説明

燃料電池用ガスケット

【課題】MEA等の相手シール面に密接する主リップと、セパレータに密接する面圧集中用の副リップとを有する非接着タイプのガスケットにおいて、当該ガスケットが装着時に倒れるのを抑え、もってシール性を安定させる。
【解決手段】燃料電池のセパレータ2に非接着で組み付けられて相手シール面に密接するガスケット1であって、相手シール面に密接する主リップ5と、セパレータ2に対する組み付け面6に設けられてセパレータ2に密接する面圧集中用の副リップ7とを有するガスケット1において、組み付け面6における副リップ7の幅方向両側に、当該ガスケット1が装着時に倒れるのを抑制する倒れ防止用突起8を設けることにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の構成要素の一つをなす燃料電池用ガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタック内の各セルのガス流路用ガスケットとしては、ゴム等の弾性体よりなり、セパレータに一体成形される一体成形型のガスケット、接着剤等を用いてセパレータに後貼りされる接着タイプのガスケット、およびセパレータに設けた装着溝に非接着で嵌め込まれる非接着嵌め込みタイプのガスケットが知られている。
【0003】
このうち、非接着嵌め込みタイプのガスケットの断面形状としては、図3に示すように、セパレータ51と接する面(組み付け面)52の反対側にリップ(主リップ)53を形成し、相手シール面をなすMEA(図示せず)側の面圧を確保する形状が一般的である。
【0004】
しかしながら、MEA側のみにリップ53を形成したこの図3のガスケットによると、反対面のセパレータ51側(上記組み付け面52)が平坦であることから、面圧が分散してしまい十分な面圧が得られず、よってリークの原因となることが懸念される。
【0005】
そこで、本願出願人は先に図4に示すように、セパレータ51側にもリップ(副リップ)54を形成し、MEA側と同様に、中心部に面圧を集中させることでセパレータ51側からのリークを阻止する形状を提案している(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、この図4のガスケットによると、当該ガスケットが装着され圧縮されたときに当該ガスケットが倒れることがあるために、安定したシール性を確保できないことが懸念される。
【0007】
【特許文献1】特開2001−108103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の点に鑑みて、上記MEA等の相手シール面に密接する主リップと、セパレータに密接する面圧集中用の副リップとを有する非接着タイプのガスケットにおいて、当該ガスケットが装着時に倒れるのを有効に抑えることができ、もってシール性を安定させることができるガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるガスケットは、燃料電池のセパレータに非接着で組み付けられて相手シール面に密接するガスケットであって、前記相手シール面に密接する主リップと、前記セパレータに対する組み付け面に設けられて前記セパレータに密接する面圧集中用の副リップとを有するガスケットにおいて、前記組み付け面における副リップの幅方向両側に、当該ガスケットが装着時に倒れるのを抑制する倒れ防止用突起を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項2によるガスケットは、上記した請求項1のガスケットにおいて、倒れ防止用突起は、その高さ寸法が副リップの高さ寸法と同じに設定されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項3によるガスケットは、上記した請求項1の燃料電池用ガスケットにおいて、倒れ防止用突起は、その高さ寸法が副リップの高さ寸よりも小さく設定されていることを特徴とするものである。
【0012】
更にまた、本発明の請求項4によるガスケットは、上記した請求項1ないし3の何れかに記載した燃料電池用ガスケットにおいて、副リップは、そのガスケット幅方向における形成位置が主リップの形成位置とオーバーラップするように設定されており、倒れ防止用突起は、そのガスケット幅方向における形成位置が主リップの形成位置とオーバーラップせずその両側に設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
上記構成を備えた本発明の請求項1によるガスケットのように、組み付け面における副リップの幅方向両側に当該ガスケットが装着時に倒れるのを抑制する倒れ防止用突起を設けると、装着時に圧縮されて倒れようとするガスケットが突起によって支えられることになる。突起は副リップの幅方向両側にそれぞれ設けられているので、ガスケットが幅方向何れの側へ倒れようとしても支えとして機能する。
【0014】
また、このように支えとして機能する突起は、その高さ寸法を副リップの高さ寸法と同じに設定することによりガスケットの座りが最も安定するが(請求項2)、この場合には、副リップと突起とに面圧が分散するために、副リップへの面圧集中が少々阻害されることが懸念される。したがってこのような場合には、倒れ防止用突起の高さ寸法を副リップの高さ寸法よりも小さく設定するのが好適であり、これにより副リップへの面圧集中の度合いを高めることが可能となる(請求項3)。
【0015】
また、ガスケット幅方向における副リップの形成位置を主リップの形成位置とオーバーラップするよう設定するとともに、ガスケット幅方向における倒れ防止用突起の形成位置を主リップの形成位置とオーバーラップせずその両側に設定すると、装着時に相手シール面に密接して圧縮される主リップによって、副リップは比較的大きく潰れ、突起はあまり潰れないことになる。したがってこのように設定することによっても、副リップへの面圧集中の度合いを高めることが可能となる(請求項4)。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0017】
すなわち、本発明の請求項1によるガスケットにおいては、組み付け面における副リップの幅方向両側に当該ガスケットが装着時に倒れるのを抑制する倒れ防止用突起が設けられているために、ガスケットが装着時に圧縮されて倒れようとすると、突起によって支えられる。突起は副リップの幅方向両側にそれぞれ設けられているので、ガスケットが幅方向何れの側へ倒れようとしても支えとして機能する。したがって所期の目的どおり、ガスケットが装着時に倒れるのを有効に抑えることができ、シール性を安定させることができる。
【0018】
また、組み付け面における副リップの幅方向両側に突起を設けると、副リップへの面圧集中が少々阻害されることが懸念されるが、請求項3によるガスケットにおいては、突起の高さ寸法が副リップの高さ寸法よりも小さく設定されるために、副リップへの面圧集中の度合いを高めることができ、請求項4によるガスケットにおいては、ガスケット幅方向における副リップの形成位置が主リップの形成位置とオーバーラップするよう設定されるとともにガスケット幅方向における倒れ防止用突起の形成位置が主リップの形成位置とオーバーラップせずその両側に設定されるために、やはり副リップへの面圧集中の度合いを高めることができる。したがってこれらの点からしても、ガスケットのシール性を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
尚、本件出願には、以下の実施形態が含まれる。
【0020】
(1)装着時圧縮方向の両側(MEA側/セパレータ側)にリップをもつ形状のガスケットにおいて、底面(セパレータ側)両サイドに突起を設けることにより、圧縮時の座りを良くし、倒れを防止する。
(2)ガスケット底面(セパレータ側)中央部にリップをもち、セパレータ側の面圧を中央部に集中させる形状のガスケットにおいて、底面両サイドに突起を設けることにより、圧縮時の座りを良くし、倒れを防止する。
(3)リップは、MEA側の主リップに比べて底面側の副リップが小さい形状とする。ガスケットのつぶしは主に主リップで生じる。これにより突起によるガスケット倒れ込み防止効果が顕著となる。
(4)平ガスケット中央部の両面(MEA側/セパレータ側)にリップをもち、両面中央部に面圧を集中させるガスケットに対して、底面の両サイドに突起を設けることにより、圧縮時の座りを良くし、倒れを防止する。
(5)おむすび形状のガスケットで底面(セパレータ側)中央部にもリップを形成し、MEA側およびセパレータ側の両面中央部に面圧を集中させるガスケットに対して、底面両サイドに突起を設けることにより、圧縮時の座りを良くし、倒れを防止する。
【実施例】
【0021】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0022】
第一実施例・・・
図1は、本発明の第一実施例に係るガスケット1、およびこれと対比するための比較例に係るガスケット1の断面を示している。
【0023】
当該ガスケット1は、燃料電池のセパレータ2における装着溝3に非接着にて組み付けられて、相手シール面をなすMEA(膜電極複合体)(図示せず)に対して密接するガスケットである。また、当該ガスケット1は、断面横長の長方形状を呈する平ガスケットであり、図1(A)の比較例に示すように、MEA側端面(図上上面)4の幅方向(図上左右方向)中央にMEAに密接する主リップ5が設けられるとともに、組み付け面(図上下面)6の幅方向中央にセパレータ2に密接する副リップ7が設けられていることから、当該ガスケット1は装着時、高さ方向(図上上下方向)に圧縮されたときに当該ガスケット1が幅方向一方(図上左方向または右方向)に倒れることが懸念される。
【0024】
そこで、当該実施例では、図1(B)に示すように、上記組み付け面6における副リップ7の幅方向両側にそれぞれ、当該ガスケット1が装着時に倒れるのを抑制する倒れ防止用突起8が設けられ、これにより当該ガスケット1が装着時に倒れるのが防止されている。突起8は副リップ7の幅方向両側にそれぞれ設けられているので、ガスケット1が幅方向何れの側へ倒れようとしても支えとして機能する。また、突起8はそれぞれ組み付け面6の幅方向端部に設けられているので、幅方向中央寄りに設けられる場合よりも支え力が大きい。したがって、ガスケット1が装着時に倒れるのを有効に防止することができ、もって当該ガスケット1のシール性を安定させることができる。
【0025】
また、当該実施例において、突起8の高さ寸法は、副リップ7の高さ寸法と同じに設定されているが、上記した理由により、副リップ7の高さ寸よりも小さく設定されても良い。
【0026】
また、副リップ7は、その形成位置が主リップ5の形成位置とガスケット幅方向にオーバーラップするように設定され、これに対して突起8は、その形成位置が主リップ5の形成位置とはガスケット幅方向にオーバーラップすることなくその両側(外側)に設定されている。したがって、装着時に主リップ5がMEAに密接して圧縮されると、その反力を受けて直下の副リップ7は比較的大きく潰されるが、直下外の突起8はあまり潰されないことになる。したがって、副リップ7の幅方向両側に突起8が設けられても、セパレータ2に密接すべき副リップ7への面圧集中が極端に低減してしまうのを防止することができる。
【0027】
第二実施例・・・
図2は、本発明の第二実施例に係るガスケット1、およびこれと対比するための比較例に係るガスケット1の断面を示している。
【0028】
当該ガスケット1は、燃料電池のセパレータ2における装着溝3に非接着にて組み付けられて、相手シール面をなすMEA(膜電極複合体)(図示せず)に対して密接するガスケットである。また、当該ガスケット1は、断面三角形の山形形状を呈するガスケットであり、図2(A)の比較例に示すように、MEA側頂部(図上上端部)にMEAに密接する主リップ5が設けられるとともに、組み付け面(図上下面)6の幅方向中央にセパレータ2に密接する副リップ7が設けられていることから、当該ガスケット1は装着時、高さ方向(図上上下方向)に圧縮されたときに当該ガスケット1が幅方向一方(図上左方向または右方向)に倒れることが懸念される。
【0029】
そこで、当該実施例では、図2(B)に示すように、上記組み付け面6における副リップ7の幅方向両側にそれぞれ、当該ガスケット1が装着時に倒れるのを抑制する倒れ防止用突起8が設けられ、これにより当該ガスケット1が装着時に倒れるのが防止されている。突起8は副リップ7の幅方向両側にそれぞれ設けられているので、ガスケット1が幅方向何れの側へ倒れようとしても支えとして機能する。また、突起8はそれぞれ組み付け面6の幅方向端部に設けられているので、幅方向中央寄りに設けられる場合よりも支え力が大きい。したがって、ガスケット1が装着時に倒れるのを有効に防止することができ、もって当該ガスケット1のシール性を安定させることができる。
【0030】
当該実施例においても、突起8の高さ寸法は、副リップ7の高さ寸法と同じに設定されているが、上記した理由により、副リップ7の高さ寸よりも小さく設定されても良い。
【0031】
また、副リップ7は、その形成位置が主リップ5の形成位置とガスケット幅方向にオーバーラップするように設定され、これに対して突起8は、その形成位置が主リップ5の形成位置とはガスケット幅方向にオーバーラップすることなくその両側(外側)に設定されている。したがって、装着時に主リップ5がMEAに密接して圧縮されると、その反力を受けて直下の副リップ7は比較的大きく潰されるが、直下外の突起8はあまり潰されないことになる。したがって、副リップ7の幅方向両側に突起8が設けられても、セパレータ2に密接すべき副リップ7への面圧集中が極端に低減してしまうのを防止することができる。
【0032】
尚、上記第一および第二実施例に共通して、突起8の断面形状は、特に限定されない。また、突起8は、主リップ5および副リップ7と同様、ガスケット1の全周に亙ってエンドレスに設けられ、これにより副次的にシール機能を発揮するが、必ずしも全周に亙って設けられる必要はなく、周上複数の突起8を並べて設けるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(A)は比較例に係るガスケットの断面図、(B)は本発明の第一実施例に係るガスケットの断面図
【図2】(A)は比較例に係るガスケットの断面図、(B)は本発明の第二実施例に係るガスケットの断面図
【図3】従来例に係るガスケットの断面図
【図4】他の従来例に係るガスケットの断面図
【符号の説明】
【0034】
1 ガスケット
2 セパレータ
3 装着溝
4 MEA側端面
5 主リップ
6 組み付け面
7 副リップ
8 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池のセパレータ(2)に非接着で組み付けられて相手シール面に密接するガスケット(1)であって、前記相手シール面に密接する主リップ(5)と、前記セパレータ(2)に対する組み付け面(6)に設けられて前記セパレータ(2)に密接する面圧集中用の副リップ(7)とを有するガスケット(1)において、
前記組み付け面(6)における副リップ(7)の幅方向両側に、当該ガスケット(1)が装着時に倒れるのを抑制する倒れ防止用突起(8)を設けたことを特徴とする燃料電池用ガスケット。
【請求項2】
請求項1の燃料電池用ガスケットにおいて、
倒れ防止用突起(8)は、その高さ寸法が副リップ(7)の高さ寸法と同じに設定されていることを特徴とする燃料電池用ガスケット。
【請求項3】
請求項1の燃料電池用ガスケットにおいて、
倒れ防止用突起(8)は、その高さ寸法が副リップ(7)の高さ寸よりも小さく設定されていることを特徴とする燃料電池用ガスケット。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載した燃料電池用ガスケットにおいて、
副リップ(7)は、そのガスケット幅方向における形成位置が主リップ(5)の形成位置とオーバーラップするように設定されており、倒れ防止用突起(8)は、そのガスケット幅方向における形成位置が主リップ(5)の形成位置とオーバーラップせずその両側に設定されていることを特徴とする燃料電池用ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−4851(P2006−4851A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182168(P2004−182168)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】