説明

燃料ホース

【課題】燃料ホースの優れた耐燃料透過性を得る。
【解決手段】燃料ホース10は、テトラフルオロエチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体に変性基を含有させたCPTポリマー及び/又はテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体に変性基を含有させたPFAポリマーを含む第1樹脂材料で形成された第1層11と、それを被覆するように一体に設けられ脂肪族ジアミン成分中の炭素数が6よりも大きい半芳香族ポリアミドを含む第2樹脂材料で形成された第2層12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等に用いられる燃料ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用燃料ホースに対し、環境意識の高まりから燃料の蒸散量規制が強化され、より燃料の透過性の低い仕様が求められている。
【0003】
特許文献1には、含フッ素エチレン性重合体の内層、及びその外側の半芳香族ポリアミド系樹脂の外層とを備え、内層と外層とを少なくともアミン官能基によって直接化学的に結合させた燃料ホースが開示されている。
【0004】
特許文献2には、クロロトリフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレン単位、並びにクロロトリフルオロエチレン及びテトラフルオロエチレンと共重合可能な単量体に由来する単量体単位から構成されるクロロトリフルオロエチレン共重合体のフッ素樹脂からなる層、並びにフッ素非含有有機材料からなる層を備え、燃料透過速度が1.5g/m/day以下である燃料ホースが開示されている。
【0005】
特許文献3には、含フッ素共重合体からなる内層、及びポリアミド系樹脂からなる外層を備え、内層を構成する含フッ素共重合体が、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位、エチレンに基づく重合単位、及び無水イタコン酸等に基づく重合単位を特定のモル比で含有する含フッ素共重合体であり、外層を構成するポリアミド系樹脂が、(末端アミノ基濃度)/(末端カルボキシル基濃度)>1の条件を満たすポリアミド11及び/又はポリアミド12である燃料ホースが開示されている。
【0006】
特許文献4には、ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる層、並びに全ジアミン単位に対して、炭素数10〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位と、全ジカルボン酸単位に対して、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位を60モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリアミドからなる層を備えた燃料ホースが開示されている。
【0007】
特許文献5には、脂肪族ポリアミド樹脂及び変性フッ素樹脂のうち少なくとも一方の樹脂で形成された内層、芳香族含有ポリアミド樹脂で形成された中間層、並びに脂肪族ポリアミド樹脂で形成された外層を備えた燃料ホースが開示されている。
【0008】
特許文献6には、熱溶融性ふっ素樹脂で構成された内層、及びこれよりも外側の芳香族ポリアミド樹脂で構成された層を備えた燃料ホースが開示されている。
【0009】
特許文献7には、接着性を有するフッ素樹脂を内層側とし、ナイロン11とナイロン12とがブレンドされたナイロン樹脂を外層側として共押出成形した燃料ホースが開示されている。
【0010】
特許文献8には、ポリアミド系樹脂及び官能基を有するポリオレフィン系樹脂のうち少なくとも一方で形成された内層、ポリフェニレンサルファイド樹脂で形成された燃料低透過層、並びにポリアミド系樹脂及び官能基を有するポリオレフィン系樹脂のうち少なくとも一方で形成された外層を備えた燃料ホースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−196522号公報
【特許文献2】特許第3972917号公報
【特許文献3】特開2004−301247号公報
【特許文献4】特開2005−119017号公報
【特許文献5】特開2005−262673号公報
【特許文献6】特許第3194053号公報
【特許文献7】特開2005−315362号公報
【特許文献8】特開2005−127503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、燃料ホースにおいて優れた耐燃料透過性を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、テトラフルオロエチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体に変性基を含有させたCPTポリマー及び/又はテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体に変性基を含有させたPFAポリマーを含む第1樹脂材料で形成された第1層と、
上記第1層を被覆するように一体に設けられ脂肪族ジアミン成分中の炭素数が6よりも大きい半芳香族ポリアミドを含む第2樹脂材料で形成された第2層と、
を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、CPTポリマー及び/又はPFAポリマーを含む第1樹脂材料で形成された第1層と所定の半芳香族ポリアミドを含む第2樹脂材料で形成された第2層とを備えていることにより、予想を超える優れた耐燃料透過性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係る燃料ホースの斜視図である。
【図2】実施形態2に係る燃料ホースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る燃料ホース10を示す。この実施形態1に係る燃料ホース10は、例えば、自動車の燃料注入配管と燃料タンクとの連絡に用いられるものである。
【0017】
実施形態1に係る燃料ホース10は、燃料が通過する部分である最も内側の内層11(第1層)、その内層11を被覆するように一体に設けられた中間層12(第2層)、及びさらに中間層12を被覆するように一体に設けられた外層13(第3層)の3層構造を有する。また、この燃料ホース10は、例えば、長さが100〜3000mm、外径が7〜12mm、及び内径が5〜10mmの円筒チューブ状に形成されている。
【0018】
内層は第1樹脂材料で形成されている。内層11は、層厚さが例えば0.05〜1.0mmである。
【0019】
第1樹脂材料は、CPTポリマー及び/又はPFAポリマーを主成分として含む。従って、第1樹脂材料は、CPTポリマーのみを含んでいてもよく、また、PFAポリマーのみを含んでいてもよく、さらに、それらの両方を含んでいてもよい。
【0020】
CPTポリマーは、テトラフルオロエチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体に変性基を含有させたものである。CPTポリマーは、テトラフルオロエチレンとクロロトリフルオロエチレンと変性基含有モノマーとの共重合体であってもよく、また、テトラフルオロエチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体にグラフト重合等により変性基を導入したものであってもよい。CPTポリマーは、ブロック共重合体であってもよく、また、ランダム共重合体であってもよく、さらに、テトラフルオロエチレンとクロロトリフルオロエチレンとの交互共重合体の所々に変性基が導入されたものであってもよい。具体的には、CPTポリマーとしては、例えば、ダイキン工業社製のネオフロンCPT(商品名)が挙げられる。
【0021】
PFAポリマーは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体に変性基を含有させたものである。PFAポリマーは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルと変性基含有モノマーとの共重合体であってもよく、また、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体にグラフト重合等により変性基を導入したものであってもよい。PFAポリマーは、ブロック共重合体であってもよく、また、ランダム共重合体であってもよく、さらに、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの交互共重合体の所々に変性基が導入されたものであってもよい。具体的には、PFAポリマーとしては、例えば、旭硝子社製のFluon PFA(商品名)が挙げられる。
【0022】
パーフルオロアルキルビニルエーテルに含まれるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。パーフルオロアルキルビニルエーテルに含まれるアルキル基は、単一種であってもよく、また、複数種であってもよい。
【0023】
CPTポリマー及びPFAポリマーに含まれ得る変性基としては、例えば、カルボニル基、エポキシ基、無水マレイン酸基、グリシジル基、カルボン酸ハライド基等が挙げられる。CPTポリマー及びPFAポリマーに含まれる変性基は、単一種であってもよく、また、複数種であってもよい。
【0024】
第1樹脂材料には、導電性フィラーが配合されて分散していることが好ましい。これにより内層に導電性が付与され、内部を流通する燃料の内部摩擦や内壁との摩擦によって発生した静電気が蓄積して燃料に引火することを防止することができる。
【0025】
導電性フィラーとしては、例えば、銀粉末、白金粉末、金粉末、銅粉末、ニッケル粉末、パラジウム粉末などの金属粉末;カーボンブラック、グラファイト粉などのカーボン粉;カーボン繊維;黄銅、ステンレス、アルミニウムなどの金属繊維;ニッケル、アルミニウムなどでコートした炭素繊維、金属をコートしたガラス繊維;黒鉛;アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属フレーク等が挙げられる。導電性フィラーは、単一種が含まれていてもよく、また、複数種が含まれていてもよい。
【0026】
第1樹脂材料には、後述の耐燃料透過性効果に影響を及ぼさない範囲で、その他に、CPTポリマー及びPFAポリマー以外のポリマー等が含まれていてもよい。
【0027】
中間層は第2樹脂材料で形成されている。中間層12は、層厚さが例えば0.05〜0.50mmである。
【0028】
第2樹脂材料は、脂肪族ジアミン成分中の炭素数が6よりも大きい半芳香族ポリアミドを主成分として含む。
【0029】
半芳香族ポリアミドとしては、例えば、ナイロン9T(PA9T)、ナイロン12T(PA12T)等が挙げられる。半芳香族ポリアミドは、単一種で構成されていてもよく、また、複数種が混合されて構成されていてもよい。
【0030】
半芳香族ポリアミドは、耐熱性、耐薬品性、低吸水性、軽量性、力学特性、及び成形加工性のいずれもが優れ、燃料ホースに好適であるという観点から、脂肪族ジアミン成分中の炭素数が9であるナイロン9Tであることが特に好ましい。
【0031】
ナイロン9Tは、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,9−ノナンジアミン及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミンを主成分とするジアミン成分とからなるポリアミドである。
【0032】
ナイロン9Tのジカルボン酸成分のうちテレフタル酸の含有量は、ジカルボン酸成分全体に対して、60モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。
【0033】
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。溶融成形が可能な範囲内で含めることができるテレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸が挙げられる。テレフタル酸以外のジカルボン酸成分は、これらのうち芳香族ジカルボン酸が好ましい。テレフタル酸以外のジカルボン酸成分は、単一種であってもよく、また、複数種であってもよい。
【0034】
ナイロン9Tのジアミン成分のうち1,9−ノナンジアミン及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミンの含有量は、ジアミン成分全体に対して、60モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。ジアミン成分は、1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミンのいずれか一方を含んでいてもよく、また、それらの両方を含んでいてもよい。後者の場合、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとの含有モル比は、1,9−ノナンジアミン:2−メチル−1,8−オクタンジアミン=30:70〜95:5であることが好ましく、40:60〜90:10であることがより好ましい。
【0035】
1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミン以外のジアミン成分としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルなどの芳香族ジアミン等が挙げられる。1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミン以外のジアミン成分は、単一種であってもよく、また、複数種であってもよい。
【0036】
半芳香族ポリアミドは、内層との層間の高い接着性が得られる観点から、分子末端のカルボキシル基とアミノ基との比率がカルボキシル基:アミノ基比率=5:5〜1:9であることが好ましく、3:7〜1:9であることがより好ましい。ここで、内層と中間層との層間の剥離接着力は20N/cm以上であることが好ましく、40N/cm以上であることがより好ましい。
【0037】
第2樹脂材料には、耐燃料透過性効果に影響を及ぼさない範囲で、その他に、半芳香族ポリアミド以外のポリアミド等が含まれていてもよい。
【0038】
外層は第3樹脂材料で形成されている。この外層の存在により内層の薄肉化が可能となり、高価な第1樹脂材料の使用量を少なくすることによるコストダウンを図ることができる。外層13は、層厚さが例えば0.3〜0.9mmである。
【0039】
第3樹脂材料は、ポリアミドを主成分として含むことが好ましく、特に、ナイロン11(ポリアミド11:PA11)、ナイロン12(ポリアミド12:PA12)、或いは、それらの混合物を主成分として含むことが特に好ましい。
【0040】
実施形態1に係る燃料ホースは、3層共押出成形による方法、内層11及び中間層12を2層共押出成形した後にその上に外層13を押出成形する方法、中間層12及び外層13を2層共押出成形した後に内層11をブロー成形やコーティングする方法、射出成形による方法、ブロー成形による方法等の公知の積層ホースの製造方法で製造することができる。
【0041】
以上の実施形態1に係る燃料ホースによれば、CPTポリマー及び/又はPFAポリマーを含む第1樹脂材料で形成された第1層と所定の半芳香族ポリアミドを含む第2樹脂材料で形成された第2層とを備えていることにより、予想を超える優れた耐燃料透過性を得ることができる。
【0042】
(実施形態2)
図2は実施形態2に係る燃料ホース10を示す。この実施形態2に係る燃料ホース10は、例えば、自動車の燃料注入配管と燃料タンクとの連絡に用いられるものである。
【0043】
実施形態2に係る燃料ホース10は、内層11(第1層)、及びその内層11を被覆するように一体に設けられた外層(第2層)の2層構造を有する。また、この燃料ホース10は、例えば、長さが100〜3000mm、外径が7〜12mm、内径が5〜10mmの円筒チューブ状に形成されている。
【0044】
内層は第1樹脂材料で形成されている。第1樹脂材料の構成は実施形態1と同一である。内層は、層厚さが例えば0.05〜0.5mmである。
【0045】
外層は第2樹脂材料で形成されている。第2樹脂材料の構成は実施形態1と同一である。外層は、層厚さが例えば0.5〜0.95mmである。
【0046】
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同一である。
【0047】
(その他の実施形態)
上記実施形態1では3層及び上記実施形態2では2層の燃料ホースとしたが、特にこれに限定されるものではなく、第1樹脂材料で形成された第1層及び第2樹脂材料で形成された第2層を備えたものであれば4層以上であってもよい。
【実施例】
【0048】
(燃料ホース)
以下の実施例1〜7及び比較例1〜13の燃料ホースを作製した。それぞれの構成を表1及び2にも示す。
【0049】
<実施例1>
カーボンブラックが配合されたCPTポリマー(ダイキン工業社製 商品名:ネオフロンCPT)で層厚さ0.05mmの内層を形成し、ナイロン9T(PA9T)(クラレ社製 商品名:ジェネスタN1001D−U83)で層厚さ0.95mmの外層を形成した2層構造の燃料ホースを実施例1とした。
【0050】
なお、実施例1の燃料ホースは、長さが200mm、外径が8mm、及び内径が6mmとした。
【0051】
<実施例2>
内層の層厚さを0.10mm、及び外層の層厚さを0.90mmとしたことを除いて実施例1と同一構成の2層構造の燃料ホースを実施例2とした。
【0052】
<実施例3>
内層の層厚さを0.20mm、及び外層の層厚さを0.80mmとしたことを除いて実施例1と同一構成の2層構造の燃料ホースを実施例3とした。
【0053】
<実施例4>
カーボンブラックが配合されたCPTポリマーで層厚さ0.05mmの内層を形成し、ナイロン9Tで層厚さ0.20mmの中間層を形成し、ナイロン12(PA12)(ダイセル・デグサ社製 商品名:VESTAMID LX9011)で層厚さ0.75mmの外層を形成した3層構造の燃料ホースを実施例4とした。
【0054】
<実施例5>
中間層の層厚さを0.25mm、及び外層の層厚さを0.70mmとしたことを除いて実施例4と同一構成の3層構造の燃料ホースを実施例5とした。
【0055】
<実施例6>
内層の層厚さを0.10mm、及び外層の層厚さを0.70mmとしたことを除いて実施例4と同一構成の3層構造の燃料ホースを実施例6とした。
【0056】
<実施例7>
内層の層厚さを0.10mm、中間層の層厚さを0.25mm、及び外層の層厚さを0.65mmとしたことを除いて実施例4と同一構成の3層構造の燃料ホースを実施例7とした。
【0057】
<比較例1>
ナイロン12で外層を形成したことを除いて実施例1と同一構成の2層構造の燃料ホースを比較例1とした。
【0058】
<比較例2>
ナイロン12で外層を形成したことを除いて実施例2と同一構成の2層構造の燃料ホースを比較例1とした。
【0059】
<比較例3>
ナイロン12で外層を形成したことを除いて実施例3と同一構成の2層構造の燃料ホースを比較例1とした。
【0060】
<比較例4>
エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFEポリマー)(ダイキン工業社製 商品名:EP610AS)で内層を形成したことを除いて比較例1と同一構成の2構造の燃料ホースを比較例4とした。
【0061】
<比較例5>
ETFEポリマーで内層を形成したことを除いて比較例2と同一構成の2層構造の燃料ホースを比較例5とした。
【0062】
<比較例6>
ETFEポリマーで内層を形成したことを除いて比較例3と同一構成の2層構造の燃料ホースを比較例6とした。
【0063】
<比較例7>
ETFEポリマーで内層を形成したことを除いて実施例4と同一構成の3層構造の燃料ホースを比較例7とした。
【0064】
<比較例8>
ETFEポリマーで内層を形成したことを除いて実施例5と同一構成の3層構造の燃料ホースを比較例8とした。
【0065】
<比較例9>
ETFEポリマーで内層を形成したことを除いて実施例6と同一構成の3層構造の燃料ホースを比較例9とした。
【0066】
<比較例10>
ETFEポリマーで内層を形成したことを除いて実施例7と同一構成の3層構造の燃料ホースを比較例10とした。
【0067】
<比較例11>
ナイロン12の層厚さ1.00mmの単一層の燃料ホースを比較例11とした。
【0068】
<比較例12>
ポリフェニレンサルファイド(PPSポリマー)(東レ社製 商品名:トレリナ)にカーボンブラックを、ポリフェニレンサルファイド100質量部に対して10質量部配合して分散させたもので内層を形成し、PPSポリマーで中間層を形成したことを除いて実施例5と同一構成の3層構造の燃料ホースを比較例12とした。
【0069】
<比較例13>
ポリプロピレン(PPポリマー)(日本ポリプロ社製 商品名:ノバテックPP)で中間層を形成したことを除いて比較例12と同一構成の3層構造の燃料ホースを比較例13とした。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
(試験評価方法)
<剥離接着力>
実施例1〜7並びに比較例1〜10、12、及び13のそれぞれの燃料ホースについて、縦割りすると共に一端の内層と外層又は中間層との間に切り込みを入れた短冊状の試験片を作成した。そして、テンシロン万能試験機を用い、試験片の一端の内層部分を一方のチャックに、及び外層部分又は中間層部分を他方のチャックにそれぞれ固定し、30mm/minの速度で180°剥離試験を実施した。剥離最大強度を読み取り、それを試験片の幅で除した値を剥離接着力とした。
【0073】
また、FuelC(イソオクタン:トルエン=50:50体積比)とエタノールとを90:10の体積比で混合したアルコール/ガソリンを封入し、それを60℃の温度雰囲気下で20日間保持した後、上記と同様の180°剥離試験を実施した。
【0074】
<耐燃料透過性>
実施例1〜7及び比較例1〜13のそれぞれの燃料ホースについて、FuelCとエタノールとを90:10の体積比で混合したアルコール/ガソリンを封入して全体の質量を測定し、それを60℃に温度設定したオーブンに入れ、一日経過後の質量変化(a)を測定した。一方、アルコール/ガソリンを封入していないものについても全体の質量を測定し、それを60℃に温度設定したオーブンに入れ、一日経過後の質量変化(b)を測定した。そして、(a)−(b)から1日当たりの燃料の質量変化を算出し、それを燃料ホースの内周の表面積で除したものを耐燃料透過性(60℃,CE10)とした。
【0075】
また、純エタノールを封入した場合についても同様に燃料の質量変化を算出し、それを燃料ホースの内周の表面積で除したものを耐燃料透過性(60℃,CE100)とした。
【0076】
<引張破断伸び>
実施例1〜7及び比較例1〜13のそれぞれの燃料ホースについて、縦割りしてダンベル試験片を打ち抜いて作成した。そして、テンシロン万能試験機を用い、ダンベル試験片の一端を一方のチャックに、及び他端を他方のチャックにそれぞれ固定し、50mm/minの速度で引っ張り試験を実施し、そして、破断時の伸びを測定した。なお、ダンベル試験片は、ASTM D638 TYPE−V(標線間:8mm)のものとした。
【0077】
また、FuelCとエタノールとを90:10の体積比で混合したアルコール/ガソリンを封入し、それを60℃の温度雰囲気下で20日間保持した後、上記と同様の引っ張り試験を実施した。
【0078】
<ホースの柔軟性>
実施例1〜7並びに比較例1〜13のそれぞれの燃料ホースについて、△:やや硬く曲げ加工性に劣る、○:柔軟性があり曲げ加工性に問題なし、という基準に従い、曲げたときの曲げ易さを評価した。
【0079】
(試験評価結果)
試験結果を表1及び2に示す。
【0080】
剥離接着力は、実施例1〜3がいずれも剥離不可、つまり、界面剥離せずに材料破壊し、及び実施例4〜7がいずれも45N/cm、並びに比較例1〜3がいずれも剥離不可、比較例4〜6がいずれも40N/cm、比較例7〜10がいずれも45N/cm、比較例12が25N/cm、及び比較例13が20N/cmであった。
【0081】
燃料封入後の剥離接着力は、実施例1〜3がいずれも剥離不可、及び実施例4〜7がいずれも45N/cm、並びに比較例1〜3がいずれも剥離不可、比較例4〜6がいずれも35N/cm、比較例7〜10がいずれも40N/cm、比較例12が15N/cm、及び比較例13が8N/cmであった。
【0082】
耐燃料透過性(60℃,CE10)は、実施例1〜3がいずれも0.1g/m/day以下、実施例4が0.3g/m/day、実施例5が0.2g/m/day、実施例6が0.1g/m/day、及び実施例7が0.1g/m/day、並びに比較例1が1.4g/m/day、比較例2が0.9g/m/day、比較例3が0.6g/m/day、比較例4が6.2g/m/day、比較例5が4.1g/m/day、比較例6が2.5g/m/day、比較例7が1.8g/m/day、比較例8が1.4g/m/day、比較例9が0.9g/m/day、比較例10が0.8g/m/day、比較例11が20g/m/day、比較例12が0.7g/m/day、及び比較例13が1.5g/m/dayであった。
【0083】
耐燃料透過性(60℃,CE100)は、実施例1〜3がいずれも0.1g/m/day以下、実施例4が0.1g/m/day、及び実施例5〜7がいずれも0.1g/m/day以下、並びに比較例1が0.7g/m/day、比較例2が0.4g/m/day、比較例3が0.2g/m/day、比較例4が4.5g/m/day、比較例5が2.2g/m/day、比較例6が1.5g/m/day、比較例7が0.9g/m/day、比較例8が0.7g/m/day、比較例9が0.6g/m/day、比較例10が0.4g/m/day、比較例11が15g/m/day、比較例12が0.3g/m/day、及び比較例13が0.7g/m/dayであった。
【0084】
引張破断伸びは、実施例1〜3がいずれも200%、及び実施例4〜7がいずれも240%、並びに比較例1〜3がいずれも260%、比較例4〜6がいずれも240%、比較例7〜10がいずれも230%、比較例11が260%、比較例12が220%、及び比較例13が200%であった。
【0085】
燃料封入後の引張破断伸びは、実施例1〜3がいずれも200%、及び実施例4〜7がいずれも240%、並びに比較例1〜3がいずれも250%、比較例4〜6がいずれも230%、比較例7〜10がいずれも210%、比較例11が220%、比較例12が180%、及び比較例13が180%であった。
【0086】
ホースの柔軟性は、実施例1〜3がいずれも△、並びに実施例4〜7及び比較例1〜13がいずれも○であった。
【0087】
以上の結果から、内層がCPTポリマー及び外層がナイロン9Tでそれぞれ形成された2層構造の実施例1〜3では、CPTポリマーの内層が厚くなるとコストが高くなるものの、内層の厚さが0.05mmでも優れた耐燃料透過性が得られることが分かる。
【0088】
内層がCPTポリマー、中間層がナイロン9T、及び外層がナイロン12でそれぞれ形成された3層構造の実施例4〜7では、まず、燃料未封入の剥離接着力がいずれも20N/cmであり、しかも燃料封入後でもその低下が無いことが分かる。また、耐燃料透過性が0.3g/m/day以下であり、高アルコール燃料に対しても優れた耐燃料透過性を有することが分かる。さらに、引張破断伸びがいずれも200%以上であり、しかも燃料封入後でもその低下が無いことが分かる。また、柔軟性も十分であって加工性に特に問題がないことが分かる。つまり、実施例4〜7は全体的にバランスの取れた燃料ホースである。これらの中では特に実施例5の構成が最も好ましい。
【0089】
一方、内層がCPTポリマー及び外層がナイロン12でそれぞれ形成された2層構造の比較例1〜3並びに内層がETFEポリマー及び外層がナイロン12でそれぞれ形成された2層構造の比較例4〜6では、いずれも実施例1〜7に比べて耐燃料透過性が劣ることが分かる。
【0090】
内層がETFEポリマー、中間層がナイロン9T、及び外層がナイロン12でそれぞれ形成された3層構造の比較例7〜10では、まず、燃料未封入の剥離接着力がいずれも20N/cmであるものの、燃料封入後にその低下があることが分かる。また、ほとんどの耐燃料透過性が1g/m/day以上であり、実施例1〜7に比べて耐燃料透過性が劣ることが分かる。さらに、引張破断伸びがいずれも200%以上であるものの、燃料封入後にその低下があることが分かる。
【0091】
ナイロン12単層の比較例11では、実施例1〜7に比べて耐燃料透過性が著しく劣ることが分かる。また、内層がPPSポリマー、中間層がPPSポリマー、及び外層がナイロン12でそれぞれ形成された3層構造の比較例12、並びに内層がPPSポリマー、中間層がPPポリマー、及び外層がナイロン12でそれぞれ形成された3層構造の比較例13では、実施例1〜7に比べて剥離接着力が著しく劣ることが分かる。
【0092】
また、2層構造の燃料ホースにおいて、内層がCPTポリマー及び外層がナイロン12でそれぞれ形成された比較例1〜3と内層がETFEポリマー及び外層がナイロン12でそれぞれ形成された比較例4〜6とをそれぞれ対応させて見てみると、前者の耐燃料透過性が後者のおおよそ23%であることが分かる。
【0093】
これに対し、3層構造の燃料ホースにおいて、内層がCPTポリマー、中間層がナイロン9T、及び外層がナイロン12でそれぞれ形成された実施例4〜7と、内層がETFEポリマー、中間層がナイロン9T、及び外層がナイロン12でそれぞれ形成された比較例7〜10とをそれぞれ対応させて見てみると、前者の耐燃料透過性が後者のおおよそ14%であることが分かる。
【0094】
つまり、これらの結果から、CPTポリマーの層単独よりも、それとナイロン9Tの層とを組み合わせた積層構造により、10%程度も耐燃料透過性が大きく向上していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は自動車等に用いられる燃料ホースについて有用である。
【符号の説明】
【0096】
10 燃料ホース
11 内層(第1層)
12 中間層(第2層)
13 外層(第2層、第3層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体に変性基を含有させたCPTポリマー及び/又はテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体に変性基を含有させたPFAポリマーを含む第1樹脂材料で形成された第1層と、
上記第1層を被覆するように一体に設けられ脂肪族ジアミン成分中の炭素数が6よりも大きい半芳香族ポリアミドを含む第2樹脂材料で形成された第2層と、
を備えたことを特徴とする燃料ホース。
【請求項2】
上記第1層の上記CPTポリマー及び/又は上記PFAポリマーに含まれる変性基は、カルボニル基、エポキシ基、無水マレイン酸基、グリシジル基、及びカルボン酸ハライド基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料ホース。
【請求項3】
上記第2層の半芳香族ポリアミドは、脂肪族ジアミン成分中の炭素数が9であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料ホース。
【請求項4】
上記第2層の半芳香族ポリアミドは、分子末端のカルボキシル基とアミノ基との比率がカルボキシル基:アミノ基比率=5:5〜1:9であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の燃料ホース。
【請求項5】
上記第2層をを被覆するように一体に設けられナイロン11及び/又はナイロン12を含む第3樹脂材料で形成された第3層をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の燃料ホース。
【請求項6】
上記第1層と上記第2層との層間の剥離接着力が20N/cm以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の燃料ホース。
【請求項7】
上記第1層の第1樹脂材料には導電性フィラーが配合されて分散していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の燃料ホース。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−221578(P2010−221578A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72431(P2009−72431)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】