説明

燃料カートリッジ

【課題】携帯電話、ノート型パソコン、PDA、デジタルカメラ及び電子手帳などの携帯用電子機器の電源として用いられる小型の燃料電池用に好適な燃料カートリッジを提供する。
【解決手段】燃料電池本体に連結自在となる燃料カートリッジであって、該燃料カートリッジは、液体燃料を充填してなる変形可能な可撓性袋からなる燃料貯蔵袋10と、該燃料貯蔵袋を収容すると共に、燃料貯蔵袋単体での最大燃料貯蔵量以下の内容積となる外容器20とから構成されたことを特徴とする燃料カートリッジA。
【効果】 燃料カートリッジの耐温度性を高めることができ、加熱時の耐久性に優れると共に、液体燃料を燃料電池本体へ安定的に供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料カートリッジに関し、更に詳しくは、携帯電話、ノート型パソコン、PDA、デジタルカメラ及び電子手帳などの携帯用電子機器の電源として用いられる小型の燃料電池用に好適な燃料カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池は、空気電極層、電解質層及び燃料電極層が積層された燃料電池セルと、燃料電極層に還元剤としての燃料を供給するための燃料供給部と、空気電極層に酸化剤としての空気を供給するための空気供給部とからなり、燃料と空気中の酸素とによって燃料電池セル内で電気化学反応を生じさせ、外部に電力を得るようにした電池であり種々の形式のものが開発されている。
【0003】
近年、環境問題や省エネルギーに対する意識の高まりにより、クリーンなエネルギー源としての燃料電池を、各種用途に用いることが検討されており、特に、メタノールと水を含む液体燃料を直接供給するだけで発電できる燃料電池が注目されてきている(例えば、特許文献1及び2参照)。
これらの中でも、送液ポンプや送気ポンプなどの補機を使用せずに、燃料カートリッジ等に充填されたメタノール水溶液等の供給に毛管力を利用した小型化に好適なパッシブ型の各液体燃料電池等が知られている(例えば、特許文献3〜5参照)。
【0004】
これらの燃料電池に用いる燃料カートリッジとしては、例えば、燃料室に、容易に破れず、燃料が染み出すことが無い物質からできた燃料袋を用いて、燃料の体積の変化に対応してカートリッジの見掛け体積を変化し得る機構を備えた燃料カートリッジが知られている(例えば、特許文献6参照)。この燃料カートリッジに用いる燃料袋は、外容積に対する燃料充填効率が高い点、燃料カートリッジを透明体で構成すれば燃料袋の変形度合いに応じて残量を視認できる点、カートリッジの向きによらず燃料供給が可能な点及び形状の自由度が高い点などの利点がある。
【0005】
しかしながら、揮発性の高いメタノール等を充填した燃料袋は、燃料電池の稼動による加熱等により容易に膨張し、気密性が失われるという課題がある。例えば、ラミネートパウチによる燃料袋では、膨張により接着部分に応力が集中し、接着層と基材層とが剥離し気密性が失われるデラミネーションという現象が発生する。
【0006】
特に、70℃以上の高温下では、メタノールの蒸気圧が124KPa以上に達するため、パウチ単体では容易にデラミネーションが発生し、パウチ袋が破裂することで機密性が失われる。ラミネートパウチの接着層の厚みを増やすことで、パウチ袋の耐圧性は多少高めることができるが、124KPaの圧力差に耐えられないという課題があり、燃料電池本体に直接液体燃料を安定的に供給することができないのが現状である。
【特許文献1】特開平5−258760号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平5−307970号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開昭59−66066号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開平6−188008号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開2003−229158号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献6】特開2006−24400号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の燃料カートリッジにおける課題及び現状に鑑み、これを解消するためになされたものであり、燃料カートリッジの耐温度性を高めることにより、稼動の際の加熱時の耐久性に優れると共に、液体燃料を燃料電池本体へ安定的に供給することができる燃料カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、燃料電池本体に連結自在となる燃料カートリッジにおいて、液体燃料を充填してなる変形可能な特定構造の可撓性袋からなる燃料貯蔵袋と、該燃料貯蔵袋を収容する特定構造の外容器とから少なくとも構成することにより、上記目的の燃料カートリッジが得られることに成功し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(14)に存する。
(1) 燃料電池本体に連結自在となる燃料カートリッジであって、該燃料カートリッジは、液体燃料を充填してなる変形可能な可撓性袋からなる燃料貯蔵袋と、該燃料貯蔵袋を収容すると共に、燃料貯蔵袋単体での最大燃料貯蔵量以下の内容積となる外容器とから構成されたことを特徴とする燃料カートリッジ。
(2) 燃料貯蔵袋は、ラミネートフィルムを3方シール袋形状、2方シール袋形状、もしくは、ピロー袋形状に成型してあり、かつ、その接着部がそれぞれ折り返された状態で、外容器に収納されていることを特徴とする上記(1)に記載の燃料カートリッジ。
(3) 燃料貯蔵袋は、長さ方向、幅方向、高さ方向の少なくとも一つの断面線長が、外容器での燃料貯蔵袋が接する部分の内断面線長よりも長く設定されていることを特徴とする上記(1)に記載の燃料カートリッジ。
(4) ラミネートフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂からなる厚さ20〜200μmの接着層を有することを特徴とする上記(2)又は(3)に記載の燃料カートリッジ。
(5) ラミネートフィルムは、アルミ箔、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アルミ若しくはシリカ蒸着フィルムからなる厚さ5〜100μmのバリア層を有することを特徴とする上記(2)〜(4)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
(6) ラミネートフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、セロハン、紙、布、不織布からなる厚み10〜1000μmの表面層を有することを特徴とする上記(2)〜(5)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
(7) 外容器は、合成樹脂、ガラス、金属からなる容器であることを特徴とする上記(1)〜(6)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
(8) 外容器は、完全に密閉されておらず、その内部に空気を取り込める構造であることを特徴とする上記(1)〜(7)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
(9) ラミネートパウチには、液体燃料を排出するための弁体が挿入された燃料排出部材が接着され、かつ、燃料排出部材は、ラミネートフィルムとラミネートフィルムの接着部に挿入されておらず、ラミネートフィルムに貫通口を設け、該貫通口に燃料排出部を接着し、かつ、燃料排出部とラミネートフィルムとの接着部が、ラミネートフィルムの貫通口の周囲を覆う状態で接着されていことを特徴とする上記(2)〜(6)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
(10) 燃料貯蔵袋内の空気の常温常圧下での体積は、液体燃料の体積の10%以下であることを特徴とする上記(1)〜(9)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
(11) 液体燃料の充填体積は、外容器に収容された状態での燃料貯蔵袋の容量(体積)の99%以下であることを特徴とする上記(1)〜(10)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
(12) 燃料貯蔵袋内の空気の常温常圧下での体積Aと、液体燃料の充填量(体積)Fと、外容器に収容された状態での燃料貯蔵袋の容量Pとが次式に従うことを特徴とする上記(1)〜(11)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
A/〔P−(F+A)〕<0.1
(13) 液体燃料は、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル若しくはその水溶液からなる揮発性燃料であることを特徴とする上記(1)〜(12)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
(14) 液体燃料は、溶存酸素濃度が、50%airsatur.以下であることを特徴とする上記(1)〜(13)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、燃料貯蔵袋である可撓性袋をその最大容積よりも小さな内容積の外容器で覆うことにより、可撓性袋内の液体燃料が揮発し内部が加圧されても、その内圧を可撓性袋自体ではなく、その外側の外容器で押さえることができるため、可撓性袋の耐内圧性に依ることなく、燃料カートリッジの耐温度性を高めることができるので、加熱時の耐久性に優れると共に、液体燃料を燃料電池本体へ安定的に供給することができる燃料カートリッジが提供される。
請求項2の発明によれば、外容器内でのラミネートフィルムから構成される燃料貯蔵袋の強度の確保ができ、しかも、この燃料貯蔵袋を簡便に作製することができる。
請求項3の発明によれば、燃料貯蔵袋の断面の線長が、外容器での燃料貯蔵袋が接する部分の内断面線長よりも長く設定されていることで、燃料カートリッジが加熱され、揮発性燃料の蒸気圧により、燃料貯蔵袋の内圧が上昇しても、その内圧を燃料貯蔵袋自体ではなく、その外側の外容器で押さえることができるので、燃料貯蔵袋の破裂(デラミネーション)を防止でき、燃料カートリッジの耐熱性を高めることができる。
請求項4の発明によれば、ラミネートパウチの接着強度を更に高めることができる。
請求項5の発明によれば、ラミネートパウチの空気バリア性を更に高めることができると共に、燃料のラミネートパウチからの揮発減量を更に低減させることができる。
請求項6の発明によれば、ラミネートパウチの強度を更に高めることができる。
請求項7の発明によれば、外容器に耐圧性を更に確保することができる。
請求項8の発明によれば、燃料貯蔵袋内の燃料が消費されても、負圧を生じさせることなく、燃料を効率よく排出することができる。
請求項9の発明によれば、ラミネートフィルムの接着部に燃料排出部材を設置しないことで、ラミネートフィルムの接着部を折り返して外容器に挿入することができ、また、スパウトとラミネートフィルムとの接着部も、同様に、内圧上昇時に外容器内面に押し付けることができるため燃料カートリッジの耐熱性を更に高めることができる。
請求項10の発明によれば、燃料貯蔵袋内に空気を混入させないことで、燃料排出時に燃料ではなく、空気を排出することを防止することができる。
請求項11の発明によれば、外容器に収容され、且つ燃料が充填された状態で、燃料貯蔵袋は更に膨張できる余地を残っているため、加熱時燃料が揮発し燃料貯蔵袋が膨張することができ、燃料カートリッジの耐熱性を高めることができる。
請求項12の発明によれば、外容器に収容され、燃料が充填された状態で、燃料貯蔵袋は更に膨張できる余地を残っており、且つパウチ袋内の空気の体積が燃料貯蔵袋が膨張できる余地の10分の1以下であるため、加熱時燃料が揮発し燃料貯蔵袋が膨張することによって、カートリッジ内部の空気の分圧が10分の1以下となり、カートリッジ内部の圧力を低減でき、燃料カートリッジの耐熱性を高めることができる。
請求項13の発明によれば、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル及びその水溶液を揮発性液体燃料として用いることができる。
請求項14の発明によれば、燃料電池本体への空気の混入を更に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳しく説明する。
図1〜図4は、本発明の燃料カートリッジの実施形態の一例(第1実施形態)を示すものである。
本第1実施形態の燃料カートリッジAは、図1(a)及び(b)に示すように、燃料電池本体に連結自在となるものであり、液体燃料を充填してなる変形可能な可撓性袋からなる燃料貯蔵袋10と、該燃料貯蔵袋10を収容すると共に、燃料貯蔵袋単体10での最大燃料貯蔵量以下の内容積となるハードケースとなる外容器20とから構成されている。
【0012】
燃料貯蔵袋10は、燃料の充填効率の点、変形度合いに応じて残量を視認できる点、カートリッジの向きによらず燃料供給が可能な点及び形状の自由度が高い点から、変形可能な可撓性袋からなるものであれば、特に限定されないが、更に簡便に製造する点、更に強度を高める点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、セロハン、紙、布、不織布からなる表面層を有するラミネートフィルムを融着してなるラミネートパウチからなるものが好ましく、また、ラミネートフィルムには、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂からなる接着層を有することが好ましい。
上記表面層の厚みは、ラミネートパウチの強度を更に高める点、コスト、製造性の点から、好ましくは、10〜1000μm、特に好ましくは、10〜100μmが望ましい。また、接着層の厚みは、ラミネートパウチの接着強度を更に高める点、コスト、製造性の点から、20〜200μmであるものが好ましく、特に好ましくは、20〜100μmが望ましい。
【0013】
更に、ラミネートフィルムには、アルミ箔、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アルミ若しくはシリカ蒸着フィルムからなるバリア層を有することが好ましく、このバリア層の厚みはラミネートパウチの空気バリア製を更に高めることができ、更に後述する液体燃料からの揮発減量を更に低減する点、コスト、製造性の点から、5〜100μmであるものが好ましく、特に好ましくは、10〜30μmが望ましい。
【0014】
燃料貯蔵袋10となるラミネートパウチは、その形状は特に限定されないが、外容器内でのラミネートパウチの強度を更に確保する点から、3方シール袋、2方シール袋若しくはピロー袋形状であるものが好ましい。
図2(a)〜(d)は、本実施形態となる燃料貯蔵袋10の一例であり、接着層11が厚さ40μmのポリエチレン、表面(基材)層12が厚さ20μmのナイロン、バリア層13が厚さ10μmのアルミ箔から構成されるものであり、図2(b)及び(c)に示すように、一枚のラミネートフィルムの接着部(接着層)11をそれぞれ折り返された状態で接着することにより、図2(a)に示す燃料貯蔵袋10が作製され、外容器20内に収容されている。なお、図2(b)中の14aは谷折部、14bは山折部、15は燃料貯蔵袋10内の液体燃料を排出する排出口部となるスパウト25を取り付けるための貫通部を示す。
この収容構造では、液体燃料が揮発することで内部が加圧され、外容器20内でラミネートパウチが膨張しても、ラミネートパウチの接着部が外容器20内面に押さえつけられる構造となるため、ラミネートパウチの接着部に応力が集中せず、ラミネートパウチの接着部の破裂を防止することができることとなる。
【0015】
この燃料貯蔵袋10を収容する外容器20は、燃料貯蔵袋単体10での最大燃料貯蔵量以下の内容積となるものである。これにより、燃料貯蔵袋10である可撓性袋をその最大容積よりも小さな内容積の外容器30で覆うことにより、可撓性袋10内の液体燃料が揮発し内部が加圧されても、その内圧を可撓性袋自体ではなく、その外側の外容器20で押さえる構造とするものである。
外容器20の材質としては、耐久性、ガス不透過性(酸素ガス、窒素ガス等に対するガス不透過性)、更に、液体燃料の残量を視認できるように視認性があるものから構成されることが好ましい。
外容器20としては、例えば、視認性が要求されない場合であれば、耐圧性をさらに確保する点から、アルミニウム、ステンレスなどの金属、合成樹脂、ガラスなどが挙げられるが、前記した液体燃料の残量の視認性、ガス不透過性、製造や組立時のコスト低減及び製造の容易性などから、好ましくは、上記各特性を有するポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、ポリアクリルニトリル、ナイロン、セロハン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの単独もしくは2種以上の樹脂を含む単層構造、2層以上の多層構造からものが挙げられる。多層構造の場合は、少なくとも1層が、前記した性能(ガス透過度)を持つ樹脂で構成されていれば、残りの層は通常の樹脂でも実使用上問題はない。このような多層構造のチューブは、押出し成形、射出成形、共押出し成形などにより製造することができる。
【0016】
外容器20の厚みは、耐圧性、製造や組立時のコスト低減及び製造の容易性の点から、0.1〜5mmであることが好ましい。また、外容器20は、完全に密閉されておらず、その内部に空気を取り込める構造であることが好ましく、本実施形態では、スパウト25と外容器20との間に空気取り込み用の隙間が形成されている。この空気を取り込める構造を有する外容器により、燃料貯蔵袋10内の液体燃料Fが消費されても、負圧を生じさせることなく、液体燃料を効率よく排出することができることとなる。
上記外容器20の大きさとしては、特に限定されないが、5〜50×5〜100×30〜200mmとすることができる。
【0017】
本実施形態では、ラミネートパウチからなる燃料貯蔵袋10には、ラミネートパウチを破くことなく燃料を効率よく排出するために、液体燃料を排出するための燃料排出部材となるスパウト25が融着されている。
液体燃料を排出するためのスパウト25は、図3(a)及び(b)に示すように、基部26と排出口部27とから構成されており、ラミネートパウチとスパウトとの接着強度を更に高める点から、ラミネートフィルムの接着層、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂等と同一素材から構成されることが好ましい。
本実施形態のスパウト25は、ラミネートフィルムとラミネートフィルムの接着部11に挿入されておらず、ラミネートフィルムを貫通した状態、貫通部15を貫通して基部26がラミネートフィルムに融着されている。この取り付け構造となるスパウト25では、ラミネートフィルムの接着部にスパウトを設置しないことで、ラミネートフィルムの接着部を折り返して外容器20に挿入することができ、また、スパウト25とラミネートフィルムとの接着部も、同様に、内圧上昇時に外容器20内面に押し付けることができるため、燃料カートリッジの耐熱性を更に高めることができることとなる。
【0018】
このスパウト25内には、図1(b)及び図3(b)、並びに、図4(a)〜(c)に示すように、外容器20内の燃料貯蔵袋10に充填される液体燃料を外容器30外に排出するための弁体、例えば、逆止弁30を備えており、本実施形態ではスパウト25内に逆止弁30が直接又は弁体アダプターを介して収納される構造となっている。この逆止弁30により、燃料排出時及び保管時に、燃料貯蔵袋10内に空気などの異物が混入すること及び燃料が零れることを防止することができる。
この逆止弁30は、例えば、液体燃料供給管などの液体燃料供給部材を挿入することで、燃料貯蔵袋10と内部とを連通させ、燃料貯蔵袋10内部の液体燃料Fを外部へ供給させる直線状のスリットからなる連通部31が形成されると共に、前記弁体30がスパウト25又は弁体アダプターに収納された際に、弁体外縁部32により弁体30が径方向に圧縮されることで、前記連通部31に圧縮力が作用するようにしたものであり、本実施形態では図4(b)に示すように楕円状であって、短径方向xに連通部となるスリット31を設け、長径方向yに外縁部32を圧縮するようにとしたものであり、スリット31が閉じる方向に圧縮力が作用する。
【0019】
なお、上記連通部31を直線状のスリットで形成したが、液体燃料供給部材を挿入することで燃料貯蔵袋10と内部とを連通させ、燃料貯蔵袋10内部の液体燃料Fを外部へ供給できる構造となるものであれば、特に限定されず、十字状や放射状のスリット、スリットを複数形成し各スリットが同一箇所で交差するようにした構造、円孔状、矩形孔状であってもよい。好ましくは、上記直線状のスリットが望ましい。また、外縁部32の形状は、特に限定されず、上記形態のように楕円状の他、円形状に形成することができる。
【0020】
この弁体30の内面側には、液体燃料供給部材を挿入する際にスムーズに挿入できるように燃料貯蔵袋10の内部に向かって凸状のテーパー面(突起)33を形成することが好ましい。
スパウト25には、図4(d),(e)に示すようなアダプター34が設けられ、アダプター34は筒状に形成され、その内周面にストッパー部34a,34aが形成された本体部34bと、筒状に形成された固定部材34cとからなり、ストッパー部34aと固定部材34cとの間で上記構成の弁体30を挟持してなるものである。
弁体30とアダプター34との組合せに関して、図4に示すように、楕円形状のスリット弁と円形状のアダプターの場合が挙げられ、また、逆に、円形状のスリット弁と楕円形状のアダプターとしてもよく、この場合、スリット弁のスリット方向をアダプターの長径とすることが必要である。
この構造の弁体30により、使用休止(未使用)時にも空気などの異物の浸入を防止する構造となっている。これは、空気などの浸入により燃料貯蔵袋10内の圧力増加などによる燃料漏れ、噴出しなどの事故を防止するためである。
【0021】
この弁体30、アダプター34としては、液体燃料の漏洩をより効果的に防止する点から、上記構造等で、液体燃料Fに対して気体透過性の低い材料からなり、かつ、JIS K 6262−1997で規定される圧縮永久歪み率が20%以下の材料から構成されるものが好ましい。
これらの弁体30、アダプター体34の材料としては、収容される液体燃料Fに対して保存安定性、耐久性、ガス不透過性、燃料供給管に密着できる弾性を有し、上記特性を有するものであれば、特に限定されず、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、ポリアクリルニトリル、ナイロン、セロハン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、二トリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどのゴム、熱可塑性エラストマーが挙げられ、通常の射出成形や加硫成形などによって製造することができる。
【0022】
用いる液体燃料Fとしては、メタノールと水とからなるメタノール液が挙げられるが、燃料電池本体の燃料電極体において燃料として供給された化合物から効率良く水素イオン(H+)と電子(e-)が得られるものであれば、液体燃料は特に限定されず、燃料電極体の構造などにもよるが、例えば、ジメチルエーテル(DME)、エタノール液、ギ酸、ヒドラジン、アンモニア液、エチレングリコール、水素化ホウ素ナトリウム水溶液、ショ糖水溶液などの液体燃料も用いることができる。好ましい液体燃料としては、効率性、コストの点などから、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル若しくはその水溶液からなる揮発性燃料であるものが望ましい。
また、これらの液体燃料の濃度は、燃料電池の構造、特性等により種々の濃度の液体燃料を用いることができ、例えば、1〜100%濃度の液体燃料を用いることができる。
【0023】
本発明において、用いる液体燃料Fは、溶存酸素濃度が50%airsatur.以下、好ましくは、0〜10%airsatur.であることが望ましい。なお、上記50%airsatur.以下とは、液体燃料中における飽和酸素濃度(100%)に対して、50%以下とすることを意味する。
用いる液体燃料の溶存酸素濃度を50%airsatur.以下、好ましくは、0〜10%airsatur.とすることにより、燃料貯留体への酸素の混入を更に防止することができる。液体燃料中における酸素の存在は、燃料電池の稼動率に悪影響を及ぼすものであり、極力少ないほうが良い。用いる液体燃料中の溶存酸素濃度を低下せる手段としては、例えば、減圧超音波脱気にて(10kPa、10min)脱気処理する方法等により溶存酸素濃度を所定値以下とすることができる。
【0024】
本発明において、燃料貯蔵袋10に充填される液体燃料は、空気が混入しない状態で液体燃料が充填されているか、または、燃料貯蔵袋10内の空気の量は、液体燃料の10%以下であることが好ましい。これにより、燃料貯蔵袋10内に空気を混入させないことで、燃料排出時に燃料ではなく、空気を排出することを防止することができる。
また、外容器20内に収容された燃料貯蔵袋10内には、液体燃料が完全(満タン、100%)に充填されておらず、外容器20内で燃料貯蔵袋10が膨張できる余地が残っている量の液体燃料が充填されていることが好ましい。この実施形態では、外容器10に収容され、かつ、燃料が充填された状態で、燃料貯蔵袋10内が更に膨張できる余地を残しておくことで、加熱時燃料が揮発し燃料貯蔵袋10が膨張したとき、内部に混入していた空気圧(窒素及び酸素の分圧の合計)が低下するため、燃料の蒸気圧と空気圧との合計である燃料貯蔵袋10の内圧を低く保つことができ、燃料カートリッジの耐熱性を更に高めることができることとなる。
【0025】
更に、外容器20内で燃料貯蔵袋10が膨張できる容積は、燃料貯蔵袋10内の空気量の10倍以上であることが好ましい。この形態では、燃料貯蔵袋10に混入した空気の量を、燃料貯蔵袋10が膨張できる量の10分の1以下とすることで、加熱時燃料貯蔵袋10内の空気圧を0.1気圧(10KPa)以下とすることができるため、燃料貯蔵袋10の空気圧を低く保つことができ、燃料カートリッジの耐熱性を更に高めることができることとなる。
【0026】
このように構成される本発明の燃料カートリッジAでは、液体燃料を充填してなる変形可能な可撓性袋からなる燃料貯蔵袋10と、該燃料貯蔵袋を収容すると共に、燃料貯蔵袋単体での最大燃料貯蔵量以下の内容積となる外容器20とから構成することにより、可撓性袋内の液体燃料が揮発し内部が加圧されても、その内圧を可撓性袋自体ではなく、その外側の外容器で押さえることができるので、可撓性袋の耐内圧性に依ることなく、燃料カートリッジの耐温度性を高めることができるので、稼動時などの加熱時の耐久性に優れると共に、液体燃料を燃料電池本体へ安定的に供給することができる燃料カートリッジが得られることとなる。
【0027】
図5〜図7は、上記実施形態において、燃料カートリッジの長さ方向、幅方向、高さ方向を図示するための図面であり、図5(a)及び(b)は、外容器の長さ方向、幅方向、高さ方向を図示した斜視図、縦断面図であり、図6は燃料貯蔵袋の長さ方向、幅方向、高さ方向を図示した斜視図であり、図7は、燃料貯蔵袋を構成するラミネートフィルムの展開図で、対応する位置に断面線を記入した図面を示すものである。
【0028】
この燃料カートリッジBは、液体燃料を充填してなる変形可能な可撓性袋からなる燃料貯蔵袋10と、該燃料貯蔵袋10を収容すると共に、燃料貯蔵袋10単体での最大燃料貯蔵量以下の内容積となる外容器20とから構成すると共に、ラミネートフィルムの接着部分を含む燃料貯蔵袋40の断面の線長41〜43の少なくとも1つが、外容器50でのラミネートフィルムの接着部分を含む燃料貯蔵袋40の断面の線長が接する部分の内断面線長51〜53の少なくとも1つよりも長く設定されているものである。
【0029】
特に好ましくは、燃料貯蔵袋40の長さ方向の断面線長41は、外容器50の長さ方向の内断面線長51よりも長く設定され、また、燃料貯蔵袋40の幅方向の断面線長42は、外容器50の幅方向の内断面線長52よりも長く設定されていること、更に、燃料貯蔵袋40の高さ方向の断面線長43が、外容器50の高さ方向の内断面線長53よりも長く設定されているものが望ましい。
【0030】
図8は、別形態となるラミネートパウチからなる燃料貯蔵袋であり、図9(a)は燃料貯蔵袋の展開図、(b)はその断面の線長を記入した展開図である。
この形態の燃料貯蔵袋40aにおいても、ラミネートフィルムの接着部分を含む燃料貯蔵袋40aの断面の線長41a〜43aの少なくとも1つが、外容器50でのラミネートフィルムの接着部分を含む燃料貯蔵袋40の断面の線長が接する部分の内断面線長51〜53の少なくとも1つよりも長く設定されているものである。
特に好ましくは、燃料貯蔵袋40aの長さ方向の断面線長41aが、外容器50の長さ方向の内断面線長51よりも長く設定され、また、燃料貯蔵袋40aの幅方向の断面線長42aが、外容器50の幅方向の内断面線長52よりも長く設定され、更に、燃料貯蔵袋40aの高さ方向の断面線長43aが、外容器50の高さ方向の内断面線長53よりも長く設定されていることが望ましい。
【0031】
この形態で用いる液体燃料Fも、上述と同様であり、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル若しくはその水溶液からなる揮発性燃料などの使用が望ましく、特に好ましくは、溶存酸素濃度が50%airsatur.以下、好ましくは、0〜10%airsatur.であるものが望ましい。
燃料排出部材となるスパウト25は、上述と同様に、ラミネートフィルムとラミネートフィルムの接着部に挿入されておらず、ラミネートフィルムを貫通した状態でラミネートフィルムに接着されていることが好ましく、更に好ましくは、ラミネートフィルムに貫通口46を設け、該貫通口46に燃料排出部25を接着し、かつ、燃料排出部25とラミネートフィルムとの接着部が、ラミネートフィルムの貫通口46の周囲を覆う状態で接着されていることが好ましい。
【0032】
また、燃料貯蔵袋40aには、上述と同様に、空気が混入しない状態で液体燃料が充填されていることが好ましく、本発明の更なる効果を発揮せしめる点から、燃料貯蔵袋40a内の空気の常温常圧下での体積Aは、液体燃料の体積Fの10%以下であることが好ましく、更に好ましくは、1%以下であることが望ましい。これにより、燃料貯蔵袋40a内に空気を極力混入させないことで、燃料排出時に燃料ではなく、空気を排出することを防止することができる。
更に、外容器50内に収容された燃料貯蔵袋40a内には、上述の実施形態と同様に、液体燃料が完全に充填されておらず、外容器50内で燃料貯蔵袋が膨張できる余地が残っている量の液体燃料が充填されていることが望ましく、外容器50内で燃料貯蔵袋40aが膨張できる容積は、燃料貯蔵袋40内の空気量の10倍以上であることが望ましい。
【0033】
図8及び図9の形態においても、上述と同様に、燃料貯蔵袋単体での最大燃料貯蔵量以下の内容積となる外容器とから構成されることが好ましく、更に、液体燃料の体積は、外容器50に収容された状態での燃料貯蔵袋40aの容量(体積)よりも少なく充填されていることが望ましい。特に好ましくは、液体燃料の充填体積は、外容器50に収容された状態での燃料貯蔵袋の容量(体積)の99%以下であることが望ましい。これにより、外容器50に収容され、且つ燃料が充填された状態で、燃料貯蔵袋40aは更に膨張できる余地を残っているため、加熱時燃料が揮発し燃料貯蔵袋40aが膨張することができ、燃料カートリッジの耐熱性を更に高めることができる。
特に、本発明の更なる効果を発揮せしめる点から、燃料貯蔵袋40a内の空気の常温常圧下での体積Aと、液体燃料の充填量(体積)Fと、外容器50に収容された状態での燃料貯蔵袋40aの容量Pとが次式に従うことが望ましい。
A/〔P−(F+A)〕<0.1
上記式を充足することにより、外容器50に収容され、燃料が充填された状態で、燃料貯蔵袋40aは更に膨張できる余地を残っており、且つ燃料貯蔵袋40a内の空気の体積が燃料貯蔵袋40aが膨張できる余地の10分の1以下であるため、加熱時燃料が揮発し燃料貯蔵袋が膨張することによって、カートリッジ内部の空気の分圧が10分の1以下となり、カートリッジ内部の圧力を低減でき、燃料カートリッジの耐熱性を更に高めることができる。なお、上記第1実施形態においても、上記式を充足することが望ましい。
【0034】
図8及び図9の形態において、用いる液体燃料は、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル若しくはその水溶液からなる揮発性燃料である場合、50℃での燃料貯蔵袋40の内圧(外気との相対圧力)が、液体燃料の蒸気圧に対して、100〜120%であること、並びに、80℃での燃料貯蔵袋内圧(外気との相対圧力)が、燃料貯蔵袋の蒸気圧に対して、100〜120%であることが望ましく、特に、95wt%以上のメタノール水溶液が充填された燃料カートリッジにおいて、50℃での燃料貯蔵袋内圧(外気との相対圧力)が、60kPa以下、80℃での燃料貯蔵袋内圧(外気との相対圧力)が、200kPa以下であることが望ましい。この場合も、加熱時の燃料貯蔵袋40内の空気圧を0.1気圧(10KPa)以下とすることができるため、燃料貯蔵袋40の内圧を低く保つことができ、燃料カートリッジの耐熱性を更に高めることができる。
【0035】
このように構成される燃料カートリッジBでは、液体燃料を充填してなるラミネートフィルムを接着したラミネートパウチからなる燃料貯蔵袋40と、該燃料貯蔵袋40を収容する外容器50とから構成され、かつ、上記燃料貯蔵袋40は、断面の線長が、外容器50での燃料貯蔵袋40が接する部分の内断面線長よりも長く設定されていることで、燃料カートリッジが加熱され、揮発性燃料の蒸気圧により、燃料貯蔵袋40の内圧が上昇しても、その内圧を燃料貯蔵袋40自体ではなく、その外側の外容器で押さえることができるので、燃料貯蔵袋40の破裂(デラミネーション)を防止でき、燃料カートリッジの耐熱性を高めることができることとなる。
特に、ラミネートフィルムの接着部分を含む断面の線長が、外容器50での燃料貯蔵袋40が接する部分の内断面線長よりも長く設定されていることで、内圧上昇時に破裂しやすい接着部を外容器で押さえることができ、より燃料カートリッジの耐熱性を高めることができる。
更に、燃料貯蔵袋40の長さ方向、幅方向、高さ方向の断面線長41が、外容器50の長さ方向、幅方向、高さ方向の内断面線長51よりも長く設定することで、ラミネートパウチの長さ、幅、高さ方向のデラミネーションを更に防止することができる。
【0036】
本発明の燃料カートリッジは、上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内で種々変更することができる。
例えば、燃料排出部材となるスパウト25内に挿入する逆止弁30をゴム部材により構成したが、スプリング部材を備えた逆止弁を用いてもよく、また、燃料カートリッジを連結自在となる発電セルを含む燃料電池本体の構造も特に限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例及び比較例により、更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1〕
下記作製法により、燃料カートリッジを得た後、その耐熱性を評価した。
(外容器の作製、図1に準拠)
ポリプロピレン製容器:外寸法;20×30×50mm
内寸法;18×28×48mm
内容積;24.2cc
長さ方向の内断面線長;132mm
幅方向の内断面線長 ;152mm
高さ方向の内断面線長;92mm
(燃料貯蔵袋の作製、図2及び図3に準拠)
ラミネートフィルム:寸法;120×100mm
接着層;ポリエチレン40μm
バリア層;アルミ箔10μm
基材層;ナイロン20μm
スパウト挿入用 貫通孔 φ6.4mm
【0039】
図2に準拠し、パウチ(マチ付きピロー袋)を作製した。接着部の厚さ5mm。
スパウト:材質;ポリエチレン、最大外径10m、筒部外径6mm、筒部内径5mm、長さ10mm
逆止弁;材質;ブチルゴム、外径5mm、長さ3mm、スリット長2mm。
図2に準拠し、パウチ折り返し、最大内容積30cc、長さ方向の断面線長;140mm、幅方向の断面線長;160mm、高さ方向の断面線長;100mm
【0040】
(燃料カートリッジの作製)
図1に準拠し、外容器内に燃料貯蔵袋を挿入した後、密封した。
燃料カートリッジの最大内容積は23.5cc。下記に示す燃料を充填した。
燃料種:メタノール99.8%、溶存酸素率(量):8.8%airsatur.〔99.8%メタノール水溶液を減圧超音波脱気にて(10kPa、10min)脱気処理し、その溶存酸素率(量)をドイツ PreSens GmbH社製のMicrox TX3で測定した。、以下同様〕、燃料充填量:23cc、空気混入量:0cc
【0041】
〔実施例2〕
燃料カートリッジの作製方法は、実施例1に準拠し、下記に示す燃料及び空気の混入量を変化させた。
燃料種:メタノール99.8%、溶存酸素率(量):8.8%airsatur.、燃料充填量:20cc、空気混入量:0.1cc
【0042】
〔実施例3〕
燃料カートリッジの作製方法は、実施例1に準拠し、下記に示す燃料及び空気の混入量を変化させた。
燃料種:メタノール99.8%、溶存酸素率(量):8.8%airsatur.、燃料充填量:23.5cc、空気混入量:0cc
【0043】
〔実施例4〕
燃料カートリッジの作製方法は、実施例1に準拠し、下記に示す燃料及び空気の混入量を変化させた。
燃料種:メタノール99.8%、溶存酸素率(量):8.8%airsatur.、燃料充填量:20cc、空気混入量:3.5cc
【0044】
〔比較例1〕
燃料貯蔵袋の作製方法は、実施例1に準拠し、燃料貯蔵袋を外容器に挿入せず単独で下記に示す燃料及び空気を充填した。
燃料種:メタノール99.8%、溶存酸素率(量):8.8%airsatur.、燃料充填量:23cc、空気混入量:0cc
【0045】
〔比較例2〕
燃料貯蔵袋の作製方法は、実施例1に準拠し、燃料貯蔵袋を外容器に挿入せず単独で下記に示す燃料及び空気を充填した。
燃料種:メタノール99.8%、溶存酸素率(量):8.8%airsatur.、燃料充填量:20cc、空気混入量:0.1cc
【0046】
上記実施例1〜4及び比較例1〜2を、それぞれ75℃の恒温槽に2時間放置し、その状態及び重量減少を評価した。
【0047】
実施例1及び2では、状態に変化はなく、重量減少も1%以下であった。また、実施例3及び4では、ラミネート接着部に僅かなデラミネーション(剥離)が生じていたが、重量減少は1%以下であった。これに対して、比較例1及び2では、ラミネート接着部から破裂し、重量減少も10%以上であった。
以上のことから、本発明の範囲内の実施例1〜4では、高温下での耐久性が確保されているが、本発明の範囲外となる比較例1及び2では、高温下での耐久性が不足しているため、燃料を安定に保存することができないことが判った。
【0048】
〔実施例5〜13及び比較例3〜6〕
下記作製法により、図5〜図7に準拠する燃料カートリッジBを得た後、その耐熱性を評価した。
(ハードケースとなる外容器50の作製):図1に準拠
ポリプロピレン製容器:外寸法20×30×50mm、
内寸法18×28×48mm、
内容積 24.2cc
内断面線長 長さ方向:132mm(図示符号51)、幅方向 :152m(図示符号52)、高さ方向:92m (図示符号53)
(パウチ袋Bの作製) 図5〜図7に準拠
ラミネートフィルム 寸法 130×120mm、接着層 ポリエチレン 40μm、バリア層 アルミ箔 10μm、基材層 ナイロン20μm、スパウト挿入用 貫通孔 φ6.4mm
図2−bに準拠し、パウチ(マチ付きピロー袋)作製、接着部幅 10mm
パウチ断面の線長 長さ方向:140mm(図示符号41で表示)、幅方向:160m(図示符号42で表示)、高さ方向:100m(図示符号43で表示)
図3、4に準拠し、燃料排出部、弁体作製。
燃料排出部 材質:ポリエチレン、最大外径10mm、筒部外径6mm、筒部内径5mm、長さ10mm、弁体材質:ブチルゴム、外径5mm、長さ3mm、スリット長2mm
図2に準拠し、折り返しパウチを作製、ハードケース50に収容し、燃料カートリッジBとした。
【0049】
〔実施例5〕
燃料カートリッジBに下記、燃料を充填、及び空気を混入させた。
燃料種 メタノール99.8%、溶存酸素率(量):8.8%airsatur.、燃料充填量 23cc、空気混入量 0cc
〔実施例6〕
燃料カートリッジBに下記、燃料を充填、及び空気を混入させた。
燃料種 メタノール99.8%、溶存酸素率(量):8.8%airsatur.、燃料充填量 20cc、 空気混入量 0.1cc
〔実施例7〕
燃料カートリッジBに下記、燃料を充填、及び空気を混入させた。
燃料種 メタノール99.8%、溶存酸素率(量):8.8%airsatur.、燃料充填量 23.5cc、空気混入量 0cc
〔実施例8〕
燃料カートリッジBに下記、燃料を充填、及び空気を混入させた。
燃料種 メタノール99.8%、溶存酸素率(量):8.8%airsatur.、燃料充填量 20cc、空気混入量 3.5cc
【0050】
〔比較例3〕
パウチ袋Bを外容器に挿入せず単独で燃料及び空気を充填した。
燃料種 メタノール99.8%、溶存酸素率(量):8.8%airsatur.、燃料充填量 23cc、空気混入量 0cc
〔比較例4〕
パウチ袋Bを外容器に挿入せず単独で燃料及び空気を充填した。
燃料種 メタノール99.8%、溶存酸素率(量):8.8%airsatur.、燃料充填量 20cc、空気混入量 0.1cc
【0051】
上記実施例5〜8、比較例3〜4を、それぞれ75℃の恒温槽に2時間放置し、その状態及び重量減少を評価した。
実施例5及び6は、状態に変化がなく、重量減少は1%以下であった。また、実施例7及び8の状態はラミネートフィルム接着部に僅かなデラミ(剥離)が発生したが、重量減少は1%以下であった。
これに対して、比較例3及び4の状態は、ラミネートフィルム接着部から破裂し、燃料漏れが発生し、重量減少は10%以上であった。
以上のことから、明らかなように、本発明の範囲内である実施例5〜8では、高温下での耐久性が確保されているが、本発明の範囲外である比較例3〜4では高温下での耐久性が不足しているため、燃料を安定に保存することができなかった。
また、本発明の請求項3の範囲内である実施例5は、ラミネートパウチ自体の状態も変化しなかった。更に実施例6及び10も、ラミネートパウチ自体の状態も変化しなかった。
なお、実施例7は、ラミネートパウチの接着部に僅かにデラミレーションが観測されたが、燃料の漏れはなかった。また、実施例8も、ラミネートパウチの接着部に僅かにデラミが観測されたが、燃料の漏れはなかった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の燃料カートリッジの実施形態の一例を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は縦断面面図である。
【図2】(a)〜(d)は、燃料貯蔵袋の実施形態の一例を示すものであり、(a)は斜視図、(b)はラミネートフィルムの展開図、(c)折り畳んだ状態を示す側面図、(d)は(b)における接着層部分を有するラミネートフィルムの断面図である。
【図3】(a)及び(b)は、スパウチの実施形態の一例を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は逆止弁を挿入した縦断面面図である。
【図4】(a)〜(g)は逆止弁の実施形態の一例を示すものであり、(a)は逆止弁の斜視図、(b)は逆止弁の平面図、(c)は逆止弁の縦断面図、(d)アダプターの平面図、(e)はアダプターの縦断面図、(f)はアダプターに弁体を装填した状態の平面図、(g)はアダプターに逆止弁を装填した状態の縦断面図である。
【図5】(a)は、本発明の燃料カートリッジにおいて、長さ方向、幅方向、高さ方向を図示するための斜視図、(b)はその縦断面面図である。
【図6】図5に用いる燃料貯蔵袋の長さ方向、幅方向、高さ方向を図示するための斜視図である。
【図7】(a)及び(b)は図6の燃料貯蔵袋に用いるラミネートフィルムの展開図であり、(b)その断面長を記入した展開図である。
【図8】図5に用いる燃料貯蔵袋の実施形態の他例を示す燃料貯蔵袋の斜視図である。
【図9】(a)は図8の燃料貯蔵袋に用いるラミネートフィルムの展開図であり、(b)はその断面長を記入した展開図である。
【符号の説明】
【0053】
A 燃料カートリッジ
F 液体燃料
10 燃料貯蔵袋
20 外容器
25 燃料排出部材(スパウト)
30 弁体(逆止弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池本体に連結自在となる燃料カートリッジであって、該燃料カートリッジは、液体燃料を充填してなる変形可能な可撓性袋からなる燃料貯蔵袋と、該燃料貯蔵袋を収容すると共に、燃料貯蔵袋単体での最大燃料貯蔵量以下の内容積となる外容器とから構成されたことを特徴とする燃料カートリッジ。
【請求項2】
燃料貯蔵袋は、ラミネートフィルムを3方シール袋形状、2方シール袋形状、もしくは、ピロー袋形状に成型してあり、かつ、その接着部がそれぞれ折り返された状態で、外容器に収納されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料カートリッジ。
【請求項3】
燃料貯蔵袋は、長さ方向、幅方向、高さ方向の少なくとも一つの断面線長が、外容器での燃料貯蔵袋が接する部分の内断面線長よりも長く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料カートリッジ。
【請求項4】
ラミネートフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂からなる厚さ20〜200μmの接着層を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の燃料カートリッジ。
【請求項5】
ラミネートフィルムは、アルミ箔、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アルミ若しくはシリカ蒸着フィルムからなる厚さ5〜100μmのバリア層を有することを特徴とする請求項2〜4の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【請求項6】
ラミネートフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、セロハン、紙、布、不織布からなる厚み10〜1000μmの表面層を有することを特徴とする請求項2〜5の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【請求項7】
外容器は、合成樹脂、ガラス、金属からなる容器であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【請求項8】
外容器は、完全に密閉されておらず、その内部に空気を取り込める構造であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【請求項9】
ラミネートパウチには、液体燃料を排出するための弁体が挿入された燃料排出部材が接着され、かつ、燃料排出部材は、ラミネートフィルムとラミネートフィルムの接着部に挿入されておらず、ラミネートフィルムに貫通口を設け、該貫通口に燃料排出部を接着し、かつ、燃料排出部とラミネートフィルムとの接着部が、ラミネートフィルムの貫通口の周囲を覆う状態で接着されていことを特徴とする請求項2〜6の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【請求項10】
燃料貯蔵袋内の空気の常温常圧下での体積は、液体燃料の体積の10%以下であることを特徴とする請求項1〜9の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【請求項11】
液体燃料の充填体積は、外容器に収容された状態での燃料貯蔵袋の容量(体積)の99%以下であることを特徴とする請求項1〜10の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【請求項12】
燃料貯蔵袋内の空気の常温常圧下での体積Aと、液体燃料の充填量(体積)Fと、外容器に収容された状態での燃料貯蔵袋の容量Pとが次式に従うことを特徴とする請求項1〜11の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
A/〔P−(F+A)〕<0.1
【請求項13】
液体燃料は、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル若しくはその水溶液からなる揮発性燃料であることを特徴とする請求項1〜12の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【請求項14】
液体燃料は、溶存酸素濃度が、50%airsatur.以下であることを特徴とする請求項1〜13の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−27896(P2008−27896A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106203(P2007−106203)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】