説明

熱間圧延装置および熱間圧延方法

【課題】たとえ未圧延の被圧延金属材を熱間圧延する場合であっても、被圧延金属材の厚みに応じて被圧延金属材を最大限に圧下でき、これによって、所望の厚みに被圧延金属材を熱間圧延するまでに必要な熱間圧延処理の回数を低減して、熱間圧延後の金属材を用いた金属製品の生産効率を向上できること。
【解決手段】本発明の一態様にかかる熱間圧延装置1は、被圧延金属材の一例であるスラブ15bを熱間圧延する可逆回転圧延機2と、制御部7とを備える。制御部7は、1パス目の正圧延処理の際に、スラブ15bの圧延前の厚みd2に応じて設定した最大圧下量まで圧延ロール3aを圧下して、スラブ15bのうちの先端部以外を熱間圧延するように可逆回転圧延機2を制御する。また、制御部7は、2パス目の逆圧延処理の際に、少なくとも、この圧延し残した先端部を熱間圧延するように可逆回転圧延機2を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ等の金属材を熱間圧延する熱間圧延装置および熱間圧延方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、高炉等の加熱炉から抽出された高温(例えば数百〜千数百℃程度)のスラブ(例えば厚さ百数十〜三百ミリ程度のスラブ)を熱間圧延する熱間圧延装置が知られている。熱間圧延装置は、被圧延金属材の上方側と下方側とに圧延ロールを有し、これら上下両側の圧延ロールを用いて、被圧延金属材であるスラブを熱間圧延する。具体的には、熱間圧延装置は、まず、処理対象である高温なスラブの厚みに対応して、上方側の圧延ロールと下方側の圧延ロールとのロール間隔を調整する。ついで、熱間圧延装置は、これら上下両側の圧延ロールの間に、このスラブを挟み込む。このスラブが圧延ロール間に挟み込まれると同時に、熱間圧延装置は、これら上下両側の圧延ロールを互いに反対方向に回転させるとともに、下側の圧延ロールに向けて上側の圧延ロールを下降させる。
【0003】
この状態において、上側の圧延ロールは、下側の圧延ロールと協働して、このスラブの先端部を噛み込むとともに、この噛み込んだ先端部から、このスラブを圧下し始める。下側の圧延ロールは、上側の圧延ロールによって圧下されるスラブを下方側から支持する。このように、上下両側の圧延ロールは、互いに協働して、このスラブを上下方向から挟圧しつつ、このスラブの尾端部に至るまで回転し続ける。
【0004】
熱間圧延装置は、これら上下両側の圧延ロールの作用によって、このスラブの先端部から尾端部に亘るスラブ領域を熱間圧延する。一般に、熱間圧延装置は、上述したような上下一対の圧延ロールを複数組有し、複数組の圧延ロールを用いて複数回、処理対象のスラブを熱間圧延する。これによって、熱間圧延装置は、処理対象のスラブを所定の厚みに熱間圧延する。
【0005】
なお、上述したような熱間圧延処理に関する従来技術として、例えば、4スタンド以上の仕上圧延機の上流側に、圧延ロールを正回転および逆回転させることが可能な可逆回転圧延機を設置した圧延設備がある(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の圧延設備において、可逆回転圧延機は、逆回転によってスラブの先端部をテーパ状に圧延する。ついで、この圧延後のスラブは、可逆回転圧延機および仕上圧延機の各正回転によって一方向に連続圧延される。この結果、少数の圧延機によって、スラブの粗圧延処理から仕上圧延処理までが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−218304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、熱間圧延装置は、スラブ等の被圧延金属材を熱間圧延する際、上下両側の圧延ロールに被圧延金属材を正常に噛み込ませる必要がある。この被圧延金属材の正常な噛み込みを実現するためには、被圧延金属材に対する圧延ロールの噛み込み角を所定の角度以下に調整しなければならない。
【0008】
被圧延金属材に対する圧延ロールの噛み込み角は、上側の圧延ロールと被圧延金属材との接触部分の摩擦条件によって制限される角度である。一般に、この噛み込み角は、この接触部分と上側の圧延ロールの回転中心とを結ぶ直線と、この上側の圧延ロールの圧下方向とのなす角度として定義される。この噛み込み角が上側の圧延ロールと被圧延金属材との摩擦角以下であれば、上下両側の圧延ロールは、この被圧延金属材を正常に噛み込むことができる。なお、この噛み込み角が摩擦角を超過する場合、被圧延金属材は、圧延ロールの表面を滑ってしまい、上下両側の圧延ロールは、空回りして被圧延金属材を正常に噛み込めない。
【0009】
熱間圧延装置は、上述した被圧延金属材の正常な噛み込みを実現するために、その設備仕様を限度に、被圧延金属材の厚みに対応して上下両側の圧延ロールのロール間隔を調整する。これによって、熱間圧延装置は、被圧延金属材に対する圧延ロールの噛み込み角を摩擦角以下に調整しなければならない。
【0010】
一方、熱間圧延処理によって一度に熱間圧延される被圧延金属材の量は、金属製品の生産効率を向上させるという観点から、可能な限り多く設定される。このため、熱間圧延装置に対して一度に投入される被圧延金属材の厚みは、この被圧延金属材の投入量の増加に伴って増大する。ここで、この被圧延金属材の厚みの増加は、上述した被圧延金属材に対する圧延ロールの噛み込み角の増加を招来する。また、この噛み込み角の増加は、被圧延金属材に対する圧延ロールの圧下量の減少を招来する。
【0011】
しかしながら、上述した従来技術では、被圧延金属材を熱間圧延する際の圧延ロールの圧下量が圧延ロールの噛み込み角に影響され易いため、被圧延金属材の厚みに対応して、圧延ロールの圧下量を最大限に設定することは困難である。このため、上下両側の圧延ロールによって一度に熱間圧延できる被圧延金属材の厚みが制限されてしまう。これに起因して、所望の厚みに被圧延金属材を熱間圧延するまでに、多数回にわたって上下両側の圧延ロールによる被圧延金属材の熱間圧延処理を繰り返さねばならない。この結果、所望の厚みに被圧延金属材を熱間圧延するまでに多大な時間を要するのみならず、熱間圧延後の金属材を用いた金属製品の生産効率が低下するという問題点がある。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、たとえ未圧延の被圧延金属材を熱間圧延する場合であっても、被圧延金属材の厚みに応じて被圧延金属材を最大限に圧下でき、これによって、所望の厚みに被圧延金属材を熱間圧延するまでに必要な熱間圧延処理の回数を低減して、熱間圧延後の金属材を用いた金属製品の生産効率を向上できる熱間圧延装置および熱間圧延方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる熱間圧延装置は、被圧延金属材に圧下する圧延ロールを有し、前記圧延ロールを正回転させて、前記被圧延金属材の先端部から尾端部に向かう順方向に前記被圧延金属材を熱間圧延する正圧延処理と、前記圧延ロールを逆回転させて、前記順方向の反対方向に前記被圧延金属材を熱間圧延する逆圧延処理とを行う可逆回転圧延機と、1パス目の前記正圧延処理の際に、前記被圧延金属材の圧延前の厚みに応じて設定した最大圧下量まで前記圧延ロールを圧下しつつ、前記被圧延金属材のうちの前記先端部以外を熱間圧延するように前記可逆回転圧延機を制御し、前記1パス目に続く2パス目の前記逆圧延処理の際に、圧延し残した少なくとも前記先端部を熱間圧延するように前記可逆回転圧延機を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる熱間圧延装置は、上記の発明において、前記制御部は、2パス目の前記逆圧延処理の際に、1パス目の前記正圧延処理後の前記被圧延金属材の厚みに応じて設定した最大圧下量まで前記圧延ロールを圧下しつつ、前記被圧延金属材を熱間圧延するように前記可逆回転圧延機を制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる熱間圧延装置は、上記の発明において、前記制御部は、前記2パス目に続く3パス目の前記正圧延処理の際に、2パス目の前記逆圧延処理後の前記被圧延金属材の厚みに応じて設定した最大圧下量まで前記圧延ロールを圧下しつつ、前記被圧延金属材を熱間圧延するように前記可逆回転圧延機を制御することを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる熱間圧延方法は、1パス目に、被圧延金属材に圧下する圧延ロールを正回転させて、前記被圧延金属材の先端部から尾端部に向かう順方向に前記被圧延金属材を熱間圧延する正圧延処理を行い、前記1パス目に続く2パス目に、前記圧延ロールを逆回転させて、前記順方向の反対方向に前記被圧延金属材を熱間圧延する逆圧延処理を行う熱間圧延方法において、1パス目の前記正圧延処理の際に、前記被圧延金属材の圧延前の厚みに応じて設定した最大圧下量まで前記圧延ロールを圧下しつつ、前記被圧延金属材のうちの前記先端部以外を熱間圧延し、2パス目の前記逆圧延処理の際に、圧延し残した少なくとも前記先端部を熱間圧延することを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる熱間圧延方法は、上記の発明において、2パス目の前記逆圧延処理の際に、1パス目の前記正圧延処理後の前記被圧延金属材の厚みに応じて設定した最大圧下量まで前記圧延ロールを圧下しつつ、前記被圧延金属材を熱間圧延することを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる熱間圧延方法は、上記の発明において、前記2パス目に続く3パス目の前記正圧延処理の際に、2パス目の前記逆圧延処理後の前記被圧延金属材の厚みに応じて設定した最大圧下量まで前記圧延ロールを圧下しつつ、前記被圧延金属材を熱間圧延することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、たとえ未圧延の被圧延金属材を熱間圧延する場合であっても、被圧延金属材の厚みに応じて被圧延金属材を最大限に圧下でき、これによって、所望の厚みに被圧延金属材を熱間圧延するまでに必要な熱間圧延処理の回数を低減して、熱間圧延後の金属材を用いた金属製品の生産効率を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる熱間圧延装置の一構成例を示すブロック図である。
【図2】図2は、スラブに対する圧延ロールの噛み込み角およびロール間隔の一例を示す模式図である。
【図3】図3は、本実施の形態にかかる熱間圧延方法の工程毎に変化する圧延ロールの位置を示す模式図である。
【図4】図4は、スラブの厚みに対応して圧延ロールのロール間隔を設定する状態を示す模式図である。
【図5】図5は、未圧延のスラブを圧延ロールによって噛み込む状態を示す模式図である。
【図6】図6は、未圧延のスラブに対して1パス目の圧延工程を行う状態を示す模式図である。
【図7】図7は、1パス目の圧延工程後のスラブを圧延ロールによって噛み込む状態を示す模式図である。
【図8】図8は、スラブに対して2パス目の圧延工程を行う状態を示す模式図である。
【図9】図9は、2パス目の圧延工程後のスラブを圧延ロールによって噛み込む状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付図面を参照して、本発明にかかる熱間圧延装置および熱間圧延方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下では、被圧延金属材の一例として、高炉から抽出されたスラブを例示するが、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態)
まず、本発明の実施の形態にかかる熱間圧延装置の構成を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる熱間圧延装置の一構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる熱間圧延装置1は、被圧延金属材搬送の順方向および逆方向の双方向にスラブ15bを熱間圧延する可逆回転圧延機2と、スラブ15bの熱間圧延処理に必要な各種情報を入力する入力部5と、更新可能に各種情報を記憶する記憶部6と、熱間圧延装置1の各構成部を制御する制御部7とを備える。また、熱間圧延装置1は、特に図1に図示されていないが、スラブ15bを搬送する搬送装置と、可逆回転圧延機2の下流側に配置される粗圧延装置および仕上圧延装置とを備える。
【0023】
可逆回転圧延機2は、スラブ15bの搬送の順方向にスラブ15bを熱間圧延する正圧延処理と、この順方向の反対方向、すなわち、スラブ15bの搬送の逆方向にスラブ15bを熱間圧延する逆圧延処理とを行う。具体的には、図1に示すように、可逆回転圧延機2は、スラブ15bを上下方向から挟圧しつつ熱間圧延する圧延機構として、上側圧延部3と下側圧延部4とを有する。上側圧延部3は、スラブ15bの上方側に配置される。上側圧延部3は、図1の両側太線矢印に示されるように、上昇駆動および下降駆動を行うことができる。上側圧延部3は、スラブ15bの噛み込み前のタイミング等に上昇駆動し、スラブ15bの熱間圧延処理のタイミングに下降駆動する。下側圧延部4は、スラブ15bの下方側に配置される。下側圧延部4は、一定の位置に固定され、変位せずに、上側圧延部3によって上方から押圧されるスラブ15bを下方から支持する。
【0024】
また、上側圧延部3および下側圧延部4は、右回りおよび左回りの双方向に回転可能な圧延ロール3a,4aを各々有する。圧延ロール3a,4aは、互いの回転中心を結ぶ直線とスラブ15bの搬送方向とが直交するように対向配置される。圧延ロール3a,4aは、スラブ15bを噛み込む際と、スラブ15bを熱間圧延する際とにおいて、互いに反対方向に回転する。また、圧延ロール3aは、上側圧延部3の上昇駆動に伴って上昇し、上側圧延部3の下降駆動に伴って下降する。圧延ロール4aは、圧延ロール3aの下降方向の延長線上に位置し、変位しない。すなわち、圧延ロール3a,4aのロール間隔は、上側の圧延ロール3aの上昇または下降によって調整される。
【0025】
詳細には、圧延ロール3a,4aのロール間隔は、熱間圧延処理前のスラブ15bの厚みに対応して圧延ロール3aを上方または下方に変位させ、これによって調整される。なお、この熱間圧延処理前のスラブ15bの厚みとして、例えば、サイジングプレス装置11から送出された圧延前のスラブ15bの厚みd2等、正圧延処理前または逆圧延処理前のスラブ15bの厚みが挙げられる。圧延ロール3a,4aは、このようにロール間隔を調整することによって、スラブ15bを噛み込み可能なロール間隔を実現する。
【0026】
一方、スラブ15bに対する圧延ロール3aの圧下量は、圧延ロール3aの下降によって調整される。この圧延ロール3aの圧下量は、スラブ15bの圧延前の厚みd2等、熱間圧延処理前のスラブ15bの厚みに対応して、最大値に設定される。圧延ロール3aは、スラブ15bの熱間圧延処理の際、スラブ15bの噛み込み位置から、熱間圧延処理毎に設定された圧下量の最大値(すなわち最大圧下量)に至るまで、回転しつつ圧下する。
【0027】
入力部5は、入力キーまたはマウス等の入力デバイスを用いて実現され、作業者の入力操作に対応して各種情報を制御部7に入力する。具体的には、入力部5は、例えば、高炉(図示せず)から抽出されたスラブ15aの幅W1および厚みd1等のスラブ15aのサイズまたは量を示す情報、サイジングプレス装置11によるスラブ15aの成形仕様の情報等、スラブ15bの幅W2および厚みd2を取得するために必要な情報を入力する。また、入力部5は、圧延ロール3a,4aのロール径等、可逆回転圧延機2の設備仕様の情報を入力してもよい。
【0028】
記憶部6は、EEPROMまたはハードディスク等の再書き込み可能な不揮発性の記憶媒体を用いて実現される。記憶部6は、制御部7によって記憶指示された情報を記憶し、読み出し指示された記憶情報を制御部7に送信する。例えば、記憶部6は、入力部5によって入力されたスラブ15aのサイズまたは量を示す情報をスラブ情報6aとして記憶する。
【0029】
制御部7は、熱間圧延装置1の機能を実現するためのプログラム等を記憶するメモリおよびこのメモリ内のプログラムを実行するCPU等を用いて実現される。制御部7は、熱間圧延装置1の各構成部、具体的には、可逆回転圧延機2、入力部5、および記憶部6の各動作を制御し、且つ、これらの各構成部との電気信号の入出力を制御する。具体的には、制御部7は、圧延ロール3aの上下方向の位置情報を上側圧延部3から取得し、この取得した位置情報等をもとに、上側圧延部3の上昇駆動および下降駆動を制御する。これによって、制御部7は、圧延ロール3a,4aがスラブ15bを噛み込み可能なロール間隔になるように、圧延ロール3a,4aのロール間隔を制御する。
【0030】
また、制御部7は、圧下量設定部7aを有する。圧下量設定部7aは、記憶部6内のスラブ情報6aに含まれるスラブ15bの熱間圧延処理前の厚み情報をもとに、スラブ15bに対する圧延ロール3aの最大圧下量を算出する。圧下量設定部7aは、これから熱間圧延されるスラブ15bに対する圧延ロール3aの圧下量として、この算出した最大圧下量を設定する。
【0031】
ここで、この圧延ロール3aの最大圧下量は、スラブ15bを熱間圧延する際に、スラブ15bに対する圧延ロール3a,4aの噛み込み角が圧延ロール3a,4aとスラブ15bとの摩擦角以下を維持し得る最大の圧下量である。すなわち、圧延ロール3aが、この最大圧下量に至るまでを限度に圧下する限り、圧延ロール3a,4aは、空回りせずにスラブ15bを噛み込むとともに、このスラブ15bを正常に熱間圧延する。制御部7は、スラブ15bの噛み込み位置から、この圧下量設定部7aによって設定された最大圧下量に至るまで、圧延ロール3aを回転しつつ圧下するように、上側圧延部3を駆動制御する。
【0032】
なお、制御部7は、上側圧延部3から取得した圧延ロール3aの位置情報をもとに、現在の熱間圧延処理における圧延ロール3a,4aのロール間隔を算出し、スラブ15bの熱間圧延後の厚みを示す情報として、この算出したロール間隔の情報を記憶するように記憶部6を制御する。記憶部6は、このロール間隔の情報をスラブ情報6aの一部として記憶する。圧下量設定部7aは、このスラブ情報6a内のロール間隔の情報を適宜用いて、圧延ロール3aの最大圧下量を算出する。
【0033】
一方、制御部7は、圧延ロール3aを回転するように上側圧延部3を制御するとともに、圧延ロール4aを回転するように下側圧延部4を制御する。この場合、制御部7は、圧延ロール3a,4aが互いに対向配置された状態において、圧延ロール3aの回転方向とは逆方向に圧延ロール4aを回転させる。また、制御部7は、スラブ15bの熱間圧延処理の際に可逆回転圧延機2に掛かる荷重を下側圧延部4から取得する。制御部7は、この取得した荷重が可逆回転圧延機2の設備仕様の限度を超えないように、上側圧延部3の下降駆動を制御する。
【0034】
上述したような制御部7は、スラブ15bの正圧延処理の際、この正圧延処理前のスラブ15bの厚みに応じて設定した最大圧下量に至るまで、圧延ロール3aを正方向(図1では左回りの方向)に回転しつつ圧下するように上側圧延部3を制御する。これと同時に、制御部7は、圧延ロール3aの反対方向(図1では右回りの方向)に圧延ロール4aを回転するように下側圧延部4を制御する。このように可逆回転圧延機2を制御して、制御部7は、スラブ15bの搬送の順方向(図1の太線白矢印参照)、すなわち、スラブ15bの先端部から尾端部に向かう順方向にスラブ15bを熱間圧延する正圧延処理を実現する。一方、制御部7は、スラブ15bの逆圧延処理の際、この逆圧延処理前のスラブ15bの厚みに応じて設定した最大圧下量に至るまで、圧延ロール3aを逆方向(図1では右回りの方向)に回転しつつ圧下するように上側圧延部3を制御する。これと同時に、制御部7は、圧延ロール3aの反対方向(図1では左回りの方向)に圧延ロール4aを回転するように下側圧延部4を制御する。このように可逆回転圧延機2を制御して、制御部7は、スラブ15bの搬送の反対方向、すなわち、スラブ15bの尾端部から先端部に向かう逆方向にスラブ15bを熱間圧延する逆圧延処理を実現する。
【0035】
特に、制御部7は、スラブ15bに対する1パス目の正圧延処理の際、スラブ15bの圧延前の厚みd2に応じて設定した最大圧下量に至るまで、圧延ロール3aを正方向に回転しつつ、スラブ15bのうちの先端部以外を圧下するように上側圧延部3を制御する。また、制御部7は、この1パス目の正圧延処理に続く2パス目の逆圧延処理の際、この圧延し残した先端部を含むスラブ15bの全体に亘って、圧延ロール3aを逆方向に回転しつつ圧下するように上側圧延部3を制御する。
【0036】
なお、図1に示すサイジングプレス装置11は、スラブ15bの幅W2を圧延ロール3a,4aのロール幅以内にするスラブ成形加工を行う。具体的には、サイジングプレス装置11は、高炉から抽出されたスラブ15aを受け入れ、この受け入れたスラブ15aを側方から強く押圧して、スラブ15aの幅方向の加圧成形を行う。これによって、サイジングプレス装置11は、幅W1および厚みd1のスラブ15aを幅W2および厚みd2のスラブ15bに成形加工する。なお、幅W1,W2の大小関係は、W1>W2であり、厚みd1,d2の大小関係は、d1<d2である。
【0037】
このように成形された幅W2および厚みd2のスラブ15bは、サイジングプレス装置11から送出された後、上述したように、可逆回転圧延機2によって正圧延処理および逆圧延処理される。これによって、厚みd2のスラブ15bは、厚みd5(<d2)にまで圧延される。その後、この幅W2および厚みd5のスラブ15bは、可逆回転圧延機2の下流側に配置された粗圧延機(図示せず)に搬入される。
【0038】
つぎに、スラブ15bに対する圧延ロール3a,4aの噛み込み角と圧延ロール3a,4aのロール間隔とについて説明する。図2は、スラブに対する圧延ロールの噛み込み角およびロール間隔の一例を示す模式図である。
【0039】
図2に示すように、スラブ15bに対する圧延ロール3a,4aの噛み込み角θは、圧延ロール3a,4aの各回転中心C1,C2を結ぶ直線L1と、圧延ロール3aとスラブ15bとの接触部分Pと圧延ロール3aの回転中心C1とを結ぶ直線L2とのなす角度として定義される。この直線L1の方向は、圧延ロール3aの圧下方向(図2の太線矢印参照)と一致する。すなわち、噛み込み角θは、この直線L2と圧延ロール3aの圧下方向とのなす角度である。なお、特に図2に示されていないが、スラブ15bに対する圧延ロール4aの噛み込み角は、この圧延ロール3aの噛み込み角θと同等である。
【0040】
一方、圧延ロール3a,4aのロール間隔Gpは、図2に示すように、圧延ロール3a,4aの各回転中心C1,C2の中心間距離から圧延ロール3a,4aの各ロール半径を減じることによって、算出される。なお、ロール間隔Gpは、圧延ロール3a,4aによってスラブ15bを噛み込むために必要な間隔である。すなわち、ロール間隔Gpは、圧延ロール3a,4aがスラブ15bを噛み込むことが可能な間隔でなければならない。このため、ロール間隔Gpは、上述した噛み込み角θを加味して設定される。
【0041】
ここで、噛み込み角θが圧延ロール3aとスラブ15bとの摩擦角以下である場合、圧延ロール3aは、スラブ15bを正常に噛み込むことができる。一方、噛み込み角θが圧延ロール3aとスラブ15bとの摩擦角を超過する場合、スラブ15bは、圧延ロール3aの表面を滑ってしまい、圧延ロール3aは、空回りしてスラブ15bを正常に噛み込めない。この圧延ロール3aの噛み込み現象は、他方の圧延ロール4aについても同様である。
【0042】
したがって、圧延ロール3a,4aがスラブ15bを正常に噛み込めるように、ロール間隔Gpは、噛み込み角θが上述した摩擦角以下になるように設定される。具体的には、ロール間隔Gpは、スラブ15bの厚みの増加に伴って広く設定される。且つ、ロール間隔Gpは、噛み込み角θが上述した摩擦角以下になる範囲内において、可能な限り狭く設定される。好ましくは、ロール間隔Gpは、噛み込み角θと上述した摩擦角とが等しくなる程度にまで狭く設定される。これによって、可逆回転圧延機2は、その設備仕様の限度内において、より肉厚のスラブ15bを正常に噛み込めるとともに、スラブ15bを噛み込む際の設備負荷を軽減できる。
【0043】
つぎに、本発明の実施の形態にかかる熱間圧延方法について説明する。図3は、本実施の形態にかかる熱間圧延方法の工程毎に変化する圧延ロールの位置を示す模式図である。図4は、スラブの厚みに対応して圧延ロールのロール間隔を設定する状態を示す模式図である。図5は、未圧延のスラブを圧延ロールによって噛み込む状態を示す模式図である。図6は、未圧延のスラブに対して1パス目の圧延工程を行う状態を示す模式図である。図7は、1パス目の圧延工程後のスラブを圧延ロールによって噛み込む状態を示す模式図である。図8は、スラブに対して2パス目の圧延工程を行う状態を示す模式図である。図9は、2パス目の圧延工程後のスラブを圧延ロールによって噛み込む状態を示す模式図である。なお、図3に示すロール位置H1〜H4は、下側の圧延ロール4aの上面を基準面とした上方向の高さの位置である。また、時間t1は、サイジングプレス装置11からスラブ15bが送出されてから可逆回転圧延機2の位置にスラブ15bが搬入されるまでの時間である。以下、上述した図1および図3〜9を参照しつつ、本発明の実施の形態にかかる熱間圧延方法を詳細に説明する。
【0044】
本発明の実施の形態にかかる熱間圧延方法では、スラブ15bに対する1パス目の圧延工程において、スラブ15bの圧延前の厚みd2に応じて設定した最大圧下量まで圧延ロール3aを圧下しつつ、スラブ15bのうちの先端部以外を熱間圧延する正圧延処理を行う。つぎに、この1パス目の圧延工程に続く2パス目の圧延工程において、この圧延し残した先端部を含むスラブ15bの全体を熱間圧延する逆圧延処理を行う。その後、この2パス目の圧延工程に続く3パス目の圧延工程において、この逆圧延処理後のスラブ15bを更に熱間圧延する正圧延処理を行う。
【0045】
具体的には、熱間圧延装置1は、まず、未圧延のスラブ15bを圧延ロール3a,4aによって噛み込めるように、圧延ロール3a,4aのロール間隔を調整する準備工程を行う。この準備工程において、未圧延のスラブ15bが、サイジングプレス装置11から送出され、搬送装置12によって可逆回転圧延機2へ搬送される。制御部7は、上側圧延部3から取得した圧延ロール3aの位置情報と、スラブ情報6aに含まれるスラブ15bの圧延前の厚みd2の情報とをもとに、上側圧延部3の上昇駆動および下降駆動を制御する。上側圧延部3は、この制御部7の制御に基づき駆動して、図3,4に示すように、時間t1までの期間に、ロール位置H4まで圧延ロール3aを上昇させる。これによって、圧延ロール3aの下面は、下側圧延部4の圧延ロール4aの上面からロール位置H4の高さに変位する。この結果、圧延ロール3a,4aのロール間隔は、圧延ロール3a,4aがスラブ15bを噛み込み可能なロール間隔(=H4)に調整される。
【0046】
つぎに、熱間圧延装置1は、可逆回転圧延機2に搬入された未圧延のスラブ15bを熱間圧延する1パス目の圧延工程を行う。この1パス目の圧延工程において、圧下量設定部7aは、スラブ情報6aに含まれるスラブ15bの圧延前の厚みd2をもとに、この厚みd2のスラブ15bに対する圧延ロール3aの最大圧下量を設定する。制御部7は、圧延ロール3aを正方向に回転しつつ、スラブ15bのうちの先端部以外に対し、この設定された最大圧下量に至るまで圧延ロール3aを圧下するように上側圧延部3を制御する。この圧延ロール3aの回転と同時に、制御部7は、圧延ロール4aを回転するように下側圧延部4を制御する。
【0047】
上側圧延部3および下側圧延部4は、上述した制御部7の制御に基づいて駆動して、圧延ロール3a,4aを回転させる。圧延ロール3a,4aは、図5に示すように、互いに反対方向に回転しつつ、厚みd2のスラブ15bを噛み込む。ここで、この圧延ロール3a,4aのロール間隔は、上述した準備工程において適正に調整されている(図3,4のロール位置H4を参照)。このため、図5に示す噛み込み角θは、圧延ロール3a,4aとスラブ15bとの摩擦角以下(望ましくは摩擦角と同値)である。したがって、圧延ロール3a,4aは、厚みd2のスラブ15bを正常に噛み込める。
【0048】
厚みd2のスラブ15bを噛み込み後、上側圧延部3および下側圧延部4は、図6に示すように、このスラブ15bの先端部15c以外を正圧延処理する。この正圧延処理において、圧延ロール3aは、図3,6に示すように、時間t1から時間t2までの期間、正回転しつつ、ロール位置H4からロール位置H3まで徐々に圧下する。ついで、圧延ロール3aは、時間t2から時間t3までの期間、正回転し続けるとともに、ロール位置H3を維持しつつスラブ15bを熱間圧延する。一方、下側圧延部4は、この時間t1から時間t3までの期間、圧延ロール3aの反対方向に圧延ロール4aを回転させつつ、上側圧延部3と協働してスラブ15bを熱間圧延する。
【0049】
なお、図3において、時間t1から時間t2までの経過時間は、圧延ロール3a,4aがスラブ15bを噛み込み始めてからスラブ15bの先端部15cを通過するまでに要する時間である。また、時間t2から時間t3までの経過時間は、圧延ロール3a,4aが先端部15cの尾端側部分からスラブ15bの尾端部までを熱間圧延するために要する時間である。
【0050】
上述した1パス目の圧延工程によって、未圧延のスラブ15bは、図6に示すように、その先端部15c以外を厚みd3に至るまで熱間圧延される。この場合、熱間圧延し残された先端部15cは、厚みd2の突起状に形成される。
【0051】
1パス目の圧延工程が終了後、熱間圧延装置1は、熱間圧延し残した突起形状の先端部15cを有するスラブ15b(図6参照)を熱間圧延する2パス目の圧延工程を行う。この2パス目の圧延工程において、圧下量設定部7aは、スラブ情報6aに含まれるスラブ15bの厚みd3をもとに、この厚みd3のスラブ15bに対する圧延ロール3aの最大圧下量を設定する。この厚みd3は、上側圧延部3から取得された圧延ロール3aの位置情報をもとに算出される。具体的には、1パス目の圧延工程における圧延ロール3a,4aのロール間隔(=H3)が、スラブ15bの厚みd3と同等である。制御部7は、圧延ロール3aを逆方向に回転しつつ、突起形状の先端部15cを含むスラブ15bの全体に対し、この設定された最大圧下量に至るまで圧延ロール3aを圧下するように上側圧延部3を制御する。この圧延ロール3aの回転と同時に、制御部7は、圧延ロール4aを回転するように下側圧延部4を制御する。
【0052】
上側圧延部3および下側圧延部4は、上述した制御部7の制御に基づいて駆動して、圧延ロール3a,4aを回転させる。圧延ロール3a,4aは、図7に示すように、互いに反対方向に回転しつつ、厚みd3のスラブ15bを噛み込む。ここで、この圧延ロール3a,4aのロール間隔は、上述した1パス目の圧延工程におけるロール間隔(=H3)に調整されている。このため、図7に示す噛み込み角θは、圧延ロール3a,4aとスラブ15bとの摩擦角以下である。したがって、圧延ロール3a,4aは、厚みd3のスラブ15bを正常に噛み込める。
【0053】
厚みd3のスラブ15bを噛み込み後、上側圧延部3および下側圧延部4は、図6,7に示すように、突起形状の先端部15cを含むスラブ15bの全体を逆圧延処理する。この逆圧延処理において、圧延ロール3aは、図3,6,7に示すように、このスラブ15bを噛み込み始めた時間t3から、逆回転しつつ、ロール位置H3からロール位置H2まで圧下する。ついで、圧延ロール3aは、この時間t3から時間t4までの期間、逆回転し続けるとともに、ロール位置H2を維持しつつスラブ15bを熱間圧延する。一方、下側圧延部4は、この時間t3から時間t4までの期間、圧延ロール3aの反対方向に圧延ロール4aを回転させつつ、上側圧延部3と協働してスラブ15bを熱間圧延する。なお、図3において、時間t3から時間t4までの経過時間は、圧延ロール3a,4aがスラブ15bの尾端部を噛み込み始めてから先端部15cまでを熱間圧延するために要する時間である。
【0054】
上述した2パス目の圧延工程によって、1パス目の圧延工程後のスラブ15bは、図8に示すように、厚みd2である突起形状の先端部15cを含むスラブ全体を厚みd4に至るまで熱間圧延される。ここで、この突起形状の先端部15cは、スラブ15bの自由端である。したがって、圧延ロール3a,4aは、厚みd3のスラブ15bの中間部分に阻害されることなく、この突起形状の先端部15cを容易に平坦化して、厚みd2から厚みd4まで先端部15cを熱間圧延できる。
【0055】
2パス目の圧延工程が終了後、熱間圧延装置1は、上述した逆圧延処理後のスラブ15bを更に熱間圧延しつつ、可逆回転圧延機2の下流側へスラブ15bを送出する3パス目の圧延工程を行う。この3パス目の圧延工程において、圧下量設定部7aは、スラブ情報6aに含まれるスラブ15bの厚みd4をもとに、この厚みd4のスラブ15bに対する圧延ロール3aの最大圧下量を設定する。この厚みd4は、上側圧延部3から取得された圧延ロール3aの位置情報をもとに算出される。具体的には、2パス目の圧延工程における圧延ロール3a,4aのロール間隔(=H2)が、スラブ15bの厚みd4と同等である。制御部7は、圧延ロール3aを正方向に回転しつつ、この厚みd4のスラブ15bの全体に対し、この設定された最大圧下量に至るまで圧延ロール3aを圧下するように上側圧延部3を制御する。この圧延ロール3aの回転と同時に、制御部7は、圧延ロール4aを回転するように下側圧延部4を制御する。
【0056】
上側圧延部3および下側圧延部4は、上述した制御部7の制御に基づいて駆動して、圧延ロール3a,4aを回転させる。圧延ロール3a,4aは、図9に示すように、互いに反対方向に回転しつつ、厚みd4のスラブ15bを噛み込む。ここで、この圧延ロール3a,4aのロール間隔は、上述した2パス目の圧延工程におけるロール間隔(=H2)に調整されている。このため、図9に示す噛み込み角θは、圧延ロール3a,4aとスラブ15bとの摩擦角以下である。したがって、圧延ロール3a,4aは、厚みd4のスラブ15bを正常に噛み込める。
【0057】
厚みd4のスラブ15bを噛み込み後、上側圧延部3および下側圧延部4は、この噛み込んだスラブ15bの全体を正圧延処理する。この正圧延処理において、圧延ロール3aは、図3,9に示すように、このスラブ15bを噛み込み始めた時間t4から、正回転しつつ、ロール位置H2からロール位置H1まで圧下する。ついで、圧延ロール3aは、この時間t4以降の期間、正回転し続けるとともに、ロール位置H1を維持しつつスラブ15bを熱間圧延する。一方、下側圧延部4は、この時間t4以降の期間、圧延ロール3aの反対方向に圧延ロール4aを回転させつつ、上側圧延部3と協働してスラブ15bを熱間圧延する。
【0058】
上述した3パス目の圧延工程によって、2パス目の圧延工程後のスラブ15bは、厚みd4から厚みd5(図1参照)に至るまで熱間圧延される。このように厚みd2から厚みd5まで熱間圧延されたスラブ15bは、搬送装置12によって、可逆回転圧延機2の下流側の粗圧延機(図示せず)に向けて搬送される。
【0059】
以上、説明したように、本発明の実施の形態では、被圧延金属材に対する熱間圧延処理の1パス目に、被圧延金属材の圧延前の厚みに応じて設定した最大圧下量まで圧延ロールを圧下しつつ、この被圧延金属材のうちの先端部以外に対し、この被圧延金属材の先端部から尾端部に向かう順方向に熱間圧延する正圧延処理を行っている。また、この1パス目に続く2パス目に、この圧延し残した先端部を含む被圧延金属材の全体に対し、この被圧延金属材の尾端部から先端部に向かう方向に熱間圧延する逆圧延処理を行っている。
【0060】
このため、未圧延の被圧延金属材に対する1パス目の正圧延処理を行う際、被圧延金属材に対する圧延ロールの噛み込み角を零度に近似したタイミングに圧延ロールを圧下できる。これによって、圧延ロールの圧下量に対する圧延ロールの噛み込み角の影響を可能な限り軽減できる。この結果、被圧延金属材の圧延前の厚みに対応して、圧延ロールの圧下量を容易に最大化できる。このため、たとえ未圧延の被圧延金属材を熱間圧延する場合であっても、被圧延金属材の厚みに応じて被圧延金属材を最大限に圧下できる。これによって、目標の厚みに被圧延金属材を熱間圧延するまでに必要な熱間圧延処理の回数、すなわち圧延工程のパス数を低減できる。この結果、被圧延金属材の圧延工程に要する時間を短縮できるとともに、熱間圧延後の金属材を用いた金属製品の生産効率を向上することができる。
【0061】
また、未圧延の被圧延金属材に対し、この被圧延金属材の厚みに応じた最大圧下量に至るまで圧延ロールを圧下させて、この被圧延金属材を熱間圧延している。このため、未圧延の被圧延金属材に対する1パス目の圧延工程によって、目標とする厚みに近似する厚みまで、この被圧延金属材を熱間圧延できる。これによって、この1パス目の圧延工程以降の各圧延工程、具体的には、2パス目および3パス目の各熱間圧延処理の際に、圧延ロール等の圧延設備にかかる負荷を軽減できる。この結果、圧延設備の寿命を長期化できるとともに、圧延設備の故障発生を防止して熱間圧延ラインの停滞および稼動停止を防止できる。
【0062】
また、本発明の実施の形態では、2パス目の逆圧延処理の際に、1パス目の正圧延処理後の被圧延金属材の厚みに応じて設定した最大圧下量まで圧延ロールを圧下して、この被圧延金属材を熱間圧延している。このため、2パス目の逆圧延処理によって、1パス目後の被圧延金属材の厚みに応じて制限される圧延限界まで、被圧延金属材を薄く熱間圧延できる。これによって、被圧延金属材の目標の厚みに達するまでに要する圧延工程のパス数を一層低減できる。この結果、被圧延金属材の圧延工程に要する時間を一層短縮できるとともに、熱間圧延後の金属材を用いた金属製品の生産効率を一層向上できる。
【0063】
さらに、本発明の実施の形態では、3パス目の正圧延処理の際に、2パス目の正圧延処理後の被圧延金属材の厚みに応じて設定した最大圧下量まで圧延ロールを圧下して、この被圧延金属材を熱間圧延している。このため、3パス目の逆圧延処理によって、2パス目後の被圧延金属材の厚みに応じて制限される圧延限界まで、被圧延金属材を薄く熱間圧延できる。これによって、被圧延金属材の目標の厚みに達するまでに要する圧延工程のパス数をより一層低減できる。この結果、被圧延金属材の圧延工程に要する時間をより一層短縮できるとともに、熱間圧延後の金属材を用いた金属製品の生産効率をより一層向上できる。
【0064】
なお、上述した実施の形態では、スラブ15bに対する2パス目の逆圧延処理の際、圧延し残した突起形状の先端部15cを含むスラブ15bの全体を熱間圧延していたが、これに限らず、2パス目の逆圧延処理は、1パス目の正圧延処理時に圧延し残した少なくとも先端部15cを熱間圧延するものであればよい。すなわち、2パス目の逆圧延処理において、可逆回転圧延機2は、1パス目の正圧延処理時に圧延し残した先端部15cを熱間圧延して、スラブ15bを平坦化すればよく、スラブ15bの全体を熱間圧延しなくてもよい。また、可逆回転圧延機2は、2パス目の逆圧延処理の際、スラブ15bの厚みに応じた最大圧下量に至るまで圧延ロール3aを圧下しなくてもよい。この場合、可逆回転圧延機2は、スラブ15bの厚みによらず、最大圧下量未満の圧下量に至るまで圧延ロール3aを圧下して、スラブ15bを熱間圧延してもよい。
【0065】
また、上述した実施の形態では、スラブ15bに対する3パス目の正圧延処理の際、2パス目後のスラブ15bの厚みに応じた最大圧下量に至るまで、圧延ロール3aを圧下してスラブ15bを熱間圧延していたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、可逆回転圧延機2は、3パス目の正圧延処理の際、スラブ15bの厚みに応じた最大圧下量に至るまで圧延ロール3aを圧下しなくてもよい。この場合、可逆回転圧延機2は、スラブ15bを熱間圧延せずに圧延ロール3a,4a間を通過させてもよいし、最大圧下量未満の圧下量に至るまで圧延ロール3aを圧下して、スラブ15bを熱間圧延してもよい。
【0066】
さらに、上述した実施の形態では、1パス目の正圧延処理と、2パス目の逆圧延処理と、3パス目の正圧延処理との合計3パスの熱間圧延処理をスラブ15bに対して行っていたが、これに限らず、目標とするスラブ15bの厚みに対応して、スラブ15bに対する熱間圧延処理のパス数を変更してもよい。例えば、スラブ15bに対して正圧延処理と逆圧延処理とを合計4パス以上行ってもよい。
【0067】
また、上述した実施の形態では、高炉から抽出されたスラブ15aの幅W1および厚みd1等の未圧延のスラブ15bのサイズを知るためのスラブ情報を入力部5によって入力していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、高炉側の外部装置またはサイジングプレス装置11と制御部7とを情報通信可能に接続し、オンライン通信によって、制御部7にスラブ情報を入力してもよい。
【0068】
さらに、上述した実施の形態では、被圧延金属材の一例としてスラブを例示したが、これに限らず、被圧延金属材は、スラブ以外の鉄鋼材であってもよいし、銅またはアルミニウム等の鉄鋼材以外の金属材であってもよい。
【0069】
また、上述した実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 熱間圧延装置
2 可逆回転圧延機
3 上側圧延部
3a,4a 圧延ロール
4 下側圧延部
5 入力部
6 記憶部
6a スラブ情報
7 制御部
7a 圧下量設定部
11 サイジングプレス装置
12 搬送装置
15a,15b スラブ
15c 先端部
C1,C2 回転中心
P 接触部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被圧延金属材に圧下する圧延ロールを有し、前記圧延ロールを正回転させて、前記被圧延金属材の先端部から尾端部に向かう順方向に前記被圧延金属材を熱間圧延する正圧延処理と、前記圧延ロールを逆回転させて、前記順方向の反対方向に前記被圧延金属材を熱間圧延する逆圧延処理とを行う可逆回転圧延機と、
1パス目の前記正圧延処理の際に、前記被圧延金属材の圧延前の厚みに応じて設定した最大圧下量まで前記圧延ロールを圧下しつつ、前記被圧延金属材のうちの前記先端部以外を熱間圧延するように前記可逆回転圧延機を制御し、前記1パス目に続く2パス目の前記逆圧延処理の際に、圧延し残した少なくとも前記先端部を熱間圧延するように前記可逆回転圧延機を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする熱間圧延装置。
【請求項2】
前記制御部は、2パス目の前記逆圧延処理の際に、1パス目の前記正圧延処理後の前記被圧延金属材の厚みに応じて設定した最大圧下量まで前記圧延ロールを圧下しつつ、前記被圧延金属材を熱間圧延するように前記可逆回転圧延機を制御することを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記2パス目に続く3パス目の前記正圧延処理の際に、2パス目の前記逆圧延処理後の前記被圧延金属材の厚みに応じて設定した最大圧下量まで前記圧延ロールを圧下しつつ、前記被圧延金属材を熱間圧延するように前記可逆回転圧延機を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の熱間圧延装置。
【請求項4】
1パス目に、被圧延金属材に圧下する圧延ロールを正回転させて、前記被圧延金属材の先端部から尾端部に向かう順方向に前記被圧延金属材を熱間圧延する正圧延処理を行い、前記1パス目に続く2パス目に、前記圧延ロールを逆回転させて、前記順方向の反対方向に前記被圧延金属材を熱間圧延する逆圧延処理を行う熱間圧延方法において、
1パス目の前記正圧延処理の際に、前記被圧延金属材の圧延前の厚みに応じて設定した最大圧下量まで前記圧延ロールを圧下しつつ、前記被圧延金属材のうちの前記先端部以外を熱間圧延し、2パス目の前記逆圧延処理の際に、圧延し残した少なくとも前記先端部を熱間圧延することを特徴とする熱間圧延方法。
【請求項5】
2パス目の前記逆圧延処理の際に、1パス目の前記正圧延処理後の前記被圧延金属材の厚みに応じて設定した最大圧下量まで前記圧延ロールを圧下しつつ、前記被圧延金属材を熱間圧延することを特徴とする請求項4に記載の熱間圧延方法。
【請求項6】
前記2パス目に続く3パス目の前記正圧延処理の際に、2パス目の前記逆圧延処理後の前記被圧延金属材の厚みに応じて設定した最大圧下量まで前記圧延ロールを圧下しつつ、前記被圧延金属材を熱間圧延することを特徴とする請求項4または5に記載の熱間圧延方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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