説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池システムにおいて、外乱やユーザ負荷に関係なく通常の発電運転中においても的確に異常判定が可能となる。
【解決手段】燃料電池システムの制御装置は、制御装置からの各供給装置に対する制御指示値と当該供給装置が供給する流体の流量または当該供給装置の電動モータの回転数との相関関係を示すマップまたは演算式を、実際の発電運転または起動運転中の所定期間内において取得した制御指示値および流体の流量または電動モータの回転数のデータに基づいてそれぞれ導出する流量−指示値特性導出手段(ステップ204〜208)と、予め記憶されている流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性と、流量−指示値特性導出手段により導出された流量−指示値導出特性と、を比較し、その比較結果に基づいて当該供給装置を含む当該供給系が異常であるか否かをそれぞれ判定する供給系異常判定手段(ステップ210〜222)と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムの一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特
許文献1の図1に示されているように、燃料電池システムにおいては、定期的な運転時に、寿命演算手段2は燃焼ファン制御手段6により、燃焼ファン9を一定回転数に回転させ、その時の燃焼空気流量を流量検出手段7で検出し、第1の記憶手段3に時系列に記憶し、それを第1の時系列データとするようになっている。また、燃焼ファン9を一定量に操作した場合の燃焼ファン回転数を回転数検出手段5により検出し、第2の記憶手段4に時系列に記憶し、それを第2の時系列データとするようになっている。寿命演算手段2は第1の時系列データまたは、第2の時系列データから空気フィルタ8もしくは燃焼ファン9の寿命を個別に予測するようになっている。
【0003】
なお、「定期的な運転時」とは、例えば「週1回や月1回のように、燃料電池装置が自己診断するタイミングを設け、その一環で空気フィルタの診断を実行する」のような状況を想定している。また、「燃焼ファン9が一定の回転数で回転している状態」というのは、回転数フィードバック制御によって、燃焼ファン9が一定回転数で回転している状態のことである。
【0004】
また、燃料電池システムの他の一形式として、特許文献2に示されているものが知られている。特許文献2の図2−5に示されているように、燃料電池システムおいては、冷却ファンの回転数を設定し(A−3)、冷却ファン18の回転数が正常に変更されたかどうかを前記ファン回転数検出手段34で検出し、正常に変更したことを確認できなかったとき(A−4)、ファン故障検出手段でファンの故障検出を行うようになっている。また、寿命判定手段63は、演算手段62が測定した改質手段冷却ファン18の積算動作時間と、記憶手段61に記憶している、改質手段冷却ファン18を交換する目安となる改質手段冷却ファン18の寿命閾値の比較を行う(C−4)。比較した結果、改質手段冷却ファン18の積算動作時間γ1が寿命閾値γ2を超えている場合は、改質手段冷却ファン18の寿命であると判断するようになっている(C−6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−033934号公報
【特許文献2】特開2006−140031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載されている燃料電池システムにおいては、燃料電池装置が自己診断するタイミングを設ける必要があるが、通常の発電運転中(起動運転中)に自己診断をすることは不可能である。運転が停止されているときには、可能であるが、24時間365日運転を行っている場合には不可能である。また、燃焼部の圧損変化、排気口の閉塞などの外乱がある場合、ポンプの回転数、流量が可変するため、誤判断するおそれがある。
【0007】
上述した特許文献2に記載されている燃料電池システムにおいては、特許文献1と同様に、外乱の影響により誤判断するおそれがあり、ユーザ負荷(特に低負荷の場合)によっても誤判断するおそれがある。
【0008】
本発明は、上述した各問題を解消するためになされたもので、燃料電池システムにおいて、外乱やユーザ負荷に関係なく通常の発電運転中においても的確に異常判定が可能となることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、燃料と酸化剤ガスとにより発電する燃料電池と、改質用原料と改質水とにより燃料を生成する改質部と、電動モータで駆動されるように構成され改質用原料を供給する改質用原料供給装置を少なくとも含む改質用原料供給系と、電動モータで駆動されるように構成され改質水を供給する改質水供給装置を少なくとも含む改質水供給系と、電動モータで駆動されるように構成され酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給装置を少なくとも含む酸化剤ガス供給系と、各供給装置の各流体の供給量がそれぞれ制御目標値となるような制御を各供給装置に対して行う制御装置と、を備えた燃料電池システムであって、制御装置は、制御装置からの各供給装置に対する制御指示値と当該供給装置が供給する流体の流量または当該供給装置の電動モータの回転数との相関関係を示すマップまたは演算式を、実際の発電運転または起動運転中の所定期間内において取得した制御指示値および流体の流量または電動モータの回転数のデータに基づいてそれぞれ導出する流量−指示値特性導出手段と、予め記憶されている流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性と、流量−指示値特性導出手段により導出された流量−指示値導出特性と、を比較し、その比較結果に基づいて当該供給装置を含む当該供給系が異常であるか否かをそれぞれ判定する供給系異常判定手段と、供給系異常判定手段による判定結果に基づいて燃料電池システムの状態を判断する状態判断手段と、状態判断手段により判断された状態が異常状態を表す場合には、その旨を警告する警告手段と、を備えている。
【0010】
また請求項2に係る発明は、請求項1において、供給系異常判定手段は、流量−指示値特性導出手段によって導出された流量−指示値導出特性から、流量または電動モータの回転数のうちの所定値に応じた制御指示値を算出する対応制御指示値算出手段と、予め記憶されている流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性から所定値に応じて導出された第1の所定範囲内に、対応制御指示値算出手段により算出された対応制御指示値があれば当該供給装置を含む当該供給系は正常である旨を判定し、そうでなければ当該供給装置を含む当該供給系は正常でない旨を判定する第1判定手段と、を備えている。
【0011】
また請求項3に係る発明は、請求項2において、供給系異常判定手段は、第1判定手段が当該供給系は正常である旨を判定した場合に、対応制御指示値算出手段により算出された対応制御指示値の変化量が第2の所定範囲内にあれば当該供給装置を含む当該供給系は正常である旨を判定し、そうでなければ当該供給装置を含む当該供給系は正常でない旨を判定する第2判定手段をさらに備えている。
【0012】
また請求項4に係る発明は、請求項1において、供給系異常判定手段は、予め記憶されている流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性と、流量−指示値特性導出手段により導出された流量−指示値導出特性と、を比較し、その相違が第3の所定範囲内であれば当該供給装置を含む当該供給系は正常である旨を判定し、そうでなければ当該供給装置を含む当該供給系は正常でない旨を判定する第3判定手段を備えている。
【0013】
また請求項5に係る発明は、請求項2乃至請求項4の何れか一項において、状態判断手段は、供給系異常判定手段において供給系のいずれか一について所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には当該供給系が閉塞またはそのおそれがあると判断し、所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には当該供給系が漏れまたはそのおそれがあると判断する。
【0014】
また請求項6に係る発明は、請求項2乃至請求項4の何れか一項において、少なくとも改質部を含む改質系をさらに備え、状態判断手段は、供給系異常判定手段において改質用原料供給系および改質水供給系に係る各所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には改質系が閉塞またはそのおそれがあると判断し、各所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には改質系が漏れまたはそのおそれがあると判断する。
【0015】
また請求項7に係る発明は、請求項2乃至請求項4の何れか一項において、少なくとも燃料電池のアノードオフガスを燃焼させてその燃焼ガスにより改質部を加熱する燃焼部と、燃焼ガスを排気する排気系と、をさらに備え、状態判断手段は、供給系異常判定手段において供給系の全てについて所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には排気系が閉塞またはそのおそれがあると判断し、所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には排気系が漏れまたはそのおそれがあると判断する。
【0016】
また請求項8に係る発明は、請求項2乃至請求項7の何れか一項において、供給系異常判定手段において供給系のいずれか一について所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には、警告手段による警告とともに、燃料電池システムの発電運転または起動運転を継続する運転継続手段と、供給系異常判定手段において供給系のいずれか一について所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には、警告手段による警告とともに、燃料電池システムの停止運転を行う停止運転手段と、をさらに備えている。
【0017】
また請求項9に係る発明は、請求項1乃至請求項5の何れか一項において、電動モータで駆動されるように構成され燃料電池の排熱を回収する貯湯水を循環させる貯湯水供給装置を少なくとも含む貯湯水系をさらに備えている。
【発明の効果】
【0018】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、流量−指示値特性導出手段が、制御装置からの各供給装置に対する制御指示値と当該供給装置が供給する流体の流量または当該供給装置の電動モータの回転数との相関関係を示すマップまたは演算式を、実際の発電運転または起動運転中の所定期間内において取得した制御指示値および流体の流量または電動モータの回転数のデータに基づいてそれぞれ導出する。供給系異常判定手段が、予め記憶されている流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性と、流量−指示値特性導出手段により導出された流量−指示値導出特性と、を比較し、その比較結果に基づいて当該供給装置を含む当該供給系が異常であるか否かをそれぞれ判定する。状態判断手段が、供給系異常判定手段による判定結果に基づいて燃料電池システムの状態を判断する。
【0019】
これにより、実際の発電運転または起動運転中の所定期間内において取得した制御指示値および流体の流量または電動モータの回転数のデータに基づいてそれぞれ導出された流量−指示値導出特性と、予め記憶されている流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性とを比較することで、改質用原料、改質水または酸化剤ガスの供給系が異常であると判定することができる。したがって、燃料電池システムの停止状態に異常判定のためだけに専用の時間を設けることなく、通常の発電運転中または起動運転中において異常の判定を的確に行うことができる。また、外乱の影響も含んでいる実際のデータ、またユーザの実際の使用態様におけるデータを使用して異常の判定を行うことができるので、外乱やユーザ負荷の変動に左右されることなく、異常の判定を的確に行うことができる。
【0020】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、請求項1において、供給系異常判定手段は、流量−指示値特性導出手段によって導出された流量−指示値導出特性から、流量または電動モータの回転数のうちの所定値に応じた制御指示値を算出する対応制御指示値算出手段と、予め記憶されている流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性から所定値に応じて導出された第1の所定範囲内に、対応制御指示値算出手段により算出された対応制御指示値があれば当該供給装置を含む当該供給系は正常である旨を判定し、そうでなければ当該供給装置を含む当該供給系は正常でない旨を判定する第1判定手段と、を備えている。これにより、各供給系の異常判定をより簡便かつ具体的に行うことができ、ひいては燃料電池システムの状態の内容をより的確に把握することができる。
【0021】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、請求項2において、供給系異常判定手段は、第1判定手段が当該供給系は正常である旨を判定した場合に、対応制御指示値算出手段により算出された対応制御指示値の変化量が第2の所定範囲内にあれば当該供給装置を含む当該供給系は正常である旨を判定し、そうでなければ当該供給装置を含む当該供給系は正常でない旨を判定する第2判定手段をさらに備えている。これにより、正常と判定した時点において、近い将来異常となることが予想できるため、その旨を事前に警告することで起こりうる異常に対して早期に対処することができる。
【0022】
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、請求項1において、供給系異常判定手段は、予め記憶されている流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性と、流量−指示値特性導出手段により導出された流量−指示値導出特性と、を比較し、その相違が第3の所定範囲内であれば当該供給装置を含む当該供給系は正常である旨を判定し、そうでなければ当該供給装置を含む当該供給系は正常でない旨を判定する第3判定手段を備えている。これにより、各供給系の異常判定をより簡便かつ具体的に行うことができ、ひいては燃料電池システムの状態の内容をより的確に把握することができる。
【0023】
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、請求項2乃至請求項4の何れか一項において、状態判断手段は、供給系異常判定手段において供給系のいずれか一について所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には当該供給系が閉塞またはそのおそれがあると判断し、所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には当該供給系が漏れまたはそのおそれがあると判断する。これにより、燃料電池システムの状態の内容をより的確かつ具体的に把握することができる。
【0024】
上記のように構成した請求項6に係る発明においては、請求項2乃至請求項4の何れか一項において、少なくとも改質部を含む改質系をさらに備え、状態判断手段は、供給系異常判定手段において改質用原料供給系および改質水供給系に係る各所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には改質系が閉塞またはそのおそれがあると判断し、各所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には改質系が漏れまたはそのおそれがあると判断する。これにより、燃料電池システムの状態の内容をより的確かつ具体的に把握することができる。
【0025】
上記のように構成した請求項7に係る発明においては、請求項2乃至請求項4の何れか一項において、少なくとも燃料電池のアノードオフガスを燃焼させてその燃焼ガスにより改質部を加熱する燃焼部と、燃焼ガスを排気する排気系と、をさらに備え、状態判断手段は、供給系異常判定手段において供給系の全てについて所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には排気系が閉塞またはそのおそれがあると判断し、所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には排気系が漏れまたはそのおそれがあると判断する。これにより、燃料電池システムの状態の内容をより的確かつ具体的に把握することができる。
【0026】
上記のように構成した請求項8に係る発明においては、請求項2乃至請求項7の何れか一項において、供給系異常判定手段において供給系のいずれか一について所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には、警告手段による警告とともに、燃料電池システムの発電運転または起動運転を継続する運転継続手段と、供給系異常判定手段において供給系のいずれか一について所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には、警告手段による警告とともに、燃料電池システムの停止運転を行う停止運転手段と、をさらに備えている。これにより、異常判定を行った時点以降において燃料電池システムの状態の内容に応じて適切な運転を行うことができる。
【0027】
上記のように構成した請求項9に係る発明においては、請求項1乃至請求項5の何れか一項において、電動モータで駆動されるように構成され燃料電池の排熱を回収する貯湯水を循環させる貯湯水供給装置を少なくとも含む貯湯水系をさらに備えている。これにより、貯湯水系に対しても、燃料電池システムの停止状態に異常判定のためだけに専用の時間を設けることなく、通常の発電運転中または起動運転中において異常の判定を的確に行うことができる。また、外乱の影響も含んでいる実際のデータ、またユーザの実際の使用態様におけるデータを使用して異常の判定を行うことができるので、外乱やユーザ負荷の変動に左右されることなく、異常の判定を的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による燃料電池システムの一実施形態の概要を示す概要図である。
【図2】図1に示す燃料電池システムを示すブロック図である。
【図3】図2に示す制御装置で実行される制御プログラムのフローチャートである。
【図4】図2に示す制御装置で実行される制御プログラムのフローチャート(各供給系の異常判定)である。
【図5】供給装置のフィードバック制御を説明するためのブロック線図である。
【図6】改質用原料について流量−制御指示値相関図を示す図である。
【図7】対応制御指示値の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
【図8】各供給系の異常・正常の組み合わせにおける燃料電池システムの状態判断および制御方法を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明による燃料電池システムの一実施の形態について説明する。図1はこの燃料電池システムの概要を示す概要図である。この燃料電池システムは、箱状の筐体11、燃料電池モジュール20、排熱回収システム30、インバータ装置50および制御装置60を備えている。
【0030】
筐体11は、筐体11内を区画して第1室R1および第2室R2を形成する仕切部材12を備えている。第1室R1は第1空間を形成し、第2室R2は第2空間を形成する。仕切部材12は、筐体11を上下に区画する(仕切る)板状部材である。筐体11内には、仕切部材12より上方および下方に第1室R1および第2室R2が形成される。
【0031】
燃料電池モジュール20は、第1室R1内に該第1室R1の内壁面から空間をおいて収納されている。燃料電池モジュール20は、ケーシング21、燃料電池24を少なくとも含んで構成されるものである。本実施の形態では、燃料電池モジュール20は、ケーシング21、蒸発部22、改質部23、燃料電池24および燃焼部26を備えている。
【0032】
ケーシング21は、断熱性材料で箱状に形成されている。ケーシング21は、第1室R1内に該第1室R1の内壁面から空間をおいて図示しない支持構造により支持されている。ケーシング21内には、蒸発部22、改質部23および燃料電池24が配設されている。このとき、蒸発部22、改質部23が燃料電池24の上方に位置するように配設されている。
【0033】
蒸発部22は、後述する燃焼ガスにより加熱されて、供給された改質水を蒸発させて水蒸気を生成するとともに、供給された改質用原料を予熱するものである。蒸発部22は、このように生成された水蒸気と予熱された改質用原料を混合して改質部23に供給するものである。改質用原料としては天然ガス、LPGなどの改質用気体燃料、灯油、ガソリン、メタノールなどの改質用液体燃料があり、本実施形態においては天然ガスにて説明する。
【0034】
この蒸発部22には、一端(下端)が水タンク13内に配設された給水管41の他端が接続されている。給水管41には、水タンク13側から順番に改質水ポンプ41aおよび流量センサ41bが設けられている。改質水ポンプ41aは、蒸発部22に改質水を供給(改質水供給装置)するとともにその改質水供給量を調整するものである。改質水ポンプ41aには、ポンプまたは内蔵の電動モータの回転数(単位時間あたりの回転数)を検出して制御装置60に出力する回転数センサ41a1が設けられている。流量センサ41bは、給水管41を流れ蒸発部22に供給されている改質水の流量(単位時間あたりの流量)を検出し、検出結果(出力信号)を制御装置60に送信している。
【0035】
また、蒸発部22には、燃料供給源(図示省略)からの改質用原料が改質用原料供給管42を介して供給されている。改質用原料供給管42には、上流から順番に一対の原料バルブ42a,42b、流量センサ42c、脱硫器42d、および原料ポンプ42eが設けられている。
【0036】
原料バルブ42a,42bは改質用原料供給管42を開閉する電磁開閉弁である。これら原料バルブ42a,42bは改質用原料からごみ、塵などを除去するためのフィルタを内蔵している。流量センサ42cは、燃料電池24に供給されている燃料(改質用原料)の流量すなわち単位時間あたりの流量を検出するものであり、その検出結果を制御装置60に送信している。脱硫器42dは改質用原料中の硫黄分(例えば、硫黄化合物)を除去するものである。
【0037】
原料ポンプ42eは、燃料電池24に燃料(改質用原料)を供給する改質用原料供給装置であり、制御装置60からの制御指令値にしたがって燃料供給源からの燃料供給量を調整するものである。原料ポンプ42eには、ポンプまたは内蔵の電動モータの回転数(単位時間あたりの回転数)を検出して制御装置60に出力する回転数センサ42e1が設けられている。
【0038】
改質部23は、後述する燃焼ガスにより加熱されて水蒸気改質反応に必要な熱が供給されることで、蒸発部22から接続管22aを介して供給された混合ガス(改質用原料、水蒸気)から改質ガスを生成して導出するものである。改質部23内には、触媒(例えば、RuまたはNi系の触媒)が充填されており、混合ガスが触媒によって反応し改質されて水素ガスと一酸化炭素ガスが生成されている(いわゆる水蒸気改質反応)。これと同時に、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気が反応して水素ガスと二酸化炭素とに変成するいわゆる一酸化炭素シフト反応が生じている。これら生成されたガス(いわゆる改質ガス)は燃料電池24の燃料極に導出されるようになっている。改質ガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の天然ガス(メタンガス)を含んでいる。なお、水蒸気改質反応は吸熱反応であり、一酸化炭素シフト反応は発熱反応である。
【0039】
燃料電池24は、燃料極、空気極(酸化剤極)、および両極の間に介装された電解質からなる複数のセル24aが積層されて構成されている。本実施の形態の燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であり、電解質として固体酸化物の一種である酸化ジルコニウムを使用している。燃料電池24の燃料極には、燃料として水素、一酸化炭素、メタンガスなどが供給される。動作温度は400〜1000℃程度である。水素だけではなく天然ガスや石炭ガスなども直接燃料として用いることが可能である。この場合、改質部23は省略することができる。
【0040】
セル24aの燃料極側には、燃料である改質ガスが流通する燃料流路24bが形成されている。セル24aの空気極側には、酸化剤ガスである空気(カソードエア)が流通する空気流路24cが形成されている。
【0041】
燃料電池24は、燃料電池24の温度を検出する温度センサ24dを備えている。温度センサ24dは、燃料電池24のセル24aの積層方向の中央部分であって上下方向中央部分に設けられている。温度センサ24dは、その検出結果を制御装置60に送信するようになっている。
【0042】
燃料電池24は、マニホールド25上に設けられている。マニホールド25には、改質部23からの改質ガスが改質ガス供給管43を介して供給される。燃料流路24bは、その下端(一端)がマニホールド25の燃料導出口に接続されており、その燃料導出口から導出される改質ガスが下端から導入され上端から導出されるようになっている。カソードエアブロワ44a(カソードエア供給装置)によって送出されたカソードエアはカソードエア供給管44を介して供給され、空気流路24cの下端から導入され上端から導出されるようになっている。
【0043】
また、カソードエア供給管44には、流量センサ44bが設けられている。流量センサ44bは、燃料電池24に供給されているカソードエアの流量すなわち単位時間あたりの流量を検出するものであり、その検出結果を制御装置60に送信している。
【0044】
カソードエアブロワ44aは、第2室R2内に配設されている。カソードエアブロワ44aは、第2室R2内の空気を吸入し燃料電池24の空気極に吐出するものであり、その吐出量は調整制御(例えば燃料電池24の負荷電力量(消費電力量)に応じて制御)されるものである。
また、カソードブロワ44aの吸入口にはごみ、塵などを除去するためのフィルタ44cが設けられている。さらに、カソードブロワ44aには、ブロワまたは内蔵の電動モータの回転数(単位時間あたりの回転数)を検出して制御装置60に出力する回転数センサ44a1が設けられている。
【0045】
燃料電池24においては、燃料極に供給された燃料と空気極に供給された酸化剤ガスによって発電が行われる。すなわち、燃料極では、下記化1および化2に示す反応が生じ、空気極では、下記化3に示す反応が生じている。すなわち、空気極で生成した酸化物イオン(O2−)が電解質を透過し、燃料極で水素と反応することにより電気エネルギーを発生させている。したがって、燃料流路24bおよび空気流路24cからは、発電に使用されなかった改質ガスおよび酸化剤ガス(空気)が導出する。
【0046】
(化1)
+O2−→HO+2e
【0047】
(化2)
CO+O2−→CO+2e
【0048】
(化3)
1/2O+2e→O2−
【0049】
そして、燃料流路24bおよび空気流路24cから導出した、発電に使用されなかった改質ガス(アノードオフガス)は、燃料電池24と蒸発部22(改質部23)の間の燃焼空間R3にて、発電に使用されなかった酸化剤ガス(空気)によって燃焼され、その燃焼ガスによって蒸発部22および改質部23が加熱される。さらには、燃料電池モジュール20内を動作温度に加熱している。その後、燃焼ガスは排気口21aから燃料電池モジュール20の外に排気される。
【0050】
このように上記燃焼空間R3は、少なくとも燃料電池24のアノードオフガスを燃焼させて改質部23を加熱する燃焼部26を構成する。燃焼部26(燃焼空間R3)では、アノードオフガスが燃焼されて火炎27が発生している。燃焼部26には、アノードオフガスを着火させるための一対の着火ヒータ26a1,26a2が設けられている。また、燃焼部26には、燃焼部26の温度を検出するための一対の温度センサ26b1,26b2が設けられている。温度センサ26b1,26b2の検出結果(出力信号)は制御装置60に送信されている。
【0051】
燃料電池モジュール20の排気口21aには、燃焼触媒28およびヒータ29が設けられている。燃焼触媒28は、燃料電池モジュール20から排気される気体のうち可燃性ガスを触媒によって燃焼させるものである。可燃性ガスとしては、水素、メタンガス、一酸化炭素などが挙げられる。触媒としては、PtやPd系の触媒が挙げられる。ヒータ29は、燃焼触媒28を加熱するものであり、触媒を活性化するため(起動当初など)に使用する。
【0052】
排熱回収システム30は、燃料電池24の排熱と貯湯水との間で熱交換することで排熱を貯湯水に回収して蓄える貯湯水系である。排熱回収システム30は、貯湯水を貯湯する貯湯槽31と、貯湯水が循環する貯湯水循環ライン32と、燃料電池モジュール20からの燃焼排ガスと貯湯水との間で熱交換が行われる熱交換器33と、が備えられている。
【0053】
貯湯槽31は、1つの柱状容器を備えており、その内部に温水が層状に、すなわち上部の温度が最も高温であり下部にいくにしたがって低温となり下部の温度が最も低温であるように貯留されるようになっている。貯湯槽31の柱状容器の下部には水道水などの水(低温の水)が補給され、貯湯槽31に貯留された高温の温水が貯湯槽31の柱状容器の上部から導出されるようになっている。
【0054】
貯湯水循環ライン32の一端は貯湯槽31の下部に、他端は貯湯槽31の上部に接続されている。貯湯水循環ライン32上には、一端から他端に向かって順番に貯湯水供給装置である貯湯水循環ポンプ32a、第1温度センサ32b、熱交換器33、および第2温度センサ32cが配設されている。貯湯水循環ポンプ32aは、貯湯槽31の下部の貯湯水を吸い込んで貯湯水循環ライン32を図示矢印方向へ通水させて貯湯槽31の上部に吐出するものであり、その流量(送出量)が制御されるようになっている。貯湯水循環ポンプ32aには、ポンプまたは内蔵の電動モータの回転数(単位時間あたりの回転数)を検出して制御装置60に出力する回転数センサ32a1が設けられている。貯湯水循環ポンプ32aは、第2温度センサ32cの検出温度(貯湯水の貯湯槽31の入口温度)が所定の温度または温度範囲となるように、送出量が制御されるようになっている。
【0055】
第1温度センサ32bは、熱交換器33の貯湯水導入側の貯湯水循環ライン32であって熱交換器33と貯湯槽31との間に配設されている。第1温度センサ32bは、貯湯水の熱交換器33の入口温度すなわち貯湯水の貯湯槽31の出口温度を検出するものであり、その検出結果を制御装置60に送信するようになっている。
【0056】
第2温度センサ32cは、熱交換器33の貯湯水導出側の貯湯水循環ライン32に配設されている。第2温度センサ32cは、貯湯水の熱交換器33の出口温度すなわち貯湯水の貯湯槽31の入口温度を検出するものであり、その検出結果を制御装置60に送信するようになっている。
【0057】
熱交換器33は、燃料電池モジュール20から排気される燃焼排ガスが供給されるとともに貯湯槽31からの貯湯水が供給され燃焼排ガスと貯湯水が熱交換する熱交換器である。この熱交換器33は、筐体11内に配設されている。本実施の形態では、熱交換器33は、燃料電池モジュール20の下部に設けられており、少なくとも熱交換器33の下部は仕切部材12を貫通して第2室R2に突出されて配設されている。
【0058】
熱交換器33は、ケーシング33aを備えている。ケーシング33aの上部には、燃料電池モジュール20のケーシング21の下部に設けられ燃焼排ガスが導出される導出口21aに連通する接続管45が接続されている。ケーシング33aの下部には、第1排気口11aに接続されている排気管46が接続されている。ケーシング33aの底部には、純水器14に接続されている凝縮水供給管47が接続されている。ケーシング33a内には、貯湯水循環ライン32に接続されている熱交換部(凝縮部)33bが配設されている。
【0059】
このように構成された熱交換器33においては、燃焼触媒28で処理された燃料電池モジュール20からの燃焼排ガスは、接続管45を通ってケーシング33a内に導入され、貯湯水が流通する熱交換部33bを通る際に貯湯水との間で熱交換が行われ凝縮されるとともに冷却される。凝縮後の燃焼排ガスは排気管46を通って第1排気口11aから外部に排出される。また、凝縮された凝縮水は、凝縮水供給管47を通って純水器14に供給される(自重で落水する)。一方、熱交換部33bに流入した貯湯水は、加熱されて流出される。
【0060】
また、燃料電池システムは、水タンク13および純水器14を備えている。水タンク13および純水器14は第2室R2内に配設されている。水タンク13は、純水器14から導出された純水を貯めておくものである。純水タンク13には、純水タンク13内の純水量を検出する図示しない水量センサ(水位センサ)が設けられている。水量センサは例えばフロート式、静電容量式などの水位計である。水量センサは制御装置に検出信号を送信するようになっている。
【0061】
純水器14は、活性炭とイオン交換樹脂を内蔵しており、例えばフレーク状の活性炭と粒状のイオン交換樹脂を充填している。また被処理水の状態によっては、中空糸フィルタを設置しても良い。純水器14は、熱交換器33からの凝縮水を活性炭とイオン交換樹脂によって純水化するものである。純水器14は、配管48を介して純水タンク13に連通しており、純水器14内の純水は配管48を通って純水タンク13に導出される。
【0062】
また、燃料電池システムは、第2室R2を形成する筐体11に形成された空気導入口11cと、第1室R1を形成する筐体11に形成された空気導出口11bと、仕切部材12に形成された空気導入口12aに設けられた換気用空気ブロワ15と、を備えている。この換気用空気ブロワ15が作動すると、外気が空気導入口11cを介して第2室R2内に吸い込まれ、換気用空気ブロワ15によって第1室R1内に送出され、第1室R1内の空気が空気導出口11bを介して外部に排出される。
【0063】
さらに、燃料電池システムは、インバータ装置50を備えている。インバータ装置50は、燃料電池24から出力される直流電圧を入力し所定の交流電圧に変換して交流の系統電源51および外部電力負荷53に接続されている電源ライン52に出力する第1機能と、系統電源51からの交流電圧を電源ライン52を介して入力し所定の直流電圧に変換して補機や制御装置60に出力する第2機能と、を有している。
【0064】
系統電源(または商用電源)51は、該系統電源51に接続された電源ライン52を介して電力負荷53に電力を供給するものである。燃料電池24はインバータシステム15を介して電源ライン52に接続されている。電力負荷53は、交流電源で駆動される負荷であり、例えばドライヤ、冷蔵庫、テレビなどの電化製品である。
【0065】
補機は、燃料電池モジュール20に改質用原料、水、空気を供給するためのモータ駆動のポンプ41a,42e、換気用空気ブロワ15およびカソードエアブロワ44a、貯湯水を循環させるためのモータ駆動のポンプ32aなどから構成されている。この補機は直流電圧にて駆動されるものである。
【0066】
さらに、燃料電池システムは、制御装置60を備えている。制御装置60には、上述した温度センサ24d,26b1,26b2,32b,32c、流量センサ41b,42c,44b、回転数センサ32a1,41a1,42e1、44a1、各ポンプ32a,41a,42e、各ブロワ15,44a、着火ヒータ26a1,26a2、ヒータ29が接続されている(図2参照)。制御装置60は、各供給装置であるポンプ32a,41a,42e、ブロワ15,44aの各流体の供給量がそれぞれ制御目標値となるような制御を各供給装置に対して行うものである。制御装置60はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAMおよびROM(いずれも図示省略)を備えている。CPUは、燃料電池システムの運転を実施している。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、ROMは前記プログラムを記憶するものである。
【0067】
なお、上述した各ポンプ、ブロワは電動モータで駆動されるように構成されている。
【0068】
また、改質用原料供給系L1は、改質用原料供給管42、原料バルブ42a,42b、流量センサ42c、脱硫器42d、および原料ポンプ42eから構成されている。改質水供給系L2は、給水管41、改質水ポンプ41aおよび流量センサ41bから構成されている。酸化剤ガス(カソードエア)供給系L3は、カソードエア供給管44、カソードエアブロワ44a、流量センサ44bおよびフィルタ44cから構成されている。
【0069】
貯湯水系は、貯湯槽31、貯湯水循環ライン32、熱交換器33、貯湯水循環ポンプ32a、第1温度センサ32b、および第2温度センサ32cから構成されている。改質系L4は、少なくとも改質部23を含むものである。例えば改質系L4は、接続管22a、改質部23および改質ガス供給管43から構成されている。排気系L5は、燃料電池モジュール20からの燃焼ガスが筐体11の外部に排気される系である。例えば排気系L5は、燃料電池モジュール20、燃焼触媒28、接続管45、熱交換器33および排気管46から構成されている。
【0070】
なお、蒸発部22は、改質用原料供給系L1および改質水供給系L2の両方に属する。また、マニホールド25は、カソードエア供給系L3および改質系L4の両方に属する。
【0071】
次に、上述した燃料電池システムの作動について説明する。制御装置60は、図示しない起動スイッチがオンされると、図3に示すフローチャートに対応するプログラムの実行を開始する。発電運転中(または起動運転中)において、制御装置60は、改質用原料供給系L1について異常であるか否かの判定を行う改質用原料供給系異常判定(ステップ102)、改質水供給系L2について異常であるか否かの判定を行う改質水供給系異常判定(ステップ104)、カソードエア供給系L3について異常であるか否かの判定を行うカソードエア供給系異常判定(ステップ106)、および貯湯水系について異常であるか否かの判定を行う貯湯水異常判定(ステップ108)を並行に行う。
【0072】
改質用原料供給系異常判定について図4に示すフローチャートを参照して説明する。制御装置60は、前回の判定完了(第1回目の判定においては最初の起動)から第1の所定時間TM1が経過している場合には、ステップ202で「YES」と判定し、プログラムをステップ204以降に進める。制御装置60は、前回の判定完了から第1の所定時間TM1が経過するまでは、ステップ202で「NO」の判定を繰り返す。なお、第1の所定時間TM1は、例えば1週間、1ヶ月である。
【0073】
制御装置60は、実際に行っている発電運転または起動運転中の所定期間(第3の所定時間TM3)内において取得した制御指示値および流体の流量(または電動モータの回転数)のデータに基づいて流量−指示値導出特性を導出する(流量−指示値特性導出手段;ステップ204〜208)。例えば、供給装置が原料ポンプ42eである場合について説明する。
【0074】
供給装置の制御方法について図6を参照して説明する。この制御方法はフィードバック制御である。すなわち、制御装置60は、制御目標値と検出装置である検出センサ(例えば流量センサ42c)が検出した検出値(例えば流量)との差を入力し、その差に基づいて制御指示値であるデューティ比を供給装置であるポンプ(例えば原料ポンプ42e)に出力する。このように、制御指示値は、制御装置60からの各供給装置(例えば原料ポンプ42e)に対する制御指示値である。制御指示値は、例えばデューティ比である。流量は、当該供給装置(例えば原料ポンプ42e)が供給する流体(例えば改質用原料)の流量(単位時間あたりの流量)である。この流量は、流量センサ(例えば流量センサ42c)により検出される。
【0075】
なお、燃料の供給量、改質水の供給量、カソードエアの供給量の各制御目標値は、燃料電池24の発電負荷に基づいて設定される。また、貯湯水の供給量の制御目標値は、予め決められた所定温度の応じた値に設定されている。
【0076】
供給装置を含む供給系が閉塞気味または閉塞すると流体は流れ難くなり最終的に流れなくなる。このとき、流量センサによる検出値は減少傾向にあり最終的には0になる。これに対して、供給装置はフィードバック制御されているため、デューティ比は増大される。反対に、供給装置を含む供給系が漏れ気味または漏れると流体は流れやすくなる。このとき、流量センサによる検出値は増大傾向にある。これに対して、供給装置はフィードバック制御されているため、デューティ比は減少される。このように、流量と制御指示値とは相関がある。これを利用して、後述する供給系の異常であることを判定している。
【0077】
流量−指示値特性は、流量と制御指示値との相関関係を示す特性であり、マップや演算式で表わされるものである。流量−指示値導出特性は、流量−指示値特性であって、実際に行っている発電運転または起動運転中の所定期間内において取得した実際の制御指示値および流体の流量(または電動モータの回転数)のデータに基づいて導出されたものである。なお、流量−指示値特性は、流量と制御指示値との相関関係だけでなく、流量と高い相関のある供給装置の電動モータの回転数(またはポンプ、ブロワの回転数)と制御指示値との相関関係で表わすようにしてもよい。
【0078】
具体的には、制御装置60は、最初に、第1の所定時間TM1が経過した時点から第3の所定時間TM3が経過するまでの間において、第2の所定時間TM2毎に制御指示値および流量のデータを取得し関連付けて記憶する(ステップ204)。第3の所定時間TM3は、第1の所定時間TM1より短い時間に設定されており、例えば1日である。この第3の所定時間TM3が本願の特許請求の範囲に記載の「所定期間」である。第2の所定時間TM2は、第3の所定時間TM3より短い時間に設定されており、例えば数秒から十数秒である。これにより、制御装置60は、第3の所定時間TM3分の流量と制御指示値とを関連付けたデータを蓄積することができる。
【0079】
制御装置60は、ステップ206において、第1の所定時間TM1が経過した時点から第3の所定時間TM3が経過したか否かを判定する。制御装置60は、第3の所定時間TM3が経過していないときには、ステップ206で「NO」と判定し、プログラムをステップ204に戻す。制御装置60は、第3の所定時間TM3が経過したときには、ステップ206で「YES」と判定し、プログラムをステップ208に進める。
【0080】
次に、制御装置60は、ステップ208において、先に蓄積した第3の所定時間TM3分の流量と制御指示値とを関連付けたデータを使用して、流量−指示値導出特性を導出する。導出した流量−指示値導出特性を図6に示す。図6では、改質用原料に関する流量−指示値導出特性を示している。蓄積したデータに基づいて最小二乗法などにより近似することで、流量−指示値導出特性を導出する。流量−指示値導出特性は制御指示値=a×流量−bという一次式で近似することとなる。
【0081】
次に、制御装置60は、予め記憶されている流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性と、流量−指示値特性導出手段により導出された流量−指示値導出特性と、を比較し、その比較結果に基づいて当該供給装置を含む当該供給系が異常であるか否かを判定する(供給系異常判定手段;ステップ210〜222)。
【0082】
流量−指示値基準特性は、流量−指示値特性であって、当該燃料電池システムの実機を使用して制御指示値を燃料電池24の出力電力の全レンジ内で変化させて制御指示値毎の流量を検出して流量と制御指示値とを関連付けたデータから導出されるものである。実機を使用しないでシミュレートして導出するようにしてもよい。流量−指示値基準特性は、図6に一点破線で示すように、流量と制御指示値とが正比例の関係にある。
【0083】
具体的には、制御装置60は、最初に、流量−指示値特性導出手段(ステップ208)によって導出された流量−指示値導出特性から、流量(または前記電動モータの回転数)のうちの所定値に応じた制御指示値(対応制御指示値)を算出するとともに記憶する(対応制御指示値算出手段;ステップ210)。すなわち、制御装置60は、図6に示す流量−指示値導出特性から所定値である所定流量Q1に応じた対応制御指示値Aを算出するとともに記憶する。今回算出した対応制御指示値AはA1であるとする。
【0084】
次に、制御装置60は、ステップ210で算出された対応制御指示値Aが第1の所定範囲(AL以上でありAU以下である範囲)内にあれば当該供給装置(例えば原料ポンプ42e)を含む当該供給系(例えば改質用原料供給系L1)は正常である旨を判定し、そうでなければ当該供給装置を含む当該供給系は正常でない旨を判定する(第1判定手段;ステップ212、218〜222)。
【0085】
第1の所定範囲は、予め記憶されている流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性から、所定値である所定流量Q1に応じて導出されるものである。すなわち、制御装置60は、図6に示す流量−指示値基準特性から所定値である所定流量Q1に応じた制御指示値ACを算出する。この制御指示値ACを含む範囲が第1の所定範囲であり、上限がAUであり、下限がALである。例えば、制御指示値ACが中心となるように第1の所定範囲を設定するようにしてもよい。なお、第1の所定範囲は、供給装置であるポンプ、ブロワの装置毎の性能の差、流量センサの公差(器差)、システム毎の圧損の差などを考慮して決定されており、これらの差、公差に起因して誤検知が発生しないように設定されている。
【0086】
すなわち、対応制御指示値AがAL以上でありAU以下である場合には、制御装置60は、ステップ212で「YES」と判定し、原則当該供給系は正常である旨を判定する(ステップ218)。また、対応制御指示値AがAUより大きい場合には、制御装置60は、ステップ212で「NO」と判定し、当該供給系は上限を超えた状態の異常(上限異常)である旨を判定する(ステップ220)。また、対応制御指示値AがALより小さい場合には、制御装置60は、ステップ212で「NO」と判定し、当該供給系は下限を超えた状態の異常(下限異常)である旨を判定する(ステップ222)。
【0087】
さらに、制御装置60は、第1判定手段(ステップ212)が当該供給系(例えば改質用原料供給系L1)は正常である旨を判定した場合に、対応制御指示値算出手段により算出された対応制御指示値の変化量が第2の所定範囲内にあれば当該供給装置(例えば原料ポンプ42e)を含む当該供給系は正常である旨を判定し、そうでなければ当該供給装置を含む当該供給系は正常でない旨を判定する(第2判定手段;ステップ214〜222)。
【0088】
なお、第2所定範囲は、補機の劣化許容範囲(補機特性)内の変化、環境温度(気温)による流量計やポンプ等の特性等で誤検知しない範囲が設定される。また、第2の所定範囲は、第1の所定範囲のレンジ幅、第1の所定時間TM1などに基づいて設定するようにしてもよい。第2の所定範囲の上限は正の値(例えばdAUである)であり、下限は負の値(例えばdALである)である。また、第1および第2の所定範囲は本願の特許請求の範囲に記載の「所定範囲」に相当する。
【0089】
すなわち、制御装置60は、最初に、記憶している複数の対応制御指示値Aから対応制御指示値Aの変化量である対応制御指示値変化量dAを導出する(ステップ214)。具体的には、例えば、今回導出した対応制御指示値Aと前回導出して記憶した対応制御指示値Aとの差を算出することで導出すればよい。
【0090】
次に、対応制御指示値変化量dAが第2の所定範囲(dAL以上でありdAU以下である範囲)内にある場合には、制御装置60は、ステップ216で「YES」と判定し、当該供給装置(例えば原料ポンプ42e)を含む当該供給系は正常である旨を判定する(ステップ218)。また、対応制御指示値変化量dAがdAUより大きい場合には、制御装置60は、ステップ216で「NO」と判定し、当該供給系は上限異常である旨を判定する(ステップ220)。また、対応制御指示値変化量dAがdALより小さい場合には、制御装置60は、ステップ216で「NO」と判定し、当該供給系は下限異常である旨を判定する(ステップ222)。
【0091】
なお、制御装置60は、対応制御指示値変化量dAがdAUより大きい場合には、当該供給系は上限異常となるおそれがある旨を判定するようにしてもよく、また、対応制御指示値変化量dAがdALより小さい場合には、下限異常となるおそれがある旨を判定するようにしてもよい。
【0092】
具体的には、図7に示すように、時刻t1から時刻t5までの間において、対応制御指示値AがA1で一定である場合には(実線で示す)、対応制御指示値変化量dAは0であるため第2の所定範囲内にあるので、制御装置60は、ステップ212,216で「YES」と判定し、当該供給系は正常である旨を判定する(ステップ218)。なお、時刻t1から時刻t5までの間隔は、第1の所定時間TM1である。
【0093】
また、時刻t1から時刻t3までの間において対応制御指示値AはA1で一定であるが、時刻t3から増大し始めた場合について説明する(上側の破線で示す)。時刻t4においては、対応制御指示値AはA1より大きい値となるが、第1の所定範囲内にある。しかし、対応制御指示値変化量dAは第2の所定範囲の上限dAUを超えており、制御装置60は、ステップ212,216でそれぞれ「YES」、「NO」と判定し、当該供給系は上限異常である旨(または上限異常のおそれがある旨)を判定する(ステップ220)。
【0094】
さらに、時刻t5においては、対応制御指示値Aは第1の所定範囲の上限AUを超えているため、制御装置60は、ステップ212で「NO」と判定し、当該供給系は上限異常である旨を判定する(ステップ220)。
【0095】
さらに、時刻t3から減少し始めた場合について説明する(下側の破線で示す)。時刻t4においては、対応制御指示値AはA1より小さい値となるが、第1の所定範囲内にある。しかし、対応制御指示値変化量dAは第2の所定範囲の下限dALを超えており、制御装置60は、ステップ212,216でそれぞれ「YES」、「NO」と判定し、当該供給系は下限異常である旨(または下限異常のおそれがある旨)を判定する(ステップ222)。
【0096】
さらに、時刻t5においては、対応制御指示値Aは第1の所定範囲の下限ALを超えているため、制御装置60は、ステップ212で「NO」と判定し、当該供給系は下限異常である旨を判定する(ステップ222)。
【0097】
制御装置60は、上述したように、ステップ102において、改質用原料供給系L1が正常であるか異常であるかを判定する。異常である場合には、制御装置60は、その異常が上限異常であるか下限異常であるかを判定する。
【0098】
制御装置60は、改質用原料供給系L1の異常判定と同様に、改質水供給系L2を改質水供給系異常判定手段(ステップ104)により、カソードエア供給系L3をカソードエア供給系異常判定手段(ステップ106)により、貯湯水系を貯湯水系異常判定手段(ステップ108)により、それぞれ異常であるか正常であるかを判定する。
【0099】
制御装置60は、それら4つの系が全て正常であると判定した場合には、ステップ110で「NO」と判定し、プログラムをステップ112に進める。制御装置60は、ステップ112において、正常である旨の判定をした時点の燃料電池システムの運転状態(運転モード)を継続する。例えば、判定をした時点の運転モードが発電運転であれば、発電運転を継続する。図8に示すケース1の場合である。
【0100】
一方、制御装置60は、4つの系のうち1つ以上に異常判定がなされた場合には、ステップ110で「YES」と判定し、プログラムをステップ114に進める。制御装置60は、ステップ114において、上述した各供給系異常判定手段による判定結果に基づいて図8に示す状態判定表から燃料電池システムの状態を判断する。
【0101】
以下、ケース2からケース9までの場合について説明する。ケース2は、改質水供給系L2のみが異常である場合である。このとき、上限異常である場合には、制御装置60は、改質水供給系L2(例えば改質水供給管41、蒸発部22、流量センサ41bの少なくとも何れか一つ)が閉塞していると判断し、下限異常である場合には、制御装置60は、改質水供給系L2が破れるなどして漏れていると判断する。
【0102】
ケース3は、カソードエア供給系L3のみが異常である場合である。このとき、上限異常である場合には、制御装置60は、カソードエア供給系L3(例えばカソードエア供給管44、流量センサ44b、フィルタ44cの少なくとも何れか一つ)が閉塞していると判断し、下限異常である場合には、制御装置60は、カソードエア供給系L3が破れるなどして漏れていると判断する。
【0103】
ケース4は、改質用原料供給系L1のみが異常である場合である。このとき、上限異常である場合には、制御装置60は、改質用原料供給系L1(例えば、改質用原料供給管42、原料バルブ42a,42b内のフィルタ、流量センサ42c、脱硫器42d、蒸発部22の少なくとも何れか一つ)が閉塞していると判断し、下限異常である場合には、制御装置60は、改質用原料供給系L1が破れるなどして漏れていると判断する。
【0104】
ケース5は、改質水供給系L2およびカソードエア供給系L3のみが異常である場合である。このとき、上限異常である場合には、制御装置60は、改質水供給系L2およびカソードエア供給系L3が閉塞していると判断し、下限異常である場合には、制御装置60は、改質水供給系L2およびカソードエア供給系L3が破れるなどして漏れていると判断する。
【0105】
ケース6は、改質水供給系L2および改質用原料供給系L1のみが異常である場合である。このとき、上限異常である場合には、制御装置60は、改質系L4(例えば、接続管22a、改質部23、改質ガス供給管43の少なくとも何れか一つ)が閉塞していると判断し、下限異常である場合には、制御装置60は、改質系L4が破れるなどして漏れていると判断する。
【0106】
ケース7は、改質用原料供給系L1およびカソードエア供給系L3のみが異常である場合である。このとき、上限異常である場合には、制御装置60は、改質用原料供給系L1およびカソードエア供給系L3が閉塞していると判断し、下限異常である場合には、制御装置60は、改質用原料供給系L1およびカソードエア供給系L3が破れるなどして漏れていると判断する。
【0107】
ケース8は、改質用原料供給系L1、改質水供給系L2およびカソードエア供給系L3の全てが異常である場合である。このとき、上限異常である場合には、制御装置60は、排気系L5(例えば、燃料電池モジュール20の燃焼触媒28、排気管46の少なくとも何れか一つ)が閉塞していると判断し、下限異常である場合には、制御装置60は、排気系L5(例えば、燃料電池モジュール20、接続管45、熱交換器33および排気管46の少なくとも何れか一つ)が破れるなどして漏れていると判断する。
【0108】
ケース9は、貯湯水系30のみが異常である場合である。このとき、上限異常である場合には、制御装置60は、貯湯水系30(例えば、貯湯槽31、貯湯水循環ライン32、熱交換器33の少なくとも何れか一つ)が閉塞していると判断し、下限異常である場合には、制御装置60は、貯湯水系30が破れるなどして漏れていると判断する。
【0109】
そして、制御装置60は、供給系異常判定手段(ステップ102〜108)において供給系のいずれか一について第1または第2の所定範囲の上限を超えた異常である(またはその異常のおそれがある)と判定された場合には、警告手段による警告とともに、燃料電池システムの発電運転または起動運転を継続する(運転継続手段;ステップ122,124)。一方、供給系異常判定手段において供給系のいずれか一について第1または第2の所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には、警告手段による警告とともに、燃料電池システムの停止運転を行う(停止運転手段;ステップ118,120)。
【0110】
具体的には、制御装置60は、ステップ116において、供給系異常判定手段(ステップ102〜108)において下限異常の判定をしたか否かを判定する。上限異常であると判定した場合には、制御装置60は、ステップ116にて「NO」と判定する。制御装置60は、ステップ122において、状態判断手段(ステップ114)において判断した内容を表示してその旨を警告する(警告手段)。警告方法は、表示器(LED画面、ランプなど)に表示させるようにしてもよいし、スピーカなどにより音声で知らせるようにしてもよい。制御装置60は、ステップ124において、供給系異常判定手段が判定した時点における燃料電池システムの運転状態(運転モード)を継続する。
【0111】
この場合、燃料電池システムの発電運転または起動運転を止めることなく継続しながら、ユーザは警告内容に応じたメンテナンス(自分で部品交換したり修理依頼をしたりするなど)を行うことができる。
【0112】
なお、燃料電池システムは正常な運転状態ではないので、このような状態での運転中に他に異常が発生したことを検出すれば、制御装置60は燃料電池システムの運転を停止する停止運転を行う(ステップ120)。具体的には、制御装置60は、ステップ126において、他に異常があるか否かを判定する。制御装置60は、他に異常がなければステップ126で「NO」と判定しプログラムをステップ124に戻し、一方、他に異常があればステップ126で「YES」と判定しプログラムをステップ120に進める。
【0113】
一方、制御装置60は、下限異常であると判定した場合には、ステップ116にて「YES」と判定する。制御装置60は、ステップ118において、ステップ122と同様に状態判断手段(ステップ114)において判断した内容を表示してその旨を警告する(警告手段)。警告と合わせて、制御装置60は、ステップ120において、燃料電池システムの停止運転を行う(停止運転手段)。
【0114】
上述した説明から明らかなように、本実施形態においては、流量−指示値特性導出手段(ステップ204〜208)が、制御装置60からの各供給装置(32a,41a,42e,44a)に対する制御指示値と当該供給装置が供給する流体の流量または当該供給装置の電動モータの回転数との相関関係を示すマップまたは演算式を、実際の発電運転または起動運転中の所定期間(第3の所定時間TM3)内において取得した制御指示値および流体の流量または電動モータの回転数のデータに基づいてそれぞれ導出する。供給系異常判定手段(ステップ210〜222)が、予め記憶されている流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性と、流量−指示値特性導出手段により導出された流量−指示値導出特性と、を比較し、その比較結果に基づいて当該供給装置を含む当該供給系が異常であるか否かをそれぞれ判定する。状態判断手段(ステップ114)が、供給系異常判定手段による判定結果に基づいて燃料電池システムの状態を判断する。
【0115】
これにより、実際の発電運転または起動運転中の所定期間内において取得した制御指示値および流体の流量または電動モータの回転数のデータに基づいてそれぞれ導出された流量−指示値導出特性と、予め記憶されている流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性とを比較することで、改質用原料、改質水または酸化剤ガスの供給系が異常であると判定することができる。したがって、燃料電池システムの停止状態に異常判定のためだけに専用の時間を設けることなく、通常の発電運転中または起動運転中において異常の判定を的確に行うことができる。また、外乱の影響も含んでいる実際のデータ、またユーザの実際の使用態様におけるデータを使用して異常の判定を行うことができるので、外乱やユーザ負荷の変動に左右されることなく、異常の判定を的確に行うことができる。
【0116】
さらに、上記制御により、異常となる前に異常を判断し的確な処理(メンテナンスや停止運転)が可能となる。各サイトでの電力負荷の差等によらず、上記判断が可能となる。例えば、定格700Wの発電装置の場合に電力負荷が低い(300〜500W程度)家庭においても、300〜500W時のデータを元に既定運転時の状態を演算する。低負荷では圧損も低くデューティ比も低いため、検出がしにくい、誤検知しやすいという課題があるが、上記制御により誤検知等なく、異常となる前に判断し的確な処理が可能となる。
【0117】
また、供給系異常判定手段(ステップ102〜108、ステップ210〜222)は、流量−指示値特性導出手段によって導出された流量−指示値導出特性から、流量または電動モータの回転数のうちの所定値に応じた制御指示値を算出する対応制御指示値算出手段(ステップ210)と、予め記憶されている流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性から所定値に応じて導出された第1の所定範囲内に、対応制御指示値算出手段により算出された対応制御指示値があれば当該供給装置を含む当該供給系は正常である旨を判定し、そうでなければ当該供給装置を含む当該供給系は正常でない旨を判定する第1判定手段(ステップ212,218〜222)と、を備えている。これにより、各供給系の異常判定をより簡便かつ具体的に行うことができ、ひいては燃料電池システムの状態の内容をより的確に把握することができる。
【0118】
また、供給系異常判定手段(ステップ102〜108、ステップ210〜222)は、第1判定手段(ステップ212、218)が当該供給系は正常である旨を判定した場合に、対応制御指示値算出手段により算出された対応制御指示値の変化量が第2の所定範囲内にあれば当該供給装置を含む当該供給系は正常である旨を判定し、そうでなければ当該供給装置を含む当該供給系は正常でない旨を判定する第2判定手段(ステップ214〜222)をさらに備えている。これにより、正常と判定した時点において、近い将来異常となることが予想できるため、その旨を事前に警告することで起こりうる異常に対して早期に対処することができる。
【0119】
また、状態判断手段(ステップ114)は、供給系異常判定手段において供給系のいずれか一について所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には当該供給系が閉塞またはそのおそれがあると判断し、所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には当該供給系が漏れまたはそのおそれがあると判断する。これにより、燃料電池システムの状態の内容をより的確かつ具体的に把握することができる。
【0120】
また、少なくとも改質部23を含む改質系L4をさらに備え、状態判断手段(ステップ114)は、供給系異常判定手段において改質用原料供給系L1および改質水供給系L2に係る各所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には改質系L4が閉塞またはそのおそれがあると判断し、各所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には改質系L4が漏れまたはそのおそれがあると判断する。これにより、燃料電池システムの状態の内容をより的確かつ具体的に把握することができる。
【0121】
また、少なくとも燃料電池24のアノードオフガスを燃焼させてその燃焼ガスにより改質部23を加熱する燃焼部26と、燃焼ガスを排気する排気系L5と、をさらに備え、状態判断手段(ステップ114)は、供給系異常判定手段において供給系の全てについて所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には排気系L5が閉塞またはそのおそれがあると判断し、所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には排気系L5が漏れまたはそのおそれがあると判断する。これにより、燃料電池システムの状態の内容をより的確かつ具体的に把握することができる。
【0122】
また、供給系異常判定手段(ステップ102〜108)において供給系のいずれか一について所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には、警告手段(ステップ122)による警告とともに、燃料電池システムの発電運転または起動運転を継続する運転継続手段(ステップ124)と、供給系異常判定手段(ステップ102〜108)において供給系のいずれか一について所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には、警告手段(ステップ118)による警告とともに、燃料電池システムの停止運転を行う停止運転手段(ステップ120)と、をさらに備えている。これにより、異常判定を行った時点以降において燃料電池システムの状態の内容に応じて適切な運転を行うことができる。
【0123】
また、電動モータで駆動されるように構成され燃料電池24の排熱を回収する貯湯水を循環させる貯湯水供給装置(貯湯水循環ポンプ32a)を少なくとも含む貯湯水系30をさらに備えている。これにより、貯湯水系30に対しても、燃料電池システムの停止状態に異常判定のためだけに専用の時間を設けることなく、通常の発電運転中または起動運転中において異常の判定を的確に行うことができる。また、外乱の影響も含んでいる実際のデータ、またユーザの実際の使用態様におけるデータを使用して異常の判定を行うことができるので、外乱やユーザ負荷の変動に左右されることなく、異常の判定を的確に行うことができる。
【0124】
なお、上述した実施形態においては、供給系異常判定手段は、予め記憶されている流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性と、流量−指示値特性導出手段により導出された流量−指示値導出特性と、を比較し、その相違が第3の所定範囲内であれば当該供給装置を含む当該供給系は正常である旨を判定し、そうでなければ当該供給装置を含む当該供給系は正常でない旨を判定する第3判定手段を備えるようにしてもよい。これにより、各供給系の異常判定をより簡便かつ具体的に行うことができ、ひいては燃料電池システムの状態の内容をより的確に把握することができる。
【0125】
なお、例えば、第3の所定範囲は、図6に示す流量−指示値基準特性を基準にして上下方向に所定の幅で規定される範囲に設定するようにすればよい。例えば流量が所定流量Q1である場合には、上下方向に所定の幅で規定される範囲は、上限がAUであり下限がALである第1の所定範囲に対応するものである。よって、第1の所定範囲と同様に、第3の所定範囲は、供給装置であるポンプ、ブロワの装置毎の性能の差、流量センサの公差(器差)、システム毎の圧損の差などを考慮して決定されており、これらの差、公差に起因して誤検知が発生しないように設定されている。
【0126】
このとき、流量−指示値導出特性は流量−指示値基準特性の傾きと同一である場合もあれば、異なる場合もある。同一である場合には、流量−指示値導出特性が前述した流量−指示値基準特性を基準にして上下方向に所定の幅で規定される範囲内にあれば、当該供給装置を含む当該供給系は正常である旨を判定するようにすればよい。一方、異なる場合には、流量が所定範囲(例えば図6のQ1を中心に所定幅をもつ範囲)であるときに、その範囲内において、流量−指示値導出特性が前述した流量−指示値基準特性を基準にして上下方向に所定の幅で規定される範囲内にあれば、当該供給装置を含む当該供給系は正常である旨を判定するようにすればよい。
【0127】
また、上述した実施形態において、対応制御指示値Aの絶対値に基づく判定を省略するようにしてもよい。この場合、図4に示すフローチャートのステップ212の処理を削除すればよい。
【0128】
また、上述した実施形態において、流量と制御指示値との相関関係に代えて、ポンプまたはブロワの回転数(または駆動用電動モータの回転数)と制御指示値との相関関係を用いるようにしてもよい。これによれば、流量センサがない場合でも、各供給系の異常判定をすることができる。
【0129】
また、上述した実施形態においては、燃料電池は固体酸化物形燃料電池であったが、本発明を高分子電解質形燃料電池に適用するようにしてもよい。この場合、燃料電池システムは、燃料電池、改質器、排熱回収システム(上述したものと同様なものである)を備えている。燃料電池は、燃料ガス(水素ガス)および酸化剤ガス(酸素を含む空気)が供給されて水素と酸素の化学反応により発電して直流電圧(例えば40V)を出力するものである。
【0130】
改質器は、燃料(改質用燃料)を水蒸気改質し、水素リッチな改質ガスを燃料電池に供給するものであり、バーナ(燃焼部)、改質部、一酸化炭素シフト反応部(以下、COシフト部という)および一酸化炭素選択酸化反応部(以下、CO選択酸化部という)から構成されている。燃料としては天然ガス、LPG、灯油、ガソリン、メタノールなどがある。
【0131】
バーナは、起動運転時に外部から燃焼用燃料および燃焼用空気が供給され、または定常運転時に燃料電池の燃料極からアノードオフガス(燃料電池に供給され使用されずに排出された改質ガス)が供給され、供給された各可燃性ガスを燃焼して燃焼ガスを改質部に導出するものである。
【0132】
改質部は、外部から供給された燃料に蒸発器からの水蒸気(改質水)を混合した混合ガスを改質部に充填された触媒により改質して水素ガスと一酸化炭素ガスを生成している(いわゆる水蒸気改質反応)。これと同時に、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気を水素ガスと二酸化炭素とに変成している(いわゆる一酸化炭素シフト反応)。これら生成されたガス(いわゆる改質ガス)はCOシフト部に導出される。
【0133】
COシフト部は、この改質ガスに含まれる一酸化炭素と水蒸気をその内部に充填された触媒により反応させて水素ガスと二酸化炭素ガスとに変成している。これにより、改質ガスは一酸化炭素濃度が低減されてCO選択酸化部に導出される。
【0134】
CO選択酸化部は、改質ガスに残留している一酸化炭素と外部からさらに供給されたCO浄化用の空気とをその内部に充填された触媒により反応させて二酸化炭素を生成している。これにより、改質ガスは一酸化炭素濃度がさらに低減されて(10ppm以下)燃料電池の燃料極に導出される。
【符号の説明】
【0135】
11…筐体、11a…第1排気口、11b…空気導出口、11c…空気導入口、12…仕切部材、12a…空気導入口、13…水タンク、14…純水器、15…換気用空気ブロワ、20…燃料電池モジュール、21…ケーシング、21a…導出口、22…蒸発部、23…改質部、24…燃料電池、24a…セル、24b…燃料流路、24c…空気流路、24d…温度センサ、25…マニホールド、30…排熱回収システム(貯湯水系)、31…貯湯槽、32…貯湯水循環ライン、32…貯湯水循環ポンプ、32b,32c…温度センサ、33…熱交換器、41a…改質水ポンプ、41b…流量センサ、42c…流量センサ、42e…原料ポンプ、44a…カソードエアブロワ、44b…流量センサ、50…インバータ装置、51…系統電源、52…電源ライン、53…外部電力負荷、60…制御装置、L1…改質用原料供給系、L2…改質水供給系、L3…カソードエア供給系(酸化剤ガス供給系)、L4…改質系、L5…排気系、R1…第1室、R2…第2室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と酸化剤ガスとにより発電する燃料電池と、
改質用原料と改質水とにより前記燃料を生成する改質部と、
電動モータで駆動されるように構成され前記改質用原料を供給する改質用原料供給装置を少なくとも含む改質用原料供給系と、
電動モータで駆動されるように構成され前記改質水を供給する改質水供給装置を少なくとも含む改質水供給系と、
電動モータで駆動されるように構成され前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給装置を少なくとも含む酸化剤ガス供給系と、
前記各供給装置の前記各流体の供給量がそれぞれ制御目標値となるような制御を前記各供給装置に対して行う制御装置と、
を備えた燃料電池システムであって、
前記制御装置は、
前記制御装置からの前記各供給装置に対する制御指示値と当該供給装置が供給する流体の流量または当該供給装置の電動モータの回転数との相関関係を示すマップまたは演算式を、実際の発電運転または起動運転中の所定期間内において取得した前記制御指示値および前記流体の流量または前記電動モータの回転数のデータに基づいてそれぞれ導出する流量−指示値特性導出手段と、
予め記憶されている前記流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性と、前記流量−指示値特性導出手段により導出された流量−指示値導出特性と、を比較し、その比較結果に基づいて当該供給装置を含む当該供給系が異常であるか否かをそれぞれ判定する供給系異常判定手段と、
前記供給系異常判定手段による判定結果に基づいて前記燃料電池システムの状態を判断する状態判断手段と、
前記状態判断手段により判断された状態が異常状態を表す場合には、その旨を警告する警告手段と、
を備えている燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1において、前記供給系異常判定手段は、
前記流量−指示値特性導出手段によって導出された流量−指示値導出特性から、前記流量または前記電動モータの回転数のうちの所定値に応じた前記制御指示値を算出する対応制御指示値算出手段と、
予め記憶されている前記流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性から前記所定値に応じて導出された第1の所定範囲内に、前記対応制御指示値算出手段により算出された対応制御指示値があれば当該供給装置を含む当該供給系は正常である旨を判定し、そうでなければ当該供給装置を含む当該供給系は正常でない旨を判定する第1判定手段と、
を備えている燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2において、前記供給系異常判定手段は、前記第1判定手段が当該供給系は正常である旨を判定した場合に、前記対応制御指示値算出手段により算出された対応制御指示値の変化量が第2の所定範囲内にあれば当該供給装置を含む当該供給系は正常である旨を判定し、そうでなければ当該供給装置を含む当該供給系は正常でない旨を判定する第2判定手段をさらに備えている燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1において、前記供給系異常判定手段は、予め記憶されている前記流量−指示値特性の基準である流量−指示値基準特性と、前記流量−指示値特性導出手段により導出された流量−指示値導出特性と、を比較し、その相違が第3の所定範囲内であれば当該供給装置を含む当該供給系は正常である旨を判定し、そうでなければ当該供給装置を含む当該供給系は正常でない旨を判定する第3判定手段を備えている燃料電池システム。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4の何れか一項において、前記状態判断手段は、前記供給系異常判定手段において前記供給系のいずれか一について前記所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には当該供給系が閉塞またはそのおそれがあると判断し、前記所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には当該供給系が漏れまたはそのおそれがあると判断する燃料電池システム。
【請求項6】
請求項2乃至請求項4の何れか一項において、少なくとも前記改質部を含む改質系をさらに備え、
前記状態判断手段は、前記供給系異常判定手段において前記改質用原料供給系および前記改質水供給系に係る前記各所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には前記改質系が閉塞またはそのおそれがあると判断し、前記各所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には前記改質系が漏れまたはそのおそれがあると判断する燃料電池システム。
【請求項7】
請求項2乃至請求項4の何れか一項において、少なくとも前記燃料電池のアノードオフガスを燃焼させてその燃焼ガスにより前記改質部を加熱する燃焼部と、
前記燃焼ガスを排気する排気系と、をさらに備え、
前記状態判断手段は、前記供給系異常判定手段において前記供給系の全てについて前記所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には前記排気系が閉塞またはそのおそれがあると判断し、前記所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には前記排気系が漏れまたはそのおそれがあると判断する燃料電池システム。
【請求項8】
請求項2乃至請求項7の何れか一項において、前記供給系異常判定手段において前記供給系のいずれか一について前記所定範囲の上限を超えた異常であると判定された場合には、前記警告手段による警告とともに、前記燃料電池システムの発電運転または起動運転を継続する運転継続手段と、
前記供給系異常判定手段において前記供給系のいずれか一について前記所定範囲の下限を超えた異常であると判定された場合には、前記警告手段による警告とともに、前記燃料電池システムの停止運転を行う停止運転手段と、
をさらに備えている燃料電池システム。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5の何れか一項において、電動モータで駆動されるように構成され前記燃料電池の排熱を回収する貯湯水を循環させる貯湯水供給装置を少なくとも含む貯湯水系をさらに備えている燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−30303(P2013−30303A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164151(P2011−164151)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】