説明

燃料電池システム及びその運転方法

【課題】燃料電池システムにおいて、原料中の酸素濃度が高い状態において改質器が過昇温する可能性を従来よりも軽減する。
【解決手段】原料を改質反応させて水素ガスを含有する燃料ガスを生成する改質器1と、燃料ガスを用いて発電する燃料電池20と、燃料電池20より排出されたオフ燃料ガスを燃焼して、改質器1を加熱する燃焼器2と、原料中の酸素濃度が相対的に低い第1の状態であるときに、改質器1の制御温度を第1温度とし、原料中の酸素濃度が第1の状態よりも相対的に高い第2の状態であるときに、改質器1の温度が第1温度となるように、オフ燃料ガスの流量を第1の状態のときよりも低下させる制御器5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法に関する。より詳しくは、原料を用いて水素含有ガスを生成する水素生成装置を備えた燃料電池システム及び該燃料電池システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、燃料電池スタック(以下、単に「燃料電池」という)に水素含有ガスと酸素含有ガスとを供給して、水素と酸素との電気化学反応を進行させ、化学的なエネルギーを電気的なエネルギーとして取り出すことにより発電するシステムである。燃料電池システムは、発電効率が高いのみならず、発電時に発生する熱エネルギーも簡単に利用できる。このため燃料電池システムは、高いエネルギー利用効率を実現可能な分散型発電システムとして、開発が進められている。
【0003】
一般的に、水素含有ガスの供給設備は整備されていないことが多い。このため従来の燃料電池システムには、水素生成装置が配設されている。典型的な水素生成装置は、既存のインフラストラクチャーから供給される、天然ガスを主成分とする都市ガスやLPG等を原料として、水素含有ガス(改質ガス)を生成する。このために水素生成装置は、例えば、原料中の硫黄成分を除去する脱硫部、Ru触媒やNi触媒を用いて600〜700℃の温度で水蒸気と改質反応させ、水素含有ガスを生成させる改質器を備える(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
改質反応により得られる水素含有ガスには、通常、原料に由来する一酸化炭素が含まれる。一酸化炭素の濃度が高いと、燃料電池の発電特性を低下させる。そこで、水素生成装置には、改質器の他に、変成器や選択酸化器、メタン化除去器といった反応器が設けられることが多い。変成器は、Cu−Zn系触媒を備え、200℃〜350℃の温度で一酸化炭素と水蒸気との変成反応を進行させて一酸化炭素を低減させる。選択酸化器は、100℃〜200℃の温度で一酸化炭素を選択的に酸化反応させて更に一酸化炭素を低減させる。メタン化除去器は、一酸化炭素を選択的にメタン化させて低減させる。選択酸化器やメタン化除去器は選択除去器とも呼ばれる。
【0005】
さて、原料には、インフラストラクチャーの構成に起因して、酸素が一時的に混入されることがある。そこで、酸素を含むプロセスガス(例えば、天然ガス、ピークシェービングガス、LPG など)の予備改質方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−183005号公報
【特許文献2】特開2001−80907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上記特許文献2記載のように、原料中の酸素濃度が相対的に高い状態であると、水素含有ガス中の水素と酸素との酸化反応に伴う発熱により、改質器が過昇温する可能性がある。
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するものであり、原料中の酸素濃度が高い状態において改質器が過昇温する可能性を従来よりも低減できる燃料電池システム、及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の燃料電池システムは、原料を改質反応させて水素ガスを含有する燃料ガスを生成する改質器と、前記燃料ガスを用いて発電する燃料電池と、前記燃料電池より排出されたオフ燃料ガスを燃焼して、前記改質器を加熱する燃焼器と、原料中の酸素濃度が相対的に低い第1の状態であるときに、前記改質器の制御温度を第1温度とし、原料中の酸素濃度が第1の状態よりも相対的に高い第2の状態であるときに、前記改質器の温度が第1温度となるように、前記燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を前記第1の状態のときよりも低下させる制御器と、を備える。
【0010】
また、本発明の燃料電池システムの運転方法は、改質器において原料を改質反応させて水素ガスを含有する燃料ガスを生成するステップと、燃料電池において前記燃料ガスを用いて発電するステップと、燃焼器において前記燃料電池より排出されたオフ燃料ガスを燃焼して前記改質器を加熱するステップと、原料中の酸素濃度が相対的に低い第1の状態であるときに、前記改質器の制御温度を第1温度とするステップと、原料中の酸素濃度が第1の状態よりも相対的に高い第2の状態であるときに、前記改質器の温度が第1温度となるように、前記燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を前記第1の状態のときよりも低下させるステップとを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法によれば、原料中の酸素濃度が高い状態において改質器が過昇温する可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図2は、第1実施形態における燃料電池システムの動作方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】図3は、第1実施形態の第1変形例における燃料電池システムの動作方法の一例を示すフローチャートである。
【図4】図4は、第1実施形態の第2変形例における燃料電池システムの動作方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、第2実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【図6】図6は、第2実施形態の第1変形例にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【図7】図7は、第2実施形態の第2変形例にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかる燃料電池システムは、原料を改質反応させて水素ガスを含有する燃料ガスを生成する改質器と、燃料ガスを用いて発電する燃料電池と、燃料電池より排出されたオフ燃料ガスを燃焼して、改質器を加熱する燃焼器と、原料中の酸素濃度が相対的に低い第1の状態であるときに、改質器の制御温度を第1温度とし、原料中の酸素濃度が第1の状態よりも相対的に高い第2の状態であるときに、改質器の温度が第1温度となるように、燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を第1の状態のときよりも低下させる制御器と、を備える。
【0014】
かかる構成では、原料中の酸素濃度が高い状態において燃焼器による改質器の加熱量が低減され、従来よりも改質器が過昇温する可能性を低減できる。
【0015】
オフ燃料ガス流量は、通常、発電量に対して設定される。「オフ燃料ガスの流量を第1の状態のときよりも低下させる」とは、具体的には、例えば、第2の状態であるとき、燃料電池システムの発電量が所定の発電量であるときのオフ燃料ガス流量を、第1の状態のときよりも低下させることを意味する。
【0016】
上記燃料電池システムは、燃料電池から取り出す電力を制御する電力制御器を備え、制御器は、原料中の酸素濃度が第1の状態よりも相対的に高い第2の状態であるときに、電力制御器を制御して第1の状態のときよりも燃料電池から取り出す電力を増やし、燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を低下させるように構成されていてもよい。
【0017】
上記燃料電池システムにおいて、制御器は、改質器の温度を第1温度に制御できない場合に、改質器の制御温度を第1温度よりも高い第2温度に変更するように構成されていてもよい。
【0018】
上記燃料電池システムにおいて、制御器は、改質器の温度を第2温度に制御できない場合に、運転を停止するように構成されていてもよい。
【0019】
上記燃料電池システムにおいて、制御器は、第2の状態であるときに、燃料電池の目標発電量に応じて設定される改質器から燃料電池への燃料ガスの供給量を第1の状態であるときと同様にしてもよい。
【0020】
上記燃料電池システムにおいて、改質器は、Pt及びRhの少なくともいずれか一方を構成元素として含む改質触媒を備えてもよい。
【0021】
本実施形態の燃料電池システムの運転方法は、改質器において原料を用いて改質反応により水素ガスを含有する燃料ガスを生成するステップと、燃料電池において燃料ガスを用いて発電するステップと、燃焼器において燃料電池より排出されたオフ燃料ガスを燃焼して改質器を加熱するステップと、原料中の酸素濃度が相対的に低い第1の状態であるときに、改質器の制御温度を第1温度とするステップと、原料中の酸素濃度が第1の状態よりも相対的に高い第2の状態であるときに、改質器の温度が第1温度となるように、燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を第1の状態のときよりも低下させるステップとを備える。
【0022】
[装置構成]
図1は、第1実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【0023】
図1に示す例では、本実施形態の燃料電池システム100は、改質器1と、燃焼器2と、温度検知器3と、制御器5と、オフ燃料ガス供給路12と、燃料電池20と、電力制御器22とを備えている。
【0024】
以下、図1に示す例に含まれる各構成要素の構成例について説明する。
【0025】
改質器1は、原料を改質反応させて水素ガスを含有する燃料ガスを生成する。原料は、少なくとも炭素及び水素を構成元素とする有機化合物を含み、具体的には、天然ガス、都市ガス、LPG、LNG等の炭化水素、及びメタノール、エタノール等のアルコールが例示される。都市ガスとは、ガス会社から配管を通じて各家庭等に供給されるガスをいう。改質反応は、いずれの改質反応でもよく、具体的には、水蒸気改質反応、オートサーマル反応及び部分酸化反応が例示される。
【0026】
改質器1で生成された燃料ガスは、燃料ガス供給路11を介して燃料電池20へと供給される。
【0027】
燃焼器2は、燃料電池20より排出されたオフ燃料ガスを燃焼して、改質器1を加熱する。具体的には、例えば、燃焼器2は、オフ燃料ガス供給路12から供給されるオフ燃料ガスを、燃焼空気供給器(図示せず)から供給される空気により燃焼させることで改質器1を加熱し、改質反応に必要な熱を改質器1に供給する。
【0028】
燃料電池20は、水素ガスを含有する燃料ガスを用いて発電する。燃料電池20は、例えば、上記燃料ガスと酸化剤ガスを用いて発電する。酸化剤ガスとして、例えば、空気が用いられる。
【0029】
燃料電池20は、いずれの種類であってもよく、例えば、高分子電解質形燃料電池(PEFC)、固体酸化物形燃料電池またはりん酸形燃料電池等を用いることができる。
【0030】
オフ燃料ガス供給路12は、燃料電池20より排出され、燃焼器2に供給されるオフ燃料ガスが流れるガス流路である。
【0031】
電力制御器22は、燃料電池から取り出す電力を制御する。電力制御器22は、例えば、インバータにより構成される。電力制御器22は、燃焼器2へ供給されるオフ燃料ガスの流量を調整する流量調整器の一例である。
【0032】
制御器5は、制御機能を有するものであればよく、演算処理部(図示せず)と、制御プログラムを記憶する記憶部(図示せず)とを備える。演算処理部としては、MPU、CPUが例示される。記憶部としては、メモリが例示される。制御器は、集中制御を行う単独の制御器で構成されていてもよく、互いに協働して分散制御を行う複数の制御器で構成されていてもよい。制御器5は、温度検知器3と通信可能に接続され、温度検知器3の検知温度に基づいて燃焼器2の燃焼量を制御する。
【0033】
燃料電池システム100は、原料中に含まれる酸素濃度の状態を検知する、酸素濃度状態検知器を備える。酸素濃度状態検知器は、原料中に含まれる酸素濃度の状態を検知可能であれば、いずれの検知器であっても構わない。ここで、酸素濃度の状態とは、原料中の酸素濃度値及び原料中の酸素濃度の相対的な高低状態の少なくともいずれか一方の意味として定義される。
【0034】
酸素濃度状態検知器は、具体的には、水添脱硫器の温度を検出する第1温度検知器、改質器の温度を検知する第2温度検知器、原料の供給圧を検知する圧力検知器、原料供給路10に設けられた酸素濃度検知器、及び燃料ガス供給路11に設けられたアンモニア濃度検知器などが例示される。酸素濃度状態検知器は、制御器5に通信可能に接続され、酸素の濃度状態に関する情報を、制御器5へと送る。酸素の濃度状態に関する情報としては、水添脱硫器の温度、改質器の温度、及び酸素濃度、原料の供給圧などが例示される。
【0035】
第1温度検知器は、上述の通り、原料中の酸素と水添脱硫器に供給される水素含有ガス中の水素とが酸化反応した際の発熱の大きさを水添脱硫器の温度として検知する。制御器5は、第1温度検知器から取得した温度に基づき、酸素濃度の相対的な高低状態を判定することができる。
【0036】
第2温度検知器は、改質器に供給される原料中の酸素と改質器で生成した水素とが酸化反応した際の発熱の大きさを改質器の温度として検知する。制御器5は、第2温度検知器から取得した温度に基づき、酸素濃度の相対的な高低状態を判定することができる。
【0037】
通常、ピークシェービングの実行前は原料供給圧が正常値よりも低下しており、ここで、ピークシェービングを実行することで原料供給圧が正常値に戻る。制御器5は、圧力検知器により検知される原料供給路10の圧力が、正常値よりも低い値から正常値に戻ることで、ピークシェービングが実行され原料中の酸素濃度が高い状態にあると判定することができる。
【0038】
酸素濃度検知器は、酸素濃度値自体を検知することができる。
【0039】
アンモニア濃度検知器は、水素含有ガス中のアンモニア濃度を検知する。原料に酸素が混入されるとき、通常、原料に空気を混入するため、原料には酸素だけでなく窒素も混入される。原料に混入された窒素は、改質器1で生成した水素と反応し、アンモニアを生成する。従って、アンモニア濃度検知器から取得した濃度に基づき、酸素濃度の相対的な高低状態を判定することができる。
【0040】
図1に示す温度検知器3は、改質器1に供給される原料中の酸素濃度の状態を検知するための温度検知器であって、酸素濃度状態検知器の一例である。温度検知器3は、原料中の酸素濃度の状態に応じた温度が検出可能な改質器1の所定の位置に配設されている。換言すれば、温度検知器3は、第2温度検知器の一例である。温度検知器3は、例えば、改質器1のうちの上流側の部分に配設される。これは、改質器1に流入した原料中の酸素は、改質器1のうちの上流側の部分において、その大半が水素との酸化反応により消費されるため、原料中の酸素濃度の状態に応じて改質器1の温度が変化しやすいからである。
【0041】
燃料電池システム100は、さらに、図示されない原料供給器を備えてもよい。
【0042】
原料供給器は、改質器1に供給する原料の流量を調整する。原料供給器は、原料の流量を調整可能であればいずれの構成であってもよく、例えば、昇圧器及び流量調整弁の少なくともいずれか一方により構成される。原料供給器は、例えば、吸着脱硫器を介して改質器1へと原料を供給する。
【0043】
水素生成装置100は、さらに、図示されない水蒸気供給器を備えてもよい。水蒸気供給器は、改質器1に水蒸気を供給する。水蒸気供給器は、蒸発器(図示せず)及び水供給器(図示せず)を備える。なお、改質器1における改質反応が部分酸化反応であるとき、水蒸気供給器は設けなくてもよい。
【0044】
なお、図1には示していないが、水素生成装置100は、改質器1の下流に一酸化炭素低減器を備えてもよい。一酸化炭素低減器は、改質器1で生成された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減する。一酸化炭素低減器は、変成器及び一酸化炭素除去器の少なくともいずれか一方が用いられる。変成器は、シフト反応により一酸化炭素を低減する。一酸化炭素除去器は、酸化反応及びメタン化反応の少なくともいずれか一方で一酸化炭素を低減する。
【0045】
本実施の形態の燃料電池システムは、原料中の酸素濃度が相対的に低い第1の状態であるときに、改質器の制御温度を第1温度とし、原料中の酸素濃度が第1の状態よりも相対的に高い第2の状態であるときに、前記改質器の温度が第1温度となるように、オフ燃料ガスの流量を前記第1の状態のときよりも低下させる。
【0046】
図2は、第1実施形態における燃料電池システムの動作方法の一例を示すフローチャートである。以下、図2を参照しつつ、燃料電池システム100の動作方法について説明する。
【0047】
燃料電池システム100が酸素の濃度状態の判定動作を開始すると(スタート)、制御器5は、温度検知器3から受け取った情報に基づき、酸素の濃度状態が第1の状態であるか否かを判定する(ステップS101)。ここで、第1の状態とは、原料中の酸素濃度が、相対的に低い状態にあるときをいう。第2の状態とは、原料中の酸素濃度が第1の状態よりも相対的に高い状態をいう。上記第1の状態及び第2の状態は、改質器の設計に応じて適宜設定され、例えば、第1の状態は、原料中の酸素濃度が、0ppm以上1000ppm以下に入っている状態として設定され、第2の状態は、原料中の酸素濃度が、1000ppmより大きい状態として設定される。
【0048】
上記判定は、例えば、温度検知器3の検知温度が、予め定められた第1上限温度以上であるか否かにより行うことができる。この場合、該検知温度が第1上限温度以上の場合には第2の状態にあると判定され、第1閾値未満の場合には第2の状態にない、つまり第1の状態にある、と判定される。第1上限温度は、原料中の酸素濃度が第2の状態であるときの温度として定義され、改質器1の耐熱温度よりも小さい値が設定される。例えば、700℃としうる。
【0049】
原料中の酸素濃度の状態が、第1の状態であるとき、ステップS101の判定結果がYesとなり、制御器5は、オフ燃料ガス流量を低下させず、改質器1の制御温度を第1温度としてオフ燃料ガス流量を制御し(ステップS102)、判定動作を終了する(エンド)。なお、第1温度は、改質器1の耐熱温度よりも小さい温度が設定され、例えば、第1温度は670℃で設定される。
【0050】
制御器5は、ステップS102において、電力制御器22を制御して、改質器1の温度が第1温度となるようオフ燃料ガスの流量を制御する。
【0051】
原料中の酸素濃度の状態が、第2の状態であるとき、ステップS101の判定結果はNoとなり、制御器5は、改質器1の温度が第1温度となるように、オフ燃料ガスの流量を第1の状態のときよりも低下させ(ステップS103)、判定動作を終了する(エンド)。
【0052】
制御器5は、ステップS103において、電力制御器22を制御して第1の状態のときよりも燃料電池20から取り出す電力を増やすことで、オフ燃料ガスの流量を低下させる。
【0053】
ステップS103において、オフ燃料ガスの流量は、任意の方法で求められる。具体的には、次のような方法が例示される。記憶部(図示せず)が、原料中の酸素濃度が第1の状態であるときの燃料電池システム100の目標発電量とオフ燃料ガス流量との対応関係を示すデータテーブルを備えている。
【0054】
原料中の酸素濃度が第2の状態であり、かつ燃料電池システム100の発電量が、所定の目標発電量であるとき、制御器5は、記憶器に保持された上記データテーブルから上記所定の目標発電量に対応するオフ燃料ガス流量を読み出し、このオフ燃料ガス流量に補正係数を乗算することで、オフ燃料ガス流量を決定する。
【0055】
原料中の酸素濃度が第1の状態よりも高い第2の状態にあるか否かの判定方法(図3のステップS101)は、原料中の酸素濃度の状態を判定可能であれば、どのような方法であってもよい。例えば、原料中の酸素濃度の状態を検知する酸素濃度状態検知器を備え、この検知器の検出値を用いて判定してもよい。上記の例では、温度検知器3が酸素濃度状態検知器に相当し、温度検知器3の検知温度と所定の閾値温度との比較に基づいて、原料中の酸素濃度の高低状態が判定されている。
【0056】
温度検知器3の検知温度を用いて酸素濃度の状態を判定する方法として、温度検知器3の検知温度の単位時間当たりの上昇速度が、予め定められた第1上昇速度以上であるか否かにより判定が行われてもよい。この場合、該上昇速度が第1上限速度以上の場合には第2の状態にあると判定され、第1上限速度未満の場合には第2の状態にない、すなわち第1の状態にある、と判定される。上昇速度の単位としては、例えば、℃/分などを用いることができる。第1上限速度は、改質器1の設計に応じて適宜設定され、例えば、50℃/分としうる。温度の上昇は、酸素濃度の上昇よりも遅れて生じる場合がある。温度の上昇速度を用いた判定により、温度そのものを用いた判定よりも迅速に酸素濃度上昇を検出しうる。温度の上昇速度を用いて判定を行う場合、制御器5は、図示されない計時器をさらに備える構成としうる。制御器5は、所定時間毎に温度検知器3の検知温度を受け取って記憶部に記憶し、単位時間当たりの温度の上昇速度を演算する。
【0057】
酸素濃度状態検知器として温度検知器3を用いた場合の原料中の酸素濃度状態の判定方法について、上記の通り説明したが、他の酸素濃度状態検知器を用いた方法についても同様に実行できる。
【0058】
具体的には、酸素濃度状態検知器として水添脱硫器の温度を検知する第1温度検知器を用いた場合、第1温度検知器の検知温度が第4上限温度(例えば、320℃)以上であるか否かに基づき原料中の酸素濃度の状態を判定してもよい。または、第1温度検知器の検知温度の温度変化が第4上限速度(例えば、30℃/分)以上であるか否かにに基づき原料中の酸素濃度の状態を判定してもよい。
【0059】
酸素濃度状態検知器として酸素濃度検知器を用いた場合、酸素濃度検知器の検知濃度が、第1上限酸素濃度(例えば、1000ppm)以上であるか否かに基づき原料中の酸素濃度の状態を判定してもよい。
【0060】
酸素濃度状態検知器としてアンモニア濃度検知器を用いた場合、アンモニア濃度検知器の検知濃度が第1上限アンモニア濃度(例えば、8000ppm)以上であるか否かに基づき原料中の酸素濃度の状態を判定してもよい。
【0061】
酸素濃度状態検知器として圧力検知器を用いた場合、圧力検知器の検知濃度が第1上限圧力値(例えば、大気圧に対して+0.5kPa)以下であるか否かに基づき原料中の酸素濃度の状態を判定してもよい。
【0062】
[第1変形例]
本変形例の燃料電池システムにおいて、制御器5は、改質器1の温度を第1温度に制御できない場合に、改質器1の制御温度を第1温度よりも高い第2温度に変更するように構成されている。
【0063】
図3は、第1実施形態の第1実施形態の第1変形例における燃料電池システムの動作方法の一例を示すフローチャートである。
【0064】
本変形例の燃料電池システムにおいて、上記構成以外は、第1実施形態と同様に構成してもよい。
【0065】
次に、本変形例の燃料電池システムの詳細について説明する。
【0066】
本変形例の燃料電池システムのハードウェア構成は、図1と同様とすることができる。よって、本変形例の燃料電池システムと、第1実施形態の燃料電池システム100とで共通する構成要素については、同一の名称と符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0067】
以下、図3を参照しつつ、本変形例の水素生成装置の動作方法について説明する。
【0068】
ステップS201〜203の動作は、図2のステップS101〜103と同様であるので、説明を省略する。
【0069】
ステップS203の後、制御器5は、改質器1の温度を第1温度に維持できるか否か、すなわち第1温度で制御可能か否かを判定する(ステップS204)。該判定は、具体的には例えば、温度検知器3が検知する改質1器の温度が第1温度よりも高い第2上限温度(例えば、710℃)以上であると、改質器1の温度を第1温度に維持できないと判定することにより行うことができる。なお、第2上限温度は、改質器1の耐熱温度よりも小さい温度が設定される。
【0070】
改質器1の温度を第1温度で制御可能であれば、ステップS204の判定結果はYesとなり、制御器5は、そのまま制御を継続する。
【0071】
改質器1の温度を第1温度で制御が可能でなければ、ステップS204の判定結果はNoとなり、制御器5は、改質器1の制御温度を第1温度よりも高い第2温度に変更する(ステップS205)。すなわち、制御器5は、改質器1の温度が第2温度となるように、電力制御器22によりオフ燃料ガスの流量を制御する。なお、第2温度は、改質器1の耐熱温度よりも小さい温度が設定される。第2温度は、例えば、730℃としうる。改質器の制御温度を第2温度に変更した後は、判定動作を終了する(エンド)。
【0072】
なお、図3に示す動作は繰り返されてもよい。これにより、原料中の酸素濃度の状態が第2の状態から第1の状態へと変化した場合には、制御器5は、オフ燃料ガス流量の低下制御を中止し、改質器1の制御温度を第1温度に戻して電力制御器22によりオフ燃料ガス流量を制御する。
【0073】
[第2変形例]
本変形例の燃料電池システムにおいて、制御器5は、改質器1の温度を第2温度に制御できない場合に、運転を停止するように構成されている。
【0074】
本変形例の燃料電池システムは、上記構成以外は、第1変形例と同様に構成してもよい。
【0075】
次に、本変形例の燃料電池システムの詳細について説明する。
【0076】
本変形例の燃料電池システムのハードウェア構成は、図1と同様とすることができる。よって、本変形例の燃料電池システムと、第1変形例の燃料電池システムとで共通する構成要素については、同一の名称と符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0077】
図4は、第1実施形態の第1実施形態の第2変形例における燃料電池システムの動作方法の一例を示すフローチャートである。
【0078】
以下、図4を参照しつつ、本変形例の水素生成装置の動作方法について説明する。
【0079】
ステップS301〜305の動作は、図2のステップS201〜205と同様であるので、説明を省略する。
【0080】
ステップS305の後、制御器5は、改質器1の温度を第2温度に維持できるか否か、すなわち、第2温度で制御可能であるか否かを判定する(ステップS306)。該判定は、具体的には例えば、例えば、温度検知器3が検知する改質器1の温度が第2温度よりも高い第3上限温度(例えば、750℃)以上であると、改質器1の温度を第2温度に維持できないと判定することにより行うことができる。なお、第2上限温度は、改質器1の耐熱温度よりも小さい温度が設定される。
【0081】
第2温度での制御が可能であれば、ステップS206の判定結果はYesとなり、改質器1の制御温度を第2温度に維持したままで運転が維持され、制御器5は、判定動作を終了する(エンド)。
【0082】
改質器1の温度を第2温度で制御可能でなければ、ステップS306の判定結果はNoとなり、制御器5は、燃料電池システム100の運転を停止して(ステップS307)、判定動作を終了する(エンド)。
【0083】
(第2実施形態)
第2実施形態の燃料電池システムは、オフ燃料ガス流路に設けられ、燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を調整する流量調整器を備え、制御器は、流量調整器を制御して燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を低下させるように構成されている。なお、上記流量調整器は、燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を調整する流量調整器の一例である。
【0084】
本実施形態の燃料電池システムは、上記構成以外は、第1実施形態及びその変形例の少なくともいずれか一つと同様に構成してもよい。
【0085】
次に、本実施の形態の燃料電池システムについて詳細に説明する。
【0086】
図5は、第2実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【0087】
図5に示すように、本実施形態の燃料電池システム200は、第1実施形態の燃料電池システム100において、オフ燃料ガス供給路12に流量調整弁18が設けられている。なお、流量調整弁18は、オフ燃料ガス流路に設けられ、燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を調整する流量調整器の一例である。燃料電池システム200において、上記構成以外で、図1と同様の符号である構成については、第1実施形態と同様であるのでその詳細な説明を省略する。
【0088】
流量調整弁18は、燃焼器2へ供給されるオフ燃料ガスの流量を制御する。例えば、可変オリフィス弁により構成される。
【0089】
次に、本実施形態の燃料電池システムの動作について説明する。
【0090】
燃料電池システム200は、制御器5が、原料中の酸素濃度が第2の状態であるとき、流量調整弁を制御してオフ燃料ガスの流量を第1の状態のときよりも低下させる。
【0091】
本実施形態の燃料電池システム200の動作は、上記の点以外は第1実施形態及びその変形例のいずれかの燃料電池システムと同様とすることができる。よって、燃料電池システム100と燃料電池システム200との間で共通する動作については、詳細な説明は省略する。
【0092】
[第1変形例]
図6は、第2実施形態の第1変形例にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。本変形例にかかる燃料電池システム200Aは、第2実施形態の燃料電池システム200において、バイパス流路19が設けられている。本変形例の燃料電池システム200Aは、上記構成以外は、第2実施形態の燃料電池システムと同様に構成される。よって、図5と図6とで共通する構成要素については、同一の符号及び名称を付して詳細な説明を省略する。
【0093】
バイパス流路19は、改質器2より排出された後、燃料電池20をバイパスして、オフ燃料ガス供給路12に流入する燃料ガスが流れる経路である。具体的には、バイパス流路19は、燃料ガス供給路11とオフ燃料ガス供給路12とを、燃料電池20を経由せずに接続する。図6に示す例において、流量調整弁18は、バイパス流路19が合流する部位よりも下流のオフ燃料ガス供給路12に設けられているが、本例に限定されるものではなく、燃焼器2へ供給されるオフ燃料ガスの流量を制御可能であれば、いずれの位置に設けても構わない。例えば、バイパス流路19が合流する部位よりも上流のオフ燃料ガス供給路12に設けられても構わない。
【0094】
燃料電池システム200Aの動作は、第2実施形態の燃料電池システムと同様とすることができる。よって、詳細な説明を省略する。
【0095】
[第2変形例]
図7は、第2実施形態の第2変形例にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。本変形例にかかる燃料電池システム200Bは、第2実施形態の燃料電池システム200において、オフ燃料ガスが流れるオフ燃料ガス流路より分岐した分岐路に設けられ、分岐路を流れるオフ燃料ガスの流量を調整する流量調整器を備え、制御器は、流量調整器を制御して燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を低下させるように構成されている。なお、上記流量調整器は、燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を調整する流量調整器の一例である。
【0096】
本変形例の燃料電池システム200Bは、上記構成以外は、第2実施形態の燃料電池システムと同様に構成される。よって、図5と図7とで共通する構成要素については、同一の符号及び名称を付して詳細な説明を省略する。
【0097】
本変形の燃料電池システム200Bは、オフ燃料ガス供給路12から分岐した分岐路に設けられた流量調整弁18を備える。
【0098】
分岐路の下流端は、大気と連通し、オフ燃料ガスを大気に排出する。
【0099】
流量調整弁18は、分岐路を流れるオフ燃料ガスの流量を調整する流量調整器の一例であり、例えば、その開度を調整することで、燃焼器2へと供給されるオフ燃料ガスの量を調整することが可能である。例えば、流量調整弁18の開度を大きくすれば、燃焼器2へ供給されるオフ燃料ガスの量は減少し、流量調整弁18の開度を小さくすれば、燃焼器2へ供給されるオフ燃料ガスの量は増加する。
【0100】
本変形例の燃料電池システム200Bの動作は、制御器5が、流量調整弁18を制御してオフ燃料ガス流量を制御する点以外については、第2実施形態の燃料電池システム200と同様とすることができる。よって、詳細な説明を省略する。
【0101】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の燃料電池システム及びその運転方法は、原料中の酸素濃度が高い状態において改質器が過昇温する可能性を従来よりも低減できる燃料電池システム及びその運転方法として有用である。
【符号の説明】
【0103】
1 改質器
2 燃焼器
3 温度検知器
5 制御器
10 原料供給路
11 燃料ガス供給路
12 オフ燃料ガス供給路
18 流量調整弁
19 バイパス流路
20 燃料電池
22 電力制御器
100 燃料電池システム
200 燃料電池システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を改質反応させて水素ガスを含有する燃料ガスを生成する改質器と、
前記燃料ガスを用いて発電する燃料電池と、
前記燃料電池より排出されたオフ燃料ガスを燃焼して、前記改質器を加熱する燃焼器と、
原料中の酸素濃度が相対的に低い第1の状態であるときに、前記改質器の制御温度を第1温度とし、原料中の酸素濃度が第1の状態よりも相対的に高い第2の状態であるときに、前記改質器の温度が第1温度となるように、前記燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を前記第1の状態のときよりも低下させる制御器と、
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池から取り出す電力を制御する電力制御器を備え、
前記制御器は、原料中の酸素濃度が第1の状態よりも相対的に高い第2の状態であるときに、前記電力制御器を制御して前記第1の状態のときよりも前記燃料電池から取り出す電力を増やし、前記燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を低下させるように構成されている、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
オフ燃料ガスが流れるオフ燃料ガス流路に設けられ、前記燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を調整する流量調整器を備え、
前記制御器は、前記流量調整器を制御して前記燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を低下させるように構成されている、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
オフ燃料ガスが流れるオフ燃料ガス流路より分岐した分岐路に設けられ、前記分岐路を流れるオフ燃料ガスの流量を調整する流量調整器を備え、
前記制御器は、前記流量調整器を制御して前記燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を低下させるように構成されている、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記制御器は、前記改質器の温度を前記第1温度に制御できない場合に、前記改質器の制御温度を前記第1温度よりも高い第2温度に変更するように構成されている、請求項1乃至4のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記制御器は、前記改質器の温度を前記第2温度に制御できない場合に、運転を停止するように構成されている、請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記制御器は、
前記第2の状態であるときに、前記燃料電池の目標発電量に応じて設定される前記改質器から前記燃料電池への燃料ガスの供給量を前記第1の状態であるときと同様にする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記改質器は、Pt及びRhの少なくともいずれか一方を構成元素として含む改質触媒を備える請求項1から7のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項9】
改質器において原料を改質反応させて水素ガスを含有する燃料ガスを生成するステップと、
燃料電池において前記燃料ガスを用いて発電するステップと、
燃焼器において前記燃料電池より排出されたオフ燃料ガスを燃焼して前記改質器を加熱するステップと、
原料中の酸素濃度が相対的に低い第1の状態であるときに、前記改質器の制御温度を第1温度とするステップと、
原料中の酸素濃度が第1の状態よりも相対的に高い第2の状態であるときに、前記改質器の温度が第1温度となるように、前記燃焼器に供給されるオフ燃料ガスの流量を前記第1の状態のときよりも低下させるステップとを備える、
燃料電池システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−230800(P2012−230800A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97855(P2011−97855)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】