説明

燃料タンクシステム

【課題】燃料タンクの揺れに対する剛性を低下させることなく、高電位バッテリの配置スペースを確保できる燃料タンクシステムを提供すること。
【解決手段】車両用の燃料タンク10を備えた燃料タンクシステム1であって、燃料タンク10は、車幅方向に離間して対向配置された左液溜め部11および右液溜め部12と、これら左液溜め部11と右液溜め部12とを連通させる連通路13と、この連通路13よりも車両前方または後方に設けられ、左液溜め部11と右液溜め部12とを連結する連結板15と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の燃料タンクを備えた燃料タンクシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガソリン車両などには、燃料を貯留するための燃料タンクを備えた燃料タンクシステムが搭載されている。図9は、従来の燃料タンク50を備えた燃料タンクシステム5の斜視図である。図9において、「Fr」は車両前方、「Rr」は車両後方、「R」は運転者から見た右方向、「L」は運転者から見た左方向を表している。
図9に示すように、燃料タンクシステム5は、燃料を貯留し、図示しない燃料供給管が接続される燃料供給口51を有する燃料タンク50と、この燃料タンク50内で発生する蒸発燃料を吸着するキャニスタ60と、を含んで構成される。これら燃料タンク50とキャニスタ60は、一端が燃料タンク開口部53に接続され、他端が図示しないキャニスタ開口部に接続された蒸発燃料通路61を介して連通している。
【0003】
ところで、近年、エンジンと駆動用モータとを搭載し、高電位バッテリで駆動用モータを駆動するハイブリッド車両(HEV)が実用化されている。このハイブリッド車両は、ガソリン車両をベースとして生産されており、通常、高電位バッテリは車両の後方に配置される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3707734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、通常、車両の後部座席の下方には、燃料タンク50が配置される。具体的には、燃料タンク50の長手方向が車両前後方向と直交するようにして、燃料タンクブラケット71,72により後部座席の下方に取り付けられる。また、燃料タンク50の後上方には、キャニスタブラケット63により燃料タンク50の後端部に取り付けられたキャニスタ60が配置される。従って、高電位バッテリを搭載するハイブリッド車両において、高電位バッテリの配置スペースを確保することは困難であった。
【0006】
これに対して、燃料タンクの一部を切り欠いてスペースを設け、このスペースにキャニスタを配置することにより、高電位バッテリの配置スペースを確保する手法が考えられる。しかしながら、この手法では、燃料タンクの一部を切り欠くことにより、燃料タンクの車幅方向の揺れに対する剛性が低下するという問題があった。また、燃料タンクの揺れにより、燃料タンク内の燃料が跳ねて異音が発生するという問題もあった。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料タンクの揺れに対する剛性を低下させることなく、高電位バッテリの配置スペースを確保できる燃料タンクシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、車両用の燃料タンク(例えば、後述の燃料タンク10)を備えた燃料タンクシステム(例えば、後述の燃料タンクシステム1,2)であって、前記燃料タンクは、車幅方向に離間して対向配置された一対の液溜め部(例えば、後述の左液溜め部11,右液溜め部12)と、前記一対の液溜め部を連通させる連通路(例えば、後述の連通路13)と、前記連通路よりも車両前方または後方に設けられ、前記一対の液溜め部を連結する連結板(例えば、後述の連結板15,16)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、液溜め部を分割して一対の液溜め部とし、これら一対の液溜め部を車幅方向に離間して対向配置させた。また、これら一対の液溜め部を連通させる連通路を設けるとともに、対向する一対の液溜め部を連結する連結板を設けた。
これにより、先ず、一対の液溜め部の間にスペースを確保できるため、このスペースにキャニスタを配置できる。このため、後部座席の下方に、燃料タンクとともにキャニスタを配置できる。従って、従来、キャニスタの配置スペースであった燃料タンクの後上方のスペースを、高電位バッテリの配置スペースとして確保することができる。
また、一対の液溜め部が連結板により連結されているため、燃料タンクの剛性を向上させることができる。従って、燃料タンクの車幅方向の揺れに対する剛性の低下を抑制できる。
【0010】
本発明に係る燃料タンクシステムは、前記燃料タンクと蒸発燃料通路(例えば、後述の蒸発燃料通路21,29)を介して連通し、前記燃料タンク内で発生する蒸発燃料を吸着するキャニスタ(例えば、後述のキャニスタ20)をさらに備え、前記キャニスタは、前記連結板上に当接して配置されていることが好ましい。
【0011】
この発明では、燃料タンク内で発生する蒸発燃料を吸着するキャニスタを、連結板上に当接させて配置した。
これにより、先ず、キャニスタが連結板に当接して配置されているため、連結板の剛性を向上できる。このため、車両走行時の振動により生ずる連結板の上下方向の撓みを抑制できる。
また、キャニスタを連結板に当接して配置することにより、連結板をキャニスタのブラケットとして利用できる。このため、従来のように、別途ブラケットを成形する必要が無く、製造コストを削減できる。また、燃料タンクとキャニスタとをモジュール化できるため、これらの組み付け工数を削減でき、生産工程を簡略化できる。
【0012】
本発明に係る燃料タンクシステムでは、前記連結板は、略水平に設けられ、前記キャニスタは、前記蒸発燃料通路(例えば、後述の蒸発燃料通路21)を前記キャニスタに接続するためのキャニスタ開口部(例えば、後述のキャニスタ開口部23)が前記蒸発燃料通路を前記燃料タンクに接続するための燃料タンク開口部(例えば、後述の燃料タンク開口部131)よりも上方に位置するように配置されていることが好ましい。
【0013】
この発明では、連結板を略水平に設けるとともに、蒸発燃料通路をキャニスタに接続するためのキャニスタ開口部が、蒸発燃料通路を燃料タンクの上部に接続するための燃料タンク開口部よりも上方に位置するように、キャニスタを連結板上に当接させて配置した。
ここで、キャニスタは、燃料タンクで発生する蒸発燃料を吸着する機能を有するものの、その吸着量には限界がある。また、キャニスタは、積極的に蒸発燃料を吸着させる性質のものではなく、大気中に蒸発燃料が流出するのを避けるのに必要な範囲内で、蒸発燃料を吸着させるに留めるのが好ましいとされる。この点、本発明によれば、燃料タンク開口部よりも上方にキャニスタ開口部を配置するため、大気に比して比重の大きい蒸発燃料がキャニスタに大量に流れ込むことを抑制できる。
【0014】
本発明に係る燃料タンクシステムでは、前記連結板は、略水平に設けられ、前記キャニスタは、前記蒸発燃料通路(例えば、後述の蒸発燃料通路29)を前記キャニスタに接続するためのキャニスタ開口部(例えば、後述のキャニスタ開口部28)が前記蒸発燃料通路を前記燃料タンクに接続するための燃料タンク開口部(例えば、後述の燃料タンク開口部131)よりも下方に位置するように配置されていることが好ましい。
【0015】
この発明では、連結板を略水平に設けるとともに、蒸発燃料通路をキャニスタに接続するためのキャニスタ開口部が、蒸発燃料通路を燃料タンクの上部に接続するための燃料タンク開口部よりも下方に位置するように、キャニスタを連結板上に当接させて配置した。
これにより、燃料タンク内で発生した蒸発燃料が、燃料タンク内から蒸発燃料通路を介してキャニスタに導入される際に、蒸発燃料が蒸発燃料通路の途中で液化して液溜まりとなることを回避できる。
【0016】
本発明に係る燃料タンクシステムでは、前記連結板は、上方に突出する凸部(例えば、後述の凸部151)または下方に突出する凹部(例えば、後述の凹部161)を有し、前記キャニスタは、前記凸部または凹部上に当接して配置されていることが好ましい。
【0017】
この発明では、連結板上に、上方に突出する凸部または下方に突出する凹部を設けるとともに、キャニスタを、これら凸部または凹部上に当接させて配置した。
これにより、例えば、キャニスタを凸部上に当接させて配置することにより、キャニスタ開口部を燃料タンク開口部よりも上方に配置させ易くなり、大気に比して比重の大きい蒸発燃料がキャニスタに大量に流れ込むことを抑制できる。また、例えば、キャニスタを凹部上に当接させて配置することにより、キャニスタ開口部を燃料タンク開口部よりも下方に配置させ易くなり、蒸発燃料が蒸発燃料通路の途中で液化して液溜まりとなることを回避できる。
【0018】
本発明に係る燃料タンクシステムでは、前記連結板は、前記燃料タンクの成形時に生じたバリで形成されていることが好ましい。
【0019】
この発明では、一対の液溜め部と連通路とを含んで構成される燃料タンクをブロー成形などにより一体成形する際に生ずるバリを、連結板として利用した。
これにより、従来は切除して廃棄されていたバリを連結板として有効利用でき、製造コストを削減できる。また、燃料タンクとキャニスタのブラケットとを一体成形できるため、生産工程を簡略化できる。さらには、従来のような金属ブラケットの使用を回避できるため、車両を軽量化でき、ひいては燃費を向上できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、燃料タンクの揺れに対する剛性を低下させることなく、高電位バッテリの配置スペースを確保できる燃料タンクシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る燃料タンクシステムの斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る燃料タンクシステムの平面図である。
【図3】図2のA−A線端面の模式図である。
【図4】第1実施形態に係る燃料タンクシステムの左側面の模式図である。
【図5】第1実施形態に係る燃料タンクの成形方法を説明するための図である。
【図6】第2実施形態に係る燃料タンクシステムの斜視図である。
【図7】図6のB−B線端面の模式図である。
【図8】第2実施形態に係る燃料タンクシステムの左側面の模式図である。
【図9】従来の燃料タンクシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、第2実施形態の説明のおいては、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付し、共通する構成および作用効果については、その説明を省略する。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料タンクシステム1の斜視図であり、図2は、燃料タンクシステム1の平面図である。図1および図2において、「Fr」は車両前方、「Rr」は車両後方、「R」は運転者から見た右方向、「L」は運転者から見た左方向を表している。
【0024】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る燃料タンクシステム1は、燃料タンク10と、キャニスタ20と、を含んで構成される。これら燃料タンク10とキャニスタ20については、後段で詳述する。
燃料タンクシステム1は、ハイブリッド車両に好適に使用され、後部座席の下方に配置される。具体的には、後述する左液溜め部11の下部と、右液溜め部12の下部にそれぞれ取り付けられた燃料タンクブラケット31,32により、後部座席の下方に取り付けられる。
【0025】
燃料タンク10は、車両用の燃料タンクであり、供給されるガソリンなどの液体燃料を貯留する。燃料タンク10内には、液面と燃料タンク10の天井壁との間に上方空間が形成され、この上方空間と、後述するキャニスタ20とが連通される。図1および図2に示すように、燃料タンク10は、左液溜め部11と右液溜め部12とからなる一対の液溜め部と、連通路13と、連結板15と、を含んで構成される。
燃料タンク10は、車両の後部座席の下方において、車両の幅方向の中心線を跨ぐようにして配置される。より詳しくは、燃料タンク10は、全体として、長手方向と短手方向とを有し、その長手方向が車両前後方向と直交するようにして配置される。また、燃料タンク10は、その長手方向の中心が車両の幅方向の中央に位置するようにして配置される。
【0026】
一対の液溜め部は、左液溜め部11と右液溜め部12とから構成される。これら左液溜め部11と右液溜め部12は、所定の間隔を設けて、車幅方向に離間して対向配置されている。左液溜め部11と右液溜め部12との間隔は、後述するキャニスタ20が配置可能な間隔に設定されている。また、これら左液溜め部11と右液溜め部12は、車両の幅方向の中央に配置されるフロアトンネルで区画された左後部座席と右後部座席の位置にそれぞれ対応して配置される。具体的には、左液溜め部11は左後部座席の下方に配置され、右液溜め部12は右後部座席の下方に配置される。
【0027】
左液溜め部11の上面には、図示しない燃料供給管を接続するための燃料供給口111が設けられている。燃料供給管は、燃料供給口111から左液溜め部11内に挿入される。燃料供給管には燃料ポンプが設けられ、この燃料ポンプを駆動することにより、エンジンに燃料タンク10内の燃料が供給される。
また、右液溜め部12の上面にも、同様の燃料供給口121が設けられている。
【0028】
左液溜め部11および右液溜め部12のうちの一方には、先端部が給油口を形成しかつ基端部が一方の液溜め部に内挿される図示しないフィラーパイプが接続される。給油の際には、給油口に給油ガンを挿入して液体燃料を供給することにより、供給された液体燃料がフィラーパイプを介して液溜め部内に導入される。
【0029】
連通路13は、車幅方向に延びて設けられており、左液溜め部11と右液溜め部12は、この連通路13を介して連通している。連通路13は、燃料タンク10の車両前方側に設けられており、左液溜め部11の右側部のうちの車両前方側の部分と、右液溜め部12の左側部のうちの車両前方側の部分に、連通路13が接続されている。
連通路13の上面には、後述する蒸発燃料通路21を燃料タンク10に接続するための燃料タンク開口部131が設けられている。燃料タンク10内で発生した蒸発燃料は、この燃料タンク開口部131から、後述するフロートバルブ22を介して蒸発燃料通路21を通り、後述するキャニスタ20に導入される。なお、燃料タンク開口部131は、後述するキャニスタ開口部23よりも、下方の位置に配置されている。これについては、後段で詳述する。
【0030】
連結板15は、図1および図2に示すように、連通路13よりも車両後方に略水平に設けられており、対向する左液溜め部11の右側部と右液溜め部12の左側部とを連結する。また、連結板15は、左液溜め部11および右液溜め部12の後端部から、車両前方に向かって延びて連通路13に至っている。即ち、連結板15は、連通路13にも連結しており、これら左液溜め部11、右液溜め部12、および連通路13の3者を連結することにより、燃料タンク10の剛性がより高められている。
図3は、図2におけるA−A線端面の模式図である。図3に示すように、連結板15の車幅方向の略中央には、上方に突出する凸部151が設けられている。凸部151は、傾斜面を有するテーパ状であり、その頂部は略水平となっている。凸部151は、連結板15の車両前後方向に亘って設けられており、この凸部151の頂部に、後述するキャニスタ20が当接して配置される。
【0031】
図1,2に戻って、キャニスタ20は、燃料タンク10内で発生した蒸発燃料を吸着する。キャニスタ20は、蒸発燃料通路21と、フロートバルブ22と、ケーシング24と、フィルタ25と、を含んで構成される。
上述したように、キャニスタ20は、フロートバルブ22および蒸発燃料通路21を介して、燃料タンク10内の上方空間と連通している。また、キャニスタ20は、連結板15に設けられた凸部151上に当接して配置されている。即ち、キャニスタ20は、左液溜め部11と右液溜め部12との間に配置されている。
【0032】
蒸発燃料通路21は、上述したように、その一端が燃料タンク開口部131に接続されている。また、他端は、キャニスタ20に設けられたキャニスタ開口部23に接続されている。蒸発燃料通路21の途中には、図示しないバルブが設けられる。このバルブは、燃料タンク10内で発生した蒸発燃料により、燃料タンク10内の圧力が所定の圧力を超えたときに開放される。
図4は、燃料タンクシステム1の左側面の模式図である。図4に示すように、キャニスタ開口部23は、燃料タンク開口部131よりも、高さh1の分だけ、上方の位置に配置されている。
【0033】
図1,2に戻って、フロートバルブ22は、燃料タンク開口部131に設けられている。フロートバルブ22は、燃料タンク10内の液面が所定の高さに達していないときに開放され、これにより、蒸発燃料が蒸発燃料通路21を介してキャニスタ20に導入される。また、フロートバルブ22は、燃料タンク10内の液面が所定の高さに達したときに閉じられ、これにより、蒸発燃料通路21内への液体燃料の流入が防止される。
【0034】
ケーシング24は、軸方向が車幅方向と直交するようにして並設された2つの円筒状容器の一端同士を連通させることにより形成されており、その内部には、蒸発燃料の吸着剤として、活性炭のペレットが充填されている。蒸発燃料通路21を介してキャニスタ20に導入された蒸発燃料は、この活性炭に吸着されて一時的に保持される。後述するように、活性炭に吸着された蒸発燃料は、パージエアにより脱離されるため、この活性炭は半永久的に使用可能である。
【0035】
フィルタ25は、エアフィルタであり、その後方側に大気開放口26を含んで構成される。
また、キャニスタ20の前方側には、パージコントロール用のパージバルブを介して、図示しない吸気管に接続するための吸気管接続口27が設けられている。吸気管接続口27は、吸気管内に配置されたスロットルバルブの下流側と連通される。
車両運転時において、パージバルブが開放されると、キャニスタ20と吸気管とが連通し、キャニスタ20内に負圧が発生する。すると、パージエアとしての大気が、大気開放口26からフィルタ25を介してキャニスタ20内に導入される。導入されたパージエアは、活性炭に吸着されていた蒸発燃料を活性炭から脱離させる。活性炭から脱離した蒸発燃料は、吸気管接続口27および吸気管を通って、燃焼室に導かれて燃焼される。
【0036】
次に、本実施形態に係る燃料タンク10の成形方法について、図5(A)〜(D)を参照して説明する。なお、図5(A)〜(D)では、説明の便宜上、燃料タンク10の形状を簡略化している。
図5(A)〜(D)に示すように、本実施形態では、従来公知のブロー成形方法を利用して、左液溜め部11、右液溜め部12、連通路13および連結板15を一体成形することにより、燃料タンク10が得られる。
【0037】
先ず、図5(A)に示すように、対向配置された一対の合わせ金型91,92の間に、熱可塑性樹脂の予備成形体である円筒状のパリソン90を、上方から挿入してセットする。ここで、パリソン90は、合わせ金型91,92の上方に配置された図示しない押出し機により、押出し成形される。具体的には、パリソン90は、押出し機内で可塑化された熱可塑性樹脂を、押出し機の先端に取り付けられたダイから下方に向けて押出すことにより、成形される。このとき、ダイの断面形状をドーナツ形状とすることにより、円筒状のパリソン90が得られる。
【0038】
次いで、図5(B)に示すように、一対の合わせ金型91,92を、互いに接近する方向に移動させて型締めする。合わせ金型91,92を閉じることにより、パリソン90の上部および下部が熱溶着され、合わせ金型91,92の上端部および下端部で挟み込まれる。これにより、合わせ金型91,92のキャビティ内に、上部および下部が熱溶着されたパリソン90が押し込まれる。
【0039】
次いで、図5(C)に示すように、上部および下部が熱溶着されたパリソン90の中空部に、ダイの中央部やキャビティ内などに設けられた図示しないシリンダノズルから、空気を吹き込む(ブロー成形)。すると、パリソン90が膨張し、所定形状に成型された合わせ金型91,92の内壁に押し付けられる。
【0040】
膨張して合わせ金型91,92の内壁に押し付けられたパリソン90は、冷却されて時間の経過とともに固化する。十分に固化した後、図5(D)に示すように、一対の合わせ金型91,92を互いに離隔する方向に移動させて開き、中空の成形品100を取り出す。取り出した成形品100には、合わせ金型91,92で挟み込むことにより生じる図5(D)に示すようなバリ101が存在する。従来では、このバリ101は切除して廃棄していたところ、本実施形態では、このバリ101を連結板15として利用する。
なお、合わせ金型91,92の合わせ面に凹凸を設けることにより、凸部を有するバリが形成され、これにより、凸部151を有する連結板15が得られる。
以上により、左液溜め部11、右液溜め部12、連通路13および連結板15が一体成形され、燃料タンク10が得られる。
【0041】
本実施形態に係る燃料タンクシステム1によれば、以下の作用効果が奏される。
(1)本実施形態では、液溜め部を分割して左液溜め部11および右液溜め部12とし、これら左液溜め部11と右液溜め部12とを車幅方向に離間して対向配置させた。また、これら左液溜め部11と右液溜め部12とを連通させる連通路13を設けるとともに、左液溜め部11と右液溜め部12とを連結する連結板15を設けた。
これにより、先ず、左液溜め部11と右液溜め部12の間にスペースを確保できるため、このスペースにキャニスタ20を配置できる。このため、後部座席の下方に、燃料タンク10とともにキャニスタ20を配置できる。従って、従来、キャニスタ20の配置スペースであった燃料タンク10の後上方のスペースを、高電位バッテリの配置スペースとして確保することができる。
また、左液溜め部11と右液溜め部12とが連結板15により連結されているため、燃料タンク10の剛性を向上させることができる。従って、燃料タンク10の車幅方向の揺れに対する剛性の低下を抑制できる。
【0042】
(2)本実施形態では、燃料タンク10内で発生する蒸発燃料を吸着するキャニスタ20を、連結板15上に当接させて配置した。
これにより、キャニスタ20が連結板15に当接して配置されているため、連結板15の剛性を向上できる。このため、車両走行時の振動により生ずる連結板15の上下方向の撓みを抑制できる。
また、キャニスタ20を連結板15に当接して配置することにより、連結板15をキャニスタ20のブラケットとして利用できる。このため、従来のように、別途ブラケットを成形する必要が無く、製造コストを削減できる。また、燃料タンク10とキャニスタ20とをモジュール化できるため、これらの組み付け工数を削減でき、生産工程を簡略化できる。
【0043】
(3)本実施形態では、連結板15を略水平に延びるように設けるとともに、上方に突出する凸部151を連結板15に設け、この凸部151上にキャニスタ20を当接させて配置した。より詳しくは、蒸発燃料通路21をキャニスタ20に接続するためのキャニスタ開口部23が、蒸発燃料通路21を燃料タンク10の上部に接続するための燃料タンク開口部131よりも上方に位置するように、キャニスタ20を凸部151上に当接させて配置した。
ここで、キャニスタ20は、燃料タンク10で発生する蒸発燃料を吸着する機能を有するものの、その吸着量には限界がある。また、キャニスタ20は、積極的に蒸発燃料を吸着させる性質のものではなく、大気中に蒸発燃料が流出するのを避けるのに必要な範囲内で、蒸発燃料を吸着させるに留めるのが好ましいとされる。この点、本実施形態によれば、燃料タンク開口部131よりも上方にキャニスタ開口部23を配置するため、大気に比して比重の大きい蒸発燃料がキャニスタ20に大量に流れ込むことを抑制できる。
【0044】
(4)本実施形態では、左液溜め部11および右液溜め部12と、連通路13と、を含んで構成される燃料タンク10をブロー成形などにより一体成形する際に生ずるバリを、連結板15として利用した。
これにより、従来は切除して廃棄されていたバリを連結板15として有効利用でき、製造コストを削減できる。また、燃料タンク10とキャニスタ20のブラケットとを一体成形できるため、生産工程を簡略化できる。さらには、従来のような金属ブラケットの使用を回避できるため、車両を軽量化でき、ひいては燃費を向上できる。
【0045】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態に係る燃料タンクシステム2の斜視図である。図6において、「Fr」は車両前方、「Rr」は車両後方、「R」は運転者から見た右方向、「L」は運転者から見た左方向を表している。
図6に示すように、本実施形態に係る燃料タンクシステム2は、第1実施形態と比べて、連結板16に凸部の代わりに凹部161が設けられている点と、キャニスタ開口部28が燃料タンク開口部131よりも下方の位置に配置されている点と、これに伴って蒸発燃料通路29の配置が変更されている点が相違し、これら以外の構成については、第1実施形態と同様である。なお、燃料タンク10やキャニスタ20については、説明の便宜上、第1実施形態と同一の符号を付してある。
【0046】
図7は、図6のB−B線端面の模式図である。図7に示すように、連結板16の車幅方向の略中央には、下方に突出する凹部161が設けられている。凹部161は、傾斜面を有する逆テーパ状であり、その底部は略水平となっている。凹部161は、連結板16の車両前後方向に亘って設けられており、この凹部161の底部に、キャニスタ20が当接して配置される。
なお、本実施形態の燃料タンク10は、第1実施形態と同様の成形方法により成形される。
【0047】
図8は、本実施形態に係る燃料タンクシステム2の左側面の模式図である。図8に示すように、キャニスタ開口部28は、燃料タンク開口部131よりも、高さh2の分だけ、下方の位置に配置されている。
また、これに伴い、蒸発燃料通路29は、燃料タンク開口部131から所定距離延びたところで下方に延びてキャニスタ開口部28に至るように設けられている。
【0048】
本実施形態に係る燃料タンクシステム2によれば、第1実施形態の作用効果(1)、(2)および(4)と同様の作用効果が奏される他、以下の作用効果が奏される。
本実施形態では、連結板15を略水平に延びるように設けるとともに、下方に突出する凹部161を連結板15に設け、この凹部161上にキャニスタ20を当接させて配置した。より詳しくは、蒸発燃料通路29をキャニスタ20に接続するためのキャニスタ開口部28が、蒸発燃料通路29を燃料タンク10の上部に接続するための燃料タンク開口部131よりも下方に位置するように、キャニスタ20を凹部161上に当接させて配置した。
これにより、燃料タンク10内で発生した蒸発燃料が、燃料タンク10内から蒸発燃料通路29を介してキャニスタ20に導入される際に、蒸発燃料が蒸発燃料通路29の途中で液化して液溜まりとなることを回避できる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1,2…燃料タンクシステム
10…燃料タンク
11…左液溜め部(一対の液溜め部)
12…右液溜め部(一対の液溜め部)
13…連通路
15,16…連結板
20…キャニスタ
21,29…蒸発燃料通路
23,28…キャニスタ開口部
131…燃料タンク開口部
151…凸部
161…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の燃料タンクを備えた燃料タンクシステムであって、
前記燃料タンクは、
車幅方向に離間して対向配置された一対の液溜め部と、
前記一対の液溜め部を連通させる連通路と、
前記連通路よりも車両前方または後方に設けられ、前記一対の液溜め部を連結する連結板と、を備えることを特徴とする燃料タンクシステム。
【請求項2】
前記燃料タンクシステムは、
前記燃料タンクと蒸発燃料通路を介して連通し、前記燃料タンク内で発生する蒸発燃料を吸着するキャニスタをさらに備え、
前記キャニスタは、前記連結板上に当接して配置されていることを特徴とする請求項1記載の燃料タンクシステム。
【請求項3】
前記連結板は、略水平に設けられ、
前記キャニスタは、前記蒸発燃料通路を前記キャニスタに接続するためのキャニスタ開口部が前記蒸発燃料通路を前記燃料タンクに接続するための燃料タンク開口部よりも上方に位置するように配置されていることを特徴とする請求項2記載の燃料タンクシステム。
【請求項4】
前記連結板は、略水平に設けられ、
前記キャニスタは、前記蒸発燃料通路を前記キャニスタに接続するためのキャニスタ開口部が前記蒸発燃料通路を前記燃料タンクに接続するための燃料タンク開口部よりも下方に位置するように配置されていることを特徴とする請求項2記載の燃料タンクシステム。
【請求項5】
前記連結板は、上方に突出する凸部または下方に突出する凹部を有し、
前記キャニスタは、前記凸部または凹部上に当接して配置されていることを特徴とする請求項2から4いずれか記載の燃料タンクシステム。
【請求項6】
前記連結板は、前記燃料タンクの成形時に生じたバリで形成されていることを特徴とする請求項1から5いずれか記載の燃料タンクシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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