説明

燃料積込装置

【課題】液化ガス燃料またはガス燃料が積み込まれる船舶の側に、ガス危険区域が指定されないようにすることができて、船舶の側における安全管理を徹底することができる燃料積込装置を提供すること。
【解決手段】液化ガス燃料またはガス燃料を、船舶2に搭載された貯蔵タンクに積み込むまたは、内燃機関へ供給する燃料積込装置1であって、一端に接続具11が設けられ、他端が前記貯蔵タンク、または前記内燃機関に接続されて、一端部が前記船舶2に対して伸縮するように構成されたバンカリングライン3を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス燃料またはガス燃料を、客船等の船舶に搭載された貯蔵タンクに積み込む、または(燃料系統補機を含む)内燃機関へ供給する燃料積込装置(バンカリング装置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LNG(液化ガス燃料)を海洋船(船舶)に搭載されたLNG貯蔵タンクに積み込む燃料積込装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2011−503463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された燃料積込装置では、海洋船1に設けられたバンカーステーション11内において、入口パイプ12の末端に設けられたフランジと、バンカリング接続ライン103の末端に設けられたフランジとが、接続されるようになっている。
ここで、特許文献1に開示された燃料積込装置を、例えば、図7に示すような客船(船舶)71に適用した場合、客船71のバンカーステーション72内において、入口パイプ73の末端に設けられたフランジ74と、バンカリング接続ライン75の末端に設けられたフランジ76とが、接続されることになる。
【0005】
そして、特許文献1に開示された燃料積込装置を、例えば、図7に示すような客船71に適用した場合には、バンカーステーション72の開口77の周囲4.5mがガス危険区域78に指定され、このガス危険区域78内においては、発火源となりうる手段、行為が厳しく禁じられる区画という扱いを受けることになる。
また、図7に示す客船71が、図7および図8に示すようなベントライン(ガス燃料により駆動されるガスエンジン81(図8参照)の配管82(図8参照)内等に残るガス燃料を、窒素ガス等でパージしてベントポスト83(図7参照)を介して大気開放するライン)84を備えている場合には、ベントポスト83の周囲が直径20mの範囲でガス危険区域85(図7参照)に指定され、このガス危険区域85内においては、発火源となりうる手段、行為が厳しく禁じられる区画という扱いを受けることになる。
【0006】
そのため、特許文献1に開示された燃料積込装置を、図7に示すような客船71に適用した場合には、ガス危険区域78内において(ベントライン84を備えている場合には、ガス危険区域85内においても)乗客が喫煙等着火源を供する行為をするおそれがあり、ガス危険区域78内における安全管理を徹底することができなくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、液化ガス燃料またはガス燃料が積み込まれる船舶の側に、ガス危険区域が指定されないようにすることができて、船舶の側における安全管理を徹底することができる燃料積込装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る燃料積込装置は、液化ガス燃料またはガス燃料を、船舶に搭載された貯蔵タンクに積み込む、または内燃機関へ供給する燃料積込装置であって、一端に接続具が設けられ、他端が前記貯蔵タンクまたは前記内燃機関に接続されて、一端部が前記船舶に対して伸縮するように構成されたバンカリングラインを備えている。
【0009】
本発明に係る燃料積込装置によれば、燃料積込時、岸壁、あるいは岸壁において船舶に横付けされたタンクローリ、もしくは水面(海面)において船舶に横付けされたバンカー船等に設置された貯蔵設備から延びるバンカー接続ラインの末端(一端)に設けられたフランジやカプラ等の接続具に接続されるバンカリングラインの接続具が、例えば、船舶の舷側から船幅方向外側に向かって水平方向に10m離れた岸壁上に位置することになる。
これにより、岸壁、あるいは岸壁において船舶に横付けされたタンクローリ、もしくは水面(海面)において船舶に横付けされたバンカー船等に設置された貯蔵設備から延びるバンカー接続ラインの末端(一端)に設けられた接続具と、バンカリングラインの接続具との接続位置およびこの接続位置の周囲に指定されるガス危険区域を岸壁上にもっていくことができる。すなわち、液化ガス燃料またはガス燃料が積み込まれる船舶の側に、ガス危険区域が指定されないようにすることができて、船舶の側における安全管理を徹底することができる。
【0010】
上記燃料積込装置において、一端に接続具が設けられ、他端が、前記液化ガス燃料またはガス燃料を燃料として駆動される内燃機関の配管に接続されて、不活性ガスでパージされた前記配管内に残る前記ガス燃料を前記船舶の外に導くパージラインを備えているとさらに好適である。
【0011】
このような燃料積込装置によれば、ガス燃料により駆動される内燃機関(例えば、ガスエンジン)の配管内に残るガス燃料の濃度が、爆発下限界を下回るように窒素ガス等の不活性ガスによりパージされることになる。
これにより、内燃機関の配管内に残ったガス燃料を船外に排出する際、船上にガス危険区画が発生することを防止することができ、船舶の安全性をより一層向上させることができる。
【0012】
上記燃料積込装置において、前記パージラインの途中に、前記ガス燃料を吸着する吸着材が充填されたガス吸着塔が設けられているとさらに好適である。
【0013】
このような燃料積込装置によれば、燃料の積み込み(バンカリング)を行わない港や泊地に停泊して、内燃機関の配管内に残るガス燃料を窒素ガス等の不活性ガスでパージする際、あるいは燃料積込時でも、岸壁、あるいは岸壁において船舶に横付けされたタンクローリ、もしくは水面(海面)において船舶に横付けされたバンカー船等にガス処理設備が設置されていない場合に、ガス燃料により駆動される内燃機関の配管内に残るガス燃料を窒素ガス等の不活性ガスによりパージされる際、可燃成分を吸着塔に吸着することで可燃性ガスの船上での排出を防ぐことができる。
これにより、内燃機関の配管内に残ったガス燃料を船外へ排出する際、船上にガス危険区画が発生することを防止でき、船舶の安全性をより一層向上させることができる。
【0014】
上記燃料積込装置において、前記パージラインの一端部が、前記船舶に対して伸縮するように構成されているとさらに好適である。
【0015】
このような燃料積込装置によれば、岸壁に設置されたガス処理設備、あるいは岸壁において船舶に横付けされたタンクローリに搭載されたガス処理設備、もしくは水面(海面)において船舶に横付けされたバンカー船に搭載されたガス処理設備等から延びるパージ接続ラインの末端(一端)に設けられたフランジやカプラ等の接続具に接続されるパージラインの接続具が、例えば、船舶の舷側から船幅方向外側に向かって水平方向に10m離れた岸壁上に位置することになる。
これにより、岸壁に設置されたガス処理設備、あるいは岸壁において船舶に横付けされたタンクローリに搭載されたガス処理設備、もしくは水面(海面)において船舶に横付けされたバンカー船に搭載されたガス処理設備等から延びるパージ接続ラインの末端(一端)に設けられたフランジやカプラ等の接続具と、パージラインの接続具との接続位置およびこの接続位置の周囲に指定されるガス危険区域を岸壁上にもっていくことができる。すなわち、液化ガス燃料またはガス燃料が積み込まれる船舶の側に、ガス危険区域が指定されないようにすることができて、船舶の側における安全管理を徹底することができる。
【0016】
本発明に係る船舶は、上記いずれかの燃料積込装置を具備している。
【0017】
本発明に係る船舶によれば、燃料積込時、岸壁、あるいは岸壁において船舶に横付けされたタンクローリ、もしくは水面(海面)において船舶に横付けされたバンカー船等に設置された貯蔵設備から延びるバンカー接続ラインの末端(一端)に設けられたフランジやカプラ等の接続具に接続されるバンカリングラインの接続具が、例えば、船舶の舷側から船幅方向外側に向かって水平方向に10m離れた岸壁上に位置することになる。
これにより、岸壁、あるいは岸壁において船舶に横付けされたタンクローリ、もしくは水面(海面)において船舶に横付けされたバンカー船等に設置された貯蔵設備から延びるバンカー接続ラインの末端(一端)に設けられた接続具と、バンカリングラインの接続具との接続位置およびこの接続位置の周囲に指定されるガス危険区域を岸壁上にもっていくことができる。すなわち、液化ガス燃料またはガス燃料が積み込まれる船舶の側に、ガス危険区域が指定されないようにすることができて、船舶の側における安全管理を徹底することができる。
【0018】
上記船舶において、前記バンカリングラインの一端部、および前記パージラインの一端部が、前記船舶の舷側に設けられたバンカーステーション内に配置されているとさらに好適である。
【0019】
このような船舶によれば、バンカリングラインの一端部、およびパージラインの一端部を、船舶の舷側に設けられた(一箇所あるいは二箇所の)バンカーステーション内に集約することができ、船舶の側における安全管理をさらに徹底することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る燃料積込装置よれば、液化ガス燃料またはガス燃料が積み込まれる船舶の側に、ガス危険区域が指定されないようにすることができて、船舶の側における安全管理を徹底することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料積込装置を客船に適用した場合の概略構成図であって、燃料積込時の状態を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る燃料積込装置を客船に適用した場合の概略構成図であって、航海中あるいは停泊中等の燃料積込時でない状態を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る燃料積込装置を客船に適用した場合のパージライン(返送ライン)の要部を示す図であって、舶用ガス燃料主機関または発電機関設備の概略構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る燃料積込装置を客船に適用した場合のパージライン(返送ライン)の要部を示す図であって、舶用ガス燃料主機関または発電機関設備の概略構成図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る燃料積込装置を客船に適用した場合の概略構成図であって、燃料積込時の状態を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る燃料積込装置を客船に適用した場合の概略構成図であって、航海中あるいは停泊中等の燃料積込時でない状態を示す図である。
【図7】客船に搭載された従来の燃料積込装置の概略構成図であって、燃料積込時の状態を示す図である。
【図8】客船に搭載された従来のパージラインの要部を示す図であって、舶用ガス燃料主機関または発電機関設備の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る燃料積込装置について、図1から図3を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る燃料積込装置を客船に適用した場合の概略構成図であって、燃料積込時の状態を示す図、図2は本実施形態に係る燃料積込装置を客船に適用した場合の概略構成図であって、航海中あるいは停泊中等の燃料積込時でない状態を示す図、図3は本実施形態に係る燃料積込装置を客船に適用した場合のパージライン(返送ライン)の要部を示す系統図である。
【0023】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る燃料積込装置1は、液化ガス燃料またはガス燃料を、客船(船舶)2に搭載された貯蔵タンク(図示せず)に積み込む装置であり、バンカリングライン3と、パージライン4とを備えている。
【0024】
バンカリングライン3は、末端(一端)にフランジやカプラ等の接続具11が設けられ、基端(他端)が上記貯蔵タンクに接続されて、岸壁5(あるいは岸壁5において客船2に横付けされた図示しないタンクローリ、もしくは水面(海面)7において客船2に横付けされた図示しないバンカー船等)に設置された貯蔵設備6から延びるバンカー接続ライン31に接続され、上記貯蔵タンクに液化ガス燃料またはガス燃料を補給する系統である。
また、バンカリングライン3の末端部は、燃料積込時に岸壁5上に延び(図1参照)、航海中あるいは停泊中等の燃料積込時でない時は、客船2の、例えば、舷側に設けられたバンカーステーション12内に収容される(図2参照)ローディングアーム13を構成している。
【0025】
パージライン4は、末端(一端)にフランジやカプラ等の接続具21が設けられ、基端(他端)が、図3に示すガスエンジン22の配管23等に接続されて、窒素ガス等の不活性ガスでパージされたガスエンジン22の配管23内等に残るガス燃料を船外に導く(排出する)系統である。
また、パージライン4の末端部は、燃料積込時(あるいはパージ時)に岸壁5上に延び(図1および図3参照)、航海中あるいは停泊中等の燃料積込時(あるいはパージ時)でない時には、客船2の、例えば、舷側に設けられたバンカーステーション12内に収容される(図2参照)ローディングアーム24を構成している。
【0026】
なお、燃料積込時、接続具11は、岸壁5(あるいは岸壁5において客船2に横付けされた図示しないタンクローリ、もしくは水面(海面)7において客船2に横付けされた図示しないバンカー船等)に設置された貯蔵設備6から延びるバンカー接続ライン31の末端(一端)に設けられたフランジやカプラ等の接続具32に接続される。
また、燃料積込時(あるいはパージ時)、接続具21は、岸壁5に設置された図示しないガス処理設備(あるいは岸壁5において客船2に横付けされた図示しないタンクローリに搭載されたガス処理設備、もしくは水面(海面)7において客船2に横付けされた図示しないバンカー船に搭載されたガス処理設備等)から延びるパージ接続ライン33の末端(一端)に設けられたフランジやカプラ等の接続具34に接続される。
なお、燃料ガスは、客船(船舶)2に搭載された貯蔵タンク(図示せず)に供給されてもよいし、または(燃料系統補機を含む)内燃機関へ供給されてもよい。
【0027】
さらに、本実施形態では、パージ接続ライン33の途中にガス検知器35が設けられており、このガス検知器35で検知されるガス燃料の濃度が、所定の値を下回るまで(例えば、蒸気濃度が空気中における燃焼限界の下限の30%未満、または個々の設備配置に応じて主管庁が承認する別の制限値未満となるまで)、あるいはガス検知器35でガス燃料が検知されなくなるまでパージされる。
【0028】
本実施形態に係る燃料積込装置1および燃料積込装置1を搭載した客船2によれば、燃料積込時、岸壁5(あるいは岸壁5において客船2に横付けされた図示しないタンクローリ、もしくは水面(海面)7において客船2に横付けされた図示しないバンカー船等)に設置された貯蔵設備6から延びるバンカー接続ライン31の末端(一端)に設けられたフランジやカプラ等の接続具32に接続されるバンカリングライン3の接続具11が、例えば、図3に符号Lで示すように、客船2の舷側から船幅方向外側に向かって水平方向に10m離れた岸壁上に位置することになる。
これにより、岸壁5(あるいは岸壁5において客船2に横付けされた図示しないタンクローリ、もしくは水面(海面)7において客船2に横付けされた図示しないバンカー船等)に設置された貯蔵設備6から延びるバンカー接続ライン31の末端(一端)に設けられた接続具32と、バンカリングライン3の接続具11との接続位置およびこの接続位置の周囲に指定されるガス危険区域を岸壁5上にもっていくことができる。すなわち、液化ガス燃料またはガス燃料が積み込まれる客船2の側に、ガス危険区域が指定されないようにすることができて、客船2の側における安全管理を徹底することができる。
【0029】
また、本実施形態に係る燃料積込装置1および燃料積込装置1を搭載した客船2によれば、パージライン4を介して、ガス燃料により駆動されるガスエンジン22の配管23内等に残るガス燃料の濃度が、爆発下限界を下回るように窒素ガス等の不活性ガスによりパージされることになる。
これにより、ガスエンジン22の配管23内等に残ったガス燃料が、停泊中等に燃焼あるいは爆発したりするのを防止することができ、船舶の安全性をより一層向上させることができる。
【0030】
さらに、本実施形態に係る燃料積込装置1および燃料積込装置1を搭載した客船2によれば、岸壁5に設置されたガス処理設備(あるいは岸壁5において客船2に横付けされた図示しないタンクローリに搭載されたガス処理設備、もしくは水面(海面)7において客船2に横付けされた図示しないバンカー船に搭載されたガス処理設備)から延びるパージ接続ライン33の末端(一端)に設けられたフランジやカプラ等の接続具34に接続されるパージライン4の接続具21が、例えば、図3に符号Lで示すように、客船2の舷側から船幅方向外側に向かって水平方向に10m離れた岸壁上に位置することになる。
例えば、客船2の舷側から船幅方向外側に向かって水平方向に10m離れた岸壁上に位置することになる。
これにより、岸壁5に設置されたガス処理設備(あるいは岸壁5において客船2に横付けされた図示しないタンクローリに搭載されたガス処理設備、もしくは水面(海面)7において客船2に横付けされた図示しないバンカー船に搭載されたガス処理設備)等から延びるパージ接続ライン33の末端(一端)に設けられたフランジやカプラ等の接続具34と、パージライン4の接続具21との接続位置およびこの接続位置の周囲に指定されるガス危険区域を岸壁5上にもっていくことができる。すなわち、液化ガス燃料またはガス燃料が積み込まれる客船2の側に、ガス危険区域が指定されないようにすることができて、客船2の側における安全管理を徹底することができる。
【0031】
さらにまた、本実施形態に係る燃料積込装置1および燃料積込装置1を搭載した客船2によれば、バンカリングライン3の一端部、およびパージライン4の一端部を、客船2の舷側に設けられた(一箇所あるいは二箇所の)バンカーステーション12内に収容することができ、客船2の側における安全管理をさらに徹底することができる。
【0032】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係る燃料積込装置について、図4を参照しながら説明する。
図4は本実施形態に係る燃料積込装置を客船に適用した場合のパージライン(返送ライン)の要部を示す系統図である。
【0033】
本実施形態に係る燃料積込装置41は、第1実施形態のところで説明したパージライン4の途中、より詳しくは、ローディングアーム24とガスエンジン22の配管23等との間に位置するパージライン4に、メタン吸着塔等のガス吸着塔42が設けられているとともに、このガス吸着塔42をバイパスするバイパスライン43が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0034】
ガス吸着塔42は、窒素ガス等の不活性ガスでパージされて当該ガス吸着塔42内に導かれたガス中から、ガス燃料(メタン等の可燃性ガス)を吸着する(取り除く)吸着材(図示せず)が充填されたものである。また、ガス吸着塔42内においてガス燃料と分離された酸素、窒素等の非可燃性ガスは、ベントライン84およびベントポスト83(図7参照)を介して大気開放される。
【0035】
ベントライン84の途中に上流側から(第一の)制御弁51、ガス検知器52が設けられており、このガス検知器52で検知されるガス燃料の濃度が、所定の値以上になると(例えば、蒸気濃度が空気中における燃焼限界の下限の30%未満または、個々の設備配置に応じて主管庁が承認する別の制限値以上になると)、制御弁51が強制的に(瞬時に)全閉される。
また、パージライン4の途中、より詳しくは、ローディングアーム24とガスエンジン22の配管23等との間に位置するパージライン4の途中で、かつ、ガス吸着塔42の上流側および下流側には、(第二の)制御弁53および開閉弁54がそれぞれ設けられており、バイパスライン43の途中には、(第三の)制御弁55が設けられている。
【0036】
なお、本実施形態では、燃料の積み込み(バンカリング)を行わない港や泊地に停泊して、ガスエンジン22の配管23内等に残るガス燃料を窒素ガス等の不活性ガスでパージする際、あるいは燃料積込時でも、岸壁5、あるいは岸壁5において客船2に横付けされた図示しないタンクローリ、もしくは水面(海面)7において客船2に横付けされた図示しないバンカー船等に図示しないガス処理設備が設置されていない場合、制御弁51,53が開、開閉弁54および制御弁55が閉とされ、ガスエンジン22の配管23内等に残るガス燃料が、窒素ガス等の不活性ガスとともにガス吸着塔42内に導かれる。そして、ガス吸着塔42内に導かれたガスのうち、ガス燃料は、ガス吸着塔42内に収容された吸着材に吸着し、酸素、窒素等の非可燃性ガスは、ベントライン84およびベントポスト83を介して大気開放される。
【0037】
また、吸着材に吸着したガス燃料は、岸壁5(図1または図3参照)、あるいは岸壁5において客船2に横付けされた図示しないタンクローリ、もしくは水面(海面)7(図1または図2参照)において客船2に横付けされた図示しないバンカー船等に設置された真空ポンプ56に吸引(真空引き)され、岸壁5、あるいは岸壁5において客船2に横付けされた図示しないタンクローリ、もしくは水面(海面)7において客船2に横付けされた図示しないバンカー船等に設置された図示しない回収装置に回収される。
【0038】
一方、上述した第1実施形態と同様、燃料積込時、接続具11には、岸壁5(あるいは岸壁5において客船2に横付けされた図示しないタンクローリ、もしくは水面(海面)7において客船2に横付けされた図示しないバンカー船等)に設置された貯蔵設備6から延びるバンカー接続ライン31の末端(一端)に設けられたフランジやカプラ等の接続具32が接続される。
また、燃料積込時(あるいはパージ時)、岸壁5に設置された図示しないガス処理設備(あるいは岸壁5において客船2に横付けされた図示しないタンクローリに搭載されたガス処理設備、もしくは水面(海面)7において客船2に横付けされた図示しないバンカー船に搭載されたガス処理設備等)から延びるパージ接続ライン33の末端(一端)に設けられたフランジやカプラ等の接続具34が接続される。
【0039】
さらに、本実施形態では、パージ接続ライン33の途中にガス検知器35が設けられており、このガス検知器35で検知されるガス燃料の濃度が、所定の値を下回るまで(例えば、蒸気濃度が空気中における燃焼限界の下限の30%未満または、個々の設備配置に応じて主管庁が承認する別の制限値未満となるまで)、あるいはガス検知器35でガス燃料が検知されなくなるまでパージされる。
【0040】
本実施形態に係る燃料積込装置41および燃料積込装置41を搭載した客船2によれば、燃料の積み込み(バンカリング)を行わない港や泊地に停泊して、ガスエンジン22の配管23内等に残るガス燃料を窒素ガス等の不活性ガスでパージする際、あるいは燃料積込時でも、岸壁5(あるいは岸壁5において客船2に横付けされた図示しないタンクローリ、もしくは水面(海面)7において客船2に横付けされた図示しないバンカー船等)にガス処理設備が設置されていない場合に、ガス燃料により駆動されるガスエンジン22の配管23内等に残るガス燃料の濃度が、爆発下限界を下回るように窒素ガス等の不活性ガスによりパージされることになる。
これにより、ガスエンジン22の配管23内等に残ったガス燃料が、停泊中等に燃焼あるいは爆発したりするのを防止することができ、船舶の安全性をより一層向上させることができる。
その他の作用効果は、上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜必要に応じて変形・変更して実施することもできる。
例えば、上述した実施形態における燃料積込装置1,41を、ローディングアーム13,24の代わりに、図5および図6に示すようなホースリール72,73およびホース74,75、すなわち、ローディングアーム13,24を構成する配管の長さと、ホース74,75の長さとを同じとした場合、ローディングアーム13,24よりもよりコンパクトな構成とすることができるホースリール72,73およびホース74,75を備えた燃料積込装置71としてもよい。
これにより、バンカーステーション12を形成する空間の容積を小さくすることができて、その分、居住空間等として有効利用することができる。
【0042】
また、上述した実施形態では、ガス検知器35で検知されるガス燃料の濃度が、所定の値を下回るまで(例えば、蒸気濃度が空気中における燃焼限界の下限の30%未満または、個々の設備配置に応じて主管庁が承認する別の制限値未満となるまで)、あるいはガス検知器35でガス燃料が検知されなくなるまでパージするようにしていたが、ガス検知器35を省略して、窒素ガス等の不活性ガスでパージされるガス燃料の濃度が、爆発下限界を下回るのに必要な時間だけパージするようにしてもよい。
これにより、ガス検知器35を省略して、構成の簡略化を図ることができる。
【0043】
さらに、本発明に係る燃料積込装置は、客船2以外の船舶(貨客船、コンテナ船、自動車運搬船等)にも適用することができる。
【0044】
さらにまた、船舶の側に設けられたパージライン4を介して船内の引火性ガスを陸側より吸引しながら燃料ガスの荷役を行ってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 燃料積込装置
2 客船(船舶)
3 バンカリングライン
4 パージライン
11 接続具
12 バンカーステーション
21 接続具
22 ガスエンジン(内燃機関)
23 配管
41 燃料積込装置
42 ガス吸着塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス燃料またはガス燃料を、船舶に搭載された貯蔵タンクに積み込む、または内燃機関へ供給する燃料積込装置であって、
一端に接続具が設けられ、他端が前記貯蔵タンク、または前記内燃機関に接続されて、一端部が前記船舶に対して伸縮するように構成されたバンカリングラインを備えていることを特徴とする燃料積込装置。
【請求項2】
一端に接続具が設けられ、他端が、前記液化ガス燃料またはガス燃料を燃料として駆動される内燃機関の配管に接続されて、不活性ガスでパージされた前記配管内に残る前記ガス燃料を前記船舶の外に導くパージラインを備えていることを特徴とする請求項1に記載の燃料積込装置。
【請求項3】
前記パージラインの途中に、前記ガス燃料を吸着する吸着材が充填されたガス吸着塔が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の燃料積込装置。
【請求項4】
前記パージラインの一端部が、前記船舶に対して伸縮するように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の燃料積込装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料積込装置を具備していることを特徴とする船舶。
【請求項6】
前記バンカリングラインの一端部、および前記パージラインの一端部が、前記船舶の舷側に設けられたバンカーステーション内に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−11332(P2013−11332A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145818(P2011−145818)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】