燃料容器、水素残量検出システムおよび燃料電池システム
【課題】燃料容器の姿勢によらず水素吸蔵合金の体積変化を算出する。
【解決手段】燃料容器14は、燃料電池に供給される水素を含有できる水素吸蔵金属からなる複数の成形体24と、複数の成形体の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体が互いに最も近接するように積層された状態で保持する保持機構26と、保持機構により積層された状態で保持されている複数の成形体を収容する収容部28と、複数の成形体の体積変化による、該複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部18と、を備える。
【解決手段】燃料容器14は、燃料電池に供給される水素を含有できる水素吸蔵金属からなる複数の成形体24と、複数の成形体の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体が互いに最も近接するように積層された状態で保持する保持機構26と、保持機構により積層された状態で保持されている複数の成形体を収容する収容部28と、複数の成形体の体積変化による、該複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部18と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を吸蔵する金属を備えた燃料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー変換効率が高く、かつ、発電反応により有害物質を発生しない燃料電池が注目を浴びている。また、燃料電池を可搬型の携帯機器に用いるために、電池本体とは別に燃料を収容する容器も考案されている。
【0003】
携帯機器用の電源としての燃料電池システムは、小型化、高出力化が求められる。高出力化の観点では、燃料電池の燃料としては、メタノール燃料よりも水素燃料を用いた方が有利である。水素燃料を貯蔵する手段の一例として、水素吸蔵合金を収容した水素吸蔵合金タンクが挙げられる。このような水素吸蔵合金タンク内の水素貯蔵量(水素残量)を検出する方法として、従来、タンク内の圧力(水素平衡圧力)を測定する方法が行われていた。
【0004】
しかしながら、上述したタンク内の圧力を測定して水素残量を推定する方法は、タンク内の圧力と水素残量との関係において線形性が低いため、水素残量を高精度で推定することができなかった。そこで、水素吸蔵合金が水素を吸蔵すると膨張し、水素を放出すると収縮する性質を利用し、水素吸蔵合金の体積変化を測定することで水素吸蔵合金タンク内の水素残量を測定する方法が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−66357号公報
【特許文献2】特開平5−223012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の方法は、姿勢が一定である定置用や自動車用の水素吸蔵合金タンクに適用する場合は有効である。しかしながら、携帯機器用の水素吸蔵合金タンクは、姿勢が一定とはならない状況で使用される場合が多い。上述の方法では、姿勢の変化を考慮しておらず、水素吸蔵合金タンクの姿勢によって、水素吸蔵合金が体積変化を検知する検知部を覆ってしまったり、水素吸蔵合金の自重によって水素吸蔵合金成形体を固定するスプリングの変位に影響を与えたりする場合がある。このような場合、水素吸蔵合金の体積変化を精度良く測定することが困難である。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、燃料容器の姿勢によらず水素吸蔵合金の体積変化を算出できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の燃料容器は、燃料電池に供給される水素を含有できる水素吸蔵金属からなる複数の成形体と、複数の成形体の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体が互いに最も近接するように積層された状態で保持する保持機構と、保持機構により積層された状態で保持されている複数の成形体を収容する収容部と、複数の成形体の体積変化による、該複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部と、を備える。
【0009】
この態様によると、燃料容器の姿勢が変化しても保持機構により複数の成形体の積層状態は維持される。そのため、検出部で複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出することで、燃料容器の姿勢によらず、複数の成形体全体の体積変化を算出することができる。
【0010】
保持機構は、複数の成形体の積層方向の両端部と収容部の内壁との間にそれぞれ設けられている弾性部材であってあってもよい。弾性部材は、複数の成形体を両側から付勢してもよい。これにより、複数の成形体の積層状態を維持しながら、複数の成形体の体積変化が許容される。また、複数の成形体が収容部の中で動き回ることが抑制される。
【0011】
保持機構は、複数の成形体の積層方向の両端部を連結し、両端部を積層方向に付勢しながら挟持する弾性部材で構成されていてもよい。これにより、複数の成形体の積層状態を維持しながら、複数の成形体の体積変化が許容される。
【0012】
保持機構は、複数の成形体の積層方向の両端部を外側から支持する一対の支持部材と、一対の支持部材を連結し、一対の支持部材を積層方向に付勢しながら挟持する弾性部材と、を有してもよい。これにより、複数の成形体の積層状態を維持しながら、複数の成形体の体積変化が許容される。
【0013】
隣接する成形体の間に挟まれている多孔質体を更に備えてもよい。これにより、成形体同士接する面の流通性が向上する。
【0014】
成形体と多孔質体とが接着されていてもよい。これにより、複数の成形体の積層状態を維持しながら、複数の成形体の体積変化が許容される。
【0015】
多孔質体は、発泡金属であってもよい。これにより、例えば、成形体同士の伝熱性、または、成形体と燃料容器との伝熱性が向上する。
【0016】
収容部は、それぞれが連通している複数の筒状部を有してもよい。複数の筒状部のそれぞれは、少なくとも水素吸蔵金属が収容されており、複数の筒状部の少なくとも一つに、複数の成形体と保持機構と検出部とが設けられていてもよい。これにより、少なくとも一つの筒状部にある複数の成形体の体積変化を推定することで、全体の水素吸蔵合金の体積変化も推定できる。
【0017】
本発明の別の態様は、水素残量検出システムである。この水素残量検出システムは、燃料容器と、検出部が出力した信号に基づいて収容部における水素の残量を演算する演算部と、を備える。
【0018】
この態様によると、燃料容器の姿勢によらず、燃料容器内の水素の残量を算出できる。
【0019】
燃料容器は、外部から水素が充填されるとともに外部へ水素を放出する充填放出口と、充填された水素の累積充填量の情報を記憶する記憶部と、を更に備えてもよい。水素吸蔵合金は、水素の吸蔵、放出を繰り返すと充填量が減少する傾向にある。そのため、充填された水素の累積充填量の情報を記憶することで、水素の残量を演算する際の補正が可能となる。
【0020】
演算部は、記憶部に記憶されている累積充填量の情報と、検出部により検出された複数の成形体の積層方向の両端部の位置と、に基づいて、収容部における水素の残量を算出してもよい。これにより、水素吸蔵合金が水素の吸蔵、放出を繰り返した場合であっても、燃料容器の水素の残量をより精度良く算出できる。
【0021】
演算部において算出された収容部における水素の残量の情報を表示する表示部を更に備えてもよい。これにより、簡便に水素の残量を把握できる。
【0022】
充填放出口と着脱可能な接続部を有し、燃料容器に水素を充填する水素充填装置を更に備えてもよい。演算部は、水素充填装置に配置されていてもよい。これにより、演算部を燃料容器ごとに設けなくても水素の残量を算出できるため、燃料容器のコストの低減に寄与する。
【0023】
演算部は、検出部が検出した複数の成形体の積層方向の両端部の位置の情報に基づいて水素充填装置が充填した水素の充填量を算出し、記憶部は、算出された水素の充填量をそれまでに記憶されていた累積充填量に加算し、新たな累積充填量として記憶してもよい。これにより、燃料容器ごとに水素の累積充填量を更新できる。
【0024】
本発明の更に別の態様は、燃料電池システムである。この燃料電池システムは、燃料電池と、燃料電池に供給する水素を収容する燃料容器と、検出部が出力した信号に基づいて収容部における水素の残量を演算する演算部と、を備える。
【0025】
この態様によると、燃料容器の姿勢によらず、燃料容器内の水素の残量を算出できる。
【0026】
燃料容器は、外部から水素が充填されるとともに外部へ水素を放出する充填放出口と、充填された水素の累積充填量の情報を記憶する記憶部と、を更に備えてもよい。水素吸蔵合金は、水素の吸蔵、放出を繰り返すと充填量が減少する傾向にある。そのため、充填された水素の累積充填量の情報を記憶することで、水素の残量を演算する際の補正が可能となる。
【0027】
演算部は、記憶部に記憶されている累積充填量の情報と、検出部により検出された複数の成形体の積層方向の両端部の位置と、に基づいて、収容部における水素の残量を算出してもよい。これにより、水素吸蔵合金が水素の吸蔵、放出を繰り返した場合であっても、燃料容器の水素の残量をより精度良く算出できる。
【0028】
演算部において算出された収容部における水素の残量の情報を表示する表示部を更に備えてもよい。これにより、簡便に水素の残量を把握できる。
【0029】
燃料電池は、燃料容器と着脱可能に構成され、演算部は、燃料電池に配置されていてもよい。これにより、演算部を燃料容器ごとに設けなくても水素の残量を算出できるため、燃料容器のコストの低減に寄与する。
【0030】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、燃料容器の姿勢によらず水素吸蔵合金の体積変化を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施の形態に係る燃料電池システムの概略を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図である。
【図3】図2に示す燃料容器よりも水素の吸蔵量が多い場合の燃料容器の概略断面図である。
【図4】第2の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図である。
【図5】第3の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図である。
【図6】成形体の間に多孔質体を挟んだ燃料容器の概略断面図である。
【図7】図7(a)は、収容部に成形体が存在しない状態で燃料容器が傾いた様子を示す概略模式図、図7(b)は、水素を吸蔵していない複数の成形体を収容部に収容した状態で燃料容器が傾いた様子を示す概略模式図、図7(c)は、水素を吸蔵している複数の成形体を収容部に収容した状態で燃料容器が傾いた様子を示す概略模式図である。
【図8】図8(a)は、第4の実施の形態に係る保持機構を示す概略断面図、図8(b)は、図8(a)のA−A断面図である。
【図9】図9(a)は、第4の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図、図9(b)は、図9(a)のB−B断面図である。
【図10】図10(a)は、第5の実施の形態に係る保持機構を示す概略側面図、図10(b)は、図10(a)に示す保持機構をC方向から見た上面図、図10(c)は、図10(a)のD−D断面図である。
【図11】図11(a)は、第5の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図、図11(b)は、図11(a)のE−E断面図である。
【図12】図12(a)は、第6の実施の形態に係る保持機構を示す概略側面図、図12(b)は、図12(a)のF−F断面図である。
【図13】第7の実施の形態に係る水素残量検出システムの概略を示す図である。
【図14】図14は、水素の充填サイクル数と最大充填量との関係を示す図である。
【図15】第8の実施の形態に係る水素残量検出システムの概略を示す図である。
【図16】第8の実施の形態に係る燃料電池システムの概略を示す図である。
【図17】図17(a)、図17(b)は、収容部の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0034】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る燃料電池システムの概略を示すブロック図である。燃料電池システム10は、燃料電池12と、燃料電池に供給する水素を収容する燃料容器14と、燃料容器14の水素の残量を演算する演算部16と、を備える。燃料容器14は、水素吸蔵合金を収容しており、水素吸蔵合金の状態の変化を検出する検出部18を備える。演算部16は、検出部18が出力した信号に基づいて、燃料容器14における水素吸蔵合金の体積変化や水素の残量を演算する。演算結果は、必要に応じて表示部20に表示される。燃料容器14と燃料電池12との間には、燃料容器14で放出された水素を燃料電池12へ供給するための供給路22が設けられている。
【0035】
図2は、第1の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図である。燃料容器14は、水素吸蔵合金からなる複数の成形体24と、複数の成形体24の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体24が互いに最も近接するように積層された状態で保持する保持機構26と、複数の成形体24を収容する収容部28と、複数の成形体24の体積変化による、複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部18(18a,18b)と、を備える。
【0036】
成形体24は、水素吸蔵合金の粉末にPTFEデイスパージョンなどの結着剤を混合して、プレス機で圧縮成型したものであり、燃料電池12に供給される水素を含有できる。なお、場合によっては圧縮成型された成形体に更に焼結処理を加えてもよい。成形体は、例えば、円板状、円筒状、直方体などの形状に加工される。水素吸蔵合金は、大量の水素を吸蔵する能力と、吸蔵した水素を再び放出する能力を備えた合金であり、例えば、LaNi5合金、FeTi合金、Mg2Ni合金、Ti1+xCr2−yMny(x=0.1〜0.3、y=0〜1.0)合金などが好適である。このような水素吸蔵合金は、水素を吸蔵すると体積が増加し、水素を放出すると体積が減少する。
【0037】
収容部28は、円筒形状または直方体形状の筐体であり、長手方向の両端部に蓋部28aと底部28bを有する。また、蓋部と28aと底部28bとを連結する胴部28cは、積層されている複数の成形体24が水素の吸蔵状態に応じて体積変化できるような空間が形成されている。成形体(ペレット)が充填される空間は、断面が矩形(長方形または長穴)で角にRが付いている場合や、円筒形の空間であってもよい。蓋部28a、底部28b、胴部28cは互いに分割されており、切削あるいは形取りなどで成形されている。そして、蓋部28aおよび底部28bと、胴部28cとは、シールしてネジなどで締め付けられている。水素吸蔵合金が成形体に加工されているため、水素吸蔵合金が粉末の場合と比較して、合金による局所応力破壊などの影響が回避できる。
【0038】
本実施の形態に係る収容部28は、保持機構26により積層された状態で保持されている複数の成形体24を収容する。なお、収容部28の外側形状は、外部との熱交換性を考慮し、直方体形状が望ましい。材質は、SUSやアルミニウムなどが好ましい。
【0039】
保持機構26は、弾性部材である2つのバネ26a,26bからなる。バネ26aは、圧縮された状態で、一端が蓋部28aに固定され、他端が支持部材30に連結されている。バネ26bは、圧縮された状態で、一端が底部28bに固定され、他端が支持部材32に連結されている。このように、2つのバネ26a,26bは、複数の成形体24の積層方向Aの両端部と収容部28の内壁との間にそれぞれ設けられており、複数の成形体24を積層方向の両側から付勢している。これにより、複数の成形体24の積層状態を維持しながら、複数の成形体24の体積変化が許容される。また、複数の成形体24が収容部28の中で動き回ることが抑制されるため、それぞれの成形体は、燃料容器の落下や振動による衝撃から保護される。なお、2つのバネ26a,26bは、燃料容器14の姿勢によらず常に圧縮された状態となるように長さやバネ定数が設定されている。
【0040】
一対の支持部材30,32は、複数の成形体24の積層方向の両端部を外側から支持する。このような支持部材30,32により複数の成形体24を外側から支持することで、バネ26a,26bの付勢力が、直接または局所的に成形体24に伝わらないようになっている。換言すれば、バネ26a,26bの付勢力は、支持部材30,32を介して成形体24に均一に伝達される。そのため、それぞれの成形体24は、互いに最も近接するように積層された状態で安定して保持される。また、水素吸蔵合金からなる成形体24が割れたり欠けたりすることも抑制される。
【0041】
本実施の形態に係る検出部18a,18bは、静電容量センサである。各静電容量センサは、一対の電極板18a1,18a2(18b1,18b2)を有する。一対の電極板18a1,18a2(18b1,18b2)は、対向するように、収容部28の胴部28cの内壁に埋め込まれている。また、一対の電極板18a1,18a2は、蓋部28a近傍に設けられており、一対の電極板18b1,18b2は、底部28b近傍に設けられている。静電容量センサは、一対の電極板の間に存在する、支持部材や成形体の体積によって静電容量が変化する。
【0042】
図3は、図2に示す燃料容器よりも水素の吸蔵量が多い場合の燃料容器の概略断面図である。水素の吸蔵または放出により複数の成形体24全体の体積が変化すると、バネ26a,26bが伸縮し、それに応じて複数の成形体24全体の両端部にある成形体24a,24bの位置や、支持部材30,32の位置が変化する。そのため、一対の電極板18a1,18a2(18b1,18b2)の間に存在する、支持部材30(32)や成形体24a(24b)の体積変化によって静電容量が変化する。そして、静電容量センサの検出部18a,18bは、静電容量の変化に応じた出力に基づいて、複数の成形体全体の積層方向の両端部の位置を検出する。
【0043】
本実施の形態に係る燃料容器14においては、姿勢が変化しても保持機構26により複数の成形体24の積層状態は維持される。そのため、検出部18a,18bで複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出することで、燃料容器14の姿勢によらず、複数の成形体全体の体積変化を算出することができる。
【0044】
より詳述すると、例えば、水素吸蔵合金が水素を全く吸蔵していない状態における複数の成形体の積層方向の両端部の位置をPa0、Pb0(図3参照)とする。図3に示す状態は各成形体が水素を吸蔵して膨張している状態であり、複数の成形体の積層方向の両端部の位置はPa0’、Pb0’に変化している。つまり、複数の成形体の積層方向の一方の端部(蓋部側)の変化量ΔPaはΔPa=Pa0’−Pa0であり、複数の成形体の積層方向の他方の端部(底部側)の変化量ΔPbはΔPb=Pb0’−Pb0となる。
【0045】
したがって、複数の成形体24の積層方向の全長の変化ΔX=ΔPa+ΔPbとなる。複数の成形体の積層方向の全長の変化は、複数の成形体全体の体積変化と対応している。このように、検出部18a,18bで複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出することで、複数の成形体全体の体積変化を算出することができる。また、収容部28の長手方向の両端部に検出部を設置することで、積層されている複数の成形体の体積変化が最も現れる両端部を計測できる。これにより、より精度良く複数の成形体全体の体積変化を検出することができ、水素の吸蔵放出状態をより正確に把握することができる。
【0046】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る燃料容器は、検出部としてインダクタンスセンサを利用している点が第1の実施の形態に係る燃料容器14と大きく異なっている。図4は、第2の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図である。なお、第1の実施の形態に係る燃料容器14と同様の構成や作用については説明を適宜省略する。
【0047】
燃料容器34は、複数の成形体24と、複数の成形体24の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体24が互いに最も近接するように積層された状態で保持するバネ26a,26bと、収容部28と、複数の成形体24の体積変化による、複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部36a,36bと、を備える。
【0048】
本実施の形態に係る検出部36a,36bは、インダクタンスセンサである。検出部36aは、蓋部28aの内壁にギャップ検出コイル36a1が固定されている。また、検出部36bは、底部28bの内壁にギャップ検出コイル36b1が固定されている。インダクタンスセンサは、ギャップ検出コイル36a1(36b1)と支持部材30(32)との間に距離の変化が生ずると、検出コイルのインダクタンスが変化し、変化したインダクタンスが検出回路において直流電圧の信号に変換される。つまり、ギャップ検出コイルと支持部材との間の距離の変化に応じた信号に基づいて、複数の成形体全体の体積変化を算出することができる。
【0049】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る燃料容器は、検出部として超音波式レベルセンサを利用している点が第1の実施の形態に係る燃料容器14と大きく異なっている。図5は、第3の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図である。なお、第1の実施の形態に係る燃料容器14と同様の構成や作用については説明を適宜省略する。
【0050】
燃料容器38は、複数の成形体24と、複数の成形体24の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体24が互いに最も近接するように積層された状態で保持するバネ26a,26bと、収容部28と、複数の成形体24の体積変化による、複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部40a,40bと、を備える。
【0051】
本実施の形態に係る検出部40a,40bは、超音波式レベルセンサである。検出部40aは、蓋部28aの内壁にセンサ部40a1が埋め込まれている。また、検出部40bは、底部28bの内壁にセンサ部40b1が埋め込まれている。超音波式レベルセンサは、センサ部40a1(40b1)から発射された超音波が支持部材30(32)で反射し、同じセンサ部40a1(40b1)で受信されるまでの、エコー時間を検出回路で電気信号に変換している。エコー時間は、センサ部と支持部材との間の距離に対応(比例)しているため、エコー時間を距離に換算することで、複数の成形体の積層方向の両端部の位置が検出され、複数の成形体全体の体積変化を算出することができる。
【0052】
以上の説明では、検出部として3つの方式を例示したが、これらの方式を複数使用してもよい。また、上述の各実施の形態に係る燃料容器では、検出部が燃料容器の両端部(蓋部、底部)近傍にそれぞれ設けられているが、複数の成形体が一体的に保持されている状態で一方の端部が収容部に固定されている場合は、他方の端部にだけ検出部を設けてもよい。これにより、検出部の数が削減されコストが低減される。
【0053】
また、水素の吸蔵、放出の機能を優先して製造される成形体は、必ずしも検出部の検出に適した材料や特性、形状を選択できるとは限らない。しかしながら、上述の各実施の形態に係る燃料容器は、積層されている複数の成形体の両端部に配置されている支持部材を備えているため、支持部材を検出部の方式に適した材料や物性、形状から選択することで、検出精度を向上することができる。なお、支持部材は必須ではなく省略してもよい。
【0054】
一方、隣接する成形体の間に板状の多孔質体を挟んでもよい。図6は、成形体の間に多孔質体を挟んだ燃料容器42の概略断面図である。なお、第3の実施の形態に係る燃料容器38と同様の構成や作用については説明を適宜省略する。隣接する成形体24の間には、板状の多孔質体44が挟持されている。成形体24は、多孔質体44を通じて水素の流通性が向上し、水素の吸蔵および放出が容易となる。また、水素の吸蔵時には、膨張する成形体24同士に力がかかるが、多孔質体44によってこの力を緩和させることで成形体24が割れることが抑制される。また、多孔質体44として発泡金属を選択にすることで、伝熱性の向上も図ることが可能となる。例えば、成形体24の天底面は、発泡金属の多孔質体44を介して、隣接する成形体24や収容部28の胴部28cとの熱伝導が可能となる。発泡金属は、例えば、銅やアルミニウムなどの熱伝導性のよい金属が好ましい。
【0055】
なお、それぞれの成形体24は、隣接する多孔質体44と接着されていてもよい。これにより、バネ26aまたはバネ26bの一方を省略しても、複数の成形体の積層状態を維持しながら、複数の成形体の体積変化が許容される。
【0056】
[燃料容器の姿勢変化]
次に、燃料容器の姿勢変化と水素吸蔵状態との関係につて説明する。図7(a)は、収容部に成形体が存在しない状態で燃料容器が傾いた様子を示す概略模式図、図7(b)は、水素を吸蔵していない複数の成形体を収容部に収容した状態で燃料容器が傾いた様子を示す概略模式図、図7(c)は、水素を吸蔵している複数の成形体を収容部に収容した状態で燃料容器が傾いた様子を示す概略模式図である。なお、各図では検出部および支持部材は省略してある。また、燃料容器の傾きは水平を0°としてθで表している。
【0057】
図7(a)に示す燃料容器46において、バネ26aは、負荷がかかっていない状態の長さがxa、バネ定数がkaであり、バネ26bは、負荷がかかっていない状態の長さがxb、バネ定数がkbである。また、収容部28の蓋部28aと底部28bとの距離をLとする。
【0058】
次に、図7(b)に示すように、燃料容器46に複数の成形体を収容する。ここで、成形体は実質的には水素を吸蔵していない。圧縮されたバネ26a,26bで複数の成形体24を挟持することで、複数の成形体24は互いに隙間なく保持される。複数の成形体24の積層方向の全長をX、複数の成形体24全体の質量をM、バネ26aの圧縮変位をΔxa、バネ26bの圧縮変位をΔxb、複数の成形体24がバネ26aから受ける力をFa、複数の成形体24がバネ26bから受ける力をFbとすると、以下の式(1)〜式(4)が導かれる。
【0059】
L=(xa−Δxa)+X+(xb−Δxb)・・・式(1)
Fb=Mgsinθ+Fa・・・式(2)
Fa=Δxa×ka・・・式(3)
Fb=Δxb×kb・・・式(4)
【0060】
次に、図7(c)に示すように、図7(b)に示した燃料容器46に水素を充填し、複数の成形体のそれぞれに水素を吸蔵させた。水素を吸蔵した成形体は膨張し、バネ26a,26bを更に圧縮させる。複数の成形体24の積層方向の膨張量をΔX、バネ26aの圧縮変位をΔxa’、バネ26bの圧縮変位をΔxb’、複数の成形体24がバネ26aから受ける力をFa’、複数の成形体24がバネ26bから受ける力をFb’とすると、以下の式(5)〜式(8)が導かれる。
【0061】
L=(xa−Δxa’)+(X+ΔX)+(xb−Δxb’)・・・式(5)
Fb’=Mgsinθ+Fa’・・・式(6)
Fa’=Δxa’×ka・・・式(7)
Fb’=Δxb’×kb・・・式(8)
【0062】
以上の式(1)〜(8)より、以下の関係式(9)〜(11)が導かれる。
ΔX=(Δxa’−Δxa)+(Δxb’−Δxb)・・・式(9)
ΔX=((ka+kb)/kb)×(Δxa’−Δxa)・・・式(10)
ΔX=((ka+kb)/ka)×(Δxb’−Δxb)・・・式(11)
【0063】
式(9)から明らかなように、複数の成形体の両端部の変位を2つの検出部で検出することで、複数の成形体の積層方向の膨張量ΔXが算出され、複数の成形体の体積変化が算出される。その結果、燃料容器内の水素の残量を算出できる。また、式(10)、式(11)からわかるように、複数の成形体の積層方向の膨張量ΔXは、燃料容器46の傾きθによらない。具体的には、膨張量ΔXは、水素が充填されていない状態から水素を充填した場合の、積層されている複数の成形体の両端部の変位量(Δxa’−Δxa)や変位量(Δxb’−Δxb)によって一義的に決まる。そのため、燃料容器の姿勢によって変位量(Δxa’−Δxa)や変位量(Δxb’−Δxb)と、膨張量ΔXとの関係を考慮する必要がなく、演算処理が容易となる。
【0064】
また、式(10)、式(11)からわかるように、上述の各燃料容器は、バネ26a,26bのバネ定数ka,kbがあらかじめわかっていれば、一つの検出部で膨張量ΔXを算出することもできる。
【0065】
(第4の実施の形態)
次に、第1の実施の形態から第3の実施の形態で述べた保持機構26と異なる方式の保持機構を採用した燃料容器について説明する。図8(a)は、第4の実施の形態に係る保持機構を示す概略断面図、図8(b)は、図8(a)のA−A断面図である。
【0066】
本実施の形態に係る保持機構は、ネット状の弾性部材50であり、積層されている複数の成形体24とその両端部にある支持部材30,32とをまとめて覆うような形状になっている。つまり、弾性部材50の働きにより、複数の成形体24の積層状態を維持しながら、複数の成形体24の体積変化が許容される。なお、支持部材30,32を省略することも可能である。弾性部材50は、熱伝導性の良い銅やリン青銅、ステンレス鋼線などをネット状に加工し弾性を付与したものである。
【0067】
図9(a)は、第4の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図、図9(b)は、図9(a)のB−B断面図である。図9(a)に示す燃料容器52は、水素吸蔵合金からなる複数の成形体24と、複数の成形体24の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体24が互いに最も近接するように積層された状態で保持するネット状の弾性部材50と、複数の成形体24を収容する収容部28と、複数の成形体24の体積変化による、複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部(不図示)と、を備える。
【0068】
図9(a)に示す複数の成形体24は水素を吸蔵しているため、図8(a)に示す複数の成形体24よりも膨張している。そのため、成形体24は、胴部28cの長手方向だけではなく、胴部28cの径方向にも膨張する。本実施の形態の弾性部材50は、成形体24が胴部28cの長手方向に膨張するとそれに伴い上下方向に伸びるため、成形体24と胴部28cの内壁との間に存在している部分の厚みは薄くなる(図9(a)、図9(b)参照)。このように、弾性部材50の厚みが薄くなることで、成形体24が胴部28cの径方向に無理なく膨張できるため、成形体24が膨張する際に胴部28cとの間で働く負荷が軽減され、成形体24の割れや変形が抑制される。また、弾性部材50は、ネット状(網目状)のため、収容部28の内部での水素の流通性が向上する。
【0069】
(第5の実施の形態)
図10(a)は、第5の実施の形態に係る保持機構を示す概略側面図、図10(b)は、図10(a)に示す保持機構をC方向から見た上面図、図10(c)は、図10(a)のD−D断面図である。
【0070】
本実施の形態に係る保持機構は、複数のバネ54である。バネ54は、両端が鈎状になっている丸棒状の部材である。それぞれのバネ54は、積層されている複数の成形体24の両端部またはその外側にある支持部材30,32同士を、鈎状の部分54aで連結し、互いが積層方向に近付く向きに付勢しながら挟持する。つまり、バネ54の働きにより、複数の成形体24の積層状態を維持しながら、複数の成形体24の体積変化が許容される。なお、支持部材30,32を省略することも可能である。バネ54は、熱伝導性の良い銅やリン青銅、ステンレス鋼線などをネット状に加工し弾性を付与したものである。
【0071】
図11(a)は、第5の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図、図11(b)は、図11(a)のE−E断面図である。図11(a)に示す燃料容器56は、水素吸蔵合金からなる複数の成形体24と、複数の成形体24の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体24が互いに最も近接するように積層された状態で保持するバネ54と、複数の成形体24を収容する収容部28と、複数の成形体24の体積変化による、複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部(不図示)と、支持部材32と底部28bとを連結するバネ58と、を備える。バネ58により、収容部28において複数の成形体が一体で動き回ることが規制される。
【0072】
図11(a)に示す複数の成形体24は水素を吸蔵しているため、図10(a)に示す複数の成形体24よりも膨張している。そのため、成形体24は、胴部28cの長手方向だけではなく、胴部28cの径方向にも膨張する。本実施の形態のバネ54は、成形体24が胴部28cの長手方向に膨張するとそれに伴い上下方向に伸びるため、成形体24と胴部28cの内壁との間に存在している部分の直径が小さくなる(図11(a)、図11(b)参照)。このように、バネ54の直径が小さくなることで、成形体24が胴部28cの径方向に無理なく膨張できるため、成形体24が膨張する際に胴部28cとの間で働く負荷が軽減され、成形体24の割れや変形が抑制される。また、バネ54は、円板状の成形体24の外周に等間隔で6本配置されているため、収容部28の内部での水素の流通性が向上する。なお、複数のバネ54の代わりに、複数の成形体の外周をらせん状に覆う
一つのコイルバネを用いてもよい。
【0073】
(第6の実施の形態)
図12(a)は、第6の実施の形態に係る保持機構を示す概略側面図、図12(b)は、図12(a)のF−F断面図である。
【0074】
本実施の形態に係る保持機構は、円筒形状の複数の成形体59の積層方向の両端部を外側から支持する一対の支持部材60,62と、一対の支持部材60,62を連結し、一対の支持部材60,62を互いに近付く向きに引っ張る引っ張りバネ64と、を有している。引っ張りバネ64は、円筒形状の成形体59の中央を貫通するように設けられている。この引っ張りバネ64の働きにより、複数の成形体59の積層状態を維持しながら、複数の成形体59の体積変化が許容される。
【0075】
また、本実施の形態に係る燃料容器66は、水素吸蔵合金からなる円筒形状の複数の成形体59と、複数の成形体59の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体59が互いに最も近接するように積層された状態で保持する保持機構と、複数の成形体59を収容する収容部28と、複数の成形体59の体積変化による、複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部(不図示)と、支持部材62と底部28bとを連結するバネ58と、を備える。バネ58により、収容部28において複数の成形体が一体で動き回ることが規制される。
【0076】
(第7の実施の形態)
本実施の形態に係る水素残量検出システムは、燃料容器の収容部に筒状の燃料室が複数形成されている。そして、少なくとも一つの燃料室に検出部が設けられている。図13は、第7の実施の形態に係る水素残量検出システム70の概略を示す図である。
【0077】
水素残量検出システム70は、燃料容器72と、演算部16と、表示部20とを備える。燃料容器72は、複数の筒状の燃料室が形成されている収容部74を有する。燃料室76は、図4に示した燃料容器34とほぼ同様の構成であるため、同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0078】
燃料室78は、隣接する燃料室76と仕切り壁80で仕切られている。燃料室78には、水素吸蔵合金の粉末や成形体が収容されている。蓋部28aおよび底部28bと仕切り壁80との間には、燃料室76および燃料室78とを連通する連通路82,84が形成されている。連通路82,84には、燃料室78が収容している粉末の水素吸蔵合金86が燃料室76に侵入しないようにフィルタ88,90が設けられている。フィルタ88,90は、少なくとも水素が流通できるように構成されている。
【0079】
上述のように構成されている燃料容器72は、複数の燃料室の一つである燃料室76に、複数の成形体24とバネ26a,26bと検出部36(36a,36b)とが設けられている。これにより、燃料室76にある複数の成形体24の体積変化を推定することで、燃料容器が備える水素吸蔵合金全体の体積変化も推定できる。そして、演算部16は、燃料容器72の検出部36が出力した信号に基づいて収容部74における水素の残量を演算する。
【0080】
(第8の実施の形態)
通常、水素吸蔵合金は、水素の吸蔵および放出を繰り返すと、水素の最大充填量が徐々に減少する傾向にある。図14は、水素の充填サイクル数と最大充填量との関係を示す図である。
【0081】
水素吸蔵合金は、充填量の増加に伴い膨張するため、水素の充填量と、水素吸蔵合金からなる複数の成形体の両端部の変位(膨張量ΔX)とは相関(比例)関係がある。したがって、前述の式(9)〜式(11)に示すように、検出部において成形体の両端部の変位を検出することで膨張量ΔXが算出され、その結果、水素の充填量が算出される。一方、図14に示すように、最大充填量V(N)maxは、充填サイクル数Nの関数として表され、充填サイクル数の増加に伴い徐々に減少する。したがって、燃料容器に同じ量の水素が充填されていた場合であっても、最大充填量V(N)maxが変化すれば水素の残量の割合も変化することになる。
【0082】
そこで、本実施の形態では、水素充填装置で燃料容器に水素を充填する水素残量検出システムと、水素が充填された燃料容器を用いて燃料電池を駆動する燃料電池システムとにおいて、水素の充填および放出を繰り返した場合であっても、水素の残量をより精度良く算出できる構成について説明する。なお、最大充填量V(N)maxの関数は、水素吸蔵合金の種類、粒径、充填圧力、混合材料の構成等によって変わりうる。そこで、予め実験やシミュレーションによって算出しておくとよい。
【0083】
図15は、第8の実施の形態に係る水素残量検出システムの概略を示す図である。図16は、第8の実施の形態に係る燃料電池システムの概略を示す図である。
【0084】
図15に示す水素残量検出システム100は、燃料容器72が、外部から水素が充填されるとともに外部へ水素を放出する充填放出口102と、充填された水素の累積充填量の情報を記憶する記憶部104と、を備えている点が、第7の実施の形態に係る水素残量検出システム70と大きく異なる。また、水素残量検出システム100は、燃料容器72に水素を充填する水素充填装置108を更に備えている。水素充填装置108は、燃料容器72の充填放出口102と着脱可能な接続部106を有している。また、演算部16は、水素充填装置108に配置されている。
【0085】
なお、図15に示す水素残量検出システム100では、第7の実施の形態に係る水素残量検出システム70と同じ部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0086】
次に、水素充填装置108を用いて燃料容器72に水素を充填する際の水素残量検出システム100の動作について説明する。
【0087】
はじめに、燃料容器72の充填放出口102と水素充填装置108の接続部106とを接続する。その際、演算部16と、検出部36および記憶部104との通信が可能な状態を確立する。通信は、無線でも有線でもよい。
【0088】
燃料容器72と水素充填装置108とが接続されると、演算部16は、燃料容器72の記憶部104より水素の累積充填量Vcum、および図14に示す最大充填量の関数V(N)maxを読み出す。累積充填量Vcumは、燃料容器72が新品の場合0である。
【0089】
水素の充填が開始されると、演算部16は、検出部36により検出された複数の成形体24の積層方向の両端部の位置に基づいて、複数の成形体24の膨張量ΔXを算出する。演算部16は、水素の充填が終了すると、その際の膨張量ΔXから水素の充填量ΔVを算出する。そして、演算部16は、算出された水素の充填量ΔV1をそれまでに記憶されていた累積充填量Vcumに加算し、新たな累積充填量(Vcum=Vcum+ΔV1)として記憶部104に記憶させる。これにより、燃料容器72ごとに水素の累積充填量Vcumを更新できる。また、水素充填装置108に流量計を備えておけば、流量計より計測した水素充填量ΔVfに基づき、より高い精度でΔV1を算出できる。
【0090】
次に、燃料容器72の累積充填量Vcumからその際の最大充填量V(N)maxを求める方法について説明する。
【0091】
なお、水素の累積充填量Vcumという項目を記憶部104に記憶させているのは、以下の理由による。常に、燃料容器に水素が全く充填されていない状態で水素を最大充填量まで充填することが繰り返されるのであれば、充填サイクル数Nをカウントすれば、簡便に最大充填量V(N)maxを求めることができる。しかしながら、水素を使い切らない状態で水素を充填する場合や、水素を最大充填量まで充填しない場合もあり得る。このような場合、単に充填した回数をカウントするだけでは、そのときの最大充填量V(N)maxを正確に算出することはできないからである。
【0092】
つまり、図14に示すように、1回目の充填量がΔV1、2回目の充填量がΔV2、3回目の充填量がΔV3、4回目の充填量がΔV4とすると、累積充填量Vcumは、矢印が示す位置となる。したがって、累積充填量Vcumは、充填サイクル数N=3に相当するため、その際の燃料容器の最大充填量はV(3)maxとなる。なお、演算部16は、その時点での燃料容器の最大充填量V(3)maxの値を記憶部104に記憶させてもよい。
【0093】
このように、演算部16は、記憶部104に記憶されている累積充填量Vcumと、検出部36により検出された複数の成形体の積層方向の両端部の位置と、に基づいて、収容部74における水素の残量を算出できる。これにより、水素吸蔵合金が水素の吸蔵、放出を繰り返した場合であっても、燃料容器72の水素の残量をより精度良く算出できる。
【0094】
また、前述のように、水素吸蔵合金は、水素の吸蔵、放出を繰り返すと充填量が減少する傾向にあるが、水素残量検出システム100は、充填された水素の累積充填量Vcumの情報を記憶部104に記憶することで、水素の残量を演算する際の補正が可能となる。
【0095】
また、水素を使いきった状態から最大充填状態まで水素を充填し、水素充填時に流量計で計測した水素充填量ΔVf、あるいは、検出部36により検出された複数の成形体の積層方向の両端部の位置より算出される膨張量ΔXから算出される水素の充填量ΔVと、最大充填量V(N)maxとを比較し、水素充填量ΔVfあるいは充填量ΔVと、最大充填量V(N)maxとの差が大きい状態であれば、累積充填量Vcumに応じた最大充填量V(N)maxの減少の進行度が異なると考えられる。
【0096】
そこで、補正の判定モードとして、水素を使い切った状態から最大充填状態まで水素充填を数回繰り返し、上記のように流量計で計測した水素充填量ΔVf、あるいは膨張量ΔXから算出される水素の充填量ΔVと、最大充填量V(N)maxとを比較する。そして、水素充填量ΔVfと最大充填量V(N)maxとの差、または、充填量ΔVと最大充填量V(N)maxとの差が、いずれも所定値より大きい(例えば最大充填量V(N)maxの値の5%以上)場合、最大充填量V(N)maxを、水素充填量ΔVf、充填量ΔVに相当する新たな最大充填量V(N’)max(N≠N’)に補正しなおしてもよい。また、膨張量ΔXから算出される水素の充填量ΔVと、水素充填時に流量計で計測した水素充填量ΔVfとの値が大きく異なっていれば、検出部の成形体が崩壊等を起こし、残量計測が不可能であるとして、警告表示を行っても良い。
【0097】
また、水素充填装置108は、演算部16において算出された収容部74における水素の残量の情報を表示する表示部を更に備えてもよい。これにより、簡便に水素の残量を把握できる。
【0098】
また、演算部16は、水素充填装置108に設けられており、演算部を燃料容器ごとに設けなくても水素の残量を算出できるため、燃料容器のコストの低減に寄与する。
【0099】
次に、本実施の形態に係る燃料電池システムについて説明する。図16に示す燃料電池システム110は、図15に示す水素残量検出システム100の水素充填装置108を外して、燃料容器72に燃料電池12を装着したものである。燃料電池12は、燃料容器72の充填放出口102と着脱可能な接続部112を有している。また、演算部16および表示部20は、燃料電池12に配置されている。
【0100】
なお、図16に示す燃料電池システム110では、図15に示す水素残量検出システム100と同じ部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0101】
次に、燃料容器72から水素を放出して燃料電池12で発電する際の燃料電池システム110の動作について説明する。
【0102】
はじめに、燃料容器72の充填放出口102と燃料電池システム110の接続部112とを接続する。その際、演算部16と、検出部36および記憶部104との通信が可能な状態を確立する。通信は、無線でも有線でもよい。
【0103】
燃料容器72と燃料電池12とが接続されると、演算部16は、燃料容器72の記憶部104より水素の累積充填量Vcum、および図14に示す最大充填量の関数V(N)maxを読み出す。
【0104】
燃料電池12への水素の放出が開始されると、演算部16は、検出部36により検出された複数の成形体24の積層方向の両端部の位置に基づいて、複数の成形体24の膨張量ΔXを算出する。演算部16は、水素の放出が終了(発電が停止)すると、その際の膨張量ΔXから残っている水素の充填量ΔVを算出する。そして、演算部16は、算出された水素の充填量ΔVと、記憶部104から読み出した水素の累積充填量Vcum、および最大充填量V(N)maxとに基づいて残量を算出する。残量(%)は、充填量ΔV/最大充填量V(N)max×100で算出される。算出された残量は、表示部20に表示される。なお、演算部16は、燃料容器72の初期の最大充填量V(1)maxを基準として残量(%)を表示することで、初期の容量に対する残量の割合を算出することも可能である。
【0105】
このように、燃料電池システム110においても、演算部16は、記憶部104に記憶されている累積充填量Vcumと、検出部36により検出された複数の成形体の積層方向の両端部の位置と、に基づいて、収容部74における水素の残量を算出できる。これにより、水素吸蔵合金が水素の吸蔵、放出を繰り返した場合であっても、燃料容器72の水素の残量をより精度良く算出できる。
【0106】
また、燃料電池12は、演算部16において算出された収容部74における水素の残量の情報を表示する表示部20を備えているため、簡便に水素の残量を把握できる。
【0107】
また、演算部16は、燃料電池12に設けられており、演算部を燃料容器ごとに設けなくても水素の残量を算出できるため、燃料容器のコストの低減に寄与する。
【0108】
(変形例)
次に収容部が有する筒状部の変形例について説明する。図17(a)、図17(b)は、収容部の変形例を示す斜視図である。図17(a)に示す収容部92は、円柱形状の空間が燃料室94として形成され、各燃料室94がライン状に配列している。また、図17(b)に示す収容部96は、四角柱形状の空間が燃料室98として形成され、各燃料室98がライン状に配列している。このように複数の燃料室を有する収容部92(96)においても、一つの燃料室94(98)に前述の複数の成形体と保持機構と検出部とを設けることで、燃料容器が備える水素吸蔵合金全体の体積変化を推定できる。
【0109】
上述のように、上述の各実施の形態に係る水素残量検出システムや燃料電池システムは、燃料容器の姿勢によらず、水素の吸蔵放出による水素吸蔵合金の体積変化を検出し、それに基づいて燃料容器内の水素残量を推定することができる。
【0110】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における燃料電池や燃料電池システムにおいて各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0111】
10 燃料電池システム、 12 燃料電池、 14 燃料容器、 16 演算部、 18 検出部、 24 成形体、 26 保持機構、 28 収容部、 30,32 支持部材、 44 多孔質体、 50 弾性部材、 70 水素残量検出システム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を吸蔵する金属を備えた燃料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー変換効率が高く、かつ、発電反応により有害物質を発生しない燃料電池が注目を浴びている。また、燃料電池を可搬型の携帯機器に用いるために、電池本体とは別に燃料を収容する容器も考案されている。
【0003】
携帯機器用の電源としての燃料電池システムは、小型化、高出力化が求められる。高出力化の観点では、燃料電池の燃料としては、メタノール燃料よりも水素燃料を用いた方が有利である。水素燃料を貯蔵する手段の一例として、水素吸蔵合金を収容した水素吸蔵合金タンクが挙げられる。このような水素吸蔵合金タンク内の水素貯蔵量(水素残量)を検出する方法として、従来、タンク内の圧力(水素平衡圧力)を測定する方法が行われていた。
【0004】
しかしながら、上述したタンク内の圧力を測定して水素残量を推定する方法は、タンク内の圧力と水素残量との関係において線形性が低いため、水素残量を高精度で推定することができなかった。そこで、水素吸蔵合金が水素を吸蔵すると膨張し、水素を放出すると収縮する性質を利用し、水素吸蔵合金の体積変化を測定することで水素吸蔵合金タンク内の水素残量を測定する方法が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−66357号公報
【特許文献2】特開平5−223012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の方法は、姿勢が一定である定置用や自動車用の水素吸蔵合金タンクに適用する場合は有効である。しかしながら、携帯機器用の水素吸蔵合金タンクは、姿勢が一定とはならない状況で使用される場合が多い。上述の方法では、姿勢の変化を考慮しておらず、水素吸蔵合金タンクの姿勢によって、水素吸蔵合金が体積変化を検知する検知部を覆ってしまったり、水素吸蔵合金の自重によって水素吸蔵合金成形体を固定するスプリングの変位に影響を与えたりする場合がある。このような場合、水素吸蔵合金の体積変化を精度良く測定することが困難である。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、燃料容器の姿勢によらず水素吸蔵合金の体積変化を算出できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の燃料容器は、燃料電池に供給される水素を含有できる水素吸蔵金属からなる複数の成形体と、複数の成形体の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体が互いに最も近接するように積層された状態で保持する保持機構と、保持機構により積層された状態で保持されている複数の成形体を収容する収容部と、複数の成形体の体積変化による、該複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部と、を備える。
【0009】
この態様によると、燃料容器の姿勢が変化しても保持機構により複数の成形体の積層状態は維持される。そのため、検出部で複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出することで、燃料容器の姿勢によらず、複数の成形体全体の体積変化を算出することができる。
【0010】
保持機構は、複数の成形体の積層方向の両端部と収容部の内壁との間にそれぞれ設けられている弾性部材であってあってもよい。弾性部材は、複数の成形体を両側から付勢してもよい。これにより、複数の成形体の積層状態を維持しながら、複数の成形体の体積変化が許容される。また、複数の成形体が収容部の中で動き回ることが抑制される。
【0011】
保持機構は、複数の成形体の積層方向の両端部を連結し、両端部を積層方向に付勢しながら挟持する弾性部材で構成されていてもよい。これにより、複数の成形体の積層状態を維持しながら、複数の成形体の体積変化が許容される。
【0012】
保持機構は、複数の成形体の積層方向の両端部を外側から支持する一対の支持部材と、一対の支持部材を連結し、一対の支持部材を積層方向に付勢しながら挟持する弾性部材と、を有してもよい。これにより、複数の成形体の積層状態を維持しながら、複数の成形体の体積変化が許容される。
【0013】
隣接する成形体の間に挟まれている多孔質体を更に備えてもよい。これにより、成形体同士接する面の流通性が向上する。
【0014】
成形体と多孔質体とが接着されていてもよい。これにより、複数の成形体の積層状態を維持しながら、複数の成形体の体積変化が許容される。
【0015】
多孔質体は、発泡金属であってもよい。これにより、例えば、成形体同士の伝熱性、または、成形体と燃料容器との伝熱性が向上する。
【0016】
収容部は、それぞれが連通している複数の筒状部を有してもよい。複数の筒状部のそれぞれは、少なくとも水素吸蔵金属が収容されており、複数の筒状部の少なくとも一つに、複数の成形体と保持機構と検出部とが設けられていてもよい。これにより、少なくとも一つの筒状部にある複数の成形体の体積変化を推定することで、全体の水素吸蔵合金の体積変化も推定できる。
【0017】
本発明の別の態様は、水素残量検出システムである。この水素残量検出システムは、燃料容器と、検出部が出力した信号に基づいて収容部における水素の残量を演算する演算部と、を備える。
【0018】
この態様によると、燃料容器の姿勢によらず、燃料容器内の水素の残量を算出できる。
【0019】
燃料容器は、外部から水素が充填されるとともに外部へ水素を放出する充填放出口と、充填された水素の累積充填量の情報を記憶する記憶部と、を更に備えてもよい。水素吸蔵合金は、水素の吸蔵、放出を繰り返すと充填量が減少する傾向にある。そのため、充填された水素の累積充填量の情報を記憶することで、水素の残量を演算する際の補正が可能となる。
【0020】
演算部は、記憶部に記憶されている累積充填量の情報と、検出部により検出された複数の成形体の積層方向の両端部の位置と、に基づいて、収容部における水素の残量を算出してもよい。これにより、水素吸蔵合金が水素の吸蔵、放出を繰り返した場合であっても、燃料容器の水素の残量をより精度良く算出できる。
【0021】
演算部において算出された収容部における水素の残量の情報を表示する表示部を更に備えてもよい。これにより、簡便に水素の残量を把握できる。
【0022】
充填放出口と着脱可能な接続部を有し、燃料容器に水素を充填する水素充填装置を更に備えてもよい。演算部は、水素充填装置に配置されていてもよい。これにより、演算部を燃料容器ごとに設けなくても水素の残量を算出できるため、燃料容器のコストの低減に寄与する。
【0023】
演算部は、検出部が検出した複数の成形体の積層方向の両端部の位置の情報に基づいて水素充填装置が充填した水素の充填量を算出し、記憶部は、算出された水素の充填量をそれまでに記憶されていた累積充填量に加算し、新たな累積充填量として記憶してもよい。これにより、燃料容器ごとに水素の累積充填量を更新できる。
【0024】
本発明の更に別の態様は、燃料電池システムである。この燃料電池システムは、燃料電池と、燃料電池に供給する水素を収容する燃料容器と、検出部が出力した信号に基づいて収容部における水素の残量を演算する演算部と、を備える。
【0025】
この態様によると、燃料容器の姿勢によらず、燃料容器内の水素の残量を算出できる。
【0026】
燃料容器は、外部から水素が充填されるとともに外部へ水素を放出する充填放出口と、充填された水素の累積充填量の情報を記憶する記憶部と、を更に備えてもよい。水素吸蔵合金は、水素の吸蔵、放出を繰り返すと充填量が減少する傾向にある。そのため、充填された水素の累積充填量の情報を記憶することで、水素の残量を演算する際の補正が可能となる。
【0027】
演算部は、記憶部に記憶されている累積充填量の情報と、検出部により検出された複数の成形体の積層方向の両端部の位置と、に基づいて、収容部における水素の残量を算出してもよい。これにより、水素吸蔵合金が水素の吸蔵、放出を繰り返した場合であっても、燃料容器の水素の残量をより精度良く算出できる。
【0028】
演算部において算出された収容部における水素の残量の情報を表示する表示部を更に備えてもよい。これにより、簡便に水素の残量を把握できる。
【0029】
燃料電池は、燃料容器と着脱可能に構成され、演算部は、燃料電池に配置されていてもよい。これにより、演算部を燃料容器ごとに設けなくても水素の残量を算出できるため、燃料容器のコストの低減に寄与する。
【0030】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、燃料容器の姿勢によらず水素吸蔵合金の体積変化を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施の形態に係る燃料電池システムの概略を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図である。
【図3】図2に示す燃料容器よりも水素の吸蔵量が多い場合の燃料容器の概略断面図である。
【図4】第2の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図である。
【図5】第3の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図である。
【図6】成形体の間に多孔質体を挟んだ燃料容器の概略断面図である。
【図7】図7(a)は、収容部に成形体が存在しない状態で燃料容器が傾いた様子を示す概略模式図、図7(b)は、水素を吸蔵していない複数の成形体を収容部に収容した状態で燃料容器が傾いた様子を示す概略模式図、図7(c)は、水素を吸蔵している複数の成形体を収容部に収容した状態で燃料容器が傾いた様子を示す概略模式図である。
【図8】図8(a)は、第4の実施の形態に係る保持機構を示す概略断面図、図8(b)は、図8(a)のA−A断面図である。
【図9】図9(a)は、第4の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図、図9(b)は、図9(a)のB−B断面図である。
【図10】図10(a)は、第5の実施の形態に係る保持機構を示す概略側面図、図10(b)は、図10(a)に示す保持機構をC方向から見た上面図、図10(c)は、図10(a)のD−D断面図である。
【図11】図11(a)は、第5の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図、図11(b)は、図11(a)のE−E断面図である。
【図12】図12(a)は、第6の実施の形態に係る保持機構を示す概略側面図、図12(b)は、図12(a)のF−F断面図である。
【図13】第7の実施の形態に係る水素残量検出システムの概略を示す図である。
【図14】図14は、水素の充填サイクル数と最大充填量との関係を示す図である。
【図15】第8の実施の形態に係る水素残量検出システムの概略を示す図である。
【図16】第8の実施の形態に係る燃料電池システムの概略を示す図である。
【図17】図17(a)、図17(b)は、収容部の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0034】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る燃料電池システムの概略を示すブロック図である。燃料電池システム10は、燃料電池12と、燃料電池に供給する水素を収容する燃料容器14と、燃料容器14の水素の残量を演算する演算部16と、を備える。燃料容器14は、水素吸蔵合金を収容しており、水素吸蔵合金の状態の変化を検出する検出部18を備える。演算部16は、検出部18が出力した信号に基づいて、燃料容器14における水素吸蔵合金の体積変化や水素の残量を演算する。演算結果は、必要に応じて表示部20に表示される。燃料容器14と燃料電池12との間には、燃料容器14で放出された水素を燃料電池12へ供給するための供給路22が設けられている。
【0035】
図2は、第1の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図である。燃料容器14は、水素吸蔵合金からなる複数の成形体24と、複数の成形体24の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体24が互いに最も近接するように積層された状態で保持する保持機構26と、複数の成形体24を収容する収容部28と、複数の成形体24の体積変化による、複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部18(18a,18b)と、を備える。
【0036】
成形体24は、水素吸蔵合金の粉末にPTFEデイスパージョンなどの結着剤を混合して、プレス機で圧縮成型したものであり、燃料電池12に供給される水素を含有できる。なお、場合によっては圧縮成型された成形体に更に焼結処理を加えてもよい。成形体は、例えば、円板状、円筒状、直方体などの形状に加工される。水素吸蔵合金は、大量の水素を吸蔵する能力と、吸蔵した水素を再び放出する能力を備えた合金であり、例えば、LaNi5合金、FeTi合金、Mg2Ni合金、Ti1+xCr2−yMny(x=0.1〜0.3、y=0〜1.0)合金などが好適である。このような水素吸蔵合金は、水素を吸蔵すると体積が増加し、水素を放出すると体積が減少する。
【0037】
収容部28は、円筒形状または直方体形状の筐体であり、長手方向の両端部に蓋部28aと底部28bを有する。また、蓋部と28aと底部28bとを連結する胴部28cは、積層されている複数の成形体24が水素の吸蔵状態に応じて体積変化できるような空間が形成されている。成形体(ペレット)が充填される空間は、断面が矩形(長方形または長穴)で角にRが付いている場合や、円筒形の空間であってもよい。蓋部28a、底部28b、胴部28cは互いに分割されており、切削あるいは形取りなどで成形されている。そして、蓋部28aおよび底部28bと、胴部28cとは、シールしてネジなどで締め付けられている。水素吸蔵合金が成形体に加工されているため、水素吸蔵合金が粉末の場合と比較して、合金による局所応力破壊などの影響が回避できる。
【0038】
本実施の形態に係る収容部28は、保持機構26により積層された状態で保持されている複数の成形体24を収容する。なお、収容部28の外側形状は、外部との熱交換性を考慮し、直方体形状が望ましい。材質は、SUSやアルミニウムなどが好ましい。
【0039】
保持機構26は、弾性部材である2つのバネ26a,26bからなる。バネ26aは、圧縮された状態で、一端が蓋部28aに固定され、他端が支持部材30に連結されている。バネ26bは、圧縮された状態で、一端が底部28bに固定され、他端が支持部材32に連結されている。このように、2つのバネ26a,26bは、複数の成形体24の積層方向Aの両端部と収容部28の内壁との間にそれぞれ設けられており、複数の成形体24を積層方向の両側から付勢している。これにより、複数の成形体24の積層状態を維持しながら、複数の成形体24の体積変化が許容される。また、複数の成形体24が収容部28の中で動き回ることが抑制されるため、それぞれの成形体は、燃料容器の落下や振動による衝撃から保護される。なお、2つのバネ26a,26bは、燃料容器14の姿勢によらず常に圧縮された状態となるように長さやバネ定数が設定されている。
【0040】
一対の支持部材30,32は、複数の成形体24の積層方向の両端部を外側から支持する。このような支持部材30,32により複数の成形体24を外側から支持することで、バネ26a,26bの付勢力が、直接または局所的に成形体24に伝わらないようになっている。換言すれば、バネ26a,26bの付勢力は、支持部材30,32を介して成形体24に均一に伝達される。そのため、それぞれの成形体24は、互いに最も近接するように積層された状態で安定して保持される。また、水素吸蔵合金からなる成形体24が割れたり欠けたりすることも抑制される。
【0041】
本実施の形態に係る検出部18a,18bは、静電容量センサである。各静電容量センサは、一対の電極板18a1,18a2(18b1,18b2)を有する。一対の電極板18a1,18a2(18b1,18b2)は、対向するように、収容部28の胴部28cの内壁に埋め込まれている。また、一対の電極板18a1,18a2は、蓋部28a近傍に設けられており、一対の電極板18b1,18b2は、底部28b近傍に設けられている。静電容量センサは、一対の電極板の間に存在する、支持部材や成形体の体積によって静電容量が変化する。
【0042】
図3は、図2に示す燃料容器よりも水素の吸蔵量が多い場合の燃料容器の概略断面図である。水素の吸蔵または放出により複数の成形体24全体の体積が変化すると、バネ26a,26bが伸縮し、それに応じて複数の成形体24全体の両端部にある成形体24a,24bの位置や、支持部材30,32の位置が変化する。そのため、一対の電極板18a1,18a2(18b1,18b2)の間に存在する、支持部材30(32)や成形体24a(24b)の体積変化によって静電容量が変化する。そして、静電容量センサの検出部18a,18bは、静電容量の変化に応じた出力に基づいて、複数の成形体全体の積層方向の両端部の位置を検出する。
【0043】
本実施の形態に係る燃料容器14においては、姿勢が変化しても保持機構26により複数の成形体24の積層状態は維持される。そのため、検出部18a,18bで複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出することで、燃料容器14の姿勢によらず、複数の成形体全体の体積変化を算出することができる。
【0044】
より詳述すると、例えば、水素吸蔵合金が水素を全く吸蔵していない状態における複数の成形体の積層方向の両端部の位置をPa0、Pb0(図3参照)とする。図3に示す状態は各成形体が水素を吸蔵して膨張している状態であり、複数の成形体の積層方向の両端部の位置はPa0’、Pb0’に変化している。つまり、複数の成形体の積層方向の一方の端部(蓋部側)の変化量ΔPaはΔPa=Pa0’−Pa0であり、複数の成形体の積層方向の他方の端部(底部側)の変化量ΔPbはΔPb=Pb0’−Pb0となる。
【0045】
したがって、複数の成形体24の積層方向の全長の変化ΔX=ΔPa+ΔPbとなる。複数の成形体の積層方向の全長の変化は、複数の成形体全体の体積変化と対応している。このように、検出部18a,18bで複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出することで、複数の成形体全体の体積変化を算出することができる。また、収容部28の長手方向の両端部に検出部を設置することで、積層されている複数の成形体の体積変化が最も現れる両端部を計測できる。これにより、より精度良く複数の成形体全体の体積変化を検出することができ、水素の吸蔵放出状態をより正確に把握することができる。
【0046】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る燃料容器は、検出部としてインダクタンスセンサを利用している点が第1の実施の形態に係る燃料容器14と大きく異なっている。図4は、第2の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図である。なお、第1の実施の形態に係る燃料容器14と同様の構成や作用については説明を適宜省略する。
【0047】
燃料容器34は、複数の成形体24と、複数の成形体24の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体24が互いに最も近接するように積層された状態で保持するバネ26a,26bと、収容部28と、複数の成形体24の体積変化による、複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部36a,36bと、を備える。
【0048】
本実施の形態に係る検出部36a,36bは、インダクタンスセンサである。検出部36aは、蓋部28aの内壁にギャップ検出コイル36a1が固定されている。また、検出部36bは、底部28bの内壁にギャップ検出コイル36b1が固定されている。インダクタンスセンサは、ギャップ検出コイル36a1(36b1)と支持部材30(32)との間に距離の変化が生ずると、検出コイルのインダクタンスが変化し、変化したインダクタンスが検出回路において直流電圧の信号に変換される。つまり、ギャップ検出コイルと支持部材との間の距離の変化に応じた信号に基づいて、複数の成形体全体の体積変化を算出することができる。
【0049】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る燃料容器は、検出部として超音波式レベルセンサを利用している点が第1の実施の形態に係る燃料容器14と大きく異なっている。図5は、第3の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図である。なお、第1の実施の形態に係る燃料容器14と同様の構成や作用については説明を適宜省略する。
【0050】
燃料容器38は、複数の成形体24と、複数の成形体24の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体24が互いに最も近接するように積層された状態で保持するバネ26a,26bと、収容部28と、複数の成形体24の体積変化による、複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部40a,40bと、を備える。
【0051】
本実施の形態に係る検出部40a,40bは、超音波式レベルセンサである。検出部40aは、蓋部28aの内壁にセンサ部40a1が埋め込まれている。また、検出部40bは、底部28bの内壁にセンサ部40b1が埋め込まれている。超音波式レベルセンサは、センサ部40a1(40b1)から発射された超音波が支持部材30(32)で反射し、同じセンサ部40a1(40b1)で受信されるまでの、エコー時間を検出回路で電気信号に変換している。エコー時間は、センサ部と支持部材との間の距離に対応(比例)しているため、エコー時間を距離に換算することで、複数の成形体の積層方向の両端部の位置が検出され、複数の成形体全体の体積変化を算出することができる。
【0052】
以上の説明では、検出部として3つの方式を例示したが、これらの方式を複数使用してもよい。また、上述の各実施の形態に係る燃料容器では、検出部が燃料容器の両端部(蓋部、底部)近傍にそれぞれ設けられているが、複数の成形体が一体的に保持されている状態で一方の端部が収容部に固定されている場合は、他方の端部にだけ検出部を設けてもよい。これにより、検出部の数が削減されコストが低減される。
【0053】
また、水素の吸蔵、放出の機能を優先して製造される成形体は、必ずしも検出部の検出に適した材料や特性、形状を選択できるとは限らない。しかしながら、上述の各実施の形態に係る燃料容器は、積層されている複数の成形体の両端部に配置されている支持部材を備えているため、支持部材を検出部の方式に適した材料や物性、形状から選択することで、検出精度を向上することができる。なお、支持部材は必須ではなく省略してもよい。
【0054】
一方、隣接する成形体の間に板状の多孔質体を挟んでもよい。図6は、成形体の間に多孔質体を挟んだ燃料容器42の概略断面図である。なお、第3の実施の形態に係る燃料容器38と同様の構成や作用については説明を適宜省略する。隣接する成形体24の間には、板状の多孔質体44が挟持されている。成形体24は、多孔質体44を通じて水素の流通性が向上し、水素の吸蔵および放出が容易となる。また、水素の吸蔵時には、膨張する成形体24同士に力がかかるが、多孔質体44によってこの力を緩和させることで成形体24が割れることが抑制される。また、多孔質体44として発泡金属を選択にすることで、伝熱性の向上も図ることが可能となる。例えば、成形体24の天底面は、発泡金属の多孔質体44を介して、隣接する成形体24や収容部28の胴部28cとの熱伝導が可能となる。発泡金属は、例えば、銅やアルミニウムなどの熱伝導性のよい金属が好ましい。
【0055】
なお、それぞれの成形体24は、隣接する多孔質体44と接着されていてもよい。これにより、バネ26aまたはバネ26bの一方を省略しても、複数の成形体の積層状態を維持しながら、複数の成形体の体積変化が許容される。
【0056】
[燃料容器の姿勢変化]
次に、燃料容器の姿勢変化と水素吸蔵状態との関係につて説明する。図7(a)は、収容部に成形体が存在しない状態で燃料容器が傾いた様子を示す概略模式図、図7(b)は、水素を吸蔵していない複数の成形体を収容部に収容した状態で燃料容器が傾いた様子を示す概略模式図、図7(c)は、水素を吸蔵している複数の成形体を収容部に収容した状態で燃料容器が傾いた様子を示す概略模式図である。なお、各図では検出部および支持部材は省略してある。また、燃料容器の傾きは水平を0°としてθで表している。
【0057】
図7(a)に示す燃料容器46において、バネ26aは、負荷がかかっていない状態の長さがxa、バネ定数がkaであり、バネ26bは、負荷がかかっていない状態の長さがxb、バネ定数がkbである。また、収容部28の蓋部28aと底部28bとの距離をLとする。
【0058】
次に、図7(b)に示すように、燃料容器46に複数の成形体を収容する。ここで、成形体は実質的には水素を吸蔵していない。圧縮されたバネ26a,26bで複数の成形体24を挟持することで、複数の成形体24は互いに隙間なく保持される。複数の成形体24の積層方向の全長をX、複数の成形体24全体の質量をM、バネ26aの圧縮変位をΔxa、バネ26bの圧縮変位をΔxb、複数の成形体24がバネ26aから受ける力をFa、複数の成形体24がバネ26bから受ける力をFbとすると、以下の式(1)〜式(4)が導かれる。
【0059】
L=(xa−Δxa)+X+(xb−Δxb)・・・式(1)
Fb=Mgsinθ+Fa・・・式(2)
Fa=Δxa×ka・・・式(3)
Fb=Δxb×kb・・・式(4)
【0060】
次に、図7(c)に示すように、図7(b)に示した燃料容器46に水素を充填し、複数の成形体のそれぞれに水素を吸蔵させた。水素を吸蔵した成形体は膨張し、バネ26a,26bを更に圧縮させる。複数の成形体24の積層方向の膨張量をΔX、バネ26aの圧縮変位をΔxa’、バネ26bの圧縮変位をΔxb’、複数の成形体24がバネ26aから受ける力をFa’、複数の成形体24がバネ26bから受ける力をFb’とすると、以下の式(5)〜式(8)が導かれる。
【0061】
L=(xa−Δxa’)+(X+ΔX)+(xb−Δxb’)・・・式(5)
Fb’=Mgsinθ+Fa’・・・式(6)
Fa’=Δxa’×ka・・・式(7)
Fb’=Δxb’×kb・・・式(8)
【0062】
以上の式(1)〜(8)より、以下の関係式(9)〜(11)が導かれる。
ΔX=(Δxa’−Δxa)+(Δxb’−Δxb)・・・式(9)
ΔX=((ka+kb)/kb)×(Δxa’−Δxa)・・・式(10)
ΔX=((ka+kb)/ka)×(Δxb’−Δxb)・・・式(11)
【0063】
式(9)から明らかなように、複数の成形体の両端部の変位を2つの検出部で検出することで、複数の成形体の積層方向の膨張量ΔXが算出され、複数の成形体の体積変化が算出される。その結果、燃料容器内の水素の残量を算出できる。また、式(10)、式(11)からわかるように、複数の成形体の積層方向の膨張量ΔXは、燃料容器46の傾きθによらない。具体的には、膨張量ΔXは、水素が充填されていない状態から水素を充填した場合の、積層されている複数の成形体の両端部の変位量(Δxa’−Δxa)や変位量(Δxb’−Δxb)によって一義的に決まる。そのため、燃料容器の姿勢によって変位量(Δxa’−Δxa)や変位量(Δxb’−Δxb)と、膨張量ΔXとの関係を考慮する必要がなく、演算処理が容易となる。
【0064】
また、式(10)、式(11)からわかるように、上述の各燃料容器は、バネ26a,26bのバネ定数ka,kbがあらかじめわかっていれば、一つの検出部で膨張量ΔXを算出することもできる。
【0065】
(第4の実施の形態)
次に、第1の実施の形態から第3の実施の形態で述べた保持機構26と異なる方式の保持機構を採用した燃料容器について説明する。図8(a)は、第4の実施の形態に係る保持機構を示す概略断面図、図8(b)は、図8(a)のA−A断面図である。
【0066】
本実施の形態に係る保持機構は、ネット状の弾性部材50であり、積層されている複数の成形体24とその両端部にある支持部材30,32とをまとめて覆うような形状になっている。つまり、弾性部材50の働きにより、複数の成形体24の積層状態を維持しながら、複数の成形体24の体積変化が許容される。なお、支持部材30,32を省略することも可能である。弾性部材50は、熱伝導性の良い銅やリン青銅、ステンレス鋼線などをネット状に加工し弾性を付与したものである。
【0067】
図9(a)は、第4の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図、図9(b)は、図9(a)のB−B断面図である。図9(a)に示す燃料容器52は、水素吸蔵合金からなる複数の成形体24と、複数の成形体24の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体24が互いに最も近接するように積層された状態で保持するネット状の弾性部材50と、複数の成形体24を収容する収容部28と、複数の成形体24の体積変化による、複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部(不図示)と、を備える。
【0068】
図9(a)に示す複数の成形体24は水素を吸蔵しているため、図8(a)に示す複数の成形体24よりも膨張している。そのため、成形体24は、胴部28cの長手方向だけではなく、胴部28cの径方向にも膨張する。本実施の形態の弾性部材50は、成形体24が胴部28cの長手方向に膨張するとそれに伴い上下方向に伸びるため、成形体24と胴部28cの内壁との間に存在している部分の厚みは薄くなる(図9(a)、図9(b)参照)。このように、弾性部材50の厚みが薄くなることで、成形体24が胴部28cの径方向に無理なく膨張できるため、成形体24が膨張する際に胴部28cとの間で働く負荷が軽減され、成形体24の割れや変形が抑制される。また、弾性部材50は、ネット状(網目状)のため、収容部28の内部での水素の流通性が向上する。
【0069】
(第5の実施の形態)
図10(a)は、第5の実施の形態に係る保持機構を示す概略側面図、図10(b)は、図10(a)に示す保持機構をC方向から見た上面図、図10(c)は、図10(a)のD−D断面図である。
【0070】
本実施の形態に係る保持機構は、複数のバネ54である。バネ54は、両端が鈎状になっている丸棒状の部材である。それぞれのバネ54は、積層されている複数の成形体24の両端部またはその外側にある支持部材30,32同士を、鈎状の部分54aで連結し、互いが積層方向に近付く向きに付勢しながら挟持する。つまり、バネ54の働きにより、複数の成形体24の積層状態を維持しながら、複数の成形体24の体積変化が許容される。なお、支持部材30,32を省略することも可能である。バネ54は、熱伝導性の良い銅やリン青銅、ステンレス鋼線などをネット状に加工し弾性を付与したものである。
【0071】
図11(a)は、第5の実施の形態に係る燃料容器の概略断面図、図11(b)は、図11(a)のE−E断面図である。図11(a)に示す燃料容器56は、水素吸蔵合金からなる複数の成形体24と、複数の成形体24の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体24が互いに最も近接するように積層された状態で保持するバネ54と、複数の成形体24を収容する収容部28と、複数の成形体24の体積変化による、複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部(不図示)と、支持部材32と底部28bとを連結するバネ58と、を備える。バネ58により、収容部28において複数の成形体が一体で動き回ることが規制される。
【0072】
図11(a)に示す複数の成形体24は水素を吸蔵しているため、図10(a)に示す複数の成形体24よりも膨張している。そのため、成形体24は、胴部28cの長手方向だけではなく、胴部28cの径方向にも膨張する。本実施の形態のバネ54は、成形体24が胴部28cの長手方向に膨張するとそれに伴い上下方向に伸びるため、成形体24と胴部28cの内壁との間に存在している部分の直径が小さくなる(図11(a)、図11(b)参照)。このように、バネ54の直径が小さくなることで、成形体24が胴部28cの径方向に無理なく膨張できるため、成形体24が膨張する際に胴部28cとの間で働く負荷が軽減され、成形体24の割れや変形が抑制される。また、バネ54は、円板状の成形体24の外周に等間隔で6本配置されているため、収容部28の内部での水素の流通性が向上する。なお、複数のバネ54の代わりに、複数の成形体の外周をらせん状に覆う
一つのコイルバネを用いてもよい。
【0073】
(第6の実施の形態)
図12(a)は、第6の実施の形態に係る保持機構を示す概略側面図、図12(b)は、図12(a)のF−F断面図である。
【0074】
本実施の形態に係る保持機構は、円筒形状の複数の成形体59の積層方向の両端部を外側から支持する一対の支持部材60,62と、一対の支持部材60,62を連結し、一対の支持部材60,62を互いに近付く向きに引っ張る引っ張りバネ64と、を有している。引っ張りバネ64は、円筒形状の成形体59の中央を貫通するように設けられている。この引っ張りバネ64の働きにより、複数の成形体59の積層状態を維持しながら、複数の成形体59の体積変化が許容される。
【0075】
また、本実施の形態に係る燃料容器66は、水素吸蔵合金からなる円筒形状の複数の成形体59と、複数の成形体59の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体59が互いに最も近接するように積層された状態で保持する保持機構と、複数の成形体59を収容する収容部28と、複数の成形体59の体積変化による、複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部(不図示)と、支持部材62と底部28bとを連結するバネ58と、を備える。バネ58により、収容部28において複数の成形体が一体で動き回ることが規制される。
【0076】
(第7の実施の形態)
本実施の形態に係る水素残量検出システムは、燃料容器の収容部に筒状の燃料室が複数形成されている。そして、少なくとも一つの燃料室に検出部が設けられている。図13は、第7の実施の形態に係る水素残量検出システム70の概略を示す図である。
【0077】
水素残量検出システム70は、燃料容器72と、演算部16と、表示部20とを備える。燃料容器72は、複数の筒状の燃料室が形成されている収容部74を有する。燃料室76は、図4に示した燃料容器34とほぼ同様の構成であるため、同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0078】
燃料室78は、隣接する燃料室76と仕切り壁80で仕切られている。燃料室78には、水素吸蔵合金の粉末や成形体が収容されている。蓋部28aおよび底部28bと仕切り壁80との間には、燃料室76および燃料室78とを連通する連通路82,84が形成されている。連通路82,84には、燃料室78が収容している粉末の水素吸蔵合金86が燃料室76に侵入しないようにフィルタ88,90が設けられている。フィルタ88,90は、少なくとも水素が流通できるように構成されている。
【0079】
上述のように構成されている燃料容器72は、複数の燃料室の一つである燃料室76に、複数の成形体24とバネ26a,26bと検出部36(36a,36b)とが設けられている。これにより、燃料室76にある複数の成形体24の体積変化を推定することで、燃料容器が備える水素吸蔵合金全体の体積変化も推定できる。そして、演算部16は、燃料容器72の検出部36が出力した信号に基づいて収容部74における水素の残量を演算する。
【0080】
(第8の実施の形態)
通常、水素吸蔵合金は、水素の吸蔵および放出を繰り返すと、水素の最大充填量が徐々に減少する傾向にある。図14は、水素の充填サイクル数と最大充填量との関係を示す図である。
【0081】
水素吸蔵合金は、充填量の増加に伴い膨張するため、水素の充填量と、水素吸蔵合金からなる複数の成形体の両端部の変位(膨張量ΔX)とは相関(比例)関係がある。したがって、前述の式(9)〜式(11)に示すように、検出部において成形体の両端部の変位を検出することで膨張量ΔXが算出され、その結果、水素の充填量が算出される。一方、図14に示すように、最大充填量V(N)maxは、充填サイクル数Nの関数として表され、充填サイクル数の増加に伴い徐々に減少する。したがって、燃料容器に同じ量の水素が充填されていた場合であっても、最大充填量V(N)maxが変化すれば水素の残量の割合も変化することになる。
【0082】
そこで、本実施の形態では、水素充填装置で燃料容器に水素を充填する水素残量検出システムと、水素が充填された燃料容器を用いて燃料電池を駆動する燃料電池システムとにおいて、水素の充填および放出を繰り返した場合であっても、水素の残量をより精度良く算出できる構成について説明する。なお、最大充填量V(N)maxの関数は、水素吸蔵合金の種類、粒径、充填圧力、混合材料の構成等によって変わりうる。そこで、予め実験やシミュレーションによって算出しておくとよい。
【0083】
図15は、第8の実施の形態に係る水素残量検出システムの概略を示す図である。図16は、第8の実施の形態に係る燃料電池システムの概略を示す図である。
【0084】
図15に示す水素残量検出システム100は、燃料容器72が、外部から水素が充填されるとともに外部へ水素を放出する充填放出口102と、充填された水素の累積充填量の情報を記憶する記憶部104と、を備えている点が、第7の実施の形態に係る水素残量検出システム70と大きく異なる。また、水素残量検出システム100は、燃料容器72に水素を充填する水素充填装置108を更に備えている。水素充填装置108は、燃料容器72の充填放出口102と着脱可能な接続部106を有している。また、演算部16は、水素充填装置108に配置されている。
【0085】
なお、図15に示す水素残量検出システム100では、第7の実施の形態に係る水素残量検出システム70と同じ部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0086】
次に、水素充填装置108を用いて燃料容器72に水素を充填する際の水素残量検出システム100の動作について説明する。
【0087】
はじめに、燃料容器72の充填放出口102と水素充填装置108の接続部106とを接続する。その際、演算部16と、検出部36および記憶部104との通信が可能な状態を確立する。通信は、無線でも有線でもよい。
【0088】
燃料容器72と水素充填装置108とが接続されると、演算部16は、燃料容器72の記憶部104より水素の累積充填量Vcum、および図14に示す最大充填量の関数V(N)maxを読み出す。累積充填量Vcumは、燃料容器72が新品の場合0である。
【0089】
水素の充填が開始されると、演算部16は、検出部36により検出された複数の成形体24の積層方向の両端部の位置に基づいて、複数の成形体24の膨張量ΔXを算出する。演算部16は、水素の充填が終了すると、その際の膨張量ΔXから水素の充填量ΔVを算出する。そして、演算部16は、算出された水素の充填量ΔV1をそれまでに記憶されていた累積充填量Vcumに加算し、新たな累積充填量(Vcum=Vcum+ΔV1)として記憶部104に記憶させる。これにより、燃料容器72ごとに水素の累積充填量Vcumを更新できる。また、水素充填装置108に流量計を備えておけば、流量計より計測した水素充填量ΔVfに基づき、より高い精度でΔV1を算出できる。
【0090】
次に、燃料容器72の累積充填量Vcumからその際の最大充填量V(N)maxを求める方法について説明する。
【0091】
なお、水素の累積充填量Vcumという項目を記憶部104に記憶させているのは、以下の理由による。常に、燃料容器に水素が全く充填されていない状態で水素を最大充填量まで充填することが繰り返されるのであれば、充填サイクル数Nをカウントすれば、簡便に最大充填量V(N)maxを求めることができる。しかしながら、水素を使い切らない状態で水素を充填する場合や、水素を最大充填量まで充填しない場合もあり得る。このような場合、単に充填した回数をカウントするだけでは、そのときの最大充填量V(N)maxを正確に算出することはできないからである。
【0092】
つまり、図14に示すように、1回目の充填量がΔV1、2回目の充填量がΔV2、3回目の充填量がΔV3、4回目の充填量がΔV4とすると、累積充填量Vcumは、矢印が示す位置となる。したがって、累積充填量Vcumは、充填サイクル数N=3に相当するため、その際の燃料容器の最大充填量はV(3)maxとなる。なお、演算部16は、その時点での燃料容器の最大充填量V(3)maxの値を記憶部104に記憶させてもよい。
【0093】
このように、演算部16は、記憶部104に記憶されている累積充填量Vcumと、検出部36により検出された複数の成形体の積層方向の両端部の位置と、に基づいて、収容部74における水素の残量を算出できる。これにより、水素吸蔵合金が水素の吸蔵、放出を繰り返した場合であっても、燃料容器72の水素の残量をより精度良く算出できる。
【0094】
また、前述のように、水素吸蔵合金は、水素の吸蔵、放出を繰り返すと充填量が減少する傾向にあるが、水素残量検出システム100は、充填された水素の累積充填量Vcumの情報を記憶部104に記憶することで、水素の残量を演算する際の補正が可能となる。
【0095】
また、水素を使いきった状態から最大充填状態まで水素を充填し、水素充填時に流量計で計測した水素充填量ΔVf、あるいは、検出部36により検出された複数の成形体の積層方向の両端部の位置より算出される膨張量ΔXから算出される水素の充填量ΔVと、最大充填量V(N)maxとを比較し、水素充填量ΔVfあるいは充填量ΔVと、最大充填量V(N)maxとの差が大きい状態であれば、累積充填量Vcumに応じた最大充填量V(N)maxの減少の進行度が異なると考えられる。
【0096】
そこで、補正の判定モードとして、水素を使い切った状態から最大充填状態まで水素充填を数回繰り返し、上記のように流量計で計測した水素充填量ΔVf、あるいは膨張量ΔXから算出される水素の充填量ΔVと、最大充填量V(N)maxとを比較する。そして、水素充填量ΔVfと最大充填量V(N)maxとの差、または、充填量ΔVと最大充填量V(N)maxとの差が、いずれも所定値より大きい(例えば最大充填量V(N)maxの値の5%以上)場合、最大充填量V(N)maxを、水素充填量ΔVf、充填量ΔVに相当する新たな最大充填量V(N’)max(N≠N’)に補正しなおしてもよい。また、膨張量ΔXから算出される水素の充填量ΔVと、水素充填時に流量計で計測した水素充填量ΔVfとの値が大きく異なっていれば、検出部の成形体が崩壊等を起こし、残量計測が不可能であるとして、警告表示を行っても良い。
【0097】
また、水素充填装置108は、演算部16において算出された収容部74における水素の残量の情報を表示する表示部を更に備えてもよい。これにより、簡便に水素の残量を把握できる。
【0098】
また、演算部16は、水素充填装置108に設けられており、演算部を燃料容器ごとに設けなくても水素の残量を算出できるため、燃料容器のコストの低減に寄与する。
【0099】
次に、本実施の形態に係る燃料電池システムについて説明する。図16に示す燃料電池システム110は、図15に示す水素残量検出システム100の水素充填装置108を外して、燃料容器72に燃料電池12を装着したものである。燃料電池12は、燃料容器72の充填放出口102と着脱可能な接続部112を有している。また、演算部16および表示部20は、燃料電池12に配置されている。
【0100】
なお、図16に示す燃料電池システム110では、図15に示す水素残量検出システム100と同じ部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0101】
次に、燃料容器72から水素を放出して燃料電池12で発電する際の燃料電池システム110の動作について説明する。
【0102】
はじめに、燃料容器72の充填放出口102と燃料電池システム110の接続部112とを接続する。その際、演算部16と、検出部36および記憶部104との通信が可能な状態を確立する。通信は、無線でも有線でもよい。
【0103】
燃料容器72と燃料電池12とが接続されると、演算部16は、燃料容器72の記憶部104より水素の累積充填量Vcum、および図14に示す最大充填量の関数V(N)maxを読み出す。
【0104】
燃料電池12への水素の放出が開始されると、演算部16は、検出部36により検出された複数の成形体24の積層方向の両端部の位置に基づいて、複数の成形体24の膨張量ΔXを算出する。演算部16は、水素の放出が終了(発電が停止)すると、その際の膨張量ΔXから残っている水素の充填量ΔVを算出する。そして、演算部16は、算出された水素の充填量ΔVと、記憶部104から読み出した水素の累積充填量Vcum、および最大充填量V(N)maxとに基づいて残量を算出する。残量(%)は、充填量ΔV/最大充填量V(N)max×100で算出される。算出された残量は、表示部20に表示される。なお、演算部16は、燃料容器72の初期の最大充填量V(1)maxを基準として残量(%)を表示することで、初期の容量に対する残量の割合を算出することも可能である。
【0105】
このように、燃料電池システム110においても、演算部16は、記憶部104に記憶されている累積充填量Vcumと、検出部36により検出された複数の成形体の積層方向の両端部の位置と、に基づいて、収容部74における水素の残量を算出できる。これにより、水素吸蔵合金が水素の吸蔵、放出を繰り返した場合であっても、燃料容器72の水素の残量をより精度良く算出できる。
【0106】
また、燃料電池12は、演算部16において算出された収容部74における水素の残量の情報を表示する表示部20を備えているため、簡便に水素の残量を把握できる。
【0107】
また、演算部16は、燃料電池12に設けられており、演算部を燃料容器ごとに設けなくても水素の残量を算出できるため、燃料容器のコストの低減に寄与する。
【0108】
(変形例)
次に収容部が有する筒状部の変形例について説明する。図17(a)、図17(b)は、収容部の変形例を示す斜視図である。図17(a)に示す収容部92は、円柱形状の空間が燃料室94として形成され、各燃料室94がライン状に配列している。また、図17(b)に示す収容部96は、四角柱形状の空間が燃料室98として形成され、各燃料室98がライン状に配列している。このように複数の燃料室を有する収容部92(96)においても、一つの燃料室94(98)に前述の複数の成形体と保持機構と検出部とを設けることで、燃料容器が備える水素吸蔵合金全体の体積変化を推定できる。
【0109】
上述のように、上述の各実施の形態に係る水素残量検出システムや燃料電池システムは、燃料容器の姿勢によらず、水素の吸蔵放出による水素吸蔵合金の体積変化を検出し、それに基づいて燃料容器内の水素残量を推定することができる。
【0110】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における燃料電池や燃料電池システムにおいて各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0111】
10 燃料電池システム、 12 燃料電池、 14 燃料容器、 16 演算部、 18 検出部、 24 成形体、 26 保持機構、 28 収容部、 30,32 支持部材、 44 多孔質体、 50 弾性部材、 70 水素残量検出システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に供給される水素を含有できる水素吸蔵金属からなる複数の成形体と、
前記複数の成形体の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体が互いに最も近接するように積層された状態で保持する保持機構と、
前記保持機構により積層された状態で保持されている前記複数の成形体を収容する収容部と、
前記複数の成形体の体積変化による、該複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部と、
を備えることを特徴とする燃料容器。
【請求項2】
前記保持機構は、前記複数の成形体の積層方向の両端部と前記収容部の内壁との間にそれぞれ設けられている弾性部材であって、
前記弾性部材は、前記複数の成形体を両側から付勢することを特徴とする請求項1に記載の燃料容器。
【請求項3】
前記保持機構は、前記複数の成形体の積層方向の両端部を連結し、前記両端部を前記積層方向に付勢しながら挟持する弾性部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料容器。
【請求項4】
前記保持機構は、
前記複数の成形体の積層方向の両端部を外側から支持する一対の支持部材と、
前記一対の支持部材を連結し、前記一対の支持部材を前記積層方向に付勢しながら挟持する弾性部材と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料容器。
【請求項5】
隣接する成形体の間に挟まれている多孔質体を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料容器。
【請求項6】
前記成形体と前記多孔質体とが接着されていることを特徴とする請求項5に記載の燃料容器。
【請求項7】
前記多孔質体は、発泡金属であることを特徴とする請求項5または6に記載の燃料容器。
【請求項8】
前記収容部は、それぞれが連通している複数の筒状部を有し、
前記複数の筒状部のそれぞれは、少なくとも水素吸蔵金属が収容されており、
前記複数の筒状部の少なくとも一つに、前記複数の成形体と前記保持機構と前記検出部とが設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の燃料容器。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の燃料容器と、
前記検出部が出力した信号に基づいて前記収容部における水素の残量を演算する演算部と、
を備えることを特徴とする水素残量検出システム。
【請求項10】
前記燃料容器は、
外部から水素が充填されるとともに外部へ水素を放出する充填放出口と、
充填された水素の累積充填量の情報を記憶する記憶部と、を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の水素残量検出システム。
【請求項11】
前記演算部は、前記記憶部に記憶されている前記累積充填量の情報と、前記検出部により検出された前記複数の成形体の積層方向の両端部の位置と、に基づいて、前記収容部における水素の残量を算出することを特徴とする請求項10に記載の水素残量検出システム。
【請求項12】
前記演算部において算出された前記収容部における水素の残量の情報を表示する表示部を更に備えることを特徴とする請求項10または11に記載の水素残量検出システム。
【請求項13】
前記充填放出口と着脱可能な接続部を有し、前記燃料容器に水素を充填する水素充填装置を更に備え、
前記演算部は、前記水素充填装置に配置されていることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の水素残量検出システム。
【請求項14】
前記演算部は、前記検出部が検出した複数の成形体の積層方向の両端部の位置の情報に基づいて前記水素充填装置が充填した水素の充填量を算出し、
前記記憶部は、算出された前記水素の充填量をそれまでに記憶されていた累積充填量に加算し、新たな累積充填量として記憶することを特徴とする請求項13に記載の水素残量検出システム。
【請求項15】
燃料電池と、
前記燃料電池に供給する水素を収容する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の燃料容器と、
前記検出部が出力した信号に基づいて前記収容部における水素の残量を演算する演算部と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項16】
前記燃料容器は、
外部から水素が充填されるとともに外部へ水素を放出する充填放出口と、
充填された水素の累積充填量の情報を記憶する記憶部と、を更に備えることを特徴とする請求項15に記載の燃料電池システム。
【請求項17】
前記演算部は、前記記憶部に記憶されている前記累積充填量の情報と、前記検出部により検出された前記複数の成形体の積層方向の両端部の位置と、に基づいて、前記収容部における水素の残量を算出することを特徴とする請求項16に記載の燃料電池システム。
【請求項18】
前記演算部において算出された前記収容部における水素の残量の情報を表示する表示部を更に備えることを特徴とする請求項16または17のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項19】
前記燃料電池は、前記燃料容器と着脱可能に構成され、
前記演算部は、前記燃料電池に配置されていることを特徴とする請求項16乃至18のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項1】
燃料電池に供給される水素を含有できる水素吸蔵金属からなる複数の成形体と、
前記複数の成形体の体積変化を許容しつつ、それぞれの成形体が互いに最も近接するように積層された状態で保持する保持機構と、
前記保持機構により積層された状態で保持されている前記複数の成形体を収容する収容部と、
前記複数の成形体の体積変化による、該複数の成形体の積層方向の両端部の位置を検出する検出部と、
を備えることを特徴とする燃料容器。
【請求項2】
前記保持機構は、前記複数の成形体の積層方向の両端部と前記収容部の内壁との間にそれぞれ設けられている弾性部材であって、
前記弾性部材は、前記複数の成形体を両側から付勢することを特徴とする請求項1に記載の燃料容器。
【請求項3】
前記保持機構は、前記複数の成形体の積層方向の両端部を連結し、前記両端部を前記積層方向に付勢しながら挟持する弾性部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料容器。
【請求項4】
前記保持機構は、
前記複数の成形体の積層方向の両端部を外側から支持する一対の支持部材と、
前記一対の支持部材を連結し、前記一対の支持部材を前記積層方向に付勢しながら挟持する弾性部材と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料容器。
【請求項5】
隣接する成形体の間に挟まれている多孔質体を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料容器。
【請求項6】
前記成形体と前記多孔質体とが接着されていることを特徴とする請求項5に記載の燃料容器。
【請求項7】
前記多孔質体は、発泡金属であることを特徴とする請求項5または6に記載の燃料容器。
【請求項8】
前記収容部は、それぞれが連通している複数の筒状部を有し、
前記複数の筒状部のそれぞれは、少なくとも水素吸蔵金属が収容されており、
前記複数の筒状部の少なくとも一つに、前記複数の成形体と前記保持機構と前記検出部とが設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の燃料容器。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の燃料容器と、
前記検出部が出力した信号に基づいて前記収容部における水素の残量を演算する演算部と、
を備えることを特徴とする水素残量検出システム。
【請求項10】
前記燃料容器は、
外部から水素が充填されるとともに外部へ水素を放出する充填放出口と、
充填された水素の累積充填量の情報を記憶する記憶部と、を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の水素残量検出システム。
【請求項11】
前記演算部は、前記記憶部に記憶されている前記累積充填量の情報と、前記検出部により検出された前記複数の成形体の積層方向の両端部の位置と、に基づいて、前記収容部における水素の残量を算出することを特徴とする請求項10に記載の水素残量検出システム。
【請求項12】
前記演算部において算出された前記収容部における水素の残量の情報を表示する表示部を更に備えることを特徴とする請求項10または11に記載の水素残量検出システム。
【請求項13】
前記充填放出口と着脱可能な接続部を有し、前記燃料容器に水素を充填する水素充填装置を更に備え、
前記演算部は、前記水素充填装置に配置されていることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の水素残量検出システム。
【請求項14】
前記演算部は、前記検出部が検出した複数の成形体の積層方向の両端部の位置の情報に基づいて前記水素充填装置が充填した水素の充填量を算出し、
前記記憶部は、算出された前記水素の充填量をそれまでに記憶されていた累積充填量に加算し、新たな累積充填量として記憶することを特徴とする請求項13に記載の水素残量検出システム。
【請求項15】
燃料電池と、
前記燃料電池に供給する水素を収容する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の燃料容器と、
前記検出部が出力した信号に基づいて前記収容部における水素の残量を演算する演算部と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項16】
前記燃料容器は、
外部から水素が充填されるとともに外部へ水素を放出する充填放出口と、
充填された水素の累積充填量の情報を記憶する記憶部と、を更に備えることを特徴とする請求項15に記載の燃料電池システム。
【請求項17】
前記演算部は、前記記憶部に記憶されている前記累積充填量の情報と、前記検出部により検出された前記複数の成形体の積層方向の両端部の位置と、に基づいて、前記収容部における水素の残量を算出することを特徴とする請求項16に記載の燃料電池システム。
【請求項18】
前記演算部において算出された前記収容部における水素の残量の情報を表示する表示部を更に備えることを特徴とする請求項16または17のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項19】
前記燃料電池は、前記燃料容器と着脱可能に構成され、
前記演算部は、前記燃料電池に配置されていることを特徴とする請求項16乃至18のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−92963(P2012−92963A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171257(P2011−171257)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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