説明

燃料電池システム

【課題】動作温度の低下による水蒸気改質器の改質率の低下が抑制できるようにする。
【解決手段】燃料極101より排出される燃料極排出ガスの少なくとも50%を、リサイクル用燃料極排出ガスとして、リサイクル用燃料極排出ガス経路119を介して燃料供給経路112に再循環させる。例えば、ブロア108による供給流量を増加させることで、燃料極排出ガス経路118に排出された燃料極排出ガスの少なくとも50%が、リサイクル用燃料極排出ガス経路119の方に取り込まれるようにすればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料極からの排出ガスを燃料ガスとして再利用する燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、規模の大小にかかわらず高い効率が得られることから、次世代のコジェネレーションシステムに用いられる発電手段として、燃料電池が注目されている。燃料電池は、酸素などの酸化剤ガスと水素などの燃料ガスとの化学反応を利用した電池であり、空気極と呼ばれる陽極と、燃料極と呼ばれる陰極とで電解質の層を挾んだ単セルを、複数重ね合わせて用いている。
【0003】
この種の燃料電池を搭載する燃料電池システム、特に固体酸化物形燃料電池では、空気極で、空気中の酸素から空気極反応により酸素イオンが生成する。この酸素イオンは、固体酸化物電解質の内部を移動して燃料極に到達する。燃料極では、水素リッチな改質ガス中の水素及び一酸化炭素と到達した酸素イオンとが反応し、水蒸気又は二酸化炭素と電子とが生成する。この電子が、外部回路を移動する過程で電気エネルギーが取り出される。
【0004】
このような燃料電池システムでは、一般に、燃料ガスの利用率を上げて燃費を増大させるために、燃料電池の燃料排出側より消費されずに排出される未反応の水素を含有するガスを燃料電池の燃料供給側に戻し、新たな燃料ガスと混合した状態で再度燃料電池に供給することにより、燃料ガスをリサイクルして利用している(非特許文献1参照)。
【0005】
図4は、天然ガスなどの炭化水素燃料を改質して取り出した水素を燃料ガスとして用いる従来の燃料電池システムの構成を示す構成図である。このシステムは、燃料極401及び空気極402よりなる単セルをスタックした燃料電池スタック403と、水蒸気改質器404と、排出ガス燃焼器406と、ブロア408と、リサイクル用熱交換器409と、第1熱交換器410及び第2熱交換器411とを備えている。また、このシステムは、燃料供給経路412,空気供給経路415,燃料極排出ガス経路418,リサイクル用燃料極排出ガス経路419,燃焼用燃料極排出ガス経路420,空気極排出ガス経路421,及び燃焼ガス経路422を備えている。なお、図示していないが、燃料極401と空気極402との間には電解質の層が設けられている。また、図4では、1組の燃料極401及び空気極402よりなる単セルを示しているが、実際には、燃料電池スタック403は、複数の単セルから構成されている。
【0006】
この燃料電池システムでは、燃料供給経路412により供給される燃料ガス(例えば天然ガス)は、水蒸気改質器404で改質され、水素と共に一酸化炭素や水蒸気などを含む水素リッチなガスに変換され、この後、燃料電池スタック403の燃料極401に供給され、発電に用いられる。この発電の結果、燃料極401より排出される燃料極排出ガスは、燃料極排出ガス経路418を通り、リサイクル用燃料極排出ガス経路419及び燃焼用燃料極排出ガス経路420に分岐される。燃料極排出ガスは、水素ガスの濃度(比率)が低下しているが、改質された燃料ガスと同様に、水素と共に一酸化炭素や水蒸気などを含んでいる。
【0007】
リサイクル用燃料極排出ガス経路419に分岐された燃料極排出ガス(リサイクル用燃料極排出ガス)は、まず、リサイクル用熱交換器409で一度温度を下げられる。次いで、リサイクル用燃料極排出ガスは、ブロア408により流量が調整され、再びリサイクル用熱交換器409で昇温される。この後、リサイクル用燃料極排出ガスは、燃料供給経路412に合流し、燃料供給経路412により供給されている燃料ガスと共に、水蒸気改質器404に導入される。このようにして水蒸気改質器404に導入されるリサイクル用燃料極排出ガス中の水蒸気は、水蒸気改質反応に必要な水蒸気として利用される。
【0008】
一方、燃焼用燃料極排出ガス経路420に分岐された燃料極排出ガス(燃焼用燃料極排出ガス)は、排出ガス燃焼器406において、空気極排出ガス経路421より供給される空気極排出ガスによって燃焼処理される。燃焼処理された後の燃焼ガスは、燃焼ガス経路422により排出される。ここで、ブロア408によるリサイクル用燃料極排出ガスの流量制御により、燃焼用燃料極排出ガス経路420に分岐される燃焼用燃料極排出ガスの量(流量)も制御される。
【0009】
また、空気は、空気供給経路415より導入され、第1熱交換器410及び第2熱交換器411により、燃焼ガス経路422により排出される燃焼ガスとの間で熱交換されて昇温され、この後、燃料電池スタック403の空気極402に供給される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】H.Nakatomi,et al.,"JPOWER's Prototype 150kW-Class SOFC Cogeneration System Development(SOFIT)",ECS Transactions,Vol.7,(1),pp.161-166,2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述した従来の燃料電池システムでは、燃料電池スタック403の動作温度が1000℃程度であるという前提で、燃料極より排出される燃料極排出ガスの25%程度をリサイクル用燃料極排出ガスとして水蒸気改質器404にリサイクルして用いていた。上述したような燃料電池システムでは、発電動作において燃料電池スタック403からの発熱を、水蒸気改質器404における改質に必要な熱源としている。動作温度が1000℃程度における水蒸気改質器404の加熱状態であれば、燃料極排出ガスの25%程度の量のリサイクル用燃料極排出ガスにより供給される水蒸気の量で、十分な改質率が得られる。
【0012】
しかしながら、動作温度がより低下した場合、例えば、動作温度が750〜800℃程度の場合、改質率が大幅に低下するという問題があった。よく知られているように、水蒸気改質器404の改質率は、動作温度により大きく変化し、動作温度が900℃より低下すると、温度低下に比較してより大きく改質率が低下してしまう。
【0013】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、動作温度の低下による水蒸気改質器の改質率の低下が抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る燃料電池システムは、空気極,電解質,及び燃料極を備えた複数の単セルよりなる燃料電池スタックと、空気極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、燃料ガス供給手段に供給される燃料ガスを水蒸気改質反応により改質する水蒸気改質手段と、燃料電池スタックの発電動作により燃料極より排出された燃料極排出ガスの少なくとも50%を、水蒸気改質手段に供給される燃料ガスの供給経路に再循環させる燃料極排出ガス再循環手段であるとを少なくとも備えるようにしたものである。なお、燃料極排出ガス再循環手段は、燃料極排出ガスの60%〜70%を燃料ガスの供給経路に再循環させるようにするとよりよい。
【0015】
また、本発明に係る他の燃料電池システムは、空気極,電解質,及び燃料極を備えた複数の単セルよりなる燃料電池スタックと、空気極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、燃料ガス供給手段に供給される燃料ガスを水蒸気改質反応により改質する水蒸気改質手段と、燃料電池スタックの発電動作により燃料極より排出された燃料極排出ガスの一部を、水蒸気改質手段に供給される燃料ガスの供給経路に再循環させる燃料極排出ガス再循環手段と、水蒸気改質手段の温度を測定する温度測定手段と、温度測定手段が測定した温度により、燃料極排出ガス再循環手段による燃料極排出ガスの再循環量を制御するリサイクルガス量制御手段とを少なくとも備えるようにしたものである。
【0016】
上記燃料電池システムにおいて、リサイクルガス量制御手段は、燃料極排出ガス再循環手段が、燃料極排出ガスの少なくとも50%を燃料ガスの供給経路に再循環させるように制御するとよい。また、リサイクルガス量制御手段は、燃料極排出ガス再循環手段が、燃料極排出ガスの60%〜70%を燃料ガスの供給経路に再循環させるように制御するとよりよい。
【0017】
上記燃料電池システムにおいて、燃料極排出ガス再循環手段は、ブロアであり、加えて、ブロアに対して供給される燃料極排出ガスとブロアより排出される燃料極排出ガスとの間で熱交換する熱交換器を備え、ブロアに対して供給される燃料極排出ガスの温度を低下させる。
【0018】
また、燃料ガスの供給経路に再循環される以外の燃料極排出ガスを燃焼させる排出ガス燃焼手段と、起動時に燃料電池スタックを加熱する起動用燃焼器とを備えるようにしてもよい。また、起動時に水蒸気改質手段に水蒸気を供給する水蒸気供給手段を備えるようにしても良い。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、燃料電池スタックの発電動作により燃料極より排出された燃料極排出ガスの少なくとも50%を、水蒸気改質手段に供給される燃料ガスの供給経路に再循環させるようにしたので、動作温度の低下による水蒸気改質器の改質率の低下が抑制できるようになるという優れた効果が得られる。
【0020】
また、本発明によれば、燃料電池スタックの発電動作により燃料極より排出された燃料極排出ガスの一部を、水蒸気改質手段の温度測定結果により制御して、水蒸気改質手段に供給される燃料ガスの供給経路に再循環させるようにしたので、動作温度の低下による水蒸気改質器の改質率の低下が抑制できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1における燃料電池システムの構成例を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1における燃料電池システムの外観を示す斜視図である。
【図3】図3は、他の燃料電池システムの構成例を示す構成図である。
【図4】図4は、天然ガスなどの炭化水素燃料を改質して取り出した水素を燃料ガスとして用いる従来の燃料電池システムの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0023】
[実施の形態1]
始めに、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における燃料電池システムの構成例を示す構成図である。また、図2は、本発明の実施の形態1における燃料電池システムの外観を示す斜視図である。なお、図2では、図1に示す全ての構成は示していない。このシステムは、燃料極101,空気極102,及び電解質103よりなる単セルをスタックした燃料電池スタック100と、水蒸気改質器104と、排出ガス燃焼器106と、ブロア(燃料極排出ガス再循環手段)108と、リサイクル用熱交換器109と、第1熱交換器110及び第2熱交換器111とを備えている。
【0024】
また、このシステムは、燃料供給経路112,空気供給経路(酸化剤ガス供給手段)115,燃料極排出ガス経路118,リサイクル用燃料極排出ガス経路119,燃焼用燃料極排出ガス経路120,空気極排出ガス経路121,及び燃焼ガス経路122を備えている。なお、図1では、1組の燃料極101,空気極102,及び電解質103よりなる単セルを示しているが、実際には、燃料電池スタック100は、複数の単セルから構成されている。
【0025】
この燃料電池システムでは、燃料供給経路112により供給される燃料ガス(例えば天然ガス)は、水蒸気改質器104でよく知られた水蒸気改質反応により改質され、水素と共に一酸化炭素や水蒸気などを含む水素リッチなガスに変換され、この後、燃料電池スタック100の燃料極101に供給され、発電に用いられる。この発電の結果、燃料極101より排出される燃料極排出ガスは、燃料極排出ガス経路118を通り、リサイクル用燃料極排出ガス経路119及び燃焼用燃料極排出ガス経路120に分岐される。燃料極排出ガスは、水素ガスの濃度(比率)が低下しているが、改質された燃料ガスと同様に、水素と共に一酸化炭素や水蒸気などを含んでいる。
【0026】
リサイクル用燃料極排出ガス経路119に分岐された燃料極排出ガス(リサイクル用燃料極排出ガス)は、まず、リサイクル用熱交換器109で一度温度を下げられる。次いで、リサイクル用燃料極排出ガスは、ブロア108により流量が調整され、再びリサイクル用熱交換器109で昇温される。リサイクル用熱交換器109では、ブロア108に供給されるリサイクル用燃料極排出ガスと、ブロア108より排出されるリサイクル用燃料極排出ガスとの間で熱交換する。この後、リサイクル用燃料極排出ガスは、燃料供給経路112に合流し、燃料供給経路112により供給されている燃料ガスと共に、水蒸気改質器104に導入される。このようにして水蒸気改質器104に導入されるリサイクル用燃料極排出ガス中の水蒸気は、水蒸気改質反応に必要な水蒸気として利用される。
【0027】
また、燃焼用燃料極排出ガス経路120に分岐された燃料極排出ガス(燃焼用燃料極排出ガス)は、排出ガス燃焼器106において、空気極排出ガス経路121より供給される空気極排出ガスによって燃焼処理される。燃焼処理された後の燃焼ガスは、燃焼ガス経路122により排出される。この、燃焼用燃料極排出ガス経路120に分岐される燃焼用燃料極排出ガスの量(流量)は、ブロア108によるリサイクル用燃料極排出ガス経路119の方へのリサイクル用燃料極排出ガスの流量制御により制御される。
【0028】
また、空気は、空気供給経路115より導入され、第1熱交換器110及び第2熱交換器111により、燃焼ガス経路122により排出される燃焼ガスとの間で熱交換されて昇温され、この後、燃料電池スタック100の空気極102に供給される。なお、空気に限らず、酸素ガスや酸素を含む他の酸化剤ガスであっても良い。
【0029】
上述したような燃料電池システムでは、よく知られているように、発電動作による燃料電池スタック100からの発熱及び排出ガス燃焼器106からの発熱を、例えば水蒸気改質器104の動作に必要な熱源として用いている。
【0030】
ここで、本実施の形態1における燃料電池システムでは、燃料極101より排出される燃料極排出ガスの少なくとも50%を、リサイクル用燃料極排出ガスとして、リサイクル用燃料極排出ガス経路119を介して燃料供給経路112に再循環させるようにした。例えば、ブロア108による供給流量を増加させることで、燃料極排出ガス経路118に排出された燃料極排出ガスの少なくとも50%が、リサイクル用燃料極排出ガス経路119の方に取り込まれるようにすればよい。
【0031】
このようにすることで、例えば、燃料電池スタック100の発電動作の温度が低下するなどにより、水蒸気改質器104の温度が例えば700℃以下になった場合でも、90%以上の改質率を保つことができるようになる。なお、この改質率は、燃料電池スタック100における燃料利用率を80%とした場合の値である。また、燃料極排出ガスの60%〜70%がリサイクル用燃料極排出ガスとして用いられるようにすることで、本システムの動作温度が700℃と低下しても、改質率をより向上させることができる。
【0032】
また、図1に示すように、水蒸気改質器104における動作温度を温度センサ(温度測定手段)131により測定し、温度センサ131による温度測定結果を用いたリサイクルガス量制御部132によるブロア108の動作制御で、リサイクル用燃料極排出ガス経路119の側に取り込まれるリサイクル用燃料極排出ガスの割合を制御しても良い。このように制御することで、動作温度の低下による水蒸気改質器104の改質率の低下が抑制できる。
【0033】
例えば、温度センサ131による温度測定結果が、予め設定されている700℃以下になると、この状態を検出したリサイクルガス量制御部132の制御により、ブロア108による供給量を増加させ、燃料極排出ガスの少なくとも50%が、リサイクル用燃料極排出ガスとして用いられるようにすればよい。また、温度センサ131により測定される温度により、燃料極排出ガスの60%〜70%がリサイクル用燃料極排出ガスとして用いられるように、ブロア108による供給量を制御しても良い。このように制御することで、本システムの動作温度が700℃と低下しても、改質率をより向上させることができる。
【0034】
ところで、本システムでは、図1に示すように、気化器(水蒸気供給手段)105及び起動用燃焼器107を備えるようにしている。本システムでは、水供給経路114より供給された水を気化器105で気化して水蒸気とし、これを水蒸気改質器104に供給可能としている。この燃料電池システムを起動するときに、水蒸気改質器104における水蒸気改質反応に必要な水蒸気を、気化器105により供給可能としている。
【0035】
また、本システムでは、起動時に、起動用燃焼器107において、起動用燃料供給経路113より供給される起動用燃料を、起動用空気供給経路116より供給される起動用空気により燃焼させ、この燃焼温度により、燃料電池スタック100の温度を発電に適した温度にまで上昇させる。ただし、起動の後に定常運転状態となった後は、水供給経路114による水の供給を停止して気化器105による水蒸気の供給を停止する。また、起動用燃料供給経路113による起動用燃料の供給を停止し、起動用空気供給経路116による起動用空気の供給を停止し、起動用燃焼器107による熱供給を停止する。
【0036】
次に、他の燃料電池システムについて説明する。図3は、他の燃料電池システムの構成例を示す構成図である。このシステムは、燃料極101,空気極102,及び電解質103よりなる単セルをスタックした燃料電池スタック100と、水蒸気改質器104と、排出ガス燃焼器106と、エジェクタ(燃料極排出ガス再循環手段)308と、第1熱交換器110及び第2熱交換器111とを備えている。
【0037】
また、このシステムは、燃料供給経路112,空気供給経路115,燃料極排出ガス経路118,リサイクル用燃料極排出ガス経路119,燃焼用燃料極排出ガス経路120,空気極排出ガス経路121,及び燃焼ガス経路122を備えている。なお、図示していないが、燃料極101と空気極102との間には電解質の層が設けられている。また、図1では、1組の燃料極101及び空気極102よりなる単セルを示しているが、実際には、燃料電池スタック100は、複数の単セルから構成されている。
【0038】
また、本システムにおいても、前述した実施の形態1と同様に、気化器105,起動用燃焼器107、水供給経路114,起動用燃料供給経路113,及び起動用空気供給経路116を備え、システム起動時に、水蒸気改質器104への水蒸気の供給及び燃料電池スタック100の加熱とを行うようにしている。
【0039】
この燃料電池システムでは、燃料供給経路112により供給される燃料ガス(例えば天然ガス)は、水蒸気改質器104で水蒸気改質反応により改質され、水素と共に一酸化炭素や水蒸気などを含む水素リッチなガスに変換され、この後、燃料電池スタック100の燃料極101に供給され、発電に用いられる。この発電の結果、燃料極101より排出される燃料極排出ガスは、燃料極排出ガス経路118を通り、リサイクル用燃料極排出ガス経路119及び燃焼用燃料極排出ガス経路120に分岐される。燃料極排出ガスは、水素ガスの濃度(比率)が低下しているが、改質された燃料ガスと同様に、水素と共に一酸化炭素や水蒸気などを含んでいる。
【0040】
リサイクル用燃料極排出ガス経路119に分岐された燃料極排出ガス(リサイクル用燃料極排出ガス)は、エジェクタ308により、流量が調整されて燃料供給経路112に合流し、燃料供給経路112により供給されている燃料ガスと共に、水蒸気改質器104に導入される。エジェクタ308では、内部に配置されたノズルより噴出される燃料ガスの流れ(超音速流)による得られる吸引力で、リサイクル用燃料極排出ガスを吸引して燃料ガスに混合している。例えば、リサイクル用燃料極排出ガスの吸引経路に設けた絞りにより、リサイクル用燃料極排出ガスの導入(混合)量を制御する。このようにして水蒸気改質器104に導入されるリサイクル用燃料極排出ガス中の水蒸気は、水蒸気改質反応に必要な水蒸気として利用される。
【0041】
また、燃焼用燃料極排出ガス経路120に分岐された燃料極排出ガス(燃焼用燃料極排出ガス)は、排出ガス燃焼器106において、空気極排出ガス経路121より供給される空気極排出ガスによって燃焼処理される。燃焼処理された後の燃焼ガスは、燃焼ガス経路122により排出される。この、燃焼用燃料極排出ガス経路120に分岐される燃焼用燃料極排出ガスの量(流量)は、エジェクタ308によるリサイクル用燃料極排出ガス経路119の方へのリサイクル用燃料極排出ガスの流量制御により制御される。
【0042】
また、空気は、空気供給経路115より導入され、第1熱交換器110及び第2熱交換器111により、燃焼ガス経路122により排出される燃焼ガスとの間で熱交換されて昇温され、この後、燃料電池スタック100の空気極102に供給される。なお、空気に限らず、酸素ガスや酸素を含む他の酸化剤ガスであっても良い。
【0043】
上述したような燃料電池システムでは、よく知られているように、発電動作による燃料電池スタック100からの発熱及び排出ガス燃焼器106からの発熱を、例えば水蒸気改質器104の動作に必要な熱源として用いている。
【0044】
ここで、上記燃料電池システムでは、エジェクタ308による供給流量を増加させることで、燃料極101より排出される燃料極排出ガスの少なくとも50%を、リサイクル用燃料極排出ガスとして、リサイクル用燃料極排出ガス経路119を介して燃料供給経路112に再循環させるようにした。このようにすることで、前述同様に、水蒸気改質器104の温度(動作温度)が例えば700℃以下になった場合でも、90%以上の改質率を保つことができるようになる。なお、この改質率は、燃料電池スタック100における燃料利用率を80%とした場合の値である。また、燃料極排出ガスの60%〜70%がリサイクル用燃料極排出ガスとして用いられるようにすることで、本システムの動作温度が700℃と低下しても、改質率をより向上させることができる。
【0045】
また、上記燃料電池システムにおいても、図3に示すように、水蒸気改質器104における動作温度を温度センサ131により測定し、温度センサ131による温度測定結果を用いたリサイクルガス量制御部332によるエジェクタ308の動作制御で、リサイクル用燃料極排出ガス経路119の側に取り込まれるリサイクル用燃料極排出ガスの割合を制御しても良い。
【0046】
例えば、温度センサ131による温度測定結果が、予め設定されている700℃以下になると、この状態を検出したリサイクルガス量制御部332の制御により、エジェクタ308におけるリサイクル用燃料極排出ガスの供給量を増加させ、燃料極排出ガスの少なくとも50%が、リサイクル用燃料極排出ガスとして用いられるようにすればよい。また、温度センサ131により測定される温度により、燃料極排出ガスの60%〜70%がリサイクル用燃料極排出ガスとして用いられるように、エジェクタ308の動作を制御しても良い。このように制御することで、本システムの動作温度が700℃と低下しても、改質率をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0047】
101…燃料極、102…空気極、103…電解質、104…水蒸気改質器、105…気化器(水蒸気供給手段)、106…排出ガス燃焼器、107…起動用燃焼器、108…ブロア(燃料極排出ガス再循環手段)、109…リサイクル用熱交換器、110…第1熱交換器、111…第2熱交換器、112…燃料供給経路、113…起動用燃料供給経路、114…水供給経路、115…空気供給経路(酸化剤ガス供給手段)、116…起動用空気供給経路、118…燃料極排出ガス経路、119…リサイクル用燃料極排出ガス経路、120…燃焼用燃料極排出ガス経路、121…空気極排出ガス経路、122…燃焼ガス経路、131…温度センサ(温度測定手段)、132…リサイクルガス量制御部、308…エジェクタ(燃料極排出ガス再循環手段)、332…リサイクルガス量制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気極,電解質,及び燃料極を備えた複数の単セルよりなる燃料電池スタックと、
前記空気極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、
燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、
前記燃料ガス供給手段に供給される燃料ガスを水蒸気改質反応により改質する水蒸気改質手段と、
前記燃料電池スタックの発電動作により前記燃料極より排出された燃料極排出ガスの少なくとも50%を、前記水蒸気改質手段に供給される前記燃料ガスの供給経路に再循環させる燃料極排出ガス再循環手段であるブロアと、
前記ブロアに対して供給される前記燃料極排出ガスと前記ブロアより排出される前記燃料極排出ガスとの間で熱交換する熱交換器と
を少なくとも備え、
前記ブロアに対して供給される前記燃料極排出ガスの温度を低下させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムにおいて、
前記ブロアは、前記燃料極排出ガスの60%〜70%を前記燃料ガスの供給経路に再循環させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の燃料電池システムにおいて、
前記水蒸気改質手段の温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段が測定した温度により、前記ブロアによる前記燃料極排出ガスの再循環量を制御するリサイクルガス量制御手段と
を少なくとも備えることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−160465(P2012−160465A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88174(P2012−88174)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2007−242952(P2007−242952)の分割
【原出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】