燃料用フィルタ
【課題】温度変化による燃料の流動性低下時にのみメインフィルタを通過させずに連通部より燃料流路に燃料を流入させる機能を備えたフィルタを簡素な構造をもって提供する。
【解決手段】内部空間1aを燃料流路Pに連通させて用いられる袋状濾材1に、袋内外の連通部2を備えさせると共に、この連通部2を構成する対向位置にある内壁2a間の間隔を、通常は表面張力により燃料を連通部2内に停滞させる寸法で、かつ、温度変化により流動性の低下した燃料により袋状濾材1に目詰まりが生じたときにこの流動性の低下した燃料を袋状濾材1内に流入可能とする寸法としている。
【解決手段】内部空間1aを燃料流路Pに連通させて用いられる袋状濾材1に、袋内外の連通部2を備えさせると共に、この連通部2を構成する対向位置にある内壁2a間の間隔を、通常は表面張力により燃料を連通部2内に停滞させる寸法で、かつ、温度変化により流動性の低下した燃料により袋状濾材1に目詰まりが生じたときにこの流動性の低下した燃料を袋状濾材1内に流入可能とする寸法としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯蔵されている、温度変化により流動性を低下させる性質を持った燃料を、吸い出し供給するシステムにおいて、この燃料の濾過をなすために用いられるフィルタの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンク内に配される軽油用のフィルタ装置として、温度変化によって流動性の低下した軽油によりフィルタが目詰まりしたときにバイパスパイプによりこの軽油を吸引するようにしたものがある。(特許文献1参照)
【0003】
しかるに、かかるフィルタ装置は、流動性低下時にバイパスパイプを通じて吸引される軽油に対しては一切濾過をなさないものであった。また、バイパスパイプのパイプ口よりも燃料の液面レベルが低下した場合にはこのバイパスパイプを通じて燃料を吸引し得なくなるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭61−29966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、第一に、この種の燃料用フィルタにおいて、温度変化による燃料の流動性低下時にのみメインフィルタを通過させずに連通部より燃料流路に燃料を流入させる機能を備えたフィルタを簡素な構造をもって提供する点にある。また、第二に、このように連通部から受け入れられる燃料に対してもプレフィルタによる濾過を施すと共に、貯蔵されている燃料の液面レベルの低下に影響されずに連通部を通じた燃料の吸い上げを可能とする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、この発明にあっては、燃料用フィルタを、内部空間を燃料流路に連通させて用いられる袋状濾材に、袋内外の連通部を備えさせると共に、
この連通部を構成する対向位置にある内壁間の間隔を、通常は表面張力により燃料を連通部内に停滞させる寸法で、かつ、温度変化により流動性の低下した燃料により袋状濾材に目詰まりが生じたときにこの流動性の低下した燃料を袋状濾材内に流入可能とする寸法としているものとした。
【0007】
通常は燃料は燃料の停滞する連通部を通過することはなく袋状濾材を通過して燃料流路へ送られる。温度変化により燃料の流動性が低下した場合、かかる燃料により袋状濾材に目詰まりが生じると袋状濾材内は燃料の吸い込みにより負圧であるところこの袋状濾材内外の圧力差が著しく大きくなる。前記のように構成させた燃料用フィルタにあっては、このようになったときに連通部への燃料の停滞が解かれて、この連通部を通じて燃料を燃料流路に送ることができる。
【0008】
かかる連通部を、この連通部を構成する対向位置にある内壁間に亘る仕切り壁によって、複数の流路に分割させておけば、通常時における連通部を通じた袋状濾材内への燃料の入り込みをより生じ難くすることができる。
【0009】
また、連通部を構成する対向位置にある内壁間に亘る仕切り壁によって、この連通部における袋状濾材の袋外側の開口となる一次側開口と連通部における袋状濾材の袋内側の開口となる二次側開口とに亘る箇所を、蛇行状流路とさせておけば、通常時における連通部を通じた袋状濾材内への燃料の入り込みをより生じ難くすることができる。
【0010】
好ましくは、前記連通部は袋状濾材の外側からこの袋状濾材よりも粗く構成された外側濾材によって覆わせておく。袋状濾材の外側から連通部に組み合わされるカバー体を外側濾材として機能するようにしておけば、連通部の備えられた袋状濾材に必要最小の範囲で、外側濾材と同様の機能を持つ部分を適切に備えさせることができる。また、好ましくは、外側濾材は、袋状濾材を内側に納めた袋状をなすように構成させておく。
【0011】
通常は燃料は外側濾材をプレフィルタとし、袋状濾材をメインフィルタとして、袋状濾材の内部空間を通じて燃料流路へ送られる。温度変化により燃料の流動性が低下した場合、かかる燃料は粗く構成された外側濾材の通過時にこれに切り刻まれるようになって外側濾材の内側に入り込むが、このように入り込んだ燃料により袋状濾材に目詰まりが生じると袋状濾材内は燃料の吸い込みにより負圧であるところこの袋状濾材内外の圧力差が著しく大きくなる。好ましい態様にかかる燃料用フィルタにあっては、このようになったときに連通部への燃料の停滞が解かれて、外側濾材により細かく切り刻まれるようにされて外側濾材の内側に取り込まれた燃料をこの連通部を通じて燃料流路に送ることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明にかかる燃料用フィルタにあっては、連通部を構成する対向する内壁間の間隔を調整することで、温度変化による燃料の流動性低下時にのみメインフィルタを通過させずに連通部より燃料流路に燃料を流入させる機能を備えたフィルタを簡素な構造をもって提供することができる。また、外側濾材を備えさせておけば、このように連通部から受け入れられる燃料に対しても外側濾材による濾過を施すと共に、外側濾材が燃料に濡らされている限り、貯蔵されている燃料の液面レベルの低下に影響されずに、連通部を通じた燃料の吸い上げをなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】フィルタFの平面構成図である。
【図2】フィルタFの使用状態を示した断面構成図である。(図1におけるA−A線相当位置での断面構成図)
【図3】接続コネクタ3、内蔵パーツ4および雄連通部形成パーツ6の平面構成図である。
【図4】図3におけるB−B線断面図である。
【図5】接続コネクタ3、内蔵パーツ4および雄連通部形成パーツ6の斜視構成図である。
【図6】同要部破断斜視構成図である。
【図7】図1〜図6に示されるフィルタFの構成の一部を変更させたフィルタFの使用状態を示した断面構成図である。(図8におけるD−D線相当位置での断面構成図)
【図8】同平面構成図である。
【図9】同斜視構成図である。
【図10】カバー体7を取り外した状態の斜視構成図である。
【図11】図7に示される例の連通部2の第一変更例を示した横断面構成図((a図)図7におけるC−C線相当位置での断面構成図)と要部縦断面構成図(b図)である。
【図12】図7に示される例の連通部2の第二変更例を示した横断面構成図である。(図7におけるC−C線相当位置での断面構成図)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図6に基づいて、この発明を実施するための形態の一つについて説明する。なお、ここで図1はこの発明を適用して構成された燃料の濾過をなす装置、すなわち、フィルタFを上方から見て、図2はこのフィルタFを構成する外側濾材5の下面5eを燃料タンクTの内底面に接しさせたその使用状態を断面にして、図3〜図6はかかるフィルタFを構成する接続コネクタ3、内蔵パーツ4および雄連通部形成パーツ6をそれぞれ示している。
【0015】
この実施の形態にかかるフィルタFは、貯蔵されている、温度変化により流動性を低下させる性質を持った燃料を、吸い出し供給するシステムにおいて、この燃料の濾過をなすために用いられるものである。
【0016】
典型的には、かかるフィルタFは、自動車などの内燃機関に供給される燃料の濾過をなすために用いられる。この場合には、燃料タンクT内にある燃料はフューエルポンプにより吸い出されて燃料流路Pを通じて内燃機関に送られ、フィルタFは典型的には、かかる燃料流路Pの燃料タンクT側の末端あるいは燃料流路Pの途中に備えられて通過する燃料の濾過をなすために用いられる。
【0017】
図示の例では、かかるフィルタFを、燃料タンクT内に位置される燃料流路Pを構成する燃料吸い込み口Paを覆うように取り付けられて、燃料タンクTの底側に位置して、この燃料吸い込み口Paに吸い込まれる燃料の濾過をなすインタンク式燃料フィルタ(サクションフィルタFなどとも称される。)としている。また、図示の例では、かかるフィルタFは、軽油の流動性が大きく低下しない状況下では軽油の適切な濾過をなすと共に、軽油の流動性が大きく低下した状況下での燃料流路Pへの軽油の流入を妨げない機能を備えたものとなっている。軽油には低温時にワックス結晶が生じ、冬期においてはその流動性が大きく低下してゲル状化する。(ワックス化などと称される。)図示の構造を備えたフィルタFは、このように軽油の流動性が大きく低下して後述するメインフィルタ(袋状濾材1)に目詰まりが生じた場合に、かかる軽油の吸い込みを別ルート(連通部)で許容するようになっている。
【0018】
かかるフィルタFは、メインフィルタとなる袋状濾材1を備えている。そして、この袋状濾材1の内部空間1a、つまり、袋内空間を、燃料流路Pに連通させるように構成されている。
【0019】
図示の例では、袋状濾材1は、燃料流路Pへの接続コネクタ3を介して、その内部空間1aを燃料流路Pに連通させるように構成されている。図示の例では、かかる接続コネクタ3は、筒一端に外鍔3aを備えた筒状をなすように構成されている。図示の例では、袋状濾材1内には、短寸筒状体40と雌連通部形成パーツ41とを連接骨体42によって短寸筒状体40の筒軸を上下方向に沿わせるようにして連接させてなる内蔵パーツ4が納められている。この短寸筒状体40は筒上端と筒下端を共に開放させている。そして、図示の例では、接続コネクタ3の外鍔3aと内蔵パーツ4の短寸筒状体40の筒上端との間に、袋状濾材1と後述する外側濾材5とを挟み込ませた状態からこの外鍔3aと筒上端とを溶着などにより固着させることで、袋状濾材1に接続コネクタ3を接続させている。より具体的には、図示の例では、袋状濾材1は、細長く構成させたシート状濾材1bを、長さ方向略中程の位置で二つ折りにすると共に、折り辺1c以外の三辺に熱シール1dを施すことで形成されている。内蔵パーツ4はこのシート状濾材1bを二つ折りにする過程で折り辺1cを挟んだ上面1eと下面1fとの間に、この上面1eにおける折り辺1c側に形成された第一貫通孔1gに短寸筒状体40の筒内空間を連通させるようにして納められる。後述する外側濾材5も、細長く構成させたシート状濾材1bを、長さ方向略中程の位置で二つ折りにすると共に、折り辺5b以外の三辺に熱シール5cを施すことで形成されている。(図1)内蔵パーツ4を内蔵されると共に後述する雄連通部形成パーツ6を付設される袋状濾材1は、この外側濾材5を構成するシート状濾材1bを二つ折りにする過程で折り辺5bを挟んだ上面5dと下面5eとの間に、この上面5dに形成された貫通孔5fにその第一貫通孔1gを連通させるようにして納められる。このように袋状濾材1を納めた外側濾材5に対してその貫通孔5fの孔縁に接続コネクタ3の外鍔3aを密着させるようにして前記固着をなすことにより、フィルタFが形成されている。内蔵パーツ4の短寸筒状体40の筒下端には、その筒軸を巡る向きにおいて隣り合う間隔形成突起40aとの間に間隔を開けて複数の間隔形成突起40aが形成されており、この筒下端の直下位置にある袋状濾材1の一部が負圧により筒下端に張り付いて袋状濾材1の全体が濾過に寄与しなくなる事態の防止が図られている。
【0020】
袋状濾材1にはまた、前記燃料流路Pとの連通箇所と別の箇所に、袋内外の連通部2が形成されている。かかる連通部2は、この連通部2を構成する対向位置にある内壁2a間の間隔を、通常は表面張力により燃料を連通部2内に停滞させる寸法で、かつ、温度変化により流動性の低下した燃料により袋状濾材1に目詰まりが生じたときにこの流動性の低下した燃料を袋状濾材1内に流入可能とする寸法としている。また、この連通部2は、袋状濾材1よりも粗く構成された外側濾材5によって外側から覆われている。
【0021】
図示の例では、外側濾材5は袋状濾材1を袋内部に納める袋状をなすように構成されており、これにより前記連通部2を外側濾材5によって覆っている。すなわち、図示の例では、燃料は外側濾材5を通過した後、袋状濾材1を通過するようになっており、外側濾材5がプレフィルタとしての役割を果たすようになっている。また、かかる外側濾材5は、ゲル状化した軽油によって目詰まりを生じさせない粗さを持つように構成されている。すなわち、外側濾材5における微細な燃料の通過孔の孔径または平均孔径は、袋状濾材1の同通過孔の孔径または平均孔径よりも大きく、かつ、ゲル状化した軽油によって目詰まりを生じさせない大きさにしてある。かかる外側濾材5と袋状濾材1を共にメッシュ材とした場合、外側濾材5の通過孔の孔径は170〜500μmの範囲とするのが好ましく、袋状濾材1の通過孔の孔径は20〜150μmの範囲とするのが好ましい。かかる袋状濾材1および外側濾材5は押し出しメッシュ材、織物メッシュ材、不織布などにより構成させることができる。
【0022】
また、図示の例では、前記連通部2は、袋状濾材1を構成するシート状濾材1bの上面であって、前記第一貫通孔1gよりも前記折り辺1cから離れた箇所に形成された第二貫通孔1hを利用して構成されている。図示の例では、かかる連通部2は、かかる第二貫通孔1hを介して、雄連通部形成パーツ6と、雌連通部形成パーツ41とを組み合わせることで構成されている。
【0023】
より具体的には、図示の例では、内蔵パーツ4の雌連通部形成パーツ41は、板状基部41aと、この板状基部41aの上面に形成された前記連通部2の一方の内壁2aの内壁形成部41cと、連通部2における袋状濾材1の内部空間1a側の開口となる二次側開口41eとを備えている。かかる内壁形成部41cは、前記短寸筒状体40とこの雌連通部形成パーツ41とを結ぶ内蔵パーツ4の仮想の中心線xに直交する辺を四辺の一つとする仮想の四角形y(図3において二点鎖線で示される四角形)の輪郭に倣うように板状基部41a内に形成されている。内壁形成部41cは、かかる仮想の四角形yの四辺のうちの短寸筒状体40からもっとも離れた一辺ya側からこれと平行をなす他辺yb側に向けて次第に低まる傾斜上面41dを有している。かかる傾斜上面41dにおける前記一辺ya側は板状基部41aの上面41bから突き出され、前記他辺yb側は板状基部41aの上面41bよりも下方に位置されるようになっている。(図4)二次側開口41eは、かかる他辺ybに沿って、この他辺ybと内壁形成部41cの傾斜上面41dの最下端との間に形成されたスリットとなっている。また、この他辺ybと二次側開口41eとの間には上方を向いた受け面41fが形成されていると共に、傾斜上面41dの最上端の側方には前記一辺yaに沿ったはめ込み用溝41gが形成されており、かつ、この受け面41fとはめ込み用溝41gの溝底とが同じレベルに位置されるようになっている。(図4)一方、雄連通部形成パーツ6は、板状基部6aと、この板状基部6aの下面6bに形成された前記連通部2の他方の内壁2aの内壁形成部6cと、連通部2における袋状濾材1の外側の開口となる一次側開口6eとを備えている。かかる内壁形成部6cも、前記仮想の中心線xに直交する辺を四辺の一つとする前記仮想の四角形yの輪郭に倣うように板状基部6a内に形成されている。内壁形成部6cは、かかる仮想の四角形yの四辺のうちの短寸筒状体40からもっとも離れた一辺ya側からこれと平行をなす他辺yb側に向けて次第に低まる傾斜下面6dを有している。かかる傾斜下面6dにおける前記他辺yb側は板状基部6aの下面からもっとも突き出され、この他辺yb側から一辺ya側に向かうに連れて内壁形成部6cの板状基部6aの下面6bからの突き出し寸法が減少するようになっている。一次側開口6eは、かかる一辺yaに沿って形成されたスリットとなっている。また、この一次側開口6eにおける傾斜下面6d側のスリット縁と反対のスリット縁には、このスリット縁に亘って、下方に向けて突き出すはめ込み用突部6fが形成されていると共に、傾斜下面6dの最下端の側方には前記他辺ybに亘って被受け面6gが形成されている。
【0024】
そして、図示の例では、袋状濾材1に納められている内蔵パーツ4の雌連通部形成パーツ41に第二貫通孔1hを通じて雄連通部形成パーツ6を、傾斜上面41dと傾斜下面6dを向き合わせるようにして、前記受け面41fに被受け面6gが接し、かつ、前記はめ込み用溝41gにはめ込み用突部6fが入り込みきるように組み合わせることで、かかる傾斜上面41dと傾斜下面6dとの間に、通常は表面張力により燃料を連通部2内に停滞させ、かつ、温度変化により流動性の低下した燃料により袋状濾材1に目詰まりが生じたときにこの流動性の低下した燃料を袋状濾材1内に流入可能とする間隔を、一次側開口6eと二次側開口41eとに亘って形成させるようにしている。かかる間隔を、0.4mm〜0.5mmの範囲とした場合、少なくとも燃料が軽油のケースでは、所期の効果が得られた。袋状濾材1の第二貫通孔1hの孔縁は、このように組み合わされた雄連通部形成パーツ6の内壁形成部6cを巡る箇所にある板状基部6aの下面6bと、雌連通部形成パーツ41の内壁形成部41cを巡る箇所にある板状基部41aの上面41bとの間で挟み付けられる。
【0025】
通常は燃料は外側濾材5をプレフィルタとし、袋状濾材1をメインフィルタとして、袋状濾材1の内部空間1aを通じて燃料流路Pへ送られる。温度変化により燃料の流動性が低下した場合、かかる燃料は粗く構成された外側濾材5の通過時にこれに切り刻まれるようになって外側濾材5の内側に入り込むが、このように入り込んだ燃料により袋状濾材1に目詰まりが生じると袋状濾材1内は燃料の吸い込みにより負圧であるところこの袋状濾材1内外の圧力差が著しく大きくなる。前記のように構成させた燃料用フィルタFにあっては、このようになったときに連通部2への燃料の停滞が解かれて、外側濾材5により細かく切り刻まれるようにされて外側濾材5の内側に取り込まれた燃料をこの連通部2を通じて燃料流路Pに送ることができる。外側濾材5が燃料に濡らされている限り、貯蔵されている燃料の液面レベルの低下に影響されずに、連通部2を通じた燃料の吸い上げがなされる。
【0026】
図示の例では、かかる連通部2を一次側開口6eおよび二次側開口41eを共にスリットとし、両開口6e、41e間を前記表面張力による燃料の停滞を生じさせる間隔を開けて配される傾斜上面41d(内壁2a)と傾斜下面6d(内壁2a)とにより結んでいるが、このような燃料の停滞と流動性低下時の燃料の流入が可能な形状であれば、連通部2は傾斜している必要はなく、また、連通部2は、孔径、すなわち、直径方向にある両内壁2a、2a間の間隔を前記燃料の停滞を生じさせる間隔とした、単純な孔状でも構わない。
【0027】
次いで、図7〜図10に基づいて、この発明を実施するための形態の他の一つについて説明する。この図7〜図10に示される燃料用フィルタFは、図1〜図6に示される燃料用フィルタFの外側濾材5に代えて、この外側濾材5と同様に機能するカバー体7を備える点で図1〜図6に示される燃料用フィルタFと異なっている。また、内蔵パーツ4と接続コネクタ3とを一体化させている点で図1〜図6に示される燃料用フィルタFと異なっている。その余の点ではこの図7〜図10に示される燃料用フィルタFは、図1〜図6に示される燃料用フィルタFと実質的に同一である。(この実質的に同一の構成部分については、図7〜図10に図1〜図6で用いた符号と同じ符号を付す。)
【0028】
かかるカバー体7は、袋状濾材1の外側から連通部2に組み合わされるようになっている。図示の例では、かかるカバー体7は、雄連通部形成パーツ6の板状基部6aの外郭形状に倣った枠部7aを備える。雄連通部形成パーツ6の板状基部6aは平面視で方形状をなし、従ってこの枠部7aもこれに倣った方形状をなすように構成されている。かかる枠部7aの枠内空間7bは、この枠部7aの四つの辺のうちの対向する二辺間に架設される複数の桟体7d、7d…と、その余の対向する二辺間に架設される複数の桟体7d、7d…とにより構成される格子状体7cにより覆われている。そして、この例では、カバー体7の枠部7aの内側に雄連通部形成パーツ6をはめ入れてカバー体7と連通部2とを組み合わせるようになっている。そして、このように組み合わされるカバー体7の格子状体7cによって袋状濾材1の外側から連通部2が覆われるようになっている。すなわち、図示の例では、かかるカバー体7の格子状体7cが図1〜図6に示される例の外側濾材5として機能するようになっている。このようなカバー体7によれば、連通部2の備えられた袋状濾材1に必要最小の範囲で、外側濾材5と同様の機能を持つ部分を適切に備えさせることができる。
【0029】
また、図示の例では、かかるカバー体7は、接続コネクタ3に外嵌めされる短寸筒状体8に連接されている。かかる短寸筒状体8は、筒下端8bから筒上端8aに向かうに連れて次第に内径を小さくするように構成されている。また、カバー体7とこの短寸筒状体8とは、カバー体7の枠部7aの一辺と短寸筒状体8の筒下端8bとを連接片9で連接させることで一体化されている。一方、この例では、接続コネクタ3の上下端間に周回凸部3bが形成されており、短寸筒状体8の筒上端8aの内径がこの周回凸部3b位置での接続コネクタ3の外径よりもやや小さくなるようにしてある。これによりこの例では、短寸筒状体8の内側に接続コネクタ3をその上端側から入れ込ませる過程で、周回凸部3bにより短寸筒状体8の筒上端8aの内径を一旦撓み広げさせてこの周回凸部3bの下方へ筒上端8aを入り込ませた後のこの筒上端8aの撓み戻しにより、接続コネクタ3にワンタッチで短寸筒状体8を固定させ、このように固定される短寸筒状体8を介して連通部2上にカバー体7を安定的に位置づけできるようになっている。また、袋状濾材1の第一貫通孔1gの孔縁をこのように取り付けられる短寸筒状体8と接続コネクタ3と一体化された内蔵パーツ4との間で内外から挟み付けるようになっている。図示の例では、短寸筒状体8にはその筒上端8aにおいて開放して筒下端8b側に向かう割溝8cが形成されており、前記撓み変形がスムースになされるようになっている。典型的には、かかるカバー体7及び短寸筒状体8は、合成樹脂材料よりなる成型品として構成される。
【0030】
次いで、図11は、図7〜図10に示される燃料用フィルタFの連通部2を、この連通部2を構成する対向位置にある内壁2a、2a間に亘る仕切り壁2bによって、複数の流路2c、2c…に分割させた例を示している。この図11に示される例では、雄連結部形成パーツ6の傾斜下面6dに前記一次側開口6eから二次側開口41eに亘る直線状の上側リブ6hを隣り合う上側リブ6hとの間に間隔を開けて複数形成させると共に、雌連結部形成パーツ41の傾斜上面41dに前記一次側開口6eから二次側開口41eに亘る直線状の下側リブ41hを隣り合う下側リブ41hとの間に間隔を開けて複数形成させている。そして、両連結部形成パーツ6、41の組み合わせ状態において、上側リブ6hと下側リブ41hとが両者の間に流路2cとなる隙間を開けて隣り合うようにしてある。すなわち、前記傾斜上面41dと傾斜下面6dとの間の間隔と両リブ6h、41hの突きだし寸法とが一致するようになっており、これにより両リブ6h、41hが前記仕切り壁2bとして機能するようになっている。これにより、この図11に示される例にあっては、通常時における連通部2を通じた袋状濾材1内への燃料の入り込みがより生じ難くなっている。
【0031】
次いで、図12は、図7〜図10に示される燃料用フィルタFの連通部2を構成する対向位置にある内壁2a、2a間に亘る仕切り壁2bによって、この連通部2における袋状濾材1の袋外側の開口となる一次側開口6eと連通部2における袋状濾材1の袋内側の開口となる二次側開口41eとに亘る箇所を、蛇行状流路2dとした例を示している。この図12に示される例では、雄連結部形成パーツ6の傾斜下面6dに、前記一次側開口6eの両側にあってそれぞれスリット状をなすこの一次側開口6eに直交する向きに延びて二次側開口41eに至る仕切りリブ6jを形成させると共に、一方の仕切りリブ6jaに一端を一体に連接させて他方の仕切りリブ6jb側に延び且つ他方の仕切りリブ6jbとの間に蛇行状流路2dの屈曲箇所2eとなる隙間を残すように形成される上側リブ6hを、隣り合う上側リブ6hとの間に間隔を開けて複数形成させている。それと共に、雌連結部形成パーツ41の傾斜上面41dに上側リブ6hの間に蛇行状流路2dの直線状箇所となる隙間を残すように隣り合う上側リブ6h間に位置される複数の下側リブ41hを形成させている。そして、かかる下側リブ41hのリブ一端が前記他方の仕切りリブ6jbに接し、かつ、リブ他端と前記一方の仕切りリブ6jaとの間に蛇行状流路2dの屈曲箇所2eとなる隙間が残されるようにしている。すなわち、前記傾斜上面41dと傾斜下面6dとの間の間隔と各リブ6h、6j、41hの突きだし寸法とが一致するようになっており、これにより各リブ6h、6j、41hが前記仕切り壁2bとして機能するようになっている。これにより、この図12に示される例にあっても、通常時における連通部2を通じた袋状濾材1内への燃料の入り込みがより生じ難くなっている。
【符号の説明】
【0032】
P 燃料流路
1 袋状濾材
1a 内部空間
2 連通部
2a 内壁
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯蔵されている、温度変化により流動性を低下させる性質を持った燃料を、吸い出し供給するシステムにおいて、この燃料の濾過をなすために用いられるフィルタの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンク内に配される軽油用のフィルタ装置として、温度変化によって流動性の低下した軽油によりフィルタが目詰まりしたときにバイパスパイプによりこの軽油を吸引するようにしたものがある。(特許文献1参照)
【0003】
しかるに、かかるフィルタ装置は、流動性低下時にバイパスパイプを通じて吸引される軽油に対しては一切濾過をなさないものであった。また、バイパスパイプのパイプ口よりも燃料の液面レベルが低下した場合にはこのバイパスパイプを通じて燃料を吸引し得なくなるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭61−29966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、第一に、この種の燃料用フィルタにおいて、温度変化による燃料の流動性低下時にのみメインフィルタを通過させずに連通部より燃料流路に燃料を流入させる機能を備えたフィルタを簡素な構造をもって提供する点にある。また、第二に、このように連通部から受け入れられる燃料に対してもプレフィルタによる濾過を施すと共に、貯蔵されている燃料の液面レベルの低下に影響されずに連通部を通じた燃料の吸い上げを可能とする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、この発明にあっては、燃料用フィルタを、内部空間を燃料流路に連通させて用いられる袋状濾材に、袋内外の連通部を備えさせると共に、
この連通部を構成する対向位置にある内壁間の間隔を、通常は表面張力により燃料を連通部内に停滞させる寸法で、かつ、温度変化により流動性の低下した燃料により袋状濾材に目詰まりが生じたときにこの流動性の低下した燃料を袋状濾材内に流入可能とする寸法としているものとした。
【0007】
通常は燃料は燃料の停滞する連通部を通過することはなく袋状濾材を通過して燃料流路へ送られる。温度変化により燃料の流動性が低下した場合、かかる燃料により袋状濾材に目詰まりが生じると袋状濾材内は燃料の吸い込みにより負圧であるところこの袋状濾材内外の圧力差が著しく大きくなる。前記のように構成させた燃料用フィルタにあっては、このようになったときに連通部への燃料の停滞が解かれて、この連通部を通じて燃料を燃料流路に送ることができる。
【0008】
かかる連通部を、この連通部を構成する対向位置にある内壁間に亘る仕切り壁によって、複数の流路に分割させておけば、通常時における連通部を通じた袋状濾材内への燃料の入り込みをより生じ難くすることができる。
【0009】
また、連通部を構成する対向位置にある内壁間に亘る仕切り壁によって、この連通部における袋状濾材の袋外側の開口となる一次側開口と連通部における袋状濾材の袋内側の開口となる二次側開口とに亘る箇所を、蛇行状流路とさせておけば、通常時における連通部を通じた袋状濾材内への燃料の入り込みをより生じ難くすることができる。
【0010】
好ましくは、前記連通部は袋状濾材の外側からこの袋状濾材よりも粗く構成された外側濾材によって覆わせておく。袋状濾材の外側から連通部に組み合わされるカバー体を外側濾材として機能するようにしておけば、連通部の備えられた袋状濾材に必要最小の範囲で、外側濾材と同様の機能を持つ部分を適切に備えさせることができる。また、好ましくは、外側濾材は、袋状濾材を内側に納めた袋状をなすように構成させておく。
【0011】
通常は燃料は外側濾材をプレフィルタとし、袋状濾材をメインフィルタとして、袋状濾材の内部空間を通じて燃料流路へ送られる。温度変化により燃料の流動性が低下した場合、かかる燃料は粗く構成された外側濾材の通過時にこれに切り刻まれるようになって外側濾材の内側に入り込むが、このように入り込んだ燃料により袋状濾材に目詰まりが生じると袋状濾材内は燃料の吸い込みにより負圧であるところこの袋状濾材内外の圧力差が著しく大きくなる。好ましい態様にかかる燃料用フィルタにあっては、このようになったときに連通部への燃料の停滞が解かれて、外側濾材により細かく切り刻まれるようにされて外側濾材の内側に取り込まれた燃料をこの連通部を通じて燃料流路に送ることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明にかかる燃料用フィルタにあっては、連通部を構成する対向する内壁間の間隔を調整することで、温度変化による燃料の流動性低下時にのみメインフィルタを通過させずに連通部より燃料流路に燃料を流入させる機能を備えたフィルタを簡素な構造をもって提供することができる。また、外側濾材を備えさせておけば、このように連通部から受け入れられる燃料に対しても外側濾材による濾過を施すと共に、外側濾材が燃料に濡らされている限り、貯蔵されている燃料の液面レベルの低下に影響されずに、連通部を通じた燃料の吸い上げをなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】フィルタFの平面構成図である。
【図2】フィルタFの使用状態を示した断面構成図である。(図1におけるA−A線相当位置での断面構成図)
【図3】接続コネクタ3、内蔵パーツ4および雄連通部形成パーツ6の平面構成図である。
【図4】図3におけるB−B線断面図である。
【図5】接続コネクタ3、内蔵パーツ4および雄連通部形成パーツ6の斜視構成図である。
【図6】同要部破断斜視構成図である。
【図7】図1〜図6に示されるフィルタFの構成の一部を変更させたフィルタFの使用状態を示した断面構成図である。(図8におけるD−D線相当位置での断面構成図)
【図8】同平面構成図である。
【図9】同斜視構成図である。
【図10】カバー体7を取り外した状態の斜視構成図である。
【図11】図7に示される例の連通部2の第一変更例を示した横断面構成図((a図)図7におけるC−C線相当位置での断面構成図)と要部縦断面構成図(b図)である。
【図12】図7に示される例の連通部2の第二変更例を示した横断面構成図である。(図7におけるC−C線相当位置での断面構成図)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図6に基づいて、この発明を実施するための形態の一つについて説明する。なお、ここで図1はこの発明を適用して構成された燃料の濾過をなす装置、すなわち、フィルタFを上方から見て、図2はこのフィルタFを構成する外側濾材5の下面5eを燃料タンクTの内底面に接しさせたその使用状態を断面にして、図3〜図6はかかるフィルタFを構成する接続コネクタ3、内蔵パーツ4および雄連通部形成パーツ6をそれぞれ示している。
【0015】
この実施の形態にかかるフィルタFは、貯蔵されている、温度変化により流動性を低下させる性質を持った燃料を、吸い出し供給するシステムにおいて、この燃料の濾過をなすために用いられるものである。
【0016】
典型的には、かかるフィルタFは、自動車などの内燃機関に供給される燃料の濾過をなすために用いられる。この場合には、燃料タンクT内にある燃料はフューエルポンプにより吸い出されて燃料流路Pを通じて内燃機関に送られ、フィルタFは典型的には、かかる燃料流路Pの燃料タンクT側の末端あるいは燃料流路Pの途中に備えられて通過する燃料の濾過をなすために用いられる。
【0017】
図示の例では、かかるフィルタFを、燃料タンクT内に位置される燃料流路Pを構成する燃料吸い込み口Paを覆うように取り付けられて、燃料タンクTの底側に位置して、この燃料吸い込み口Paに吸い込まれる燃料の濾過をなすインタンク式燃料フィルタ(サクションフィルタFなどとも称される。)としている。また、図示の例では、かかるフィルタFは、軽油の流動性が大きく低下しない状況下では軽油の適切な濾過をなすと共に、軽油の流動性が大きく低下した状況下での燃料流路Pへの軽油の流入を妨げない機能を備えたものとなっている。軽油には低温時にワックス結晶が生じ、冬期においてはその流動性が大きく低下してゲル状化する。(ワックス化などと称される。)図示の構造を備えたフィルタFは、このように軽油の流動性が大きく低下して後述するメインフィルタ(袋状濾材1)に目詰まりが生じた場合に、かかる軽油の吸い込みを別ルート(連通部)で許容するようになっている。
【0018】
かかるフィルタFは、メインフィルタとなる袋状濾材1を備えている。そして、この袋状濾材1の内部空間1a、つまり、袋内空間を、燃料流路Pに連通させるように構成されている。
【0019】
図示の例では、袋状濾材1は、燃料流路Pへの接続コネクタ3を介して、その内部空間1aを燃料流路Pに連通させるように構成されている。図示の例では、かかる接続コネクタ3は、筒一端に外鍔3aを備えた筒状をなすように構成されている。図示の例では、袋状濾材1内には、短寸筒状体40と雌連通部形成パーツ41とを連接骨体42によって短寸筒状体40の筒軸を上下方向に沿わせるようにして連接させてなる内蔵パーツ4が納められている。この短寸筒状体40は筒上端と筒下端を共に開放させている。そして、図示の例では、接続コネクタ3の外鍔3aと内蔵パーツ4の短寸筒状体40の筒上端との間に、袋状濾材1と後述する外側濾材5とを挟み込ませた状態からこの外鍔3aと筒上端とを溶着などにより固着させることで、袋状濾材1に接続コネクタ3を接続させている。より具体的には、図示の例では、袋状濾材1は、細長く構成させたシート状濾材1bを、長さ方向略中程の位置で二つ折りにすると共に、折り辺1c以外の三辺に熱シール1dを施すことで形成されている。内蔵パーツ4はこのシート状濾材1bを二つ折りにする過程で折り辺1cを挟んだ上面1eと下面1fとの間に、この上面1eにおける折り辺1c側に形成された第一貫通孔1gに短寸筒状体40の筒内空間を連通させるようにして納められる。後述する外側濾材5も、細長く構成させたシート状濾材1bを、長さ方向略中程の位置で二つ折りにすると共に、折り辺5b以外の三辺に熱シール5cを施すことで形成されている。(図1)内蔵パーツ4を内蔵されると共に後述する雄連通部形成パーツ6を付設される袋状濾材1は、この外側濾材5を構成するシート状濾材1bを二つ折りにする過程で折り辺5bを挟んだ上面5dと下面5eとの間に、この上面5dに形成された貫通孔5fにその第一貫通孔1gを連通させるようにして納められる。このように袋状濾材1を納めた外側濾材5に対してその貫通孔5fの孔縁に接続コネクタ3の外鍔3aを密着させるようにして前記固着をなすことにより、フィルタFが形成されている。内蔵パーツ4の短寸筒状体40の筒下端には、その筒軸を巡る向きにおいて隣り合う間隔形成突起40aとの間に間隔を開けて複数の間隔形成突起40aが形成されており、この筒下端の直下位置にある袋状濾材1の一部が負圧により筒下端に張り付いて袋状濾材1の全体が濾過に寄与しなくなる事態の防止が図られている。
【0020】
袋状濾材1にはまた、前記燃料流路Pとの連通箇所と別の箇所に、袋内外の連通部2が形成されている。かかる連通部2は、この連通部2を構成する対向位置にある内壁2a間の間隔を、通常は表面張力により燃料を連通部2内に停滞させる寸法で、かつ、温度変化により流動性の低下した燃料により袋状濾材1に目詰まりが生じたときにこの流動性の低下した燃料を袋状濾材1内に流入可能とする寸法としている。また、この連通部2は、袋状濾材1よりも粗く構成された外側濾材5によって外側から覆われている。
【0021】
図示の例では、外側濾材5は袋状濾材1を袋内部に納める袋状をなすように構成されており、これにより前記連通部2を外側濾材5によって覆っている。すなわち、図示の例では、燃料は外側濾材5を通過した後、袋状濾材1を通過するようになっており、外側濾材5がプレフィルタとしての役割を果たすようになっている。また、かかる外側濾材5は、ゲル状化した軽油によって目詰まりを生じさせない粗さを持つように構成されている。すなわち、外側濾材5における微細な燃料の通過孔の孔径または平均孔径は、袋状濾材1の同通過孔の孔径または平均孔径よりも大きく、かつ、ゲル状化した軽油によって目詰まりを生じさせない大きさにしてある。かかる外側濾材5と袋状濾材1を共にメッシュ材とした場合、外側濾材5の通過孔の孔径は170〜500μmの範囲とするのが好ましく、袋状濾材1の通過孔の孔径は20〜150μmの範囲とするのが好ましい。かかる袋状濾材1および外側濾材5は押し出しメッシュ材、織物メッシュ材、不織布などにより構成させることができる。
【0022】
また、図示の例では、前記連通部2は、袋状濾材1を構成するシート状濾材1bの上面であって、前記第一貫通孔1gよりも前記折り辺1cから離れた箇所に形成された第二貫通孔1hを利用して構成されている。図示の例では、かかる連通部2は、かかる第二貫通孔1hを介して、雄連通部形成パーツ6と、雌連通部形成パーツ41とを組み合わせることで構成されている。
【0023】
より具体的には、図示の例では、内蔵パーツ4の雌連通部形成パーツ41は、板状基部41aと、この板状基部41aの上面に形成された前記連通部2の一方の内壁2aの内壁形成部41cと、連通部2における袋状濾材1の内部空間1a側の開口となる二次側開口41eとを備えている。かかる内壁形成部41cは、前記短寸筒状体40とこの雌連通部形成パーツ41とを結ぶ内蔵パーツ4の仮想の中心線xに直交する辺を四辺の一つとする仮想の四角形y(図3において二点鎖線で示される四角形)の輪郭に倣うように板状基部41a内に形成されている。内壁形成部41cは、かかる仮想の四角形yの四辺のうちの短寸筒状体40からもっとも離れた一辺ya側からこれと平行をなす他辺yb側に向けて次第に低まる傾斜上面41dを有している。かかる傾斜上面41dにおける前記一辺ya側は板状基部41aの上面41bから突き出され、前記他辺yb側は板状基部41aの上面41bよりも下方に位置されるようになっている。(図4)二次側開口41eは、かかる他辺ybに沿って、この他辺ybと内壁形成部41cの傾斜上面41dの最下端との間に形成されたスリットとなっている。また、この他辺ybと二次側開口41eとの間には上方を向いた受け面41fが形成されていると共に、傾斜上面41dの最上端の側方には前記一辺yaに沿ったはめ込み用溝41gが形成されており、かつ、この受け面41fとはめ込み用溝41gの溝底とが同じレベルに位置されるようになっている。(図4)一方、雄連通部形成パーツ6は、板状基部6aと、この板状基部6aの下面6bに形成された前記連通部2の他方の内壁2aの内壁形成部6cと、連通部2における袋状濾材1の外側の開口となる一次側開口6eとを備えている。かかる内壁形成部6cも、前記仮想の中心線xに直交する辺を四辺の一つとする前記仮想の四角形yの輪郭に倣うように板状基部6a内に形成されている。内壁形成部6cは、かかる仮想の四角形yの四辺のうちの短寸筒状体40からもっとも離れた一辺ya側からこれと平行をなす他辺yb側に向けて次第に低まる傾斜下面6dを有している。かかる傾斜下面6dにおける前記他辺yb側は板状基部6aの下面からもっとも突き出され、この他辺yb側から一辺ya側に向かうに連れて内壁形成部6cの板状基部6aの下面6bからの突き出し寸法が減少するようになっている。一次側開口6eは、かかる一辺yaに沿って形成されたスリットとなっている。また、この一次側開口6eにおける傾斜下面6d側のスリット縁と反対のスリット縁には、このスリット縁に亘って、下方に向けて突き出すはめ込み用突部6fが形成されていると共に、傾斜下面6dの最下端の側方には前記他辺ybに亘って被受け面6gが形成されている。
【0024】
そして、図示の例では、袋状濾材1に納められている内蔵パーツ4の雌連通部形成パーツ41に第二貫通孔1hを通じて雄連通部形成パーツ6を、傾斜上面41dと傾斜下面6dを向き合わせるようにして、前記受け面41fに被受け面6gが接し、かつ、前記はめ込み用溝41gにはめ込み用突部6fが入り込みきるように組み合わせることで、かかる傾斜上面41dと傾斜下面6dとの間に、通常は表面張力により燃料を連通部2内に停滞させ、かつ、温度変化により流動性の低下した燃料により袋状濾材1に目詰まりが生じたときにこの流動性の低下した燃料を袋状濾材1内に流入可能とする間隔を、一次側開口6eと二次側開口41eとに亘って形成させるようにしている。かかる間隔を、0.4mm〜0.5mmの範囲とした場合、少なくとも燃料が軽油のケースでは、所期の効果が得られた。袋状濾材1の第二貫通孔1hの孔縁は、このように組み合わされた雄連通部形成パーツ6の内壁形成部6cを巡る箇所にある板状基部6aの下面6bと、雌連通部形成パーツ41の内壁形成部41cを巡る箇所にある板状基部41aの上面41bとの間で挟み付けられる。
【0025】
通常は燃料は外側濾材5をプレフィルタとし、袋状濾材1をメインフィルタとして、袋状濾材1の内部空間1aを通じて燃料流路Pへ送られる。温度変化により燃料の流動性が低下した場合、かかる燃料は粗く構成された外側濾材5の通過時にこれに切り刻まれるようになって外側濾材5の内側に入り込むが、このように入り込んだ燃料により袋状濾材1に目詰まりが生じると袋状濾材1内は燃料の吸い込みにより負圧であるところこの袋状濾材1内外の圧力差が著しく大きくなる。前記のように構成させた燃料用フィルタFにあっては、このようになったときに連通部2への燃料の停滞が解かれて、外側濾材5により細かく切り刻まれるようにされて外側濾材5の内側に取り込まれた燃料をこの連通部2を通じて燃料流路Pに送ることができる。外側濾材5が燃料に濡らされている限り、貯蔵されている燃料の液面レベルの低下に影響されずに、連通部2を通じた燃料の吸い上げがなされる。
【0026】
図示の例では、かかる連通部2を一次側開口6eおよび二次側開口41eを共にスリットとし、両開口6e、41e間を前記表面張力による燃料の停滞を生じさせる間隔を開けて配される傾斜上面41d(内壁2a)と傾斜下面6d(内壁2a)とにより結んでいるが、このような燃料の停滞と流動性低下時の燃料の流入が可能な形状であれば、連通部2は傾斜している必要はなく、また、連通部2は、孔径、すなわち、直径方向にある両内壁2a、2a間の間隔を前記燃料の停滞を生じさせる間隔とした、単純な孔状でも構わない。
【0027】
次いで、図7〜図10に基づいて、この発明を実施するための形態の他の一つについて説明する。この図7〜図10に示される燃料用フィルタFは、図1〜図6に示される燃料用フィルタFの外側濾材5に代えて、この外側濾材5と同様に機能するカバー体7を備える点で図1〜図6に示される燃料用フィルタFと異なっている。また、内蔵パーツ4と接続コネクタ3とを一体化させている点で図1〜図6に示される燃料用フィルタFと異なっている。その余の点ではこの図7〜図10に示される燃料用フィルタFは、図1〜図6に示される燃料用フィルタFと実質的に同一である。(この実質的に同一の構成部分については、図7〜図10に図1〜図6で用いた符号と同じ符号を付す。)
【0028】
かかるカバー体7は、袋状濾材1の外側から連通部2に組み合わされるようになっている。図示の例では、かかるカバー体7は、雄連通部形成パーツ6の板状基部6aの外郭形状に倣った枠部7aを備える。雄連通部形成パーツ6の板状基部6aは平面視で方形状をなし、従ってこの枠部7aもこれに倣った方形状をなすように構成されている。かかる枠部7aの枠内空間7bは、この枠部7aの四つの辺のうちの対向する二辺間に架設される複数の桟体7d、7d…と、その余の対向する二辺間に架設される複数の桟体7d、7d…とにより構成される格子状体7cにより覆われている。そして、この例では、カバー体7の枠部7aの内側に雄連通部形成パーツ6をはめ入れてカバー体7と連通部2とを組み合わせるようになっている。そして、このように組み合わされるカバー体7の格子状体7cによって袋状濾材1の外側から連通部2が覆われるようになっている。すなわち、図示の例では、かかるカバー体7の格子状体7cが図1〜図6に示される例の外側濾材5として機能するようになっている。このようなカバー体7によれば、連通部2の備えられた袋状濾材1に必要最小の範囲で、外側濾材5と同様の機能を持つ部分を適切に備えさせることができる。
【0029】
また、図示の例では、かかるカバー体7は、接続コネクタ3に外嵌めされる短寸筒状体8に連接されている。かかる短寸筒状体8は、筒下端8bから筒上端8aに向かうに連れて次第に内径を小さくするように構成されている。また、カバー体7とこの短寸筒状体8とは、カバー体7の枠部7aの一辺と短寸筒状体8の筒下端8bとを連接片9で連接させることで一体化されている。一方、この例では、接続コネクタ3の上下端間に周回凸部3bが形成されており、短寸筒状体8の筒上端8aの内径がこの周回凸部3b位置での接続コネクタ3の外径よりもやや小さくなるようにしてある。これによりこの例では、短寸筒状体8の内側に接続コネクタ3をその上端側から入れ込ませる過程で、周回凸部3bにより短寸筒状体8の筒上端8aの内径を一旦撓み広げさせてこの周回凸部3bの下方へ筒上端8aを入り込ませた後のこの筒上端8aの撓み戻しにより、接続コネクタ3にワンタッチで短寸筒状体8を固定させ、このように固定される短寸筒状体8を介して連通部2上にカバー体7を安定的に位置づけできるようになっている。また、袋状濾材1の第一貫通孔1gの孔縁をこのように取り付けられる短寸筒状体8と接続コネクタ3と一体化された内蔵パーツ4との間で内外から挟み付けるようになっている。図示の例では、短寸筒状体8にはその筒上端8aにおいて開放して筒下端8b側に向かう割溝8cが形成されており、前記撓み変形がスムースになされるようになっている。典型的には、かかるカバー体7及び短寸筒状体8は、合成樹脂材料よりなる成型品として構成される。
【0030】
次いで、図11は、図7〜図10に示される燃料用フィルタFの連通部2を、この連通部2を構成する対向位置にある内壁2a、2a間に亘る仕切り壁2bによって、複数の流路2c、2c…に分割させた例を示している。この図11に示される例では、雄連結部形成パーツ6の傾斜下面6dに前記一次側開口6eから二次側開口41eに亘る直線状の上側リブ6hを隣り合う上側リブ6hとの間に間隔を開けて複数形成させると共に、雌連結部形成パーツ41の傾斜上面41dに前記一次側開口6eから二次側開口41eに亘る直線状の下側リブ41hを隣り合う下側リブ41hとの間に間隔を開けて複数形成させている。そして、両連結部形成パーツ6、41の組み合わせ状態において、上側リブ6hと下側リブ41hとが両者の間に流路2cとなる隙間を開けて隣り合うようにしてある。すなわち、前記傾斜上面41dと傾斜下面6dとの間の間隔と両リブ6h、41hの突きだし寸法とが一致するようになっており、これにより両リブ6h、41hが前記仕切り壁2bとして機能するようになっている。これにより、この図11に示される例にあっては、通常時における連通部2を通じた袋状濾材1内への燃料の入り込みがより生じ難くなっている。
【0031】
次いで、図12は、図7〜図10に示される燃料用フィルタFの連通部2を構成する対向位置にある内壁2a、2a間に亘る仕切り壁2bによって、この連通部2における袋状濾材1の袋外側の開口となる一次側開口6eと連通部2における袋状濾材1の袋内側の開口となる二次側開口41eとに亘る箇所を、蛇行状流路2dとした例を示している。この図12に示される例では、雄連結部形成パーツ6の傾斜下面6dに、前記一次側開口6eの両側にあってそれぞれスリット状をなすこの一次側開口6eに直交する向きに延びて二次側開口41eに至る仕切りリブ6jを形成させると共に、一方の仕切りリブ6jaに一端を一体に連接させて他方の仕切りリブ6jb側に延び且つ他方の仕切りリブ6jbとの間に蛇行状流路2dの屈曲箇所2eとなる隙間を残すように形成される上側リブ6hを、隣り合う上側リブ6hとの間に間隔を開けて複数形成させている。それと共に、雌連結部形成パーツ41の傾斜上面41dに上側リブ6hの間に蛇行状流路2dの直線状箇所となる隙間を残すように隣り合う上側リブ6h間に位置される複数の下側リブ41hを形成させている。そして、かかる下側リブ41hのリブ一端が前記他方の仕切りリブ6jbに接し、かつ、リブ他端と前記一方の仕切りリブ6jaとの間に蛇行状流路2dの屈曲箇所2eとなる隙間が残されるようにしている。すなわち、前記傾斜上面41dと傾斜下面6dとの間の間隔と各リブ6h、6j、41hの突きだし寸法とが一致するようになっており、これにより各リブ6h、6j、41hが前記仕切り壁2bとして機能するようになっている。これにより、この図12に示される例にあっても、通常時における連通部2を通じた袋状濾材1内への燃料の入り込みがより生じ難くなっている。
【符号の説明】
【0032】
P 燃料流路
1 袋状濾材
1a 内部空間
2 連通部
2a 内壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を燃料流路に連通させて用いられる袋状濾材に、袋内外の連通部を備えさせると共に、
この連通部を構成する対向位置にある内壁間の間隔が、通常は表面張力により燃料を連通部内に停滞させる寸法で、かつ、温度変化により流動性の低下した燃料により袋状濾材に目詰まりが生じたときにこの流動性の低下した燃料を袋状濾材内に流入可能とする寸法となっていることを特徴とする燃料用フィルタ。
【請求項2】
連通部が、この連通部を構成する対向位置にある内壁間に亘る仕切り壁によって、複数の流路に分割されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料用フィルタ。
【請求項3】
連通部を構成する対向位置にある内壁間に亘る仕切り壁によって、この連通部における袋状濾材の袋外側の開口となる一次側開口と連通部における袋状濾材の袋内側の開口となる二次側開口とに亘る箇所が、蛇行状流路となっていることを特徴とする請求項1に記載の燃料用フィルタ装置。
【請求項4】
袋状濾材の外側から連通部をこの袋状濾材よりも粗く構成された外側濾材によって覆わせてなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の燃料用フィルタ。
【請求項5】
外側濾材が、袋状濾材を内側に納めた袋状をなすように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の燃料用フィルタ。
【請求項6】
袋状濾材の外側から連通部に組み合わされるカバー体が外側濾材として機能するようになっていることを特徴とする請求項4に記載の燃料用フィルタ。
【請求項1】
内部空間を燃料流路に連通させて用いられる袋状濾材に、袋内外の連通部を備えさせると共に、
この連通部を構成する対向位置にある内壁間の間隔が、通常は表面張力により燃料を連通部内に停滞させる寸法で、かつ、温度変化により流動性の低下した燃料により袋状濾材に目詰まりが生じたときにこの流動性の低下した燃料を袋状濾材内に流入可能とする寸法となっていることを特徴とする燃料用フィルタ。
【請求項2】
連通部が、この連通部を構成する対向位置にある内壁間に亘る仕切り壁によって、複数の流路に分割されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料用フィルタ。
【請求項3】
連通部を構成する対向位置にある内壁間に亘る仕切り壁によって、この連通部における袋状濾材の袋外側の開口となる一次側開口と連通部における袋状濾材の袋内側の開口となる二次側開口とに亘る箇所が、蛇行状流路となっていることを特徴とする請求項1に記載の燃料用フィルタ装置。
【請求項4】
袋状濾材の外側から連通部をこの袋状濾材よりも粗く構成された外側濾材によって覆わせてなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の燃料用フィルタ。
【請求項5】
外側濾材が、袋状濾材を内側に納めた袋状をなすように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の燃料用フィルタ。
【請求項6】
袋状濾材の外側から連通部に組み合わされるカバー体が外側濾材として機能するようになっていることを特徴とする請求項4に記載の燃料用フィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−84753(P2010−84753A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5623(P2009−5623)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
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