説明

燃料電池システム

【課題】セルの内部にて空気の流れと水素の流れとが対向流となる燃料電池の状態を診断する燃料電池システムにおいて、高温高負荷状態となる際に、燃料電池の出力低下が生ずる前に、燃料電池の湿潤状態を診断可能とする。
【解決手段】燃料電池が高温高負荷状態となっている際には、セル10の水素流路14の水素入口部14a側のインピーダンスに基づいて燃料電池の湿潤状態を診断する構成とする。これにより、燃料電池の出力が低下する前に燃料電池の湿潤状態を診断することが可能となる。この結果、燃料電池の出力低下を回避することが可能となる。一方、燃料電池が低温状態又は低負荷状態となっている際には、セル10の空気流路15の空気入口部15a側のインピーダンスに基づいて燃料電池の湿潤状態を診断する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の状態を診断する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガス(水素)と酸化剤ガス(酸素)とを電気化学反応させて電気エネルギを出力するセルが複数積層された固体高分子電解質型の燃料電池を備える燃料電池システムでは、燃料電池の内部の水分が不足すると、セル内部の電解質膜が乾燥して電池の出力が低下することが知られている。
【0003】
このため、例えば、特許文献1では、セルに形成された酸化剤ガス流路(空気流路)における酸化剤ガスの入口側の電解質膜が乾燥し易いことに着眼し、酸化剤ガス流路の入口側における電流値の変化に基づいて燃料電池の湿潤状態を診断するようにしている。なお、電解質膜の乾燥により、燃料電池のインピーダンスが増加することから、燃料電池の酸化剤ガス流路の入口側におけるインピーダンスの変化に基づいて、燃料電池の湿潤状態を診断することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−100952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料電池として、セルにおける酸化剤ガス流路の入口側と燃料ガス流路(水素流路)の出口側とが対向すると共に、酸化剤ガス流路の出口側と燃料ガス流路の入口側とが対向する構造とし、セル内部を流れる酸化剤ガスの流れと燃料ガスの流れとを対向流とするものがある。
【0006】
このような構成の燃料電池では、酸化剤ガス流路の出口側に存在する水が、対向する燃料ガス流路の入口側へ逆拡散によって移動する一方、燃料ガス流路の出口側に存在する水が、対向する酸化剤ガス流路の入口側へプロトンに随伴して移動する。従って、セル内部を流れる空気の流れと水素の流れとを対向流とする燃料電池は、セルの内部における燃料ガス流路側(アノード側)と酸化剤ガス流路側(カソード側)との間を水が循環する構成となる。
【0007】
しかし、燃料電池が高温高負荷状態となると、酸化剤ガス流路の出口側に存在する水の燃料ガス流路の入口側への移動量等が減少し、セルの内部における燃料ガス流路側と酸化剤ガス流路側との間の水循環が破綻することがある。この場合、酸化剤ガス流路の入口側では、他の部位に比べて常に水分が不足気味であることから、電解質膜の乾燥によるインピーダンスの増加と共に、直ちに燃料電池の出力が低下してしまう。つまり、燃料電池が高温高負荷状態となっている際には、酸化剤ガス流路の入口側におけるインピーダンス等の変化に基づいて燃料電池の湿潤状態を診断したとしても、燃料電池の出力低下を回避することができないといった問題がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、酸化剤ガスの流れと燃料ガスの流れとが対向流となる燃料電池の状態を診断する燃料電池システムにおいて、高温高負荷状態となる際に、燃料電池の出力低下が生ずる前に、燃料電池の湿潤状態を診断可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討したところ、セル(10)の内部における燃料ガス流路(14)側と酸化剤ガス流路(15)側との間の水循環が破綻した際に、燃料ガス流路(14)の燃料ガス入口部(14a)側では、酸化剤ガス流路(15)の酸化剤ガス出口部(15b)側から燃料ガス入口部(14a)側への拡散水の移動量が減少することから、酸化剤ガス流路(15)の酸化剤ガス入口部(15a)側よりも前にインピーダンスが増加することがわかった。さらに、燃料ガス流路(14)の燃料ガス入口部(14a)側は、酸化剤ガス入口部(15a)側に比べて比較的水分が存在することから、インピーダンスの増加により、直ちに燃料電池(1)の出力が低下し難いこともわかった。
【0010】
本発明は、上述の知見により案出されたもので、請求項1に記載の発明では、酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを出力するセル(10)が複数積層された固体高分子電解質型の燃料電池(1)と、燃料電池(1)に対して所定の周波数の交流信号を印加する交流印加手段(6)と、セル(10)における局所部位のインピーダンスを測定するインピーダンス測定手段(50a)と、インピーダンス測定手段(50a)の測定値に応じて、少なくとも燃料電池(1)の湿潤状態を診断する状態診断手段(50b)と、を備え、複数のセル(10)それぞれは、その内部に酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路(15)、および燃料ガスが流れる燃料ガス流路(14)が形成され、酸化剤ガス流路(15)および燃料ガス流路(14)は、内部を流れる酸化剤ガスおよび燃料ガスの流れが対向流となるように構成され、インピーダンス測定手段(50a)は、セル(10)における燃料ガス流路(14)の燃料ガス出口部(14b)よりも燃料ガス入口部(14a)に近い燃料ガス上流部位のインピーダンスを測定可能に構成され、状態診断手段(50b)は、燃料電池(1)の温度が基準温度より高く、且つ、燃料電池(1)に要求される要求出力が基準出力値よりも大きい高温高負荷状態となっている際には、燃料ガス上流部位のインピーダンスに基づいて燃料電池(1)の湿潤状態を診断することを特徴とする。
【0011】
これによれば、燃料電池(1)が高温高負荷状態となっている際には、燃料ガス上流部位のインピーダンスに基づいて燃料電池(1)の湿潤状態を診断する構成としているので、燃料電池(1)の出力が低下する前に燃料電池(1)の湿潤状態を診断することが可能となる。この結果、燃料電池(1)の出力低下を回避することが可能となる。
【0012】
具体的には、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、インピーダンス測定手段(50a)を、セル(10)における酸化剤ガス流路(15)の酸化剤ガス出口部(15b)よりも酸化剤ガス入口部(15a)に近い酸化剤ガス上流部位のインピーダンスを測定可能とし、状態診断手段(50b)にて、燃料電池(1)の温度が基準温度以下の低温状態、又は、燃料電池(1)に要求される要求出力が基準出力値以下の低負荷状態となっている際に、酸化剤ガス上流部位のインピーダンスに基づいて燃料電池(1)の湿潤状態を診断する構成としてもよい。
【0013】
ところで、固体高分子型の燃料電池(1)のセル(10)は、周知の如く、電解質膜(11)、電解質膜(11)の外側両面に配置される一対の電極(12、13)を含んで構成されている。そして、燃料電池(1)に対して高周波数の交流信号を印加した際のインピーダンス測定手段(50a)の測定値は、セル(10)の電解質膜(11)の抵抗に対応し、燃料電池(1)に対して低周波数の交流信号を印加した際のインピーダンス測定手段(50a)の測定値は、セル(10)の電解質膜(11)の抵抗、および一対の電極(12、13)の抵抗との合算値に対応する。
【0014】
そこで、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の燃料電池システムにおいて、セル(10)は、電解質膜(11)の外側両面を一対の電極(12、13)で挟んで構成される膜電極接合体を有して構成され、状態診断手段(50b)は、交流印加手段(6)にて予め設定された基準周波数より高い高周波数の交流信号を燃料電池(1)に対して印加した際のインピーダンス測定手段(50a)の測定値を用いて、燃料電池(1)の湿潤状態を診断することを特徴とする。
【0015】
これによれば、セル(10)における電解質膜(11)の抵抗に対応するインピーダンスを測定することができるので、燃料電池(1)の湿潤状態を的確に診断することが可能となる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明のように、請求項1または2に記載の燃料電池システムにおいて、セル(10)を、電解質膜(11)の外側両面を一対の電極(12、13)で挟んで構成される膜電極接合体を有する構成とし、交流印加手段(6)にて予め設定された基準周波数以下となる低周波数の交流信号を燃料電池(1)に対して印加した際のインピーダンス測定手段(50a)の測定値を用いて、状態診断手段(50b)で燃料電池(1)の湿潤状態を診断するようにしてもよい。
【0017】
ここで、セル(10)内部において電解質膜(11)の外側に配置された各電極(12、13)は、酸化剤ガスや燃料ガスといった反応ガスのガス流路(14、15)の近くに配置されることから、電解質膜(11)よりも乾燥の進行が速い傾向がある。
【0018】
このため、請求項5に記載の発明では、請求項1または2に記載の燃料電池システムにおいて、セル(10)は、電解質膜(11)の外側両面を一対の電極(12、13)で挟んで構成される膜電極接合体を有して構成され、状態診断手段(50a)は、交流印加手段(6)にて予め設定された基準周波数より高い高周波数の交流信号を燃料電池(1)に対して印加した際のインピーダンス測定手段(50a)の測定値であるインピーダンスの位相、および交流電流印加手段(6)にて基準周波数以下となる低周波数の交流電流を燃料電池(1)に対して印加した際のインピーダンス測定手段(50a)の測定値であるインピーダンスの位相の位相差を用いて、燃料電池(1)の湿潤状態を診断することを特徴とする。
【0019】
これによれば、セル(10)における各電極(12、13)の抵抗に対応するインピーダンスの位相差に基づいて燃料電池(1)の湿潤状態を診断することができるので、燃料電池(1)の出力が低下する前に燃料電池(1)の湿潤状態を的確に診断することが可能となる。なお、燃料電池(1)に対して高周波数の交流信号を印加した際のインピーダンスと、低周波数の交流信号を印加した際のインピーダンスとの差は、セル(10)の電解質膜(11)の抵抗と、セル(10)の電解質膜(11)の抵抗に各電極(12、13)の抵抗を加えた抵抗との差に対応することから、各インピーダンスの位相差についても、各電極(12、13)の抵抗に対応することとなる。
【0020】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係る燃料電池システムの全体構成図である。
【図2】実施形態に係るセルの概略構成図である。
【図3】実施形態に係るセル内部における水循環を説明するための説明図である。
【図4】高温高負荷状態における空気流路の空気入口部側のセル電圧と局所部位における電流密度との関係を説明する説明図である。
【図5】高温高負荷状態における水素流路の水素入口部側におけるインピーダンスとセル電圧との関係を説明する説明図である。
【図6】実施形態に係る制御装置が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態について図1〜図6に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る燃料電池システムを、燃料電池1を走行用駆動源として走行する電気自動車(燃料電池自動車)に適用している。
【0023】
本実施形態の燃料電池システムは、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する燃料電池1を備えている。燃料電池1は、二次電池、走行用モータ、補機等の各種電気負荷2に電力を供給するものである。なお、燃料電池1と二次電池とは、後述するDC−DCコンバータ6を介して電気的に接続されている。
【0024】
本実施形態の燃料電池1は、固体高分子電解質型の燃料電池(PEFC)を採用しており、基本単位となる電池セル10(以下、単にセル10と称する。)が複数積層され、各セル10が電気的に直列に接続されている。
【0025】
ここで、図2に示すように、各セル10は、プロトン伝導性のイオン交換膜(固体高分子)からなる電解質膜11および電解質膜11の外側両面を狭持する一対の電極12、13で構成される膜電極接合体と、これを両側から挟み込む一対のセパレータとを有している。
【0026】
一対の電極12、13のうち、一方の電極は、燃料ガスとしての水素が供給される水素極12(アノード)として構成され、他方の電極は、酸化剤ガスとしての空気が供給される空気極13(カソード)として構成されている。なお、各電極12、13は、触媒層およびガス拡散層にて構成されている。
【0027】
また、一対のセパレータそれぞれは、水素極12と対向する面に水素極12に水素を供給するための水素流路14が形成され、空気極13と対向する面に空気極13に空気を供給するための空気流路15が形成されている。なお、本実施形態の水素流路14が本発明の燃料ガス流路に相当し、空気流路15が本発明の酸化剤ガス流路に相当している。
【0028】
本実施形態では、水素流路14および空気流路15は、水素流路14の水素入口部(燃料ガス入口部)14aが、膜電極接合体を介して空気流路15の空気出口部(酸化剤ガス出口部)15bに対向し、水素流路14の水素出口部(燃料ガス出口部)14bが、膜電極接合体を介して空気流路15の空気入口部(酸化剤ガス入口部)15aに対向するように構成されている。つまり、水素流路14および空気流路15は、水素流路14を流れる水素の流れと空気流路15を流れる空気の流れとが対向流となるように構成されている。
【0029】
なお、本実施形態では、水素流路14における水素出口部14bよりも水素入口部14aに近い部位(水素流れ上流側の部位)が燃料ガス上流部位を構成し、水素入口部14aよりも水素出口部14bに近い部位(空気流れ下流側の部位)が燃料ガス下流部位を構成する。また、空気流路15における空気出口部15bよりも空気入口部15aに近い部位(空気流れ上流側の部位)が酸化剤ガス上流部位を構成し、空気入口部15aよりも空気出口部15bに近い部位(空気流れ下流側の部位)が酸化剤ガス下流部位を構成する。
【0030】
燃料電池1に水素および空気といった反応ガスが供給されると、各セル10では、以下に示すように、水素と酸素とを電気化学反応して、電気エネルギを出力する。
【0031】
(水素極側) H→2H+2e
(空気極側) 2H+1/2O+2e→H
この際、水素極12では、内部に供給された水素が触媒層における触媒反応によって、電子(e)とプロトン(H)とに電離され、プロトン(H)は、水(随伴水)を随伴して空気極13側に移動する。
【0032】
一方、空気極13では、水素極12側から移動してきたプロトン(H)、外部から流通してきた電子、および空気中の酸素(O)が反応して、水(生成水)が生成される。空気極13側で生成された生成水は、空気流れ上流側から下流側へと流れる際に、空気極13側から水素極12側へと拡散する。つまり、水素極(アノード)12および空気極(カソード)13の間を水が循環する(図2の電解質膜11付近に示す矢印参照)。
【0033】
図1に戻り、燃料電池1から出力される電気エネルギは、燃料電池1全体として出力される電圧を検出する電圧センサ4、および、燃料電池1全体として出力される電流を検出する電流センサ3によって計測される。なお、電圧センサ4および電流センサ3の検出信号は、後述する制御装置50に入力される。
【0034】
また、本実施形態の燃料電池1は、図1中の斜線で示すように、所定位置で隣接するセル10間に局所電流測定装置5が配置されている。局所電流測定装置5は、隣接するセル10間の局所電流値(電流密度)を検出可能に構成されている。本実施形態では、局所電流測定装置5にて、空気流路15の空気入口部15a、および水素流路14の水素入口部14aそれぞれにおける電流(電流密度)を検出するようにしている。
【0035】
本実施形態の局所電流測定装置5としては、例えば、板状部材におけるセル10の測定対象部位に対応する局所部位に溝部を形成し、当該溝部に電流センサを配置して構成することができる。なお、電流センサは、シャント抵抗、ホールIC等を利用した周知のセンサを用いることができる。なお、局所電流測定装置5の検出信号は、後述する制御装置50に入力される。
【0036】
DC−DCコンバータ6は、電気負荷2および燃料電池1の双方向に電力を伝達可能なものであり、本実施形態では、セル10の出力信号に任意の周波数で、正弦波等の交流信号(交流電流)を印加する交流印加手段を構成している。なお、本実施形態のDC−DCコンバータ6は、異なる複数の周波数を合成した交流信号を燃料電池1の出力信号に印加可能に構成されている。
【0037】
燃料電池システムには、燃料電池1の水素極12側に供給される水素ガスが通過する水素供給配管20、および燃料電池1の水素極12側から排出される排ガスが通過する水素排出配管21が設けられている。
【0038】
水素供給配管20の最上流部には、燃料電池1の水素極12に水素ガスを供給するための水素供給装置22が設けられている。本実施形態では、水素供給装置22として、高圧の水素が充填された水素タンクを用いている。
【0039】
水素供給配管20には、水素供給装置22の下流側に水素調圧弁23が設けられている。燃料電池1に水素を供給する際には、水素調圧弁23によって所望の水素圧力にして燃料電池1に供給する。なお、本実施形態では、水素調圧弁23が燃料ガス側圧力調整手段を構成している。
【0040】
水素排出配管21には、シャット弁24が設けられている。必要に応じてシャット弁24を開くことで、燃料電池1の水素極側から水素排出配管21を介して、微量の水素、蒸気(あるいは水)および空気極13側から電解質膜11を通過して水素極12側に混入した窒素、酸素などの不純物が排出される。
【0041】
本実施形態の水素排出配管21には、シャット弁24の上流側に、水素排出配管21を通過する未反応水素(未反応燃料ガス)や水分等を燃料電池1に再循環させるための水素循環配管25が接続されている。具体的には、水素循環配管25は、水素排出配管21のシャット弁24の上流側と、水素供給配管20の水素調圧弁23の下流側との間に接続されている。
【0042】
水素循環配管25には、水素排出配管21中の未反応水素等を水素供給配管20に戻すための循環ポンプ26が設けられている。この循環ポンプ26は、駆動用の電動モータ26aに接続されている。なお、循環ポンプ26に代えて、流量可変式のエジェクタを利用して、水素排出配管21中の未反応水素等を水素供給配管20に戻す構成としてもよい。
【0043】
また、燃料電池システムには、燃料電池1の空気極13に供給される空気が通過する空気供給配管30、および燃料電池1の空気極13から排出される排ガスが通過する空気排出配管31が設けられている。
【0044】
空気供給配管30には、空気流れ上流側に燃料電池1に供給する空気の流量を検出するためのエアフロセンサ32が設けられている。このエアフロセンサ32の検出信号は、後述する制御装置50に入力される。
【0045】
また、空気供給配管30には、エアフロセンサ32の空気流れ下流側に空気を圧縮して吐出するための空気供給装置33が設けられている。本実施形態では、空気供給装置33として圧送ポンプを用いている。空気供給装置33は駆動用の電動モータ33aに接続されている。
【0046】
また、空気排出配管31には、所望の圧力になるよう空気流路15内の空気の圧力を調整する背圧調整弁34が設けられている。なお、本実施形態の背圧調整弁34は、酸化剤ガス側圧力調整手段を構成している。
【0047】
本実施形態の燃料電池システムには、空気供給配管30および空気排出配管31に燃料電池1に供給する空気を加湿する専用の加湿手段を設けられておらず、無加湿の空気を燃料電池1に供給して無加湿運転を行うように構成されている。
【0048】
ところで、燃料電池1は発電に伴い熱を生じる。燃料電池1の発電に伴い発生する熱を冷却するため、燃料電池システムには、燃料電池1を冷却して作動温度が電気化学反応に適した温度(例えば80℃程度)となるようにする冷却システムが設けられている。
【0049】
冷却システムには、燃料電池1に冷却水(熱媒体)を循環させる冷却水配管40、冷却水を循環させるウォータポンプ41、ウォータポンプ41を駆動する電動モータ41a、ファン(図示略)を備えたラジエータ42が設けられている。燃料電池1で発生した熱は、冷却水を介してラジエータ42で系外に排出される。なお、冷却水配管40における燃料電池1の出口側付近には、冷却水の温度を検出する温度センサ(図示略)が設けられており、この温度センサの検出信号は、後述する制御装置50に入力される。
【0050】
また、本実施形態の燃料電池システムには、各種制御を行う制御手段としての制御装置(ECU)50が設けられている。制御装置50は、各種入力信号に基づいて、燃料電池システムを構成する各種制御機器の作動を制御するもので、CPU、ROM、RAM、I/O等を備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROM等の記憶部に記憶された制御プログラムに従って各種演算等の処理を実行する。
【0051】
具体的には、制御装置50の入力側には、各種電気負荷2からの要求電力信号、二次電池(図示略)、二次電池からの充電量に関する検出信号、電流センサ3、電圧センサ4、局所電流測定装置5、エアフロセンサ32、および温度センサからの検出信号が入力される。
【0052】
一方、制御装置50の出力側には、水素調圧弁23、シャット弁24、循環ポンプ26の電動モータ26a、空気供給装置33の電動モータ33a、背圧調整弁34、ウォータポンプ41の電動モータ41a等が接続され、各種制御機器に制御信号を出力する。なお、制御装置50は、基本的に、電気負荷2からの要求電力信号に応じて、燃料電池1に供給する各反応ガス(水素および空気)の供給量を制御している。
【0053】
また、本実施形態の制御装置50は、電圧センサ4の検出信号、局所電流測定装置5の検出信号に基づいて、セル10の局所部位におけるインピーダンスを測定可能に構成されている。具体的には、本実施形態の制御装置50では、DC−DCコンバータ6にて任意の周波数の交流信号(交流電流)が印加された際の局所電流測定装置5および電圧センサ4から出力される各検出信号を、高速フーリエ変換処理等を行うことで、セル10の局所部位におけるインピーダンスを測定する。
【0054】
さらに、制御装置50では、セル10における局所部位のインピーダンスに基づいて、燃料電池1の状態を診断すると共に、その診断結果に応じて、燃料電池1の状態を正常に復帰させるために、各種構成機器を制御する復帰処理を行うように構成されている。
【0055】
なお、本実施形態の制御装置50は、各種制御機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、本実施形態では、特に、セル10における局所部位のインピーダンスを測定する構成がインピーダンス測定手段50aを構成し、燃料電池1の状態を診断する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が状態診断手段50aを構成している。
【0056】
以下、本実施形態の制御装置50が行う燃料電池1の湿潤状態の診断処理について説明する。なお、燃料電池1の湿潤状態の診断処理を説明する前に、セル10の内部を流れる空気の流れと水素の流れとを対向流とする燃料電池1の特徴について図3を用いて説明する。図3は、実施形態に係るセル内部における水循環を説明するための説明図である。なお、図3の(a)が燃料電池1の温度が低温状態、又は燃料電池1に対する各種電気負荷2からの要求出力(要求出力)が小さい低負荷状態となる際の水の流れを示し、(b)が燃料電池1の温度が高温状態で、且つ、燃料電池1に対する各種電気負荷2からの要求出力が高負荷状態となる際の水の流れを示している。
【0057】
本実施形態のように、セル10の内部を流れる空気の流れと水素の流れとを対向流とする燃料電池1では、燃料電池1が低温状態又は低負荷状態となる際には、図3(a)に示すように、空気流路15の空気出口部15b側に存在する水が、対向する水素流路14の水素入口部14a側へ逆拡散によって移動する。その一方、水素流路14の水素出口部14b側に存在する水が、対向する空気流路15の空気入口部15a側へプロトン(H)に随伴して移動する。
【0058】
従って、燃料電池1が低温状態又は低負荷状態となる際には、セル10の内部における水素極12(水素流路14)側と空気極13(空気流路15)側との間の水循環が成立する。このため、燃料電池1が低温状態又は低負荷状態となる際には、他の部位に比べて常に水分が不足気味となる空気流路15の空気入口部15a側におけるインピーダンスの変化に基づいて、燃料電池1の湿潤状態を的確に診断することが可能となる。
【0059】
しかし、燃料電池1が高温高負荷状態となると、空気流路15の空気出口部15b側に存在する水が、空気排出配管31を介して排出されたり、蒸発したりするため、図3(b)に示すように、水素流路14の水素入口部14a側へ移動する拡散水が減少することがある。この場合、水素流路14の水素入口部14a側の水分量が低下することから、水素流路14の水素出口部14b側から空気流路15の空気入口部15a側へプロトン(H)に随伴して移動する随伴水も減少する。
【0060】
この結果、燃料電池1が高温高負荷状態となる際には、セル10の内部における水素極12(水素流路14)側と空気極13(空気流路15)側(カソード側)との間の水循環が破綻することがある。
【0061】
ここで、燃料電池1が高温高負荷状態となっている際に、セル10内部における水素極12側と空気極13側との間の水循環が破綻した際のセル電圧等の変化について図4、図5を用いて説明する。
【0062】
図4は、高温高負荷状態における空気流路15の空気入口部15a側のセル電圧と局所部位における電流密度との関係を説明する説明図であり、図5は、高温高負荷状態における水素流路14の水素入口部14a側におけるインピーダンスとセル電圧との関係を説明する説明図である。なお、図4(b)における「A」〜「H」は、空気流路15の空気入口部15aにおける空気流れ上流側から下流側にかけての電流密度を示しており、「A」〜「H」のうち、「A」が最も空気流れ上流側の電流密度を示している。
【0063】
燃料電池1が高温高負荷状態となっている際に、セル10内部における水素極12側と空気極13側との間の水循環が破綻すると、図4に示すように、空気流路15の空気入口部15a側では、セル電圧の低下(電圧降下)と同時に、空気流路15の空気入口部15a側の電流密度が大きく変化する。この際、空気流路15の空気入口部15a側は、他の部位に比べて常に水分が不足気味であることから、電解質膜11の乾燥によるインピーダンスの増加と共に、直ちに燃料電池1の出力が低下してしまう。つまり、燃料電池1が高温高負荷状態となっている際には、空気流路15の空気入口部15a側におけるインピーダンス等の変化に基づいて燃料電池1の湿潤状態を診断したとしても、燃料電池1の出力低下を回避することができないといった問題がある。
【0064】
一方、燃料電池1が高温高負荷状態となっている際に、セル10内部における水素極12側と空気極13側との間の水循環が破綻すると、図5に示すように、水素流路14の水素入口部14a側では、空気流路15の空気出口部15b側からの拡散水の移動量が減少することから、空気流路15の空気入口部15a側よりも前にインピーダンスが増加する傾向がある。
【0065】
この際、水素流路14の水素入口部14a側は、空気流路15の空気入口部15a側に比べて、比較的水分が存在することから、インピーダンスが増加した後に、セル電圧が低下する。つまり、水素流路14の水素入口部14a側では、インピーダンスが増加したとしても、直ちに燃料電池1の出力が低下し難い傾向がある。なお、水素流路14の水素入口部14a側は、セル10内部における水素極12側と空気極13側との間の水循環が破綻した際のインピーダンスの変化が大きい。
【0066】
従って、燃料電池1が高温高負荷状態となる際には、空気流路15の空気入口部15a側(酸化剤ガス上流部位)よりも、水素流路14の水素入口部14a側(燃料ガス上流部位)におけるインピーダンスの変化に基づいて、燃料電池1の湿潤状態を的確に診断することが可能となる。
【0067】
次に、燃料電池1の湿潤状態の診断する際に制御装置50が行う一連の制御処理について図6を用いて説明する。図6は、本実施形態に係る制御装置50が実行する制御処理を示すフローチャートである。なお、図6に示す制御ルーチンは、予め定められた制御周期で実行される。
【0068】
まず、燃料電池1が発電中であるか否かを判定する(S10)。この判定処理は、例えば、電圧センサ4や電流センサ3の検出信号に基づいて判定することができる。
【0069】
ステップS10の判定処理の結果、燃料電池1が発電中でないと判定された場合(S10:NO)には、制御処理を終了する。一方、燃料電池1が発電中であると判定された場合(S10:YES)には、セル10における水素流路14の水素入口部14a、および空気流路15の空気入口部15aそれぞれのインピーダンスを測定する(S20)。
【0070】
具体的には、本実施形態では、DC−DCコンバータ6にて予め設定された基準周波数(例えば、100Hz)より高い高周波数(例えば、400Hz)の交流信号を燃料電池1に対して印加した際の水素流路14の水素入口部14a、および空気流路15の空気入口部15aのインピーダンスを測定する。なお、測定されたインピーダンスは、水素流路14の水素入口部14a、および空気流路15の空気入口部15aに存する電解質膜11の膜抵抗に対応する。
【0071】
続いて、燃料電池1が高温高負荷状態であるか否かを判定する(S30)。この判定処理は、例えば、冷却水の温度を検出する温度センサの検出信号、および各種電気負荷2からの要求出力に基づいて判定することができる。具体的には、温度センサの検出値が予め定められた基準温度(例えば、80℃)より高く、且つ、各種電気負荷2からの要求出力に対応する局所電流測定装置5の検出信号(電流密度)が予め定められた基準出力値(例えば、0.8A)よりも高い場合に、高温高負荷状態と判定するようにすればよい。
【0072】
ステップS30の判定処理の結果、燃料電池1が高温高負荷状態であると判定された場合(S30:YES)には、ステップS20で測定した水素入口部14a側のインピーダンスが基準値以上であるか否かを判定する(S40)。なお、基準値としては、燃料電池1が高温高負荷状態でないときの水素入口部14a側の平均的なインピーダンスを設定すればよい。
【0073】
ステップS40の判定処理の結果、水素入口部14a側のインピーダンスが基準値未満であると判定された場合(S40:NO)には、水素入口部14a側の水分が減少しておらず、燃料電池1の内部の水分が足りていると判断できるので、制御処理を終了する。
【0074】
一方、水素入口部14a側のインピーダンスが基準値以上であると判定された場合(S40:YES)には、水素入口部14a側の水分が減少しつつあり、燃料電池1の内部の水分が不足気味と判断できるので、燃料電池1の状態を正常に復帰させるための復帰処理として、湿潤制御処理を行い(S50)、制御処理を終了する。
【0075】
本実施形態の湿潤制御処理では、空気流路15内の空気の圧力が増加するように背圧調整弁34を制御する(空気側背圧制御)。これにより、空気流路15内の空気の流速が低下して、空気流路15から空気排出配管31への水分の排出が抑制されるので、セル10の内部における水素極12側と空気極13側との間の水循環の破綻を抑制することができる。
【0076】
なお、湿潤制御処理としては、水素流路14側から空気流路15側への随伴水の移動を促進させるために、水素流路14への水素の供給量(循環量)が増加するように循環ポンプ26の電動モータ26aを制御するようにしてもよい(水素循環量制御)。逆に、空気流路15側から水素流路14側への拡散水の移動を促進させるために、水素流路14内の圧力と空気流路15内の圧力との差圧(水素流路14内の圧力<空気流路15内の圧力)が増加するように水素調圧弁23および背圧調整弁34を制御するようにしてもよい(流路内差圧制御)。
【0077】
また、ステップS30の判定処理の結果、燃料電池1が高温高負荷状態でない(低温状態又は低負荷状態)、すなわち、温度センサの検出値が予め定められた基準温度以下、又は、各種電気負荷2からの要求出力が予め定められた基準出力値以下と判定された場合(S30:NO)には、ステップS20で測定した空気入口部15a側のインピーダンスが基準値以上であるか否かを判定する(S60)。なお、基準値としては、空気入口部15a側の平均的なインピーダンスを設定すればよい。
【0078】
ステップS60の判定処理の結果、空気入口部15a側のインピーダンスが基準値未満であると判定された場合(S60:NO)には、空気入口部15a側の水分が減少しておらず、燃料電池1の内部の水分が足りていると判断できるので、制御処理を終了する。
【0079】
一方、空気入口部15a側のインピーダンスが基準値以上であると判定された場合(S60:YES)には、空気入口部15a側の水分が減少しつつあり、燃料電池1の内部の水分が不足気味と判断できるので、ステップS50に進み、燃料電池1の状態を正常に復帰させるための復帰処理を行い、制御処理を終了する。
【0080】
以上説明した本実施形態によれば、燃料電池1が高温高負荷状態となっている際には、水素流路14の水素入口部14a側のインピーダンスに基づいて燃料電池1の湿潤状態を診断する構成としているので、燃料電池1の出力が低下する前に燃料電池1の湿潤状態を診断することが可能となる。この結果、燃料電池1の出力低下を回避することが可能となる。
【0081】
また、本実施形態では、DC−DCコンバータ6にて高周波数の交流信号を燃料電池1に対して印加した際に測定したインピーダンス(測定値)を用いて、燃料電池1の湿潤状態を診断する構成としている。これによれば、セル10における電解質膜11の抵抗に対応するインピーダンスを測定することができるので、燃料電池1の湿潤状態を的確に診断することが可能となる。
【0082】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0083】
(1)上述の実施形態では、DC−DCコンバータ6にて高周波数の交流信号を燃料電池1に対して印加した際に測定したインピーダンス(測定値)を用いて、燃料電池1の湿潤状態を診断する例について説明したが、これに限定されない。
【0084】
例えば、DC−DCコンバータ6にて予め設定された基準周波数以下となる低周波数(例えば、50Hz)の交流信号を燃料電池1に対して印加した際の水素流路14の水素入口部14a、および空気流路15の空気入口部15aのインピーダンスを測定し、当該インピーダンスを用いて、燃料電池1の湿潤状態を診断するようにしてもよい。この場合、水素流路14の水素入口部14a、および空気流路15の空気入口部15aのインピーダンスが予め定めた基準値以上となっている際に、燃料電池1の内部の水分が不足気味と診断し、インピーダンスが基準値未満となっている際に、燃料電池1の内部の水分が足りていると診断すればよい。
【0085】
また、DC−DCコンバータ6にて予め設定された高周波数(例えば、400Hz)および低周波数(例えば、50Hz)を合成した交流信号を燃料電池1に対して印加した際の水素流路14の水素入口部14a、および空気流路15の空気入口部15aのインピーダンスを測定し、高周波数に対応するインピーダンスの位相と低周波数に対応するインピーダンスの位相との差(位相差)を用いて、燃料電池1の湿潤状態を診断するようにしてもよい。
【0086】
この場合、水素流路14の水素入口部14a、および空気流路15の空気入口部15aにおける各周波数のインピーダンスの位相差が予め定めた基準値以上となっている際に、燃料電池1の内部の水分が不足気味と診断し、インピーダンスの位相差が基準値未満となっている際に、燃料電池1の内部の水分が足りていると診断すればよい。
【0087】
これによれば、セル10における各電極12、13の抵抗に対応するインピーダンスの位相差に基づいて燃料電池1の湿潤状態を診断することができるので、燃料電池1の出力が低下する前に燃料電池1の湿潤状態を的確に診断することが可能となる。
【0088】
(2)上述の実施形態では、復帰制御として湿潤制御処理を行う例を説明したが、これに限定されない。例えば、湿潤状態の診断処理によって燃料電池1の内部の水分が不足気味と診断された場合に、その旨をユーザに報知するようにしてもよい。
【0089】
(3)上述の実施形態では、DC−DCコンバータ6を交流印加手段として機能させる例について説明したが、これに限定されず、例えば、燃料電池1に対して所定の周波数の交流信号を印加する装置を設けるようにしてもよい。
【0090】
(4)上述の実施形態で説明したように、低温状態または低負荷状態となっている際には、空気流路15の空気入口部15a側のインピーダンスに基づいて燃料電池1の湿潤状態を診断することが望ましいが、これに限らず、例えば、低温状態または低負荷状態となっている際にも、水素流路14の水素入口部14a側のインピーダンスに基づいて燃料電池1の湿潤状態を診断するようにしてもよい。
【0091】
(5)上述の実施形態では、局所電流測定装置5を隣接するセル10の間に配置する例について説明したが、これに限らず、例えば、局所電流測定装置5を、複数のセル10のうち、積層方向一端側に配置されたセル10に隣接配置するようにしてもよい。
【0092】
(6)上述の実施形態では、本発明の燃料電池システムを燃料電池1を搭載する車両に適用する例について説明したが、これに限らず、例えば、車両以外の移動体(ロボット、船舶、航空機等)に適用したり、建物(住宅、ビル等)の発電設備として用いられる定置用発電装置に適用したりしてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 燃料電池
10 セル
11 電解質膜
12 水素極(一対の電極)
13 空気極(一対の電極)
14 水素流路(燃料ガス流路)
14a 水素入口部(燃料ガス入口部)
14b 水素出口部(燃料ガス出口部)
15 空気流路(酸化剤ガス流路)
15a 空気入口部(酸化剤ガス入口部)
15b 空気出口部(酸化剤ガス出口部)
50a インピーダンス測定手段
50b 状態診断手段
6 DC−DCコンバータ(交流印加手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを出力するセル(10)が複数積層された固体高分子電解質型の燃料電池(1)と、
前記燃料電池(1)に対して所定の周波数の交流信号を印加する交流印加手段(6)と、
前記セル(10)における局所部位のインピーダンスを測定するインピーダンス測定手段(50a)と、
前記インピーダンス測定手段(50a)の測定値に応じて、少なくとも前記燃料電池(1)の湿潤状態を診断する状態診断手段(50b)と、を備え、
前記複数のセル(10)それぞれは、その内部に前記酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路(15)、および前記燃料ガスが流れる燃料ガス流路(14)が形成され、
前記酸化剤ガス流路(15)および前記燃料ガス流路(14)は、内部を流れる前記酸化剤ガスおよび前記燃料ガスの流れが対向流となるように構成され、
前記インピーダンス測定手段(50a)は、前記セル(10)における前記燃料ガス流路(14)の燃料ガス出口部(14b)よりも燃料ガス入口部(14a)に近い燃料ガス上流部位のインピーダンスを測定可能に構成され、
前記状態診断手段(50b)は、前記燃料電池(1)の温度が基準温度より高く、且つ、前記燃料電池(1)に要求される要求出力が基準出力値よりも大きい高温高負荷状態となっている際には、前記燃料ガス上流部位のインピーダンスに基づいて前記燃料電池(1)の湿潤状態を診断することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記インピーダンス測定手段(50a)は、前記セル(10)における前記酸化剤ガス流路(15)の酸化剤ガス出口部(15b)よりも酸化剤ガス入口部(15a)に近い酸化剤ガス上流部位のインピーダンスを測定可能に構成され、
前記状態診断手段(50b)は、前記燃料電池(1)の温度が前記基準温度以下の低温状態、又は、前記燃料電池(1)に要求される要求出力が基準出力値以下の低負荷状態となっている際には、前記酸化剤ガス上流部位のインピーダンスに基づいて前記燃料電池(1)の湿潤状態を診断することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記セル(10)は、電解質膜(11)の外側両面を一対の電極(12、13)で挟んで構成される膜電極接合体を有して構成され、
前記状態診断手段(50b)は、前記交流印加手段(6)にて予め設定された基準周波数より高い高周波数の交流信号を前記燃料電池(1)に対して印加した際の前記インピーダンス測定手段(50a)の測定値を用いて、前記燃料電池(1)の湿潤状態を診断することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記セル(10)は、電解質膜(11)の外側両面を一対の電極(12、13)で挟んで構成される膜電極接合体を有して構成され、
前記状態診断手段(50b)は、前記交流印加手段(6)にて予め設定された基準周波数以下となる低周波数の交流信号を前記燃料電池(1)に対して印加した際の前記インピーダンス測定手段(50a)の測定値を用いて、前記燃料電池(1)の湿潤状態を診断することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記セル(10)は、電解質膜(11)の外側両面を一対の電極(12、13)で挟んで構成される膜電極接合体を有して構成され、
前記状態診断手段(50a)は、前記交流印加手段(6)にて予め設定された基準周波数より高い高周波数の交流信号を前記燃料電池(1)に対して印加した際の前記インピーダンス測定手段(50a)の測定値であるインピーダンスの位相、および前記交流印加手段(6)にて前記基準周波数以下となる低周波数の交流信号を前記燃料電池(1)に対して印加した際の前記インピーダンス測定手段(50a)の測定値であるインピーダンスの位相の位相差を用いて、前記燃料電池(1)の湿潤状態を診断することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−109949(P2013−109949A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253988(P2011−253988)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】