説明

燃料耐性を示す組成物およびその組成物を製造する方法

ポリチオエーテル重合体および多塩基酸ベースのポリエポキシを含有する硬化可能組成物、ならびにポリチオエーテル重合体および多塩基酸ベースのポリエポキシを含有する硬化可能組成物を使用する方法が開示されている。硬化された硬化可能組成物は、燃料に晒されると、高い腐食耐性および接着性を示す。ポリチオエーテル重合体および多塩基酸ベースのポリエポキシを含有する本開示の組成物は、航空機燃料に晒したとき、表面との接着性を維持でき、その組成物を塗布する表面に対する高い腐食耐性を与えることができ、および/または航空機および航空宇宙用の性能仕様を満たすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリチオエーテル重合体および多塩基酸ベースのポリエポキシを含有する硬化可能組成物、ポリチオエーテル重合体および多塩基酸ベースのポリエポキシを含有する硬化可能組成物を製造する方法、および該硬化可能組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化された航空機用および航空宇宙用の封止剤が多数の特性(燃料に晒したときの接着性、低温柔軟性、高温耐性、および封止剤を塗布した表面に対して腐食耐性を与えることを含めて)を示すことは、有用であり得る。これらの特性および他の特性を備えた封止剤を提供することは、化学的、熱的および物理的な応力状態が著しい航空機および航空宇宙用途において、特に難しい問題であり得る。
【0003】
封止剤の接着性は、一般に、航空機および航空宇宙産業で使用される燃料に晒すと、低下する。ポリチオエーテル重合体および多塩基酸ベースのポリエポキシを含有する本開示の組成物は、航空機燃料に晒したとき、表面との接着性を維持し、その組成物を塗布する表面に対して高い腐食耐性特性を与え、ならびに/または他の航空機および航空宇宙用の性能仕様を満たし得る。本開示の特定の実施形態に従って、低温柔軟性を示すポリチオエーテルベースの組成物の接着性および腐食耐性特性は、ポリチオエーテル重合体を多塩基酸ベースのポリエポキシで硬化させることにより、改善され得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本特許における「a」および「the」の通常の意味に従って、例えば、「a」 polythioetherまたは「the」 polythioetherに対する言及は、1種またはそれ以上のpolythioethersを含む。
【0005】
特に明記しない限り、明細書および請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを表わす全ての数値は、いずれの場合にも、用語「約」により修飾されることが理解できるはずである。従って、それと反対の意味が示されていない限り、本明細書中で示された数値パラメータは、近似値であり、これらは、得られる所望の特性に依存して、変わり得る。本明細書中では、単数形の使用は、特に明記しない限り、複数を含む。本願では、「または」の使用は、特に明記しない限り、「および/または」を意味する。さらに、「含んでいる」との用語だけでなく、「含む」および「含まれる」のような他の形状の使用は、限定的ではない。
【0006】
2つの文字または記号の間にないダッシュ(「−」)は、置換基に対する結合点を示すのに使用される。例えば、−COOHは、炭素原子を介して結合される。
【0007】
「アルキル」とは、もとのアルカン、アルケンまたはアルキンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導された飽和または不飽和、分枝、直鎖または環状一価炭化水素基を意味する。用語「アルキル」とは、具体的には、任意の飽和度または飽和レベルを有する基、すなわち、炭素−炭素単結合だけを有する基、1個またはそれ以上の炭素−炭素二重結合を有する基、1個またはそれ以上の炭素−炭素三重結合を有する基、ならびに炭素−炭素単結合、二重結合および三重結合の混成を有する基を含むと解釈される。特定の実施形態では、アルキル基は、1個〜12個の炭素原子を含む。他の実施形態では、アルキル基は、1個〜6個の炭素原子を含む。
【0008】
「アルキレン」とは、もとのアルカン、アルケンまたはアルキンの1個または2個の炭素原子から2個の水素原子を除去することにより誘導された飽和または不飽和、分枝、直鎖または環状二価炭化水素基を意味する。用語「アルキレン」とは、具体的には、任意の飽和度または飽和レベルを有する基、すなわち、炭素−炭素単結合だけを有する基、1個またはそれ以上の炭素−炭素二重結合を有する基、1個またはそれ以上の炭素−炭素三重結合を有する基、ならびに炭素−炭素単結合、二重結合および三重結合の混成を有する基を含むと解釈される。特定の実施形態では、アルキレン基は、2個〜12個の炭素原子を含み、特定の実施形態では、2個〜6個の炭素原子を含む。
【0009】
「アミン」とは、ラジカル−NHおよび−NR’R”を意味し、ここで、R’およびR”は、別個に、水素、C1〜10アルキル、および置換C1〜10アルキル(これらは、本明細書中で定義した)から選択される。
【0010】
「シクロアルキレン」とは、飽和または不飽和環状アルキレン基を意味する。特定の実施形態では、シクロアルキレン基は、C3〜12シクロアルキレンであり得る。
【0011】
「シクロアルキルアルキレン」とは、シクロアルキル基の水素原子の1個をアルキレン基で置き換えることにより誘導された二価基、あるいは環状アルカン、アルケンまたはアルキニル部分の水素原子の2個をアルキレン基で置き換えることにより誘導された二価基を意味する。特定の実施形態では、シクロアルキルアルキレン基は、C4〜24シクロアルキルアルキレンであり得、例えば、シクロアルキルアルキレン基のアルキレン部分は、C1〜12アルキレンであり得、そのシクロアルキレン部分は、C3〜12シクロアルキレンであり得るか、あるいはC5〜24シクロアルキレンは、2個のC1〜6アルキレン基に結合されたC3〜12シクロアルキレン基を含み得る。
【0012】
「ヒドロキシル」とは、−OH基を意味する。
【0013】
「カルボキシル」とは、−COO基を意味する。
【0014】
「アルキレンオキシ」は、−CH−基の少なくとも1個を酸素原子で置き換えたアルキレン基を意味し、そして1個より多い酸素原子は、少なくとも1個の−CH−基で分離されている。それゆえ、Cアルキレンオキシとは、−O−CH−CH−CH−、−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−O−、−O−CH−O−CH−、−O−CH−CH−O−、−O−CH−CH−O−、および−CH−O−CH−O−から選択される基を意味する。
【0015】
「シクロアルキレンオキシ」とは、−CH−基の少なくとも1個を酸素原子で置き換えたシクロアルキレン基を意味し、そして1個より多い酸素原子は、少なくとも1個の−CH−基で分離されている。
【0016】
「オレフィン」とは、芳香族基内の二重結合を除いた1個またはそれ以上の炭素−炭素二重結合を有する非環式および環式炭化水素を意味する。オレフィンには、アルケン、シクロアルケン、アルキレン、シクロアルキレン、およびシクロアルキルアルキレンが挙げられる。
【0017】
「電子吸引基」とは、電子が移動できる基(例えば、−COOR基)を意味する。
【0018】
「アリル」とは、−CH−CH=CH基を意味する。
【0019】
「エポキシ」とは、酸素原子が炭素鎖または環系の2個の隣接炭素原子に直接結合された化合物を意味し、それゆえ、環状エーテルを意味する。
【0020】
「エポキシド」とは、飽和3員環状エーテルを含むエポキシ化合物の亜属を意味する。エポキシドの例には、1,2−エポキシプロパン、および2−メチルオキシランが挙げられる。
【0021】
「ビニル」とは、−CH=CH基を意味する。
【0022】
本明細書中で使用する用語「置換」とは、指定された原子または基上の任意の1個またはそれ以上の水素が、指定された原子の通常の原子価を超えないという条件で、指示された基からの選択で置き換えられていることを意味する。置換基がオキソ(すなわち、=O)であるとき、その原子上の2個の水素が置き換えられる。置換基および/または変数の組み合わせは、このような組み合わせが安定な化合物または有用な合成中間体を生じる場合に限り、許容できる。安定な化合物または安定な構造は、反応混合物、および少なくとも実用的な有用性を有する試薬としての引き続いた処方からの単離に耐えるのに十分に頑丈である化合物を暗示するように意味している。
【0023】
本開示の硬化可能組成物は、ポリチオエーテル重合体および多塩基酸ベースのポリエポキシを含有する。
【0024】
特定の実施形態では、本開示の硬化可能組成物は、式1のポリチオエーテル重合体を含有する:
【0025】
【化5】

ここで、
Aは、式2(a)および式2(b)から選択されたセグメントであり:
【0026】
【化6】

ここで、
各Rは、別個に、C2〜6n−アルキレン、C3〜6分枝アルキレン、C6〜8シクロアルキレン、C6〜10アルキルシクロアルキレン、−[−(CH−X−]−(CH−、および−[−(CH−X−]−(CH−から選択され、ここで、少なくとも1個の−CH−基は、少なくとも1個のメチル基で置換されている;
ここで、
各Xは、別個に、O、S、−NH−および−NR−から選択され、ここで、各Rは、別個に水素および−CHから選択される;
pは、2〜6の整数である;
qは、1〜5の整数である;そして
rは、2〜10の整数である;
各Rは、別個に、O、C2〜6アルキレンオキシ、およびC5〜12シクロアルキレンオキシから選択され、
各Rは、別個に、−CH−CH−、および電子吸引基で共役されたオレフィンである;
各Rは、別個に、C2〜10アルキレンおよびC2〜10アルキレンオキシから選択される;
各Rは、別個に、チオール基、ヒドロキシル基、アミン基、アリル基およびビニル基から選択される;そして
nは、該ポリチオエーテル重合体の数平均分子量が500〜20,000ダルトンの範囲となるように選択された整数である;
ここで、式2(a)のセグメントと式2(b)のセグメントとの重量比は、2:1〜3:1の範囲である。
【0027】
は、少なくとも2個のチオール基を有する化合物、単量体、および/または重合体から誘導され得る。特定の実施形態では、ポリチオールには、式4のジチオールが挙げられる:
【0028】
【化6A】

ここで、Rは、C2〜6n−アルキレン基、C3〜6分枝アルキレン基(これは、1個またはそれ以上のペンダント基(pendent group)(これは、ヒドロキシル基および/またはアルキル基(例えば、メチルまたはエチル基)であり得る)を有する);C2〜6アルキレンオキシ基、C6〜8シクロアルキレン基、C6〜10アルキルシクロアルキレン基;−[(−CH−X−]−(−CH−基、または−[(CH−X−]−(−CH−基であり得、ここで、少なくとも1個の−CH−単位は、少なくとも1個のメチル基で置換されている;pは、2〜6の範囲の整数である;qは、1〜5の範囲の整数である;そしてrは、2〜10の範囲の整数である。
【0029】
特定の実施形態では、ジチオールは、炭素骨格内に1個またはそれ以上のヘテロ原子置換基を含有し得、すなわち、Xが、ヘテロ原子(例えば、O、S、または他の二価ヘテロ原子ラジカル);第二級または第三級アミン基(例えば、−NR−であって、ここで、Rは、水素またはメチルである);あるいは置換三価ヘテロ原子を含むジチオールである。特定の実施形態では、Xは、OまたはSであり、それゆえ、Rは、−[(−CH−O−]−(−CH−または−[(CH−S−]−(−CH−である。特定の実施形態では、pおよびrは、等しい。特定の実施形態では、pおよびrの両方は、2である。
【0030】
特定の実施形態では、ジチオールは、ジメルカプトジエチルスルフィド(DMDS)(p=2、r=2、q=1、X=S)、ジメルカプトジオキサオクタン(DMDO)(p=2、q=2、r=1、X=O)または1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン(p=2、r=2、q=1、X=O)から選択され得る。特定の実施形態では、ジチオールは、炭素骨格およびペンダントアルキル基(例えば、メチルペンダント基)内にヘテロ原子置換基を含む。炭素骨格およびペンダントアルキル基内に両方のヘテロ原子置換基を含むジチオールの例には、例えば、メチル−置換DMDS(例えば、HS−CHCH(CH)−S−CHCH−SHおよびHS−CH(CH)CH−S−CHCH−SH)、ならびにジメチル置換DMDS(例えば、HS−CHCH(CH)−S−CH(CH)CH−SHおよびHS−CH(CH)CH−S−CHCH(CH)−SH)が挙げられる。
【0031】
式1の化合物の特定の実施形態では、R1は、C2〜6n−アルキレン基、例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、または1,6−ヘキサンジチオールである。特定の実施形態では、Rは、1個またはそれ以上のペンダント基を有するC3〜6分枝アルキレン基、例えば、1,2−プロパンジチオール、1,3−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,3−ペンタンジチオール、または1,3−ジチオ−3−メチルブタンである。特定の実施形態では、Rは、C6〜8シクロアルキレンまたはC6〜10アルキルシクロアルキレン基、例えば、ジペンテンジメルカプタン、またはエチルシクロヘキシルジチオール(ECHDT)である。
【0032】
は、式5のポリビニルエーテルから誘導され得る:
【0033】
【化6B】

ここで、Rは、C2〜6n−アルキレン、C2〜6分枝アルキレン、C6〜8シクロアルキレン、C6〜10アルキルシクロアルキレン、または−[(CH−)−O−]−(−CH−)−基から選択され得、mは、0〜10の有理数、pは、1〜5の整数、そしてrは、2〜10の整数である。特定の実施形態では、Rは、C2〜6アルキレンオキシおよびC5〜12シクロアルキレンオキシから選択され得る。
【0034】
特定の実施形態では、ポリビニルエーテルは、アルキレンオキシ基、例えば、1個〜4個のアルキレンオキシ基を含有し得る(例えば、mが1〜4の整数である化合物)。特定の実施形態では、mは、2〜4の整数である。特定の実施形態では、ポリビニルエーテルは、ポリビニルエーテル混合物を含む。このような混合物は、1分子あたりのアルキレンオキシ基の非積算(non−integral)平均数により特徴付けることができる。それゆえ、特定の実施形態では、式5のmはまた、0〜10、特定の実施形態では、1〜10、特定の実施形態では、1〜4、特定の実施形態では、2〜4の範囲の有理数であり得る。
【0035】
特定の実施形態では、ポリビニルエーテルは、ジビニルエーテルモノマー(例えば、ジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル(EG−DVE)、ブタンジオールジビニルエーテル(BD−DVE)、ヘキサンジオールジビニルエーテル(HD−DVE)、ジエチレングリコールジビニルエーテル(DEG−DVE)、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリテトラヒドロフリルジビニルエーテル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、またはビニルシクロヘキセン;トリビニルエーテルモノマー(例えば、トリメチロールプロパントリビニルエーテル)、あるいは四官能性ビニルエーテルモノマー(例えば、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル)を含有し得る。特定の実施形態では、ポリビニルエーテルモノマーは、さらに、アルキレン基、ヒドロキシル基、アルケンオキシ基およびアミン基から選択される1個またはそれ以上のペンダント基を含有し得る。
【0036】
特定の実施形態では、RがC2〜6分枝アルキレンであるポリビニルエーテルは、ポリヒドロキシ化合物とアセチレンとを反応させることにより、調製され得る。この種の化合物の例には、Rがアルキル置換メチレン基(例えば、−CH(CH)−、例えば、PLURIOLブレンド、例えば、PLURIOL E−200ジビニルエーテル(これは、BASF Corp.から市販されている)であって、これについて、Rは、エチレンであり、そしてmは、3.8である)、あるいはアルキル置換エチレン(例えば、−CHCH(CH)−、例えば、DPE重合体ブレンド(DPE−2およびDPE−3(これは、International Specialty Productsから市販されている)を含めて)である化合物が挙げられる。
【0037】
およびRは、式6のモノエポキシドから誘導され得る:
【0038】
【化7】

ここで、Rは、チオール基と反応性であるエポキシ基以外の基を含有し得る。特定の実施形態では、Rは、−CH−CH−基、または電子吸引基(例えば、アクリレート、メタクリレート、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)と共役されたオレフィンから誘導され得る。特定の実施形態では、Rは、C2〜10アルキレン基、およびC2〜10アルキレンオキシ基から選択され得る。特定の実施形態では、Rは、−CH−O−CH−である。
【0039】
特定の実施形態では、本開示の組成物で有用なポリチオエーテル重合体には、式3のポリチオエーテル重合体:
【0040】
【化7A】

特定の実施形態では、式3(a)のポリチオエーテル重合体が挙げられる:
【0041】
【化7B】

ここで、
Aは、式2(a)および式2(b)から選択されたセグメントであり:
【0042】
【化8】

ここで、
各Rは、別個に、C2〜6n−アルキレン、C3〜6分枝アルキレン、C6〜8シクロアルキレン、C6〜10アルキルシクロアルキレン、−[−(CH−X−]−(CH−、および−[−(CH−X−]−(CH−から選択され、ここで、少なくとも1個の−CH−基は、少なくとも1個のメチル基で置換されている;
ここで、
各Xは、別個に、O、S、−NH−、および−NR−から選択され、ここで、各Rは、水素および−CHから選択される;
pは、2〜6の整数である;
qは、1〜5の整数である;そして
rは、2〜10の整数である;
各Rは、別個に、−CH−CH−、および電子吸引基で共役されたオレフィン;そして
各Rは、別個に、C2〜10アルキレン、およびC2〜10アルキレンオキシから選択される;
各Rは、別個に、O、C2〜6アルキレンオキシ、およびC5〜12シクロアルキレンオキシから選択され;
各Rは、別個に、チオール基、ヒドロキシル基、アミン基、およびビニル基から選択される;
Bは、多官能化剤から誘導されたz価基である;
zは、3〜6の整数である;そして
nは、該ポリチオエーテル重合体の数平均分子量が500〜20,000ダルトンの範囲となるように選択された整数である;
ここで、式2(a)のセグメントと式2(b)のセグメントとの重量比は、約2:1〜3:1の範囲である。
【0043】
Bは、z価基であり、そして化合物B’から誘導でき、これは、多官能化剤を表わす。多官能化剤とは、−SHおよび/または−CH=CH基と反応性である2個より多い部分を有する化合物を意味する。特定の実施形態では、多官能化剤は、3個〜6個のこのような部分を含有でき、そしてBは、「z価」基として、表示され、ここで、zは、この試薬に含まれるこのような部分の数を表わし、それゆえ、この多官能性ポリチオエーテル重合体を含む別々の分枝の数を表わす。
【0044】
式IIIおよび式III(a)のポリチオエーテルの特定の実施形態では、この多官能化剤は、三官能化剤であり、ここで、zは、3である。式3および式3(a)のポリチオエーテルの特定の実施形態では、この多官能化剤の官能基は、ビニル基およびチオール基から選択され得る。混合官能性を有する多官能化剤、すなわち、チオール基およびビニル基の両方と反応する部分(これらは、異なり得る)を含む多官能化剤もまた、使用できる。特定の実施形態では、多官能化剤は、例えば、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、およびポリチオール(これらは、米国特許第4,366,307号、米国特許第4,609,762号、および米国特許第5,225,472号で記載されている)を含有し得る。特定の実施形態では、三官能化剤は、シアヌル酸トリアリル(TAC)(これは、チオール基と反応性である)、および1,2,3−プロパントリチオール(これは、ビニル基と反応性である)から選択され得る。式3および式3(a)のポリチオエーテル重合体の特定の実施形態では、この多官能化剤は、イソシアヌル酸トリアリル、シアヌル酸トリアリル、および/またはそれらの組み合わせから誘導される。
【0045】
一定範囲の官能性を含む多官能化剤の混合物もまた、式3および式3(a)のポリチオエーテル重合体の調製において使用され得る。特定の実施形態では、一定量の三官能化剤を使用すると、2.05〜3、特定の実施形態では、2.1〜2.6の平均官能性を有するポリチオエーテル重合体が得られ得る。他の平均官能性は、例えば、四官能性多官能化剤、あるいはそれより高い原子価を有する多官能化剤、あるいはそれらの混合物を使用することにより、達成できる。得られたポリチオエーテル重合体の平均官能性もまた、当業者に公知であるように、これらの反応物の化学量論のような要因により、影響され得る。
【0046】
3個より多い反応性部分を有する(すなわち、zは、3より高い)多官能化剤は、星形重合体および分枝重合体を生じる。星形重合体は、優位に直鎖が出る単一の分枝点を含む。分枝重合体は、優位に直鎖が出る境界単位間の中間に分枝点を有する鎖を含む。例えば、2モルのTACは、1モルのジチオールと反応され得、4の平均官能性を有する多官能化剤を生じる。次いで、この多官能化剤は、ポリビニル化合物およびジチオールと反応され得、プレポリマーが得られ、これは、次いで、順に、三官能化剤と反応でき、3〜4の平均官能性を有するポリチオエーテル重合体ブレンドが得られる。
【0047】
本開示の組成物で使用されるポリチオエーテルは、500〜20,000ダルトン、特定の実施形態では、2,000〜5,000ダルトン、特定の実施形態では、3,000〜4,000ダルトンの範囲の数平均分子量を示し得る。
【0048】
特定の実施形態では、本開示のポリチオエーテル重合体は、20℃(68°F)以下の温度で、液体である。特定の実施形態では、本発明のポリチオエーテル重合体は、4℃(40°F)以下の温度で、液体であり、特定の実施形態では、4℃(40°F)以下の温度で、少なくとも1ヶ月間にわたって、液体である。特定の実施形態では、本開示のポリチオエーテル重合体は、20℃の温度で、75ポイズ〜150ポイズの範囲の粘度、4℃の温度で、300ポイズ〜380ポイズの範囲の粘度を示す。対照的に、米国特許第6,486,297号で開示されたようなジエポキシドを使用して形成されたポリチオエーテル重合体は、20℃の温度で、400ポイズ〜450ポイズの範囲の粘度を示し、そして4℃の温度で固体である。
【0049】
特定の実施形態では、本開示のポリチオエーテル重合体は、ブルックフィールド粘度計を使用して、ASTM D−2849 §79〜90に従って測定したとき、25℃の温度および760mmHgの圧力で、200ポイズ未満の粘度を示す。特定の実施形態では、本開示のポリチオエーテル重合体は、4℃の温度で、400ポイズ以下の粘度を示す。
【0050】
特定の実施形態では、本開示のポリチオエーテル重合体は、−50℃以下、特定の実施形態では、−55℃以下、特定の実施形態では、−60℃以下のガラス転移温度Tを示す。低いTは、良好な低温柔軟性を示し、これは、公知方法、例えば、AMS(Aerospace Material Specification)3267 §4.5.4.7、MIL−S(Military Specification)−8802E §3.3.12およびMIL−S−29574で記載された方法、およびASTM(American Society for Testing and Materials)D522−88で記載された方法と類似の方法により、決定され得る。本開示のポリチオエーテル重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定により、測定され得る。
【0051】
式Iのポリチオエーテル重合体を調製する方法は、米国特許出願公報第US 2004/0247792 A1号で開示されている。
【0052】
式1の本開示の硬化可能組成物で有用なポリチオエーテル重合体は、以下のプロセスにより、形成され得る:第一ポリチオールと、1個のエポキシ基およびエポキシ基以外の第二基を含む化合物とを反応させて、第一プレポリマーを形成する工程であって、該第二基は、チオール基と反応性であり、ここで、該ポリチオールは、該第二基と優先的に反応する;該第一プレポリマーおよび第二ポリチオールと該第一ポリチオールのエポキシ基とを反応させて、第二プレポリマーを形成する工程;そして該第二プレポリマーおよび第三ポリチオールとポリビニルエーテルとを反応させる工程。特定の実施形態では、これらの第二および第三ポリチオールは、未反応第一ポリチオールを含む。特定の実施形態では、この第一ポリチオール、第二ポリチオールおよび第三ポリチオールは、同じポリチオールである。
【0053】
第一工程では、ポリチオールは、1個のエポキシ基とエポキシ基以外の第二基を含むモノポリマーとを反応させて、第一プレポリマーが形成でき、第二基は、チオール基と反応性である。その反応条件は、このポリチオールが、モノエポキシの第二基、すなわち、非エポキシ基と優先的に反応するように、確立される。第一工程では、チオール基は、非エポキシ第二基(例えば、ビニル基)二重結合の周りに付加でき、第一プレポリマーを形成する。第一プレポリマーは、ポリチオールとモノエポキシドとの1:1の付加生成物であり得、そしてエポキシ基とチオール基とを含む。第一反応工程に続いて、その反応混合物は、第一プレポリマーおよび未反応ポリチオールを含有する。
【0054】
特定の実施形態では、ポリチオールおよびモノエポキシドは、70℃の温度で、1時間にわたって、反応され得る。特定の実施形態では、ポリチオールは、40〜80モルパーセントの範囲の量、特定の実施形態では、50〜60モルパーセントの範囲の量で、存在し得る。特定の実施形態では、モノエポキシドは、5〜25モルパーセントの範囲の量、特定の実施形態では、10〜15モルパーセントの範囲の量で、存在している。モルパーセントは、このポリチオエーテル重合体を形成する際に使用される反応物の全モル数に基づいている。
【0055】
ポリチオールは、少なくとも2個のチオール基を有する化合物、重合体または単量体を含有し得、これには、本明細書中で開示されたポリチオールのいずれかを挙げることができる。特定の実施形態では、ポリチオールは、ジチオールであり得る。特定の実施形態では、ポリチオールは、ポリチオールの混合物を含有できる。特定の実施形態では、ポリチオールは、ジメルカプトジオキサオクタンおよび/またはジメルカプトジエチルスルフィドを含有できる。
【0056】
特定の実施形態では、チオール基と反応性である基(エポキシ基以外)は、ビニル基であり得る。特定の実施形態では、1個のエポキシ基と式1のポリチオエーテルの調製で使用されるチオール基と反応性である基(エポキシ基以外)とを含有する化合物は、アリルグリシジルエーテルであり得る。他の有用なモノエポキシドには、例えば、アクリル酸グリシジル、および/またはメタクリル酸グリシジルが挙げられる。
【0057】
第二反応工程では、第一反応工程から残留している第一プレポリマーおよび未反応ポリチオールは、必要に応じて、触媒の存在下にて、第一プレポリマーのエポキシ基と反応され得、第二プレポリマーを形成する。第二反応工程は、未反応チオール基よるエポキシ基の開環を含む。第二反応工程では、第一プレポリマーおよび未反応ポリチオールの両方にあるチオール基は、これらのエポキシ基の開環に関与して、第二プレポリマーを形成する。第二反応工程が完了した後、その反応混合物は、第二プレポリマーとしての高分子量ポリチオールと、未反応出発ポリチオールとを含有する。
【0058】
特定の実施形態では、この任意の触媒は、塩基性触媒(例えば、トリエチルアミン(TEA)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、ピリジン、および/または置換ピリジン)を含む。特定の実施形態では、第二反応工程は、20℃〜80℃の範囲の温度で、2〜6時間実行される。
【0059】
第三反応工程では、ポリビニル化合物は、第二プレポリマーおよび未反応ポリチオールと反応され得る。第三反応工程は、ポリ不飽和化合物(例えばポリビニル化合物)の二重結合の周りでの第二プレポリマーおよび残留している未反応出発ポリチオールの両方のチオール基のフリーラジカル触媒付加を含む。特定の実施形態では、ポリビニル化合物は、ポリビニルエーテルであり得、特定の実施形態では、ジビニルエーテルであり得る。
【0060】
ポリビニルエーテルは、本明細書中で開示されたポリビニルエーテルのいずれかであり得る。特定の実施形態では、式1のポリチオエーテルの調製で使用されるポリビニルエーテルは、ジエチレングリコールジビニルエーテルであり得る。特定の実施形態では、このポリビニル化合物は、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリルおよびビニルシクロヘキセンから選択され得る。特定の実施形態では、ポリビニルエーテルは、反応物の全モル数に基づいたモルパーセントで、5〜25モルパーセント、特定の実施形態では、10〜20モルパーセントの範囲の量で、存在し得る。その反応混合物には、1時間の期間にわたって、間隔を置いて、ポリビニルエーテルの全量を加えることができる。この付加反応がほぼ完結まで進行した後、この反応を完結するために、このポリビニルエーテルの0.001重量%〜0.10重量%の範囲の量で、フリーラジカル開始剤(例えば、VAZO67(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(これは、DuPontから市販されている)を加えることができる。
【0061】
特定の実施形態では、第三反応工程で使用される触媒は、フリーラジカル触媒を含有し得る。特定の実施形態では、式1のポリチオエーテル重合体の調製で使用されるフリーラジカル触媒は、アゾ(ビス)イソブチロニトリル(AIBN)、および有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイルおよび過酸化t−ブチル)から選択され得る。
【0062】
特定の実施形態では、第三反応工程は、60℃〜80℃の範囲の温度で、6〜24時間実行される。
【0063】
特定の実施形態では、本開示の組成物で有用な式3および式3(a)の構造を有する本開示の分枝ポリチオエーテル重合体は、第一ポリチオールと1個のエポキシ基およびエポキシ基以外の第二基(これは、チオール基と反応性である)を含む化合物とを反応させて第一プレポリマーを形成し(ここで、このポリチオールは、優先的に、第二基と反応する)、第一プレポリマーおよび第二ポリチオールと第一プレポリマーのエポキシ基とを反応させて第二プレポリマーを形成し、そして第二プレポリマーおよび第三ポリチオールとポリビニルエーテルおよび多官能化剤とを反応させるプロセスにより、形成できる。特定の実施形態では、第二および第三ポリチオールは、未反応第一ポリチオールを含む。特定の実施形態では、第一ポリチオール、第二ポリチオールおよび第三ポリチオールは、同じポリチオールである。
【0064】
分枝ポリチオエーテル重合体を調製するために、第三反応工程では、多官能化剤が含まれる。この多官能化剤は、本明細書中で開示されたもののいずれかであり得る。特定の実施形態では、この多官能化剤は、三官能性であり得、さらに具体的には、この多官能化剤は、シアヌル酸トリアリル(TAC)である。特定の実施形態では、この三官能化剤は、0.5〜4モルパーセント、特定の実施形態では、1〜3モルパーセントの範囲の量で、存在し得る。多官能化剤を使用すると、2より高い官能性を有するポリチオエーテル重合体が生成する。特定の実施形態では、本明細書中で開示されたプロセスにより形成されたポリチオエーテル重合体は、2.05〜3の範囲、特定の実施形態では、2〜2.4の範囲の平均官能性を有する。
【0065】
ポリビニル化合物とポリチオールとの反応は、付加反応であるので、この反応は、実質的に完結まで進行でき、すなわち、望ましくない副生成物は、生成しないか実質的に生成しない。例えば、本開示のポリチオエーテル重合体を形成するプロセスは、かなりの量の悪臭のひどい環状副生成物を生成しない。さらに、本開示のプロセスに従って調製されたポリチオエーテル重合体は、典型的には、残留触媒を実質的に含まない。
【0066】
特定の実施形態では、式1および式3(a)のポリチオエーテル重合体のキャップ化アナログは、式7の化合物をさらに反応させることにより、調製され得る:
【0067】
【化8A】

式7の化合物は、末端チオール基と反応してポリチオエーテル重合体をキャップ化できる末端エチレン性不飽和基を有するアルキルω−アルケニルエーテルである。
【0068】
式7では、sは、0〜10(例えば、0〜6、または0〜4)の整数であり、そしてRは、非置換または置換アルキレン基(例えば、C1〜6n−アルキレン基)であり、これは、少なくとも1個の−OHまたは−NHR基で置換され得、ここで、Rは、水素およびC1〜6アルキレンから選択される。有用なR基の例には、アルキレン基(例えば、エチレン、プロピレンおよびブチレン);ヒドロキシル置換アルキレン基(例えば、4−ヒドロキシブチレン);およびアミン置換基(例えば、3−アミノプロピレン)が挙げられる。
【0069】
Sが0である式7の化合物は、モノビニルエーテルであり、これらには、例えば、アミノ−およびヒドロキシアルキル−ビニルエーテル(例えば、3−アミノプロピルビニルエーテルおよび4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(ブタンジオールモノビニルエーテル))、ならびに非置換アルキルビニルエーテル(例えば、エチルビニルエーテル)が挙げられる。Sが1である式7の化合物には、アリルエーテル(例えば、4−アミノブチルアリルエーテルおよび3−ヒドロキシプロピルアリルエーテル)が挙げられる。
【0070】
式1および式3で存在しているチオール基に対して同量の式7の化合物を使用すると、完全にキャップ化されたポリチオエーテル重合体が得られるのに対して、それより少ない量を使用すると、部分的にキャップ化されたポリチオエーテル重合体が生じる。
【0071】
本開示の硬化可能組成物は、多塩基酸ベースのエポキシを含有する。多塩基酸ベースのエポキシは、多塩基酸と少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とを反応させることにより、調製され得る。多塩基酸は、一般に、粘稠な液体であり、これは、飽和および/または不飽和脂肪酸のオリゴマー化により、生成される。その構成脂肪酸鎖の炭素原子は、種々の様式で共に連結され得、異なる構造型(例えば、環式、単環式、二環式および芳香族多塩基酸)を生じる。さらに、各型内では、多くの構造異性体が存在し得る。これらの構造型および異性体の分布は、例えば、出発脂肪酸モノマーの飽和度およびオリゴマー化に使用されるプロセス条件に依存し得る。飽和脂肪酸の例には、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、テトラコサン酸などが挙げられる。モノ不飽和脂肪酸の例には、ヘキサデセン酸、オクタデセン酸、およびシス−テトラコセン酸などが挙げられる。ポリ不飽和脂肪酸の例には、ヘキサデカジエン酸、オクタデカジエン酸などが挙げられる。脂肪酸モノマーは、例えば、C〜C60脂肪酸であり得、これは、任意の飽和度を有し得る。特定の実施形態では、本開示の多塩基酸ベースのエポキシドは、C18脂肪酸から誘導され得る。
【0072】
本開示の多塩基酸ベースのエポキシで有用な多塩基酸には、一塩基酸、二塩基酸(これはまた、本明細書中にて、ダイマー酸とも呼ばれる)、三塩基酸、および/またはそれより高次の官能性を有する多塩基酸が挙げられる。多塩基酸は、1種またはそれ以上の脂肪酸モノマーから誘導され得る。例えば、多塩基酸は、C18脂肪酸およびC22脂肪酸のオリゴマー化により調製され得、C40二塩基酸が生成するか、あるいはC18脂肪酸から調製され得、C36二塩基酸が生成する。本開示の多塩基酸ベースのエポキシを形成するのに有用な多塩基酸には、多塩基酸の混合物を挙げることきができる。特定の実施形態では、有用な多塩基酸は、二塩基酸(これはまた、ダイマー酸とも呼ばれる)である。特定の実施形態では、ダイマー酸ベースのポリエポキシは、C1〜60脂肪酸モノマー、特定の実施形態では、C20〜40脂肪酸モノマーから誘導され得る。ダイマー酸は、Cognis(EMPOL),Arizona Chemical(CENTURY、SYLVABLEND、およびUNIDYME)、およびUniquema(PRIPOL)のような業者から市販されている。
【0073】
多塩基酸ベースのエポキシは、多塩基酸とポリエポキシとを反応させることにより、調製され得る。ポリエポキシは、2個またはそれ以上のエポキシ基を取り込む。任意の適切なポリエポキシが使用され得る。特定の実施形態では、このポリエポキシは、2個のエポキシ基、3個のエポキシ基、または3個より多いエポキシ基を有し得る。このポリエポキシは、単一種のポリエポキシまたはポリエポキシ混合物を含み得る。特定の実施形態では、このポリエポキシは、ポリエポキシド(例えば、ジエポキシド)を含み得、この場合、エポキシドは、以下の構造を有する飽和3員環環状エーテルを含有するエポキシの亜属を意味する:
【0074】
【化9】

有用なジエポキシドの例には、ヒダントインジエポキシド、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル(例えば、EPON 828(これは、Resolution Performance Products,LLCから市販されている)、ビスフェノール−Fのジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシド(例えば、DEN−431(これは、Dow Plasticsから市販されている))、およびエポキシ化不飽和フェノール樹脂、アクリルポリオールエステル、メタクリルポリオールエステル、およびシアヌル酸トリアリルが挙げられる。多塩基酸の酸基およびエポキシのエポキシ基の化学量論は、ポリチオエーテルの末端官能基と反応できる末端エポキシ基を有する多塩基酸ベースのエポキシを生成するように、選択され得る。例えば、1モルの式1のポリチオエーテルは、2モルのジエポキシドと反応され得、そして1モルの式3の三官能性ポリチオエーテルは、6モルのジエポキシドと反応され得る。多塩基酸ベースのエポキシを形成するために、任意の適切な反応方法が使用され得、例えば多塩基酸ベースのエポキシは、フェニルホスフィン触媒の存在下にて、110℃〜120℃の範囲の温度で、多塩基酸とポリエポキシとを反応させることにより、生成され得る。市販の多塩基酸ベースのエポキシの例には、HYPOX DA323(Specialty Chemicals,Inc.)、EPOTUF(Reichhold)、およびHELOXY(Resolution Performance Products)が挙げられる。
【0075】
多塩基酸ベースのエポキシは、疎水性骨格を含む。この骨格の疎水性は、多塩基酸ベースのエポキシを含む硬化組成物に、増強された接着性および腐食耐性を与えることができる。この増大した疎水性は、硬化された封止剤を通る気体および/または水分の浸透を低下でき、そして封止剤と封止剤が塗布された表面との間の界面におけるイオンの移動度を低下できる。両方の属性は、増強された腐食性を生じ得る。従って、特定の実施形態では、有用な多塩基酸ベースのエポキシは、疎水性骨格を含み得る。疎水性骨格により特徴付けられるオリゴマーの例には、例えば、脂肪酸、脂質、ポリアクリレート、アルキレン、アルキル置換エチレンイミン、アルキルアクリルアミド、スチレン、ビニルエーテル、ビニルエステル、および/またはハロゲン化ビニルが挙げられる。
【0076】
本開示の硬化可能組成物は、封止剤として有用であり得、そういうものとして、低温柔軟性および燃料耐性が有用な特性である用途において、重合可能な封止剤組成物として処方され得る。このような用途には、航空機および航空宇宙産業ならびに燃料タンクライニングで使用される封止剤が挙げられる。
【0077】
本開示の硬化可能組成物は、ポリチオエーテルおよび多塩基酸ベースのエポキシを含み得る。ポリチオエーテルには、単一化学式により特徴付けられるポリチオエーテル、または1つより多い化学式により特徴付けられる複数のポリチオエーテルを挙げることができる。特定の化学式を有するポリチオエーテルは、数平均分子量を有するポリチオエーテル重合体の分布を表わし、ここで、この分布内のポリチオエーテルは、構成繰り返し単位の数の差および/または構成単位の化学組成の差を反映し得る。本明細書中で使用するポリチオエーテルは、この分子量分布内のポリチオエーテルを表わすと解釈される。本開示の組成物で有用なポリチオエーテルは、500ダルトン〜20,000ダルトン、特定の実施形態では、2,000ダルトン〜5,000ダルトン、特定の実施形態では、3,000ダルトン〜4,000ダルトンの範囲の数平均分子量を示し得る。特定の実施形態では、本開示の組成物で有用なポリチオエーテルは、1〜20、特定の実施形態では、1〜5の範囲の多分散性(M/M;重量平均分子量/数平均分子量)を示す。ポリチオエーテルの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、特徴付けられ得る。
【0078】
硬化可能組成物は、多塩基酸ベースのエポキシを含み得る。この多塩基酸ベースのエポキシには、単一の多塩基酸ベースのエポキシまたは多塩基酸ベースのエポキシの混合物を挙げることができる。
【0079】
このポリチオエーテルおよび柔軟性エポキシは、0.1〜5、特定の実施形態では、0.9〜1.2の範囲のチオール基:エポキシ基の化学量論比で、反応される。特定の実施形態では、この反応混合物内のエポキシド基の当量は、500である。
【0080】
ポリチオエーテルは、硬化可能組成物中にて、この組成物の全固形重量に基づいて、その硬化可能組成物の30重量%〜90重量%、特定の実施形態では、40重量%〜80重量%、特定の実施形態では、45重量%〜75重量%の量で、存在し得る。
【0081】
特定の実施形態では、本開示の硬化可能組成物は、さらに、封止剤組成物(特に、航空機および航空宇宙ならびに燃料タンク産業で使用される封止剤組成物)を調合する技術分野で公知の物質を含有でき、これらには、充填剤、接着性促進剤、顔料、可塑剤、湿潤剤、界面活性剤、流動制御剤、触媒、レオロジー特性を制御および/または改良する薬剤、チキソトロープ剤、殺ウドンコ病菌剤(mildewcides)、殺真菌剤、酸化防止剤、紫外光吸収剤、難燃剤、マスキング剤、溶媒、高分子微粒子、電気および/または熱導電性材料、および/または腐食防止剤が挙げられる。特定の実施形態では、これらの物質および/または他の物質は、本開示の硬化可能組成物中にて、この硬化可能組成物の全重量の0重量%〜60重量%、特定の実施形態では、0重量%〜40重量%の範囲の量で、存在し得る。
【0082】
本開示の硬化可能組成物は、充填剤を含有できる。充填剤は、所望の物理的特性(例えば、本開示の硬化可能組成物の高い衝撃強度、制御された粘度、改良された電気特性、および/または低い比重)を与えるために、この硬化可能組成物に加えられ得る。本開示の硬化可能組成物で有用な充填剤には、封止剤(例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ、高分子粉末、タルクおよび/または疎水性ヒュームドシリカ)を処方する技術分野で公知のものが挙げられる。充填剤の例には、SIPERNAT D−13疎水性沈降シリカ(これは、Degussaから市販されている)、WINNOFIL SPM沈降炭酸カルシウム(これは、Solvay Chemicalsから市販されている)、TS−270(これは、Cabot Corporationから市販されている)、二酸化チタン(これは、DuPontから市販されている)、水酸化アルミニウム、および/またはORGOSOL 1002 D Nat 1超微細ポリアミド粉末(これは、Atofina Chemicalsから市販されている)が挙げられる。特定の実施形態では、硬化可能組成物は、この硬化可能組成物の全固形重量の5重量%〜60重量%、特定の実施形態では、10重量%〜50重量%の範囲の量の充填剤を含有する。
【0083】
特定の実施形態では、本開示の硬化可能組成物は、顔料を含有し得る。有用な顔料の例には、カーボンブラック、金属酸化物、および/または炭酸カルシウムが挙げられる。顔料等級のカーボンブラックは、REGAL 660R(これは、Cabot Corporationから市販されている)のような低構造(low structure)および粒度により、特徴付けられ得る。BRILLIANT 1500は、顔料等級の99.995%の炭酸カルシウム(これは、Aldrich Chemicalから市販されている)の一例である。特定の実施形態では、硬化可能組成物は、この硬化可能組成物の全固形重量の0.1重量%〜10重量%、特定の実施形態では、0.1重量%〜5重量%の範囲の量の顔料を含有する。
【0084】
特定の実施形態では、本開示の硬化可能組成物は、促進剤および/または触媒を含有し得る。硬化促進剤の例には、トリエチルアミン(TEA)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)(これは、Rohm and Haasから市販されている)、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)、カーバメートペースト(これは、PRC−DeSoto Internationalから市販されている)、および/または1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)(これは、Air Productsから市販されている)が挙げられる。シランを含有する特定の実施形態では、この触媒は、例えば、チタネートTBT(これは、DuPontから市販されている)であり得る。特定の実施形態では、硬化可能組成物は、この硬化可能組成物の全固形重量の0.1重量%〜5重量%の範囲の量の硬化促進剤を含有し得る。
【0085】
特定の実施形態では、本開示の硬化可能組成物は、接着性促進剤および/またはカップリング剤を含有し得る。接着性促進剤および/またはカップリング剤は、微粒子添加物だけでなく基質表面に対するこの硬化可能組成物のポリチオエーテル重合体および/または他の重合体成分の接着性を高める。接着性促進剤の例には、フェノール樹脂(例えば、METHYLON 75108フェノール樹脂(これは、Occidental Chemical Corp.から市販されている))および/またはオルガノシラン(これは、エポキシ、メルカプトまたはアミノ官能性を含む)(例えば、SILQUEST A−187(8−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)およびSILQUEST A−1 100(8−アミノプロピル−トリメトキシシラン))(これは、OSi Specialtiesから市販されている)が挙げられる。他の有用な接着性促進剤には、有機チタネート、例えば、TYZORチタン酸テトラn−ブチル(TBT)(これは、Dupontから市販されている)、加水分解されたシラン(これは、PRC−DeSoto Internationalから市販されている)、および/またはフェノールクック(これは、PRC−DeSoto Internationalから市販されている)が挙げられる。特定の実施形態では、硬化可能組成物は、この組成物の全固形分重量の0.1重量%〜15重量%、特定の実施形態では、0.1重量%〜5重量%の量の接着性促進剤を含有し得る。
【0086】
特定の実施形態では、本開示の硬化可能組成物は、チキソトロープ剤を含有し得る。チキソトロープ剤は、剪断応力に応答して、硬化可能組成物の粘度を安定化することができる。特定の実施形態では、チキソトロープ剤には、ヒュームドシリカおよび/またはカーボンブラックを挙げられ得る。特定の実施形態では、硬化可能組成物は、この硬化可能組成物の全固形重量の0.1重量%〜5重量%の範囲の量のチキソトロープ剤を含有し得る。
【0087】
特定の実施形態では、本開示の硬化可能組成物は、難燃剤を含有し得る。難燃剤は、硬化した組成物の燃焼性および/または延焼を低下し得る。特定の実施形態では、硬化可能組成物は、この硬化可能組成物の全固形重量の0.1重量%〜5重量%の量の難燃剤を含有できる。
【0088】
特定の実施形態では、本開示の硬化可能組成物は、マスキング剤(例えば、松芳香剤または他の香り)を含有し得、これは、この硬化可能組成物の望ましくない低レベルの臭気を覆う際に、有用であり得る。特定の実施形態では、硬化可能組成物は、この硬化可能組成物の全固形重量の0.1重量%〜1重量%の範囲の量のマスキング剤を含有し得る。
【0089】
本開示の硬化可能組成物は、さらに、溶媒を含有できる。溶媒は、水性溶媒および/または有機溶媒であり得る。有機溶媒は、未硬化の硬化可能組成物の粘度を低下させ、取り扱いおよび/または塗布を容易にするために、含有され得る。有機溶媒は、硬化可能組成物の表面への塗布に続いて急速に蒸発するように、揮発性であり得る。特定の実施形態では、硬化の前に、硬化可能組成物は、この硬化可能組成物の全固形重量の0重量%〜15重量%、特定の実施形態では、10重量%〜15重量%の範囲の有機溶媒を含有できる。有用な有機溶媒の例には、脂肪族溶媒、芳香族および/またはアルキル化芳香族溶媒(例えば、トルエン、キシレン、およびSOLVESSO 100(これは、ExxonMobil Chemicalから市販されている)、アルコール(例えば、イソプロパノール)、酢酸エステル(例えば、酢酸メトキシプロパノール、酢酸ブチル、および酢酸イソブチル)、エステル、ケトン、グリコールエーテル、および/またはグリシルエーテルエステルが挙げられる。特定の実施形態では、本開示の未硬化のコーティング組成物は、この未硬化のコーティング組成物の全重量に基づいて、25重量%〜70重量%、特定の実施形態では、35重量%〜55重量%の範囲の量の溶媒を含有し得る。特定の実施形態では、本開示のコーティング組成物は、低いレベルの揮発性有機化合物(「VOC」)を有し得る。VOCとは、形成するコーティング組成物を含有する溶液および/または分散液中での有機溶媒の量を意味する。例えば、特定の実施形態では、コーティング組成物は、700g/L未満、特定の実施形態では、600g/L未満のVOCを有し得る。
【0090】
特定の実施形態では、本開示のコーティング組成物は、この硬化可能組成物の全重量の0重量%〜5重量%、特定の実施形態では、0重量%〜2重量%の範囲の量のレオロジー調整剤、チキソトロープ剤および/または流動制御剤を含有できる。適切なレオロジー調整剤およびチキソトロープ剤の例には、粘土、ポリアミド、不飽和ポリアミンアミドの塩、ヒュームドシリカ、非晶質シリカ、および/またはキサンタンガムが挙げられる。
【0091】
特定の実施形態では、本開示の硬化可能組成物は、この硬化可能組成物の全固形重量の0重量%〜5重量%、特定の実施形態では、1重量%〜3重量%の量の湿潤剤および/または界面活性剤を含有し得る。適切な湿潤剤および/または界面活性剤の例には、低分子量不飽和ポリカルボン酸、フッ化化合物、および/またはスルホニルが挙げられる。
【0092】
特定の実施形態では、本開示のコーティング組成物は、このコーティング組成物の全固形重量の0重量%〜0.1重量%、特定の実施形態では、0重量%〜0.02重量%の量のUV安定化剤を含有し得る。
【0093】
本開示のコーティング組成物は、色を与えるために、染料および/または顔料を含有できる。特定の実施形態では、本開示の未硬化コーティング組成物は、この硬化可能組成物の全固形重量の0重量%〜1重量%、特定の実施形態では、0重量%〜0.5重量%の範囲の量の染料および/または顔料を含有し得る。染料および/または顔料の例には、二酸化チタン、金属顔料、無機顔料、タルク、マイカ、酸化鉄、酸化鉛、酸化クロム、クロム酸鉛、カーボンブラック、導電性顔料(例えば、導電性カーボンブラックおよび炭素繊維)、および/またはナノ材料が挙げられる。
【0094】
本開示の重合可能組成物で有用な可塑剤には、フタル酸エステル、塩素化パラフィン、水素化テルフェニル、および/または部分的に水素化されたテルフェニルが挙げられる。硬化可能組成物は、この硬化可能組成物の全固形重量の1重量%〜40重量%、特定の実施形態では、1重量%〜10重量%の範囲の量の可塑剤を含有し得る。
【0095】
特定の実施形態では、硬化可能組成物は、腐食防止剤を含有し得る。腐食防止剤は、例えば、異なる金属表面の接触腐食を少なくできる。特定の実施形態では、腐食防止剤には、クロム酸ストロンチウム、クロム酸カルシウム、および/またはクロム酸マグネシウムが挙げられる。芳香族トリアゾールもまた、アルミニウムおよび鋼鉄の表面の腐食を防止するのに使用され得る。特定の実施形態では、犠牲的酸素スカベンジャー(sacrificial oxygen scavenger)(例えば、Zn)は、腐食防止剤として使用され得る。特定の実施形態では、硬化可能組成物は、この硬化可能組成物の全重量の10重量%の量の腐食防止剤を含有し得る。
【0096】
本開示の硬化可能組成物は、有利には、封止剤として、特に、低温柔軟性および燃料耐性が望ましい属性である場合の封止剤として、使用され得る。例えば、硬化可能組成物は、航空機および航空宇宙用封止剤として、使用され得る。用語「封止剤」、「封着」または「シール」は、本明細書中にて、硬化したときに大気の状態(例えば、湿度および温度)に耐え、少なくとも部分的に物質(例えば、水、水蒸気、燃料、および/または他の液体および気体)の移動を阻止する性能を有する硬化可能組成物を意味する。
【0097】
本開示の硬化可能組成物は、ポリチオエーテルを含有する第一成分(これはまた、本明細書中では、ベース成分と呼ばれている)と多塩基酸ベースのポリエポキシを含有する第二成分(これはまた、促進剤成分と呼ばれている)とを混ぜ合わせることにより、調製され得る。第一および第二成分は、例えば、動的混合ヘッドを取り付けたメーター混合装置を使用して、所望の比で混ぜ合わせられ得る。このメーター混合装置からの圧力は、第一および第二成分を、この動的混合ヘッドおよび押出ダイスを通して押し込み得る。第一および第二成分は、封止される表面に塗布する直前に、混ぜ合わせられ得る。
【0098】
本開示の硬化可能組成物は、金属表面(例えば、ステンレス鋼を含むMil−Cおよび/またはAMS表面、アルミニウム、および/またはAlcalad表面)を密封する封止剤として、有用であり得る。
【0099】
特定の実施形態では、密封される表面は、微粒子および/または表面膜を除去できる任意の方法により、硬化可能組成物を塗布する前に、処理され得る。例えば、特定の実施形態では、表面は、揮発性溶媒(例えば、エタノール、メタノール、ナフサ、ミネラルスピリット、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、および/または他の適切な溶媒)を保持するリントなし織物を使用して、溶媒で拭われ得る。特定の実施形態では、市販の清浄溶媒(例えば、DESOCLEAN 120(これは、PRC−DeSoto International,Inc.から市販されている)が使用され得る。
【0100】
本開示の硬化可能組成物は、当業者に公知の任意の手段により、適当なとき、押出、プレス、グラウチング、コーキング、延展などを含めた特定の用途のために、表面に塗布できる。
【0101】
本開示の硬化可能組成物は、当業者により決定され得る推奨された手順に従って、特定の実施形態では、周囲温度で、硬化され得る。特定の実施形態では、硬化可能組成物は、0℃の最低温度、特定の実施形態では、−10℃の最低温度、特定の実施形態では、−20℃の最低温度で、硬化可能である。硬化可能とは、1つまたはそれ以上の化学反応を受けて、この硬化可能組成物の成分化合物の少なくとも一部の間(例えば、ポリチオエーテルと多塩基酸ベースのエポキシとの間)で、安定な共有結合を形成できることを意味する。例えば、ポリチオエーテルおよび多塩基酸ベースのポリエポキシを含有する硬化可能組成物について、その硬化プロセス中にて、ポリチオエーテルの反応性基は、エポキシ基と反応して、共有結合を形成する。
【0102】
本開示の硬化可能組成物の塗布から生じるシールの統合性、耐湿性および燃料耐性は、例えば、AMS 3265B仕様で確認される試験を実行することにより、評価され得る。許容できるシールは、密接であり、そして湿気および航空機燃料に耐性である。
【0103】
硬化したとき、本開示の硬化可能組成物は、例えば、特定の航空機および航空宇宙用途において、燃料への露出が予想されるとき、封止剤で使用するのに有利な特性を示す。一般に、航空機および航空宇宙用途で使用される封止剤は、以下の特性を示すことが望ましい:Aerospace Material Specification(AMS)3265B基板における1線形インチ(pli)あたり20ポンドより高い剥離強度(これは、AMS 3265B試験仕様に従って、乾燥条件下、JRFに7日間の浸漬に続いて、3%NaCl溶液に浸漬を続けて、測定した);1平方インチあたり300ポンド(psi)と400psiの間の引張り強度;1線形インチあたり50ポンド(pli)より高い引裂き強度;250%と300%の間の伸長度;および40 Durometer Aより高い硬度。航空機および航空宇宙用途に適切なこれらのおよび他の硬化された封止剤の特性は、AMS 3265Bで開示されており、その全内容は、本明細書中で参考として援用されている。硬化したとき、航空機および航空宇宙用途で使用される本開示の硬化可能組成物は、60℃(140°F)および周囲圧力で、JRF1型において、1週間の浸漬に続いて、25%以下の容量パーセント膨潤を示す。他の特性、範囲、および/または閾値は、他の封止剤用途に適切であり得る。
【0104】
本開示の硬化可能組成物を使用する実用的なシールを形成する時間は、当業者に理解され得るように、また、適切な標準および仕様の要件で規定されるように、いくつかの要因に依存し得る。一般に、本開示の硬化可能組成物は、24時間〜30時間以内に接着強度を発生し、そして全接着強度の90%は、混合および表面への塗布に続いて、2日間〜3日間で発生する。一般に、本開示の硬化した組成物の完全接着強度だけでなく他の特性は、混合および硬化可能組成物の表面への塗布に続いて、7日間以内に完全に発生する。
【0105】
硬化したとき、本開示の硬化可能組成物は、燃料耐性を示す。燃料耐性の尺度は、本開示の硬化した組成物の炭化水素燃料への長期間曝露後の容量パーセント膨潤であり、これは、ASTM D792、AMS 3269またはAMS 3265Bに記載される方法と類似の方法を使用して、定量的に測定され得る。それゆえ、特定の実施形態では、硬化したとき、本開示の硬化可能組成物は、60℃(140°F)で、周囲圧力で、ジェット参照流体(jet reference fluid)(JRF)タイプ1に1週間浸漬したのに続いて、25%以下の容量パーセント膨潤、特定の実施形態では、20%以下の容量パーセント膨潤を示す。特定の実施形態では、この硬化した硬化可能組成物の容量パーセント膨潤は、20%以下である。JRF1型は、燃料耐性を測定するために本明細書中で使用する場合、以下の組成を有する(AMS 2629、1989年7月1日に刊行された)、セクション3.1.1以下参照、これは、SAE(Society of Automotive Engineers,Warrendale,Pennsylvania)から入手できる:28±1容量%のトルエン、34±1容量%のシクロヘキサン、38±1容量%のイソオクタン、1±0.005容量%の第三級ジブチルジスルフィド、および0.015±0.0015重量%の他の4成分(第三級ブチルメルカプタンを含めて)。
【0106】
特定の処方物に依存して、本開示の硬化可能組成物は、混合の1時間後、5g/分〜10g/分またはそれ以下の範囲の低い押出速度と共に、500g/分程度またはそれより高い初期押出速度を示し得る。
【0107】
本開示の硬化可能組成物は、硬化したとき、−55℃以下、特定の実施形態では、−60℃以下、特定の実施形態では、−65℃以下のTを示し得る。ガラス転移温度Tは、示差走査熱量測定により、測定できる。
【0108】
特定の実施形態では、本開示の硬化可能組成物は、AMS 3265Bに従って測定したとき、1平方インチあたり、20ポンドより高い剥離強度を示す。特定の実施形態では、本開示の硬化可能組成物は、多塩基酸ベースのエポキシなしで処方された硬化可能組成物と比較して、高い腐食耐性を示す。腐食耐性は、例えば、AMS 3265Bで明記された適切な試験方法により測定され得る。
【実施例】
【0109】
本開示の実施形態は、以下の実施例を参照して、さらに規定され得、これらは、本開示の組成物の詳細な調製および本開示の組成物の特性を記述している。本開示の範囲から逸脱することなく、物質および方法の両方に対して、多くの改良が実行され得ることは、当業者に明らかである。
【0110】
以下の実施例において、以下の略語は、以下の意味を有する。もし、略語が定義されていないなら、それは、その一般的に許容される意味を有する。
【0111】
AGE=アリルグリシジルエーテル
AMS=Aerospace Material Specifications
ASTM=American Society for Testing and Materials
BSS=Boeing Specification Support Standard
%CF=凝集破壊パーセント
DABCO=1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
DBU=1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
DEG−DVE=ジエチレングリコールジビニルエーテル
DMDO=ジメルカプトジオキサオクタン
DMDS=ジメルカプトジエチルスルフィド
g=グラム
エポキシ/HS=エポキシ/メルカプタン比
JRF=ジェット参照燃料
ml=ミリリットル
MiI−C=Military Specification C
mmHg=水銀柱ミリメートル
pli=1線形インチあたりのポンド数(kg/cm)
psi=1平方インチあたりのポンド数
TAC=シアヌル酸トリアリル。
【0112】
(接着性試験)
AMS 3265に従って、剥離強度を測定した。
【0113】
(スカイドロール(Skydrol)溶媒耐性試験)
コーティング系を有する試験パネルを、70℃で、最低30日間にわたって、スカイドロールジェット航空機燃料に浸漬することにより、スカイドロール溶媒耐性試験を実行した。コーティング系を有する試験パネルを取り除き、そして乾燥する。次いで、このコーティング系のペンシル強度を測定する。コーティング系は、そのペンシル強度が少なくとも「H」であるとき、スカイドロール溶媒耐性試験に合格する。
【0114】
(実施例1)
(ベース組成物)
5リットルの四口フラスコに、撹拌しながら、2,356.4g(12.83モル)のDMDOを充填し、続いて、403.56g(3.5モル)のAGEを充填した。その混合物を、70℃で、1時間加熱した。トリエチルアミン(0.69g、0.0068モル)を加え、この混合物を、70℃で、3.5時間加熱した。70℃で、2.5時間にわたって、116.35g(0.46モル)のTACおよび1,147.28g(7.25モル)のDEG−DVEの溶液を加えた。その混合物を、70℃で、さらに1時間撹拌した。1時間の間隔で、70℃の温度で、9部のVAZO67(0.33g、全仕込みの0.008%)を加えて、この反応を完結させた。この混合物を、70℃/0.5mmHgで、2時間脱気して、淡黄色で臭気の少ない液状ポリチオエーテルである重合体1を得、これは、室温で、160ポイズの粘度を示した。収量は、4.023Kg(100%)であった。このポリチオエーテル重合体は、4℃(39°F)の温度で、少なくとも365日間液状のままであった。
【0115】
ポリチオエーテル重合体1を、基剤であるベース1に処方した。ポリチオエーテル重合体1を含有する基剤の組成は、表1で提供する。
【0116】
(表1.ベース1の組成)
【0117】
【表1】

表2で提供したように、ダイマー酸ベースのポリエポキシを含有する促進剤組成物を調製した。
【0118】
(表2.促進剤の組成)
【0119】
【表2】

ベース1および促進剤Aを異なるエポキシ/メルカプタン比で混ぜ合わせ、Mil−C表面に塗布し、そして硬化した。
【0120】
乾燥状態とJRF 1型に60℃(140°F)で7日間浸漬した後との両方で、硬化した封止剤の剥離強度を評価した。結果は、表3で提供する。
【0121】
(表3.ベース1および促進剤Aの硬化可能組成物の剥離強度)
【0122】
【表3】


【0123】
(実施例2)
(比較例)
(ベース組成物)
1リットルの四口フラスコに、撹拌しながら、284.07g(1.56モル)のDMDOおよび60.13g(0.38モル)のDMDSを充填し、続いて、43.82g(0.38モル)のAGEを充填した。その混合物を、40分間撹拌した。トリエチルアミン(0.18g、0.0018モル)を加え、この混合物を、70℃で、2時間加熱した。次いで、70℃で、30分間にわたって、9.48g(0.038モル)のTACおよび204.94g(1.30モル)のDEG−DVEの溶液を加えた。次いで、その混合物を、70℃で、さらに30分間撹拌した。この反応混合物の温度を70℃で維持しながら、1時間間隔で、7部のフリーラジカル開始剤であるVAZO67(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))(これは、DuPontから市販されている)(0.145g、全仕込みの0.024%)を加えて、この反応を完結した。次いで、その反応混合物を、70℃/0.5mmHgで、2時間脱気して、淡黄色で臭気の少ない液状ポリチオエーテルである重合体2を得、これは、室温で、92ポイズの粘度を示した。反応収量は、602g(100%)であった。このポリチオエーテル重合体は、4℃(39°F)の温度で、56日間液状のままであった。
【0124】
ポリチオエーテルである重合体2を基剤であるベース2に処方した。ポリチオエーテル重合体2を含有するベース2の組成は、表4で提供する。
【0125】
(表4.ベース2の組成)
【0126】
【表4】

(促進剤の組成)
ベース2を使用して封止剤を形成するのに使用される促進剤の組成は、表5で提示する。
【0127】
(表5.促進剤1、2および3の組成)
【0128】
【表5】

AMS 3265に従って、乾燥条件下、JRFにて7日間浸漬した後、および3%NaCl溶液に浸漬した後で決定されたこれら封止剤のAMS基板における剥離強度(pli/%CF)を、表6で提示する。
【0129】
(表6.ベース2および促進剤1、2および3を使用して形成された封止剤の剥離強度)
【0130】
【表6】

本開示の他の実施形態は、本明細書を考慮し本開示を実施することから、当業者に明らかとなる。本明細書および実施例は、例示としてのみ考慮され、本開示の真の範囲および精神は、上記請求の範囲により示されると解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含有する、硬化可能組成物:
ポリチオエーテル;および
多塩基酸ベースのポリエポキシ。
【請求項2】
前記多塩基酸ベースのポリエポキシが、ダイマー酸ベースのポリエポキシから選択される、請求項1に記載の硬化可能組成物。
【請求項3】
前記ダイマー酸ベースのポリエポキシが、ダイマー酸ベースのジエポキシドから選択される、請求項2に記載の硬化可能組成物。
【請求項4】
前記ダイマー酸ベースのポリエポキシが、C10〜60脂肪酸モノマーから誘導される、請求項2に記載の硬化可能組成物。
【請求項5】
前記ポリチオエーテルが、式1の化合物から選択される、請求項1に記載の硬化可能組成物:
【化1】

ここで、
Aは、式2(a)および式2(b)から選択されたセグメントから選択される:
【化2】

ここで、
各Rは、別個に、C2〜6n−アルキレン、C3〜6分枝アルキレン、C6〜8シクロアルキレン、C6〜10アルキルシクロアルキレン、−[−(CH−X−]−(CH−、および−[−(CH−X−]−(CH−から選択され、ここで、少なくとも1個の−CH−基は、少なくとも1個のメチル基で置換されている;
ここで、
各Xは、別個に、O、S、−NH−および−NR−から選択され、ここで、各Rは、水素および−CHから選択される;
pは、2〜6の整数である;
qは、1〜5の整数である;そして
rは、2〜10の整数である;
各Rは、別個に、O、C2〜6アルキレンオキシ、およびC5〜12シクロアルキレンオキシから選択され、
各Rは、別個に、−CH−CH−、および電子吸引基で共役されたオレフィンから選択される;
各Rは、別個に、C2〜10アルキレンおよびC2〜10アルキレンオキシから選択される;
各Rは、別個に、チオール基、ヒドロキシル基、アミン基、およびビニル基から選択される;そして
nは、該ポリチオエーテル重合体の数平均分子量が500〜20,000ダルトンの範囲となるように選択された整数である;
ここで、式2(a)のセグメントと式2(b)のセグメントとの重量比は、2:1〜3:1の範囲である、
硬化可能組成物。
【請求項6】
前記ポリチオエーテルが、4℃またはそれ以下の温度で、液体である、請求項5に記載の硬化可能組成物。
【請求項7】
前記ポリチオエーテルが、式3の化合物から選択される、請求項1に記載の硬化可能組成物:
【化3】

ここで、
zは、3〜6の整数である;
Bは、z価基である;
Aは、式2(a)および式2(b)から選択されたセグメントから選択される:
【化4】

ここで、
各Rは、別個に、C2〜6n−アルキレン、C3〜6分枝アルキレン、C6〜8シクロアルキレン、C6〜10アルキルシクロアルキレン、−[−(CH−X−]−(CH−、および−[−(CH−X−]−(CH−から選択され、ここで、少なくとも1個の−CH−基は、少なくとも1個のメチル基で置換されている;
ここで、
各Xは、別個に、O、S、−NH−、および−NR−から選択され、ここで、各Rは、水素および−CHから選択され、
pは、2〜6の整数である;
qは、1〜5の整数である;そして
rは、2〜10の整数である;
各Rは、別個に、O、C2〜6アルキレンオキシ、およびC5〜12シクロアルキレンオキシから選択される;
各Rは、別個に、−CH−CH−、および電子吸引基で共役されたオレフィンから選択され;
各Rは、別個に、C2〜10アルキレン、およびC2〜10アルキレンオキシから選択され、
各Rは、別個に、チオール基、ヒドロキシル基、アミン基、およびビニル基から選択される;そして
nは、該ポリチオエーテル重合体の数平均分子量が500〜20,000ダルトンの範囲となるように選択された整数である;
ここで、式2(a)のセグメントと式2(b)のセグメントとの重量比は、2:1〜3:1の範囲である、
硬化可能組成物。
【請求項8】
前記ポリチオエーテルが、4℃またはそれ以下の温度で、液体である、請求項7に記載の硬化可能組成物。
【請求項9】
前記ポリチオエーテルが、平均官能性が2.05〜3の範囲である1個より多いポリチオエーテルを含む、請求項7に記載の硬化可能組成物。
【請求項10】
前記ポリチオエーテルが、以下のプロセスにより形成される、請求項1に記載の硬化可能組成物:
第一ポリチオールと、1個のエポキシ基およびエポキシ基以外の第二基を含む化合物とを反応させて第一プレポリマーを形成する工程であって、該化合物はチオール基と反応性であり、ここで、該ポリチオールは、該第二基と優先的に反応する、工程;
該第一プレポリマーおよび第二ポリチオールと該エポキシ基とを反応させて、第二プレポリマーを形成する工程;そして
該第二プレポリマーおよび第三ポリチオールとポリビニルエーテルとを反応させる工程。
【請求項11】
前記第二および第三ポリチオールが、未反応第一ポリチオールを含む、請求項10に記載の硬化可能組成物。
【請求項12】
前記第一ポリチオール、第二ポリチオールおよび第三ポリチオールが、同じポリチオールである、請求項10に記載の硬化可能組成物。
【請求項13】
前記ポリチオエーテルが、以下のプロセスにより形成される、請求項1に記載の硬化可能組成物:
第一ポリチオールと、1個のエポキシ基およびエポキシ基以外の第二基を含む化合物とを反応させて、この化合物はチオール基と反応性であり第1プレポリマーを形成し、ここで、該ポリチオールは、該第二基と優先的に反応する;
該第一プレポリマーおよび第二ポリチオールと該エポキシ基とを反応させて、第二プレポリマーを形成する工程;そして
該第二プレポリマーおよび第三ポリチオールとポリビニルエーテルおよび多官能化剤とを反応させる工程。
【請求項14】
前記第二および第三ポリチオールが、未反応第一ポリチオールを含む、請求項13に記載の硬化可能組成物。
【請求項15】
前記第一ポリチオール、第二ポリチオールおよび第三ポリチオールが、同じポリチオールである、請求項13に記載の硬化可能組成物。
【請求項16】
硬化したとき、前記硬化可能組成物が、AMS 3265に従って測定したとき、1線形インチあたり、少なくとも20ポンドの剥離強度を示す、請求項1に記載の硬化可能組成物。
【請求項17】
以下の工程を包含する、硬化可能組成物を製造する方法;
ポリチオエーテル重合体を含有する第一成分を調製する工程;
多塩基酸ベースのポリエポキシを含有する第二成分を調製する工程;および
該第一成分と該第二成分とを混ぜ合わせて、硬化可能組成物を形成する工程。
【請求項18】
以下の工程を包含する、封止剤として請求項1に記載の硬化可能組成物を使用する方法:
(a)該硬化可能組成物を調製する工程;
(b)表面を処理する工程;
(c)該硬化可能組成物を該表面に塗布する工程;および
(d)該硬化可能組成物を硬化する工程。
【請求項19】
表面と、該表面に塗布された請求項1に記載の硬化可能組成物とを含む、シール。
【請求項20】
請求項18に記載の方法により形成された、シール。

【公表番号】特表2008−530270(P2008−530270A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554214(P2007−554214)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/003725
【国際公開番号】WO2006/086211
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(502328466)ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド (29)
【Fターム(参考)】