説明

燃料タンク存否確認装置

【課題】タンク着脱式石油使用機器において、簡易な構造で燃料タンクの不存在を検知できる、耐油性及び長期の信頼性に優れた燃料タンクの存否確認装置を得る。
【解決手段】タンク収納室側部のタンク挿入方向の中間高さ位置に枢着されていて、該タンク収納室内に突出するオフ位置に向けて回動付勢され、該タンク収納室内に挿入される燃料タンクにより押圧されてオン位置に回動されるセンサアームと;このセンサアームに固定され、該センサアームの回動に伴い位置を変化させる可動永久磁石と;センサアームがオフ位置にあるときとオン位置にあるときとで、可動永久磁石の作用によって、電気抵抗が変化する磁気センサと;を有する燃料タンクの存否確認装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク着脱式石油使用機器の燃料タンク存否確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石油ストーブ、石油ファンヒータ等の小型の石油使用機器では、着脱可能な燃料タンクを備えるタイプがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-82997号公報
【特許文献2】特開2004-200046号公報
【特許文献3】特開2007-248054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このようなタンク着脱式石油使用機器では、運転を継続した状態で燃料タンクを脱着が装着する場合の危険性が指摘されており、簡易な構造で確実に燃料タンクの不存在を検知できる装置(あるいは、タンク不存在では強制消化ができる装置)が望まれている。さらに、石油使用機器であることから、耐油性及び長期の信頼性に優れた検知装置が望まれている。
【0005】
本発明は、以上の問題意識に基づき、タンク着脱式石油使用機器において、簡易な構造で燃料タンクの不存在を検知できる、耐油性及び長期の信頼性に優れた燃料タンクの存否(不存在)確認装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タンク収納室に燃料タンクを挿脱するタンク着脱式石油使用機器において、タンク収納室側部のタンク挿入方向の中間高さ位置に枢着されていて、該タンク収納室内に突出するオフ位置に向けて回動付勢され、該タンク収納室内に挿入される燃料タンクにより押圧されてオン位置に回動されるセンサアームと;このセンサアームに固定され、該センサアームの回動に伴い位置を変化させる可動永久磁石と;機器本体に固定され、センサアームがオフ位置にあるときとオン位置にあるときとで、上記可動永久磁石の作用により電気抵抗が変化する磁気センサと;を有することを特徴としている。
【0007】
磁気センサは、具体的には、合成樹脂材料の成形品からなるセンサハウジングに固定し、このセンサハウジングに、同じく合成樹脂材料の成形品からなるセンサアームを回動自在に支持することが好ましい。
【0008】
センサハウジングには、磁気センサを有するセンサ基板を挿入する下方だけが開放された基板挿入口を設けることで、漏洩した燃料が万が一にもセンサ基板(磁気センサ)を汚染するおそれをなくすことができる。
【0009】
センサアームには、永久磁石を収納する有底の凹部を形成することが望ましい。
【0010】
可動永久磁石と磁気センサは、センサアームのオン位置において互いに接近し、オフ位置において離間するように設けるのが実際的である。互いに接近するとき、平面的にみて互いに重畳させるのがよい。
【0011】
磁気センサには、GMR素子を用いることが好ましい。
【0012】
好ましい実施態様では、可動永久磁石は環状とし、GMR素子は、センサアームのオン位置で、該環状永久磁石の軸方向の中心位置にかつ同軸方向に離間した位置に位置し、膜面方向を環状永久磁石の軸線と直交する方向とするのがよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タンク着脱式石油使用機器において、簡易な構造で燃料タンクの不存在を検知できる、耐油性及び長期の信頼性に優れた燃料タンクの存否(不存在)確認装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による燃料タンクの存否確認装置を適用する石油ストーブの一例を示す、燃料タンクをストーブ本体から離脱させた状態を示す斜視図である。
【図2】(A)、(B)、(C)は、本発明による燃料タンクの存否確認装置の一実施形態を示す、異なる作動状態の側面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】同燃料タンクの存否確認装置のGMR素子(磁気センサ)基板を装着したハウジング単体の斜視図である。
【図5】同燃料タンクの存否確認装置のGMR素子(磁気センサ)を有する基板の正面図である。
【図6】(A)、(B)は、同燃料タンクの存否確認装置のセンサアームに固定した環状永久磁石の一着磁態様、及び好ましいGMR素子の配置態様を示す平面図と側面図である。
【図7】GMR素子の薄膜構造例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明による燃料タンク存否確認装置を適用する石油使用機器(石油ファンヒータ)の外観例を示している。石油ファンヒータ10は、上部(だけ)が開口したタンク収納室11と、このタンク収納室11に対して挿脱される燃料タンク20を有している。
【0016】
図2は、本発明による燃料タンク存否確認装置の一実施形態を示すもので、タンク収納室11の内面縦壁11Wの一部(一面)を示している。石油ファンヒータ10の本体内には、タンク収納室11の側部(タンク収納室11の外側)に、タンク挿入方向の中間高さ位置に位置させて、センサハウジング12が固定されており、このセンサハウジング12には軸13でセンサアーム14が枢着されている。センサアーム14は、自重によりタンク収納室11内に突出する方向に付勢されており、常時は突出端(オフ位置)に位置している(図2(C))。軸13回りに、センサアーム14を突出方向に付勢するトーションばねを設けてもよい。センサアーム14は、タンク収納室11内に燃料タンク20が挿入されると、燃料タンク20の外壁縦壁20Wによって押圧され、オン位置に回動する(図2(A))。センサアーム14のオン位置への回動端は、センサハウジング12に形成したストッパ12Sにより規制され、または、燃料タンク20の外面縦壁20Wと該センサアーム14との接触位置によって規制される。
【0017】
センサアーム14には、センサハウジング12側に底部が位置する有底凹部15(図3)が形成されていて、この有底凹部15内に、図2にハッチングを付して示した環状の永久磁石16が固定されている。一方、センサハウジング12には、この環状永久磁石16と協働して、燃料タンク20がタンク収納室11内に存在するか否かを検出する、磁気センサとしてのGMR素子17が固定されている。図6は、この環状永久磁石16のN極、S極の一着磁態様及びセンサアーム14がオン位置にあるときの同環状永久磁石16とGMR素子17の位置関係の一例を示している。環状永久磁石16は、例えば、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂とフェライト粉末又は希土類マグネット粉末をミックスして練り込み、均一にした後、射出成型によって成型加工されたマグネットプラスチックに必要な着磁を施すことで得られる。
【0018】
GMR素子17は、外部磁界に応じて電気抵抗が変化し、その抵抗変化を電圧信号に変換して出力する周知の素子であり、図7にその薄膜構造例を示している。同図に示すように、GMR素子17は、基板17x上に例えば下地層17a、反強磁性層17b、固定磁性層17c、非磁性層17d、フリー磁性層17e及び保護層17fを順に積層した構造で形成され、外部磁界Hextの印加によりフリー磁性層17eの磁化が回転(反転)して電気抵抗が変化する。
【0019】
センサアーム14が突出位置(オフ位置)にあるときには、環状永久磁石16とGMR素子17の間に所定以上距離があるため、GMR素子17のフリー磁性層17eの磁化方向が固定磁性層17cの磁化方向に対して平行な状態で安定化され、GMR素子17の電気抵抗は最小値で一定に保たれる。
【0020】
一方、センサアーム14が押込位置(オン位置)に移動すると、該移動に伴って環状永久磁石16がGMR素子17に近づき、図示例では、図6に示すように平面的に見て重畳する。その結果、環状永久磁石16の磁力がGMR素子17に作用し、GMR素子17のフリー磁性層17eの磁化方向が反転して固定磁性層17cの磁化方向に対して反平行状態となり、GMR素子17の電気抵抗が大きくなる。つまり、環状永久磁石16の磁力は、GMR素子17のフリー磁性層17eの磁化を回転させる外部磁界Hextとして機能する。図2、図5、図6の矢印Fは、フリー磁性層17eの磁化方向を示している。
【0021】
別言すれば、センサアーム14のオフ位置では、環状永久磁石16の磁力(外部磁界Hext)がGMR素子17に作用せず、オン位置では環状永久磁石16の磁力(外部磁界Hext)がGMR素子17に作用するように、センサアーム14の回動角、環状永久磁石16の位置及びその着磁態様が設定されている。環状永久磁石16の着磁方向は、センサアーム14がオフ位置とオン位置との間を移動する際に、以上のGMR素子17の抵抗変化(フリー磁性層の磁化方向の変化)が生じるように定められている。永久磁石16の形状は、環状としたが、以上の作用が得られるものであれば、その形状は問わない。
【0022】
図6は、センサアーム14がオン位置にあるときの好ましい環状永久磁石16とGMR素子17との配置例を示している。GMR素子17は、センサアーム14のオン位置で、環状永久磁石16の軸方向の中心部にかつ軸方向に離間した位置に位置し、膜面方向を環状永久磁石16の軸線と直交する方向としている。このような配置とすることで、GMR素子17の膜面方向とほぼ平行に環状永久磁石16の磁束を作用させることができ、GMR素子17によるセンサアーム14の位置の検出精度を高めることができる。
【0023】
図2ないし図5は、GMR素子17を有するセンサ基板18と、センサハウジング12のより具体的な構成を示している。合成樹脂材料の成形品からなるセンサハウジング12には、その上部に、上述の軸13と、センサハウジング12を機器本体に固定するための固定舌片12Fが形成されており、その下面から上方に向けて、基板挿入口(室)12Rが形成されている。センサハウジング12は、この基板挿入口12Rを除いて、その全体が閉塞されている同じく合成樹脂材料の成形品からなるセンサアーム14には、軸13を相対回動可能に嵌合させる円形穴14Hが形成されている。
【0024】
GMR素子17を固定したセンサ基板18は、図5に単体形状を示すように、同時に、コンデンサ、トランジスタ等の電子部品18Xを搭載しており、GMR素子17の出力は信号線18Yを介して取り出される。センサ基板18は、センサハウジング12の基板挿入口12Rに挿入する際に、予めゾル状態の保護材で覆い、その状態で基板挿入口12R内に挿入し、さらに基板挿入口12R内に保護材をスプレーする。すると、基板挿入口12R内のGMR素子17及び電子部品18Xが保護材で覆われ、保護される。基板挿入口12Rの下面以外から該基板挿入口12Rに異物が進入するおそれがなく、仮に、石油が漏れたとしても、GMR素子17及び電子部品18Xにはその影響が及ばない。
【0025】
センサ基板18からの信号線18Yは、図4に示すように、制御回路19Xに接続されており、制御回路19Xは、表示器19Y及び強制消化機構19Zを制御する。
【0026】
以上の本石油ファンヒータ10は、燃料タンク20をタンク収納室11内に挿入した状態では、燃料タンク20によってセンサアーム14が押込位置(オン位置)に移動し、環状永久磁石16がGMR素子17に平面的に見て重畳する。その結果、環状永久磁石16の磁力がGMR素子17に作用し、GMR素子17のフリー磁性層17eの磁化方向が反転して固定磁性層17cの磁化方向に対して反平行状態となり、GMR素子17の電気抵抗が大きくなる。制御回路19Xは、GMR素子17の出力を受けて燃料タンク20がタンク収納室11内に存在していることを検知し、石油ファンヒータ10の運転(燃焼)を可能とする。なお、燃料タンク20からの燃料は一般的に、燃料タンク20がタンク収納室11に正しく収納された状態において、その底部開口から石油使用機器に供給され、燃焼に供される。これらの供給機構及び燃焼機構は、周知であり、本発明の要旨に関係がないので、その図示及び説明は省略する。
【0027】
一方、燃料タンク20をタンク収納室11から引き抜いていくと、センサアーム14が図2(B)、(C)に示すように、タンク収納室11内への突出位置(オフ位置)に移動し、環状永久磁石16がGMR素子17から離間していく。このため、GMR素子17の電気抵抗が小さくなり、その抵抗変化を制御回路19Xが検知して、燃料タンク20が存在しないことを検知し、表示器19Yによりその不存在を表示し、さらに強制消化機構19Zにより、強制消化を実行する。
【0028】
磁気センサ30としてはホール素子を用いることもできるが、膜面内方向における磁束検出が可能で高感度なGMR素子を用いればより確実なスイッチングを行うことができる。ホール素子を用いた場合には、素子面に垂直な磁束を検知する構造上、該ホール素子を基板18に対して垂直方向に立てる必要があるのに対し、素子面内方向の磁束を検知するGMR素子は基板18と平行に配置できる。
【0029】
本発明の燃料タンク存否確認装置は、機械的に非接触な永久磁石と磁気センサの接離によって燃料タンクの存否を検出するので、長期に渡る高い信頼性を得ることができる。センサアームは、タンク挿入方向の中間高さ位置に枢着されているので、仮に石油漏れが発生したとしても、センサアーム(永久磁石)及び磁気センサにその影響が及ぶことがない。また、信号線の接続が必要な磁気センサを固定側に設け、配線が不要な永久磁石をセンサアーム側に設けたから、センサアームの回動に伴う故障が発生しにくい。また、仮に永久磁石16がセンサアーム14から脱落する事故が発生したとしても、燃料タンク20がタンク収納室11内に収納されているにも拘わらずその正常収納が検知されないから、燃料タンク存否確認装置が故障しているにも拘わらず燃焼が継続するおそれは回避でき、安全性が高まる。
【符号の説明】
【0030】
10 石油ファンヒータ(石油使用機器)
11 タンク収納室
11W 内面縦壁
12 センサハウジング
12F 固定舌片
12R 基板挿入口
12S ストッパ
13 軸
14 センサアーム
15 有底凹部
16 環状永久磁石
17 GMR素子(磁気センサ)
18 センサ基板
18X 電子部品
18Y 信号線
19X 制御回路
19Y 表示器
19Z 強制消化機構
20 燃料タンク
20W 外面縦壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク収納室に燃料タンクを挿脱するタンク着脱式石油使用機器において、
上記タンク収納室側部のタンク挿入方向の中間高さ位置に枢着されていて、該タンク収納室内に突出するオフ位置に向けて回動付勢され、該タンク収納室内に挿入される燃料タンクにより押圧されてオン位置に回動されるセンサアームと;
このセンサアームに固定され、該センサアームの回動に伴い位置を変化させる可動永久磁石と;
上記機器本体に固定され、センサアームがオフ位置にあるときとオン位置にあるときとで、上記可動永久磁石の作用により電気抵抗が変化する磁気センサと;
を有することを特徴とする燃料タンク存否確認装置。
【請求項2】
請求項1記載の燃料タンク存否確認装置において、上記磁気センサは、センサハウジングに固定されており、このセンサハウジングに上記センサアームが回動自在に支持されている燃料タンク存否確認装置。
【請求項3】
請求項2記載の燃料タンク存否確認装置において、上記センサハウジングは、上記磁気センサを有するセンサ基板を挿入する下方だけが開放された基板挿入口を有している燃料タンク存否確認装置。
【請求項4】
請求項2または記載の燃料タンク存否確認装置において、上記センサアームは、上記永久磁石を収納する有底の凹部を備えている燃料タンク存否確認装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の燃料タンク存否確認装置において、上記可動永久磁石と磁気センサは、上記センサアームのオン位置において互いに接近し、オフ位置において離間する燃料タンク存否確認装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の燃料タンク存否確認装置において、上記磁気センサはGMR素子である燃料タンク存否確認装置。
【請求項7】
請求項6記載の燃料タンク存否確認装置において、上記可動永久磁石は環状をなしており、上記GMR素子は、センサアームのオン位置で、該環状永久磁石の軸方向の中心位置にかつ同軸方向に離間した位置に位置し、膜面方向を環状永久磁石の軸線と直交する方向としている燃料タンク存否確認装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−255958(P2010−255958A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107964(P2009−107964)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】