説明

燃料タンクの残油量検知装置

【課題】
燃料タンクを「満量」にすること及び燃料タンクの大きさに応じた定数を算出することなしにキャリブレーションを行える燃料タンクの残油量検知装置を提供する。
【解決手段】
燃料タンクから燃焼機に燃料を供給する送油管と、前記送油管内の油圧を検出する圧力センサ4と、圧力センサ4の出力に基づいて前記燃料タンクの残油量を算出する制御部と、前記残油量を表示する表示器8とを有する残油量検知装置において、前記制御部は、前記燃料タンクが満量時の油圧(以下「最高油圧」という。)を記憶する記憶部12;記憶部12に前記最大圧が記憶されていない状態で、前記燃料タンクに給油された場合、圧力センサ4が検出する油圧(以下「検出圧」という。)の最大値を前記最高油圧として記憶部12に記憶する最高油圧更新部13;及び、前記最高油圧及び圧力センサ4が検出する油圧に基づいて残油量を算出する残油量演算部14;を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、別置タイプの燃料タンクの残油量検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
灯油は家庭用の暖房機や給湯機(以下、本明細書では燃料を燃焼させて得た熱を利用する暖房機・給湯機等の装置を総称して「燃焼機」と呼ぶ)の燃料として広く使用されている。灯油は都市ガス等に比べて廉価であるが、補給管理を需要家自身が行わなければならない。つまり、需要家の敷地の中に設置されたタンクに貯蔵した灯油の残量を需要家が監視して、残量が少なくなると、灯油の購入を手配しなければならない。しかしながら、一般に燃料タンクは屋外に設置されているから、燃料タンクのゲージ等を日常的に監視するのは、煩わしいものである。
【0003】
そこで、燃料タンクに残油量検知装置を取り付け、残量が所定の水準を下回った場合に灯油の補給を促すアラームを屋内に設置した遠隔操作パネルに表示することが行われている(特許文献1〜3)。
【0004】
また従来は、燃料タンク内に揺動自在に取り付けられたアームの先端にフロートを取り付けて、燃料タンク内の液面の上下に従って前記アームが揺動するようにした残油量検知装置が多用されていたが、このような装置は汎用性がなく、タンクの寸法や形状に合わせて専用の装置を設計する必要があった。そこで、燃料タンクあるいは燃料タンクと燃焼機の間の送油管に圧力センサを取り付け、この圧力センサで検出される圧力に基づいて、燃料タンク内の液面高さを検出する残油量検知装置が提案されている(特許文献4,5)。
【0005】
この圧力センサを使用する残油量検知装置は汎用性が高く、タンクの寸法や形状にかかわらず、共通の装置を使用できるという利点がある。しかしながら、タンクの寸法や形状および圧力センサの取り付け高さによって、タンクの「満量」、「空量」に対応する圧力が異なるので、キャリブレーションを行って、圧力センサの出力と残油量との関係を設定する必要がある。
【0006】
例えば、特許文献3に記載の残油量検知装置では、複数種類の燃料タンクに対応した最大液面設定値をデータ記憶部に記憶して、この複数種類の最大液面設定値の中から実際に使用する燃料タンクに対応した最大液面設定値を選択している。
【0007】
また、特許文献4に記載の残油量検知装置では、燃料タンクを「満量」にした状態で、メータの振れが「満量」位置になるように、可変抵抗器を調整している。
【0008】
また、特許文献5に記載の残油量検知装置では、燃料タンクを「空量」にした状態での圧力センサの出力を初期値として設定するとともに、燃料タンクの大きさに応じて予め定めたタンク定数を入力している。
【0009】
【特許文献1】特開2002−349848号公報
【特許文献2】特開2003−148729号公報
【特許文献3】特開2003−321099号公報
【特許文献4】特許第3136719号
【特許文献5】特許第3033399号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3に記載の残油量検知装置は、予めデータ記憶部に記憶された複数の最大液面設定値の中から実際に使用する燃料タンクに対応した最大液面設定値を選択するので、最大液面設定値の設定を容易にできるが、データ記憶部に記憶されていない燃料タンク、つまり非標準の燃料タンクには対応できないという問題がある。また、残油量検知センサとして超音波液面計を用いているが、超音波液面計の取り付け位置は燃料タンクの底面に限られるので、超音波液面計と残油量検知装置の制御装置の配線が長くなり、配線工事が煩雑になるという問題もある。
【0011】
特許文献4に記載の残油量検知装置におけるキャリブレーション操作は、メータの振れ角を見ながら可変抵抗器を調整するだけなので、特別な知識や熟練を必要せず、素人でも容易にできる点で優れている。しかしながら、燃料タンクを灯油で満たし「満量」にするので、キャリブレーション後に燃料タンクから灯油を除去しなければならいという問題がある。新築工事に伴う燃焼機の設置工事などの場合、設置工事の完了から入居(つまり、燃焼機の供用開始)までの期間が、数週間に及ぶ場合があり、かかる期間において灯油を燃料タンクに残置することは、防火管理上好ましくないからである。
【0012】
特許文献5に記載の残油量検知装置におけるキャリブレーション操作は、「空量」の状態で行うので、キャリブレーション後の灯油除去は不要であるが、タンク定数の入力を行わなければならないという問題がある。タンク定数の入力を設置工事の現場で行うことは煩わしく、入力ミスなどのヒューマンエラーの可能性も除去できない。
【0013】
本発明は、このような背景の下でなされたものであり、燃料タンクを「満量」にすること及び燃料タンクの大きさに応じたタンク定数を算出することなしにキャリブレーションを行える燃料タンクの残油量検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る燃料タンクの残油量検知装置の第1の構成は、燃料タンクと、前記燃料タンクから燃焼機に燃料を供給する送油管と、前記送油管内の油圧を検出する圧力センサと、前記圧力センサの出力に基づいて前記燃料タンクの残油量を算出する制御部と、前記残油量を表示する表示部とを有する燃料タンクの残油量検知装置において、前記制御部は、
前記燃料タンクが満量時の油圧(以下「最大圧」という。)を記憶する油圧記憶部;前記油圧記憶部に前記最大圧が記憶されていない状態で、前記燃料タンクに給油された場合、前記圧力センサが検出する油圧(以下「検出圧」という。)の最大値を前記最大圧として油圧記憶部に記憶する最大圧設定部;及び、前記最大圧及び前記圧力センサが検出する油圧に基づいて残油量を算出する残油量演算部;を備えていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、燃料タンクに最初に給油する際に読み込まれる圧力センサの出力を最大圧として設定するので、残油量検知装置のキャリブレーションに際して、燃料タンクに灯油を上限まで満たすことも、タンク常数を計算することも不要なので、キャリブレーションが容易になる。
【0016】
本発明に係る燃料タンクの残油量検知装置の第2の構成は、燃料タンクと、前記燃料タンクから燃焼機に燃料を供給する送油管と、前記送油管内の油圧を検出する圧力センサと、前記圧力センサの出力に基づいて前記燃料タンクの残油量を算出する制御部と、前記残油量を表示する表示部とを有する燃料タンクの残油量検知装置において、前記制御部は、前記燃料タンクが満量時の油圧(以下「最大圧」という。)を記憶する油圧記憶部;前記検出圧が前記最大圧を超えた場合に、当該最大圧を前記検出圧で逐次更新する最大圧更新部;及び、前記最大圧及び前記圧力センサが検出する油圧に基づいて残油量を算出する残油量演算部;を備えていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、圧力センサの検出圧が最大圧より大きい場合に前記検出圧を最大圧として更新設定するので、例えば、初回は試運転に必要な最低限の給油を行い、2回目以降に燃料タンクの上限まで給油を行うような場合に、2回目以降の給油に基づいて最大圧が自動的に更新設定される。そのため、マニュアルによる更新設定が不要になり、残油量検知装置の使い勝手が向上する。
【0018】
本発明に係る燃料タンクの残油量検知装置の第3の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記燃料タンクの油面高さが下限にある時に前記圧力センサが検出する油圧を最小圧として前記油圧記憶部に記憶する最小圧設定部を備え、前記残油量演算部は、前記最大圧及び前記最小圧並びに前記圧力センサが検出する油圧に基づいて残油量を算出することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、燃料タンクの油面高さが下限にある時に圧力センサが検出する油圧を最小圧として記憶手段に記憶する最小圧設定部を備えるので、圧力センサを燃料タンクに対して任意の位置に設置できる。
【0020】
本発明に係る燃料タンクの残油量検知装置の第4の構成は、前記第3の構成において、初期設定スイッチを備え、前記最小圧設定部は、前記初期設定スイッチが有効とされたときに前記圧力センサが検出する油圧を最小圧として前記油圧手段に保存することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、燃料タンクの油面高さが下限になるように、灯油を注入(つまり、最小限の給油を)して、初期設定スイッチを操作すれば、最小圧を容易に設定できる。そのため、キャリブレーションが更に容易になる。
【0022】
本発明に係る燃料タンクの残油量検知装置の第5の構成は、前記第3又は第4の構成において、前記最小圧を数値入力する最小圧入力手段を備えることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、最小圧を作業者が数値入力することができるので、最小限の給油も不要になる。そのため、キャリブレーションが更に容易になる。
【0024】
本発明に係る燃料タンクの残油量検知装置の第6の構成は、前記第3又は第4の構成において、前記圧力センサと前記燃料タンクの高低差を数値入力する高低差入力手段を備え、前記制御部は、前記高低差に基づいて前記最小圧を算出する最小圧算出手段を備えることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、作業者が数値入力した圧力センサと燃料タンクの高低差に基づいて、最小圧を算出するので、前記最小圧のマニュアルによる算出が不要になる。そのため、キャリブレーションが更に容易になる。
【0026】
本発明に係る燃料タンクの残油量検知装置の第7の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記圧力センサは、前記燃料タンクに固定されていることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、圧力センサを燃料タンクに固定しているので、最小圧の値は、燃焼機や送油管の配置の如何に関わらず、一定の値になる。そのため、最小圧の設定が不要になり、残油量検知装置のキャリブレーションが更に容易になる。
【0028】
本発明に係る燃料タンクの残油量検知装置の第8の構成は、前記第1乃至第7のいずれかの構成において、前記制御部は前記残油量演算部が算出する残油量の値が所定の閾値を下回った場合に、給油アラームを出力する給油アラーム手段を備えることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、残油量の値が所定の閾値を下回った場合に給油アラームを出力するので、残油量検出装置の使い勝手が向上する。なお、給油アラーム手段とはユーザの五感に訴えて、ユーザの注意を喚起する注意喚起手段であり、文字、図形の表示、ランプの点灯、ブザーの奏鳴など視角や聴覚に訴えるものが一般的だが、点字表示器のような触覚に訴える手段も選択できる。
【0030】
本発明に係る燃料タンクの残油量検知装置の第9の構成は、前記第1乃至第8のいずれかの構成において、前記制御部は、前記燃焼機の運転/停止を判別する運転状態判別手段と、前記燃焼機が停止している場合に前記圧力センサの検出圧の減少を検出すると、燃料漏れアラームを出力する燃料漏れアラーム手段を備えていることを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、前記圧力センサの検出圧の減少によって「燃料漏れ」を検出するので、新たなハードウェアを追加することなしに、残油量検知装置に燃料漏れ検出機能を付加することができる。なお、給油アラーム手段と同様に、燃料漏れアラーム手段には各種の注意喚起手段を選択することができる。
【0032】
本発明に係る燃料タンクの残油量検知装置の第10の構成は、前記第1乃至第9のいずれかの構成において、前記制御部を燃焼機の燃焼制御装置の中に内蔵し、前記表示部を前記燃焼機の表示装置で構成するとともに、前記燃焼制御装置は、前記燃焼機の燃焼状態と前記燃料タンクの残油量を交互に切り替えて前記表示装置に表示する表示切替部を備えることを特徴とする。
【0033】
この構成によれば、燃焼機が本来備えている燃焼制御装置および表示部装置を利用して残油量検知装置の制御部および表示部を構成するので、最小限のハードウェアの追加で、燃焼機に残油量検知装置を付加することができる。
【0034】
本発明に係る燃料タンクの残油量検知装置の第11の構成は、前記第1乃至第10のいずれかの構成において、前記制御部を燃焼機の燃焼制御装置の中に内蔵するとともに、前記圧力センサと前記制御部を結ぶ信号線に着脱可能な接続部を備えることを特徴とする。
【0035】
この構成によれば、前記制御部を燃焼制御装置の中に内蔵するとともに、前記圧力センサと前記制御部の間の接続部を着脱可能にするので、燃料タンクの残油量検知装置を燃焼機のオプションとすることができる。つまり、必要に応じて圧力センサを燃焼機に接続することにより、前記燃焼機に残油量検知装置を付加することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上のように本発明によれば、設置工事の段階においてキャリブレーションのために燃料タンクを満量にする作業が不要になり、しかも使用開始時の給油によって残油量検知装置の最高油圧が自動的に設定されるので、キャリブレーションに際して特別な知識や注意を必要としない。そのため、操作が容易な使い勝手のよい燃料タンクの残油量検知装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0038】
図1は、本発明の実施例に係る燃料タンクの残油量検知装置の全体配置図である。図1において、1は給湯機であり、2は燃料タンク、3は送油管、4は圧力センサ、5は給湯機1の遠隔操作盤(リモコン)である。
【0039】
給湯機1は、バーナ6と燃焼制御装置7を備えている。バーナ6は灯油を燃焼して、図示しない水管内の水を加熱する熱源である。また、燃焼制御装置7は、その内部にインストールされた制御プログラムに従って、所望の温度・流量の給湯が得られるようにバーナ6に送給する灯油の流量を調整する制御装置である。
【0040】
燃料タンク2は、バーナ6の燃料である灯油を貯蔵する容器であり、燃料タンク2内の灯油は送油管3を通ってバーナ6に送給される。また、燃料タンク2とバーナ6の間の灯油の送給は重力を利用するので、一般的に燃料タンク2はバーナ6より高い位置に設置されるが、燃料タンク2とバーナ6の高低差は設置場所によって異なるので、一定しない。
【0041】
圧力センサ4は、送油管3内の灯油の圧力を電圧に変換して出力するセンサであり、送油管3の適所にT字管を介して取り付けられている。また、圧力センサ4の出力信号線は後述する制御装置9に図示しないコネクターを介して、着脱自在に接続されている。なお、図1では圧力センサ4を給湯機1の近傍に配置しているが、燃料タンク2の底面、給湯機1の内部等に配置してもよい。
【0042】
遠隔操作盤5は、給湯機1に対して、点火・消火の指令および給湯温度の設定などを行う操作盤である。また、遠隔操作盤5は給湯機1の運転状況等及び燃料タンク2内の灯油の残量等を表示する表示器8を備えている。
【0043】
また、9は圧力センサ4の出力に基づいて燃料タンク2内の灯油の残量を算出する制御装置であり、燃焼制御装置7の中に一体に組み込んである。また、制御装置9で算出された灯油の残量は、遠隔操作盤5の表示器8に表示される。前記残量が所定の水準を下回ると、給油を促すための警告が、表示器8に表示される。
【0044】
図2は、制御装置9の制御ブロック図である。図2に示すように、制御装置9は、A/D入力部10、初期設定部11、記憶部12、最高油圧更新部13、残油量演算部14、リミッタ15及びタイマー部16を備えている。
【0045】
A/D入力部10は、圧力センサ4の出力電圧をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換器である。
【0046】
初期設定部11は、燃料タンク2と圧力センサ4の間の高低差を補正するための最小値Zを設定するモジュールである。燃料タンク2の底から測った油面高さが同一であっても、燃料タンク2と圧力センサ4の間の高低差によって、圧力センサ4から測った油面高さは変化するので、燃料タンク2が圧力センサ4に対して高い位置にあれば圧力センサ4の出力は大きくなり、低い位置にあれば小さくなる。そこで、燃料タンク2の油面高さが下限にある状態、つまり油面が燃料タンク2の底面と同じ高さにある状態における圧力センサ4の出力(最小値)Zを求めて、圧力センサ4の出力Zと最小値Zの差に基づいて、燃料タンク2の残量を算出する。なお、最小Zを決定する具体的な手順は後述する。
【0047】
記憶部12は、最小値Zおよび後述する最大値Zを記憶するバックアップ用の不揮発性メモリーである。制御装置9の駆動電源OFF時にも、最小値Zおよび最大値Zは記憶部12において保持され、駆動電源が投入されると初期設定部11および最高油圧更新部13にコピーされる。
【0048】
最高油圧更新部13は、燃料タンク2の油面高さが上限にある状態における圧力センサ4の出力を最大値Zとして設定するとともに、圧力センサ4が先に設定された最大値Zより大きな値を出力した場合に、その値を新たな最大値Zとして更新設定するモジュールである。
【0049】
残油量演算部14は、A/D入力部10から圧力センサ4の出力Zを、初期設定部11から最小値Zを、最高油圧更新部13から最大値Zをそれぞれ読み込み、下式に基づいて、燃料タンク2の残油量Hを算出するモジュールである。
【0050】
H=(Z−Z)/(Z−Z) (式1)
【0051】
上式から明らかなように、燃料タンク2の油面が上限にあるとき、つまりZ=Zのとき、残油量Hは1.0になり、下限にあるとき、つまりZ=Zのとき、残油量Hは0.0になる。この残油量Hは遠隔操作盤5の表示器8に表示される。
【0052】
リミッタ15は、残油量Hと所定の閾値を比較して、残油量Hが前記閾値より小さい場合にユーザに給油を促すアラームを表示部8に表示させるモジュールである。
【0053】
タイマー部16は、残油量Hの算出周期を設定するタイマーモジュールであり、残油量演算部14に残油量Hの算出演算の実行を命じるトリガー信号を所定の周期で出力する。
【0054】
なお17は、燃焼制御装置7に備えられた表示切替部である。表示切替部17は遠隔操作盤5の表示器8の表示内容を、通常の燃焼表示(例えば、給湯機1の運転/停止の別、給湯温度などを表示する)と残油量表示の切り替えを行うと共に、初期設定動作信号を出力するモジュールである。
【0055】
図3は、残油量検知装置の動作を示すフローチャートである。以下、このフローチャートを参照しながら残油量検知装置の動作を説明する。
【0056】
まず、燃料タンク2の下限まで灯油を注入する。つまり、送油管3を完全に灯油で満たし油面が燃料タンク2の底面と一致するようにする。
【0057】
(ステップ1)遠隔操作盤5上の表示切替スイッチ(図示せず)をONして、表示切替部17により、表示器8の表示モードを燃焼表示モードから残油量表示モードに変更するとともに、初期設定部11に初期設定動作信号を送って、圧力センサ4の出力をA/D入力部10を介して読み込む。
【0058】
(ステップ2)表示器8に表示される圧力センサ4の出力値が安定しているのを確認し、遠隔操作盤5上の初期設定スイッチ(図示せず)をONする。
【0059】
(ステップ3)以上により、表示器8に表示された圧力センサ4の出力値が最小値Zとして、初期値設定部11に設定される。また、最小値Zはバックアップのために記憶部12にも記憶される。
【0060】
(ステップ4)以上の操作により、初期設定が完了するので、前記初期設定スイッチをOFFにする。また、前記表示切替スイッチを操作して、表示器8の表示を燃焼表示モードに切り替える。
【0061】
以上の操作は、給湯機1、燃料タンク2、送油管3および圧力センサ4の設置工事の完了後、つまり、給湯機1、燃料タンク2および圧力センサ4の相対的な位置関係が確定した後に行う。また、人手による操作を必要とするのはここまでであり、後述するステップ5以下の動作は制御装置9によって自動的に処理される。
【0062】
なお、送油管3の中に注入された灯油は極めて少量(せいぜい100〜200ml)なので、そのまま残置しても構わないが、必要があれば適当な手段(例えば吸引ポンプ)で排出する。少量なので、排出に要する手間は小さい。
【0063】
また、次のようにすれば、送油管3の中に灯油を注入することなく、初期設定を行うことができる。
(1)まず、圧力センサ4(正確に言うと、圧力センサ4の圧力検出基準面)に対する燃料タンク2の底面の相対高さを計測する。給湯機1及び燃料タンク2が、実用上水平と見なし得る共通の基盤(例えば、コンクリート製の床面)に固定されていれば、曲尺等を使って、前記基盤から圧力センサ4までの高さと前記基盤から燃料タンク2の底面までの高さを計測すれば、実用上十分な精度で相対高さを知ることが出来る。また、共通の基盤がない場合は、レベラや水盛り管を利用すれば良い。
(2)相対高さと灯油の密度等に基づいて、燃料タンク2の油面が下限にある時の圧力センサ4の圧力検出基準面に於ける油圧を算出する。この油圧の値と圧力センサ4の圧力−出力特性に基づいて、燃料タンク2の油面が下限にある時の圧力センサ4の出力値を推定する。
(3)ステップ3において、表示器8に表示された計測値に代えて前記推定値を入力し、前記「確認」ボタンを押下する。推定値の入力は、遠隔操作盤5上にテンキー等を備えて、前記テンキーから入力しても良いし、制御装置9にデジスイッチ等を備えても良い。
【0064】
また、制御装置9の内部に相対高さと灯油の密度等に基づいて、燃料タンク2の油面が下限にある時の圧力センサ4の出力を算出する演算モジュールを設けて、テンキー等によって入力された前記相対高さに基づいて最小値Zを制御装置9の内部で算出するようにしてもよい。
【0065】
また、圧力センサ4を燃料タンク2の底面に取り付けて、圧力センサ4の圧力検出基準面が燃料タンク2の底面と同一高さになるようにすれば、送油管3に灯油を注入する操作は不要になる。ステップ3において、表示器8に計測値0が表示されるから、そのまま前記「確認」ボタンを押下すればよい。
【0066】
さて、次に、給湯機1を実際に使用する場面での残油量検知装置の動作を説明する。設置工事の段階において、ステップ1〜ステップ4までの操作、すなわち初期設定は完了している。この状態で燃料タンク2に灯油を給油する。給油作業は、燃料タンク2に装置された図示しないゲージ等を監視しながら行う。つまり、給油作業においては、残油量検知装置による油面高さの表示を参照しないから、この時、残油量検知装置のキャリブレーションが完了していなくても、灯油が燃料タンク2から溢れるような事は無い。
【0067】
(ステップ5)給油が行われると、圧力センサ4の出力が大きくなるから、制御装置9は給油が行われている事を検知する。制御装置9は圧力センサ4の出力の監視を続け、圧力センサ4の出力の増加が停止し、所定の時間、同一の出力が続いたら、給油が終了したと判断する(給油作業が続いて居れば、圧力センサ4の出力は増加を続けるし、給油作業の終了後しばらくは油面の揺動による圧力センサ4の出力の変動が続くからである)。なお、前記所定の時間は少なくとも30秒〜120秒の間に設定すると、よい結果が得られる。
【0068】
(ステップ6)給油が終了した時の圧力センサ4の出力は最大値Zとして、最高油圧更新部13に設定される。また、最大値Zはバックアップのために記憶部12にも記憶される。
【0069】
(ステップ7)圧力センサ4の出力Zを読み込む。
【0070】
(ステップ8)ステップ6で読み込んだ圧力センサ4の出力Zと最大値Zを比較して、ZがZより大きければ、ステップ9に進み、そうでなければステップ10に飛ぶ。
【0071】
(ステップ9)圧力センサ4の出力Zを最大値Zとして、最高油圧更新部13に更新設定する。また、最大値Zはバックアップのために記憶部12にも記憶される。この処理は、初回に試運転を行うための最小限の給油をして、2回目以降の給油で満量給油を行うような運用をする場合に意味を持つ。つまり、前回給油時より大きな圧力を検出した場合には、前回の給油においては「真の満量」給油が行われなかったと考え、今回検出された値を「真の最大値」として取り扱うのである。
【0072】
(ステップ10)Z、Z、及びZを式1に代入して、残油量Hを算出する。
【0073】
(ステップ11)ステップ10で算出した残油量Hを閾値HLOWと比較し、H≧HLOWであれば、ステップ13に進み、H<HLOWであれば、ステップ12に飛ぶ。なお、閾値HLOW
予めリミッタ15内に設定される値である。
【0074】
(ステップ12)表示器8に「給油!」の警告表示を行う。なお、残油量が少ない場合に給油を促す警告は、文字によるものには限られない。ランプの点滅によるもの、音声によるもの、ブザーやチャイムの奏鳴によるもの、あるいは点字表示器によるものであってもよい。
【0075】
(ステップ13)表示器8に残油量Hの値を棒グラフの形式で表示する。なお、残油量Hの表示は数秒連続して行われ、その後、表示切替部17の働きにより通常の燃焼表示に戻る。
【0076】
(ステップ14)タイマー部16を起動し、所定時間が経過したらステップ7に戻り、ステップ7〜ステップ14を繰り返し実行する。
【0077】
また、バーナ6が運転しているか否かを示す信号を燃焼制御装置7から受け取って、バーナ6が停止している間に残油量Hを周期的にモニタして、残油量Hが前回に比べて減少している場合に「燃料漏れ!」の文字を表示器8に表示するモジュールを制御装置9に備えてもよい。なお、残油量Hに代えて圧力センサ4の出力Zをモニタすることによって、燃料漏れを検出するようにしてもよい。また、外乱等による誤検出を排除するために、所定回数あるいは所定時間に渡って残油量Hまたは出力Zの減少を連続して検出することを「燃料漏れ」判定の条件にしてもよい。
【0078】
なお、制御装置9は専用ハードウェアで実現してもよいし、ソフトウェア的に実現してもよい。また、制御装置9と燃焼制御装置7のハードウェアを共通化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施例に係る燃料タンクの残油量検知装置の全体配置図である。
【図2】前記残油量検知装置の制御装置の制御ブロック図である。
【図3】前記残油量検知装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
1 給湯機
2 燃料タンク
3 送油管
4 圧力センサ
5 遠隔操作盤
6 バーナ
7 燃焼制御装置
8 表示器
9 制御装置
10 A/D入力部
11 初期値設定部
12 記憶部
13 最高油圧更新部
14 残油量演算部
15 リミッタ
16 タイマー部
17 表示切替部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクと、
前記燃料タンクから燃焼機に燃料を供給する送油管と、
前記送油管内の油圧を検出する圧力センサと、
前記圧力センサの出力に基づいて前記燃料タンクの残油量を算出する制御部と、
前記残油量を表示する表示部と
を有する燃料タンクの残油量検知装置において、
前記制御部は、
前記燃料タンクが満量時の油圧(以下「最大圧」という。)を記憶する油圧記憶部;
前記油圧記憶部に前記最大圧が記憶されていない状態で、前記燃料タンクに給油された場合、前記圧力センサが検出する油圧(以下「検出圧」という。)の最大値を前記最大圧として油圧記憶部に記憶する最大圧設定部;
及び、前記最大圧及び前記圧力センサが検出する油圧に基づいて残油量を算出する残油量演算部;
を備えていることを特徴とする燃料タンクの残油量検知装置。
【請求項2】
燃料タンクと、
前記燃料タンクから燃焼機に燃料を供給する送油管と、
前記送油管内の油圧を検出する圧力センサと、
前記圧力センサの出力に基づいて前記燃料タンクの残油量を算出する制御部と、
前記残油量を表示する表示部と
を有する燃料タンクの残油量検知装置において、
前記制御部は、
前記燃料タンクが満量時の油圧(以下「最大圧」という。)を記憶する油圧記憶部;
前記検出圧が前記最大圧を超えた場合に、当該最大圧を前記検出圧で逐次更新する最大圧更新部
及び、前記最大圧及び前記圧力センサが検出する油圧に基づいて残油量を算出する残油量演算部;
を備えていることを特徴とする燃料タンクの残油量検知装置。
【請求項3】
前記燃料タンクの油面高さが下限にある時に前記圧力センサが検出する油圧を最小圧として前記記憶手段に記憶する最小圧設定部を備え、
前記残油量演算部は、前記最大圧及び前記最小圧並びに前記圧力センサが検出する油圧に基づいて残油量を算出することを特徴とする請求項1又は2記載の残油量検知装置。
【請求項4】
初期設定スイッチを備え、
前記最小圧設定部は、前記初期設定スイッチが有効とされたときに前記圧力センサが検出する油圧を最小圧として前記油圧記憶部に保存することを特徴とする請求項3に記載の残油量検知装置。
【請求項5】
前記最小圧を数値入力する最小圧入力手段
を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の残油量検知装置。
【請求項6】
前記圧力センサと前記燃料タンクの高低差を数値入力する高低差入力手段を備え、
前記制御部は、
前記高低差に基づいて前記最小圧を算出する最小圧算出手段
を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の残油量検知装置。
【請求項7】
前記圧力センサは、前記燃料タンクに固定されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の残油量検知装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記残油量演算部が算出する残油量の値が所定の閾値を下回った場合に、給油アラームを出力する給油アラーム手段
を備えていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の残油量検知装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記燃焼機の運転/停止を判別する運転状態判別手段;
前記燃焼機が停止している場合に前記圧力センサの検出圧の減少を検出すると、燃料漏れアラームを出力する燃料漏れアラーム手段;
を備えていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の残油量検知装置。
【請求項10】
前記制御部を燃焼機の燃焼制御装置の中に内蔵し、
前記表示部を前記燃焼機の表示装置で構成するとともに、
前記燃焼制御装置は、
前記燃焼機の燃焼状態と前記燃料タンクの残油量を交互に切り替えて前記表示装置に表示する表示切替部
を備えていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の残油量検知装置。
【請求項11】
前記制御部を燃焼機の燃焼制御装置の中に内蔵するとともに、
前記圧力センサと前記制御部を結ぶ信号線に着脱可能な接続部
を備えていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の残油量検知装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−40622(P2007−40622A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225894(P2005−225894)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(390002886)株式会社長府製作所 (197)
【Fターム(参考)】