができるカップリング剤は、特に限定されるものではなく、通常のカップリング剤を用いることができる。添加されるカップリング剤はシランカップリング剤が好ましく、具体的には、トリアルコキシシラン化合物またはジアルコキシシラン化合物等を挙げることができる。好ましくは、例えば、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノエチル−γ−イミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、 N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトジエトキシシラン、 N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、 N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、 N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、 N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等が例示できる。なかでも、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0123】
これらのカップリング剤は、一種のみを用いてもよく、また、二種以上を混合して用いてもよい。
カップリング剤は、熱硬化性組成物中0.01〜3重量%添加して用いられることが好ましい。
【0124】
(4)エポキシ硬化剤
本発明の熱硬化性組成物に添加することができるエポキシ硬化剤は、特に限定されるものではなく、通常のエポキシ硬化剤を用いることができる。具体的には、有機酸ジヒドラジド化合物、イミダゾール及びその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物等が挙げられる。さらに具体的には、ジシアンジアミド等のジシアンジアミド類、アジピン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等の有機酸ジヒドラジド、2,4−ジアミノ―6―[2'−エチルイミダゾリル−(1')]−エチルトリアジン、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、無水フタル酸、無水トリメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸―1,2−無水物等の酸無水物等が挙げられる。これらの中でも透明性が良好なトリメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸―1,2−無水物が好ましい。
【0125】
これらのエポキシ硬化剤は、一種のみを用いてもよく、また、二種以上を混合して用いてもよい。
エポキシ硬化剤は、熱硬化性組成物中0.2〜5重量%添加して用いられることが好ましい。
【0126】
(5)アミノシリコン化合物
本発明の熱硬化性組成物においてアミノシリコン化合物を添加することができる。アミノシリコン化合物としては、パラアミノフェニルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリエトキシシラン、メタアミノフェニルトリメトキシシラン、メタアミノフェニルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらのアミノシリコン化合物は、一種のみを用いてもよく、また、二種以上を混合して用いてもよい。
アミノシリコン化合物は、基板への密着性を良くするために使用するものであり、熱硬化性組成物中0.05〜2重量%添加して用いられることが好ましい。
【0127】
(6)溶媒
本発明の熱硬化性組成物に含まれ得る溶媒は、化合物(A1)、化合物(A2)、化合物(B)、フッ素を含む重合体(C)エポキシ樹脂(D)などを溶解することができる溶媒であれば特に制限されない。溶媒は、ポリアミド酸、可溶性ポリイミドなどの高分子成分の製造工程や用途面で通常使用されている溶媒を広く含み、使用目的に応じて、適宜選択できる。
【0128】
これらの溶媒を例示すると以下のとおりである。ポリアミド酸や可溶性ポリイミドに対し親溶媒である非プロトン性極性有機溶媒の例は、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、γ−ブチロラクトンなどである。
また、塗布性改善などを目的とした他の溶媒の例としては、乳酸アルキル、3−メチル−3−メトキシブタノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのジエチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルまたはフェニルアセテート、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル、マロン酸ジエチルなどのマロン酸ジアルキル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、これらアセテート類などのエステル化合物が挙げられる。これらの溶媒の中でも、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチルなどを特に好ましく用いることができる。
【0129】
溶媒は、一種のみを用いてもよく、また、二種以上を混合して用いてもよい。また、溶媒は、熱硬化性組成物中の固形分濃度が2〜60重量%となるように添加して用いられることが好ましい。
【0130】
2 硬化膜の形成
本発明の熱硬化性組成物を、基材表面に塗布し、ホットプレートまたはオーブンなどで加熱して溶媒を除去することによって塗膜を形成することができる。塗布は、スピンコート法、ロールコート法、ディッピング法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、キスコート法、リバースキスコート法、エアナイフコート法、カーテンコート法、およびスリットコート法など通常の方法により形成することができる。加熱条件は各成分の種類および配合割合によって異なるが、通常70〜120℃で、オーブンを用いた場合5〜15分間、ホットプレートを用いた場合1〜10分間で塗膜が形成される。
【0131】
塗膜を形成後、さらに150〜250℃、好ましくは160〜230℃で、オーブンを用いた場合5〜30分間、ホットプレートを用いた場合2〜20分間加熱処理することによって、シリコーン樹脂系粘着剤に対する離型性を有する硬化膜を得ることができる。
【0132】
基材は特に限定されないが、通常用いられる離型紙のベースとして使用されるシート状材料、表面がシリコーン系粘着剤と接触する場面でも使用できるパッキン、板状物、容器、管状体、及びその他の不定形物体を挙げることができる。これらの中で、前記シート状材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックフィルム、セロハン、アセテート、金属箔、目止め効果があるグラシン紙、パーチメント紙、あるいはポリエチレン、クレーバインダー、ポリビニルアルコール、でんぷん、カルボキシメチルセルロース(CMC)などで目止め処理した紙などを挙げることができる。なお、これらの基材を構成する物質には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、さらに、顔料、染料、酸化防止剤、劣化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び/又は電磁波防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
上記のシート状材料の厚さは、特に限定されないが、通常、10μm〜2mm程度であり、離型性積層体として使用する目的により適宜調整されるが、15〜500μmが好ましく、20〜200μmがさらに好ましい。
【0133】
上記の基材の離型性を有する硬化膜形成用面には、必要によりコロナ処理、プラズマ処理、ブラスト処理等の易接着処理が施されているもの及び表面に易接着層が設けられたものを使用することができる。これらのなかでも、コロナ処理を施したものが実用的である。
【実施例】
【0134】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0135】
実施例および比較例で用いる、ジアミン、テトラカルボン酸二無水物および溶媒の名称を略号で示す。以降の記述にはこの略号を使用する。
ジアミン
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル:APE
3,3'−ジアミノジフェニルスルホン:DDS
テトラカルボン酸二無水物
ピロメリット酸二無水物:PMDA
3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物:ODPA
溶媒成分
N−メチル−2−ピロリドン:NMP
ブチルセロソルブ:BC
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル:EDM
【0136】
[合成例1]化合物(B)の合成 (ポリアミド酸)
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた1000mlの四つ口フラスコに、PMDAを21.81g、APEを20.02g、脱水精製したNMPを400g入れ、乾燥窒素気流下25℃で30時間攪拌した。この反応液に脱水精製したNMPを394.77g加えて、60℃で8時間攪拌し、淡黄色で透明なポリアミド酸(化合物(B))の5重量%溶液を得た。この溶液の粘度は38mPa・s(E型粘度計、25℃)であった。また、GPCで測定した結果、得られたポリアミド酸(化合物(B))の重量平均分子量は41,000であった。
【0137】
[合成例2]化合物(A1)の合成 (ポリエステル−ポリアミド酸)
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた500mlの四つ口フラスコに、ODPAを65.00g、1,4−ブタンジオールを9.44g、脱水精製したNMPを111.66g入れ、乾燥窒素気流下130℃で1時間攪拌した。この反応液を40℃まで冷却し、DDSを26.01g、脱水精製したNMPを122.72g入れ、乾燥窒素気流下40℃で2時間攪拌した。その後、脱水精製したNMPを167.42g加えて攪拌し、淡黄色透明なポリエステル−ポリアミド酸(化合物(A1))の20%溶液を得た。この溶液の粘度は311mPa・sであった。また、GPCで測定した結果、得られたポリエステル−ポリアミド酸(化合物(A1))の重量平均分子量は14,000であった。
【0138】
[合成例3]化合物(A2)の合成 (ポリエステル−ポリイミド)
合成例2で得られたポリエステル−ポリアミド酸((化合物(A1))の20%溶液100gを、純水3000g中に攪拌しながらゆっくり滴下した。生成した沈殿をろ過により捕集し、再び純水3000gに投入して5時間攪拌後、再度ろ過を行い、沈殿を捕集した。この沈殿をアルミバットに広げ、210℃で10時間加熱し、16.4gのポリエステル−ポリイミド(化合物(A2))を得た。GPCで測定した結果、得られたポリエステル−ポリイミド(化合物(A2))の重量平均分子量は21,000であった。
【0139】
[合成例4]フッ素を含む重合体(C)の合成
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた300mlの四つ口フラスコに、150gのEDMを仕込み、さらに表1の記載のとおりの試薬を加えて4時間還流した。
【0140】
【表1】

【0141】
還流後、100℃に昇温し、1時間蒸留して2-ブタノンを溜出した。次に、減圧下でEDMを溜出し、両溜出液の合計が100gになったところで蒸留を停止し、フッ素を含む重合体(C)のEDM溶液を得た。当該溶液の一部を取り出し、180℃で1時間で乾燥させてから測定した固形分の重量からフッ素を含む重合体(C)の濃度を計算したところ、30.6重量%であった。GPCで測定した結果、得られたフッ素を含む重合体(C)の重量平均分子量Mwは4,700であった。
【0142】
[合成例5]フッ素を含まない重合体の合成
γ−メタクリロキシプロピルヘプタ(トリフルオロプロピル)−T8−シルセスキオキサンの代わりにメチルメタクリレートを使用した以外は合成例4と同じ条件で、フッ素を含まない重合体のEDM溶液を得た。当該溶液の固形分を取り出し、180℃で1時間で乾燥させてから測定した固形分の重量からフッ素を含まない重合体の濃度を計算したところ、その値は30.9重量%であった。GPCで測定した結果、得られた重合体の重量平均分子量Mwは4,300であった。
【0143】
[実施例1]熱硬化性組成物の調製
以下に示す各成分を乾燥窒素気流下室温で混合溶解した。
合成例1で合成された化合物(B)の5%溶液 10.0g
合成例4で合成されたフッ素を含む重合体(C)の30.6重量%溶液 0.61g
セロキサイド2021P
(ダイセル化学工業(株)製、上記式(D2)のエポキシ樹脂) 0.50g
【0144】
このようにして得られた溶液を、0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、熱硬化性組成物を調製した。
【0145】
この熱硬化性組成物を、ポリイミドフィルム(銘柄名:カプトン100H、東レ・ディユポン株式会社製)上に、コーティングロッド#4(R.D.スペシャリティーズ社製)を用いて塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を、100℃のオーブンで10分間乾燥後、220℃のオーブンで20分間焼成し、厚さ1.2μmの硬化膜の離型材層を有するポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムについて、下記の評価方法に基づいて離型材層の離型特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0146】
(離型特性としての剥離力(N/cm)の測定条件)
引張試験機(ストログラフ V10−C、(株)東洋精機製作所製)を用いて180度の角度で剥離速度300mm/minの条件で求められる剥離に要する力(N)をテープ幅(cm)で割った値(N/cm)とした。
剥離力測定値が小さいほど少ない力で粘着剤面や樹脂面から剥離する事が出来る。
【0147】
1)剥離力試験(室温)
離型紙の離形剤層表面にアクリル樹脂系粘着テープ(日東電工株式会社製、 No.31B、テープ幅 2.5cm)およびシリコーン樹脂系粘着テープ(株式会社寺岡製作所製、 No.646S、テープ幅 2.5cm)を貼り合わせ、2kgの圧着ローラーで1往復圧着し、圧着から24時間後の離型材層と粘着層との剥離力を上記の測定条件で測定した。
【0148】
2)剥離力試験(130℃)
離型紙の離型材層面にアクリル樹脂系粘着テープ(日東電工株式会社製、 No.31B、テープ幅 2.5cm)およびシリコーン樹脂系粘着テープ(株式会社寺岡製作所製、 No.646S、テープ幅 2.5cm)を貼り合わせ、2kgの圧着ローラーで1往復圧着し、圧着から30分間室温で放置した。つぎに130℃に設定されたオーブン内にて1時間熱履歴を加えた後、30分間放冷し、離型材層と粘着層との剥離力を上記の測定条件で測定した。
【0149】
[実施例2]熱硬化性組成物の調製
以下に示す各成分を乾燥窒素気流下室温で混合溶解した。
合成例2で合成された化合物(A1)の20%溶液 5.00g
合成例4で合成されたフッ素を含む重合体(C)の30.6重量%溶液 0.61g
テクモアVG3101L
(三井化学(株)製、式(222)のエポキシ樹脂) 0.50g
BC 2.00g
【0150】
このようにして得られた溶液を、0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、熱硬化性組成物を調製した。この熱硬化性組成物に基づく硬化膜(離型材層)を有するポリイミドフィルムを得た。当該フィルムについて実施例1と同様の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0151】
[実施例3]熱硬化性組成物の調製
以下に示す各成分を乾燥窒素気流下室温で混合溶解した。
合成例3のポリエステル−ポリイミド(A2) 1.00g
合成例4のフッ素を含む重合体(C)の30.6重量%溶液 0.61g
NMP 4.00g
BC 2.00g
【0152】
このようにして得られた溶液を、0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、熱硬化性組成物を調製した。この熱硬化性組成物に基づく硬化膜(離型材層)を有するポリイミドフィルムを得た。当該フィルムについて実施例1と同様の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0153】
[比較例1]熱硬化性組成物の調製
以下に示す各成分を乾燥窒素気流下室温で混合溶解した。
合成例1で合成された化合物(B)の5%溶液 10.0g
合成例5で合成されたフッ素を含まない重合体の30.9重量%溶液 0.62g
セロキサイド2021P
(ダイセル化学工業(株)製、上記式(D2)のエポキシ樹脂) 0.50g
【0154】
このようにして得られた溶液を、0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、熱硬化性組成物を調製した。この熱硬化性組成物に基づく硬化膜(離型材層)を有するポリイミドフィルムを得た。当該フィルムについて実施例1と同様の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0155】
【表2】

【0156】
ポリアミド酸、またはポリエステル−ポリアミド酸、またはポリエステル−ポリイミドと、フッ素を含む重合体を含む実施例1〜3は粘着テープの剥離力が小さく、容易に剥離できる。これに対し、重合体にフッ素を含まない比較例1は剥離力が大きく、強く粘着している。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の活用法として、例えば、系粘着剤を使用した感圧粘着テープに対する離型紙を挙げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素数2〜100の有機基である。)
で表される構成単位を有する化合物(B)とフッ素を含む重合体(C)を含有する熱硬化性組成物。
【請求項2】
化合物(B)が、少なくとも、ジアミン(b1)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)とを用いて合成される、請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【請求項3】
ジアミン(b1)が、少なくとも4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル][3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル][3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、および式(4)
【化2】

(式中、R4およびR5は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、R6は独立してはメチレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンである。xは独立して1〜6の整数であり、yは1〜10の整数である。)
で表される化合物からなる群から選ばれる1以上であり、
酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)が、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物および3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1以上である、請求項2に記載の熱硬化性組成物。
【請求項4】
化合物(B)100重量部に対して、フッ素を含む重合体(C)を1〜500重量部含む請求項2に記載の熱硬化性組成物。
【請求項5】
下記一般式(1)および(2)
【化3】

(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数2〜100の有機基である。)
で表される構成単位を有する化合物(A1)およびそのイミド化物である化合物(A2)からなる群から選ばれる1以上、ならびに、フッ素を含む重合体(C)を含有する熱硬化性組成物。
【請求項6】
化合物(A2)が、下記一般式(3)および(2)
【化4】

(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数2〜100の有機基である。)
で表される構成単位を有する、請求項5に記載の熱硬化性組成物。
【請求項7】
化合物(A1)が、少なくとも多価ヒドロキシ化合物(a1)とジアミン(a2)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)とを用いて合成される、請求項5または6に記載の熱硬化性組成物。
【請求項8】
多価ヒドロキシ化合物(a1)がエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびジペンタエリスリトール、からなる群から選ばれる1以上であり、
ジアミン(a2)が,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル][3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル][3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンおよび式(4)
【化5】

(式中、R4およびR5は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、R6独立してはメチレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンである。xは独立して1〜6の整数であり、yは1〜10の整数である。)
で表される化合物からなる群から選ばれる1以上であり、
酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)が、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物および3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1以上である、請求項7に記載の熱硬化性組成物。
【請求項9】
多価ヒドロキシ化合物(a1)が1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールからなる群から選ばれる1以上であり、
ジアミン(a2)が3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび式(4)
【化6】

(式中、R4およびR5は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、R6独立してはメチレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンである。xは独立して1〜6の整数であり、yは1〜10の整数である。「アルキル置換されたフェニレン」における、「アルキル」は、炭素数2〜10のアルキルであることが好ましく、炭素数2〜6のアルキルであることが更に好ましい。アルキルの例としては、制限するわけではないが、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。)
で表される化合物からなる群から選ばれる1以上であり、
酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)がピロメリット酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物およびブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1以上である、請求項7に記載の熱硬化性組成物。
【請求項10】
3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、および4,4’−ジアミノジフェニルメタンからなる群から選ばれる1以上のジアミン(b1)と、ピロメリット酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物およびブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1以上の酸無水物基を2つ以上有する化合物(b2)とを用いて合成される 下記一般式(1)
【化7】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素数2〜100の有機基である。)
で表される構成単位を有する化合物(B)、および、フッ素を含む重合体(C)を含有する熱硬化性組成物。
【請求項11】
1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールからなる群から選ばれる1以上の多価ヒドロキシ化合物(a1)と、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、および4,4’−ジアミノジフェニルメタンからなる群から選ばれる1以上のジアミン(a2)と、ピロメリット酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物およびブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1以上の酸無水物基を2つ以上有する化合物(a3)とを用いて合成される、下記一般式(1)および(2)
【化8】

(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数2〜100の有機基である。)
で表される構成単位を有する化合物(A1)、および、そのイミド化物である化合物(A2)からなる群から選ばれる1以上、ならびに、フッ素を含む重合体(C)を含有する熱硬化性組成物。
【請求項12】
フッ素を含む重合体(C)が、一般式X−Y
(式中、Xはラジカル重合性官能基であり、Yはフッ素含有基である。)
で表されるフッ素を有するラジカル重合性モノマー(c1)と、その他のラジカル重合性モノマー(c2)との共重合体である、請求項1〜11のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
【請求項13】
ラジカル重合性官能基Xが、CH2=C(CH3)−COO−またはCH2=CH−COO−であり、
フッ素含有基Yが、任意のメチレンが酸素で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のフルオロアルキル、1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数6〜20のフルオロアリールまたはアリール中の1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数7〜20のフルオロアリールアルキルである、請求項12に記載の熱硬化性組成物。
【請求項14】
フッ素含有基Yが、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、または3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシルである、請求項13に記載の熱硬化性組成物。
【請求項15】
ラジカル重合性官能基Xが、CH2=C(CH3)−COO−、またはCH2=CH−COO−であり、
フッ素含有基Yが、一般式(5)
−[(Rg -SiO1.5)(Rf-SiO1.5n-1] (5)
(式中、Rgは、単結合、または任意のメチレンが酸素に置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキレンであり、
fは、任意のメチレンが酸素で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のフルオロアルキル、1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数6〜20のフルオロアリール、アリール中の1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数7〜20のフルオロアリールアルキル、任意のメチレンが酸素で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状のフッ素を含まないアルキル、炭素数6〜20のフッ素を含まないアリールまたは炭素数7〜20のフッ素を含まないアリールアルキルであり、かつRfの1つ以上はフルオロアルキル、フルオロアリールまたはフルオロアリールアルキルであり、
nは、4〜24の整数である)
で表される、請求項1〜12に記載の熱硬化性組成物。
【請求項16】
フッ素含有基Yが下記式(I)
【化9】

(式(I)中、Rg は、単結合、または任意のメチレンが酸素に置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキレンであり、
f1〜Rf7はそれぞれ独立して、任意のメチレンが酸素で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のフルオロアルキル、1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数6〜20のフルオロアリール、アリール中の1つ以上の水素がフッ素もしくは−CF3で置換された炭素数7〜20のフルオロアリールアルキル、任意のメチレンが酸素で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状のフッ素を含まないアルキル、炭素数6〜20のフッ素を含まないアリールまたは炭素数7〜20のフッ素を含まないアリールアルキルを示し、Rf1〜Rf7の少なくとも1つはフルオロアルキル、フルオロアリールまたはフルオロアリールアルキルである)
で表される、請求項15に記載の熱硬化性組成物。
【請求項17】
gがエチレン、プロピレンまたはブチレンであり、
f1〜Rf7がそれぞれ独立して、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、または3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシルである、請求項16に記載の熱硬化性組成物。
【請求項18】
その他のラジカル重合性モノマー(c2)が架橋性官能基を有する、請求項12〜17のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
【請求項19】
架橋性官能基が、オキシランおよび/またはオキセタンである、請求項18に記載の熱硬化性組成物。
【請求項20】
ラジカル重合性モノマー(c2)がグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、および(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1以上である、請求項18に記載の熱硬化性組成物。
【請求項21】
フッ素を含む重合体(C)が、一般式X−Y
[式中、Xが、CH2=C(CH3)−COO−またはCH2=CH−COO−であり、Yが下記式(I)
【化10】

(式(I)中、Rgがエチレン、プロピレンまたはブチレンであり、
f1〜Rf7がそれぞれ独立して、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、または3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシルである。)]
で表されるフッ素を有するラジカル重合性モノマー(c1)と、
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、および(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1以上であるラジカル重合性モノマー(c2)との共重合体である、請求項1〜11のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
【請求項22】
化合物(A1)およびそのイミド化物である化合物(A2)との合計100重量部に対して、フッ素を含む重合体(C)を1〜500重量部含む請求項1〜21のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
【請求項23】
さらにエポキシ樹脂(D)を含有する、請求項1〜22に記載の熱硬化性組成物。
【請求項24】
エポキシ樹脂(D)が下記式(D1)〜(D4)
【化11】

(式中、nは0〜10の整数である。)
で表される化合物からなる群から選ばれる1以上である、請求項23に記載の熱硬化性組成物。
【請求項25】
さらに酸発生剤(E)を含有する、請求項1〜24に記載の熱硬化性組成物。
【請求項26】
請求項1〜25に記載の熱硬化性組成物を硬化させて形成された硬化膜。
【請求項27】
請求項26に記載の硬化膜を有する剥離紙。
【請求項28】
請求項26に記載の硬化膜を有するフィルム。

【公開番号】特開2008−101138(P2008−101138A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285339(P2006−285339)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】