説明

燃料電池の制御システムおよび燃料電池の制御方法

【課題】燃料電池の活性化過電圧を効率的に低減することができる燃料電池の制御システムおよび燃料電池の制御方法を提供する。
【解決手段】本発明の燃料電池の制御システム100は、燃料電池110、水分供給手段140、および制御手段160を有する。燃料電池110は、カチオン成分とアニオン成分とを有するイオン伝導体を電解質膜として用いている。水分供給手段140は、燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化ガスの少なくとも一方に水分を供給する。制御手段160は、燃料電池110の燃料極および空気極のうち一方の電極の過電圧に応じて水分供給手段140を制御することにより、当該電極の触媒層に水分を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の制御システムおよび燃料電池の制御方法に関する。特に、本発明は、イオン伝導体を電解質膜として用いた燃料電池の制御システムおよび燃料電池の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の少ない電源として、燃料電池が注目されている。燃料電池は、酸素および水素の供給を受けて電力を発生する。このような燃料電池としては、イオン液体を電解質膜に用いた燃料電池が知られている。イオン液体は、蒸気圧がほとんどない、不燃性または難燃性である、イオン伝導性を有する、分解電圧が水よりも高い、液体温度領域が水よりも広いなどの電解質膜として優れた特性を有している。
【0003】
しかしながら、イオン液体を電解質膜に用いた燃料電池では、燃料電池の活性化過電圧が高くなるという問題がある。下記の特許文献1には、燃料電池のアノード側に酸化剤を供給することによって電極触媒層近傍で水を生成し、活性化過電圧を低減する技術が開示されているが、より効率的に活性化過電圧を低減することが望まれている。
【特許文献1】特開2007−018735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものである。したがって、本発明の目的は、イオン伝導体を電解質膜として用いた燃料電池の活性化過電圧を効率的に低減することができる燃料電池の制御システムおよび燃料電池の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0006】
本発明の燃料電池の制御システムは、燃料電池、水分供給手段、および制御手段を有する。前記燃料電池は、カチオン成分とアニオン成分とを有するイオン伝導体を電解質膜として用いている。前記水分供給手段は、前記燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化ガスの少なくとも一方に水分を供給する。前記制御手段は、前記燃料電池の燃料極および空気極のうち一方の電極の過電圧に応じて前記水分供給手段を制御することにより、当該電極の触媒層に水分を供給する。
【0007】
本発明の燃料電池の制御方法は、カチオン成分とアニオン成分とを有するイオン伝導体を電解質膜として用いた燃料電池の制御方法である。本発明の燃料電池の制御方法は、前記燃料電池の燃料極および空気極のうち一方の電極の過電圧に応じて、前記燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化ガスの少なくとも一方に水分を供給することにより、当該電極の触媒層に水分を供給する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の燃料電池の制御システムおよび燃料電池の制御方法によれば、燃料電池の電極の過電圧に応じて当該電極の触媒層に水分が供給されるため、燃料電池の活性化過電圧を効率的に低減することができる。その結果、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態では、本発明の燃料電池の制御システムおよび燃料電池の制御方法を用いて、燃料電池のアノード触媒層に水分を供給する場合を例にとって説明する。図中、同様の部材には同一の符号を用いた。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における燃料電池の制御システムの概略構成を示す図である。図1に示すとおり、本発明の第1の実施の形態における燃料電池の制御システム100は、燃料電池110、コンプレッサ120、燃料タンク130、加湿器140、検出部150、およびコントロールユニット160を備える。ここで、燃料電池110とコンプレッサ120とは、空気供給用配管121を介して接続されている。また、燃料電池110と燃料タンク130とは、水素供給用配管131を介して接続されている。
【0011】
燃料電池110は、水素および酸素の供給を受けて電力を生成するものである。燃料電池110は、単位電池としての単セルが複数積層されて構成されており、各単セルは、カチオン成分とアニオン成分とを有するイオン伝導体を電解質膜として備える。燃料電池110の詳細な構成については後述する。
【0012】
コンプレッサ120は、燃料電池110にカソードガス(酸素を含む酸化ガス)を供給するものである。コンプレッサ120は、空気供給用配管121を通じて、燃料電池110のカソード(空気極)にカソードガスを供給する。空気供給用配管121の上流側の端部は、コンプレッサ120に接続されており、下流側の端部は、燃料電池110に接続されている。また、空気供給用配管121の下流部には、酸素流量調整バルブ125が設けられている。
【0013】
燃料タンク130は、燃料電池110に供給されるアノードガス(水素を含む燃料ガス)を貯蔵するものである。燃料タンク130は、水素供給用配管131を通じて、燃料電池110のアノード(燃料極)にアノードガスを供給する。水素供給用配管131の上流側の端部は、燃料タンク130に接続されており、下流側の端部は、燃料電池110に接続されている。また、水素供給用配管131の上流部には、加湿器140が設けられており、下流部には、水素流量調整バルブ135が設けられている。
【0014】
加湿器140は、水分供給手段として、アノードガスを加湿するものである。加湿器140は、酸素排出用配管141を介して燃料電池110と接続されており、燃料電池110で生成される水を利用して、アノードガスを加湿する。燃料電池110で生成される水は、酸素排出用配管141を通じて、カソードガスとともに加湿器140に供給される。酸素排出用配管141の上流側の端部は、燃料電池110に接続されており、下流側の端部は、加湿器140に接続されている。また、酸素排出用配管141には、水分を含むカソードガスの供給を制御するための切替バルブ(三方弁)145が設けられている。なお、本実施の形態の加湿器140自体は、膜を通じて1次流体と2次流体との間で水分を移動させる一般的な膜式加湿器であるため、詳細な説明は省略する。また、加湿器140は、コントロールユニット160によって制御され、アノードガスの加湿度を調整することができる。
【0015】
検出部150は、電位検出手段として、燃料電池110のアノード過電圧を検出するものである。検出部150は、燃料電池110に取り付けられる電圧センサを含み、燃料電池110を構成する複数の単セルのうち一の単セルのアノード過電圧を検出する。検出部150からの信号は、コントロールユニット160に送信される。
【0016】
コントロールユニット160は、燃料電池110のアノード過電圧に応じて加湿器140を制御することにより、アノード触媒層に水分を供給する制御手段である。より具体的には、コントロールユニット160は、検出部150からの信号を受信して、加湿器140の出力を制御することにより、アノード触媒層へ供給されるアノードガスの加湿度を調整する。また、コントロールユニット160は、コンプレッサ120、酸素流量調整バルブ125、水素流量調整バルブ135、および切替バルブ145を制御する。
【0017】
次に、図2を参照しつつ、本実施の形態における燃料電池110の構成を説明する。本実施の形態の燃料電池110は、アノードガスとカソードガスとの反応により起電力を生じる単位電池としての単セルが複数積層されて構成されたものである。
【0018】
図2は、図1に示す燃料電池の制御システムにおける燃料電池のセル構造を示す断面図である。上述したとおり、本実施の形態の燃料電池110は、カチオン成分とアニオン成分とを有するイオン伝導体を電解質膜として用いている。
【0019】
図2に示すとおり、燃料電池110を構成する各単セル111は、電解質膜112と、電解質膜112の一方の面に設けられるアノード113と、電解質膜112の他方の面に設けられるカソード114と、を備える。アノード113、電解質膜112、およびカソード114は、セパレータ115,116によって挟み込まれている。セパレータ115,116には、アノードガス流路およびカソードガス流路をなす複数の溝部が形成されている。
【0020】
電解質膜112は、イオン伝導体として、分子性カチオンおよび分子性アニオンから形成されるイオン液体(常温溶融塩)を含む。電解質膜112は、たとえば、イオン液体を多孔質支持体に含浸させて形成される。本実施の形態の電解質膜112は、たとえば、イミダゾリウム誘導体カチオンとトリフルオロメタンスルホン酸アニオンとを含む親水性のイオン液体を含む。あるいは、電解質膜112は、イミダゾリウム誘導体カチオン、ピリジニウム誘導体カチオン、ピロリジニウム誘導体カチオン、およびアンモニウム誘導体カチオンよりなる群から選択された少なくとも1種の分子性カチオンと、四フッ化ホウ素アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、フッ化水素アニオン[(HFn)F(望ましくは、n=1〜3)]、硫酸一水素アニオン、およびリン酸二水素アニオンよりなる群から選択された少なくとも1種の分子性アニオンと、を含む。なお、イオン液体であれば、カチオン成分及びアニオン成分の双方がそれぞれ分子性カチオン及び分子性アニオンでなくともよい。
【0021】
アノード113は、アノード触媒層113Aおよびアノードガス拡散層113Bを備える。カソード114は、カソード触媒層114Aおよびカソードガス拡散層114Bを備える。このようなアノード触媒層113A、カソード触媒層114A、アノードガス拡散層113B、およびカソードガス拡散層114Bには、固体高分子形燃料電池などに用いられる一般的な材料を用いることができるため詳細な説明は省略する。
【0022】
また、図2に示すとおり、電解質膜112には、白金よりなる導線118が電気的に接続されている。導線118は、電解質膜112に接続されるガス供給配管119の内部に配置されており、ガス供給配管119には水素ガスが供給されている。ガス供給配管119を通じて供給される水素ガスは電解質膜112に接触して、電解質膜112に接続されるガス排出配管(不図示)を通じて排出される。このような導線118は、参照極の役割を果たし、検出部150は、参照極の電位を基準とするアノード113の電位をアノード過電圧として検出する。なお、水素ガス流入用配管119に供給される水素ガスは、加湿されて水蒸気を含んでいることが望ましい。
【0023】
以上のとおり構成される本実施の形態の燃料電池110は、発電時において、特に、アノード過電圧が増加する(図3参照)。アノード過電圧は、アノード活性化過電圧、濃度過電圧(拡散過電圧)、および抵抗過電圧から構成される。そして、アノード活性化過電圧は、水素がアノード触媒層113Aでプロトンとなる際の活性化エネルギーによるエネルギー損失であって、アノード触媒層113Aの性能に起因するものである。本実施の形態における燃料電池の制御システム100は、上記アノード過電圧のうちアノード活性化過電圧を効率的に低減するために、アノード過電圧に応じてアノードガスを加湿する。以下、本実施の形態における燃料電池の制御方法について詳細に説明する。
【0024】
図4は、本実施の形態の燃料電池の制御システムにおける処理を説明するためのフローチャートである。本実施の形態における燃料電池の制御方法は、アノード過電圧が大きいほど多量の水分がアノード触媒層113Aに供給されるようにアノードガスの加湿度を制御して、アノード活性化過電圧を低減するものである。なお、以下に示す処理では、初期段階として、燃料電池110で生成される水は加湿器140に供給されておらず、加湿されていないアノードガスが燃料電池110に供給されている。
【0025】
図4に示すとおり、本実施の形態における燃料電池の制御方法では、まず、燃料電池110のアノード過電圧が検出される(ステップS101)。本実施の形態では、検出部150が参照極を基準とするアノード113の電位をアノード過電圧として検出し、検出した電圧データをコントロールユニット160に送信する。
【0026】
次に、検出されたアノード過電圧が閾値以上か否かが判断される(ステップS102)。本実施の形態では、予め閾値が設定されており、コントロールユニット160が、アノード過電圧と閾値とを比較する。なお、ここで設定されている閾値は、たとえば、50mVであって、これは活性化過電圧の上昇が許容される値である。
【0027】
アノード過電圧が閾値未満の場合(ステップS102:NO)、アノード過電圧の上昇は許容範囲内であるとして、アノード過電圧が閾値以上になるまで待機する。一方、アノード過電圧が閾値以上の場合(ステップS102:YES)、アノードガスが加湿される(ステップS103)。本実施の形態では、切替バルブ145が制御されて、燃料電池110から排出されるカソードガスが加湿器140に供給される。加湿器140は、カソードガスに含まれる水分を回収して、回収した水分をアノードガスに移動させる。その結果、加湿器140によって加湿されたアノードガスが燃料電池110に供給されて、アノード触媒層113Aに水分が供給される。アノード触媒層113Aに水分が供給されることにより、アノード活性化電圧が低減される。
【0028】
次に、アノード過電圧が再び検出され、検出されたアノード過電圧が閾値未満か否かが判断される(ステップS104,S105)。アノード過電圧が閾値未満の場合(ステップS105:YES)、アノード過電圧が許容範囲まで低下したとして、処理が終了される。本実施の形態では、燃料電池110から排出されるカソードガスが加湿器140に供給されることなく排出されるように切替バルブ145が制御される。
【0029】
一方、アノード過電圧が閾値以上の場合(ステップS105:NO)、検出されるアノード過電圧に対応するアノードガスの加湿度が算出される(ステップS106)。より具体的には、アノード過電圧が大きいほど多量の水分がアノード触媒層113Aに供給されるようにアノードガスの加湿度が算出される。本実施の形態では、アノード過電圧と加湿度との対応関係を示す換算テーブルが予め作成されており、コントロールユニット160は、ステップS105に示す処理で検出されたアノード過電圧に対応するアノードガスの加湿度を算出する。
【0030】
次に、アノードガスの加湿度が変更される(ステップS107)。より具体的には、ステップS106に示す処理で算出された加湿度にアノードガスの加湿度がなるように、コントロールユニット160が加湿器140の出力を制御する。その結果、検出されるアノード過電圧が大きいほどアノードガスの加湿度が上昇されて、アノード触媒層113Aに多量の水分が供給される。そして、アノード過電圧が閾値未満となるまで、ステップS103以下の処理が繰り返される。
【0031】
以上のとおり、図4に示すフローチャートの処理によれば、まず、燃料電池110のアノード過電圧が検出され、検出されるアノード過電圧に応じて、アノードガスが加湿される。より具体的には、アノード過電圧が大きいほど多量の水分がアノード触媒層113Aに供給されるように、加湿器140の出力が制御される。その結果、加湿されたアノードガスがアノード触媒層113Aに供給されて、燃料電池110のアノード活性化過電圧が低減される。なお、図4のステップS101に示す処理は、検出部150の処理に対応し、ステップS102〜S106に示す処理は、コントロールユニット160の処理に対応する。また、ステップS107に示す処理は、加湿器140の処理に対応する。
【0032】
図5は、図4のフローチャートに示す処理によるアノードガスの加湿度およびアノード過電圧の経時的な変化を説明するための図である。図5の実線は、アノード過電圧Vの経時変化を示し、図5の破線は、アノードガスの加湿度の経時変化を示す。図5に示すとおり、本実施の形態における燃料電池の制御方法では、アノード過電圧Vが大きいほど多量の水が供給されるようにアノードガスの加湿度が増加される。その結果、処理開始直後は、アノード過電圧Vが増加するとともに、アノードガスの加湿度が増加する。その後、アノード触媒層113Aに水分が供給されることにより、アノード過電圧(すなわち、アノード活性化過電圧)が次第に低下する。アノード過電圧の低下にともなって、アノードガスの加湿度も低減される。
【0033】
次に、図6を参照しつつ、本実施の形態の燃料電池の制御システム100によるアノード活性化過電圧の低減効果を説明する
図6は、本実施の形態における燃料電池の制御システムによるアノード活性化過電圧の低減効果を説明するための図である。図6に示すとおり、50%の加湿度に加湿したアノードガスが供給される本実施の形態の燃料電池110では、加湿しない場合と比較して、アノード過電圧を半分程度に低下させることができる。したがって、アノード過電圧に応じて加湿度を調節することにより、アノード活性化過電圧を効率的に低減することができる。
【0034】
以上のとおり、本実施の形態の燃料電池の制御システム100は、アノード過電圧をモニタリングしつつ、アノードガスに水分を供給する。すなわち、本実施の形態の燃料電池の制御システム100は、アノード113でのエネルギー損失を詳細にモニタリングしつつ、アノード触媒層113Aへの水分の供給を直接的に制御する。したがって、本実施の形態の燃料電池の制御システム100は、アノード過電圧とカソード過電圧とを分離することなく燃料電池全体の電圧(IV特性)をモニタリングする場合と比較して、アノード触媒層113Aへの水分の供給をより細かく効率的に制御することができる。
【0035】
また、本実施の形態の燃料電池の制御システム100は、アノード113でのエネルギー損失を詳細にモニタリングしつつ、アノード触媒層113Aに水分を供給するため、アノード触媒層113Aの加湿を最小限に抑えることができる。したがって、本実施の形態の燃料電池の制御システム100は、アノード触媒層113Aに供給される水がガス拡散を妨げることなどによるエネルギー損失(発電性能の低下)を最小限に抑えることができる。
【0036】
さらに、本実施の形態では、カソード114よりも過電圧が高くなるアノード113のアノード過電圧をモニタリングして、アノード触媒層113Aに水分を供給するため、より効率的に燃料電池110の活性化過電圧を低減することができる。
【0037】
以上のとおり、説明した本実施の形態における燃料電池の制御方法では、アノード過電圧が大きいほど多量の水分がアノードガスに供給されるように加湿器140の出力が制御された。しかしながら、一定量の水分がアノードガスに供給されるように加湿器140が制御されてもよい。
【0038】
図7は、本実施の形態の燃料電池の制御システムにおける処理の変形例を説明するためのフローチャートである。図7に示すとおり、本変形例では、まず、燃料電池110のアノード過電圧が検出される(ステップS201)。本変形例では、検出部150が参照極を基準とするアノード113の電位をアノード過電圧として検出し、検出した電圧データをコントロールユニット160に送信する。
【0039】
次に、検出されたアノード過電圧が閾値以上か否かが判断される(ステップS202)。本変形例では、予め閾値が設定されており、コントロールユニット160が、アノード過電圧と閾値とを比較する。
【0040】
アノード過電圧が閾値未満の場合(ステップS202:NO)、アノード過電圧の上昇は許容範囲内であるとして、アノード過電圧が閾値以上になるまで待機する。一方、アノード過電圧が閾値以上の場合(ステップS202:YES)、アノードガスが加湿される(ステップS203)。本変形例では、切替バルブ145が制御されて、燃料電池110から排出されるカソードガスが加湿器140に供給される。加湿器140は、カソードガスに含まれる水分を回収して、回収した水分をアノードガスに移動させる。その結果、加湿器140によって加湿されたアノードガスは、燃料電池110のアノード113に供給され、アノード触媒層113Aに水分が供給される。アノード触媒層113Aに水分が供給されることにより、アノード活性化電圧が低減される。
【0041】
次に、所定時間経過したか否かが判断される(ステップS204)。所定時間経過していない場合(ステップS204:NO)、所定時間が経過するまで、アノードガスを加湿している状態が維持される。一方、所定時間経過した場合(ステップS204:YES)、処理が終了される。本変形例では、燃料電池110から排出されるカソードガスが加湿器140に供給されないように切替バルブ145が制御される。
【0042】
以上のとおり、図7に示すフローチャートの処理によれば、まず、燃料電池110のアノード過電圧が検出され、検出されるアノード過電圧に応じて、アノードガスが加湿される。そして、アノードガスが加湿される状態が所定時間維持される。その結果、加湿されたアノードガスがアノード触媒層113Aに供給されて、アノード活性化過電圧が低減される。
【0043】
なお、上述した実施の形態では、燃料電池110から排出されたカソードガスの水分を直接的にアノードガスに移動させるために、膜式加湿器を利用した。しかしながら、加湿器140は、膜式加湿器に限定されず、内部に貯蔵される水にガスを通過させるバブリング式加湿器、ガスに微細な水を噴霧するスプレー式加湿器、膜状の加湿部材にガスを通過させる透湿膜式加湿器、高湿度ガスと低湿度ガスとの交換により加湿する全熱交換式加湿器などを用いてもよい。この場合、燃料電池110で生成される水を、たとえば、加湿器内部の容器に貯蔵し、容器に貯蔵された水を利用して、アノードガスを加湿することができる。
【0044】
以上のとおり、説明された本実施の形態は、以下の効果を奏する。
【0045】
(a)本実施の形態の燃料電池の制御システムは、カチオン成分とアニオン成分とを有するイオン伝導体を電解質膜として用いた燃料電池と、燃料電池に供給されるアノードガスに水分を供給する加湿器と、燃料電池のアノード過電圧に応じて加湿器を制御することにより、アノード触媒層に水分を供給するコントロールユニットと、を有する。したがって、燃料電池のアノード活性化過電圧を効率的に低減することができる。その結果、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【0046】
また、本実施の形態の燃料電池の制御システムは、アノード触媒層への水分の供給を最小限に抑えることができるため、水分の供給によるエネルギー損失(発電性能の低下)を最小限に抑制することができる。また、アノードガスを加湿することにより、アノード触媒層に水分を供給することができる。
【0047】
(b)本実施の形態の燃料電池の制御システムは、燃料電池で生成される水を加湿器に供給する酸素排出用配管をさらに有し、加湿器は、燃料電池で生成される水を利用して、アノードガスに水分を供給する。したがって、加湿器の内部または外部に水貯蔵用容器を設けて水を貯蔵する必要がなく、水の凍結などの問題が発生しない。その結果、制御システムの始動性が向上される。また、制御システムのコストが抑えられる。
【0048】
(c)加湿器は、バブリング式加湿器、スプレー式加湿器、透湿膜式加湿器、膜式加湿器、全熱交換式加湿器、またはこれらの組み合わせを有する。したがって、所望の加湿度でアノードガスを加湿することができる。
【0049】
(d)本実施の形態の燃料電池の制御システムは、電解質膜に電気的に接続される参照極を基準とするアノードの電位をアノード過電圧として検出する検出部をさらに有する。したがって、アノード過電圧を検出することができる。
【0050】
(e)コントロールユニットは、検出部で検出されるアノード過電圧が大きいほど、多量の水分がアノード触媒層に供給されるように、加湿器を制御する。したがって、より効率的にアノード触媒層に水分を供給することができる。
【0051】
(f)コントロールユニットは、検出部で検出されるアノード過電圧が閾値以上の場合、加湿器を制御してアノード触媒層に水分を供給する。したがって、簡単な構成でアノード活性化過電圧を低減させることができる。
【0052】
(g)イオン伝導体は、分子性カチオンと分子性アニオンとを有する。したがって、電解質膜の設計を使用環境に合わせて適宜変更することができ、プロトン伝導性をより向上させることができる。
【0053】
(h)イオン伝導体は、分子性カチオンおよび分子性アニオンよりなるイオン液体を含む。したがって、さらに高いイオン伝導性を備えるため、プロトン伝導性をさらに向上させることができる。また、中温域(120℃程度)での運転が可能であるため、一般的なPEM型燃料電池と比較して、ラジエータ負荷が低減され、放熱系システムの小型化などにより、燃料電池システム全体を小型化および軽量化することができる。さらに、100℃以上の温度領域においても高いプロトン伝導度を示すため、200℃近い高温領域で燃料電池を使用することができる。
【0054】
(i)イオン液体は、親水性を有する。したがって、イオン液体の全部または一部が親水性を有することにより、イオン液体に水を含有させる場合、電解質における水の保持能を向上させることができる。その結果、プロトン伝導性の向上効果をより一層発揮させることができる。
【0055】
(j)イオン伝導体は、イミダゾリウム誘導体カチオン、ピリジニウム誘導体カチオン、ピロリジニウム誘導体カチオン、およびアンモニウム誘導体カチオンよりなる群から選択された少なくとも1種の分子性カチオンと、四フッ化ホウ素アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、フッ化水素アニオン、硫酸一水素アニオン、およびリン酸二水素アニオンよりなる群から選択された少なくとも1種の分子性アニオンと、を含む。したがって、イオン液体は、親水性を有し、イオン液体に水を含有させることができる。
【0056】
(k)本実施の形態の燃料電池の制御方法は、カチオン成分およびアニオン成分を有するイオン伝導体を電解質膜として用いた燃料電池の制御方法であって、燃料電池のアノード過電圧に応じて、燃料電池に供給されるアノードガスを加湿することにより、アノード触媒層に水分を供給する。したがって、燃料電池のアノード活性化過電圧を効率的に低減することができる。その結果、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【0057】
(第2の実施の形態)
次に、図8を参照しつつ、本発明の第2の実施の形態について詳細に説明する。本実施の形態は、燃料電池で生成される水を利用することなく、加湿器に予め貯蔵される水を利用してアノードガスを加湿する実施の形態である。
【0058】
図8は、本発明の第2の実施の形態における燃料電池の制御システムの概略構成を示す図である。図8に示すとおり、本実施の形態の燃料電池の制御システム100は、燃料電池110、コンプレッサ120、燃料タンク130、加湿器140、検出部150、およびコントロールユニット160を備える。ここで、燃料電池110とコンプレッサ120とは、空気供給用配管121を介して接続されている。また、燃料電池110と燃料タンク130とは、第1および第2の水素供給用配管131,132を介して接続されている。
【0059】
第1の水素供給用配管131の上流側の端部は、燃料タンク130に接続されており、下流側の端部は、燃料電池110に接続されている。第2の水素供給用配管132の上流側の端部は、切替バルブ136を介して、第1の水素供給用配管131の上流部に接続されており、下流側の端部は、第1の水素供給用配管131の下流部に接続されている。
【0060】
また、本実施の形態の加湿器150は、その内部に貯蔵される水にアノードガスを通過させることにより、アノードガスを加湿するバブリング式加湿器である。加湿器140は、内部に水貯蔵タンクを有しており、水貯蔵タンクには、外部から水が補充される。なお、加湿器140が水貯蔵タンクに予め貯蔵されている水を利用してアノードガスを加湿する点を除いては、本実施の形態の構成は、第1の実施の形態における構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0061】
以上のとおり構成される本実施の形態の燃料電池の制御システム100によれば、アノードガスを加湿するに際して、切替バルブ136が制御され、アノードガスが加湿器140に供給される。このとき、アノードガスは、加湿器140内部に貯蔵されている水を通過することによって加湿されるため、容易に加湿される。したがって、本実施の形態の燃料電池の制御システム100によれば、アノードガスを加湿する制御性が向上される。
【0062】
以上のとおり、説明された本実施の形態は、第1の実施の形態における効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0063】
(l)加湿器は、内部に貯蔵される水を利用して、アノードガスを加湿する。したがって、容器に貯蔵された水を利用してアノードガスを加湿することができるため、アノードガスを加湿する制御性が向上される。
【0064】
(第3の実施の形態)
次に、図9を参照しつつ、本発明の第3の実施の形態について詳細に説明する。本実施の形態は、カソードガスを加湿することにより、アノード触媒層に水分を供給する実施の形態である。
【0065】
図9は、本発明の第3の実施の形態における燃料電池の制御システムの概略構成を示す図である。図9に示すとおり、本実施の形態の燃料電池の制御システム100は、燃料電池110、コンプレッサ120、燃料タンク130、加湿器140、検出部150、およびコントロールユニット160を備える。ここで、燃料電池110とコンプレッサ120とは、第1および第2の空気供給用配管121,122を介して接続されている。また、燃料電池110と燃料タンク130とは、水素供給用配管131を介して接続されている。
【0066】
第1の空気供給用配管121の上流側の端部は、コンプレッサ120に接続されており、下流側の端部は、燃料電池110に接続されている。第2の空気供給用配管122の上流側の端部は、切替バルブ126を介して、第1の空気供給用配管121の上流部に接続されており、下流側の端部は、第1の空気供給用配管121の下流部に接続されている。
【0067】
また、本実施の形態の加湿器150は、その内部に貯蔵される水にカソードガスを通過させることにより、カソードガスを加湿するバブリング式加湿器である。加湿器140は、内部に水貯蔵タンクを有しており、水貯蔵タンクには、外部から水が補充される。なお、加湿器140がカソードガスを加湿する点を除いては、本実施の形態の構成は、第1および第2の実施の形態における構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0068】
以上のとおり構成される本実施の形態の燃料電池の制御システム100によれば、アノード触媒層113Aに水分を供給するに際して、加湿器140によって加湿されたカソードガスが燃料電池110のカソード114に供給される。加湿されたカソードガスが燃料電池110のカソード114に供給されることにより、カソード114側の水蒸気分圧が増加する。したがって、アノード113とカソード114との水蒸気分圧差が増加して、電解質膜112内の水分拡散によってカソード114からアノード113への水分移動(逆拡散)が促進される。その結果、アノード触媒層113Aに水分が供給され、アノード活性化過電圧が低減される。
【0069】
以上のとおり、説明された本実施の形態は、第1および第2の実施の形態における効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0070】
(m)加湿器は、燃料電池のカソードおよび電解質膜を通じてアノード触媒層に水分が供給されるように、カソードガスを加湿する。したがって、電解質膜内の水分拡散を利用してアノード触媒層に水分を供給することにより、電解質膜と接するアノード触媒層の反応部に効果的に水分を供給することができる。
【0071】
以上のとおり、本実施の形態において、本発明の燃料電池の制御システムおよび燃料電池制御方法を説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、および省略することができることはいうまでもない。
【0072】
たとえば、第1〜第3の実施の形態では、アノード過電圧を検出して、アノードガスまたはカソードガスを加湿することにより、アノード触媒層に水分を供給した。しかしながら、カソード過電圧に応じて、カソード触媒層に水分を供給することもできる。
【0073】
また、第1〜第3の実施の形態では、アノードガスおよびカソードガスの一方を加湿した。しかしながら、アノードガスおよびカソードガスの両方を加湿してもよい。
【0074】
さらに、上述した第1〜第3の実施の形態では、電圧センサを有する検出部によって、アノード過電圧を直接的に検出した。しかしながら、燃料電池の温度を検出することによって、アノード過電圧を間接的に検出してもよい。
【0075】
さらに、上述した第1〜第3の実施の形態では、電解質膜に用いられるイオン伝導体として、イミダゾリウム誘導体カチオンとトリフルオロメタンスルホン酸アニオンとを含む親水性のイオン液体を述べた。しかしながら、イオン伝導体としては、種々のカチオン成分およびアニオン成分を適用することができる。
【0076】
ここで、イオン伝導体について説明する。本発明の燃料電池の電解質膜には、上述した実施の形態のイオン液体に限定されず、アニオン成分とカチオン成分とを含む種々のイオン伝導体を用いることができる。
【0077】
カチオン成分は、イミダゾリウム誘導体(Imidazolium Derivatives)、ピリジニウム誘導体(Pyridinium Derivatives)、ピロリジニウム誘導体(Pyrrolidinium Derivatives)、アンモニウム誘導体(Ammonium Derivatives)、ホスフォニウム誘導体(Phosphonium Derivatives)、グアニジウム誘導体(Guanidinium Derivatives)、およびイソウロニウム誘導体(Isouronium Derivatives)などの化合物が用いられる。
【0078】
具体的には、カチオン成分としては、次式(1)に示す1置換〜3置換イミダゾリウム誘導体を挙げることができる。
【0079】
【化1】

【0080】
ここで、式中のR11〜R16は同一でも異なっていてもよく、1価の有機基、好ましくは、1価の炭化水素基、さらに好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基またはアリールアルキル基を示す。そして、炭化水素基の具体例としては、メチル基、ブチル基などを挙げることができる
また、R12およびR13としては、上述したR11と同様のものを任意に組み合わせたものを挙げることができ、その他にエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ベンジル基、γ−フェニルプロピル基などを挙げることができる。
【0081】
また、R14〜R16としては、上述したR11と同様のものを任意に組み合わせたものを挙げることができ、その他にエチル基、プロピル基、ヘキシル基、ヘキサデシル基などを挙げることができる。
【0082】
さらに、カチオン成分としては、次式(2)に示すピリジニウム誘導体を挙げることができる。
【0083】
【化2】

【0084】
ここで、式中のR21およびR22は同一でも異なっていてもよく、水素原子または1価の有機基、好ましくは、1価の炭化水素基、さらに好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基またはアリールアルキル基を示す。そして、R21およびR22としては、上述したR11と同様のものを任意に組み合わせたものを挙げることができ、その他にエチル基、ヘキシル基、オクチル基などを挙げることができる。
【0085】
さらに、カチオン成分としては、次式(3)に示すピロリジニウム誘導体を挙げることができる。
【0086】
【化3】

【0087】
ここで、式中のR31およびR32は同一でも異なっていてもよく、1価の有機基、好ましくは、1価の炭化水素基、さらに好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基またはアリールアルキル基を示す。そして、R31およびR32としては、上述したR11と同様のものを任意に組み合わせたものを挙げることができ、その他にエチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基などを挙げることができる。
【0088】
さらに、カチオン成分としては、次式(4)に示すアンモニウム誘導体を挙げることができる。
【0089】
【化4】

【0090】
ここで、式中のR41〜R44は同一でも異なっていてもよく、1価の有機基、好ましくは、1価の炭化水素基、さらに好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基またはアリールアルキル基を示す。そして、R41〜R44としては、上述したR11と同様のものを任意に組み合わせたものを挙げることができ、その他にエチル基、オクチル基などを挙げることができる。
【0091】
さらに、カチオン成分としては、次式(5)に示すホスフォニウム誘導体を挙げることができる。
【0092】
【化5】

【0093】
ここで、式中のR51〜R54は同一でも異なっていてもよく、1価の有機基、好ましくは、1価の炭化水素基、さらに好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基またはアリールアルキル基を示す。そして、R51〜R54としては、上述したR11と同様のものを任意に組み合わせたものを挙げることができ、その他にエチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、フェニル基、ベンジル基などを挙げることができる。
【0094】
さらに、カチオン成分としては、次式(6)に示すグアニジウム誘導体を挙げることができる。
【0095】
【化6】

【0096】
さらに、カチオン成分としては、次式(7)に示すイソウロニウム誘導体を挙げることができる。
【0097】
【化7】

【0098】
また、アニオン成分は、ハロゲン化物(Halogenides)、硫酸(Sulfates)、スルホン酸(sulfonates)、アミド(Amides)、イミド(Imides)、メタン化合物(Methanes)、ホウ酸(Borates)、リン酸(Phosphates)、アンチモン酸(antimonates)などの化合物が用いられる。
【0099】
具体的には、アニオン成分としては、Cl、Br、およびIなどのハロゲン化物を挙げることができる。
【0100】
さらに、アニオン成分としては、HSO、CHSO、CSO、CSO、C13SO、およびC17SOなどの硫酸を挙げることができる。
【0101】
さらに、アニオン成分としては、CFSOおよび次式(8)に示す化合物などのスルホン酸を挙げることができる。
【0102】
【化8】

【0103】
さらに、アニオン成分としては、(CN)、[N(CF、および[N(SOCFなどのアミドを挙げることができる。
【0104】
さらに、アニオン成分としては、[HC(SOCFおよびC(SOCFなどのメタン化合物を挙げることができる。
【0105】
さらに、アニオン成分としては、BF、B(CN)および次式(9)に示す化合物などのホウ酸を挙げることができる。
【0106】
【化9】

【0107】
さらに、アニオン成分としては、HPO、(CP(O)O、PF、(CPF、(CPF、(CPF、(CPO、および次式(10)に示す化合物などのリン酸を挙げることができる。
【0108】
【化10】

【0109】
さらに、アニオン成分としては、SbFなどのアンチモン酸を挙げることができる。
【0110】
さらに、アニオン成分としては、C1021COO、CFCOO、およびCo(CO)などを挙げることができる。
【0111】
以上のとおり、本発明の燃料電池の電解質膜は、上述したカチオン成分およびアニオン成分を組み合わせた、または、混合したイオン伝導体を含むことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の第1の実施の形態における燃料電池の制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す燃料電池の制御システムにおける燃料電池のセル構造を示す断面図である。
【図3】図2に示す燃料電池の制御システムにおける燃料電池の特性を説明するための図である。
【図4】図1に示す燃料電池の制御システムにおける処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートに示す処理によるアノードガスの加湿度およびアノード過電圧の経時的な変化を説明するための図である。
【図6】図1に示す燃料電池の制御システムによるアノード活性化過電圧の低減効果を説明するための図である。
【図7】図1に示す燃料電池の制御システムにおける処理の変形例を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施の形態における燃料電池の制御システムの概略構成を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態における燃料電池の制御システムの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0113】
100 燃料電池の制御システム、
110 燃料電池、
112 電解質膜、
113 アノード(燃料極)、
114 カソード(空気極)、
118 導線(参照極)、
140 加湿器(水分供給手段)、
141 酸素排出用配管(水供給流路)、
150 検出部(電位検出手段)、
160 コントロールユニット(制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン成分とアニオン成分とを有するイオン伝導体を電解質膜として用いた燃料電池と、
前記燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化ガスの少なくとも一方に水分を供給する水分供給手段と、
前記燃料電池の燃料極および空気極のうち一方の電極の過電圧に応じて前記水分供給手段を制御することにより、当該電極の触媒層に水分を供給する制御手段と、
を有することを特徴とする燃料電池の制御システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記燃料極の過電圧に応じて前記水分供給手段を制御することにより、前記燃料極の触媒層に水分を供給することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の制御システム。
【請求項3】
前記水分供給手段は、前記燃料ガスに水分を供給することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池の制御システム。
【請求項4】
前記燃料電池で生成される水を前記水分供給手段に供給する水供給流路をさらに有し、
前記水分供給手段は、前記燃料電池で生成される水を利用して、前記燃料ガスに水分を供給することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池の制御システム。
【請求項5】
前記水分供給手段は、前記空気極および前記電解質膜を通じて前記燃料極の触媒層に水分が供給されるように、前記酸化ガスに水分を供給することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池の制御システム。
【請求項6】
前記水分供給手段は、バブリング式加湿器、スプレー式加湿器、透湿膜式加湿器、膜式加湿器、全熱交換式加湿器、またはこれらの組み合わせを有することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池の制御システム。
【請求項7】
前記電解質膜に接続される参照極を基準とする前記燃料極の電位を過電圧として検出する電位検出手段をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池の制御システム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記電位検出手段で検出される燃料極の過電圧が大きいほど、多量の水分が前記燃料極の触媒層に供給されるように、前記水分供給手段を制御することを特徴とする請求項7に記載の燃料電池の制御システム。
【請求項9】
前記制御手段は、前記電位検出手段で検出される燃料極の過電圧が閾値以上の場合、前記水分供給手段を制御して前記燃料極の触媒層に水分を供給することを特徴とする請求項7に記載の燃料電池の制御システム。
【請求項10】
前記イオン伝導体は、分子性カチオンと分子性アニオンとを有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の制御システム。
【請求項11】
前記イオン伝導体は、前記分子性カチオンおよび前記分子性アニオンよりなるイオン液体を含むことを特徴とする請求項10に記載の燃料電池の制御システム。
【請求項12】
前記イオン液体は、親水性を有することを特徴とする請求項11に記載の燃料電池の制御システム。
【請求項13】
前記イオン伝導体は、イミダゾリウム誘導体カチオン、ピリジニウム誘導体カチオン、ピロリジニウム誘導体カチオン、およびアンモニウム誘導体カチオンよりなる群から選択された少なくとも1種の分子性カチオンと、四フッ化ホウ素アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、フッ化水素アニオン、硫酸一水素アニオン、およびリン酸二水素アニオンよりなる群から選択された少なくとも1種の分子性アニオンと、を含むことを特徴とする請求項12に記載の燃料電池の制御システム。
【請求項14】
カチオン成分とアニオン成分とを有するイオン伝導体を電解質膜として用いた燃料電池の制御方法であって、
前記燃料電池の燃料極および空気極のうち一方の電極の過電圧に応じて、前記燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化ガスの少なくとも一方に水分を供給することにより、当該電極の触媒層に水分を供給することを特徴とする燃料電池の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−300290(P2008−300290A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147236(P2007−147236)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】