説明

燃料電池モジュール

【課題】高出力化に伴い小型化された燃料電池モジュールにおいても、確実に水素リッチな改質ガスを燃料電池スタックに供給することが可能な燃料電池モジュールを提供する。
【解決手段】双方の燃料電池スタックの1a、1bの放熱を受熱して燃料ガスを改質するスタック間改質器28を配置するとともに、一方の燃料電池スタック1a、1bの放熱を受熱して燃料ガスを改質する外周改質器29を配置しており、且つ燃料ガスを外周改質器29、スタック間改質器28にと順に導入した後に、各々燃料電池スタック1a、1bの燃料極層3へと供給するように、燃料配管31a〜31dによって外周改質器29の排出口とスタック間改質器28の導入口を接続するとともに、スタック間改質器28の排出口と各々燃料電池スタック1a,1bの燃料極層3とを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電セルとセパレータとを交互に積層した燃料電池スタックの高出力化に伴い小型化した燃料電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料の有する化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する燃料電池モジュールは、高効率でクリーンな発電装置として注目されている。そして、この燃料電池モジュールは、箱型の缶体内に、酸化物イオン導電体から成る固体電解質層の両面に空気極層(カソード)と燃料極層(アノード)とが配置された発電セルと、セパレータとを交互に積層した燃料電池スタックを配置するとともに、発電時に改質ガスを生成する改質器、発電時に水蒸気を生成する水気化器を配置することによって概略構成されている。
【0003】
この燃料電池スタックは、発電時に、反応用ガスとして上記空気極層側に酸化剤ガス(酸素) が、また上記燃料極層側に燃料ガス(CH4等を含有する都市ガス)を上記改質器によって改質した改質ガス (H2、CO、CO2、H2O等) が供給される。
【0004】
これにより、上記発電セル内において、上記空気極層側に供給された酸素は、上記空気極層内の気孔を通って上記固体電解質層との界面近傍に到達し、この部分で上記空気極層から電子を受け取って酸化物イオン(O2-)にイオン化される。この酸化物イオンは、上記燃料極層に向かって上記固体電解質層内を拡散移動する。そして、上記燃料極層との界面近傍に到達した酸化物イオンは、この部分で改質ガスと反応して反応生成物(H2O、CO2等)を生じ、上記燃料極層に電子を放出する。尚、電極反応で生じた電子は、別ルートの外部負荷にて起電力として取り出すことができる。
【0005】
さて、近年の燃料電池モジュールは、発電セルの大型化に伴い高出力化が進み、単位容積あたりの出力密度が従来の燃料電池スタックよりも大きくなり、この結果、従来の燃料電池モジュールよりも小型化することが可能となった。
【0006】
例えば、本発明者が発明した従来の5kW(DC6300W)級燃料電池モジュールの場合、φ120mmの発電セルとセパレータとを交互に複数積層して燃料電池スタックが構成されており、この燃料電池スタックが缶体内に縦横2行2列、高さ方向2段と計8個設置されていた。また、このφ120mmの発電セルの出力密度は、約0.2W/cmであった。
【0007】
これに対し、本発明者が発明した近年の5kW級燃料電池モジュールの場合、φ170mmの発電セルとセパレータを交互に複数積層して燃料電池スタックが構成されており、当該燃料電池スタックが缶体内に縦横1行2列、高さ方向1段と計2個設置されている。このように、発電セルの口径が大きくなり、且つ出力密度が0.4〜0.5W/cmに向上して燃料電池スタック自体の大きさが大きくなっているものの、燃料電池スタックの設置数が少なくなっていることにより、燃料電池モジュールが全体として小型化されている。
【0008】
ここで、上記燃料電池モジュールは、高効率発電を実施するためには、燃料ガスを高温雰囲気にある改質器に導入して、高い転化率で改質することにより得られる水素リッチな改質ガスを生成する必要がある。そのため、従来の燃料電池モジュールにおいては、上記改質器を燃料電池スタック近傍でも特に燃料電池スタックの放熱を受熱し易い燃料電池スタック同士の対向側面間に十字状の改質器を配置するとともに、最上段の燃料電池スタックから最下段の燃料電池スタックまで延在する高さに配置することによって、水素リッチな改質ガスを生成していた。
【0009】
ところが、近年の燃料電池モジュールは、小型化されているために、従来の燃料電池モジュールと同様に燃料電池スタックの放熱を受熱し易い燃料電池スタック同士の間に配置するだけでは、全体的な改質触媒の容量および受熱面積が小さいため、水素リッチな改質ガスを生成することができなくなる可能性があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来の課題に鑑みて成されたもので、高出力化に伴い小型化された燃料電池モジュールにおいても、確実に水素リッチな改質ガスを燃料電池スタックに供給することが可能な燃料電池モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の燃料電池モジュールは、箱型の缶体内部に、固体電解質層の一方の表面に燃料極層が配置され、他方の表面に酸化剤極層が配置された発電セルとセパレータとを交互に積層した直方体状の燃料電池スタックを複数配置するとともに、上記燃料極層に改質された燃料ガスおよび上記酸化剤極層に酸化剤ガスを供給することにより発電反応を生じる燃料電池モジュールにおいて、上記燃料電池スタックが平面視において横方向に1行、縦方向に2列配置されるとともに、上記燃料電池スタック同士の間に、発電時に双方の燃料電池スタックの放熱を受熱して上記燃料ガスを改質する第1の改質器が配置され、それぞれの上記燃料電池スタックの上記第1の改質器が配置された面を除く外周面の少なくとも一面と上記缶体との間に、発電時に当該燃料電池スタックの放熱を受熱して上記燃料ガスを改質する第2の改質器が配置されており、且つ上記燃料ガスが上記第2の改質器に導入された後に、上記第1の改質器に導入されて各々燃料電池スタックの燃料極層へと供給されるように、燃料配管によって第2の改質器の排出口と第1の改質器の導入口が接続され、第1の改質器の排出口と各々燃料電池スタックの燃料極層とが接続されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載の燃料電池モジュールは、請求項1に記載の燃料電池モジュールにおいて、上記缶体におけるそれぞれの上記燃料電池スタックの上記第1および第2の改質器が配置された面を除く外周面の少なくとも一面と対向する位置に、起動時に上記缶体内に向けて放射熱を放射する起動用加熱手段が配置されるとともに、それぞれの上記燃料電池スタックと上記起動用加熱手段との間に、上記第1の改質器に比べて上記燃料電池スタックの放熱の受熱面積が小さく、起動時に上記起動用加熱手段の放熱を受熱して上記燃料ガスを改質する第3の改質器が配置されており、且つ上記燃料ガスが上記第3の改質器に導入された後に上記第2の改質器に導入されるように、上記燃料配管によって第3の改質器の排出口と第2改質器の導入口が接続されていることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、請求項3に記載の燃料電池モジュールは、請求項1または請求項2に記載の燃料電池モジュールにおいて、上記第3の改質器が上記燃料電池スタックの高さ方向の中央部近傍に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の燃料電池モジュールによれば、燃料電池スタックを平面視において横方向に1行、縦方向に2列配置するとともに、発電時に双方の上記燃料電池スタックの放熱を受熱して燃料ガスを改質する第1の改質器を配置し、発電時に一方の上記燃料電池スタックの放熱を受熱して上記燃料ガスを改質する少なくとも2つの第2の改質器を配置しているために、燃料電池モジュール全体としての改質触媒の容量および受熱面積を増加させることが可能となる。この結果、小型化された燃料電池モジュールにおいても、水素リッチな改質ガスを生成することが可能となる。
【0015】
ところで、燃料電池モジュールに複数の改質器が配置されている場合、上記燃料ガスは、初期段階で最も温度が高い改質器において改質されると、その後、この改質器より温度が低い改質器に導入されても、改質がそれ以上進まないばかりか、低い温度での平衡組成へと逆改質反応が生じることがある。そのため、燃料配管によって第1の改質器、第2の改質器の順番で接続すると、第1の改質器において改質ガスを生成することが可能であるものの、第2の改質器における不十分な改質、さらには逆改質反応により、水素リッチな改質ガスを生成することができなくなる可能性がある。
【0016】
これに対し、本発明の燃料電池モジュールは、燃料配管によって一方の燃料電池スタックのみの放熱を受熱している第2の改質器、双方の燃料電池スタックの放熱を受熱している第1の改質器、燃料電池スタックの燃料極層の順に接続しているために、燃料ガスは、第2改質器において殆ど改質ガスに改質された後に、第2の改質器より温度の高い第1の改質器においてより一層改質される。これにより、小型化された燃料電池モジュールにおいて、確実に水素リッチな改質ガスを生成することが可能となり、この結果、この水素リッチな改質ガスを燃料電池スタックの燃料極層へと供給する事が可能となる。
【0017】
一方、請求項2に記載の燃料電池モジュールによれば、起動時に上記缶体内に向けて放射熱を放射する起動用加熱手段を配置するとともに、起動時に上記起動用加熱手段の放熱を受熱して上記燃料ガスを改質する第3の改質器を配置しているために、起動用加熱手段によって第3の改質器を加熱することにより、起動後早期段階で改質ガスを生成することが可能となる。そして、その改質ガスを燃料極層に供給することにより、当該燃料極層を還元状態に保つことができることから、燃料電池スタックの温度が300℃以上になった際に生じる燃料極層の酸化を防止することが可能となる。
【0018】
さらに、第3の改質器は、燃料電池スタックの温度が発電可能な温度に到達して発電が始まり、起動用加熱手段が停止しても、当該起動用加熱手段と燃料電池スタックとの間に配置されているために、燃料電池スタックの放熱を受熱することが可能である。これにより、第1の改質器に比べて燃料電池スタックの放熱の受熱面積が小さく温度が低いため、水素リッチな改質ガスを生成することができないものの、燃料ガスを予熱することが可能となるとともに一部の燃料ガスを改質することが可能となる。
【0019】
さらに、請求項3に記載の燃料電池モジュールによれば、燃料電池スタックの中でもジュール熱が発散し難く、特にセル温度が高温状態にある燃料電池スタックの高さ方向の中央部近傍に、第3の改質器を配置しているために、この第3の改質器の改質反応は吸熱反応であり、発電時に第3の改質器が改質反応を行うことにより、燃料電池スタックの高さ方向の中央部近傍の熱を効果的に吸熱する。これにより、燃料電池スタックの高さ方向の温度分布が均一化されて、燃料電池スタック全体としての発電の効率化が図れると共に、高温下において生じ易い電極層の剥離等、発電セルの破損を防止することができ、燃料電池の耐久性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る燃料電池モジュールの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のスタック間改質器、外周改質器、起動用改質器および燃料配管の取り回しを示す斜視図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】図1の底面図である。
【図5】図1の燃料電池スタックの主要部を示す拡大図である。
【図6】図5のセパレータを示す平面図である。
【図7】図1の赤外線バーナの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明に係る燃料電池モジュールの一実施形態を示すもので、図中符号1a,1bは燃料電池スタックである。
この燃料電池スタック1a、1bは、図5に示すように、固体電解質層2の一方の面に燃料極層3が配置されるとともに、他方の面に空気極層4が配置された発電セル5とセパレータ6とを交互に複数配置することにより構成されており、且つ燃料極層3とセパレータ6との間には、燃料極集電体7が配置されるとともに、空気極層4とセパレータ6との間には、空気極集電体8が配置されている。
【0022】
ここで、この固体電解質層2は、イットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)あるいはランタンガレート材料(LaGaO3)等で円板状に構成され、燃料極層3はNi等の金属あるいはNi−YSZ等のサーメットで円状に形成され、空気極層4はLaMnO3、LaCoO3等で円状に形成されている。また、燃料極集電体7はNi等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で円形に構成され、空気極集電体8はAg等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で円形に構成されている。
【0023】
さらに、セパレータ6は、図6に示すように、厚さ数mmの略方形状のステンレス製の板材で構成されており、上述した発電セル5、各集電体7、8が積層される中央のセパレータ本体と9、このセパレータ本体9より面方向に延設されて、当該セパレータ本体9の対向縁部を2箇所で支持する一対のセパレータアーム10、11とで構成されている。
【0024】
そして、セパレータ本体9は、集電体7、8を介して発電セル5間を電気的に接続すると共に、発電セル5に対して反応用ガスを供給する機能を有し、その内部に燃料ガスをセパレータ6の縁部から導入してセパレータ6の燃料極集電体7に対向する面の中央部の吐出口12から噴出させる燃料ガス通路13と、酸化剤ガス(空気)をセパレータ6の縁部から導入してセパレータ6の空気極集電体8に対向する面の中央部の吐出口14から噴出させる酸化剤ガス通路15とを有する。
【0025】
また、各セパレータアーム10、11は、それぞれセパレータ本体9の外周辺に沿って僅かな隙間を持って対向角隅部に延設される細長帯状として積層方向に可撓性を持たせた構造とされると共に、これらセパレータアーム10、11の端部16、17に板厚方向に貫通する一対のガス孔18、19が設けられている。
一方のガス孔18はセパレータ6の燃料ガス通路13に連通し、他方のガス孔19はセパレータ6の酸化剤ガス通路15に連通し、各々のガス孔18、19からこれらのガス通路13、15通して各発電セル5の各電極3、4面に燃料ガスや酸化剤ガスを供給するようになっている。
【0026】
そして、図5に示すように、各セパレータ6の本体9間に、それぞれ発電セル5および集電体7、8を介在させるとともに、各セパレータ6のガス孔18、19間に各々絶縁性のマニホールドリング20を介在させることによって、ガス孔18およびマニホールドリング20によって燃料ガスマニホールド21が構成され、ガス孔19およびマニホールドリング20によって空気マニホールド22が構成されている。
【0027】
このようにして構成された燃料電池スタック1a、1bは、図3に示すように、内部缶体23と外部缶体24との間に断熱材25配して構成された缶体26によって覆われており、内部缶体23の中央部に、縦横方向に2行1列に並べて配置され、各燃料電池スタック1a、1bが互いの間に隙間を空けて、図1に示す架台27に載置された状態で配置されている。
【0028】
一方、これらの燃料電池スタック1a,1b同士の間には、図3に示すように、スタック間改質器(第1の改質器)28が配置されている。このスタック間改質器28は、図1に示すように、燃料電池スタック1a、1bの高さ方向の上端部から下端部まで延在する高さを有している。
【0029】
また、図3に示すように、燃料電池スタック1aの図中上方側の外周面と缶体26との間および燃料電池スタック1bの図中下方側の外周面と缶体26との間には、外周改質器(第2の改質器)29が配置されている。この外周改質器29も、スタック間改質器28と同様に、図1に示すように、燃料電池スタック1a、1bの高さ方向の上端部から下端部まで延在する高さを有している。
【0030】
さらに、図3に示すように、燃料電池スタック1aの図中下方側の外周面と缶体26との間および燃料電池スタック1bの図中上方側の外周面と缶体26との間には、起動用改質器(第3の改質器)30が配置されている。この起動用改質器30は、スタック間および外周改質器28、29に比べて、燃料電池スタック1a、1bとの対向面の面積が小さく構成されるとともに、図1に示すように、燃料電池スタック1a、1bの高さ方向の中央部近傍に配置されている。
【0031】
そして、これらの改質器28、29、30の内部には、炭化水素用のNi(ニッケル)系、或いはRu(ルテニウム)系の改質触媒が充填されている。
【0032】
また、これらの改質器28、29、30は、図2に示すように、燃料配管31a〜31dによって缶体26の外部と起動用改質器28の導入口、起動用改質器28の排出口と外周改質器27の導入口、外周改質器27の排出口とスタック間改質器26の導入口、スタック間改質器26と燃料ガスマニホールド21とがそれぞれ接続されている。
【0033】
他方、図3に示すように、缶体26におけるに起動用改質器30の対向面には、缶体26内に向けて放熱する起動用の赤外線バーナ(起動用加熱手段)32が背面側を断熱材25に埋没した状態で設置されている。そして、この赤外線バーナ32は、図7に示すように、細長箱形に形成されたSUS製の内箱33と、その前面開口部に取り付けられた多孔質セラミックス製板材の燃焼プレート34と、内箱33の背面部に形成されたガス導入口35に接続されたバーナ用燃焼ガスを供給する供給配管36とによって構成されている。この内箱33は、その背面部に一回り大きい同形状のSUS製の外箱37が重ねられるとともに、これら内箱33と外箱37は、それぞれの周縁部に設けたフランジ38、39が重なり合って一体的に固定されることにより、両者の間に空気流路40が形成されている。
【0034】
さらに、この空気流路40には、空気配管41a〜41bによって缶体26の外部と空気流路40、空気流路40と空気マニホールド22とがそれぞれ接続されている。
これによって、供給配管36から混合ガスが供給されることにより、内箱33は混合ガスが充満した燃焼用の混合ガス室として機能するとともに、起動時に空気配管41aから空気流路40に空気が供給されることにより、空気流路40の空気が加熱されることから、各赤外線バーナ32と外箱37とによってそれぞれ起動用空気加熱器42が構成されている。また、各外箱37は、それぞれ赤外線バーナ32の冷却機構としても機能する。
【0035】
また、図1および図4に示すように、燃料電池スタック1a、1bと赤外線バーナ32との間に、気化筒43が配置されている。この気化筒43は、燃料電池スタック1a、1b高さ方向の上端部から下端部まで延在する高さを有している。
【0036】
さらに、図4に示すように、缶体26の下部には、発電時に缶体26内に放出された高温の排ガスを排出する排出口48が設けられており、当該排出口48には水気化器44が配置されている。
【0037】
そして、この水気化器44には、水配管45が接続されており、当該水配管45によって缶体26の外部と水気化器45が接続されるとともに、当該水配管45は、図1および図3に示すように、缶体25の断熱材25に囲われ、缶体25の全面を沿うようにして設けられている。さらに、水気化器44には、水蒸気配管46aが接続されており、当該水蒸気配管46aによって水気化器44の排出口と気化筒43の導入口とが接続されている。
【0038】
また、気化筒43には、水蒸気配管46bが接続されており、当該水蒸気配管46bによって気化筒43の排出口と起動用改質器30の上流に設けられた燃料混合部47とが接続されている。
【0039】
次いで、本実施形態の燃料電池モジュールの起動時の運転方法について説明する。
まず、赤外線バーナ32を起動し缶体26内を温度上昇させるとともに、これと並行して、燃料ガスを燃料配管31aの導入口に、純水を水配管45に、外部空気を空気配管41aの導入口にそれぞれ供給する。
【0040】
すると、水配管45に供給された水は、水気化器44を介して、水蒸気配管46aに供給された後に、気化筒43に供給される。そして、赤外線バーナ32の放熱を受熱して昇温された気化筒43によって水蒸気となる。その後、水蒸気配管46bに供給された上記水蒸気は、燃料混合部47へと供給された後に、燃料混合部47において燃料ガスと混合される。
一方、燃料配管31aに供給された燃料ガスは、上記水蒸気と混合されつつ、起動用改質器30に導入される。
【0041】
これにより、燃料配管31aに供給された水蒸気と混合した燃料ガスは、燃料電池スタック1a,1bの放熱を受熱して昇温された起動用改質器30において改質されて改質ガスとなり、当該改質ガスが、外周改質器29およびスタック間改質器28を介して、燃料配管31dによって燃料ガスマニホールド21へと供給される。そして、燃料ガスマニホールド21からセパレータ6の燃料ガス通路13を通じて吐出口12に至り、この吐出口12から燃料極集電体7を拡散移動し、さらに、燃料極層3から固体電解質層2に向けて移動する。
【0042】
以上のように、上記燃料電池モジュールにおいては、赤外線バーナ32によって起動用改質器30を加熱することにより、起動後早期段階で改質ガスを生成することが可能となる。そして、その改質ガスを燃料極層3に供給することにより、当該燃料極層3を還元状態に保つことができることから、燃料電池スタック1a、1bの温度が300℃以上になった際に生じる燃料極層3の酸化を防止することが可能となる。
【0043】
なお、起動後早期段階において、起動用改質器30よりも外周改質器29およびスタック間改質器28の方が低温であり、起動用改質器30で生成された改質ガスが外周改質器29およびスタック間改質器28内で逆改質反応が生じ、起動用改質器30で生成された改質ガスより、水素プアな改質ガスが燃料極層3に供給されるために、燃料極層3が酸化すると懸念される。しかしながら、起動後早期段階において、外周改質器29およびスタック間改質器28は、温度が低すぎるが故に改質触媒の活性が小さくなるために、逆改質反応が生じても燃料極層の酸化を防止するのに充分な改質ガスを燃料極層に供給することが可能である。
【0044】
その後、燃料電池スタック1a、1bは、赤外線バーナ32の放熱によって昇温された缶体26内の大気の熱を受熱するとともに、燃料電池スタック1a、1bに供給された高温の改質ガスの熱を受熱することにより昇温され、スタック温度が500℃に到達することにより起動して発電反応が開始される。
【0045】
そして、燃料電池スタック1a、1bは、発電反応を開始すると、当該発電反応は発熱反応であることから、発電反応の熱によって700℃以上に昇温される。また、それに伴い、改質器28、29、30も燃料電池スタック1a、1bの放熱によって、改質可能な温度に昇温されることから、赤外線バーナ32が停止される。
【0046】
次に、本実施形態の燃料電池モジュールの発電時の運転方法を説明する。
起動時と同様にして、燃料ガスを燃料配管31aの導入口に、純水を水配管45に、外部空気を空気配管41aの導入口にそれぞれ供給する。
【0047】
すると、水配管45に供給された水は、缶体26内の大気の熱を受熱して150℃程度まで昇温された断熱材25によって水と水蒸気が混合された状態となり、水気化器44へと供給される。そして、缶体26内の高温の排ガスによって加熱された水気化器44によって完全に水蒸気となる。その後、水蒸気配管46aに供給された水蒸気は、缶体26内の大気の熱を吸熱した気化筒43によってさらに加熱される。そして、水蒸気配管47bに供給された水蒸気は、燃料混合部47に供給された後に、燃料混合部47において燃料ガスと混合される。
一方、燃料配管31aに供給された燃料ガスは、上記水蒸気と混合されつつ、起動用改質器30に導入される。
【0048】
これにより、燃料配管31aに供給された水蒸気と混合した燃料ガスは、燃料電池スタック1a,1bの放熱を受熱して昇温された起動用改質器30において予熱されるとともに一部改質されて改質ガスとなり、燃料配管31bによって燃料電池スタック1a,1bそれぞれの放熱を受熱して起動用改質器30より高温に昇温された外周改質器29に供給されて、当該外周改質器29においてその殆どが改質される。その後、燃料配管31cによって燃料電池スタック1a,1bの放熱を受熱して外周改質器29より高温に昇温されたスタック間改質器28に供給され、当該スタック間改質器28よってより一層改質された後に、燃料配管31dによって燃料ガスマニホールド21へと供給される。そして、燃料ガスマニホールド21からセパレータ6の燃料ガス通路13を通じて吐出口12に至り、この吐出口12から燃料極集電体7を拡散移動し、さらに、燃料極層3から固体電解質層2に向けて移動する。
【0049】
他方、空気配管41aに供給された空気は、空気配管41aから各起動用空気加熱器42に供給されて、赤外線バーナ32を冷却しつつ直接的に加熱された後に、空気配管41bによって燃料電池スタック1a、1bの空気マニホールド22に供給される。そして、空気マニホールド22からセパレータ6の酸化剤ガス通路15を通じて吐出口14に至り、この吐出口14から空気極集電体8を拡散移動し、さらに、空気極層4において空気中の酸素が電子を受け取って酸化物イオンとなる。この酸化物イオンは、燃料極層3に向かって固体電解質層2内を拡散移動し、これによって、燃料極層3との界面近傍に到達した酸化物イオンは、この部分で改質ガスと反応して水蒸気などの反応生成物を生じ、燃料極層3に電子を放出する。そして、この電子が、別ルートの外部負荷にて起電力として取り出される。
【0050】
以上の構成からなる燃料電池モジュールによれば、スタック間改質器28、2つの外周改質器29を配置しているために、燃料電池モジュール全体としての改質触媒の容量および受熱面積を増加させることが可能となる。この結果、小型化された燃料電池モジュールにおいても、水素リッチな改質ガスを生成することが可能となる。
【0051】
また、起動用改質器30、外周改質器29およびスタック間改質器28、燃料ガスマニホールド21を、燃料配管31a〜31dによって起動用改質器30、外周改質器29、スタック間改質器28、燃料ガスマニホールド21の順番に接続しているために、上記燃料ガスは、起動用改質器30において予熱されるとともに一部改質され、起動用改質器30より温度の高い外周改質器29においてその殆どが改質された後に、スタック間改質器28においてより一層改質される。この結果、小型化された燃料電池モジュールにおいて、確実に水素リッチな改質ガスを生成することが可能となり、この水素リッチな改質ガスを燃料電池スタック1a、1bの燃料極層3に供給する事が可能となる。
【0052】
さらに、燃料電池スタック1a、1bの中でもジュール熱が発散し難く、特にセル温度が高温状態にある燃料電池スタック1a、1bの高さ方向の中央部近傍に、起動用改質器30を配置すると、当該起動用改質器30の改質反応は吸熱反応であることから、発電時に起動用改質器30が改質反応を行なうことにより、燃料電池スタック1a、1bの高さ方向の中央部近傍の熱を効果的に吸熱する。これにより、燃料電池スタック1a、1bの高さ方向の温度分布が均一化されて、燃料電池スタック1a、1b全体としての発電の効率化が図れると共に、高温下において生じ易い電極層3、4の剥離等、発電セル5の破損を防止することができ、燃料電池モジュールの耐久性を向上することが可能となる。
【実施例】
【0053】
本実施形態の燃料電池モジュールにおいて、スタック間改質器28の排出口に温度計を設置して温度を測定した。
【0054】
この際、上記実施形態の燃料電池モジュールと比較するために、スタック間改質器28、外周改質器29、起動用改質器30の順に燃料配管31a〜31dを接続して、起動用改質器30の排出口に温度計を設置して温度を測定した。
【0055】
すると、上記燃料電池モジュールの起動用改質器30の排出口の温度は610℃〜630℃となり、本実施形態スタック間改質器28の排出口の温度は700℃となった。
【0056】
この結果、燃料配管31a〜31dによって燃料電池スタック1a、1bの放熱を受熱し難い改質器から受熱し易い改質器へと順番に接続することにより、燃料電池スタック1a、1bに温度の高い改質ガス、即ち確実に水素リッチな改質ガスを供給することが可能であることが実証された。
【符号の説明】
【0057】
1a〜1b 燃料電池スタック
2 固体電解質層
3 燃料極層
4 空気極層
26 缶体
28 スタック間改質器(第1の改質器)
29 外周改質器(第2の改質器)
30 起動用改質器(第3の改質器)
31a〜31d 燃料配管
32 赤外線バーナ(起動用加熱手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型の缶体内部に、固体電解質層の一方の表面に燃料極層が配置され、他方の表面に酸化剤極層が配置された発電セルとセパレータとを交互に積層した直方体状の燃料電池スタックを複数配置するとともに、上記燃料極層に改質された燃料ガスおよび上記酸化剤極層に酸化剤ガスを供給することにより発電反応を生じる燃料電池モジュールにおいて、
上記燃料電池スタックが平面視において横方向に2行、縦方向に1列配置されるとともに、
上記燃料電池スタック同士の間に、発電時に双方の燃料電池スタックの放熱を受熱して上記燃料ガスを改質する第1の改質器が配置され、
それぞれの上記燃料電池スタックの上記第1の改質器が配置された面を除く外周面の少なくとも一面と上記缶体との間に、発電時に当該燃料電池スタックの放熱を受熱して上記燃料ガスを改質する第2の改質器が配置されており、
且つ上記燃料ガスが上記第2の改質器に導入された後に、上記第1の改質器に導入されて各々燃料電池スタックの燃料極層へと供給されるように、燃料配管によって第2の改質器の排出口と第1の改質器の導入口が接続され、第1の改質器の排出口と各々燃料電池スタックの燃料極層とが接続されていることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
上記缶体におけるそれぞれの上記燃料電池スタックの上記第1および第2の改質器が配置された面を除く外周面の少なくとも一面と対向する位置に、起動時に上記缶体内に向けて放射熱を放射する起動用加熱手段が配置されるとともに、
それぞれの上記燃料電池スタックと上記起動用加熱手段との間に、上記第1の改質器に比べて上記燃料電池スタックの放熱の受熱面積が小さく、起動時に上記起動用加熱手段の放熱を受熱して上記燃料ガスを改質する第3の改質器が配置されており、
且つ上記燃料ガスが上記第3の改質器に導入された後に上記第2の改質器に導入されるように、上記燃料配管によって第3の改質器の排出口と第2改質器の導入口が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
上記第3の改質器は、上記燃料電池スタックの高さ方向の中央部近傍に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−159443(P2011−159443A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18638(P2010−18638)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】