説明

熱融着ポリウレタン弾性繊維混用緯編地及び該緯編地を使用した衣類、並びに該緯編地の製造方法

【課題】裁断、縫製部分から使用したポリウレタン弾性繊維や非弾性糸が抜け出すことがなく、生地が安定し、変形、目ずれ、わらい、ほつれ、ラン、デンセンやスリップインの起こり難い、さらに着用を繰り返してもカールの発生しにくいポリウレタン弾性繊維混用緯編地を提供する。
【解決手段】熱融着ポリウレタン弾性繊維と、非弾性繊維1,2を混用した平編組織の緯編地を熱セットすることにより、熱融着ポリウレタン弾性繊維3相互で熱融着を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン弾性繊維を混用した緯編地から作られた衣類が、着用中に繰り返し伸長されることにより生じる生地の「変形、目ずれ、わらい」、裁断部より糸が抜け出す所謂「ほつれ」、組織に発生したはしご状の傷やずれ、即ち「ラン、デンセン」、生地が湾曲した状態になる「カール」及び、裁断、縫製した製品の縫い目部分から弾性繊維のみが抜け出し、部分的に生地の伸縮性がなくなる「スリップイン」等を起き難くした緯編地に関するものであり、特に着用時、着用後の「カール」を起き難くした平編組織の緯編地及び、該緯編地を任意のラインで裁断したままの状態、所謂「切りっぱなし」で使用した衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン弾性繊維を混用した緯編地、経編地、織物等のストレッチ生地を使用した衣類は、伸びが大きく、伸長状態からの回復力やフィット性が良いため広く利用されている。しかし、ポリウレタン弾性繊維を混用した生地を裁断したままで伸長、着用を繰り返すと、変形して不均一な生地になり「変形、目ずれ、わらい」、糸が抜け出す「ほつれ」、生地の組織にはしご状の傷やずれが発生した「ラン、デンセン」、生地が湾曲した「カール」等の問題が起き易い。また、縫製部分でも繰り返し伸長によりポリウレタン弾性繊維が縫い目から抜け出す、いわゆる「スリップイン」も起き易い。
【0003】
これらの現象は、ポリウレタン弾性繊維以外の弾性繊維を使用した織編物でも起きるが、伸縮性の強いポリウレタン弾性繊維の場合は特に顕著である。
【0004】
これらの問題の対策として、編地端を折り返したり、別布や伸縮性テープを付けて、縫製したりすることが一般的に行われているが、凸状や段差、縫い目等が肌に直接接触することによる皮膚障害が懸念されたり、肌触り感や着心地といった着用感の低下、外衣にひびきやすいという審美性の低下等の問題が解決されておらず、生地端を縫製しないで「切りっぱなし」のままで使用できる衣類が求められていた。
【0005】
生地端を縫製せずにそのまま衣類にする方法としては、経編地では密度を高くしたり、組織選定等の工夫により「切りっぱなし」で使用できる編地が見出されている(特許文献1)。しかし、特許文献1の経編地は生地全体が厚地になり、薄地の衣類には適用できないという問題や、裁断角度によってはほつれたり、カールしたりするという問題があった。
【0006】
これに対して、緯編地は、経編地に比べ生地全体を薄地にすることができるが、経編地に比べ、密度が低いのが一般的で、通常ほつれやすい。
【0007】
そこで、編地末端に対し、止め編と言われる編組織を選定する方法があるが、止め編は編地末端の組織を変更していることから、任意のラインで裁断したままの状態、所謂「切りっぱなし」で衣類にすることはできない。また、止め編は特殊な編機が必要であることや、生産性を高めることが困難で、低コスト化を図るうえで重大なネックとなる、という問題があった。
【0008】
また、末端編組織のカバーファクターを調整して、末端編組織および該末端編組織を備えた衣類のカール発生を防止する方法が見出されているが(特許文献2)、やはり、編地末端の組織を変更していることから、任意のラインで裁断したままの状態、所謂「切りっぱなし」で衣類にすることはできない。
【0009】
そこで、熱融着ポリウレタン弾性繊維相互を熱融着させることで「変形、目ずれ、わらい」、「ほつれ」、「ラン、デンセン」、「カール」の低減をはかり「切りっぱなし」で衣類にする提案(特許文献3、特許文献4)がなされている。
【0010】
しかし、特許文献3の実施例3および4のように、熱融着ポリウレタン弾性繊維の繊度が非弾性繊維の繊度より大きく、また熱融着ポリウレタン弾性繊維の混用割合が高い場合は、熱融着ポリウレタン弾性繊維の熱融着、高セット性による編地への影響が大きく、カールを抑制することはできるものの、パワー感が強くなる、ゴムライクな風合いになる、コストが高くなるという問題があった。
【0011】
また、特許文献4のように、ほつれ止め機能がある緯編地を用いた切りっぱなし衣類が提案されているが、カールについては触れられていない。
【0012】
更に、編組織をフライス編、パール編等にすることで、平編の表目が生地の表裏側に編成され、編目のまくれる方向が相殺されて、伸長してもカールが発生しにくい緯編地が得られるが、平編の表目が表裏側とも編成されるため編地が厚くなるという問題があり、薄い編地ができる平編組織で任意のラインで裁断したままの状態、所謂「切りっぱなし」のまま使用できる緯編地の要望は極めて高かった。
【0013】
【特許文献1】特開2003−147618号公報
【特許文献2】特開2005−105480号公報
【特許文献3】WO2004/053218号公報
【特許文献4】特開2005−113349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、裁断、縫製部分から使用したポリウレタン弾性繊維や非弾性糸が抜け出すことがなく、生地が安定し、変形、目ずれ、わらい、ほつれ、ラン、デンセンやスリップインの起こり難い、さらに着用を繰り返してもカールの発生しにくいポリウレタン弾性繊維混用緯編地及びその製造方法、該緯編地を直線、曲線、又は曲線と直線の組み合わせなど任意のラインで裁断したままの状態、所謂「切りっぱなし」または「フリーカット」で使用した衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、熱融着ポリウレタン弾性繊維と、非弾性繊維を混用した平編組織の緯編地(以下、天竺編とも言う)を熱セットすることにより、熱融着ポリウレタン弾性繊維相互で熱融着を生じ、強度が低下することなく、目ずれ、わらい、ほつれ、ラン、デンセンやスリップインが生じにくく、さらに22N荷重伸長直後のカール性が50%以下の緯編地を使用することによって、「切りっぱなし」で着用を繰り返しても目ずれ、わらい、ほつれ、ラン、デンセン、スリップインやカールの発生しにくい衣類が得られることを発見し、本発明をなすに至った。
【0016】
即ち、本発明は、
〔1〕衣類の縁の一部又は全部あるいは、衣類の縁でない箇所の一部において、任意のラインで裁断されたままの編地を含む切りっぱなし衣類に用いられる緯編地であって、カール抑制機能を有する平編組織よりなる緯編地、
〔2〕前記緯編地が、(1)熱融着ポリウレタン弾性繊維又は熱融着ポリウレタン弾性繊維と他の繊維との複合糸と、(2)非弾性繊維を混用し、熱融着ポリウレタン弾性繊維相互を熱融着させ、且つ22N荷重伸長直後のカール性が50%以下であることを特徴とする〔1〕記載の緯編地、
〔3〕前記(1)、(2)の混用が、プレーティング編であることを特徴とする〔2〕記載の緯編地、
〔4〕前記熱融着ポリウレタン弾性繊維の繊度が、非弾性繊維の繊度以下であることを特徴とする〔2〕又は〔3〕記載の緯編地、
〔5〕前記熱融着ポリウレタン弾性繊維の混用割合が、5質量%以上30質量%以下であることを特徴とした〔2〕から〔4〕のいずれかに記載の緯編地、
〔6〕〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の緯編地を用いたことを特徴とする衣類、及び
〔7〕(1)熱融着ポリウレタン弾性繊維又は熱融着ポリウレタン弾性繊維と他の繊維との複合糸と、(2)非弾性繊維をプレーティング編した平編組織の緯編地であって、該緯編地を湿熱100〜130℃、又は乾熱130〜220℃の熱セットにより、熱融着ポリウレタン弾性繊維相互を熱融着させることを特徴とする緯編地の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
切りっぱなしの衣類を製造するに当たり、熱融着ポリウレタン弾性繊維と非弾性繊維を混用した平編組織の緯編地を、熱セットによって熱融着ポリウレタン弾性繊維相互を熱融着させることによって組織の固定化を図り、変形、目ずれ、わらい、ほつれ、ラン、デンセン、スリップインが起こりにくく、さらに22N荷重伸長直後のカール性が50%以下の緯編地が得られ、該編地を使用することにより、着用を繰り返しても変形、目ずれ、わらい、ほつれ、ラン、デンセン、スリップインやカールの発生しない衣類が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の緯編地は、衣類の縁の一部又は全部あるいは、衣類の縁でない箇所の一部において、任意のラインで裁断されたままである切りっぱなし衣類に用いられるカール抑制機能がある平編組織(所謂天竺編)の緯編地であり、例えば、該緯編地が熱融着ポリウレタン弾性繊維と非弾性繊維をプレーティング編により混用した天竺編地で、熱セットによって、熱融着ポリウレタン弾性繊維相互を熱融着させ、且つ22N荷重伸長直後のカール性が50%以下の編地が好適に使用できる。
【0019】
ここで、本発明に用いられる熱融着ポリウレタン弾性繊維は、ポリウレタン弾性繊維相互または該ポリウレタン弾性繊維と編地中の共用繊維とを熱融着し、編地の耐解編性が高く、特に切りっぱなし部の耐解編性に高い効果を与える熱融着ポリウレタン弾性繊維であれば、その組成、製造方法等は特に制限されるものはなく、例えば、ポリオールと過剰モル量のジイソシアネートを反応させ、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタン中間重合体を製造し、該中間重合体のイソシアネート基と容易に反応し得る活性水素を有する低分子量ジアミンや低分子量ジオールを不活性な有機溶剤中で反応させポリウレタン溶液(ポリマー溶液)を製造した後、溶剤を除去し糸条に成形する方法や、ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジアミン又は低分子量ジオールとを反応させたポリマーを固化し溶剤に溶解させた後、溶剤を除去し糸条に成形する方法、前記固化したポリマーを溶剤に溶解させることなく加熱により糸条に成形する方法、前記ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させてポリマーを得、該ポリマーを固化することなく糸条に成形する方法、更には、上記のそれぞれの方法で得られたポリマー又はポリマー溶液を混合した後、混合ポリマー溶液から溶剤を除去し糸条に成形する方法等がある。これらの中で特に、(A)ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られる両末端イソシアネート基プレポリマーと、(B)ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとを、反応させて得られる両末端水酸基プレポリマーとを反応させて得られるポリマーを固化することなく溶融紡糸する方法が、溶剤の回収を含まない為、経済的又は環境面で優位である。
【0020】
本発明に用いられる熱融着ポリウレタン弾性繊維の熱融着度は、熱融着力が0.10cN/デシテックス以上が好ましく、0.15cN/デシテックス以上がより好ましい。熱融着力が0.10cN/デシテックス未満であると編地の耐解編性が低く、編地がカールしたり、ほつれたり、ラン、デンセン、スリップイン、目ずれが生じる場合があり、好ましくない。
【0021】
本発明で用いられる熱融着ポリウレタン弾性繊維の太さは、編地の風合いの点から11〜311デシテックスであることが好ましく、より好ましくは15〜156デシテックス、さらに好ましくは22〜78デシテックスである。ポリウレタン弾性繊維が11デシテックスより細いと、熱処理の際に糸が断糸したり、編地の伸長回復性やパワーが低下したりする場合があり、311デシテックスより太いと編立性が低下する他、編地のパワーが強すぎる場合が生じるが、用途により繊度を変更することは何等差しさわりない。
【0022】
本発明で用いられる熱融着ポリウレタン弾性繊維の使用形態としては、熱融着ポリウレタン弾性繊維を単独(所謂ベア糸)で使用してもよいし、カバリング糸、合撚糸、エア交絡糸等の、他の繊維との複合糸を使用しても良い。ただ、ポリウレタン弾性繊維をベア糸で使用する方が、熱融着しやすく、コストもかからないという利点があり好ましい。
【0023】
上記複合糸に使用される他の繊維としては、特に制限はなく、例えば木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の化学合成繊維等を使用することができる。
【0024】
本発明に用いられる非弾性繊維としては、特に制限はなく、例えば木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の化学合成繊維等のフィラメント糸、ステープル糸、ステープル混紡糸など任意の糸を使用することができるが、少なくとも1種類の熱可塑性合成繊維を含む非弾性繊維を使用することが好ましい。
【0025】
なお、ほつれ抑制やカール発生防止に好ましい非弾性繊維として、追撚加工等によりフィラメントや単糸の収束を強くしたものがあげられる。理由については、繊維間摩擦が少なく滑りやすいことで、編地を伸長した後に元の編目形状に回復しやすいこと、編地を切りっぱなしした際に切断した繊維の拡がりが少ないことが考えられる。また、S撚、Z撚の糸を1コースおきに交互に使用し、夫々の繊維に残るトルクを互いに打ち消しあうように編地に配置する方法なども効果的である。さらに、熱融着ポリウレタン弾性繊維と共用する非弾性繊維については、該熱融着ポリウレタン弾性繊維が熱融着する温度において塑性変化を生じ、熱セットされたり、繊維の表面が軟化する熱可塑性合成繊維の使用が、編目の形態安定性が高くなり、ほつれ抑制やカール発生防止に効果がある。ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ乳酸繊維など通常の熱可塑性合成繊維を使用することで効果が発揮できる。
【0026】
非弾性繊維の太さは、使用用途にもよるが、ステープル糸の場合、綿番手8〜120番、特に30〜80番が好ましく、フィラメント糸の場合、12〜660デシテックス、特に22〜167デシテックスが好ましいが、用途により繊度を変更することは何等差しさわりない。これらの非弾性繊維は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
非弾性繊維の混用の形態は、特に制限するものではないが、2種類以上の非弾性繊維を合撚、混紡して使用しても良いし、引き揃えて編み込んでも良い。また、非弾性繊維の種類により、例えば、吸湿性、抗菌性、消臭性、保温性、冷感性など編地に様々な機能や風合いを与えることができる。
【0028】
また、非弾性繊維のフィラメント数は、特に制限されるものはないが、フィラメント数が多くなるとカール発生防止に寄与が大きくなったり、風合いが柔らかくなり、フィラメント数が少ないとほつれ抑制に寄与が大きくなったり、こしのある編地風合いが得られるなど、企画に応じて使用することができる。
【0029】
ポリウレタン弾性繊維の繊度は、非弾性繊維の繊度以下であることが好ましい。このようにすることで、風合いを向上させることができ、フィット感、ストレッチ感、パワー感の良好な編地として有用である。
【0030】
非弾性繊維と熱融着ポリウレタン弾性繊維の混用割合は、編地全体に対して該ポリウレタン弾性繊維を5〜30質量%含むのが好ましい。30質量%を超えるとパワー感が強くなり過ぎたり、ゴムライクな風合いになる。5質量%未満であると編地中でのポリウレタン弾性繊維の収縮力が小さくなり、カールが抑制されるが、編地の伸長回復性が低下する。
【0031】
なお、本発明のポリウレタン弾性繊維の混用割合は、熱融着ポリウレタン弾性繊維が単独で使用される場合は(1)式で、熱融着ポリウレタン弾性繊維が他の繊維との複合糸の場合は(2)式で計算した値である。
((PD/DR1)/(PD/DR1+D1))×100 (1)式
ここで、PDはポリウレタン弾性繊維の総繊度(ポリウレタン弾性繊維の繊度の合計値、デシテックス)を、DR1はポリウレタン弾性繊維が編成される際の編込倍率(倍)を、D1は混用される非弾性繊維の総繊度(混用される非弾性繊維の繊度の合計値、デシテックス)を示す。
((PD/DR2)/(PD/DR2+D1+D2))×100 (2)式
ここで、PDはポリウレタン弾性繊維の総繊度(ポリウレタン弾性繊維の繊度の合計値、デシテックス)を、DR2は複合糸作製の際のポリウレタン延伸倍率(倍)を、D1は混用される非弾性繊維の総繊度(混用される非弾性繊維の繊度の合計値、デシテックス)を、D2はポリウレタン弾性繊維と複合される他の繊維の総繊度(ポリウレタン弾性繊維と複合される他の繊維の繊度の合計値、デシテックス)を示す。
【0032】
本発明の緯編地の製造方法は、熱融着ポリウレタン弾性繊維(その複合糸も含む)と非弾性繊維を混用した天竺編で得ることができる。熱融着ポリウレタン弾性繊維と非弾性繊維との編み込み方法は、編目中での熱融着ポリウレタン弾性繊維と非弾性繊維の位置が調整可能で安定させることができ、熱融着ポリウレタン弾性繊維相互を全てのループで交差、接触させることができるプレーティング編が好ましく、プレーティング編することで得られた編地は、熱処理により熱融着ポリウレタン弾性繊維相互を熱融着させることで、編地のすべてのループを固定することができ、編地全体で、カール、ほつれが抑制され、該編地を直線、曲線、又は曲線と直線の組み合わせなど任意のラインで裁断したままの状態、所謂「切りっぱなし」または「フリーカット」で使用した衣類として好適に使用できる。
【0033】
編機については、緯編地を作製するのに用いられる通常の編機を使用することができ、常法に従って編地を作成することができる。一例として、シングルシリンダーの丸編機を用いる場合、ゲージは12〜42Gが好ましく、編針にはプレーティング専用針を使うことが好ましい。
【0034】
非弾性繊維の編み込み糸長は、非弾性繊維の繊度にもよるが、本発明に使用される繊維の繊度、編機の種類、編機のゲージの範囲、また薄地から中厚地の生地を得る目的からして、10〜100cm/100Wであることが好ましく、より好ましくは15〜94cm/100Wである。ここで編み込み糸長とは、編地の任意のウェールに印を付け、そこから100ウェール目に印をつけ、解編し、初荷重(0.02kgf)を掛け、印間の長さを測定した値である。
【0035】
なお、編目を調整することでも、ほつれやカールの抑制効果を大きくこともできる。具体的には、非弾性繊維のカバーファクターを調整することで、非弾性繊維の編目と熱融着ポリウレタン弾性繊維又は熱融着ポリウレタン弾性繊維と他の繊維との複合糸の編目の大きさや形状を揃えることで、ほつれやカールの抑制効果の大きい編地を得ることができる。通常、非弾性繊維のカバーファクターの範囲は0.1以上あればよいが、好ましくは0.35〜1.10であり、さらに、0.40〜1.00が一層好ましい。
【0036】
非弾性繊維のカバーファクターが0.1未満の場合、編地に空隙が多くなり身体をカバーする用途には適さず、カバーファクターが高すぎると分厚い編地となり軽量性を求める衣料用途には適さない。また、該カバーファクターが0.35未満であると、編地の伸びを戻した状態では、非弾性繊維の編目が大きく、熱融着ポリウレタン弾性繊維又は熱融着ポリウレタン弾性繊維と他の繊維との複合糸の編目が小さくなり、互いの編目が不ぞろいになりやすく、ほつれやカールの抑制効果が低下する傾向がある。一方、カバーファクターを大きくすると互いの編目は揃いやすい傾向になるが、1.10を超えると繊維の量が大きくなりすぎ厚手感が強くなったり、重たくなったり、コスト高となる点で不都合が生じる。非弾性繊維のカバーファクターの範囲が0.40〜1.00であれば、前記した様々な問題を解決できるものであり特に好ましい。
【0037】
本発明のカバーファクターは(3)式で計算した値である。
CF=1/(L/100×√(5905/D1)) (3)
ここで、CFはカバーファクターを、Lは非弾性繊維の編み込み糸長(cm/100W)を、D1は非弾性繊維の繊度(デシテックス)を示す。
【0038】
尚、熱融着ポリウレタン弾性繊維又は熱融着ポリウレタン弾性繊維と他の繊維との複合糸の編み込み倍率及び編み込み糸長は、編地物性や風合いなど編地に求められる条件に応じて設定すればよい。
【0039】
このようにして、緯編地を編成した後、熱セットにより、編地を構成する熱融着ポリウレタン弾性繊維相互を熱融着させる。熱セットの方法は、乾熱セット又は湿熱セットのいずれを採用してもよい。尚、セット後の編地において、熱融着ポリウレタン弾性繊維又は熱融着ポリウレタン弾性繊維と他の繊維との複合糸と、非弾性繊維の編目が揃うと非弾性繊維の動きを制御することが容易になり、ほつれやカールの抑制に効果的である。
【0040】
乾熱セットを行なう場合、例えば編地を開反しピンテンターのようなセット機を使い、熱風により熱固定することで行なうことができる。また編地を開反せず袋状や筒状などの状態で熱セットすることも何等問題なく実施できる。この場合、セット温度は130〜220℃、特に140〜200℃が好ましく、セット時間は10〜180秒、特に20〜120秒が好ましい。
【0041】
一方、湿熱セットの方法は、編地を型板に入れた状態で常法により所定圧力の飽和蒸気により熱固定することにより行なうことができる。この場合、セット温度は100〜130℃、特に105〜125℃が好ましく、セット時間は2〜120秒、特に5〜60秒が好ましい。
【0042】
セット温度が乾熱220℃又は湿熱130℃よりも高いと、製品の風合い、染色堅牢度等に悪い影響を与え好ましくない。乾熱130℃又は湿熱100℃より低いと熱融着ポリウレタン弾性繊維が熱融着しない、編地の寸法、性量が安定しない場合が生じる。
【0043】
染色については、常法で行なうことができるが、熱融着ポリウレタン弾性繊維又は熱融着ポリウレタン弾性繊維と他の繊維との複合糸が熱融着により固定化されているためランが発生しにくいので、柔軟効果の高い柔軟剤を使用したり、柔軟剤の使用量を多くしたりして、強い柔軟処理を行なうことができる。例えば柔軟処理を強化すると、非弾性繊維のすべりがよくなり、カールが抑制できるので好ましい。
【0044】
また、本発明の緯編地は、22N荷重伸長直後のカール性が50%以下であることが好ましい。22N荷重伸長直後のカール性とは、製品の着用、つまり編地の伸長を繰り返した後の編地切りっぱなし部のカールの発生の程度を示した指標で、数値が小さいほどカール発生が少なく、切りっぱなし製品に適した編地であることを表している。なお、カール性の測定方法は後述の通りである。
【0045】
さらに、裁断時のカール性についても評価した。裁断時のカールは22N荷重伸長直後のカールに比べて当然発生量は少なくなる。なお、本発明の目的は、カールやほつれの抑制効果があり、着用や洗濯などの実用に耐える直線または曲線で裁断された切りっぱなし製品を提供することであるが、本発明の編地を裁断して裁断部を縫製する製品においても、その製造工程である裁断工程で、カールの発生は極めて軽減されており、作業性、生産性、寸法安定性などにおいて著しい効果を発揮するものである。
【0046】
本発明の緯編地は、熱融着ポリウレタン繊維相互を熱融着させることで組織を固定化させ、裁断部分を切りっぱなしにしても、カール、ほつれ、ラン等が生じることがなく、縫製時の手間を省くことができる。更に着用を繰り返してもカール、ほつれ、ランの発生しない薄い緯編地であるため、裁断部分を始末する手間を省くことができる。
【0047】
また、本発明の緯編地を切りっぱなしで用いたインナーウェアは、外衣にひびきにくく審美性にも優れ、肌に着用痕が付かないため、各種インナーウェア、ニット衣類用として好適に用いることができる。また、本発明の緯編地を切りっぱなしでニット衣類の少なくとも一部分に用い、ショーツ、シャツ、キャミソール、スリップ、ボディスーツ、ブリーフ、トランクス、肌着、ガードル、ブラジャー、スパッツ、腹巻等の切りっぱなし衣類を提供することができる。
また、本発明の緯編地を切りっぱなしでニット衣類の少なくとも一部分に用いて、水着、トレーニングウェア、レオタード、スキー・野球・サッカーなど様々な競技用スポーツウェアに、機能性かつスポーティな印象を付与することができる。
さらに、本発明の緯編地を切りっぱなしでニット衣類の少なくとも一部分に用いて、Tシャツ、ジャケット、セーター、ベストなどの切りっぱなし衣類としたり、手袋、帽子、パジャマ、ガウンなどでも従来にない機能、デザイン、印象の衣類を提供することができる。
その他、消費者など製品使用者の好みにより、衣類などの製品を裁断して使用したり、丸、ダイヤ、ハート、星型等の任意の形状で製品の一部を切り抜いて好みのお洒落を楽しんだり、ファッション性を付与した状態で使用することもできる。
なお、従来の縫製した衣類と比較しても、従来の非熱融着ポリウレタン弾性繊維を使用した衣類と比較しても、消費耐久性の点で何ら問題なく安心して使用することができる。(消費耐久性とは、衣類を利用する消費者が着用、洗濯、乾燥、保管など通常の使用に耐える物性を所有しているかどうかを表現した特性である。)
【0048】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0049】
[実施例1]
丸編機(福原精機製作所製、釜径:38インチ、ゲージ:28、針数:3336本、給糸口数:100口)で図1の編成組織図に基づき緯編地を編成した。図1中、1は追撚加工した東レ(株)製6ナイロン仮撚加工糸78デシテックス52フィラメントS撚、2は追撚加工した東レ(株)製6ナイロン仮撚加工糸78デシテックス52フィラメントZ撚、3は熱融着ポリウレタン弾性繊維44デシテックス、4はシリンダー針、F1、F2はそれぞれの給糸口である。ナイロン仮撚加工糸の編み込み糸長は、25.6cm/100W、ポリウレタン弾性繊維の編み込み倍率は2.4倍に設定した。この編組織において、ナイロン仮撚糸1又は2とポリウレタン弾性繊維3をプレーティング編にて編み込み、シリンダー針4で全針ニット編を行い、ベア天竺編地を得た。得られた編地中のポリウレタン弾性繊維の混用割合は、19.0質量%で、非弾性繊維のカバーファクターは0.45であった。
【0050】
得られた編地を開反して、プリセット工程として、ピンテンターを使用し185℃で60秒間乾熱処理した。ついで常法で染色加工した後、ファイナルセット工程として、ピンテンターを使用し160℃で30秒間処理をした。
【0051】
熱融着度の評価、裁断時のカール性、22N荷重伸長直後のカール性、洗濯による傷み評価・カール評価、着用試験による編地のほつれ・カール評価については、下記の通り実施し、結果を表1に示す。
【0052】
<熱融着度の評価>
編地をコース方向にカットし、カット部を解編して、ポリウレタン弾性繊維またはポリウレタン弾性繊維を含む複合糸の解編張力を測定した。解編速度は100mm/分とし、1分間の平均張力を測定した。ポリウレタン弾性繊維または複合糸中のポリウレタン弾性繊維の解編が困難な場合は、熱融着良好として、連続した解編が可能な場合は、熱処理後の平均解編張力を測定し、続いて、熱処理後の平均解編張力(cN)をポリウレタン弾性繊維の初期繊度(デシテックス)で除して熱融着力(cN/デシテックス)とし、下記の評価を行なった。
〈評価基準〉
熱融着良好:ポリウレタン弾性繊維または複合糸中のポリウレタン弾性繊維の解編が困難な場合(熱融着力は解編不可能とした。)、もしくは熱融着力が0.10cN/デシテックス以上。
熱融着不良:熱融着力が0.10cN/デシテックス未満。
【0053】
<裁断時のカール性>
タテ10.0cm×ヨコ10.0cmの試料片を採取し、温度20±2℃、相対湿度65±2%で4時間静置後、カールした部分の平面への投影寸法(図2の6の寸法)の最小値を測定して、下記の式によってカール性を計算した。
裁断時のカール性(%)=(元の寸法−4時間放置後投影寸法)/元の寸法×100
裁断時のカール性を下記の4段階で評価した。尚、△と×は、裁断段階で既にカールの発生が大きく、切りっぱなしで使用することは勿論、縫製段階でもカールした部分を元に戻し、押さえながら縫製する必要があり手間がかかる他、不良品の発生にもつながり、作業効率、生産性を低下するものである。◎または○は裁断段階でカール抑制されており、切りっぱなしで使用せずとも、縫製段階でそのまま縫合できるなど作業効率、生産性向上の点で好ましい。
〈評価基準〉
◎:カール性0%
○:カール性0%超10%以下
△:カール性10%超50%以下
×:カール性50%超
【0054】
<22N荷重伸長直後のカール性>
タテ2.5cm×ヨコ16cmの試料片を採取し、把握長10cmで引張試験機に把持し、伸長速度300mm/分で試料片をヨコ方向に定速伸長し、応力が22Nになるまで1回伸長する。ついで荷重を取り除き、伸長直後の試料のタテ方向の平面への投影寸法(図2の6の寸法)の最小値を測定して、下記の式によってカール性を計算した。測定時の環境は温度20℃、相対湿度65%であった。
22N荷重伸長直後のカール性(%)=(伸長前寸法−伸長後タテ方向投影寸法)/伸長前寸法×100
22N荷重伸長直後のカール性を下記の4段階で評価した。尚、△と×はカールの発生が大きく、試料が丸まってしまうものであり、◎又は○がカール抑制されており好ましい。
〈評価基準〉
◎:カール性25%以下
○:カール性25%超50%以下
△:カール性50%超75%以下
×:カール性75%超、または試料裁断直後にカール発生。
【0055】
<洗濯による傷み評価・カール評価>
タテ5cm×ヨコ40cmの編地サンプルを取り、編地のウェール方向に対して40°の切り込みを5箇所入れて、タテ方向の裁断面を合わせて筒状に縫製した後、家庭用2槽式洗濯機((株)東芝製 商品名:GINGA4.5)を使用して下記条件にて洗濯を行った。
洗濯(300分)→遠心脱水(5分)→注水すすぎ(10分)→遠心脱水(5分)
液温:常温(25℃),水流:強水流
洗剤:花王(株)製、商品名:アタック,水量:30リットル
洗濯水1リットルに対して洗剤1.3g使用
負荷布:綿とポリウレタン弾性繊維混用ベア天竺編地1.0kg分
次に、編地のカールの有無と、編地のヨコ方向に裁断した編地端とウェール方向に対して40°に裁断した編地端のほつれ程度を観察し、ほつれ程度は下記の4段階で評価した。尚、△と×は裁断面より糸端が飛び出しており、裁断ラインが凹凸になる外観の悪いものであり、◎又は○が裁断面から糸端の飛び出しもなく、外観が良く、洗濯耐久性の点で好ましい。
〈評価基準〉
◎:傷みが認められず、洗濯前との差なし。耐久性良好。
○:やや傷みが認められるが、糸端の飛び出しはなし。耐久性良好。
△:傷みが認められ、糸端が飛び出している。耐久性不良。
×:傷みが激しく、裁断面の編地組織が崩れている。耐久性不良。
また、カールについては、洗濯後の試料のカール発生の有無を目視で評価した。
【0056】
<着用試験による編地のほつれ・カール評価>
図3のパターン図に基づき、11のラインが編地ウェール方向に対して90°近傍になるように、編地を裁断し、7と9、8と10(7〜10は縫製部)を重ね合わせて縫製して、11のウエスト部、12のヒップ部、13のビキニ部、14のクロッチ部はいずれも裁断したままの切りっぱなしとして、ショーツを作製した。
尚、各部の編地ウェール方向に対する裁断角度とラインは以下の通りであった。
ウエスト部:90°近傍の曲線
ヒップ部 :40°〜60°の曲線
ビキニ部 :20°〜90°の曲線
クロッチ部:0°近傍の曲線
作製したショーツを着用、洗濯、乾燥を3日間繰り返した。3日間着用後の編地端のほつれ程度と着用中、着用後のカール発生状況を観察し、下記の4段階で評価した。尚、傷み評価については、△と×は裁断面より糸端が飛び出しており、裁断ラインが凹凸になる外観の悪いものであり、◎又は○が裁断面から糸端の飛び出しもなく、外観が良く、洗濯耐久性の点で好ましい。
〈傷み評価基準〉
◎:傷みが認められず、着用前との差なし。耐久性良好。
○:やや傷みが認められるが、糸端の飛び出しはなし。耐久性良好。
△:傷みが認められ、糸端が飛び出している。耐久性不良。
×:傷みが激しく、裁断面の編地組織が崩れている。耐久性不良。
カールの評価については、△と×は着用後、着用中にカールが発生しており、洗濯してもカールが解消しないもので、カール部が折れることで外衣に折れた箇所が見えたり、着用感の悪いものであり、◎又は○が着用中にカールの発生がなく、外衣にひびくことがなく、着用後にカールしても、洗濯をするとカールが解消するので、衣類として好ましい。
〈カール評価基準〉
◎:着用中、着用後ともカールの発生はなし。耐久性良好。
○:着用直後にカールが見られたが、洗濯、乾燥により解消した。耐久性良好。
△:着用後にカールが発生、洗濯、乾燥しても解消しない。耐久性不良。
×:着用中にカールが発生、洗濯、乾燥しても解消しない。耐久性不良。
【0057】
なお、カール抑制機能を有するとは、裁断時のカール性、22N荷重伸長直後のカール性、及び着用試験でのカール評価が、◎若しくは○であり、かつ、洗濯試験でカールの無い状態をいうものとする。
【0058】
[実施例2]
図1中、1を東レ(株)製6ナイロン仮撚加工糸78デシテックス24フィラメントS撚、2を東レ(株)製6ナイロン仮撚加工糸78デシテックス24フィラメントZ撚とした以外は、実施例1と同様の編地を編成し、同様の加工を行った後、同様の試験を行った。結果を表1に示す。得られた編地中のポリウレタン弾性繊維の混用割合は、19.0質量%で、非弾性繊維のカバーファクターは0.45であった。
【0059】
[実施例3]
実施例1の熱融着ポリウレタン弾性繊維を33デシテックスとした以外は、実施例1と同様の編地を編成し、同様の加工を行った後、同様の試験を行った。結果を表1に示す。得られた編地中のポリウレタン弾性繊維の混用割合は、15.0質量%で、非弾性繊維のカバーファクターは0.45であった。
【0060】
[実施例4]
実施例1の熱融着ポリウレタン弾性繊維を78デシテックス、プリセット温度を190℃とした以外は、実施例1と同様の編地を編成し、同様の加工を行った後、同様の試験を行った。結果を表1に示す。得られた編地中のポリウレタン弾性繊維の混用割合は、29.4質量%で、非弾性繊維のカバーファクターは0.45であった。
【0061】
[実施例5]
実施例1の熱融着ポリウレタン弾性繊維を78デシテックス、図1中、1及び2を三菱レイヨン・テキスタイル(株)製常温カチオン可染ポリエステル33デシテックス12フィラメントとナイロン78デシテックス68フィラメントのタスラン加工糸(ナイロンの混用率70%)、該合撚糸の編み込み糸長を27.6cm/100W、熱融着ポリウレタン弾性繊維の編み込み倍率を2.8倍とした以外は、実施例1と同様の編地を編成し、同様の加工を行った後、同様の試験を行った。結果を表1に示す。得られた編地中のポリウレタン弾性繊維の混用割合は、20.1質量%で、非弾性繊維のカバーファクターは0.50であった。
【0062】
[実施例6]
実施例1の図1中、1及び2を旭化成せんい(株)製常温カチオン可染ポリエステル仮撚加工糸84デシテックス30フィラメントS撚にした以外は実施例1と同様の編地を編成し、同様の加工を行った後、同様の試験を行った。結果を表1に示す。得られた編地中のポリウレタン弾性繊維の混用割合は、17.9質量%で、非弾性繊維のカバーファクターは0.47であった。
【0063】
[実施例7]
実施例1の図1中、1を日清紡績(株)製綿糸60番手S撚、2を日清紡績(株)製綿糸60番手Z撚、該綿糸の編み込み糸長を27.6cm/100W、熱融着ポリウレタン弾性繊維の編み込み倍率を2.9倍、プリセット温度を180℃にした以外は実施例1と同様の編地を編成し、同様の加工を行った後、同様の試験を行った。結果を表1に示す。得られた編地中のポリウレタン弾性繊維の混用割合は、13.4質量%で、非弾性繊維のカバーファクターは0.47であった。
【0064】
[実施例8]
実施例1の熱融着ポリウレタン弾性繊維を156デシテックス、プリセットを195℃で120秒間とした以外は、実施例1と同様の編地を編成し、同様の加工を行った後、同様の試験を行った。結果を表1に示す。得られた編地中のポリウレタン弾性繊維の混用割合は、45.5質量%で、非弾性繊維のカバーファクターは0.45であった。
【0065】
[実施例9]
実施例1のプリセットを175℃で30秒間にした以外は実施例1と同様の編地を編成し、同様の加工を行った後、同様の試験を行った。結果を表1に示す。得られた編地中のポリウレタン弾性繊維の混用割合は、19.0質量%で、非弾性繊維のカバーファクターは0.45であった。
【0066】
[実施例10]
実施例7の図1中、3を熱融着ポリウレタン弾性繊維17デシテックスとして編み込み倍率2.4倍にした以外は実施例7と同様の編地を編成し、同様の加工を行った後、同様の試験を行った。結果を表1に示す。得られた編地中のポリウレタン弾性繊維の混用割合は、6.6質量%で、非弾性繊維のカバーファクターは0.47であった。
【0067】
[実施例11]
実施例7の図1中、1、2をそれぞれ日清紡績(株)製綿糸40番手S撚、Z撚、3を熱融着ポリウレタン弾性繊維17デシテックスとして編み込み倍率2.4倍にした以外は実施例7と同様の編地を編成し、同様の加工を行った後、同様の試験を行った。結果を表1に示す。得られた編地中のポリウレタン弾性繊維の混用割合は、4.5質量%で、非弾性繊維のカバーファクターは0.57であった。
【0068】
[比較例1]
実施例1の図1中、3を一般的なポリウレタン弾性繊維33デシテックス(日清紡績(株)製モビロンPタイプ糸)に設定した以外は実施例1と同様の編地を編成し、同様の加工を行った後、同様の試験を行った。結果を表1に示す。得られた編地中のポリウレタン弾性繊維の混用割合は、15.0質量%で、非弾性繊維のカバーファクターは0.45であった。
【0069】
[比較例2]
図1の1、2を日清紡績(株)製綿糸60番手Z撚、3を一般的なポリウレタン弾性繊維33デシテックス(日清紡績(株)製モビロンPタイプ糸)にした以外は実施例10と同様の編地を編成し、同様の加工を行った後、同様の試験を行った。結果を表1に示す。得られた編地中のポリウレタン弾性繊維の混用割合は、13.4質量%で、非弾性繊維のカバーファクターは0.47であった。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例1〜10の編地は、熱融着により組織が固定化されており、洗濯、着用試験でも切りっぱなし部分の傷みはほとんど認められず、しかも、いずれの試験でもカールの発生しにくいものであった。また、ショーツなどの製品を作製するにあたり、縫製部のカールを広げたり、押さえたりする手間が省けたり、ランが発生しにくいため縫製が素早く、確実に実施できた。また、薄い編地で切りっぱなしの製品を作製することができ、外衣にひびかない、着用痕が肌に残らない、皮膚刺激性の低い、肌触り感や着心地といった着用感のよい、洗濯、着用を繰り返してもほつれ、カールの発生しない耐久性の高い切りっぱなしの衣類が得られた。
特に実施例1、3、4は非弾性繊維に追撚加工したナイロン仮撚糸を使用しているので、カール抑制効果が高く、更に実施例1、3は熱融着ポリウレタン弾性繊維の繊度が細く、熱融着ポリウレタン弾性繊維の混率も低いことより、やわらかい伸びと薄い編地が作製することができ、着用感がよく、肌に動きにフィットする着用感のよい、カールの発生しない切りっぱなしの衣類として最適であった。
ただ、実施例8は、熱融着により組織が固定化されており、洗濯、着用試験でも切りっぱなし部分の傷みはほとんど認められず、しかも、いずれの試験でもカールの発生しにくいものではあったが、ポリウレタン弾性繊維の混率が高いためにパワー感が強く、またゴムライクな風合いになり、さらにトータル繊度が高くなることで分厚く、重量感の強い編地となり、薄く肌に優しくフィットする用途には適さない編地であった。
実施例9の編地は、プリセット前の編地の解編張力が0.8cNで、プリセット後の編地の解編張力は7.1cNであり、プリセットにより約9倍にあがり、適度な熱融着力を持ち、洗濯、着用試験でも切りっぱなし部分の耐ほつれ、耐カールなど消費耐久性は良好で、衣類として充分に使用できるものであった。
実施例7、実施例10、実施例11は熱融着により組織が固定化されて、さらに綿糸のS撚、Z撚を交互に使用していることから、該綿糸のニードルループがウェール方向に対して左右に傾き、コース密度が高くなり、ニードルループの動きが抑制されており、カール、ほつれが発生しにくい好適な編地であった。尚、実施例11はPUの混用割合が低いため伸長回復性の低い編地であった。
一方、比較例1、2は熱融着しておらず、洗濯、着用試験とも切りっぱなし部の傷みが大きく、且つどの試験においてもカールが大きく、切りっぱなしの衣類として使用できるものではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】天竺編の組織図である。
【図2】伸長後のカール性測定用試料のタテ方向断面図である。
【図3】着用試験用ショーツのパターン図である。
【符号の説明】
【0073】
1 非弾性繊維
2 非弾性繊維
3 ポリウレタン弾性繊維
4 シリンダー針
F1 給糸口
F2 給糸口
5 カール性測定用試料
6 投影寸法
7 縫製部
8 縫製部
9 縫製部
10 縫製部
11 ウエスト部
12 ヒップ部
13 ビキニ部
14 クロッチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類の縁の一部又は全部あるいは、衣類の縁でない箇所の一部において、任意のラインで裁断されたままの編地を含む切りっぱなし衣類に用いられる緯編地であって、カール抑制機能を有する平編組織よりなる緯編地。
【請求項2】
前記緯編地が、(1)熱融着ポリウレタン弾性繊維又は熱融着ポリウレタン弾性繊維と他の繊維との複合糸と、(2)非弾性繊維を混用し、熱融着ポリウレタン弾性繊維相互を熱融着させ、且つ22N荷重伸長直後のカール性が50%以下であることを特徴とする請求項1記載の緯編地。
【請求項3】
前記(1)、(2)の混用が、プレーティング編であることを特徴とする請求項2記載の緯編地。
【請求項4】
前記熱融着ポリウレタン弾性繊維の繊度が、非弾性繊維の繊度以下であることを特徴とする請求項2又は3記載の緯編地。
【請求項5】
前記熱融着ポリウレタン弾性繊維の混用割合が、5質量%以上30質量%以下であることを特徴とした請求項2から4のいずれかに記載の緯編地。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の緯編地を用いたことを特徴とする衣類。
【請求項7】
(1)熱融着ポリウレタン弾性繊維又は熱融着ポリウレタン弾性繊維と他の繊維との複合糸と、(2)非弾性繊維をプレーティング編した平編組織の緯編地であって、該緯編地を湿熱100〜130℃、又は乾熱130〜220℃の熱セットにより、熱融着ポリウレタン弾性繊維相互を熱融着させることを特徴とする緯編地の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−182650(P2007−182650A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2964(P2006−2964)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】