説明

燃料電池システム

【課題】水不足をより精度よく検知することによって、未改質のガスが大量にセルに供給されて燃料電池システムの性能を著しく低下させてしまうことを防止する。。
【解決手段】需要電力に応じた可変の発電電力を生成する固体酸化物型燃料電池であって、
供給された燃料により発電する燃料電池モジュール2と、
燃料流量調整ユニット38と、空気流量調整ユニット44および45と、水流量調整ユニット28と、改質器20と、検知閾値に基づいて上記改質用の水の供給不足を検知する水不足判定手段とを有し、上記水不足判定手段の検知閾値は、上記燃料供給手段に基づいて算出された上記燃料の目標流量により決定された上記水の目標流量に対して所定量だけ少ない量に設定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関し、特に、燃料を水蒸気改質する改質器を備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスを水蒸気と反応させて水素ガスを生成する水蒸気改質を行う改質器を備えた燃料電池(固体電解質形燃料電池:SOFC)では、蒸発器で水が気化され、改質器へ供給されるように構成されている。この水蒸気改質に用いられる水の供給量は、毎分数ミリリットルといった僅かな量であるため、厳密な流量制御が求められる。特に水が不足状態になってしまうと、改質触媒表面に炭素が析出し改質器を劣化させるだけではなく、未改質のガスが大量にセルに供給され、燃料電池システムの性能を著しく低下させてしまうという問題があった。
【0003】
この問題に対し、特開2008−135270号公報(特許文献1)では、燃料電池システムの運転制御において、改質反応に用いる水が所定流量を下回ったときに、水の不足と判定し、改質器の故障を防止する制御を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−135270号公報
【特許文献2】特開2010−205670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような制御を行う場合には、改質する量に応じて必要な最低限の水の量に関わらず予め定められた一定の検知閾流量を下回ったときに水の不足を検知するため、改質する量が少なく水の量がそもそも少ない場合も、改質する量が多く、水が多く必要な場合も、同じ判定基準で判断をすることになる。例えば、一定の検知閾流量よりも多く流れるが、改質に必要な水よりも少ない範囲の流量しか流れることができない状態に陥ったときには、水不足を検知することなく、実際には必要な水量よりも少ない流量で運転を続けることになるので、水と反応することができなかった炭素が改質触媒表面に析出して改質器の改質性能が劣化し、改質しきれなかった未改質のガスが大量にセルに供給されることによってセル内部の酸化膨張による膜剥離が発生し、燃料電池システムの性能を著しく低下させてしまう虞があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、水不足をより精度よく検知することによって、未改質のガスが大量にセルに供給されて燃料電池システムの性能を著しく低下させてしまうことを防止することが可能な燃料電池システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、需要電力に応じた可変の発電電力を生成する固体酸化物型燃料電池であって、供給された燃料により発電するモジュールと、この燃料電池モジュールに燃料を供給する燃料供給手段と、上記燃料電池モジュールに発電用の酸化剤ガスを供給する発電用酸化剤ガス供給手段と、上記燃料と酸化剤ガスや水蒸気を化学反応させる改質反応によって水素を生成する改質器と、上記改質器に改質用の水を供給する水供給手段と、検知閾値に基づいて上記改質用の水の供給不足を検知する水不足判定手段とを有し、上記水不足判定手段の検知閾値は上記燃料の目標流量に基づいて算出された上記水の目標流量に対して所定量だけ少ない量に設定することを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、水不足をより精度よく検知することによって、未改質のガスが大量にセルに供給されて燃料電池システムの性能を著しく低下させてしまうことを防止することが可能となる。

【0009】
本発明において、好ましくは、さらに上記燃料電池モジュール内の温度を検知する温度検出手段を備え、上記所定量は上記燃料電池モジュールの温度に応じて調整される可変値であることを特徴とする。
【0010】
閾値算出の際に考慮する所定量を上記燃料電池モジュールの温度に応じて調整される可変値としたので、より厳密に水の流量を管理でき、燃料電池システムの性能低下を防止することが可能となる。
【0011】
本発明において、好ましくは、さらに上記所定量は、上記燃料電池モジュールの温度が高いほど大きくなり、低いほど小さくなることを特徴としている。
【0012】
所定量は、上記燃料電池モジュールの温度が高いほど大きくなり、低いほど小さくなることを特徴としているため、改質器温度が低い側においては水不足判定閾値を改質率低下分だけ厳しく設定することが出来、燃料電池モジュールの性能低下を抑制することができる。また、温度が高い側においては、閾値を改質率上昇分だけ閾値管理を緩和することによって不要な水不足判定を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水蒸気改質を行う改質器を備えた燃料電池システムにおいて、水不足をより精度よく検知することによって、未改質のガスが大量にセルに供給されて燃料電池システムの性能を著しく低下させてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による燃料電池装置を示す全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態による燃料電池装置の燃料電池モジュールを示す正面断面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿った断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による燃料電池装置の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による燃料電池装置の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態による燃料電池装置を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態による燃料電池装置の起動時の動作を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の一実施形態による燃料電池装置の停止時の動作を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の第1実施形態の固体酸化物型燃料電池における出力電流と燃料供給量の関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第1実施形態の固体酸化物型燃料電池における出力電流と、供給された燃料により発生する熱量の関係を示すグラフである。
【図11】需要電力の変化と、燃料供給量、及び燃料電池モジュールから実際に取り出される電流の関係を模式的に示したグラフである。
【図12】発電用空気供給量、水供給量、燃料供給量、及び燃料電池モジュールから実際に取り出される電流の関係の一例を示したグラフである。
【図13】検出温度Tdに基づいて発電用空気供給量、水供給量、及び燃料供給量を決定する手順を示すフローチャートである。
【図14】発電電流に対する適正な燃料電池セルスタックの温度を示すグラフである。
【図15】積算値に応じて決定される燃料利用率を示すグラフである。
【図16】各発電電流に対して決定され得る燃料利用率の値の範囲を示すグラフである。
【図17】積算値に応じて決定される空気利用率を示すグラフである。
【図18】各発電電流に対して決定され得る空気利用率の値の範囲を示すグラフである。
【図19】決定された空気利用率に対して水供給量を決定するためのグラフである。
【図20】発電電流に対する適正な燃料電池モジュールの発電電圧を示すグラフである。
【図21】図13のステップS38において呼び出される、水流量不足を判定するためのサブルーチンのフローチャートである。
【図22】改質器温度と改質率の関係を示すグラフである。
【図23】発電電流と改質器温度関係を示すグラフである。
【図24】発電電流とS/Cの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
【0016】
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して密封空間8が形成されている。この密閉空間8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
【0017】
燃料電池モジュール2の密封空間8の上述した発電室10の上方には、燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。
また、この燃焼室18の上方には、燃料ガスを改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、改質器20の熱を受けて空気を加熱し、改質器20の温度低下を抑制するための空気用熱交換器22が配置されている。
【0018】
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤である空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
【0019】
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
【0020】
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールの内部構造を説明する。図2は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿って断面図である。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内の密閉空間8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
【0021】
改質器20は、その上流端側に純水を導入するための純水導入管60と改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が取り付けられ、また、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20aと改質部20bを形成され、これらの蒸発部20aと改質部20bには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
【0022】
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。
【0023】
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
【0024】
次に、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。この空気用熱交換器22は、上流側に空気集約室70、下流側に2つの空気分配室72を備え、これらの空気集約室70と空気分配室72は、6個の空気流路管74により接続されている。ここで、図3に示すように、3個の空気流路管74が一組(74a,74b,74c,74d,74e,74f)となっており、空気集約室70内の空気が各組の空気流路管74からそれぞれの空気分配室72へ流入する。
【0025】
空気用熱交換器22の6個の空気流路管74内を流れる空気は、燃焼室18で燃焼して上昇する排気ガスにより予熱される。
空気分配室72のそれぞれには、空気導入管76が接続され、この空気導入管76は、下方に延び、その下端側が、発電室10の下方空間に連通し、発電室10に余熱された空気を導入する。
【0026】
次に、マニホールド66の下方には、排気ガス室78が形成されている。また、図3に示すように、ハウジング6の長手方向に沿った面である前面6aと後面6bの内側には、上下方向に延びる排気ガス通路80が形成され、この排気ガス室通路80の上端側は、空気用熱交換器22が配置された空間と連通し、下端側は、排気ガス室78と連通している。また、排気ガス室78の下面のほぼ中央には、排気ガス排出管82が接続され、この排気ガス排出管82の下流端は、図1に示す上述した温水製造装置50に接続されている。
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
【0027】
次に図4により燃料電池セルユニット16について説明する。図4は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図4に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
【0028】
燃料電池セル16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
【0029】
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
【0030】
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0031】
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0032】
次に図5により燃料電池セルスタック14について説明する。図5は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の下支持板68及び上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴68a及び100aがそれぞれ形成されている。
【0033】
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面全体と電気的に接続される空気極用接続部102bとにより一体的に形成されている。空気極用接続部102bは、外側電極層92の表面を上下方向に延びる鉛直部102cと、この鉛直部102cから外側電極層92の表面に沿って水平方向に延びる多数の水平部102dとから形成されている。また、燃料極用接続部102aは、空気極用接続部102bの鉛直部102cから燃料電池セルユニット16の上下方向に位置する内側電極端子86に向って斜め上方又は斜め下方に向って直線的に延びている。
【0034】
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図5では左端の奥側及び手前側)に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104(図示せず)に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
【0035】
次に図6により本実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。図6は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
図6に示すように、固体酸化物型燃料電池1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
【0036】
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
【0037】
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
【0038】
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
【0039】
発電室温度センサ142は、図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体酸化物型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
【0040】
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
【0041】
次に図7により本実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)による起動時の動作を説明する。図7は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の起動時の動作を示すタイムチャートである。
最初は、燃料電池モジュール2を温めるために、無負荷状態で、即ち、燃料電池モジュール2を含む回路を開いた状態で、運転を開始する。このとき、回路に電流が流れないので、燃料電池モジュール2は発電を行わない。
【0042】
先ず、改質用空気流量調整ユニット44から改質用空気を第1ヒータ46を経由して燃料電池モジュール2の改質器20へ供給する。また、同時に、発電用空気流量調整ユニット45から発電用空気を第2ヒータ48を経由して燃料電池モジュール2の空気用熱交換器22へ供給し、この発電用空気が、発電室10及び燃焼室18に到達する。
この直ぐ後、燃料流量調整ユニット38からも燃料ガスが供給され、改質用空気が混合された燃料ガスが、改質器20及び燃料電池セルスタック14、燃料電池セルユニット16を通過して、燃焼室18に到達する。
【0043】
次に、点火装置83により着火して、燃焼室18にある燃料ガスと空気(改質用空気及び発電用空気)とを燃焼させる。この燃料ガスと空気との燃焼により排気ガスが生じ、この排気ガスにより、発電室10が暖められ、また、排気ガスが燃料電池モジュール2の密封空間8内を上昇する際、改質器20内の改質用空気を含む燃料ガスを暖めると共に、空気熱交換器22内の発電用空気も暖める。
【0044】
このとき、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、改質用空気が混合された燃料ガスが改質器20に供給されているので、改質器20において、式(1)に示す部分酸化改質反応POXが進行する。この部分酸化改質反応POXは、発熱反応であるので、起動性が良好となる。また、この昇温した燃料ガスが燃料ガス供給管64により燃料電池セルスタック14の下方に供給され、これにより、燃料電池セルスタック14が下方から加熱され、また、燃焼室18も燃料ガスと空気が燃焼して昇温されているので、燃料電池セルスタック14は、上方からも加熱され、この結果、燃料電池セルスタック14は、上下方向において、ほぼ均等に昇温可能となっている。この部分酸化改質反応POXが進行しても、燃焼室18では継続して燃料ガスと空気との燃焼反応が持続される。
【0045】
+xO → aCO+bCO+cH (1)
【0046】
部分酸化改質反応POXの開始後、改質器温度センサ148により改質器20が所定温度(例えば、600℃)になったことを検知したとき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、燃料ガスと改質用空気と水蒸気とを予め混合したガスを改質器20に供給する。このとき、改質器20においては、上述した部分酸化改質反応POXと後述する水蒸気改質反応SRとが併用されたオートサーマル改質反応ATRが進行する。このオートサーマル改質反応ATRは、熱的に内部バランスが取れるので、改質器20内では熱的に自立した状態で反応が進行する。即ち、酸素(空気)が多い場合には部分酸化改質反応POXによる発熱が支配的となり、水蒸気が多い場合には水蒸気改質反応SRによる吸熱反応が支配的となる。この段階では、既に起動の初期段階は過ぎており、発電室10内がある程度の温度まで昇温されているので、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を引き起こすことはない。また、オートサーマル改質反応ATRが進行中も、燃焼室18では燃焼反応が継続して行われている。
【0047】
式(2)に示すオートサーマル改質反応ATRの開始後、改質器温度センサ146により改質器20が所定温度(例えば、700℃)になったことを検知したとき、改質用空気流量調整ユニット44による改質用空気の供給を停止すると共に、水流量調整ユニット28による水蒸気の供給を増加させる。これにより、改質器20には、空気を含まず燃料ガスと水蒸気のみを含むガスが供給され、改質器20において、式(3)の水蒸気改質反応SRが進行する。
【0048】
+xO+yHO → aCO+bCO+cH (2)
+xHO → aCO+bCO+cH (3)
【0049】
この水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるので、燃焼室18からの燃焼熱と熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、燃料電池モジュール2の起動の最終段階であるため、発電室10内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応が進行しても、発電室10が大幅な温度低下を招くこともない。また、水蒸気改質反応SRが進行しても、燃焼室18では継続して燃焼反応が進行する。
【0050】
このようにして、燃料電池モジュール2は、点火装置83により点火した後、部分酸化改質反応POX、オートサーマル改質反応ATR、水蒸気改質反応SRが、順次進行することにより、発電室10内の温度が徐々に上昇する。次に、発電室10内及び燃料電池セル84の温度が燃料電池モジュール2を安定的に作動させる定格温度よりも低い所定の発電温度に達したら、燃料電池モジュール2を含む回路を閉じ、燃料電池モジュール2による発電を開始し、それにより、回路に電流が流れる。燃料電池モジュール2の発電により、燃料電池セル84自体も発熱し、燃料電池セル84の温度も上昇する。この結果、燃料電池モジュール2を作動させる定格定格温度、例えば、600℃〜800℃になる。
【0051】
この後、定格温度を維持するために、燃料電池セル84で消費される燃料ガス及び空気の量よりも多い燃料ガス及び空気を供給し、燃焼室18での燃焼を継続させる。なお、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応SRで発電が進行する。
【0052】
次に、図8により本実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を説明する。図8は、本実施形態により固体酸化物型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を示すタイムチャートである。
図8に示すように、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、先ず、燃料流量調整ユニット38及び水流量調整ユニット28を操作して、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させる。
【0053】
また、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させると同時に、改質用空気流量調整ユニット44による発電用空気の燃料電池モジュール2内への供給量を増大させて、燃料電池セル集合体12及び改質器20を空気により冷却し、これらの温度を低下させる。その後、改質器20の温度が所定温度、例えば、400℃まで低下したとき、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給を停止し、改質器20の水蒸気改質反応SRを終了する。この発電用空気の供給は、改質器20の温度が所定温度、例えば、200℃まで低下するまで、継続し、この所定温度となったとき、発電用空気流量調整ユニット45からの発電用空気の供給を停止する。
【0054】
このように、本実施形態においては、燃料電池モジュール2の運転停止を行うとき、改質器20による水蒸気改質反応SRと発電用空気による冷却とを併用しているので、比較的短時間に、燃料電池モジュールの運転を停止させることができる。
【0055】
次に、図9乃至図23を参照して、本発明の第1実施形態による固体酸化物型燃料電池1の制御を説明する。
図9は、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1における出力電流と燃料供給量の関係を示すグラフである。図10は、固体酸化物型燃料電池1における出力電流と、供給された燃料により発生する熱量の関係を示すグラフである。
【0056】
まず、図9の実線に示すように、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1は、需要電力に応じて、出力を定格出力電力である700W(出力電流7A)以下で可変できるように構成されている。所要の電力を出力するために必要とされる燃料供給量(L/min)は、図9に実線で示すように設定されている。なお、図9に示す燃料供給量は、後述する、断熱材7に蓄積された熱量の利用を行わない場合のものである。制御手段である制御部110は、需要電力検出手段である電力状態検出センサ126によって検出された需要電力と、推定された蓄熱量に応じて燃料供給量を決定し、これに基づいて燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38を制御するように構成されている。
【0057】
発電に必要な燃料の量は出力電力(出力電流)に比例するが、図9に実線で示すように、設定されている燃料供給量は、出力電流に比例していない。これは、出力電力に比例して燃料供給量を低下させてしまうと、燃料電池モジュール2内の燃料電池セルユニット16を発電可能な温度に維持することができなくなるためである。このため、図9に示す例では、出力電流7A付近の大発電電力時には燃料利用率約70%に設定され、出力電流2A程度の小発電電力時には燃料利用率約50%に設定されている。このように、小発電電力領域における燃料利用率を低下させ、発電に利用されずに残った燃料を燃焼させて改質器20等の加熱に使用することにより、燃料電池セルユニット16の温度低下を抑制し、燃料電池モジュール2内を発電可能な温度に維持している。
【0058】
しかしながら、燃料利用率を低下させることにより、発電に寄与しない燃料を増加させることになるので、小発電電力領域における固体酸化物型燃料電池1のエネルギー効率が低下する。本実施形態の固体酸化物型燃料電池1においては、制御部110に内蔵された蓄熱量推定手段110a(図6)により蓄熱量を推定し、推定された蓄熱量が大きい場合には、燃料利用率を高くした残存熱量利用制御を実行する。残存熱量利用制御により、図9に実線で示す燃料供給量が変更・補正され、図9の破線に一例を示すように減少される。これにより、小発電電力領域における燃料利用率が上昇され、固体酸化物型燃料電池1のエネルギー効率が向上される。
【0059】
図10は、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1において、残存熱量の利用を行わずに燃料を供給した場合における出力電流と、供給された燃料の熱量との関係を模式的に示すグラフである。図10に一点鎖線で示すように、燃料電池モジュール2を熱的に自立させ、安定に運転するために必要な熱量は、出力電流の増加と共に単調に増加する。図10に実線で示すグラフは、残存熱量の利用を行わずに燃料が供給された場合における熱量を示している。本実施形態では、中発電電力に相当する出力電流5Aよりも低い領域では、一点鎖線で示す必要な熱量と、実線で示す基本的な燃料供給量の熱量がほぼ一致している。
【0060】
さらに、出力電流5Aよりも高い領域では、実線で示す基本的な燃料供給量の熱量は、熱自立するために最低限必要な一点鎖線で示す熱量を上回っている。この実線と破線の間の余剰熱量は、燃料電池モジュール2に設けられた蓄熱材である断熱材7に蓄積される。また、固体酸化物型燃料電池1からの出力電流と、この電流を定常的に出力している場合における燃料電池モジュール2内の燃料電池セルユニット16の温度とは相関があり、出力電流を大きくするためには燃料電池セルユニット16の温度を高くする必要があることから、出力電流が大きい状態では燃料電池セルユニット16の温度は高い状態にある。本実施形態の固体酸化物型燃料電池1では、出力電流5A以上の場合において、より多くの熱量が断熱材7に蓄積される。
【0061】
本実施形態においては、後述するように、断熱材7に利用可能な熱量が蓄積されている場合には、燃料供給量を減少させるように補正して、燃料利用率を向上させる。一方、燃料供給量を減少させたことにより不足する熱量は、燃料電池モジュール2の断熱材7に蓄積された熱量を利用して補充している。なお、本実施形態においては、断熱材7の熱容量が非常に大きいため、燃料電池モジュール2が大発電電力で所定時間運転された後、発電電力が小さい領域で運転される場合には、断熱材7に蓄積された熱量を2時間以上に亘って利用することができ、この間の燃料供給量を減じる補正を行うことにより燃料利用率が向上される。
【0062】
次に、図11及び図12を参照して、負荷追従に伴う断熱材7への熱量の蓄積を説明する。
図11は、需要電力の変化と、燃料供給量、及び燃料電池モジュール2から実際に取り出される電流の関係を模式的に示したグラフである。図12は、発電用空気供給量、水供給量、燃料供給量、及び燃料電池モジュール2から実際に取り出される電流の関係の一例を示したグラフである。
【0063】
図11に示すように、燃料電池モジュール2は、図11の最上段に示す需要電力に応じた電力を生成できるように制御される。制御部110は、需要電力に基づいて、燃料電池モジュール2が生成すべき目標の電流である燃料供給電流値Ifを、図11の2段目のグラフに示すように設定する。燃料供給電流値Ifは、概ね需要電力の変化に追従するように設定されるが、燃料電池モジュール2の応答速度は需要電力の変化に対して極めて緩慢であるため、需要電力の短周期の急激な変化には追従せず、需要電力に緩やかに追従するように設定される。また、需要電力が固体酸化物型燃料電池の最大定格電力を超えた場合には、燃料供給電流値Ifは最大定格電力に対応する電流値まで追従し、それ以上の電流値に設定されることはない。
【0064】
制御部110は、図11の3段目のグラフに示すように、燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38を制御して、燃料供給電流値Ifに対応する電力が生成できる流量の燃料供給量Frを燃料電池モジュール2に供給する。なお、燃料供給量に対する実際に発電に使用される燃料の割合である燃料利用率が一定であるとすれば、燃料供給電流値Ifと燃料供給量Frは比例する。図11のグラフは、燃料供給電流値Ifと燃料供給量Frが比例するものとして描かれているが、後述するように、実際には本実施形態においても燃料利用率は一定ではない。
【0065】
さらに、図11の最下段のグラフに示すように、制御部110は、燃料電池モジュール2から取り出すことができる電流値である取出可能電流Iinvをインバータ54に対して指示する信号を出力する。インバータ54は、時々刻々急激に変化する需要電力に応じ、取出可能電流Iinvの範囲内で燃料電池モジュール2から電流(電力)を取り出す。需要電力が取出可能電流Iinvを上回る部分については、系統電力から供給される。ここで、図11に示すように、制御部110がインバータ54に指示する取出可能電流Iinvは、電流が増加傾向にある場合、燃料供給量Frの変化に対して所定時間遅れて変化するように設定される。例えば、図11の時刻t10においては、燃料供給電流値If及び燃料供給量Frが上昇を始めた後、遅れて、取出可能電流Iinvの増加が開始される。また、時刻t12においても、燃料供給電流値If及び燃料供給量Frの増加の後、遅れて、取出可能電流Iinvの増加が開始される。このように、燃料供給量Frを増加させた後、実際に燃料電池モジュール2から取り出す電力を増加させるタイミングを遅らせることにより、燃料電池モジュール2に供給された燃料が改質器20等を通って燃料電池セルスタック14に到達するまでの時間遅れや、燃料が電池セルスタック14に到達した後、実際の発電反応が可能になるまでの時間遅れに対処している。これにより、各燃料電池セルユニット16において燃料枯れが発生し、燃料電池セルユニット16が損傷されるのを確実に防止している。
【0066】
図12は、発電用空気供給量、水供給量、及び燃料供給量の変化と、取出可能電流Iinvの関係をより詳細に示したものである。なお、図12に示されている発電用空気供給量、水供給量、及び燃料供給量のグラフは、何れも、各供給量に対応する電流値に換算されている。即ち、供給された発電用空気、水、及び燃料が余ることなく全て発電に使用される供給量に設定されているとすれば、各供給量のグラフが取出可能電流Iinvのグラフと重なるように換算されている。従って、各供給量のグラフの、取出可能電流Iinvに対するずれ量は、各供給量の余剰分に対応する。発電に使用されずに残った残余燃料は、燃料電池セルスタック14上方の燃焼部である燃焼室18において燃焼され、燃料電池モジュール2内の加熱に利用される。
【0067】
図12に示すように、発電用空気供給量、水供給量、及び燃料供給量は、常に、取出可能電流Iinvを上回っており、各供給量によって生成可能な電流を上回る電流が燃料電池モジュール2から取り出され、燃料枯れ、空気枯れ等によって燃料電池セルユニット16が損傷されるのを防止している。また、取出可能電流Iinvを上回って供給されている燃料供給量に対し、水供給量は、供給された燃料の全てを水蒸気改質可能な供給量に設定されている。即ち、供給された燃料の全てが水蒸気改質されるように、水供給量は、水蒸気改質に必要な水蒸気の量と、燃料中に含まれる炭素の量との比であるS/Cを考慮して設定されている。これにより、改質器内における炭素析出を防止している。また、需要電力の増加に伴って取出可能電流Iinvも増加傾向にある、図12の領域A、領域Cにおいては、取出可能電流Iinvが横這いである領域Bよりも、燃料供給量等の余裕量が大きく(燃料利用率が低く)設定されている。また、発電電力を増加させる場合には、制御部110に内蔵された電力取出遅延手段(図示せず)により、燃料電池モジュール2に供給する燃料供給量を増加させた後、遅れて、燃料電池モジュール2から出力させる発電電力が増加される。即ち、需要電力の変化に応じて燃料供給量が変化された後、遅れて、燃料電池モジュール2から実際に出力させる電力が変化される。さらに、需要電力の低下に応じて取出可能電流Iinvを急激に低下させた場合(領域C、領域Dの初期)には、各供給量は、取出可能電流Iinvの低下よりも所定時間遅れて低下される。従って、取出可能電流Iinvが急激に低下した後の所定時間の間には、非常に多くの残余燃料が発生する。このような取出可能電流Iinvの急激な低下は、需要電力が急激に低下した場合において、電流の逆潮流を防止するために行われる。このように、発電電力を増加させる際、及び発電電力を低下させる際には、発電電力が一定である場合よりも多くの残余燃料が発生し、この残余燃料が燃料電池モジュール2の加熱に使用されることになる。このため、燃料電池モジュール2を高発電電力で長時間運転した場合ばかりでなく、発電電力を頻繁に増減させた場合にも燃料電池モジュール2は強く加熱され、断熱材7に多くの熱量が蓄積される。
【0068】
本実施形態の固体酸化物型燃料電池においては、高発電電力で長時間運転した後、発電電力が少なくなった場合に蓄熱を利用するばかりでなく、発電電力の増減等によって蓄積されつつある熱量が、状況に応じて逐次利用される。
【0069】
次に、図13乃至20を参照して、検出温度Tdに基づいて発電用空気供給量、水供給量、及び燃料供給量を決定する手順を説明する。
図13は、検出温度Tdに基づいて発電用空気供給量、水供給量、及び燃料供給量を決定する手順を示すフローチャートである。図14は発電電流に対する適正な燃料電池セルスタック14の温度を示すグラフである。図15は積算値に応じて決定される燃料利用率を示すグラフである。図16は、各発電電流に対して決定され得る燃料利用率の値の範囲を示すグラフである。図17は積算値に応じて決定される空気利用率を示すグラフである。図18は、各発電電流に対して決定され得る空気利用率の値の範囲を示すグラフである。図19は、決定された空気利用率に対して水供給量を決定するためのグラフである。図20は、発電電流に対する適正な燃料電池モジュール2の発電電圧を示すグラフである。
【0070】
図14に一点鎖線で示すように、本実施形態においては、燃料電池モジュール2によって生成すべき電流に対して、適正な燃料電池セルスタック14の温度Ts(I)が規定されている。制御部110は、燃料電池セルスタック14の温度が、適正な温度Ts(I)に近づくように、燃料供給量等を制御する。即ち、制御部110は、概略的には、発電電流に対して燃料電池セルスタック14の温度が高い場合(燃料電池セルスタック14の温度が図14の一点鎖線よりも上にある場合)には、燃料利用率を高め、断熱材7等に蓄積されている熱量を積極的に消費して、燃料電池モジュール2内の温度を低下させる。逆に、発電電流に対して燃料電池セルスタック14の温度が低い場合には、燃料利用率を低下させ、燃料電池モジュール2内の温度が低下しないようにする。具体的には、燃料利用率は単純な検出温度Tdのみに基づいて決定されるのではなく、検出温度Td等に基づいて決定される加減算値を積算することにより蓄熱を反映した量を計算し、この量に基づいて燃料利用率等が決定される。この加減算値を積算することによる蓄熱量の推定値は、制御部に内蔵された蓄熱量推定手段110aにより計算される。
【0071】
図13に示すフローチャートは、温度検出手段である発電室温度センサ142によって検出された検出温度Td等に基づいて発電用空気供給量、水供給量、及び燃料供給量を決定するものであり、所定の時間間隔で実行される。
【0072】
まず、図13のステップS31においては、検出温度Td及び図14に基づいて、第1加減算値M1が計算される。まず、検出温度Tdが、燃料電池セルスタック14の適正温度Ts(I)に対して、所定の温度範囲内(図14の2本の実線の間)にある場合には、第1加減算値M1は0にされる。
即ち、検出温度Tdが、
Ts(I)−Te≦Td≦Ts(I)+Te
の範囲内にある場合には、第1加減算値M1=0にされる。ここで、Teは第1加減算値閾値温度である。なお、本実施形態においては、第1加減算値閾値温度Teは3℃である。
【0073】
また、検出温度Tdが、適正温度Ts(I)よりも低く、
Td<Ts(I)−Te (4)
の範囲内(図14における下側の実線よりも下)にある場合には、第1加減算値M1は、
M1=Ki×(Td−(Ts(I)−Te)) (5)
によって計算される。この際、第1加減算値M1は、負の値(減算値)となる。なお、Kiは、所定の比例定数である。
【0074】
また、検出温度Tdが、適正温度Ts(I)よりも高く、
Td>Ts(I)+Te (6)
の範囲内(図14における上側の実線よりも上)にある場合には、第1加減算値M1は、
M1=Ki×(Td−(Ts(I)+Te)) (7)
によって計算される。この際、第1加減算値M1は、正の値(加算値)となる。このように、第1加減算値M1は、検出温度Tdの他、発電電流に基づいて決定され、これを積算することにより蓄熱量が推定される。即ち、適正温度Ts(I)は、発電電流(電力)に応じて異なるように設定され、この適正温度Ts(I)に基づいて決定される(Ts(I)+Te)の値、及び(Ts(I)−Te)の値に基づいて、第1加減算値M1が正又は負の値に決定される。
【0075】
なお、検出温度Tdが(Ts(I)+Te)を超えると、第1加減算値M1は正の値となり、後述するように燃料利用率を高くする燃料供給量の変更が行われるので、本明細書においては、各発電電力に対する温度(Ts(I)+Te)を燃料利用率変更温度と称する。また、燃料利用率変更温度(Ts(I)+Te)を超えることにより、燃料利用率を高くした高効率制御に移行した後、高効率制御から蓄積されている熱量の消費を行わない目標温度域制御に復帰するタイミングは、後述するように、第1加減算値M1等の積算値N1idが0まで低下した時点となる。このため、検出温度Tdが燃料利用率変更温度(Ts(I)+Te)よりも低下した後も、暫時、積算値N1idは0よりも大きい値に維持され、高効率制御が行われる。
【0076】
次に、図13のステップS32においては、最新の検出温度Td、及び1分前に検出された検出温度Tdbに基づいて、第2加減算値M2が計算される。まず、最新の検出温度Tdと1分前の検出温度Tdbの差の絶対値が所定の第2加減算値閾値温度未満である場合には、第2加減算値M2は0にされる。なお、本実施形態においては、第2加減算値閾値温度は1℃である。
【0077】
また、最新の検出温度Tdと1分前の検出温度Tdbの差である変化温度差が所定の第2加減算値閾値温度以上の場合には、第2加減算値M2は、
M2=Kd×(Td−Tdb) (8)
によって計算される。この第2加減算値M2は、検出温度Tdが上昇傾向にある場合には正の値(加算値)となり、検出温度Tdが低下傾向にある場合には負の値(減算値)となる。なお、Kdは、所定の比例定数である。従って、検出温度Tdが上昇している場合において、変化温度差(Td−Tdb)が大きい領域においては、変化温度差が小さい領域よりも、速応推定値である第2加減算値M2が大きく増加される。逆に、検出温度が低下している場合において、変化温度差(Td−Tdb)の絶対値が大きい領域においては、変化温度差の絶対値が小さい領域よりも、第2加減算値M2は大きく減少される。
【0078】
なお、本実施形態においては、比例定数Kdは一定値であるが、変形例として、変化温度差が正の場合と負の場合で、異なる比例定数Kdを使用することもできる。例えば、変化温度差が負である場合に比例定数Kdを大きく設定することもできる。これにより、検出温度が低下している場合には、検出温度が上昇している場合よりも、変化温度差に対して急激に速応推定値が変化される。或いは、変形例として、変化温度差の絶対値が大きい領域において、小さい領域よりも比例定数Kdを大きく設定することもできる。これにより、変化温度差の絶対値が大きい領域においては、変化温度差の絶対値が小さい領域よりも、変化温度差の変化に対して急激に速応推定値が変化される。また、変化温度差の正負に基づく比例定数Kdの変更と、変化温度差の絶対値の大小に基づく比例定数Kdの変更を組み合わせることもできる。
【0079】
次いで、図13のステップS33においては、ステップS31で計算された第1加減算値M1、及びステップS32で計算された第2加減算値M2を、第1積算値N1idに積算する。第1積算値N1idには、第1加減算値M1により、断熱材7等に蓄積された利用可能な蓄熱量が反映され、第2加減算値M2により、直近の検出温度Tdの変化が反映される。即ち、第1積算値N1idは、断熱材7等に蓄積された利用可能な蓄熱量の推定値として利用することができる。また、積算は、固体酸化物型燃料電池の運転開始後継続的に、図13のフローチャートが実行される毎に行われ、前回計算された第1積算値N1idに、第1加減算値M1及び第2加減算値M2が加算又は減算され、新たな第1積算値N1idに更新される。第1積算値N1idは、0〜4の間の値をとるように制限されており、第1積算値N1idが4に到達した場合には、値は次に減算が行われるまで4に保持され、第1積算値N1idが0まで減少した場合には、値は次に加算が行われるまで0に保持される。
【0080】
なお、ステップS33においては、第1積算値N1idに加え、第2積算値N2idの値も計算する。第2積算値N2idは、燃料電池モジュール2に電圧降下が発生していない場合には、第1積算値N1idと全く同様に計算され、第1積算値N1idと同一の値を取る。また、燃料電池モジュール2に電圧降下が発生した場合には、第1積算値N1idの積算が停止され、第1積算値N1idと第2積算値N2idは異なる値を取るようになる。第1、第2積算値については後述する。
【0081】
なお、上記のように、本実施形態においては、第1加減算値M1と第2加減算値M2の和を第1積算値N1idに積算することにより、積算値を計算している。即ち、
N1id=N1id+M1+M2 (9)
により、第1積算値N1idを計算している。ここで、変形例として、第1加減算値M1と第2加減算値M2の積を積算することにより、積算値を計算しても良い。即ち、この変形例では、第1積算値N1idは、
N1id=N1id+Km×M1×M2 (10)
により計算される。ここで、Kmは、所定の条件に応じて変更される可変の係数である。また、この変形例においては、最新の検出温度Tdと1分前の検出温度Tdbの差の絶対値が所定の第2加減算値閾値温度未満である場合には、第2加減算値M2は1にされる。
【0082】
さらに、図13のステップS34においては、計算された第1積算値N1idに基づいて、図15及び図16のグラフを使用して、燃料利用率が決定される。
図15は、計算された第1積算値N1idに対する燃料利用率Ufの設定値を示すグラフである。図15に示すように、第1積算値N1idが0である場合には、燃料利用率Ufは最小値である最小燃料利用率Ufminに設定される。また、第1積算値N1idの増加と共に燃料利用率Ufも増加し、第1積算値N1id=1において最大値である最大燃料利用率Ufmaxとなる。この間、燃料利用率Ufは、第1積算値N1idが小さい領域では傾きが小さく、第1積算値N1idが1に近づくほど傾きが大きくなる。即ち、推定蓄熱量が大きい領域においては、推定蓄熱量が小さい領域よりも、推定蓄熱量の変化に対して大幅に燃料利用率Ufが変化される。換言すれば、推定された蓄熱量が大きいほど大幅に燃料利用率Ufを高めるように燃料供給量が減少される。さらに、第1積算値N1idが1よりも大きい場合には、燃料利用率Ufは最大燃料利用率Ufmaxに固定される。これらの最小燃料利用率Ufmin及び最大燃料利用率Ufmaxの具体的な値は、発電電流に基づいて、図16に示すグラフにより決定される。このように、断熱材7等に利用可能な熱量が蓄積されていることが推定された場合には、利用可能な熱量が蓄積されていない場合よりも同一の発電電力に対して燃料利用率が高くなるように、燃料供給量が減少される。
【0083】
図16は、各発電電流に対し、燃料利用率Ufがとり得る値の範囲を示すグラフであり、各発電電流について燃料利用率Ufの最大値及び最小値が示されている。図16に示すように、各発電電流に対する最小燃料利用率Ufminは、発電電流の増加と共に大きくなるように設定されている。即ち、発電電力が大きいときは燃料利用率が高く、発電電力が小さいときには燃料利用率が低くなるように設定されている。この最小燃料利用率Ufminの直線は、図9における実線に対応するものであり、この直線上の燃料利用率に設定された場合には、断熱材7等に蓄積された熱量を利用することなく、燃料電池モジュール2は熱的に自立することができる。
【0084】
一方、最大燃料利用率Ufmaxは、各発電電流に対して折れ線状に変化するように設定されている。ここで、各発電電流に対して燃料利用率Ufがとり得る値の範囲(最大燃料利用率Ufmaxと最小燃料利用率Ufminの差)は、最大の発電電流で最も狭く、発電電流が減少するにつれて広くなる。これは、最大の発電電流付近では、熱的に自立可能な最小燃料利用率Ufminが高く、蓄熱を利用しても燃料利用率Ufを高める(燃料供給量を減じる)余地が少ないためである。さらに、発電電流が減少するにつれて熱的に自立可能な最小燃料利用率Ufminは低くなるため、蓄熱を利用することにより燃料供給量を減じる余地が大きくなり、蓄熱量が多い場合には、燃料利用率Ufを大幅に高めることが可能である。このため、発電電力が小さい領域においては、発電電力が大きい領域よりも、広い範囲で燃料利用率が変更される。
【0085】
また、発電電流が非常に小さい、所定の利用率抑制発電量IU以下の領域においては、発電電力が小さくなるほど燃料利用率Ufがとり得る値の範囲が狭くなるように設定されている。これは、発電電流が小さい領域では、熱的に自立可能な最小燃料利用率Ufminが低く、これを改善する余地は大きい。しかしながら、発電電流が小さい領域では、燃料電池モジュール2内の温度が低いため、この状態で大幅に燃料利用率Ufを改善し、断熱材7等に蓄積されている熱量を急激に消費すると、燃料電池モジュール2内の過剰な温度低下を招くリスクがある。このため、発電電流が非常に小さい利用率抑制発電量IU以下の領域においては、発電電力が小さくなるほど燃料利用率Ufを高める変更量が大幅に抑制される。即ち、燃料供給量を減少させる変更量は燃料電池モジュール2の発電量が少ないほど少なくなる。これにより、急激な温度低下のリスクを回避すると共に、蓄積された熱量を長時間に亘って利用することを可能にしている。
【0086】
本実施形態においては、制御部110に内蔵された燃料供給量変更手段(図示せず)により、最小燃料利用率Ufminに対して燃料利用率Ufが高くなるように燃料供給量が減少される。この燃料供給量変更手段(図示せず)は、ベースとなる燃料供給量を変更して燃料利用率を高めるように作用する。
【0087】
図13のステップS34においては、発電電流に基づいて、最小燃料利用率Ufmin及び最大燃料利用率Ufmaxの具体値を、図16のグラフを使用して決定する。次に、決定された最小燃料利用率Ufmin及び最大燃料利用率Ufmaxを図15のグラフに適用し、ステップS33において計算された第1積算値N1idに基づいて、燃料利用率Ufを決定する。
【0088】
次に、図13のステップS35においては、第2積算値N2idに基づいて、図17及び図18のグラフを使用して、空気利用率が決定される。
図17は、計算された第2積算値N2idに対する空気利用率Uaの設定値を示すグラフである。図17に示すように、第2積算値N2idが0乃至1である場合には、空気利用率Uaは最大値である最大空気利用率Uamaxに設定される。さらに、第2積算値N2idが1を超えて増加すると共に空気利用率Uaは低下し、第2積算値N2id=4において最小値である最小空気利用率Uaminとなる。このように、空気利用率Uaを低下させることによる増加分の空気は冷却用の流体として作用するので、図17に示す空気利用率Uaの設定は、強制冷却手段として作用する。これらの最小空気利用率Uamin及び最大空気利用率Uamaxの具体的な値は、発電電流に基づいて、図18に示すグラフにより決定される。
【0089】
図18は、各発電電流に対し、空気利用率Uaがとり得る値の範囲を示すグラフであり、各発電電流について燃料利用率Uaの最大値及び最小値が示されている。図18に示すように、各発電電流に対する最大空気利用率Uamaxは、発電電流の増加と共に僅かに大きくなるように設定されている。一方、最小空気利用率Uaminは、発電電流の増加と共に低下する。空気利用率Uaを、最大空気利用率Uamaxよりも低下させる(空気供給量を増大させる)ことは、発電に必要な空気よりも多い空気を燃料電池モジュール2内に導入することになり、これにより、燃料電池モジュール2内の温度は低下される。従って、燃料電池モジュール2内の温度が過剰に上昇し、温度を低下させる必要がある場合には、空気利用率Uaを低下させる。本実施形態においては、発電電流の増加と共に最小空気利用率Uaminを低下(空気供給量を増加)させていくと、所定の発電電流において、最小空気利用率Uaminに対応する空気供給量が発電用空気流量調整ユニット45の最大空気供給量を超えてしまう。このため、最小空気利用率Uaminが図18において破線で示されている所定の発電電流以上の領域では、図17のグラフによって設定された空気利用率Uaを実現することができない場合がある。この場合には、実際に供給される空気供給量は、設定された空気利用率Uaに関わらず、発電用空気流量調整ユニット45の最大空気供給量に固定される。これに伴い、所定の発電電流以上では、実際に実現される最小の空気利用率Uaは増大する。また、最大空気供給量が大きい発電用空気流量調整ユニットを使用した場合には、図18に破線で示された部分の最小空気利用率Uaminを実現することもできる。なお、発電用空気流量調整ユニット45の最大空気供給量に達することにより規定された空気利用率Uaを、限界最小空気利用率ULaminと記載する。
【0090】
図13のステップS35においては、発電電流に基づいて、最小空気利用率Uamin及び最大空気利用率Uamaxの具体値を、図18のグラフを使用して決定する。次に、決定された最小空気利用率Uamin及び最大空気利用率Uamaxを図17のグラフに適用し、ステップS33において計算された第2積算値N2idに基づいて、空気利用率Uaを決定する。
【0091】
次に、図13のステップS36においては、ステップS35において決定された空気利用率Uaに基づき、図19を使用して水蒸気量と炭素量の比であるS/Cを決定する。
図19は、横軸を空気利用率Ua、縦軸を、供給された水蒸気量と、燃料に含まれる炭素量との比S/Cとしたグラフである。
【0092】
まず、ステップS35において設定された空気利用率Uaが、発電用空気流量調整ユニット45の最大空気供給量によって規定されていない発電電流の領域(図19におけるUamax〜ULamin間)では、水蒸気量と炭素量の比S/Cの値は、2.5に固定される。なお、水蒸気量と炭素量の比S/C=1とは、供給された燃料に含まれる炭素の全量が、供給された水(水蒸気)により化学的に過不足なく水蒸気改質される状態を意味する。従って、水蒸気量と炭素量の比S/C=2.5とは、燃料を水蒸気改質するために化学的に必要最小限の水蒸気量の2.5倍の水蒸気(水)が供給されている状態を意味する。実際には、S/C=1となる水蒸気量では改質器20内において炭素析出が発生してしまうため、S/C=2.5程度となる水蒸気量が燃料を水蒸気改質するための適量である。
【0093】
次に、ステップS35において設定される空気利用率Uaが、発電用空気流量調整ユニット45の最大空気供給量によって制限される発電電流の領域では、図19のグラフを使用して水蒸気量と炭素量の比S/Cが決定される。図19において、横軸は空気利用率Uaであり、空気利用率Uaが大きく、最大空気利用率Uamaxに近いほど空気供給量は少なくなる。一方、空気利用率Uaを低下させ、最小空気利用率Uamin(図18における破線)に近づくと、空気供給量が限界に達し、空気利用率Uaは限界最小空気利用率ULaminになる。図19に示すように、空気利用率Uaが限界最小空気利用率ULaminよりも大きい(空気供給量が少ない)場合には、水蒸気量と炭素量の比S/C=2.5に設定される。さらに、ステップS35において決定された空気利用率Uaが、限界最小空気利用率ULaminよりも小さい(空気供給量が多い)場合(図19におけるUamin〜ULamin間)には、空気利用率Uaの減少と共に水蒸気量と炭素量の比S/Cは増大され、最小空気利用率Uaminにおいて、S/C=3.5に設定される。即ち、ステップS35において決定された空気利用率Uaが、限界最小空気利用率ULaminにより実現できない場合(空気利用率Uaが図18の斜線の範囲内に決定された場合)には、水蒸気量と炭素量の比S/Cを増大させ、水供給量を増大させる。これにより、改質器20から流出する改質された燃料ガスの温度を低下させ、燃料電池モジュール2内の温度を低下傾向にする。このように、空気利用率Uaを低下させて空気供給量を増加させた後、水供給量を増大させると、増加分の水(水蒸気)は、冷却用の流体として作用するので、図19に示す水供給量の設定は強制冷却手段として作用する。
【0094】
ステップS37においては、ステップS34、S35、及びS36において決定された燃料利用率Uf、空気利用率Ua、及び水蒸気量と炭素量の比S/Cと、発電電流に基づいて、具体的な燃料供給量、空気供給量、水供給量を決定する。即ち、全量が発電に使用されるとした場合の燃料供給量を、決定された燃料利用率Ufで除することにより実際の燃料供給量を計算し、全量が発電に使用されるとした場合の空気供給量を決定された空気利用率Uaで除することにより実際の空気供給量を計算する。また、計算された燃料供給量及びステップS36において決定された水蒸気量と炭素量の比S/Cに基づいて、水供給量を計算する。
【0095】
次いで、ステップS38において、水流量不足の判定を行なうサブルーチン(図21)を実行する。後述するように、図21に示すサブルーチンでは、所定の条件に応じて水流量不足の閾値が決定される。制御部110は、水流量センサが検出した水流量に対しステップS38において行なわれる水流量不足判定処理を実行し、図13のフローチャートの1回の処理を終了する。
【0096】
次に、図13のフローチャートを実行する時間間隔を説明する。本実施形態において、図13のフローチャートは、出力電流が大きい場合には、0.5秒毎に実行され、出力電流が低下するにつれて、その2倍の1秒、4倍の2秒、8倍の4秒毎に実行される。これにより、第1及び第2加減算値が一定値である場合には、時間当たりの第1又は第2積算値の変化は、出力電流が少ないほど緩やかになる。即ち、蓄熱量推定手段110aは、出力電流(発電電力)が大きいほど蓄熱量の推定値を時間に対して急激に変化させる。これにより、積算値による蓄熱量の推定が、実際の蓄熱量を良く反映したものとなる。
【0097】
次に、図20を参照して、燃料電池セルスタック14の出力電圧が低下した場合における、燃料供給量、空気供給量、及び水供給量の決定手順を説明する。図20は、燃料電池モジュール2による発電電流に対する発電電圧を示す図である。一般に、燃料電池セルスタック14には、内部抵抗が存在するため、図20に示すように、燃料電池モジュール2から出力される電流が増大すると、電圧は低下する。図20に示す一点鎖線は、燃料電池モジュール2が適正に運転されている場合における発電電流と発電電圧の関係を示している。また、燃料電池モジュール2の運転状態によっては、一時的に、一点鎖線に示されている発電電流と発電電圧の関係よりも発電電圧が低下する。或いは、燃料電池モジュール2に劣化が生じている場合には、燃料電池セルスタック14の内部抵抗が増大するため、同一の発電電流に対する発電電圧が恒常的に低下する。
【0098】
本実施形態の固体酸化物型燃料電池においては、初期の発電電圧に対して、発電電圧が10%以上低下し、発電電圧が図20の実線よりも下の領域に入ると、この発電電圧の低下に対応した処理により燃料供給量、空気供給量、及び水供給量を決定している。
【0099】
即ち、発電電圧が図20の実線よりも下の領域にある場合には、図13のステップS33において、第1積算値N1idの積算を停止させ、第2積算値N2idの積算のみが継続される。これにより、燃料利用率Ufを決定するための図15のグラフを参照する際に使用される第1積算値N1idの値は、一定値に固定される。これにより、燃料利用率Ufは、発電電圧が図20の実線よりも下の領域から脱するまで固定される。このように、燃料電池モジュール2の発電電圧に大きな電圧降下が発生している場合には、燃料利用率Ufを高める変更が少なくされる。一方、空気利用率Uaを決定するための図17のグラフを参照する際に使用される第2積算値N2idの値は、従前の通り増減され、空気利用率Uaの増減は継続される。このように、燃料利用率Ufは、推定蓄熱量に対応した第1、第2積算値、需要電力の他に、燃料電池モジュール2の出力電圧に基づいて変更される。
【0100】
次に、図21乃至図24を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池1の制御を説明する。
図21は、図13のステップS38において呼び出される、水流量不足を判定するためのサブルーチンのフローチャートである。図22は、改質器温度と改質率の関係を示すグラフである。図23は、発電電流と改質器温度の関係を示すグラフである。図24は、発電電流とS/Cの関係を示すグラフである。
【0101】
まずステップS41において、図13に基づいて決定されたUf、Ua、S/C、発電電流、燃料供給量、空気供給量、水供給量を読み込む。
【0102】
次にステップS42において、図13ステップS37に基づいて決定された、燃料を水蒸気改質するための化学的な必要最小限な水供給量(補正前水供給量Aq1)にたいして補正を行うことで実際にモジュールに供給する水量(補正後水供給量Aq2)を決定する。
補正後水供給量Aq2を決定するため、まず補正前水供給量Aq1に対して、水調整ユニット28の指示量に対する実際に供給される流量との誤差や水流量センサ134の取り込み誤差、各セルに供給される燃料流量のばらつきを考慮した補正量erを加える。
次に改質器の温度による改質率変動を考慮した補正量((Aq2−er)−(Aq1+er)に相当する)を加える。
改質率変動とは、改質器20の温度に応じて改質器20内で行なわれる改質反応の確度(改質率)が変化することであり、図22に示すように、改質器20の温度が高いときには改質器20内の触媒活性が活発化して改質率は向上する。すなわち、少ない水の流量でも炭素析出せず水蒸気改質が可能となる。逆に改質器20の温度が低いときには改質率は低下する。
図22のように改質器の温度により改質率は変化し、改質器温度が大きいほど改質率は上昇し、少ない水量でも炭素析出せず、十分な改質反応が可能となる。図24におけるAq2−erとは、モジュールの取りうる最低温度における改質率において十分に改質反応を行なうために必要な水の供給量であり、Aq1+erは、モジュールの取りうる最高温度における改質率において十分に改質反応を行なうために必要な水の供給量である。Aq2−erは、モジュールの取りうる最低温度における改質率において十分に改質反応を行なうために必要な水の供給量である。
つまり、改質率変化を考慮した補正量((Aq2−er)−(Aq1+er))とは、モジュールのとり得る最高温度と最低温度とにおいてそれぞれ必要な水の供給量の差であり、燃料電池モジュール2が取りうる温度範囲に応じた改質率変動によるものといえる。
そして、これらを合わせた値にさらに上述した水調整ユニット28の誤差や水流量センサ134の誤差、各セルに供給される燃料流量のばらつきを考慮した補正量erを加えた値(Aq2)が実際にモジュールに供給する水量(補正後水供給量)となる。
【0103】
続いてステップS43において、ステップS42で決定した補正後水供給量Aq2から所定量差し引いて水不足判定閾値基本値Aqer‘を決定する。
水不足判定閾値基本値Aqer‘を決定するにあたっては、まず、補正後水供給量Aq2から補正量erを差し引く。そうすることにより、この範囲において、水が正常に供給できているにもかかわらず、水不足であると誤って判定することを防止することが出来る。
さらに、補正後水供給量Aq2を求める際に加算した水量のうち、炭素析出させないために必要な水量より多い、余剰分の水量を差し引く。
図23のようにセルスタック温度Ts(I)が、電流が増加する程改質器温度が上昇するようなモジュールの構造であった場合、改質器目標温度Tid(I)も同様の増加傾向を示すため、改質器目標温度Tid(I)が高いほど、改質率が向上し、少ない流量でも十分に改質反応を行なうことが可能となる。
モジュールの運転温度は、燃料利用率制御により、図23に示した改質器目標温度Tid(I)に近づくように運転されているので、改質器目標温度Tid(I)における改質率を求め、その改質率において炭素析出を行なわず十分に改質反応させるために必要な水の流量を水不足判定閾値の基本値Aqer’とした。このときAqerは図24のように右肩下がりとなり、Aq2−erにおける必要な水供給量とAqer‘における必要な水供給量との差分が余剰分に相当する。
【0104】
つまり、水不足判定閾値基本値Aqer‘を決定するために補正後水供給量Aq2から差し引く所定量とは、補正量erと、余剰分の水量とをあわせた量であり、改質器の温度によって変化する改質率変動を考慮して調整される量である。
【0105】
ステップS44では、現時点の発電電流に対する改質器の目標温度Tidと、現時点で検出している改質器温度Trの差を考慮して算出した補正量をステップS43で求めた水不足判定閾値Aqer‘の基本値に加え、水不足検知の判定閾値Aqerを決定する。目標温度に対する現時点での温度乖離は過渡的なものであり、燃料利用率制御によって目標温度に制御されるため、ここで加える補正量は、これまでの温度履歴を考慮して補正量を決定することが望ましい。
【0106】
次に、図13及び図24のフローチャートによって実現される固体酸化物型燃料電池の作用を説明する。

まず、ステップS33において計算される第1積算値N1idの値が0である場合には、ステップS34において決定される燃料利用率Ufが、その発電電流における最小燃料利用率Ufmin(燃料供給量最大)に設定される。これにより、第1積算値N1idの値が0であり、断熱材7等に蓄積された熱量が少ない状態においても、燃料電池モジュール2が熱的に自立できる十分な燃料が供給される。また、ステップS33において計算される第2積算値N2idの値が、第1積算値N1idと同様に0である場合には、ステップS35において決定される空気利用率Uaが、その発電電流における最大空気利用率Uafmax(空気供給量最小)に設定される。このため、燃料電池モジュール2に導入される発電用の空気により燃料電池セルスタック14が冷却される作用は最小にされ、燃料電池セルスタック14の温度を上昇傾向にすることができる。
【0107】
次に、検出温度Tdが適正温度Ts(I)よりも高く、Td>Ts(I)+Teの状態で燃料電池モジュール2が運転されると、第1加減算値M1の値は正値となり、第1積算値N1idの値が0よりも大きくなる。これにより、図15において、最小燃料利用率Ufminよりも高い燃料利用率Ufが設定されて燃料供給量が減少され、発電に使用されずに残る残余燃料の量が減少される。燃料利用率Ufは、燃料供給量変更手段110aにより、推定蓄熱量に対応した第1積算値N1idの値が大きいほど大幅に高くされる。燃料利用率Ufが高められることにより、燃料供給量は熱自立可能な供給量よりも少なくされ、断熱材7等に蓄積された熱量を利用した高効率制御が実行される。残余燃料の量が減少され、断熱材7等に蓄積された熱量が利用されるので、燃料供給量変更手段110aは、発電を継続しながら燃料電池モジュール2内の温度上昇を抑制する。Td>Ts(I)+Teの状態で運転が継続されると、正値の第1加減算値M1の積算が繰り返され、第1積算値N1idの値も増大する。第1積算値N1idが1に達すると、燃料利用率Ufは、最大燃料利用率Uafmax(燃料供給量最小)に設定される。このように、燃料電池モジュール2に供給される燃料は、断熱材7等に蓄積された熱量を反映した、検出温度Tdの過去の履歴に基づいて決定される。
【0108】
第1積算値N1idが更に増大し、1を超えた場合においても、図15に示すように、燃料利用率Ufは、最大燃料利用率Uafmax(燃料供給量最小)に維持される。一方、第1積算値N1idと同一の値をとる第2積算値N2idの値(燃料電池モジュール2の出力電圧が低下していない場合)も1を超えるので、図17に基づいて、空気利用率Uaが低下(空気供給量増加)される。これにより、燃料電池モジュール2内は、供給される空気の増加により冷却傾向となる。
【0109】
これに対して、検出温度Tdが適正温度Ts(I)よりも低く、Td<Ts(I)−Teの状態で燃料電池モジュール2が運転されると、第1加減算値M1の値は負値となり、第1積算値N1idの値は減少される。これにより、燃料利用率Ufは、維持(第1積算値N1id>1)又は低下(第1積算値N1id≦1)される。また、空気利用率Uaは、増大(第2積算値N2id>1)又は維持(第2積算値N2id≦1)される。これにより、燃料電池モジュール2内の温度を上昇傾向にすることができる。
【0110】
以上は、検出温度Tdの履歴に基づいて計算される第1加減算値M1のみに注目した固体酸化物型燃料電池の作用であるが、第1積算値N1id及び第2積算値N2idは、第2加減算値M2によっても影響を受ける。燃料電池モジュール2、特に、燃料電池セルスタック14は、非常に熱容量が大きく、その検出温度Tdの変化は極めて緩慢である。このため、検出温度Tdが一旦上昇傾向に入ると、その温度上昇を短時間で抑制することは困難であり、また、検出温度Tdが低下傾向に入った場合にも、これを上昇傾向に戻すには長い時間を要する。このため、検出温度Tdに上昇又は低下の傾向が現れた場合には、これに迅速に反応して第1、第2積算値を修正する必要がある。
【0111】
即ち、最新の検出温度Tdが、1分前の検出温度Tdbよりも第2加減算値閾値温度以上高い場合には、第2加減算値M2が正の値となり、第1、第2積算値が増大される。これにより、検出温度Tdが上昇傾向に入ったことを第1、第2積算値に反映させることができる。同様に、最新の検出温度Tdが、1分前の検出温度Tdbよりも第2加減算値閾値温度以上低い場合には、第2加減算値M2が負の値となり、第1、第2積算値が減少される。即ち、発電室温度センサ142により検出された最新の検出温度Tdと、過去の検出温度Tdbとの差である変化温度差に基づいて速応推定値である第2加減算値M2が計算される。従って、検出温度Tdが急激に低下している場合には、緩やかに低下している場合よりも、燃料利用率Ufを高める変更量が大幅に抑制され、また、発電電力が利用率抑制発電量IU以下の領域では最大燃料利用率Ufmaxも低く設定されているため、変更量は、より大幅に抑制される。これにより、検出温度Tdが低下傾向に入ったことを第1、第2積算値に反映させることができる。このように、本実施形態においては、検出温度Tdに基づいて決定された第1加減算値M1の積算値、及び新しく検出された検出温度Tdと過去に検出された検出温度Tdbの差に基づく差分値に基づいて蓄熱量が推定される。即ち、本実施形態においては、検出温度Tdの履歴に基づいて計算される基本推定値である第1加減算値M1の積算値、及び基本推定値を計算する履歴よりも短い期間における検出温度Tdの変化率に基づいて計算される速応推定値である第2加減算値M2に基づいて、蓄熱量推定手段110bにより蓄熱量が推定される。このように、本実施形態においては、基本推定値と速応推定値の和に基づいて蓄熱量が推定される。
【0112】
なお、燃料電池モジュール2の温度変化は、検出温度TdとTdbを検出する間隔である1分に比して極めて緩慢であるため、第2加減算値M2は0である場合が多い。このため、第1、第2積算値は、主に第1加減算値M1によって支配され、検出温度Tdの上昇又は低下傾向が現れたとき、第2加減算値M2が、第1、第2積算値の値を修正するように作用する。このように、蓄熱量の推定値には、検出温度の履歴の他に、第2加減算値M2によって直近の検出温度Tdの変化が加味される。このため、直近の検出温度Tdの変化が大きい(第2加減算値閾値温度以上の変化)場合には、第2加減算値M2が値を持つので、蓄熱量の推定値が修正され、燃料利用率Ufが大幅に変更される。
【0113】
このように、図13に示すフローチャートにより実現される残存熱量利用制御は、断熱材7に蓄積された熱量が多い場合には燃料利用率を高めることにより燃料電池モジュール2内の温度を低下させ、蓄積された熱量が少ない場合には燃料利用率を低下させることにより燃料電池モジュール2内の温度を上昇させることにより、燃料電池モジュール2内の温度を適正範囲に維持するので、適正温度制御として機能する。
【0114】
また、図13のフローチャートから呼び出される図21に示すフローチャートにより実現される本発明の水不足判定閾値制御は、水不足判定手段の検知閾値は、上記燃料の目標流量に基づいて算出された上記水の目標流量に対して、所定量だけ少ない量に設定することによって、水蒸気改質を行う改質器を備えた燃料電池システムにおいて、水不足をより精度よく検知することによって、未改質のガスが大量にセルに供給されて燃料電池システムの性能を著しく低下させてしまうことを防止できる。
さらに、上記所定量は燃料電池モジュールの温度に応じて調整される可変値であるため、より厳密に水の流量を管理でき、燃料電池システムの性能低下を防止することが可能となる。
さらに、所定量は、上記燃料電池モジュールの温度が高いほど大きくなり、低いほど小さくなるよう設定したため、改質器温度による改質率変化を考慮して判定閾値を設定するため、改質器温度が低い側においては水不足判定閾値を改質率低下分だけ厳しく設定することが出来、燃料電池モジュールの性能低下を抑制することができる。また、温度が高い側においては、閾値を改質率上昇分だけ閾値管理を緩和することによって不要な水不足判定を防止することができる。
【0115】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。
特に、上述した実施形態においては、余熱による燃料利用率制御を行うことを前提としてS/Cの算出および水不足判定閾値の算出を実施していたが、変形例として、余熱による燃料利用率制御を行なわないような簡潔な制御、すなわち、燃料ガス流量、空気流量を発電電流に対して一意に定めるような制御方法においても実施することが可能である。また、上述した実施形態においては、改質器温度を直接測定して温度による水不足判定閾値の補正を行なっていたが、改質器温度と他の測定点(例えば発電室温度)との相関が把握出来ていれば、他の測定点で代用することも可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 固体酸化物型燃料電池
2 燃料電池モジュール
4 補機ユニット
7 断熱材(蓄熱材)
8 密封空間
10 発電室
12 燃料電池セル集合体
14 燃料電池セルスタック
16 燃料電池セルユニット(固体酸化物型燃料電池セル)
18 燃焼室(燃焼部)
20 改質器
22 空気用熱交換器
24 水供給源
26 純水タンク
28 水流量調整ユニット(水供給手段)
30 燃料供給源
38 燃料流量調整ユニット(燃料供給手段)
40 空気供給源
44 改質用空気流量調整ユニット
45 発電用空気流量調整ユニット(発電用酸化剤ガス供給手段)
46 第1ヒータ
48 第2ヒータ
50 温水製造装置
52 制御ボックス
54 インバータ
83 点火装置
84 燃料電池セル
110 制御部(制御手段)
110a 蓄熱量推定手段
110b 排気ガス状態判定手段
110c 排気ガス適正化手段
112 操作装置
114 表示装置
116 警報装置
126 電力状態検出センサ(需要電力検出手段)
132 燃料流量センサ(燃料供給量検出センサ)
138 圧力センサ(改質器圧力センサ)
140 排気温度センサ(温度検出手段)
142 発電室温度センサ(温度検出手段)
148 改質器温度センサ(温度検出手段)
150 外気温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要電力に応じた可変の発電電力を生成する固体酸化物型燃料電池であって、
供給された燃料により発電するモジュールと、
この燃料電池モジュールに燃料を供給する燃料供給手段と、
上記燃料電池モジュールに発電用の酸化剤ガスを供給する発電用酸化剤ガス供給手段と、
上記燃料と酸化剤ガスや水蒸気を化学反応させる改質反応によって水素を生成する改質器と、
上記改質器に改質用の水を供給する水供給手段と、
検知閾値に基づいて上記改質用の水の供給不足を検知する水不足判定手段とを有し、
上記水不足判定手段の検知閾値は、上記燃料の目標流量に基づいて算出された上記水の目標流量に対して、所定量だけ少ない量に設定することを特徴とする固体酸化物型燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載された固体酸化物型燃料電池において、
上記固体酸化物型燃料電池はさらに上記燃料電池モジュール内の温度を検知する温度検出手段を備え、
上記所定量は上記燃料電池モジュールの温度に応じて調整される可変値であることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。
【請求項3】
請求項2に記載された固体酸化物型燃料電池において、
上記所定量は、上記燃料電池モジュールの温度が高いほど大きくなり、低いほど小さくなることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−77531(P2013−77531A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218338(P2011−218338)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】