説明

熱障壁を有する炉

本発明は、1箇所で物体を加熱するための、耐火セラミック壁と熱源とを備える炉であって、前記炉がセラミック材料の付着層が主面のうちの1つに被覆された少なくとも1つの金属板を備え、被覆付き板が壁と熱源との間に配置され、前記付着層が熱源に面する、炉に関する。被覆付き金属板は、熱障壁として作用し、熱源の熱効率を改善する。炉は、特に、曲げフレーム上に配置された板ガラスの重力曲げのためのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱されるべき物体に対して熱を所望の方向に導くことができる熱障壁を有する炉に関する。
【背景技術】
【0002】
炉は、物体を加熱するように構成された少なくとも1つの熱源を含有している。当然に、熱源はあらゆる方向に加熱する傾向がある。装置の壁からの反射又は輻射によって、加熱されるべき物体に向かって熱が間接的に戻るとしても、生成された熱の全てを加熱されるべき物体に集中させないことにより、生成された熱の大部分は必然的に失われる。このような問題点は、一般にいずれのタイプの加熱装置においても示され、特にガラス加熱炉において提示される。加熱速度や加熱率を改善することも望ましく、また可能であるならば、効率を低減することなしに動作温度を低下させることも望ましい。装置にもたらされる改善には、不都合な点、例えば作業量の低減、又は生産品質の低下が伴うべきではない。具体的には、エネルギ節減の目的で、板ガラスを重力によって曲げるための炉の熱収率を改善することが望まれる。
【0003】
炉は、火炎又は電気抵抗でもよい熱源を有している。トンネル炉を通過する板ガラスが、これらを曲げる目的で加熱される事例では、炉の屋根に配置された電気抵抗を使用することを教示する特許文献1及び特許文献2を挙げることができる。これらの抵抗は、炉の耐火煉瓦と加熱されるべき物体(台車上で搬送される板ガラス)との間に配置されている。抵抗からの輻射線をガラスに向けるためのものは具体的には何もなく、その結果、この役割をある程度果たすのは、本質的には、炉の壁である。
【0004】
特許文献3に開示されたアルミノケイ酸塩タイプのセラミック反射要素は、加熱素子に対してガラスの後ろに配置されていることにより、輻射線をガラスに再び向ける。
【0005】
特許文献4に教示された反射スクリーンは、輻射線の広がりを制限するために鉛直方向に配置されている。これらの要素を上昇又は下降させることができる。これらは、ファイバフラックス(fiberfrax)繊維(アルミノケイ酸塩)若しくはシリカ、SiC、Si複合体、又はファイバフラックスタイプの繊維性アルミノケイ酸塩と連携する鋼から成る。ファイバフラックスタイプのパネルは、設置前に切断しやすいが、しかし最初に加熱された後には脆弱になり砕けやすくなる。さらに、これらは、最初に加熱されると噴煙を発する(有機バインダの消滅)。ファイバフラックスを鋼に固定する方法は述べられていない。熱源の背後にはスクリーンは設けられていない。
【0006】
特許文献5には、セラミック板を有する加熱要素と、温度を均等にするための板との連携が記載される。セラミック板はガラスに対して電気加熱ワイヤの後ろに配置され、均等化板は加熱ワイヤとガラスとの間に配置されている。セラミック板は、加熱ワイヤのための支持体として役立つ。均等化板は、輻射線の温度を均等化するために役立つ。これは輻射スクリーンを形成する。
【0007】
特許文献6には、石英管と、赤外線放出管の近くのアルミノセラミックから作成された壁とによる加熱が教示されている。
【0008】
特許文献7において教示されたリフレクタは、炉の壁と、加熱されるべき物体との間に配置されている。リフレクタは、金属から形成されても、セラミックで被覆されていてもよいが、その結果、加熱されるべき物体に向けられない。
【0009】
特許文献8において教示されている200〜400℃で使用されるリフレクタは、金属上に酸化物を含有する膜を含んでいる。このリフレクタの放射率は、4〜5μm未満の波長に対しては低く(0.4〜0.5)、4〜5μmを上回る波長に対しては高い(0.85〜0.90)。得られた赤外線は、4μmを上回る波長に対して感受性がより高い人体に対して、好ましい加熱効果をもたらす。ポリマ、NiC及びSiCを含有するバインダとして塗料を使用することにより、熱による膜の劣化が防止される。前記塗料は、300℃程度の温度に対して抵抗性である。300℃では、普通のステンレス金属は、その放射率の点から安定している。
【0010】
ガラスが曲げられるように、500℃〜800℃の温度にこれを加熱しなければならない。ガラスをこのような温度にするために、加熱システムは、ガラスのための目標温度よりも少なくとも200℃だけ高温であることが必要である。このことは、加熱システムの放射ピークの波長が必然的に3.1μm未満(700℃の温度に対応する波長)になり、また、ほぼ2.8μm未満(800℃の温度に対応する波長)にさえなることを意味する。本発明によれば、電気抵抗からの輻射線を加熱されるべき物体に導くことが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2007/138214号
【特許文献2】国際公開第2006/095007号
【特許文献3】英国特許第2219670号明細書
【特許文献4】欧州特許第0659697号明細書
【特許文献5】米国特許第7331198号明細書
【特許文献6】欧州特許第0133847号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/034850号明細書
【特許文献8】特開昭60−038534号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
電気抵抗からの輻射線を物体にできる限り多く導くために、発明者は第一に、モナライト(Monalite)タイプのセラミック板又は316Tiタイプの鋼板を、熱障壁として作用するように、これらの抵抗の背後に置くことを考えた。これらの2つの材料は、実際、反射率が高いという理由によって熱輻射線を良好に返すことができる。しかし、加熱効率に対して観察される影響は極めて小さなものであった。さらに、セラミック板は砕ける傾向があり、板から出てきた粒子が、加熱されるべき物体上に見いだされた。金属板が試験温度(650℃程度)に極めて良好に耐えるとはいえ、その表面はくすみ、表面の酸化の影響下により粗面化する傾向があることも観察された。
【0013】
炉のための耐火の分野において標準的な砕けやすい材料の使用は、その材料から離脱した粒子が、加熱されるべき物体を汚染すると共に操作員に対する健康上の問題を有するので、問題のあるものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、セラミック材料と金属材料との組み合わせが、加熱効率の顕著な改善をもたらすことが見いだされた。金属材料は、剛率及び凝集力を有する支持体、並びに機械加工及び成形し易さを提供する一方、セラミック材料は、高い反射率及び熱安定性を提供する。このような連携はさらに、火炎溶射堆積(flame spray deposition)技術を用いることを可能にする。この技術は、砕けることがなく基体に良好に付着する高い一体性を有するセラミック被膜をもたらす。本発明による複合障壁の別の利点は、一体構造のセラミック板と比較した場合のその薄さである。これは炉内の相当の空間を空ける。このような低い質量はまた低い熱慣性をもたらす。このことは温度が変化する局面において有利である。
【0015】
したがって、本発明は、
耐火セラミック壁と熱源とを含む空間内の物体を加熱する炉において、
炉は、前記壁と前記熱源との間に位置する、主面のうちの1つにセラミック材料の付着層が被覆された少なくとも1つの金属板を有しており、
付着層は、熱源に面するように配置されている、
炉に関する。
【0016】
物体は特に板ガラスを含むか又は板ガラスであってもよい。特に、板ガラスは重力曲げモールド上に配置されてもよく、前記モールドがフレームタイプ、特にスケルトンタイプであることが可能である。重力曲げの後の曲げ加工を、プレス曲げ段階によって仕上げることができる。
【0017】
板は、使用される温度に耐える金属から作成されている。板ガラスを曲げるための炉の場合、例えば316Ti、304L、316L、441又はNS30である、オーステナイト、フェライト、又はマルテンサイト鋼タイプのステンレス鋼などの鋼、金属又はニッケルなどの耐火金属の合金、特にインコネル(Inconel、登録商標)を使用することができる。被覆されていない金属板の厚さは一般に0.5〜5mmである。
【0018】
付着層は、セラミックである無機材料から成る。セラミックは、場合によっては中間結合層を介して、プラズマスプレ若しくは熱スプレ堆積、又は電子ビーム蒸着(又はeビーム蒸着)であるその堆積法の結果として、金属板の表面に付着する。この良好な付着は部分的に、基体から被膜への、そしてその逆の化学元素の相互拡散に依存する。被膜は、具体的には、金属板に付着しかつ強力であり、装置を停止し被膜を再び所定の温度にすることにより発生する熱衝撃に良好に耐える。この付着は一般に少なくとも10MPaである。ビッカース硬度は一般に500 Hv0.3を上回り、より一般的には600〜900 Hv0.3である。層のセラミックは少なくともその自由面において好ましくは、特に2μm〜5μmで30%を上回る、高い赤外線の全反射を有する。したがって、層の材料は、壁のセラミックがするよりも多くの赤外線を反射する。その層の表面、すなわちその層の自由表面(別の材料を被覆されていない)、又はその層全体の塊でさえ、アルミナ又はジルコニア、特にイットリウム、カルシウム又はマグネシウムでドープされたジルコニアを含むか又は主原料とすることができる。「主原料とする」という表現は、材料が50質量%を上回る、例えばジルコニア又はドープされたジルコニアを含有することを意味する。特に、温度変化の影響下で金属基体の変形に極めて良好に追従するのを可能にするその高い熱膨張率を理由として、ジルコニアが好ましい材料である。セラミックの厚さは、好ましくは、20μm〜3mmである。セラミックの表面は手によって、又は機械的な表面研削機の補助によって研磨され、赤外線反射を高めるか、又はこれをよりさらに高指向性にすることができる。火炎溶射によるセラミックの堆積の場合、第一に、特に「Nicral」と呼ばれるNi−Cr−Al合金タイプの金属基体上に結合層を堆積することが推奨される。この結合層の厚さは一般に10μm〜500μmである。この結合層は「セラミック材料層」の一部を形成しないと考えられる。結合層は、任意の適切な方法、特にプラズマスプレ、電子ビーム蒸着又はPVDによって堆積されてもよい。実際には、結合層及びセラミックを同じ方法、具体的にはプラズマスプレによって堆積することがより簡易である。
【0019】
熱源は、特に炉内で確認ことができる、火炎又は電気抵抗などの任意の源であってもよい。熱源は、セラミック材料から構成される管の周りに巻かれた金属ワイヤから構成された「コイル状抵抗」として知られる電気抵抗から成ってもよい。熱源は、セラミック赤外線ラジエータ又はセラミック赤外線ヒータであってもよい。セラミック赤外線ラジエータは電気抵抗を含有するセラミックブロックである。セラミック赤外線ラジエータのセラミックは、電気抵抗を保持して保護するのに役立つ。セラミック赤外線ラジエータ内の電気抵抗は、スパイラルばねの形態のスパイラル抵抗であっても、又は平面内で起伏していてもよい。
【0020】
被膜付き金属板は、炉壁と熱源との間に配置されている。このことは具体的には、壁に対する法線が、壁を離れると、前記被膜付き板を通り、次いで前記熱源を通るように存在することを意味している。この法線は次いで、物体を加熱するために提供された空間を通り、ひいては、場合によっては物体自体を通る。法線は、壁を離れると、壁と板との間でいかなる固形要素にも遭遇しない。法線は、熱源を離れると、熱源と物体の場所との間で、又は熱源と物体との間でいかなる固形要素にも遭遇しない。
【0021】
板は、特に炉壁に板を固定することを目的としてかつ電気的な接続部を通すために、又は板を熱源に位置固定することを目的として若しくは光学的な温度測定装置(パイロメータ)を用いて直接的な目的を可能にするために、孔を有してもよい。
【0022】
好ましくは、被膜付き板と熱源との間に空間が残される。周囲空気で満たされたこの空間は、断熱エアクッションを構成する。特にセラミック赤外線ラジエータの事例において、板と熱源とを、熱源が固体である場合にスペーサのシステムを介して一緒に固定することが可能である。こうして、好ましくは、熱源の「第1」の側と被膜付き板との間には、2mm〜100mm、好ましくは10mm〜60mmの距離を有する「第1」の自由空間が形成される。この第1の自由空間は、加熱されるべき物体に対して熱源の背後に位置する空間に対応する。
【0023】
一方の側(「開放側」と呼ばれる側)を除いて、本発明による板の組立体によって熱源を取り囲むことができ、その結果、熱は、所望の加熱方向に対応する開放側の方向に、より良好に導かれる。この構造は、熱源と板との間に存在する任意のエアクッションを閉じ込めるのをより良好に可能にする。この場合、熱源の第1の側と被膜付き板との間の第1の自由空間は、すでに与えられている距離(2mm〜100mm、好ましくは10mm〜60mm)を示し、板と、他の非開放側の熱源との間の他の自由空間は一般に、前記自由空間よりも小さく、特に8mm未満である。
【0024】
好ましくは、金属板の2つの主面には、セラミック材料が被覆されている。
【0025】
本発明による炉は特にトンネル炉であってもよい。具体的には、加熱されるべき物体をトンネル炉内部で動かすことができる。
【0026】
熱源及び(炉壁と熱源との間に配置されている)被膜付き板はモジュールを形成する。特に、熱源及び板は、例えばスペーサのシステムによって、一緒に固定されてもよい。本発明による炉は、並置された複数のこのようなモジュールを含んでもよい。これらのモジュールには、加熱されるべき物体の位置、及び加熱されるべき物体の形状を考慮するように、互いに独立してエネルギが供給されてもよい。物体がトンネル炉のような炉内部で動く場合、炉内の物体の位置に応じて熱源へのエネルギ供給(特に、電気抵抗にエネルギが供給されるようになっている場合には電気供給)を制御することが可能である。
【0027】
本発明の板は少なくとも、熱源と炉壁との間に配置されている。板はさらに、与えられた具体的な形状によって、その側部で少なくとも部分的に熱源を取り囲み、加熱されるべき物体の位置に向かって側方輻射線を導いてもよい。このような特定の形状は、プレス、折り曲げ又は組み立て、特に種々の板片を溶接することによって、(セラミック被覆が施される前に)板に与えられてもよい。本発明の意味に含まれる板は、複数の板の組立体であってもよく、これらの板のうちの1つは、熱源と壁との間の「底部」であり、その他は「側部」、すなわち熱源の周りに配置されている部分である。当然に、熱源と、加熱されるべき物体の位置との間には自由空間が保持されている。
【0028】
側部又は側壁は一般に、ガラス上に(側壁とガラスとの間に物体が存在しないことから生じる)熱痕跡(thermal imprint)を残す。この痕跡は、偏光によって目視することができる。この技術によれば、(偏光器のための光路上に位置している)偏光フィルタが、光源と、本発明に応じて作成されたガラス(側部又は側壁が設けられている場合)との間に配置され、第2の偏光フィルタが、ガラスと観察者との間に配置されている。第2のフィルタの偏光方向は、第1のフィルタの偏光方向に対して90度を成す。側部又は側壁が使用される場合、処理されたガラスのゾーンにコントラストライン(contrast line)が現れる。これらのラインは実際には、これらの壁の温度がより低いことから生じるしるしである。
【0029】
このように、モジュールは例えば、(特に電気抵抗又はセラミック赤外線ラジエータタイプの)熱源と、側板(炉壁に対して垂直に配置されている)と、熱源と炉壁との間に配置された底板とを含んでいる。これらの板のそれぞれは本発明によるものであり、すなわち金属であり、セラミック材料から成る付着層によって被覆されている。側板は例えば4つであってもよい。被膜は、熱源に面した、板の主面上に位置している。板の他の主面に、同じ性質の被膜が配置されていてもよい。特に、側板が1つの面でだけ被覆されており、そして底板が1つの面でだけ被覆されているという組み合わせを有することが可能である。側板が1つの面でだけ被覆されており、そして底板がその2つの面で被覆されているという組み合わせを有することも可能である。側板がこれらの2つの面で被覆されており、そして底板が1つの面でだけ被覆されているという組み合わせを有することも可能である。側板がこれらの2つの面で被覆されており、そして底板がその2つの面で被覆されているという組み合わせを有することも可能である。
【0030】
並置されたモジュールでは、一般に、並置された2つのモジュールとして同時に役立つ側板を有することが可能である。この場合、これらの側板の2つの面には、セラミックが被覆される。
【0031】
本発明はまた、熱輻射線を導くために、セラミック材料の(特にプラズマスプレによって堆積された)付着層が主面のうちの1つに被覆された金属板を一般的に使用することに関する。
【0032】
本発明はまた、加熱装置であって、熱源と、セラミック材料の付着層が主面のうちの1つに被覆された金属板とを含んでおり、付着層が熱源に面して配置されており、前記板が前記熱源を取り囲んでおり、熱源に接続された少なくとも1つの固定ロッドが前記板を通過し、前記板が、いくつかの部分で構成され、かつ少なくとも1つの孔によって前記固定ロッドの周りで組み立てられており、前記孔の周囲部が前記板の種々の部分に属している、加熱装置に関する。このような装置(又はモジュール)は熱輻射線を、加熱されるべき物体に導くのに特に有用である。「熱源を取り囲む」という表現は、この熱源が、さらに、後に説明する図1及び図2の装置の場合のように、金属板の内面によって範囲が定められた容積内に全体的に含まれることを意味する。装置は、容易に着脱されるように、また当初は装置を受容するように提供されていなかった炉に取り付けられて組み立てられるように、いくつかの部分で構成されている。種々の板部分の組立体は、例えばナットボルトのタイプの、さねはぎシステム又は任意のその他の機械システムによって作成されてもよい。金属板は、炉の壁(この用語は最も広い意味、すなわち屋根、床、側壁などの意味で捕らえられるべきである。)に固定するための少なくとも1つのロッドを通過させるための、少なくとも1つの、一般には2つの孔を有している。この孔は、種々の金属板部分同士の間で分けられ、その結果、装置が組み立てられるときだけ形成される。これにより、孔はロッドの周りで作成及び解体されるので、ロッドに触れることなしに金属板を着脱することが可能になる。こうして、板が分解されると、孔の周囲部(又は輪郭)は種々の部分同士の間で分けられることが理解されることになる。固定ロッドは熱源に給電するための電気導体として役立つ。この事例では、固定ロッドは2本であってもよい。このように、本発明はまた、加熱装置であって、熱源と、セラミック材料の付着層が主面のうちの1つに被覆された金属板とを含んでおり、前記板が前記熱源を取り囲んでおり、熱源に接続された少なくとも1つの固定ロッドが前記板を通過し、前記板がいくつかの部分で構成され、かつ少なくとも1つの孔によって前記固定ロッドの周りで組み立てられており、前記孔の周囲部が前記板の種々の部分に属している、加熱装置に関する。付着層は、熱源に面する板の側に配置されている。特に、熱源は電気的であってもよく、少なくとも2つの固定ロッドが熱源に接続されていて、(組み立てられた状態において)板を通過しており、これらの少なくとも2つのロッドは、熱源によって消費される電気を伝導する。
【0033】
本発明はまた、本発明による炉又は装置によって提供される、物体を加熱する方法に関する。加熱は特に、曲げフレーム上に置かれた板ガラスを重力によって曲げるのに役立つことができる。特に、この用途では、被膜付き金属板は一般に700〜1000℃の温度である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
(原文記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0035】
一例として、本発明による複合障壁の効率を、一方では20mmに等しい厚さを有するモナライト板と、他方では2mmに等しい厚さを有する被覆されていない316鋼板と比較した。さらに、これらすべての幾何学的形状は等しかった。熱源は、板ガラスと反対側に配置されたセラミック赤外線ラジエータであった。本発明による熱障壁は、316Tiステンレス板と、セラミック赤外線ラジエータの側に位置するジルコニア被膜とを含むものであった。測定装置は図3の装置であった。炉は、600℃で周囲を加熱する手段(コイル状抵抗)とセラミック赤外線ラジエータとを有した。コイル状抵抗とガラスとの間にスクリーンを配置することにより、直接輻射を防止した。このようにして、ガラスは、セラミック赤外線ラジエータからの直接輻射線だけを受ける。ガラスとセラミック赤外線ラジエータとの間の距離は100mmであった。板とセラミック赤外線ラジエータとの間の距離は20mmであった。セラミック赤外線ラジエータには1200ワットの電力を供給した。熱平衡に達したときに、加熱された板ガラスの温度を測定した。表1に結果を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
図1は、熱源と本発明による障壁とを含む一体的な組立体を示している。熱源は、セラミックマトリックス3内に電気抵抗2を含むセラミック赤外線ラジエータ1である。熱障壁は、316Tiステンレス鋼から作成された板4を含んでおり、この板の、セラミック赤外線ラジエータに向いた面には、プラズマスプレによって堆積されたジルコニアの層5が被覆されている。セラミック赤外線ラジエータと被膜付き板との間に断熱空気ギャップ6を構成するために、セラミック赤外線ラジエータと板との間に一定の自由空間を維持する。スペーサ7が、板とセラミック赤外線ラジエータとの間に距離d(又は自由空間)を提供し、これら2つの構成要素を一緒に固定する。セラミック赤外線ラジエータ内部の抵抗と接触する2つの電気ワイヤ8は、板に設けられた孔を貫通している(これらの孔は、セラミック層が堆積される前に金属に穿孔されている)。これらの電気ワイヤは、前記ワイヤを柔軟な又はフレキシブルなままにする小型の並置されたセラミックシリンダ10により、電気的に絶縁されている。金属板は、最初には、いくつかの板片から成っており、これらが溶接部9によって一緒に組み立てられる。金属板は、熱源と炉壁との間に配置された「底部」と、セラミック赤外線ラジエータの周りに配置された側部とを含んでいる。このような構造は、加熱出力が導かれることになっている方向に対応する太い矢印によって示された方向の前記開放側を除いて、熱源を取り囲む一種の偏向障壁を構成するのを可能にする。構成要素の厚さは明確にするために、正確な縮尺ではない。
【0038】
図2は、本発明による並置された複数の熱源/障壁組立体の多様性を示している。これらの組立体は特に、炉の屋根、壁又は床、すなわち大まかに言えば耐火セラミックの「壁」を一列に並べることができる。この装置は、耐火セラミックの壁21のためのクラッディング(cladding)として配置されている。これは着脱しやすい調節可能なシステムから成る。これらの組立体のそれぞれは、5つの金属板、つまり4つの金属側板16(図2では各セラミック赤外線ラジエータの周りに2つだけが示されている)と、1つの底板17とによって取り囲まれたセラミック赤外線ラジエータ熱源15(セラミック赤外線ラジエータ、次いで板から離れている抵抗又は電気ワイヤは示されていない。)を含んでいる。側板は、並置された2つのモジュールとして作用する。図示の事例では、各板はその2つの主面18及び19上で、プラズマスプレによって堆積されたセラミックを用いて被覆されている。図示の事例では、底板17は、セラミック赤外線ラジエータに面する側でだけ被覆されている。側板16の両面被覆は、それぞれのセラミック赤外線ラジエータを、隣接するラジエータに対してより良好に断熱する。このことは、それぞれのモジュールの温度を、加熱されるべき物体に対するその位置に応じてより良好に個別化するのを可能にする。したがって、システムの組立体は融通性又はフレキシビリティが増大し、種々の並置したモジュールに様々な出力を与えることが可能になる。こうして、下向きの矢印によって示された方向、つまり所望の加熱方向の「開放」側として知られている側を除いて、種々の板が熱源を取り囲むことが理解されることになる。側部に極めて近接して作成された熱源のこのような周囲部は、比較的閉ざされたエアクッション20を形成する。このエアクッション20は、セラミック赤外線ラジエータの背後(被覆されていない側も)の断熱作用に貢献する。このように、熱源の「第1」の側とセラミック赤外線ラジエータの背後の被膜付き板との間の「第1」の(2mm〜100mm、好ましくは10mm〜60mmにわたって延びる、)自由空間22と、板と他の非開放側の熱源との間の、前記第1の自由空間よりも小さな他の自由空間23(特に8mm未満)とを区別することができる。さらに、壁21に対する法線24は、壁21を離れると、板を通り、次いで熱源を通ることから、板と壁との間が自由空間になっていることが明らかである。
【0039】
図3に示された装置によって、本発明によるセラミック赤外線ラジエータ/障壁のモジュールの効率が判断された。このモジュールはトンネル炉から成り、トンネル炉内部で台車31はレール32に沿って動くことができる。それぞれの台車は、2mm厚の板ガラス34が置かれた曲げフレーム33を搬送する。図示のトロリーは、セラミック赤外線ラジエータ/障壁のモジュール35の下に位置している。このモジュール35は、セラミック赤外線ラジエータと、セラミック赤外線ラジエータと炉の耐火セラミック壁37との間に配置された板とから成る。このモジュールは、炉の耐火セラミック壁として作用する炉の屋根の下に配置されている。炉の床に設けられた孔と台車とを用いて、パイロメータ36によってガラスの温度を測定する。熱平衡時に、静止状態である台車31で測定を行った。
【0040】
図4は、熱源の周りで組み立てることができる2つの部分41及び42である、本発明による金属板を示している。これらの板は、切り出され、折り曲げられ、そして溶接された平らな鋼板から作成されている。これらの板部分の内側53及び54には、プラズマスプレによってジルコニアが被覆されている。これら2つの部分41及び42は、舌片43及び44をスロット45及び46内に挿入することにより組み立てられる。組み立て時には、エッジ47とエッジ48とが並置される。これらのエッジ47及び48は、板が組み立てられたときに、2つの円形孔を形成するように設計された孔部分(49,50)及び(51,52)を含んでいる。これらの2つの孔は、熱源を炉の耐火壁に接続するために2つの固定ロッドが通過するのに役立つ。
【0041】
図5は、図4の板の部分41を、輻射セラミックパネル型の熱源55の周りに取り付けられた状態で示している。この熱源は、2つのロッド56及び57によって炉壁に保持されている。熱源55の周りに板を組み立てるために、図4の部分42は部分41(図4)に面するように配置するだけでよい。次いで孔部分(49,50)を、孔部分(51,52)によって完成させて、固定ロッドの周りに2つの円形孔を形成する。このような装置は、炉の屋根に固定されるのに特に適しており、固定ロッド(56,57)はこの場合鉛直方向である。これらのロッドは熱源55を保持し、熱源は金属板(41,42)を保持している。焼結アルミナから作成されたスペーサ58及び59が、熱源55と板(41,42)との間に一定の距離を提供する。これらのスペーサは、スロットによってロッドの周りに位置決めすることができる割り管(split tube)である。これらのスペーサは、熱源55と、ロッドのための孔を有する板の側との間に断熱エアクッションが存在することを保証する。ロッドは、熱源55のための給電部として作用することができる。このような事例では、電気的な絶縁を目的として、ロッドが板を貫通する場所でロッドを取り囲むために、等しくスリットを形成された2つの他の小型セラミック管が設けられている。これらの小型管はスペーサ58及び59内部に配置されている。組み立てられた板の内面は、熱源55を全体的に含有する平行六面体の形状を規定する。したがって、板は熱源を完全に取り囲む。(2つの部分である)このような板は、4つの側部と1つの底部とを含んでいる。板は、熱を下方に向かって導くための「開放」側を有している。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火セラミック壁と熱源とを含む空間内の物体を加熱する炉において、
前記壁と前記熱源との間に位置する、セラミック材料の付着層が主面の1つに被覆された少なくとも1つの金属板を有しており、
前記付着層は、前記熱源に面するように配置されていることを特徴とする、
炉。
【請求項2】
前記壁に対する法線が、前記壁を離れると、前記板を通り、次いで前記熱源を通るように存在することを特徴とする、
請求項1に記載の炉。
【請求項3】
前記法線が次いで前記空間を通ることを特徴とする、
請求項2に記載の炉。
【請求項4】
前記層がプラズマスプレ又は電子ビーム蒸着によって堆積されることを特徴とする、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の炉。
【請求項5】
前記層の材料が、前記壁の材料よりも多くの赤外線を反射することを特徴とする、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の炉。
【請求項6】
前記付着層の自由面がジルコニアを原材料としていることを特徴とする、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の炉。
【請求項7】
前記金属板が、鋼又はニッケル合金から作成されていることを特徴とする、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の炉。
【請求項8】
前記層の材料が、2μm〜5μmで30%を上回る、赤外線に対する全反射を有することを特徴とする、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の炉。
【請求項9】
前記層の材料の表面が、ジルコニア又はドープされたジルコニアを原材料としており、
場合によっては、前記金属板と前記セラミック材料層との間に結合層が存在していることを特徴とする、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の炉。
【請求項10】
前記熱源が、電気抵抗を含み、特に輻射セラミックパネルであることを特徴とする、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の炉。
【請求項11】
前記熱源の第1の側と被膜付き板との間の自由空間が2mm〜100mmであることを特徴とする、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の炉。
【請求項12】
前記板の2つの主面には、セラミック材料が被覆されていることを特徴とする、
請求項1〜11のいずれか1項に記載の炉。
【請求項13】
前記板が、前記開放側として知られている側を除いて、前記熱源を取り囲んでいることを特徴とする、
請求項1〜12のいずれか1項に記載の炉。
【請求項14】
前記壁に向けられた前記熱源の第1の側と被膜付き板との間の第1の自由空間が、2mm〜100mm、好ましくは10mm〜60mmであり、
前記板と他の前記開放側でない他の側の前記熱源との間の他の自由空間が、前記自由空間よりも小さく、特に8mm未満であることを特徴とする、
請求項13に記載の炉。
【請求項15】
複数のモジュールを含んでおり、各モジュールが板と熱源とを含んでいることを特徴とする、
請求項1〜14のいずれか1項に記載の炉。
【請求項16】
モジュールの前記熱源が、互いに独立して給電される電気抵抗を含んでいることを特徴とする、
請求項15に記載の炉。
【請求項17】
加熱装置であって、
熱源と、セラミック材料の付着層が主面のうちの1つに被覆された金属板とを含んでおり、
前記付着層が前記熱源に面して配置されており、
前記板が前記熱源を取り囲んでおり、
前記熱源に接続された少なくとも1つの固定ロッドが前記板を通過し、
前記板がいくつかの部分で構成され、かつ少なくとも1つの孔によって前記固定ロッドの周りで組み立てられており、
前記孔の周囲部が前記板の種々の部分に属している、
加熱装置。
【請求項18】
前記熱源が電気的な熱源であり、
少なくとも2つの固定ロッドが、前記熱源に接続されていて、前記板を通過し、
前記少なくとも2つのロッドが、前記熱源によって消費される電気を伝導することを特徴とする、
請求項17に記載の装置。
【請求項19】
物体を加熱する方法であって、
加熱が、請求項1〜18のいずれか1項に記載の前記炉又は前記装置によって提供されることを特徴する、
物体を加熱する方法。
【請求項20】
前記物体が板ガラスを含み、
加熱が、曲げフレーム上に配置された前記板ガラスの重力曲げを保証することを特徴する、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記被膜付き金属板が700〜1000℃の温度であることを特徴する、
請求項19又は20に記載の方法。

【公表番号】特表2012−523541(P2012−523541A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504052(P2012−504052)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050653
【国際公開番号】WO2010/116082
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】