説明

燃料電池システムの制御方法

【課題】燃料電池からの電力供給をより適切に解除する。
【解決手段】燃料電池システム100は、燃料電池10と、FCリレー14と、電流センサ30と、燃料電池の異常を判定する異常判定部と、を備える。異常判定部が燃料電池10の異常判定をしたときに、燃料電池10への水素とエアの供給を遮断して燃料電池10の発電量を低下させ、電流センサ30が検出する電流が所定値以下になった後にFCリレー14を切り替えて、燃料電池10と負荷系統との電気的接続を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
充放電可能な二次電池とモータを、燃料電池とともに車両に搭載し、モータの回生電力を二次電池に充電可能に構成することにより燃料の消費を低減させる燃料電池ハイブリッドシステムが知られている。
【0003】
燃料電池ハイブリッドシステムを含む燃料電池システムには一般に、電力を消費する負荷系統と燃料電池との接続を入り切りするためのリレー回路(「燃料電池リレー」または「FCリレー」とも称する)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−165243号公報
【特許文献2】特開2007−295784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、燃料電池に何らかの不具合が生じたときに燃料電池リレーを操作して燃料電池からの電力供給をより適切に解除することができる燃料電池システムの制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、前記燃料電池と前記燃料電池で発電された電力を消費する電力消費手段との電気的接続を入り切りする燃料電池リレーと、前記燃料電池と前記燃料電池リレーとの間の電流を検出する電流検出手段と、前記燃料電池の異常を判定する異常判定部と、を備える燃料電池システムの制御方法であって、前記異常判定部が前記燃料電池の異常判定をしたときに、前記燃料電池への前記燃料ガスと前記酸化剤ガスの供給を遮断して前記燃料電池の発電量を低下させるガス供給遮断工程と、前記電流検出手段が検出する電流が所定値以下になった後に前記燃料電池リレーを切り替えて、前記燃料電池と負荷系統との電気的接続を解除する工程と、を含む、燃料電池システムの制御方法である。
【0007】
本発明はまた、前記ガス供給遮断工程が、燃料電池内に残存する酸素量が水素量に対し過剰とならないように前記酸化剤ガスの供給と前記燃料ガスの供給を順に遮断する工程である、燃料電池システムの制御方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃料電池からの燃料電池リレーを経由する電力供給をより適切に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態における燃料電池システムの系統図である。
【図2】図1に示す燃料電池システムの制御方法の一例を説明するためのタイムチャートである。
【図3】図1に示す燃料電池システムの制御方法の他の例を説明するためのタイムチャートである。
【図4】図3において、特に燃料電池への水素ガスと空気との供給に着目したタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1に示すように、図示しない燃料電池ハイブリッド車両に搭載することができる燃料電池システム100は、燃料電池10と、FC昇圧コンバータ12と、FCリレー14と、パワーコントロールユニット(PCU)16と、モータ18と、補機20と、バッテリ22と、を備えている。
【0011】
燃料電池10は、燃料ガスである水素と酸化剤ガスである空気(エア)が供給され、水素と空気中の酸素との電気化学反応により発電するものである。水素ガスは例えば、高圧の水素タンク(図示せず)から燃料ガス流路24を介して燃料極(アノード)に供給され、空気は例えば、酸化剤ガス流路26を介し、エアコンプレッサ(ACP)によって酸化剤極(カソード)に供給される。一般に、燃料電池システム100に適用される燃料電池10は、最小の構成単位としての単セルを複数積層させた構成を有しているため、しばしば燃料電池スタックまたはFCスタックと称することがある。
【0012】
FC昇圧コンバータ12は、燃料電池10から出力された電圧を昇圧することができる。FC昇圧コンバータ12で昇圧された電力は、FCリレー14を介してPCU16に供給される。
【0013】
FCリレー14は、FC昇圧コンバータ12とPCU16との電気的な接続を入り切りするためのものである。FCリレー14が閉となると燃料電池10における発電電力はFC昇圧コンバータ12、PCU16を介して補機20などの電力消費手段に供給される。
【0014】
PCU16は、燃料電池10および/またはバッテリ22からの電力を所望の状態に調整するための各装置の総称である。PCU16には、例えば、バッテリ22の電圧を昇圧するバッテリ昇圧コンバータ(図示せず)、バッテリ昇圧コンバータおよび/またはFC昇圧コンバータ12からの直流電力を交流電力に変換してモータ18に供給するモータインバータ(図示せず)などを備えることができる。必要に応じて、バッテリ昇圧コンバータおよび/またはFC昇圧コンバータ12からの直流電力を交流電力に変換して補機20に供給する補機用インバータ(図示せず)を備えることもできる。
【0015】
モータ18は、PCU16から供給された電力を利用して駆動する。燃料電池ハイブリッド車両では一般に、図示しない駆動輪の回転のために利用される駆動モータ(T/M)として機能する。実施の形態では、モータ18はまた、駆動輪の制動に伴う回生エネルギーを利用してバッテリ22を充電するためのジェネレータとして機能することもできる。
【0016】
補機20は、燃料電池10から供給される電力および/または必要に応じてバッテリ22からの電力を利用することができる電力消費手段である。補機20としては、例えば、酸化剤ガス流路26に設けられるエアコンプレッサ(ACP)、燃料ガス流路24に設けられる水素流通および/または循環用のポンプ、燃料電池用冷却媒体流通用のポンプ等の、主として燃料電池10において用いられる、いわゆるFC補機を含むことができる。
【0017】
バッテリ22は、充放電可能なリチウムイオン電池などで構成された二次電池である。実施の形態においては、バッテリ22として、いわゆる高圧バッテリを適用することができる。
【0018】
また、FC昇圧コンバータ12からPCU16に向けて電流を流すための電路28には、FC昇圧コンバータ12とFCリレー14との間に、燃料電池10からの出力電流を検出するための電流検出手段としての電流センサ30が設けられている。
【0019】
また、燃料電池システム100は、制御部(図示せず)をさらに備えることができる。実施の形態において、制御部は、内部に信号処理を行うCPUとプログラムや制御データを格納する記憶部とを備えるコンピュータであり、燃料電池10、FC昇圧コンバータ12、FCリレー14、PCU16、モータ18、補機20に接続され、制御部の指令によって動作するよう構成されている。また、バッテリ22と電流センサ30はそれぞれ制御部に接続され、バッテリ22の状態と電流センサ30の検出信号が制御部に入力されるよう構成されている。制御部はまた、燃料電池10の内部または近傍に設けられた、図示しない異常検出部からの情報に基づいて燃料電池10の何らかの異常を判定する異常判定部をさらに備える。
【0020】
一般に、異常検出部で検出された、燃料電池10の異常に関する情報が制御部に通知され、異常判定部により燃料電池10の異常が判定されると、燃料電池10の運転を停止させるとともに、FCリレー14を閉→開に切り替え、燃料電池10から電力消費手段への電力供給を解除する。ここで、燃料電池10の内部に燃料ガス/酸化剤ガスが残存し、燃料電池10からの電力供給が継続した状態でFCリレー14の接続を解除すると、FCリレー14の接点が溶着してしまう場合がある。本発明の実施の形態では、このような不具合を防止するために、以下に示すようなタイムチャートによりFCリレー14を切り替えるように燃料電池システム100の制御を行なう。
【0021】
図1に示す燃料電池システム100の制御方法について、図2〜4を用いて以下に説明する。
【0022】
図2に示すように、時刻t1に燃料電池10の異常が検出されると、水素タンクから燃料電池10への水素の供給およびエアコンプレッサによる燃料電池10への空気の供給の供給を遮断する(図2では水素(燃料ガス)と空気(酸化剤ガス)とを総称して「燃料」と記している)。水素および空気の供給を遮断したことに伴い、電流センサ30で検出される電流(リレー電流)の値は次第に低下する。上述したようなFCリレー14の接点の溶着は、電流センサ30で検出される電流値が所定の閾値以下となるまでFCリレー14の接続を維持することにより回避できることがわかっている。したがって、この閾値について予め設定し、電流センサ30で検出される電流値が、この時刻t2において閾値以下となったことが検出されてからFCリレー14の接続を解除することにより、FCリレー14の接点が溶着することなく、適切にFCリレー14の接続を解除することができる。
【0023】
ここで、時刻t1において水素と空気の供給を同時に遮断すると、燃料電池10中に残存する水素量および酸素量の割合によっては、燃料電池10の内部が水素欠乏状態となり、燃料電池10に更なる不具合が生じる場合がありうる。そこで、図3に示すように、時刻t1に燃料電池10の異常が検出された場合に、まずエアコンプレッサによる燃料電池10への空気の供給のみを遮断することも好適である。図4に示すように、燃料電池10内に残存する酸素量が水素量に対し過剰とならないように水素および空気の供給圧力が調圧されている状態において、時刻t1に燃料電池10の異常が検出されると、まず空気の供給を遮断し、電流センサ30で検出される電流値を低下させる。その後、時刻t2において電流センサ30で検出される電流値が、所定の閾値以下となったことが検出されてから水素の供給を遮断し、FCリレー14を解除する。本実施の形態によれば、燃料電池10内の水素量の欠乏に伴う不具合をも回避することができる。なお、水素の供給を遮断する時刻tは、燃料電池10内に残存する酸素量が水素量に対し過剰とならないようにする限り、時刻t2よりも後であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、種々の燃料電池システムに利用可能であるが、例えばハイブリッド車両に搭載可能な燃料電池ハイブリッドシステムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
10 燃料電池、12 昇圧コンバータ、14 FCリレー、16 PCU、18 モータ、20 補機、22 バッテリ、24 燃料ガス流路、26 酸化剤ガス流路、28 電路、30 電流センサ、100 燃料電池システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池と前記燃料電池で発電された電力を消費する電力消費手段との電気的接続を入り切りする燃料電池リレーと、
前記燃料電池と前記燃料電池リレーとの間の電流を検出する電流検出手段と、
前記燃料電池の異常を判定する異常判定部と、
を備える燃料電池システムの制御方法であって、
前記異常判定部が前記燃料電池の異常判定をしたときに、前記燃料電池への前記燃料ガスと前記酸化剤ガスの供給を遮断して前記燃料電池の発電量を低下させるガス供給遮断工程と、
前記電流検出手段が検出する電流が所定値以下になった後に前記燃料電池リレーを切り替えて、前記燃料電池と負荷系統との電気的接続を解除する工程と、
を含むことを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
【請求項2】
前記ガス供給遮断工程が、燃料電池内に残存する酸素量が水素量に対し過剰とならないように前記酸化剤ガスの供給と前記燃料ガスの供給を順に遮断する工程であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−204361(P2011−204361A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67523(P2010−67523)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】