説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池の一部における内部状態の異常の有無を診断可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】複数の単位セル10を積層方向に複数のブロックに分割することにより形成した複数のセル群B1〜Bnそれぞれのインピーダンスを算出する。そして、複数のセル群B1〜Bnの中に、インピーダンスが予め定めた閾値を上回るセル群が存在する場合は、燃料電池1にガス欠乏が生じていると診断する。さらに、複数のセル群B1〜Bnのうち、インピーダンスが予め定めた閾値を上回ったセル群の数が基準個数以下である場合にガス欠乏が燃料電池1の一部で生じていると診断し、当該セル群の数を上回っている場合にガス欠乏が燃料電池1全体で生じていると診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単位セルが複数積層された燃料電池を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池について低周波領域におけるインピーダンスおよび高周波領域におけるインピーダンスの双方を測定し、各周波数領域におけるインピーダンスの測定結果に基づいて、燃料電池の内部状態を診断する燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、特許文献1に記載の燃料電池システムでは、高周波領域におけるインピーダンスによって燃料電池の電解質膜の湿潤状態を診断し、低周波領域におけるインピーダンスによって燃料ガスである水素の供給状態(過不足)を診断するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−12419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の燃料電池システムでは、燃料電池全体としてのインピーダンスを測定しているため、燃料電池の一部(複数の単位セルの一部)において内部状態に異常が生じたとしても、燃料電池の内部状態が正常と誤診してしまう虞がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、燃料電池の一部における内部状態の異常の有無を診断可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、酸素を主成分とする酸化剤ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる単位セル(10)が複数積層された燃料電池(1)と、複数の単位セル(10)を積層方向に複数のブロックに分割することにより形成した複数のセル群(B1〜Bn)それぞれのインピーダンスを算出するインピーダンス算出手段(100b)と、インピーダンス算出手段(100b)にて算出された複数のセル群(B1〜Bn)のインピーダンスの分布に基づいて、燃料電池(1)における内部状態の異常の有無を診断する診断手段(100c)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
これによれば、複数のセル群(B1〜Bn)毎にインピーダンスを算出し、算出した各セル群(B1〜Bn)のインピーダンスの分布に基づいて燃料電池(1)における内部状態を診断するので、燃料電池(1)の一部における内部状態の異常の有無を診断することが可能となる。
【0009】
また、請求項2では、請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、診断手段(100c)は、燃料電池(1)の内部における酸化剤ガスおよび燃料ガスのガス欠乏の有無を診断するガス欠乏診断部(100e)を有し、ガス欠乏診断部(100e)は、複数のセル群(B1〜Bn)のインピーダンスそれぞれを予め定めた閾値と比較し、複数のセル群(B1〜Bn)のうち少なくとも1つのセル群のインピーダンスが閾値を上回った場合に、ガス欠乏が生じていると判定することを特徴とする。これによれば、燃料電池におけるガス欠乏状態を診断することができる。
【0010】
また、請求項3では、請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、ガス欠乏診断部(100e)は、ガス欠乏が生じていると判定した場合に、さらに、複数のセル群(B1〜Bn)のうちインピーダンスが閾値を上回ったセル群の数に基づいて、ガス欠乏が燃料電池(1)の一部、および燃料電池(1)全体の何れで生じているのかを判定することを特徴とする。
【0011】
これによれば、ガス欠乏が燃料電池(1)の一部および燃料電池(1)全体の何れで生じているのかを判定することができるので、燃料電池(1)の一部におけるガス欠乏の有無を診断することが可能となる。
【0012】
ところで、本発明者らの検討によれば、ガスが徐々に減少してきて一部のセルあるいは各セルにて部分的にガスが不足し始めるガス欠乏においては、ガス欠乏が燃料ガスの欠乏によって生じた場合よりも酸化剤ガスの欠乏によって生じた場合の方が、ガス欠乏が生じたセル群における電圧が低下するといった傾向があることが分かっている。
【0013】
そこで、請求項4では、請求項3に記載の燃料電池システムにおいて、インピーダンス算出手段(100b)は、複数のセル群(B1〜Bn)それぞれの電圧を検出する電圧検出手段(4)を有し、ガス欠乏診断部(100e)は、複数のセル群(B1〜Bn)のうちインピーダンスが閾値を上回ったセル群の電圧の低下量に基づいてガス欠乏が酸化剤ガスの欠乏および燃料ガスの欠乏の何れであるかを判定することを特徴とする。
【0014】
これによれば、ガス欠乏が酸化剤ガスの欠乏および燃料ガスの欠乏なのかを特定することができるので、燃料電池(1)におけるガス欠乏の詳細な状態を診断することができる。
【0015】
また、ガス欠乏が燃料ガスの欠乏によって生じた場合、燃料ガスの供給圧力等を強制的に増大させると、燃料ガスの欠乏が解消されてインピーダンスが低下する。
【0016】
そこで、請求項5に記載の発明では、請求項3に記載の燃料電池システムにおいて、ガス欠乏診断部(100e)は、複数のセル群(B1〜Bn)のうちインピーダンスが閾値を上回ったセル群における燃料電池(1)への燃料ガスの供給圧力を増大させた際のインピーダンスの低下量に基づいて、ガス欠乏が酸化剤ガスの欠乏および燃料ガスの欠乏の何れであるかを判定することを特徴とする。
【0017】
これによれば、ガス欠乏が酸化剤ガスの欠乏および燃料ガスの欠乏なのかを特定することができるので、燃料電池(1)におけるガス欠乏の詳細な状態を診断することができる。
【0018】
また、請求項6に記載の発明では、請求項3に記載の燃料電池システムにおいて、燃料電池(1)に燃料電池(1)から排出された燃料オフガスを戻すための燃料オフガス循環流路(22)と、燃料オフガス循環流路(22)に設けられ、燃料電池(1)に燃料オフガスを戻す燃料オフガス循環手段(27)と、を備え、ガス欠乏診断部(100e)は、複数のセル群(B1〜Bn)のうちインピーダンスが閾値を上回ったセル群における燃料電池(1)への燃料オフガスの循環量を増大させた際のインピーダンスの低下量に基づいて、ガス欠乏が酸化剤ガスの欠乏および燃料ガスの欠乏の何れであるかを判定することを特徴とする。
【0019】
これによれば、ガス欠乏が酸化剤ガスの欠乏および燃料ガスの欠乏なのかを特定することができるので、燃料電池(1)におけるガス欠乏の詳細な状態を診断することができる。この際、燃料オフガスを有効利用するので、燃費の悪化を抑制しつつ、ガス欠乏が燃料ガスの欠乏および酸化剤ガスの欠乏の何れであるかを特定することができる。
【0020】
また、請求項7に記載の発明では、請求項4ないし6のいずれか1つに記載の燃料電池システムにおいて、燃料電池(1)への燃料ガスの供給圧力を調整可能な燃料ガス供給圧力調整手段(25)と、燃料ガス供給圧力調整手段(25)の作動を制御する燃料ガス用制御手段(100f)と、を備え、燃料ガス用制御手段(100f)は、ガス欠乏診断部(100e)にてガス欠乏が燃料ガスの欠乏と判定された場合に、燃料電池(1)への燃料ガスの供給圧力が増大するように燃料ガス供給圧力調整手段(25)の作動を制御することを特徴とする。
【0021】
これによれば、燃料ガスの欠乏が生じていると判定された場合には、燃料ガスの供給圧力を増大させるので、燃料ガスの欠乏を解消することが可能となる。
【0022】
また、請求項8に記載の発明では、請求項6に記載の燃料電池システムにおいて、燃料電池(1)から燃料ガスを排出する燃料ガス排出手段(26)と、燃料オフガス循環手段(27)および燃料ガス排出手段(26)の作動を制御する燃料ガス用制御手段(100f)と、を備え、燃料ガス用制御手段(100f)は、ガス欠乏診断部(100e)にてガス欠乏が燃料電池(1)の一部で生じ、かつ、ガス欠乏が燃料ガスの欠乏と判定された場合に、燃料電池(1)への燃料オフガスの循環量が増大するように燃料オフガス循環手段(27)の作動を制御し、ガス欠乏が燃料電池(1)全体で生じ、かつ、ガス欠乏が燃料ガスの欠乏と判定された場合に、燃料電池(1)から燃料ガスを排出するように燃料ガス排出手段(26)の作動を制御することを特徴とする。
【0023】
これによれば、燃料ガスの欠乏が燃料電池(1)の一部で生じていると判定された場合には、燃料オフガスの循環量を増大させるので、燃料電池(1)の各単位セル(10)への燃料ガスの供給量を増大させることができ、燃料ガスの欠乏を解消することができる。この際、燃料オフガスを有効利用するので、燃費の悪化を抑制しつつ、燃料ガスの欠乏を解消することができる。
【0024】
さらに、燃料ガスの欠乏が燃料電池(1)の全体で生じていると判定された場合には、システム外部へ燃料オフガスを排出することで、燃料オフガスに含まれる多量の不純物を適切に排出し、燃料ガスの欠乏を解消することができる。この結果、燃料電池(1)の燃料ガス不足に起因する燃料電池(1)における耐久性の悪化を抑制することができる。これに加え、燃料オフガス排出流路(22)に存する燃料オフガスは、水素濃度が低いので、燃費の悪化を抑制しつつ安全にシステム外部に排出することができる。
【0025】
また、請求項9に記載の発明では、請求項3ないし8のいずれか1つに記載の燃料電池システムにおいて、燃料電池(1)に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段(33)と、酸化剤ガス供給手段(33)の作動を制御する酸化剤ガス用制御手段(100g)と、を備え、酸化剤ガス用制御手段(100g)は、ガス欠乏診断部(100e)にてガス欠乏が酸化剤ガスの欠乏と判定された場合に、燃料電池(1)への酸化剤ガスの供給量が増大するように酸化剤ガス供給手段(33)の作動を制御することを特徴とする。
【0026】
これによれば、酸化剤ガスの欠乏が生じていると判定された場合には、酸化剤ガスの供給量を増大させるので、酸化剤ガスの欠乏を解消することが可能となる。
【0027】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの全体構成図である。
【図2】第1実施形態に係る燃料電池の要部の断面図である。
【図3】第1実施形態に係る制御装置が実行する診断処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】燃料電池に対して高周波から低周波までの交流信号を印加した場合の各セル群におけるインピーダンスを複素平面上に示した特性図である。
【図5】燃料電池全体でガス欠乏が生じた場合におけるインピーダンスの分布を説明する説明図である。
【図6】燃料電池の一部でガス欠乏が生じた場合におけるインピーダンスの分布を説明する説明図である。
【図7】第1実施形態に係る制御装置が実行する診断処理の要部の流れを示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態に係る制御装置が実行する診断処理の要部の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0030】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜図7に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る燃料電池システムの全体構成図であり、図2は、燃料電池1の要部の断面図(積層方向の断面図)を示している。この燃料電池システムは、電気自動車の一種である、所謂燃料電池車両に適用されており、車両走行用電動モータや二次電池といった電気負荷2に電力を供給するものである。
【0031】
燃料電池システムは、図1に示すように、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する燃料電池1を備えている。燃料電池1は、電気負荷2に供給される電気エネルギを出力するもので、本実施形態では、固体高分子電解質型燃料電池を採用している。なお、本実施形態の燃料電池1は、基本単位となる単位セル10が複数積層されて、各単位セル10が電気的に直列に接続されて構成されたものである。
【0032】
図2に示すように、各単位セル10は、プロトン伝導性のイオン交換膜(固体高分子)からなる電解質膜11の両側面に一対の電極12、13が配置された膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)14と、この膜電極接合体14を狭持する一対のセパレータ15で構成されている。
【0033】
一対の電極12、13のうち、一方の電極が水素を主成分とする燃料ガスが供給される水素極12(アノード)として構成され、他方の電極が、酸素を主成分とする酸化剤ガス(空気)が供給される空気極13(カソード)として構成されている。なお、各電極12、13は、触媒層およびガス拡散層にて構成されている。
【0034】
また、一対のセパレータ15それぞれは、カーボン材や導電性金属よりなる板状プレートからなり、水素極12と対向する面に水素極12に水素を供給するための水素流路15aが形成され、空気極13と対向する面に空気極13に空気を供給するための空気流路15bが形成されている。
【0035】
燃料電池1に水素および空気といった反応ガスが供給されると、各単位セル10では、以下に示すように、水素と酸素とを電気化学反応して、電気エネルギを出力する。
【0036】
(水素極側:アノード側)H→2H+2e
(空気極側:カソード側)2H+1/2O+2e→H
図1に戻り、燃料電池1から出力される電気エネルギは、燃料電池全体として出力される電流を検出する電流センサ3、燃料電池1から出力される電圧を検出する電圧検出手段としての電圧検出装置4によって計測される。
【0037】
電圧検出装置4は、燃料電池1の各単位セル10を積層方向に複数のブロック(例えば、単位セル10個毎)に分割することにより形成される複数のセル群B1〜Bnにおける電圧を検出するもので、複数の電圧センサにて構成されている。なお、電流センサ3および電圧検出装置4は、後述する制御装置100に接続されており、各センサの検出値が制御装置100に入力される。
【0038】
燃料電池1には、各単位セル10に水素を供給するための水素供給配管20、および各単位セル10の内部に存する生成水や窒素を未反応水素と共に燃料電池1の外部に排出する水素排出配管21が接続されている。そして、本実施形態の水素供給配管20および水素排出配管21は、水素循環配管22を介して接続されている。なお、本実施形態の水素供給配管20が燃料ガス供給流路を構成し、水素排出配管21が燃料オフガス排出流路を構成している。
【0039】
水素供給配管20には、その最上流部に、高圧水素が充填された高圧水素タンク23が設けられている。また、水素供給配管20における高圧水素タンク23と燃料電池1との間には、シャット弁24、および燃料電池1に供給される水素の圧力を所定の圧力に調整可能な水素調圧弁25が設けられている。
【0040】
燃料電池1に水素を供給する際に、シャット弁24が開放され、水素調圧弁25によって所望の水素圧力に調整された水素が燃料電池1に供給される。本実施形態では、水素調圧弁25が燃料ガス供給圧力調整手段を構成している。なお、車両停止時には、安全の為にシャット弁24は閉鎖される。
【0041】
水素排出配管21には、水素を燃料電池1の外部に排出するための排出弁26が設けられている。この排出弁26は、開放された際に、燃料電池1の水素極12側から水素排出配管21を介して、水素、蒸気(あるいは水)および空気極13側から電解質膜11を通過して水素極12側に混入した窒素、酸素などの不純物が排出される。本実施形態では、排出弁26が燃料ガス排出手段を構成している。
【0042】
水素循環配管22は、水素排出配管21の排出弁26上流側から分岐して水素供給配管20の水素調圧弁25下流側に接続されている。これにより、燃料電池1から流出した未反応水素を含む燃料オフガスを、燃料電池1に循環させて再供給している。さらに、水素循環配管22には、燃料オフガスを水素供給配管20に循環させる水素循環ポンプ27が配置されている。なお、本実施形態では、水素循環配管22が燃料オフガス循環流路を構成し、水素循環ポンプ27が燃料オフガス循環手段を構成している。
【0043】
また、燃料電池1には、各単位セル10に空気を供給するための空気供給配管30、および各単位セル10の内部に存する生成水を空気と共に燃料電池1の外部に排出する空気排出配管31が接続されている。
【0044】
空気供給配管30には、燃料電池1に空気を供給する酸化剤ガス供給手段としての空気供給装置32が設けられている。本実施形態では、空気供給装置32として圧送ポンプを用いている。なお、空気供給装置32は、後述する制御装置100に接続されて、制御装置100からの制御信号に応じて作動が制御される。
【0045】
また、空気排出配管31には燃料電池1のカソード側における空気の圧力(背圧)を所定の圧力に調整する空気調圧弁33が設けられている。なお、空気調圧弁33は、後述する制御装置100に接続されて、制御装置100からの制御信号に応じて作動が制御される。
【0046】
制御装置100は、各種入力信号に基づいて各種演算処理を実行するもので、CPU、およびROM、RAMといった記憶手段等からなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路で構成されている。
【0047】
制御装置100の入力側には、上述した電流センサ3および電圧検出装置4が接続されており、電流センサ3および電圧検出装置4からの検出値が入力される。また、制御装置100の出力側には、水素調圧弁25、排出弁26、水素循環ポンプ27、空気供給装置32、空気調圧弁33等の制御対象機器が接続されており、各種入力機器からの入力信号に基づいて、各種制御対象機器25、26、27、32、33が制御される。
【0048】
ここで、本実施形態の制御装置100では、燃料電池1の内部状態(ガス欠乏)を診断する診断処理、および当該診断処理の結果に応じて各種制御対象機器の作動を制御する制御処理等を実行可能に構成されている。
【0049】
具体的には、本実施形態の制御装置100には、交流印加部100a、インピーダンス算出部100b、燃料電池1における内部状態の異常の有無を診断する診断部(診断手段)100c、各種制御対象機器を制御する制御部(制御手段)100d等が内蔵されている。
【0050】
交流印加部100aは、燃料電池1の電気負荷2への出力に所定周波数の交流信号(交流電流)を印加する交流印加手段を構成している。なお、交流印加部100aにて印加する交流信号としては、電気負荷2への出力に応じて、例えば、電気負荷2への出力の5〜10%程度の正弦波信号とすることができる。
【0051】
また、インピーダンス算出部100bは、燃料電池1の各単位セル10を積層方向に複数のブロックに分割することにより形成される各セル群B1〜BnにおけるインピーダンスZ(n)を算出するインピーダンス算出手段を構成している。
【0052】
なお、診断部100cにおける燃料電池1のガス欠乏の有無を診断する構成(ソフトウェアおよびハードウェア)がガス欠乏診断部100eを構成している。また、制御部100dにおける水素調圧弁25、排出弁26、水素循環ポンプ27を制御する構成(ソフトウェアおよびハードウェア)が燃料ガス用制御手段100fを構成し、制御部100dにおける空気供給装置32、空気調圧弁33を制御する構成(ソフトウェアおよびハードウェア)が酸化剤ガス用制御手段100gを構成している。
【0053】
次に、本実施形態の制御装置100が実行する燃料電池の内部状態を診断する診断処理について、図3〜図7に基づいて説明する。図3は、本実施形態の制御装置100が実行する診断処理の流れを示すフローチャートである。図3に示す制御フローは、燃料電池1に各反応ガスが供給されて発電状態となると開始される。
【0054】
図3に示すように、まず、制御装置100では、インピーダンス算出部100bにて、燃料電池1における燃料電池1の各セル群B1〜BnにおけるインピーダンスZ(n)を算出する(S10)。
【0055】
ここで、インピーダンス算出部100bにおけるインピーダンスZ(n)の算出方法について説明する。まず、交流印加部100aにて低周波の交流信号を電気負荷2への出力に印加した状態で、電流センサ3の検出信号(電流)、および電圧検出装置4の検出信号(各セル群B1〜Bnの電圧)を読み込み、読み込んだ各出力信号から印加した交流信号の周波数に対応する交流成分を抽出する。そして、各出力信号から抽出した各交流成分に基づいて、各セル群B1〜Bnにおける各インピーダンスZ(n)を算出する。
【0056】
ここで、図4は、燃料電池1に対して高周波から低周波までの交流信号(交流電流)を印加した場合の各セル群B1〜BnにおけるインピーダンスZを複素平面上に示した特性図(Cole−Coleプロット図)である。なお、図4における実線が燃料電池1の内部にガス欠乏が生じたときの特性を示し、破線が燃料電池1の正常時(ガス欠乏が生じていないとき)の特性を示している。
【0057】
図4に示すように、燃料電池1に印加した交流信号の周波数ωが比較的小さい領域(例えば、図中A部)では、ガス欠乏が生じたときのインピーダンスが正常時に比べて増大する傾向があるため、このような傾向を利用することで、燃料電池1にガス欠乏が生じているか否かを診断することができる。なお、燃料電池1に印加する交流信号の周波数が無限に大きい場合(ω=∞)のインピーダンスは、電解質膜11の膜抵抗に相関性を有しており、電解質膜11の膜抵抗の増大(電解質膜11の乾燥)に伴ってインピーダンスが増大する傾向がある。
【0058】
図5は、燃料電池1全体でガス欠乏が生じた場合におけるインピーダンスの分布を説明する説明図であり、図5の(a)および(b)それぞれは、燃料電池1全体でガス欠乏が生じた場合におけるインピーダンスの分布の例を示している。
【0059】
各単位セル10に対して充分に反応ガス(水素および空気)が供給されている場合、各セル群B1〜Bnにおけるインピーダンスが図5の「異常なし」で示すように、一様に低い分布となる。これに対して、各単位セル10に対して充分に反応ガス(水素および酸素)が供給されていない場合、各セル群B1〜Bnにおけるインピーダンスの多数が一様に増大するといった傾向がある。
【0060】
また、図6は、燃料電池1の一部でガス欠乏が生じた場合におけるインピーダンスの分布を説明する説明図であり、図6の(a)および(b)それぞれは、燃料電池1の一部でガス欠乏が生じた場合におけるインピーダンスの分布の例を示している。
【0061】
図6に示すように、反応ガスの分配不良等によって燃料電池1の一部でガス欠乏が生じている場合、各セル群B1〜Bnにおけるインピーダンスの一部が増大するといった傾向がある。
【0062】
本実施形態では、各セル群B1〜Bnにおけるインピーダンスの分布に基づいて、燃料電池1における内部状態の異常の有無を診断するようにしている。より詳しくは、ガス欠乏診断部100eにて、各セル群B1〜Bnにおける各インピーダンスZ(n)それぞれを予め定めた閾値Zrefと比較して各セル群B1〜Bnのうち、閾値Zrefを上回ったセル群の個数(異常セル群数)Cをカウントする(S20)。そして、カウントした異常セル群数C(各セル群B1〜Bnにおける各インピーダンスZ(n)の分布)を用いて燃料電池1における内部状態の異常の有無を診断する(S30)。なお、各セル群B1〜Bnのうち、閾値Zrefを上回ったセル群と、そのインピーダンスを記憶手段に記憶する。
【0063】
燃料電池1の内部状態の診断処理(S30)では、異常セル群数Cが1つ以上あるか否かを判定する。この結果、異常セル群数Cがゼロと判定された場合には、燃料電池1にガス欠乏が生じていないと診断する。
【0064】
一方、異常セル群数Cが1つ以上と判定された場合には、さらに、異常セル群数Cが予め定めた基準個数(例えば、複数の単位セル10の半数(=N/2))以上であるか否かを判定する。
【0065】
この結果、異常セル群数Cが基準個数以上と判定された場合には、多数のセル群B1〜Bnにてガス欠乏が生じていると判断できるので(図5参照)、燃料電池1全体でガス欠乏が生じていると診断する。また、異常セル群数Cが1つ以上であって、かつ、基準個数よりも少ないと判定された場合には、セル群B1〜Bnの一部にガス欠乏が生じていると判断できるので(図6参照)、燃料電池1の一部でガス欠乏が生じていると診断する。
【0066】
これにより、ガス欠乏が燃料電池1の一部および燃料電池1の全体の何れで生じているのかを区別して、燃料電池1の状態を診断することができる。
【0067】
次に、上述したステップS10〜S30の処理にて燃料電池1でガス欠乏が生じていると診断された場合には、さらに、当該ガス欠乏が水素欠乏(燃料ガスの欠乏)および酸素欠乏(酸化剤ガスの欠乏)の何れに起因して生じているのかを特定する処理を実行する。
【0068】
ここで、本発明者らの検討によれば、ガスが徐々に減少してきて一部のセルあるいは各セルにて部分的にガスが不足し始めるガス欠乏においては、ガス欠乏が水素欠乏(燃料ガスの欠乏)によって生じた場合よりも酸素欠乏(酸化剤ガスの欠乏)の欠乏によって生じた場合の方が、ガス欠乏が生じたセル群における電圧の低下量が多いといった傾向を有することが分かっている。
【0069】
このため、本実施形態では、ガス欠乏が生じた際のセル群B1〜Bnの電圧低下量に基づいて、当該ガス欠乏が水素欠乏(燃料ガスの欠乏)および酸素欠乏(酸化剤ガスの欠乏)の何れに起因して生じているのかを特定する。以下、具体的な処理の流れを図7に基づいて説明する。
【0070】
図7は、本実施形態の制御装置100が実行する診断処理の要部の流れを示すフローチャートである。図7に示す制御フローは、図3のステップS30の診断処理にて燃料電池1にガス欠乏が生じていると診断された場合に実行される。
【0071】
図7に示すように、まず、カウンタnや累積値等を初期化する(S110)。その後、セル群B1のインピーダンスZ(1)と閾値Zrefとを比較する(S120)。そして、インピーダンスZ(1)が閾値Zrefを上回っている場合(S120:YES)には、セル群B1の電圧V(1)を累積値Vz(Vzの初期値はゼロ)に加算する(S130)。そして、カウンタnを更新(n=n+1)して(S140)、カウンタnがセル群B1〜Bnの全体数Nより多いか否かを判定する(S150)。
【0072】
この結果、カウンタnがセル群B1〜Bnの全体数N以下(S150:NO)であれば、ステップS120〜S150の処理を繰り返す。これにより、カウンタnがセル群B1〜Bnの全体数を上回るまでステップS120〜S150の処理が繰り返されるので、複数のセル群B1〜Bnのうち、ガス欠乏が生じたセル群における電圧の累積値Vzを算出することができる。
【0073】
一方、カウンタnがセル群B1〜Bnの全体数Nを上回った場合(S150:YES)には、ガス欠乏が生じたセル群の電圧の累積値Vzが、予め定めた基準電圧VLにガス欠乏が生じたセル群の個数である異常セル群数Cを乗じた値(=VL×C)よりも小さいか否か(Vz<VL×C)を判定する(S160)。なお、基準電圧VLは、実験やシミュレーション等によって予め水素欠乏に起因するガス欠乏が生じたセル群の電圧により算出したもので、制御装置100の記憶手段に記憶されている。
【0074】
ステップS160の判定処理の結果、ガス欠乏が生じたセル群の電圧の累積値Vzが、基準電圧VLに異常セル群数Cを乗じた値よりも小さいと判定された場合(S160:YES)には、ガス欠乏が生じたセル群の電圧低下量が多いと判断できるので、ガス欠乏が酸素欠乏に起因して生じていると診断する(S170)。
【0075】
また、ステップS150の判定処理の結果、ガス欠乏が生じたセル群の電圧の累積値Vzが、基準電圧VLに異常セル群数Cを乗じた値以上と判定された場合(S160:NO)、ガス欠乏が生じたセル群の電圧低下量が少ないと判断できるので、ガス欠乏が水素欠乏に起因して生じていると診断する(S180)。
【0076】
次に、制御装置100の制御部100dでは、上述した各診断処理(S10〜S30、S110〜S180)の結果に基づいて、各種制御対象機器の作動を以下のように制御する。
【0077】
ガス欠乏が燃料電池1の全体で生じ、かつ、ガス欠乏が水素欠乏と診断された場合には、燃料電池1の出力が著しく低下すると共に、燃料電池1の劣化が進行して耐久性の悪化を招く虞があり、燃料電池1内部の燃料ガスを入れ替える必要がある。この場合、排出弁26を開放して、燃料電池1内部の水素および不純物のシステム外部への排出量を増大させる。なお、排出弁26を開放すると燃料電池1内部の圧力が低下するため、水素調圧弁25の開度が開放側に調整されて、燃料電池1内部に高圧水素タンク23から水素が供給される。これにより、燃料電池1全体に生ずる水素欠乏を解消することができる。
【0078】
また、ガス欠乏が燃料電池1の一部で生じ、かつ、ガス欠乏が水素欠乏と診断された場合には、各単位セル10への水素の分配不良が生じていると考えられるので、水素循環ポンプ27の回転数を増加させる。
【0079】
これにより、各単位セル10への燃料オフガスの循環量が増大し、各単位セル10への水素の供給量が増大するので、燃料電池1の一部に生ずる水素欠乏を解消することができる。この際、燃料オフガスを有効利用するので、燃費の悪化を抑制しつつ、燃料ガスの欠乏を解消することができる。
【0080】
また、ガス欠乏が酸素欠乏と診断された場合には、燃料電池1の出力が低下する虞があるため、空気供給装置32の回転数を増大させる。これにより、燃料電池1全体および一部に生ずる酸素欠乏を解消することができる。
【0081】
以上説明した本実施形態によれば、複数のセル群B1〜Bn毎にインピーダンスZ(n)を算出し、算出した各セル群B1〜Bnのインピーダンスの分布(異常セル群数C)に基づいて燃料電池1におけるガス欠乏の有無を診断するので、ガス欠乏が燃料電池1の一部で生じているのか、全体で生じているのかを区別して診断することができる。
【0082】
また、ガス欠乏が酸化剤ガスの欠乏によって生じた場合には、ガス欠乏が生じたセル群における電圧低下量に基づいて、ガス欠乏が酸化剤ガスの欠乏および燃料ガスの欠乏の何れに起因して生じているのかを特定することができるので、燃料電池におけるガス欠乏の詳細な状態を診断することができる。
【0083】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図8に基づいて説明する。本実施形態では、燃料電池1にガス欠乏が生じていると診断されたときに、水素循環ポンプ27の回転数を増大させ、その際のガス欠乏が生じたセル群におけるインピーダンスの変化に基づいて、ガス欠乏が水素欠乏および酸素欠乏の何れに起因して生じているのかを特定する点が第1実施形態と相違している。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0084】
図8は、本実施形態の制御装置100が実行する診断処理の要部の流れを示すフローチャートである。図8に示す制御フローは、図3のステップS30の診断処理にて燃料電池1にガス欠乏が生じていると診断された場合に実行される。
【0085】
図8に示すように、まず、カウンタnや累積値等を初期化する(S210)。そして、水素循環ポンプ27の回転数を増加させて、燃料電池1の各単位セル10への燃料オフガスの循環量を増大させる(S220)。その後、再び、インピーダンス算出部100bにて、燃料電池1における燃料電池1の各セル群B1〜BnにおけるインピーダンスZ´(n)を算出する(S230)。
【0086】
次に、セル群B1のインピーダンスZ(1)と閾値Zrefとを比較して(S240)、インピーダンスZ(1)が閾値Zrefを上回っている場合(S240:YES)には、燃料オフガスの循環量を増大する前のセル群B1のインピーダンスZ(1)を累積値Tz(Tzの初期値はゼロ)に加算する(S250)。さらに、燃料オフガスの循環量を増大した後のセル群B1のインピーダンスZ´(1)を累積値Tz´(Tz´の初期値はゼロ)に加算する(S260)。そして、カウンタnを更新して(S270)、カウンタnがセル群B1〜Bnの全体数Nより多いか否かを判定する(S280)。
【0087】
この結果、カウンタnがセル群B1〜Bnの全体数N以下(S280:NO)であれば、ステップS240〜S270の処理を繰り返す。これにより、カウンタnがセル群B1〜Bnの全体数を上回るまでステップS240〜S270の処理が繰り返されるので、燃料オフガスの循環量を増大する前後のガス欠乏が生じたセル群におけるインピーダンスの累積値Tz、Tz´を算出することができる。
【0088】
一方、カウンタnがセル群B1〜Bnの全体数Nを上回った場合(S280:YES)には、燃料オフガスの循環量を増大する前後のガス欠乏が生じたセル群のインピーダンスの累積値Tz、Tz´の差分(=Tz−Tz´)が、予め定めたインピーダンス変化があると判断されるセル群当りの基準インピーダンス変化量εに異常セル群数Cを乗じた値(=ε×C)よりも大きいか否か(Tz−Tz´>ε×C)を判定する(S290)。なお、基準インピーダンス変化量εは、実験やシミュレーション等によって、予め水素循環ポンプ27の回転数を増大させたときに、セル群B1〜Bnのインピーダンスの低下量に基づいて算出したもので、予め制御装置100の記憶手段に記憶されている。
【0089】
ステップS290の判定処理の結果、燃料オフガスの循環量を増大する前後のガス欠乏が生じたセル群におけるインピーダンスの累積値Tz、Tz´の差分が、基準インピーダンス変化量εに異常セル群数Cを乗じた値以下と判定された場合(S290:NO)には、燃料オフガスの循環量の増大によってもインピーダンスが殆ど低下していないと判断できるので、ガス欠乏が酸素欠乏に起因して生じていると診断する(S300)。
【0090】
一方、ステップS290の判定処理の結果、燃料オフガスの循環量を増大する前後のガス欠乏が生じたセル群におけるインピーダンスの累積値Tz、Tz´の差分が、基準インピーダンス変化量εに異常セル群数Cを乗じた値より大きいと判定された場合(S290:YES)、燃料オフガスの循環量の増大によりインピーダンスが大幅に低下していると判断できるので、ガス欠乏が水素欠乏に起因して生じていると診断する(S310)。
【0091】
以上説明した本実施形態によれば、燃料オフガスの循環量を増大する前後におけるガス欠乏が生じたセル群のインピーダンスの低下量(インピーダンスの累積値Tz、Tz´の差分)に基づいて、ガス欠乏が酸化剤ガスの欠乏および燃料ガスの欠乏なのかを特定することができるので、燃料電池におけるガス欠乏の詳細な状態を診断することができる。
【0092】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0093】
(1)上述の第2実施形態では、水素循環ポンプ27の回転数を増加させ、燃料オフガスの循環量を増大させる前後のインピーダンスの低下量に基づいて、ガス欠乏が酸素欠乏および水素欠乏の何れに起因して生じているのかを特定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、水素の供給圧力が増大するように水素調圧弁25の作動を制御して、水素の供給圧力を増大させる前後のインピーダンスの低下量に基づいて、ガス欠乏が酸素欠乏および水素欠乏の何れに起因して生じているのかを特定するようにしてもよい。
【0094】
(2)上述の各実施形態では、水素欠乏が燃料電池1の一部で生じた場合に、水素循環ポンプ27の回転数を増加させることで、燃料電池1の一部に生ずる水素欠乏を解消するようにしているが、これに限定されない。例えば、水素の供給圧力が増大するように水素調圧弁25の作動を制御することで、燃料電池1の一部に生ずる水素欠乏を解消するようにしてもよい。
【0095】
(3)上述の各実施形態では、燃料オフガスを循環させる燃料循環方式の燃料電池システムにおいて、燃料電池1における内部状態の異常の有無を診断する例について説明したが、燃料オフガスを循環させない燃料電池システムにおいて燃料電池1における内部状態の異常の有無を診断するようにしてもよい。
【0096】
(4)上述の各実施形態では、複数のセル群B1〜Bn毎に算出したインピーダンスの分布に基づいて、燃料電池1における内部状態の異常としてガス欠乏の有無を診断する例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数のセル群B1〜Bn毎に算出したインピーダンスの分布に基づいて、電解質膜11の乾燥状態等を診断するようにしてもよい。
【0097】
(5)上述の各実施形態では、燃料電池1においてガス欠乏が生じたと診断された場合に、ガス欠乏を解消すべく、各種制御対象機器を制御するようにしているが、これに限定されない。例えば、ガス欠乏が生じたと診断された場合に、当該診断内容をユーザに報知するようにしてもよい。
【0098】
(6)上述の各実施形態では、本発明の燃料電池システムを燃料電池車両に適用した例を説明したが、これに限定されず、船舶及びポータブル発電器等の移動体に適用してもよい。
【0099】
(7)上述の各実施形態は、可能な範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 燃料電池
10 単位セル
22 水素循環配管(燃料オフガス循環流路)
25 水素調圧弁(燃料ガス供給圧力調整手段)
26 排出弁(燃料ガス排出手段)
27 水素循環ポンプ(燃料オフガス循環手段)
32 空気供給装置(酸化剤ガス供給手段)
4 電圧検出装置(電圧検出手段)
100b インピーダンス算出部(インピーダンス算出手段)
100c 診断部(診断手段)
100e ガス欠乏診断部
100f 燃料ガス用制御手段
100g 酸化剤ガス用制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を主成分とする酸化剤ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる単位セル(10)が複数積層された燃料電池(1)と、
前記複数の単位セル(10)を積層方向に複数のブロックに分割することにより形成した複数のセル群(B1〜Bn)それぞれのインピーダンスを算出するインピーダンス算出手段(100b)と、
前記インピーダンス算出手段(100b)にて算出された前記複数のセル群(B1〜Bn)のインピーダンスの分布に基づいて、前記燃料電池(1)における内部状態の異常の有無を診断する診断手段(100c)と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記診断手段(100c)は、前記燃料電池(1)の内部における前記酸化剤ガスおよび前記燃料ガスのガス欠乏の有無を診断するガス欠乏診断部(100e)を有し、
前記ガス欠乏診断部(100e)は、前記複数のセル群(B1〜Bn)のインピーダンスそれぞれを予め定めた閾値と比較し、前記複数のセル群(B1〜Bn)のうち少なくとも1つのセル群のインピーダンスが前記閾値を上回った場合に、前記ガス欠乏が生じていると判定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記ガス欠乏診断部(100e)は、前記ガス欠乏が生じていると判定した場合に、さらに、前記複数のセル群(B1〜Bn)のうちインピーダンスが前記閾値を上回ったセル群の数に基づいて、前記ガス欠乏が前記燃料電池(1)の一部、および前記燃料電池(1)全体の何れで生じているのかを判定することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記インピーダンス算出手段(100b)は、前記複数のセル群(B1〜Bn)それぞれの電圧を検出する電圧検出手段(4)を有し、
前記ガス欠乏診断部(100e)は、前記複数のセル群(B1〜Bn)のうちインピーダンスが前記閾値を上回ったセル群の電圧の低下量に基づいて前記ガス欠乏が前記酸化剤ガスの欠乏および前記燃料ガスの欠乏の何れであるかを判定することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記ガス欠乏診断部(100e)は、前記複数のセル群(B1〜Bn)のうちインピーダンスが前記閾値を上回ったセル群における前記燃料電池(1)への前記燃料ガスの供給圧力を増大させた際のインピーダンスの低下量に基づいて、前記ガス欠乏が前記酸化剤ガスの欠乏および前記燃料ガスの欠乏の何れであるかを判定することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃料電池(1)に前記燃料電池(1)から排出された燃料オフガスを戻すための燃料オフガス循環流路(22)と、
前記燃料オフガス循環流路(22)に設けられ、前記燃料電池(1)に前記燃料オフガスを戻す燃料オフガス循環手段(27)と、を備え、
前記ガス欠乏診断部(100e)は、前記複数のセル群(B1〜Bn)のうちインピーダンスが前記閾値を上回ったセル群における前記燃料電池(1)への前記燃料オフガスの循環量を増大させた際のインピーダンスの低下量に基づいて、前記ガス欠乏が前記酸化剤ガスの欠乏および前記燃料ガスの欠乏の何れであるかを判定することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記燃料電池(1)への前記燃料ガスの供給圧力を調整可能な燃料ガス供給圧力調整手段(25)と、
前記燃料ガス供給圧力調整手段(25)の作動を制御する燃料ガス用制御手段(100f)と、を備え、
前記燃料ガス用制御手段(100f)は、
前記ガス欠乏診断部(100e)にて前記ガス欠乏が前記燃料ガスの欠乏と判定された場合に、前記燃料電池(1)への前記燃料ガスの供給圧力が増大するように前記燃料ガス供給圧力調整手段(25)の作動を制御することを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記燃料電池(1)から前記燃料ガスを排出する燃料ガス排出手段(26)と、
前記燃料オフガス循環手段(27)および前記燃料ガス排出手段(26)の作動を制御する燃料ガス用制御手段(100f)と、を備え、
前記燃料ガス用制御手段(100f)は、
前記ガス欠乏診断部(100e)にて前記ガス欠乏が前記燃料電池(1)の一部で生じ、かつ、前記ガス欠乏が前記燃料ガスの欠乏と判定された場合に、前記燃料電池(1)への前記燃料オフガスの循環量が増大するように前記燃料オフガス循環手段(27)の作動を制御し、
前記ガス欠乏が前記燃料電池(1)全体で生じ、かつ、前記ガス欠乏が前記燃料ガスの欠乏と判定された場合に、前記燃料電池(1)から前記燃料ガスを排出するように前記燃料ガス排出手段(26)の作動を制御することを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記燃料電池(1)に前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段(33)と、
前記酸化剤ガス供給手段(33)の作動を制御する酸化剤ガス用制御手段(100g)と、を備え、
前記酸化剤ガス用制御手段(100g)は、
前記ガス欠乏診断部(100e)にて前記ガス欠乏が前記酸化剤ガスの欠乏と判定された場合に、前記燃料電池(1)への前記酸化剤ガスの供給量が増大するように前記酸化剤ガス供給手段(33)の作動を制御することを特徴とする請求項3ないし8のいずれか1つに記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−252986(P2012−252986A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127223(P2011−127223)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】