説明

熱膨張性樹脂組成物

【課題】従来の熱膨張性樹脂組成物とは異なる新規の組成により、火災等の熱にさらされた際に膨張を開始する熱膨張性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
[1](A)エポキシ樹脂、(B)炭素数6〜19のアミノ化合物を含むエポキシ樹脂硬化剤、および(C)ホウ素化合物を少なくとも含むことを特徴とする熱膨張性樹脂組成物。
[2]前記アミノ化合物が、ベンジルアミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、シクロヘキシルアミン、水添メタキシレンジアミン、および3−ラウリルオキシプロピル−1−アミンからなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記[1]に記載の熱膨張性樹脂組成物。
本発明の熱膨張性樹脂組成物は従来の熱膨張性黒鉛を含まなくても膨張することから、従来の材料では適用できなかった用途にも適用範囲を拡大することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築材料の分野においては、従来から耐火性が重要な意味を持っている。近年、樹脂材料の用途拡大に伴い、建築材料として樹脂材料が広く用いられていて、耐火性能を付与された樹脂材料が種々提案されている。熱膨張性機能が付与された樹脂材料は火災等の熱により膨張することから、この樹脂材料を建築材料として使用することにより建物の隙間や開口部を閉塞することができる。これにより火災等による炎や煙を遮断し、延焼を防止することができる。
【0003】
この様な樹脂材料の一例として、軟質ウレタンフォーム、無機系膨張剤および形崩れ防止剤を含む熱膨張性樹脂組成物が提案されている。かかる形崩れ防止剤としてホウ酸、ホウ砂およびほう酸亜鉛を使用できることが知られている。この形崩れ防止剤により熱膨張性防火用組成物により形成された膨張層の形状を保持することができるため、火災等による炎や煙を遮断し、延焼を防止することができるとされる(特許文献1)。
【0004】
また熱可塑性樹脂にリン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛および無機充填剤を配合した熱膨張性樹脂組成物も知られている。この熱膨張性樹脂組成物は難燃性を有し、しかも燃焼後の残渣が充分な形状保持能力を有することにより、顕著な耐火性能を発現するとされる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−348476号公報
【特許文献2】特許第3299899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの従来知られている熱膨張性樹脂組成物は高温の火災等の熱により膨張して炎や煙を遮断し延焼を防止することができる点が優れる。
しかし従来知られているリン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛等を使用する熱膨張性樹脂組成物では製造条件や適用条件が一定の範囲に限定されることからその用途展開が限定される面があった。
本発明の目的は、従来から知られているリン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛等を使用する熱膨張性樹脂組成物とは異なる熱膨張性樹脂組成物を開発し、熱膨張性樹脂組成物の適用できる用途範囲を拡張することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため本発明者らが鋭意検討した結果、エポキシ樹脂を主剤とし、炭素数6〜19のアミノ化合物を硬化剤とし、さらにホウ素化合物を含む樹脂組成物が本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
[1](A)エポキシ樹脂、(B)炭素数6〜19のアミノ化合物を含むエポキシ樹脂硬化剤、および(C)ホウ素化合物を少なくとも含むことを特徴とする熱膨張性樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
また本発明は、
[2]前記アミノ化合物が、炭素数8〜19の鎖状脂肪族アミノ化合物、炭素数6〜19の環状脂肪族アミノ化合物および炭素数6〜19の芳香族アミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記[1]に記載の熱膨張性樹脂組成物を提供するものである。
【0010】
また本発明は、
[3]前記アミノ化合物が、ベンジルアミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、シクロヘキシルアミン、水添メタキシレンジアミン、および3−ラウリルオキシプロピル−1−アミンからなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記[1]または[2]に記載の熱膨張性樹脂組成物を提供するものである。
【0011】
また本発明は、
[4]前記ホウ素化合物(C)が、ホウ酸、メタホウ酸、オルトホウ酸およびこれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱膨張性樹脂組成物を提供するものである。
【0012】
また本発明は、
[5]前記エポキシ樹脂(A)が、2官能のグリシジルエーテル型樹脂、グリシジルエステル型樹脂、多官能のグリシジルエーテル型樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の熱膨張性樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱膨張性樹脂組成物は火災等の熱により膨張することから炎や煙を遮断し延焼を防止することができる。本発明の熱膨張性樹脂組成物は従来の熱膨張性黒鉛を含有しない場合でも火災等の熱により膨張してその効果を発揮するため、従来材料では適用が困難であった用途にも適用範囲を拡張することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の熱膨張性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)炭素数6〜19のアミノ化合物を含むエポキシ樹脂硬化剤、および(C)ホウ素化合物を少なくとも含むものであるが、最初に本発明に使用するエポキシ樹脂(A)について説明する。
本発明に使用するエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、2官能のグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、多官能のグリシジルエーテル型等のものが挙げられる。
【0015】
前記2官能のグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂としては、例えば、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1、6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA型、ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールF型等のものが挙げられる。
【0016】
上記グリシジルエステル型のエポキシ樹脂としては、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、p−オキシ安息香酸型等のエポキシ樹脂が例示される。また、多官能のグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン・フェノール型等のものが挙げられる。
【0017】
本発明に使用するエポキシ樹脂は、2官能のグリシジルエーテル型のものが好ましく、ビスフェノールF型のものであればさらに好ましい。
前記エポキシ樹脂は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0018】
次に本発明に使用する、炭素数6〜19のアミノ化合物を含むエポキシ樹脂硬化剤(B)について説明する。
前記エポキシ樹脂硬化剤(B)としては、例えば、前記エポキシ樹脂に対して重付加型の硬化剤として機能するもの等を挙げることができる。
本発明に使用する前記アミノ化合物は、一級アミノ化合物、二級アミノ化合物、三級アミノ化合物およびこれらの塩等を挙げることができる。
前記アミノ化合物は、一級アミノ化合物、二級アミノ化合物、三級アミノ化合物であることが好ましく、一級アミノ化合物、二級アミノ化合物であればより好ましい。
【0019】
また前記アミノ化合物は、一分子中に1〜5個のアミノ基を有するものが好ましく、1または2個のアミノ基を有するものがより好ましい。
また前記アミノ化合物は、分子内にエーテル結合を有するものを使用することができるが、前記アミノ化合物はこれに限定されない。
【0020】
本発明に使用するアミノ化合物としては、例えば、炭素数8〜19の鎖状脂肪族アミノ化合物、炭素数6〜19の環状脂肪族アミノ化合物および炭素数6〜19の芳香族アミノ化合物等の一種もしくは二種以上を挙げることができる。
【0021】
炭素数8〜19の鎖状脂肪族アミノ化合物としては、例えば、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリ(メチルアミノ)ヘキサン、ラウリルオキシプロピルアミン等、
【0022】
炭素数6〜19の環状脂肪族アミノ化合物としては、例えば、シクロヘキシルアミン、シクロヘキシルジアミン、シクロヘキシルトリアミン、シクロヘキシルテトラミン、水添加メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン等、
【0023】
炭素数6〜19の芳香族アミノ化合物としては、例えば、ベンジルアミン、メタキシレンジアミン、トリス(アミノメチル)ベンゼン、テトラクロロキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、アミノベンジルアミン、ジアミノピリジン、アミノフェノール等の芳香族アミノ化合物等を挙げることができる。
【0024】
本発明に使用するアミノ化合物は、ベンジルアミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、シクロヘキシルアミン、水添メタキシレンジアミン、3−ラウリルオキシプロピル−1−アミン等であれば好ましい。
本発明に使用するアミノ化合物の炭素数が5以下、もしくは20以上の場合には、得られた熱膨張性樹脂組成物が加熱された際に大きく膨張しない場合がある。
【0025】
前記アミノ化合物は各種異性体を含むものであり、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0026】
また本発明の熱膨張性樹脂組成物には前記エポキシ樹脂硬化剤(B)として、炭素数8〜19の鎖状脂肪族アミノ化合物、炭素数6〜19の環状脂肪族アミノ化合物および炭素数6〜19の芳香族アミノ化合物のいずれにも属さないアミノ化合物を併用することもできる。
【0027】
この様なアミノ化合物としては、例えば、ジメチレンジアミン、ジプロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン等の炭素数が7以下または20以上の脂肪族一級アミノ化合物、
【0028】
前記脂肪族一級アミノ化合物のアミノ基に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基等が置換した炭素数が7以下または20以上の脂肪族二級アミノ化合物、
【0029】
トリメチルアミン、トリエチルアミン等の炭素数が炭素数が7以下または20以上の脂肪族三級アミノ化合物、
【0030】
アミノベンゼン、ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族環に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基等が置換することにより炭素数が20以上となる芳香族一級アミノ化合物、
【0031】
前記芳香族一級アミノ化合物のアミノ基に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基等が置換することにより炭素数が20以上となる芳香族二級アミノ化合物、
【0032】
前記芳香族二級アミノ化合物のアミノ基に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基等が置換することにより炭素数が20以上となる芳香族三級アミノ化合物、
【0033】
イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等の複素環アミノ化合物等を挙げることができる。
【0034】
これらのアミノ化合物は各種異性体を含むものであり、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0035】
前記エポキシ樹脂(A)およびエポキシ樹脂硬化剤(B)の配合比率は、前記エポキシ樹脂(A)のグリシジル基1等量に対して、エポキシ樹脂硬化剤(B)のアミノ基に結合する水素原子を基準として0.1〜3等量の範囲であり、0.4〜1.5等量の範囲であれば好ましい。
【0036】
本発明に使用する前記エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂硬化剤(B)とはあらかじめ予備的に反応させたものを使用することもできる。
例えば、ベンジルアミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、シクロヘキシルアミン、水添メタキシレンジアミン、3−ラウリルオキシプロピル−1−アミン等に対して、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型の2官能のグリシジルエーテル型樹脂等を付加したものを使用することができる。
【0037】
次に本発明に使用するホウ素化合物(C)について説明する。
本発明に使用するホウ素化合物としては、ホウ酸、メタホウ酸、オルトホウ酸、次ホウ酸、ボロン酸、ボリン酸、三酸化二ホウ素等のホウ素含有化合物、
ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、オルトホウ酸ナトリウム、次ホウ酸ナトリウム、ボロン酸ナトリウム、ボリン酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、オルトホウ酸カリウム、次ホウ酸カリウム、ボロン酸カリウム、ボリン酸カリウム、メタホウ酸コバルト等のホウ素含有金属塩等が挙げられる。
【0038】
取扱性の面から、本発明に使用するホウ素化合物は、ホウ酸、メタホウ酸、三酸化二ホウ素が好ましく、ホウ酸、三酸化二ホウ素であればさらに好ましい。
前記ホウ素化合物は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0039】
また本発明の熱膨張性樹脂組成物には無機充填剤を併用することができる。
本発明で使用する無機充填剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。
【0040】
前記エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)およびホウ素化合物(C)の配合比率は、前記エポキシ樹脂(A)およびエポキシ樹脂硬化剤(B)の合計100重量部を基準として、ホウ素化合物(C)を20〜250重量部の範囲とすることが好ましく、40〜200重量部の範囲であればさらに好ましい。
ホウ素化合物(C)が250重量部を超えると得られた熱膨張性樹脂組成物の成形が困難になる場合があり、また20重量部未満の場合には熱時の膨張が十分発揮できない場合がある。
【0041】
本発明の熱膨張性樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、更に、有機ホスフィン系、ホスホニウム塩系、アンモニウム塩系等のエポキシ樹脂硬化触媒、フェノール系、イオウ系等の酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料等が添加されてもよい。
【0042】
本発明の熱膨張性樹脂組成物は、上記各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ロール等の混練装置を用いて混練することにより得ることができる。
【0043】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
エポキシ樹脂の主剤1としてビスフェノールF型グリシジルエーテル樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品番号806)を使用した。このビスフェノールF型グリシジルエーテル樹脂はエポキシ等量が160〜170g/等量、粘度が15〜25ポイズ(25℃)、比重が1.2g/cm、室温で粘性のある液体であった。
またエポキシ樹脂硬化剤1として3−ラウリルオキシプロピル−1−アミン(示性式C1225−O−CNH、分子量243)を使用した。
またホウ素化合物として、ホウ酸(US−BORAX社製、化学用試薬特級品)を使用した。
各成分を表1に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行った後、シート状に形状を整えたサンプルを90℃で12時間硬化させて本発明の熱膨張性樹脂組成物1を得た。
【0045】
[膨張倍率・破断点応力の測定]
・膨張倍率:実施例1により得られたサンプルを用いて、電気炉にて600℃で30分間加熱し、膨張倍率を加熱後の厚みの、加熱前の厚みに対する比(加熱後の厚み/加熱前の厚み)としてそれぞれ算出した。
・破断点応力の測定:加熱膨張後の本発明の熱膨張性無機質材料の形状保持性の指標として、加熱後のサンプルを圧縮試験機(カトーテック株式会社製「フィンガーフィーリングテスター」)を用いて、0.25cmの圧子で0.1cm/sの圧縮速度にて破断点応力を測定した。実施例2以降についても同様である。
結果を表1に示す。
なお、前記サンプルの破断点応力が、0.05kgf/cm以上であると、垂直に保持させた状態において耐火試験を行ったとしても、加熱膨張後の本発明の熱膨張性無機質材料の形状が崩れることなく耐火性能を十分に発揮することができる
【実施例2】
【0046】
エポキシ樹脂の主剤1としてビスフェノールF型グリシジルエーテル樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品番号806)を使用した。このビスフェノールF型グリシジルエーテル樹脂はエポキシ等量が160〜170g/等量、粘度が15〜25ポイズ(25℃)、比重が1.2g/cmであり、室温で粘性のある液体であった。
またエポキシ樹脂硬化剤1として3−ラウリルオキシプロピル−1−アミン(示性式C1225−O−CNH、分子量243)を使用した。
またエポキシ樹脂硬化剤2としてヘキサメチレンジアミン誘導体(ジャパンエポキシレジン社製、商品番号FL052)を使用した。粘度が1,500〜3,500mPa・s(25℃)、アミン価が216〜236KOHmg/g、室温で粘性のある褐色の液体であった。
またホウ素化合物として、ホウ酸(US−BORAX社製、化学用試薬特級品)を使用した。
【0047】
各成分を表1に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に本発明の熱膨張性樹脂組成物2を得た。
膨張後の熱膨張性樹脂組成物2の物性を表1に記載した。
【実施例3】
【0048】
実施例2のホウ素化合物として、ホウ酸に替えて酸化ホウ素(三酸化二ホウ素)を使用した以外は実施例2の場合と同様の操作を行った。
各成分を表1に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に本発明の熱膨張性樹脂組成物4を得た。
膨張後の熱膨張性樹脂組成物4の物性を表1に記載した。
【実施例4】
【0049】
実施例2の場合で、エポキシ樹脂硬化剤1として3−ラウリルオキシプロピル−1−アミン(示性式C1225−O−CNH、分子量243)を使用しなかった他は実施例2の場合と同様の操作を行った。
各成分を表1に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に本発明の熱膨張性樹脂組成物4を得た。
膨張後の熱膨張性樹脂組成物4の物性を表1に記載した。
【0050】
【表1】

【0051】
[比較例1]
実施例2の場合で、エポキシ樹脂硬化剤1および2に替えて、エポキシ樹脂硬化剤3としてC18=C17NH(分子量267)のアミノ化合物を使用した以外は実施例2の場合と同様の操作を行った。
実施例2の場合と同様、各成分を表1に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に比較樹脂組成物1を得た。
膨張後の比較樹脂組成物1の物性を表1に記載した。
【0052】
[比較例2]
実施例2の場合で水酸化アルミニウムを併用した以外は実施例2の場合と同様の操作を行った。
各成分を表1に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に比較樹脂組成物2を得た。
比較樹脂組成物2の物性を表1に記載した。
【0053】
[比較例3]
実施例3の場合で水酸化アルミニウムを併用した以外は実施例4の場合と同様の操作を行った。
各成分を表1に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に比較樹脂組成物3を得た。
膨張後の比較樹脂組成物3の物性を表1に記載した。
【0054】
[比較例4]
実施例2の場合でポリリン酸アンモニウムを併用した以外は実施例2の場合と同様の操作を行った。
各成分を表1に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に比較樹脂組成物4を得た。
膨張後の比較樹脂組成物4の物性を表1に記載した。
【0055】
[比較例5]
実施例3の場合でポリリン酸アンモニウムを併用した以外は実施例4の場合と同様の操作を行った。
各成分を表1に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に比較樹脂組成物5を得た。
膨張後の比較樹脂組成物5の物性を表1に記載した。
【実施例5】
【0056】
実施例2のホウ素化合物として、ホウ酸に替えて小粒径のホウ酸を使用した以外は実施例2の場合と同様の操作を行った。
各成分を表2に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に本発明の熱膨張性樹脂組成物5を得た。
膨張後の熱膨張性樹脂組成物5の物性を表2に記載した。
【実施例6】
【0057】
実施例2の場合で、エポキシ樹脂硬化剤2のヘキサメチレンジアミン誘導体(ジャパンエポキシレジン社製、商品番号FL052)を使用しなかった他は実施例2と同様の操作を行った。。
各成分を表2に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に本発明の熱膨張性樹脂組成物6を得た。
膨張後の熱膨張性樹脂組成物6の物性を表2に記載した。
【0058】
[比較例6]
実施例2の場合で、エポキシ樹脂硬化剤2としてエポキシ樹脂硬化剤1の3−ラウリルオキシプロピル−1−アミン(示性式C1225−O−CNH、分子量243)を使用しなかった他は実施例2と同様の操作を行った。。
各成分を表2に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に比較樹脂組成物6を得た。
膨張後の比較樹脂組成物6の物性を表2に記載した。
【0059】
[比較例7]
実施例2の場合で、エポキシ樹脂硬化剤1および2に替えて、エポキシ樹脂硬化剤4として変性ポリアミン(大都産業社製、商品名ダイトクラールD−5067、分子式C1837N、分子量267)のアミノ化合物を使用した以外は実施例2の場合と同様の操作を行った。
実施例2の場合と同様、各成分を表2に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に比較樹脂組成物7を得た。
膨張後の比較樹脂組成物7の物性を表2に記載した。
【0060】
[比較例8]
実施例2の場合で、エポキシ樹脂硬化剤1および2に替えて、エポキシ樹脂硬化剤5として3−n−ブトキシプロピルアミン(示性式C−O−CNH、分子量131)のアミノ化合物を使用した以外は実施例2の場合と同様の操作を行った。
実施例2の場合と同様、各成分を表2に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に比較樹脂組成物8を得た。
膨張後の比較樹脂組成物8の物性を表2に記載した。
【0061】
[比較例9]
実施例2の場合で、エポキシ樹脂硬化剤1および2に替えて、エポキシ樹脂硬化剤6として3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン(示性式C10(C)CH−O−CNH、分子量187)のアミノ化合物を使用した以外は実施例2の場合と同様の操作を行った。
実施例2の場合と同様、各成分を表2に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に比較樹脂組成物9を得た。
膨張後の比較樹脂組成物9の物性を表2に記載した。
【0062】
[比較例10]
実施例2の場合で、エポキシ樹脂硬化剤1および2に替えて、エポキシ樹脂硬化剤7としてラウリルアミン(示性式CH(CH10CHNH、分子量185)のアミノ化合物を使用した以外は実施例2の場合と同様の操作を行った。
実施例2の場合と同様、各成分を表2に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に比較樹脂組成物10を得た。
膨張後の比較樹脂組成物10の物性を表2に記載した。
【0063】
[比較例11]
実施例2の場合で、エポキシ樹脂硬化剤1および2に替えて、エポキシ樹脂硬化剤8としてオクタデシルアミン(示性式C1837NH、分子量270)のアミノ化合物を使用した以外は実施例2の場合と同様の操作を行った。
実施例2の場合と同様、各成分を表2に示した配合割合で、各成分を攪拌機を用いて溶融混合を行い、実施例1の場合と同様に比較樹脂組成物11を得た。
膨張後の比較樹脂組成物11の物性を表2に記載した。
【0064】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の熱膨張性樹脂組成物は従来の熱膨張性黒鉛を使用した組成とは全く異なる新規な組成物であるため、従来の熱膨張性樹脂組成物では対応できなかった耐熱防火用の熱膨張性樹脂組成物として重要であり、建築物、構造物等の区画貫通部の耐熱防火用素材として広く活用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)炭素数6〜19のアミノ化合物を含むエポキシ樹脂硬化剤、および(C)ホウ素化合物を少なくとも含むことを特徴とする、熱膨張性樹脂組成物。
【請求項2】
前記アミノ化合物が、炭素数8〜19の鎖状脂肪族アミノ化合物、炭素数6〜19の環状脂肪族アミノ化合物および炭素数6〜19の芳香族アミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1に記載の熱膨張性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アミノ化合物が、ベンジルアミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、シクロヘキシルアミン、水添メタキシレンジアミン、および3−ラウリルオキシプロピル−1−アミンからなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1または2に記載の熱膨張性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ホウ素化合物(C)が、ホウ酸、メタホウ酸、オルトホウ酸およびこれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1〜3のいずれかに記載の熱膨張性樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂(A)が、2官能のグリシジルエーテル型樹脂、グリシジルエステル型樹脂、多官能のグリシジルエーテル型樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1〜4のいずれかに記載の熱膨張性樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−42715(P2011−42715A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190545(P2009−190545)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】