説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池で発生した熱で直接水タンクを温めることにより、水タンクの加熱効率を高めることができる燃料電池システムの提供を図る。
【解決手段】燃料電池システムFCの水タンク8を燃料電池1の上側近傍に配置し、かつ、これら水タンク8と燃料電池1との間にその燃料電池1で発生した熱Hを水タンク8に伝達させる熱伝達手段100を設けることにより、燃料電池1で発生する熱Hで上側近傍の水タンク8を直接加温して、低温起動時に凍結している水タンク8内の水の解凍を促進し、システム起動性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関し、とりわけ、燃料電池に供給する水を貯水する水タンクを備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の発熱を水の気化潜熱を利用して冷却する燃料電池システムでは、そのための水を貯水するための水タンクを備えており、このように貯水タンクを備えた燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車では、寒冷地においては水タンク内の水が凍結する場合があり、このように凍結した場合は燃料電池システムの起動性が悪化してしまう。
【0003】
このため、燃料電池の排空気の熱を利用して水タンク内の水を温めるようにした燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−31243号公報(第5頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の燃料電池システムにあっては、水タンクが燃料電池から離隔した部位に配置され、それら燃料電池と水タンクとの間にダクト(案内路)を設けて、燃料電池の排空気をそのダクトを介して水タンクに供給するようになっている。
【0005】
このため、燃料電池の排空気の熱で水タンクを温めるため加熱効率が悪く、しかも離隔した水タンクまでダクトによって排空気を供給するため、ダクトでの熱損失が発生して水タンクの加熱効率が更に悪化してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、燃料電池で発生した熱で直接水タンクを温めることにより、水タンクの加熱効率を高めることができる燃料電池システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水タンク内に貯水した水を燃料電池に供給して、該燃料電池の発電によって生じた熱を、前記水の気化潜熱で奪って冷却する燃料電池システムにおいて、前記水タンクを前記燃料電池の上側近傍に配置し、かつ、これら水タンクと燃料電池との間にその燃料電池で発生した熱を上記水タンクに伝達させる熱伝達手段を備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃料電池で発生した熱を熱伝達手段によって燃料電池の上側近傍に配置した水タンクに伝達できるので、燃料電池で発生する熱によって水タンクを直接加温することができる。従って、低温起動時に凍結している水タンク内の水を速やかに解凍でき、水タンクからの水(純水)の供給開始を早めて低温時における燃料電池システムの起動性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
[実施形態1]
図1,図2は本発明にかかる燃料電池システムの実施形態1を示し、図1は車両に搭載した燃料電池システムの全体概略構成図、図2は燃料電池と水タンクとの関係を示す概略構成図である。
【0011】
本実施形態の燃料電池システムFCは、図1に示すように車両Mに搭載された場合を例にとって示し、燃料電池1と、燃料電池1に燃料としての水素を供給する燃料供給手段と、燃料電池1に酸化剤としての空気を供給する酸化剤供給手段と、発電によって生じた熱を気化潜熱で奪って冷却させる水供給手段とを主要な構成要素として備え、燃料電池に水素と空気をそれぞれ供給することで、これら水素と空気中の酸素とを電気化学的に反応させて発電電力を得るものである。
【0012】
燃料電池1は、電解質膜をアノード側電極(燃料極)とカソード側電極(酸化剤極)とで挟み込んでなる膜電極接合体(MEA:membrane electrode assembly)と、この膜電極接合体の両側に水素、空気及び水を供給するための流路が形成されたセパレータを配置した単位燃料電池セル(単セル)を複数積層してなるセルスタックからなり、本実施形態の燃料電池システムFCでは、電極及びセパレータを多孔質体として形成し、水を電解質膜へと浸み出させ、その水の気化潜熱にて発電で生じた熱を除去するように構成されている。
【0013】
燃料供給手段は、例えば、水素を貯蔵する高圧水素タンク、水素供給管、バルブ、水素排気管、水素希釈装置、水素燃焼装置(何れも図示は省略する)等を有する。高圧水素タンクから取り出された水素は、可変バルブなどで流量や圧力が調整された上で、水素供給管を通じて燃料電池1の燃料極へと供給される。また、燃料電池1の燃料極から排出されたアノード排出ガスは、水素排気管を通って水素希釈装置で水素濃度が十分に希釈されるか水素燃焼装置で燃焼されて酸化された上で、システム外部に排出される。
【0014】
酸化剤供給手段は、例えば、空気を圧縮し燃料電池1の酸化剤極へ供給する圧縮機(コンプレッサ)2、圧縮した空気を燃料電池1に送る空気供給管3、その空気を所定湿度にする加湿器4、燃料電池1から排気された空気温度を下げる空気冷却装置(コンデンサ)5、コンデンサ5で凝縮された排空気中に含まれる水を分離する気液分離装置(セパレータ)6等を有する。
【0015】
圧縮機2で圧縮して供給された空気は、可変バルブなどで流量や圧力が調整されて(場合によっては加湿器4によって適切な温度・湿度に調整されて)燃料電池1の酸化剤極へ供給され、そして、燃料電池1の酸化剤極から排出された排空気は、空気排気管7Aからコンデンサ5に送られて冷却された後、セパレータ6で気液分離されて空気排気管7Bを介してシステム外部へ排出される。
【0016】
水供給手段は、例えば水を貯水する水タンク8と、この水タンク8から燃料電池1(または加湿器4を介して燃料電池1)へと水を供給する水供給管9と、気液分離装置6で分離した水を再び水タンク8へ戻すポンプ10等を有する。図1では、水タンク8から燃料電池1へ直接水を水供給管9で供給するようにしてあるが、加湿器4を燃料電池1の上流に配置し、この加湿器4を介して燃料電池1に水を供給するようにしてもよい。
【0017】
ここで、本実施形態の燃料電池システムは、図2に示すように前記水タンク8を前記燃料電池1の上側近傍に配置し、かつ、これら水タンク8と燃料電池1との間にその燃料電池1で発生した熱Hを上記水タンク8に伝達させる熱伝達手段100を設けてある。
【0018】
前記前記熱伝達手段100は、燃料電池1と水タンク8との間にそれぞれに接触した状態で介在し、燃料電池1の発生熱Hをそれの上側に配置した前記水タンク8に直接伝熱する良熱伝導部材11によって形成してある。
【0019】
前記良熱伝導部材11は、絶縁性を有すると共に熱伝導効率の高い部材、例えばシリコンなどのジェルで形成され、燃料電池1の真上に配置される。また、前記良熱伝導部材11は水タンク8の底面自体を用いることができ、この場合は燃料電池1の上側に水タンク8を直接接触させて配置すればよい。
【0020】
以上の構成により本実施形態の燃料電池システムFCによれば、この燃料電池システムFCを搭載した車両Mを寒冷地で使用する場合等にあって、燃料電池システムFCを停止して駐車させておくと水タンク8内の水が凍結することがある。
【0021】
このように水タンク8内の水が凍結した状態で燃料電池システムFCを作動した場合に、本実施形態では水タンク8を燃料電池1の上側近傍に配置し、かつ、これら水タンク8と燃料電池1との間に設けた熱伝達手段100によって、燃料電池1で発生した熱Hを上記水タンク8に伝達するようにしたので、燃料電池1で発生する熱Hで上側近傍の水タンク8を直接加温できるようになる。
【0022】
このため、低温起動時に凍結している水タンク8内の水を速やかに解凍でき、水タンク8からの水(純水)の供給開始を早めて低温時における燃料電池システムの起動性を確保することができる。
【0023】
[実施形態2]
図3は本発明の実施形態2を示し、前記実施形態1と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図3は燃料電池と水タンクとの関係を示す拡大断面図である。
【0024】
本実施形態の燃料電池システムFCは、基本的に図1に示した全体構造と略同様の構成となり、図3に示すように水タンク8を燃料電池1の上側近傍に配置してあり、これら水タンク8と燃料電池1との間に熱伝達手段100Aを設けてある。
【0025】
燃料電池1は、対向する多孔質からなるセパレータ21間に酸化剤極(カソード側電極)、電解質膜22、燃料極(アノード側極)を配置したセル23を複数積層したスタック20を備え、そのスタック20の側方にマニホールド24を配置して構成される。前記セパレータ21には、前記酸化剤極と対向する面には空気流路25が形成されるとともに、前記燃料極と対向する面には水素流路26が形成されている。また、セパレータ21同士の対向面には、水が流通する水流路27が形成されている。
【0026】
ここで、本実施形態では前記熱伝達手段100Aを、前記水タンク8および前記燃料電池1の外側を適宜間隔δを設けて共通のケース12で囲繞して、そのケース12と前記水タンク8および前記燃料電池1との間に形成される連続した空間部Sによって構成してある。
【0027】
即ち、前記ケース12は、水タンク8を燃料電池1の上側に設置した状態で、これら燃料電池1と水タンク8の周囲を間隔δをもって気密および液密に囲繞してあり、ケース12の内側に形成される前記空間部Sは、燃料電池1の周囲の下部空間S1と水タンク8の周囲の上部空間S2とが連続される。
【0028】
このとき、前記水タンク8の側面8aを下方に行くに従って(燃料電池1に向かって)内方に傾斜させて、その水タンク8の断面形状を略逆台形状としてある。
【0029】
このように水タンク8の断面形状が略逆台形状となることにより、その水タンク8の水平方向の断面積は、下方から上方、つまり、底面8bから天井面8cに行くに従って滑らかに漸増するようになっている。
【0030】
以上の構成により本実施形態の燃料電池システムFCによれば、水タンク8および燃料電池1の外側を囲繞するケース12と、水タンク8および燃料電池1と、の間に形成される連続した空間部Sによって熱伝達手段100Aを構成したので、燃料電池1で発生した熱Hは周囲の下部空間S1から水タンク8の周囲の上部空間S2へと直接伝達されて、その水タンク8を周囲から温めることができる。
【0031】
従って、水タンク6の周囲にケース12によって閉ざされた空間部Sがあることにより、水タンク6内の水の凍結を遅らせることができ、燃料電池1によって暖まった燃料電池周囲の空気がタンク周囲に存在することで水タンク6内の水を昇温させることができる。その結果、実施形態1と同様、低温起動時に凍結している水タンク8内の水を速やかに解凍でき、水タンク8からの水(純水)の供給開始を早めて低温時における燃料電池システムの起動性を確保することができる。
【0032】
また、本実施形態では前記ケース12の内側に形成される空間部Sが断熱効果を有することから、ケース12外方から水タンク8に伝達される温度を低下させて、水タンク8内の水が凍結されるのを遅らせることができる。
【0033】
更に、本実施形態にあっても前記水タンク8を燃料電池1の上側に接触状態で設置しておくことにより、実施形態1と同様に燃料電池1で発生した熱Hを直接水タンク8に伝熱することができ、この点からも水タンク8の加熱効率をより高めることができる。なお、実施形態1と同様に、良熱伝導部材11を燃料電池1と水タンク8の間に介在させておいてもよい。
【0034】
更にまた、本実施形態では水タンク8の側面8aを下方(燃料電池1側へ)に行くに従って内方に傾斜させて、その水タンク8の断面形状を略逆台形状としたので、前記上部空間S2は下部空間S1に連続する下方が広がることになり、下部空間S1から燃料電池1の熱Hが上部空間S2、つまり、水タンク8の周囲に流入し易くなるとともに、水タンク8の側面8aが傾斜することによりその面積が増大するので、水タンク8の昇温性を更に高めることができる。
【0035】
ところで、水タンク8内の水が凍結する際には、その凍結が下側から上側へと進行して行くことになるが、本実施形態では、水タンク8の断面形状を略逆台形状としたことにより、水が膨張しつつ凍結する際の無理な膨張力を逃がすことができるため、水タンク8の破損を避けることができる。
【0036】
[実施形態3]
図4は本発明の実施形態3を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図4は燃料電池と水タンクとの関係を示す拡大断面図である。
【0037】
本実施形態の燃料電池システムFCは、基本的に実施形態2と略同様に構成され、図4に示すように水タンク8を燃料電池1の上側近傍に配置してあるとともに、これら水タンク8および燃料電池1の外側に連続した空間部Sを設けて共通のケース12Aで囲繞してあり、特に本実施形態ではそのケース12Aを断熱構造をもって形成してある。
【0038】
即ち、前記ケース12Aは、実施形態1に開示したケース12の外側(または内側)に断熱材13を取り付けることにより形成することができる。
【0039】
以上の構成により本実施形態の燃料電池システムFCによれば、燃料電池1および水タンク8を囲繞するケース12Aを断熱構造としたので、燃料電池1で発生した熱Hがケース12Aから外方に逃げるのを抑えることができ、水タンク8が凍結している場合の解凍を促進することができる。その結果、実施形態1と同様、低温起動時に凍結している水タンク8内の水を速やかに解凍でき、水タンク8からの水(純水)の供給開始を早めて低温時における燃料電池システムの起動性を確保することができる。
【0040】
また、本実施形態では実施形態2と同様に燃料電池1の熱Hを空間部Sを通して水タンク8に伝熱できるとともに、その空間部Sが断熱効果を発揮し、かつ、水タンク8を燃料電池1の上側に接触状態で設置したことにより、水タンク8の加熱効率を高めることができ、更に、水タンク8の断面形状を略逆台形状としたことにより、水タンク8の加熱効率を更に高めることができるとともに、水の凍結時に水タンク8の破損を避けることができる。
【0041】
[実施形態4]
図5は本発明の実施形態4を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図5は燃料電池システムの要部を取り出して示す概略構成図である。
【0042】
本実施形態の燃料電池システムFCは、図5に示すように空気導入管3Aから導入した空気をコンプレッサ2で圧縮して空気供給管3を介して燃料電池1に供給するようになっており、本実施形態ではコンプレッサ2で圧縮した空気をアフタークーラ30によって冷却して、燃料電池1に供給する空気を温度調整するようになっている。また、このアフタークーラ30の下流側に加湿器4(図1参照)が設けられる場合もある。ここでは、前記空気導入管3Aからコンプレッサ2およびアフタークーラ30を経て空気供給管3に至る経路を、吸気系経路Iとする。
【0043】
ここで、本実施形態では前記水タンク8の周囲に、燃料電池1の前記吸気系経路Iに設けられて空気が通過する空間部分を有する吸気系中空部品としてのレゾネータ31を配置してある。
【0044】
前記レゾネータ31は、空気導入管3Aの途中に設けられて吸入空気音を消音するために中空の箱状に形成した共鳴器であり、このレゾネータ31を図5中破線で示したように前記水タンク8の配置部分に配置して、そのレゾネータ31の内部に水タンク8を取り込んで収納、つまり、水タンク8をレゾネータ31で覆ってある。
【0045】
もちろん、レゾネータ31の消音機能は、水タンク8を収納した状態で所望の共鳴周波数を作り出すことができるように内部空間の形状や容積が予め調整される。
【0046】
以上の構成により本実施形態の燃料電池システムFCによれば、中空のレゾネータ31を水タンク8の周囲に配置したことにより、そのレゾネータ31の中空部分が断熱機能を発揮するため、外気温度が水タンク8に伝達されるのを低減し、水タンク8内の水が凍結するのを遅らせることができる。また、この吸気系中空部品であるレゾネータ31は、音振低減を図るための部品空間や通気圧損を低減するための配管空間などにスペースを利用できる。
【0047】
尚、吸気系中空部品としては音振低減を図るための前記レゾネータ31に限ることなく、中空部分を有するその他の部品、例えば除塵用のフィルタケースや通路断面の大きなダクト等を用いることができる。
【0048】
ところで、本実施形態にあっても実施形態2と同様に水タンク8を燃料電池1の上側に配置しておくことにより、燃料電池1の熱Hを直接水タンク8に伝熱して加熱効率を高めることができるとともに、水タンク8の断面形状を略逆台形状とすることにより、水タンク8の加熱効率を高めつつ水の凍結時に水タンク8の破損を避けることができる。
【0049】
[実施形態5]
図6は本発明の実施形態5を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図6は燃料電池システムの要部を取り出して示す概略構成図である。
【0050】
本実施形態の燃料電池システムFCは、図6に示すように空気導入管3Aから導入した空気をコンプレッサ2で圧縮して空気供給管3を介して燃料電池1に供給するようになっており、その空気供給管3にはアフタークーラ30が設けられる。
【0051】
ここで、本実施形態では前記水タンク8の周囲に、燃料電池1の吸気系経路Iに導入した空気を圧縮するコンプレッサ2の出口空気(圧縮空気)を導入してある。
【0052】
即ち、前記コンプレッサ2で圧縮した空気は空気導入管3を介して燃料電池1に供給されることになるが、本実施形態では水タンク8の周囲を適宜間隔をもって密閉ケース32で囲繞し、その密閉ケース32の一側面に空気供給管3の上流側を連通するとともに、密閉ケース32の他側面に空気供給管3の下流側を連通する。
【0053】
また、前記アフタークーラ30は、前記空気供給管3に密閉ケース32を迂回するバイパス管3Bを設け、そのバイパス管3Bに設けるようになっている。
【0054】
以上の構成により本実施形態の燃料電池システムFCによれば、コンプレッサ2で圧縮した空気は空気供給管3の上流側から密閉ケース32に導入され、そして、その密閉ケース32内で水タンク8の周囲を流通した後、空気供給管3の下流側に排出される。従って、コンプレッサ2の圧縮により温度上昇した空気が水タンク8の周囲に沿って流れるため、水タンク8を効率良く温めることができる。その結果、実施形態1と同様、低温起動時に凍結している水タンク8内の水を速やかに解凍でき、水タンク8からの水(純水)の供給開始を早めて低温時における燃料電池システムの起動性を確保することができる。
【0055】
また、本実施形態では水タンク8の昇温が不要な場合には、圧縮空気をバイパス管3Bに流すことにより、水タンク8内の水が過剰に温められるのを防止できる。
【0056】
ところで、本実施形態にあっても水タンク8を燃料電池1の上側に配置しておくことにより、燃料電池1の熱Hを直接水タンク8に伝熱して加熱効率を高めることができるとともに、水タンク8の断面形状を略逆台形状とすることにより、水タンク8の加熱効率を高めつつ水の凍結時に水タンク8の破損を避けることができる。
【0057】
[実施形態6]
図7〜図9は本発明の実施形態6を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図7は燃料電池システムの要部を取り出して示す概略構成図、図8は図7中A部の要部拡大図、図9は空気排気管と水供給管を近接配置しその周囲に断熱材を設けた例を示す要部拡大断面図である。
【0058】
本実施形態の燃料電池システムFCは、実施形態1で説明したように燃料電池1から排出された排空気は、図7に示すように空気排気管7Aからコンデンサ5に送られて冷却された後、セパレータ6で気液分離される。
【0059】
ここで、本実施形態では燃料電池1の排空気中の水を空気と分離して回収するセパレータ6内に、このセパレータ6で回収した水を水タンク8に供給するポンプ10を配置し、このポンプ10の周囲に排空気や回収した前記水を存在させるようになっている。
【0060】
即ち、燃料電池1の加熱された排空気は前述したようにコンデンサ5で冷却されることにより、その排空気中の水分が凝縮されて液相の水となり、その水と水分が除去された排空気とが容器状の前記セパレータ6に回収され、このセパレータ6内で気液分離された状態で一旦溜められる。
【0061】
そして、分離された水は、前記ポンプ10から水供給管33を介して水タンク8に供給されるとともに、分離された排空気は空気排気管7Bを介して適宜処理された後に外方に排出される。
【0062】
従って、前記ポンプ10を容器状の前記セパレータ6内に収納することにより、セパレータ6内に回収された水が多量に存在する場合は、ポンプ10はその水中に浸漬され、水量が少ない場合は、排空気中にポンプ10がその姿を水面から現す。
【0063】
このとき、前記水供給管33を水タンク8に接続する際に、燃料電池1のスタック近傍を通るマニホールド24内を通過するようになっており、このマニホールド24は水供給管33の保温性の関係から、図7に示すように水タンク8の側方まで延長しておくことが好ましい。
【0064】
また、本実施形態では前記ポンプ10から水を前記水タンク8に供給する前記水供給管33と前記排空気の空気排気管7Bとの間に熱交換部34を設けてある。
【0065】
前記熱交換部34は、図8に示すように水供給管33の外径を空気排気管7Bの内径よりも十分に小径に形成して、空気排気管7Bの中心部に水供給管33を配置して形成した二重管によって形成し、空気排気管7Bを流通する排空気と水供給管33を流通する水との間で熱交換されるようになっている。
【0066】
更に、本実施形態では、前記ポンプ10から水を前記水タンク8に供給する水供給管33の少なくとも一部分を断熱材35で囲繞するようになっている。
【0067】
なお、図9に示すように空気排気管7Bと水供給管33とを近接して平行配置させ、それらを内部に取り囲むようにして断熱材35を設け、この断熱材35で平行配置された空気排気管7Bと水供給管33とを共に保温するようにしてもよい。
【0068】
以上の構成により本実施形態の燃料電池システムによれば、セパレータ6内に、このセパレータ6で回収した水を水タンク8に供給するポンプ10を配置して、このポンプ10の周囲に排空気や回収した前記水を存在させるようにしたので、ポンプ10の周囲に存在する排空気や水は、コンデンサ5で冷却したとはいえ外気よりも温度が高くなっており、起動時にポンプ10が凍結している場合にも、そのポンプ10の解凍を早めて燃料電池システムFCの起動性を向上させることができる。
【0069】
また、ポンプ10から水を水タンク8に供給する水供給管33と排空気の空気排気管7Bとの間に熱交換部34を設けたので、空気排気管7Bを流通する温度が高い排空気と水供給管33を流通する水との間で熱交換して、排空気の温度で水を温めることができるため、水供給管33内の水が凍結している場合にも、それの解凍を早めて燃料電池システムFCの起動性を向上させることができる。
【0070】
更に、ポンプ10から水を水タンク8に供給する水供給管33の少なくとも一部分を断熱材35で囲繞したので、断熱材35により水供給管33内の水に外気温度が直接影響するのを抑制し、水供給管33内で水が凍結するのを抑えることができる。
【0071】
また、本実施形態にあっても水タンク8を燃料電池1の上側に配置してあるとともに、燃料電池1および水タンク8の外側を空間部Sを設けてケース12で囲繞したことにより、水タンク8の加熱効率を高めることができるとともに、更には、水タンク8の断面形状を略逆台形状とすることにより、水タンク8の加熱効率を高めつつ水の凍結時に水タンク8の破損を避けることができる。
【0072】
以上、本発明の燃料電池システムは前記各実施形態に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態1における車両に搭載した燃料電池システムの全体概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態1における燃料電池と水タンクとの関係を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態2における燃料電池と水タンクとの関係を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態3における燃料電池と水タンクとの関係を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の実施形態4における燃料電池システムの要部を取り出して示す概略構成図である。
【図6】本発明の実施形態5における燃料電池システムの要部を取り出して示す概略構成図である。
【図7】本発明の実施形態6における燃料電池システムの要部を取り出して示す概略構成図である。
【図8】図7中A部の要部拡大図である。
【図9】図9は空気排気管と水供給管を近接配置しその周囲に断熱材を設けた例を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 燃料電池
2 コンプレッサ
3 空気供給管
5 コンデンサ
6 セパレータ
7A,7B 空気排気管
8 水タンク
8a 水タンクの側面
9 水供給管
10 ポンプ
11 良熱伝導部材
12,12A ケース
31 レゾネータ(吸気系中空部品)
33 水供給管
34 熱交換部
35 断熱材
100,100A 熱伝達手段
FC 燃料電池システム
I 吸気系経路
S 空間部
δ 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水タンク内に貯水した水を燃料電池に供給して、該燃料電池の発電によって生じた熱を、前記水の気化潜熱で奪って冷却する燃料電池システムにおいて、
前記水タンクを前記燃料電池の上側近傍に配置し、かつ、これら水タンクと燃料電池との間にその燃料電池で発生した熱を上記水タンクに伝達させる熱伝達手段を備えた
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記熱伝達手段は、燃料電池と水タンクとの間にそれぞれに接触した状態で介在し、燃料電池の発生熱をそれの上側に配置した前記水タンクに直接伝熱する良熱伝導部材である
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池システムであって、
前記熱伝達手段は、前記水タンクおよび前記燃料電池の外側を適宜間隔を設けて共通のケースで囲繞して、そのケースと前記水タンクおよび前記燃料電池との間に形成される連続した空間部とした
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一つに記載の燃料電池システムであって、
前記水タンクの側面を下方に行くに従って内方に傾斜させて、その水タンクの断面形状を略逆台形状とした
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の燃料電池システムであって、
前記ケースは断熱構造をもって形成される
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一つに記載の燃料電池システムであって、
前記水タンクの周囲に、燃料電池の吸気系経路に設けられて空気が通過する空間部分を有する吸気系中空部品を配置した
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか一つに記載の燃料電池システムであって、
前記水タンクの周囲に、燃料電池の吸気系経路に導入した空気を圧縮するコンプレッサの出口空気を導入した
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一つに記載の燃料電池システムであって、
燃料電池の排空気中の水を回収するセパレータ内に、このセパレータで回収した水を前記水タンクに供給するポンプを配置し、このポンプの周囲に排空気や回収した前記水を存在させた
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料電池システムであって、
前記ポンプから水を前記水タンクに供給する水供給管と前記排空気の空気排出管との間に熱交換部を設けた
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項10】
請求項8または9に記載の燃料電池システムであって、
前記ポンプから水を前記水タンクに供給する水供給管の少なくとも一部分を断熱材で囲繞した
ことを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−242327(P2007−242327A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60823(P2006−60823)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】