燃料電池用セパレータ、燃料電池、燃料電池用セパレータの製造方法及び燃料電池用セパレータのめっき装置
【課題】耐食性のためにピンホールなどの発生を抑制し、効率的に燃料電池を製造することができる燃料電池用セパレータ、燃料電池、燃料電池用セパレータの製造方法及び燃料電池用セパレータのめっき装置を提供する。
【解決手段】燃料側セパレータ及び空気側セパレータに対峙させて陽極板を挿入しためっきユニット20を構成する。そして、めっきユニット20において、燃料、熱流体や空気を流す流路に対して、めっき液と、これの拡散力を高める超臨界CO2とを混合分散させためっき分散体を供給する。更に、このめっきユニット20の陽極板と、セパレータとの間で通電を行ない、電解めっきを行なう。これにより、流路板の凸部にめっきを膜が形成される。更に、陽極板を外しMEAと差し替えて、合体することにより燃料電池スタックを製造することができる。
【解決手段】燃料側セパレータ及び空気側セパレータに対峙させて陽極板を挿入しためっきユニット20を構成する。そして、めっきユニット20において、燃料、熱流体や空気を流す流路に対して、めっき液と、これの拡散力を高める超臨界CO2とを混合分散させためっき分散体を供給する。更に、このめっきユニット20の陽極板と、セパレータとの間で通電を行ない、電解めっきを行なう。これにより、流路板の凸部にめっきを膜が形成される。更に、陽極板を外しMEAと差し替えて、合体することにより燃料電池スタックを製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素と酸素とを化学反応させて生成した電気を取り出す燃料電池用セパレータ、燃料電池、燃料電池用セパレータの製造方法及び燃料電池用セパレータのめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護の観点から、大気汚染の原因となるものを排出せずに、電力を発生させる技術が開発されつつある。この技術に1つとして、エネルギー変換効率が高い燃料電池がある。この燃料電池は、電気分解の逆反応で、水素と酸素とを化学反応させて、水以外の排出物を出さずに発電を行なう。
【0003】
燃料電池の構成には、いくつか種類がある。例えば、平板スタックと呼ばれる構成があり、これは図13に示すようにセル500が複数積層されている。このセル500は、図14に示すように、支燃性と可燃性の物質(燃料ガスと空気)が混合しないように分離し、MEA(membrane electrode assembly;膜・電極接合体)のガス拡散層の全面にまんべんなくガスが供給されるようにガス流れのガイドするためのセパレータを備える。このセパレータはガス拡散層を介して、MEAで発生する電流を集電、セル接続の端子も兼ねる。セパレータには内部に熱流体の流路を持ち、発電時、MEAの冷加熱を行なうものもある。MEAは、水素を取り込む燃料極(第1の電極)と、空気から酸素を取り込む空気極(第2の電極)との間に、電解質層を介在させて構成される。燃料極は、燃料極触媒層と、ガス拡散層とから構成される。ガス拡散層は、カーボンメッシュ、カーボンクロス、カーボンペーパ等で、ガスを透過しやすいように多くの空隙を持つ構造を有する。このガス拡散層には、繊維状やファイバー状の導電性カーボンの不織布等が用いられる。
【0004】
また、空気極は、空気極触媒層とガス拡散層とから構成される。そして、燃料極から取り込まれた水素と、空気極から取り込まれた酸素とが、電解質層を介して化学反応することにより、空気極から燃料極へと流れる電流が発生する。
【0005】
従来、燃料電池のセパレータには、緻密性カーボンセパレータが用いられていた。しかし、低コスト化や小型・軽量化のために、金属セパレータが用いられるようになってきている(例えば特許文献1参照。)。この金属セパレータにおいてステンレス鋼等を用いた場合、表面に不動態皮膜が形成されると、電極との接触抵抗が大きくなり、エネルギー変換効率が低下する。そこで、耐食性向上のためにめっき処理が行なわれていた。また、形成されためっき皮膜にピンホールが生じている場合には、このピンホールを介して腐食が生じることがある。そこで、特許文献1においては、耐食性を向上させるために、めっき処理により生じたピンホールを削除する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−68129号公報(第1頁〜第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、めっき処理により生じたピンホールを押し潰したり酸化膜で覆ったりすることにより、ピンホールを削除している。このため、特許文献1記載の技術では、ピンホールの削除のために、めっき処理とは別の処理工程を行なう必要があり、燃料電池の生産性の向上を図ることができなかった。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされ、その目的は、ピンホールなどの発生を抑制し、効率的に燃料電池を製造することができる燃料電池用セパレータ、燃料電池、燃料電池用セパレータの製造方法及び燃料電池用セパレータのめっき装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ガス供給路を設けた第1のセパレータと、第1の電極、電解質層、第2の電極と、前記第2の電極に接続させたガス供給路を設けた第2のセパレータとを備えた燃料電池に用いるセパレータであって、前記第1のセパレータを前記第1の電極に接触させるために、前記第1のセパレータのガス供給路の表面に、めっき液と、めっき液の拡散力を高める拡散流体とを用いて形成しためっき皮膜を設けたことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料電池用セパレータにおいて、前記ガス供給路は、前記第1の電極に接する凸部と、ガスを供給する溝部とを有し、前記凸部に形成されためっき皮膜の膜厚を、前記溝部の膜厚より厚くしたことを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池用セパレータにおいて、前記第2のセパレータを前記第2の電極に接触させるために、前記第2のセパレータのガス供給路の表面に、めっき液と、めっき液の拡散力を高める拡散流体とを用いて形成しためっき皮膜を設けたことを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の燃料電池用セパレータにおいて、前記ガス供給路は、前記第2の電極に接する凸部と、ガスを供給する溝部とを有し、前記凸部に形成されためっき皮膜の膜厚を、前記溝部の膜厚より厚くしたことを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータにおいて、前記めっき皮膜の形成において、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤を更に用いることを要旨とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、めっき液と、めっき液の拡散力を高める拡散流体とを用いてめっき皮膜が形成されたガス供給路を設けた第1のセパレータと、前記めっき皮膜に接触させた第1の電極、電解質層、第2の電極と、前記第2の電極に接続させたガス供給路を設けた第2のセパレータとを備えたことを要旨とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の燃料電池において、前記第1のセパレータのガス供給路には空気を供給する空気取込口を備え、前記空気取込口にはフィルタを備えたことを要旨とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の燃料電池において、前記めっき皮膜の形成において、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤を更に用いることを要旨とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、第1のガス供給路を設けた第1のセパレータと、第2のガス供給路を設けた第2のセパレータとを備えた燃料電池に用いる燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記第1のガス供給路と前記第2のガス供給路とを対向させて配置した状態の前記各セパレータ間に、当該各セパレータ間のクリアランスを調整するスペーサを配置することにより、前記各セパレータを積層し、前記第1又は第2のガス供給路に、めっき液とこのめっき液の拡散力を高める拡散流体とを含むめっき分散体を連続的に供給することにより、前記第1又は第2のセパレータにめっき皮膜を形成することを要旨とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記スペーサを介して、前記第1のセパレータと第2のセパレータとの間に陽極板を設け、前記第1又は第2のセパレータを陰極板として用いて、前記第1又は第2のセパレータと前記陽極板との間に通電した電解めっきによりめっき皮膜を形成することを要旨とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は請求項10に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記第1のガス供給路に第1のめっき分散体を導入し、前記第2のガス供給路に、前記第1のめっき分散体を導入するとともにめっきの条件を変更すること、又は前記第1のめっき分散体と異なる第2のめっき分散体を導入することを要旨とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記めっき分散体には、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤が更に含まれることを要旨とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、第1のガス供給路を設けた第1のセパレータと、第2のガス供給路を設けた第2のセパレータとを備えた燃料電池に用いる燃料電池用セパレータのめっき装置であって、前記第1のガス供給路と前記第2のガス供給路とを対向させて配置した状態の前記各セパレータ間に、当該各セパレータ間のクリアランスを調整するスペーサを配置することにより、前記各セパレータを積層しためっきユニットと、前記第1又は第2のガス供給路に、めっき液とこのめっき液の拡散力を高める拡散流体とを含むめっき分散体を連続的に供給するめっき分散体供給手段とを備え、前記第1又は第2のセパレータにめっき皮膜を形成することを要旨とする。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の燃料電池用セパレータのめっき装置において、前記スペーサを介して、前記第1のセパレータと第2のセパレータとの間に陽極板を設け、前記第1又は第2のセパレータを陰極とする通電手段を備えたことを要旨とする。
【0022】
請求項15に記載の発明は、請求項13又は請求項14に記載の燃料電池用セパレータのめっき装置において、前記めっき分散体供給手段は、前記第1のガス供給路に第1のめっき分散体を導入する第1導入手段と、前記第1のめっき分散体とは異なる第2のめっき分散体を前記第2のガス供給路に導入する第2導入手段とから構成されていること、又は、前記めっき分散体供給手段は、前記第1及び第2のガス供給路に第1のめっき分散体を導入する導入手段を有し、第1のガス供給路におけるめっき条件と、第2のガス供給路におけるめっき条件とを変えることによって、第1のセパレータと第2のセパレータとに異なるめっき皮膜を形成することを要旨とする。
【0023】
請求項16に記載の発明は、請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータのめっき装置において、前記めっき分散体には、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤が更に含まれることを要旨とする。
【0024】
(作用)
請求項1又は6に記載の発明によれば、拡散流体を用いることにより、めっき液の拡散力が高くなるため、めっき皮膜の付き回りが良好になる。従って、腐食されやすい第1のセパレータのガス供給路の表面に、腐食の原因となるクラックやピンホールがない良好なめっき皮膜を形成することができる。例えば、めっき皮膜として貴金属(例えば金)を用いて、クラック、ピンホールがないように母材の金属を覆うと、母材金属の腐食電流を抑制できる。更に、貴金属自体はイオンになり難く、母材金属のイオン溶出を抑制できるので、電極や電解質膜を金属イオンによる汚染、内部抵抗の増加を回避できる。更に、母材の表面を覆う貴金属は酸化され難く、セパレータ表面に酸化皮膜ができないので電気抵抗の増加を抑制できる。従って、高効率の燃料電池を製造することができる。
【0025】
請求項2又は4に記載の発明によれば、ガス供給路は、電極に接する凸部とガスを供給する溝部とを有し、凸部に形成されためっき皮膜の膜厚を溝部の膜厚より厚くする。これにより、ガス供給路に形成されためっき皮膜において、電極に接触する部分の膜厚を、他の部分の膜厚より厚くすることができる。セパレータのめっき皮膜において、電極に接触する部分は、振動を受けると、繰り返し電極と擦り合わされることがあり、めっき皮膜が削れて腐食が生じるおそれがある。このような部分のめっき皮膜を厚くすることにより、腐食の発生を効率的に抑制することができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、前記第2のセパレータのガス供給路においても、母材金属の腐食電流を抑制することができる。更に、めっき皮膜として貴金属を用いた場合、貴金属自体はイオンになり難く、母材金属のイオン溶出を抑制でき、金属イオンによる電極や電解質膜の汚染、内部抵抗の増加を抑制できる。更に、母材の表面を覆う貴金属は酸化され難く、セパレータ表面に酸化皮膜ができないので、電気抵抗の増加を抑制できる。従って、高効率の燃料電池を製造することができる。
【0027】
請求項5、8、12又は16の発明によれば、フッ素系化合物により、拡散流体に対するめっき液の分散が促進されることで、皮膜の付き回りが更に良好となり、皮膜におけるピンホールの形成を抑制することが更に容易になる。従って、めっき膜の表面を更に平滑にすることが可能であり、良好なめっき皮膜を得ることができる。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、空気取込口にフィルタを設ける。このフィルタを空気が通過することにより、空気中に含まれる塵埃を除去することができる。従って、ガス供給路には、エロージョンやコロージョンなどの原因となる塵埃が少ない空気を導入することができ、めっき皮膜の腐食を抑制することができる。
【0029】
請求項9又は13に記載の発明によれば、燃料電池を構成する複数のセパレータの表面を一括してめっきすることができる。また、配置される順番に積層されるので、めっき皮膜を形成した後に、例えばMEAなどを挿入することにより、効率よく燃料電池の組み立てを行なうことができる。更に、めっきに用いられるめっき分散体は、めっき液と、このめっき液の拡散力を高めるための拡散流体とを含むため、めっき皮膜の付き回りが良好になる。従って、めっき皮膜を薄くした場合にも、良好なめっき被覆率(カバレッジ)を得ることができる。また、めっき分散体を連続的に供給するため、めっきの副反応により生じる、ピンホールの原因となる水素及び不純物を迅速に排出することができる。従って、更に良好なめっき皮膜を形成することができる。
【0030】
請求項10又は14に記載の発明によれば、電解めっきを行なうことにより、高速にめっき皮膜を形成することができる。
請求項11又は15に記載の発明によれば、第1のガス供給路と第2のガス供給路とに異なる属性(材質や膜厚等)のめっき皮膜を形成することができる。燃料電池においては、第1のガス供給路に導入するガスと、第2のガス供給路に導入するガスの種類が異なるために、そのガスの性質に応じてめっき皮膜を使い分けることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ピンホールを抑制しためっき処理によりめっき皮膜をセパレータに形成することができるので、効率的に高性能な燃料電池を製造し、提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図12を用いて説明する。本実施形態では、内部フォールド型電池のスタックを用いて説明する。
(燃料電池の構成)
まず、燃料電池を構成する1つのセルの要部構造40について説明する。ここでは、内部マニフォールド型電池について説明する。この内部マニフォールド型電池のセパレータにおいては、発電領域の他に、後述するようにガスや熱流体を分配する機構(内部マニフォールド)が設けられている。図1は、セルの中央部の発電領域の要部構造40の一部を切り出して説明した図である。この図1に示すように、要部構造40は、MEA30と、この一方に設けられた燃料側セパレータ31と、その他方に設けられた空気側セパレータ32とから構成されている。
【0033】
第2のセパレータとしての燃料側セパレータ31及び第1のセパレータとしての空気側セパレータ32は、例えば、ステンレス鋼(SUS鋼)などで構成される基板からなる。この基板の断面形状は、プレス加工等により台形形状の凸部と溝部が形成され、この溝部はガスを拡散させるためのガス流路となる。燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32においては、MEA30側に対向する全面に金(Au)膜が形成されている。そして、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32と、MEA30との間に形成される溝が、水素又は空気を供給するガス供給路を構成する。
【0034】
詳述すると、燃料側セパレータ31においては、図1における基板の下面にAu膜を形成する。この燃料側セパレータ31において、上に凸となった部分とMEA30との間の空間に水素を通過させる。一方、空気側セパレータ32においては、基板の上面にAu膜を形成する。この空気側セパレータ32において、下に凸となった部分とMEA30との間の空間に空気を通過させる。
【0035】
なお、図1に示す要部構造40は、燃料側セパレータ31のガス供給路の溝部の延在方向と、空気側セパレータ32のガス供給路の溝部の延在方向とが直交するように、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32を配置してなる十字流(直交流)型構造である。この他に、燃料側セパレータ31のガス供給路の溝部の延在方向と、空気側セパレータ32のガス供給路の溝部の延在方向が平行になる並流型構造や向流型構造がある。
【0036】
一方、燃料側セパレータ31と空気側セパレータ32との間に介在するMEA30は、電解質層300と、これの一方の面に設けられた第2の電極としての燃料極触媒層301と、他方の面に設けられた第1の電極としての空気極触媒層302と、ガス拡散層303,304とを一体化させたものである。
【0037】
燃料極触媒層301は、燃料に含まれる水素ガスから水素イオンを生成するための層である。ここでは、白金(Pt)等の触媒金属を担持させる。電解質層300は、燃料極触媒層301で発生した水素イオン(プロトン)を空気極触媒層302に伝達する層である。空気極触媒層302は、酸素と、電解質層300を介して拡散された水素イオンとを反応させて水を生成する層である。
【0038】
ガス拡散層303は燃料極触媒層301に接して形成され、上述した燃料側セパレータ31のガス供給路の溝部を通過する燃料をMEA30の全面に拡散させる機能を有する。また、ガス拡散層304は空気極触媒層302に接して形成され、空気側セパレータ32のガス供給路の溝部を通過する空気を、MEA30の全面に拡散させる機能を有する。これらガス拡散層303及び304は、例えば、カーボンペーパやカーボンクロスにより構成される。
【0039】
以上のような要部構造40を備えた燃料側セパレータ31と空気側セパレータ32においては、後述するように縁部においてガスや熱流体を分配する機構が設けられている。このように構成されたセル500を積層させることにより燃料電池のスタックが構成される。なお、スタックの端に位置する燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32には、このスタックにより発生した電気を取り出すための電気出力端子が設けられたセパレータエンド板が取り付けられる。また、スタック内には、例えば数個毎に、隣り合ったセルの燃料側セパレータ31と空気側セパレータ32との間に冷却板を挿入する。この冷却板は、化学反応により生じる熱を冷却するための熱流体を流通させる通路を形成するためにプレス加工されている。更に、燃料電池には、燃料側セパレータ31のガス供給路に供給するための燃料を外部から取り込むための燃料ガス取込口が設けられている。また、この燃料電池には、空気側セパレータ32のガス供給路に供給するための空気を外部から取り込むための空気取込口が設けられている。この空気取込口には、塵埃を除去するためのフィルタが設けられている。
【0040】
(セパレータを構成する流路板の組み合わせ)
次に、セパレータの構成について説明する。上述のような燃料電池においては、内部に発電のための燃料ガスとしての水素ガス、酸素ガスを含んだ空気を流すためのガス供給路、冷却のための熱流体を流すための流路が設けられている。この場合、複数種類の流路板を組み合わせて構成されるが、内部フォールド型電池においては、これらの燃料、空気、熱流体を分配するためのマニフォールドが、各流路板に設けられている。この流路板の一例を、図2を用いて説明する。
【0041】
図2に、燃料を流すための溝部として縦溝を設けた流路板11aの一例を示す。この流路板11aには、燃料供給孔101a、熱流体供給孔101b、空気供給孔101cが設けられている。更に、この供給孔(101a、101b、101c)に対応して、燃料排出孔104a、熱流体排出孔104b、空気排出孔104cが設けられている。これらの供給孔(101a、101b、101c)や排出孔(104a、104b、104c)は、すべての流路板に同じ位置に共通して設けられる。この流路板11aは燃料を流すために、燃料供給孔101aから分配路102が設けられている。この分配路102には、前述のプレス加工等で作製された凹凸部により燃料を流すため縦溝からなる流路103が設けられている。そして、この分配路102は、燃料排出孔104aに接続される。
【0042】
燃料電池においては、このように供給孔(101a、101b、101c)や排出孔(104a、104b、104c)、各孔に接続された分配路102、各分配路102に設けられた各種流路を備えた流路板を組み合わせて各種セパレータを構成する。この流路板の組み合わせ方を、図3を用いて説明する。各セパレータは3枚又は2枚の流路板等を組み合わせて構成する。ここでは、3枚又は2枚の組み合わせを、便宜上、表面側、内部、裏面側に分けて説明する。そして、表面側において燃料又は熱流体、裏面側において空気又は熱流体を流す場合を説明する。
【0043】
表面側においては、上述の流路板11aの他に、燃料を流す流路を90度回転させた横溝からなる流路板11bを用いることも可能である。また、熱流体供給孔101bと熱流体排出孔104bとの間に分配路102が設けられた流路を備える流路板11cを用いることも可能である。更に、セルの最表面側には、燃料、熱流体排出、空気の入口となる供給孔(101a、101b、101c)や排出孔(104a、104b、104c)、電気出力端子が設けられたセパレータエンド板11dを用いる。
【0044】
また、内部においては、セパレータ用金属枠m1や、熱流体供給孔101bと熱流体排出孔104bとの間に分配路102が設けられた流路板12bを用いる。また、2枚の流路板を組み合わせて構成する場合には、内部には流路板を挿入しない。
【0045】
一方、裏面側には、空気を流すための縦溝からなる流路を備えた流路板13aや横溝からなる流路板13bを用いる。これらの流路板(13a、13b)には、空気を流すために、空気供給孔101cと空気排出孔104cと間に分配路102が設けられている。また、熱流体供給孔101bと熱流体排出孔104bとの間に分配路102が設けられた流路を備える流路板13cを使用する場合もある。更に、セルの最裏面側には、燃料、熱流体排出、空気の出口となる供給孔(101a、101b、101c)や排出孔(104a、104b、104c)、電気出力端子が設けられたセパレータエンド板13dを用いる。
【0046】
このような流路板を適宜、組み合わせることにより、多様なセパレータを構成することができる。例えば、燃料や空気を同じ方向に流す並流には、表面側と裏面側で同じ向きの流路が形成された流路板を組み合わせる。図4に示すように、流路板11aとの組み合わせを考えた場合、内部にセパレータ用金属枠m1、裏面側に流路板13aに用いたユニット15aを構成することができる。また、内部に熱流体を流す流路板12bを用いた場合、冷却に用いるユニット15bを構成することができる。
【0047】
また、燃料や空気を、90度回転させた方向から流す十字流(直交流)の場合には、縦溝と横溝の流路が形成された流路板を組み合わせる。図4に示すように、流路板11aとの組み合わせを考えた場合、内部にセパレータ用金属枠m1、裏面側に流路板13bに用いたユニット15cを構成することができる。また、内部に熱流体を流す流路板12bを用いた場合、冷却に用いるユニット15dを構成することができる。なお、燃料や空気を反対方向から流す向流の場合には、一方のガスを排出孔から供給し、供給孔を介して排出すればよい。
【0048】
なお、上記の組み合わせの他、セパレータの構成には、「エンドプレート+燃料」、「エンドプレート+空気」、「エンドプレート+熱流体+エンドプレート」、「エンドプレート+熱流体+燃料」、「エンドプレート+熱流体+空気」等が考えられる。また、このエンドプレートに集電機能を持たせてもよい。なお、ここでは、スタック時に、流体の供給孔(101a、101b、101c)を水平方向に並べた例を説明したが、これに限られるものではなく、90度回転させて供給孔群を垂直に並べてスタッキングしてもよい。
【0049】
(めっきユニット20の構成)
以下に、めっき処理に用いるめっきユニット20の構成を説明する。ここでは、セパレータと対極にそれぞれガイドを設ける。集電棒を用意してガイドに通すことで、セパレータ群、対極群を簡便に作り、次に、これらを交互に交錯する様にあわせて積層する。この両端に装着するユニット端板19はフランジになっており、ボルトナットで外から両端のユニット端板19を固定する。なお、めっきユニット全体は高圧容器であるめっき槽70にいれるため、ここでは動かない程度の固定でもよい。このめっきユニット20は、各セパレータを用いて構成する。本実施形態は、燃料や空気を流す流路を用いて、各ガスの代わりに、後述するめっき分散体を流すことにより電解めっきを行なうことを特徴とする。このため、めっきユニット20の構成を説明するために、まず、内部マニフォールド型の燃料電池を構成した場合のセルの配置と、燃料、熱流体、空気の流し方とについて説明する。
【0050】
ここでは、図5に示すように、燃料と空気とを十字流(直交流)で流す燃料電池スタックの内部積層構造を用いて説明する。但し、溝を平行にした並流や向流においても同様に構成することができる。まず、最端部には、セパレータエンド板(11d、13d)が設けられる。そして、MEA30が、燃料用の流路板と空気用の流路板とを組み合わせた各ユニットに挟み込まれる。本実施形態では、各セパレータの表面側では、流路板11bによる燃料の流路が構成されている。一方、裏面側には、流路板13aによる空気の流路が構成されている。なお、複数枚毎に熱流体を流すためのユニットが挿入される。このユニットにおいては、流路板11bと流路板13aとの間の流路板12bにおいて熱流体が流される。ここで、各流体は、図2に示した供給孔(101a、101b、101c)から独立に供給され、排出孔(104a、104b、104c)から排出される。具体的には、燃料は燃料供給孔101aから供給され燃料排出孔104aから排出される。空気は空気供給孔101cから供給され空気排出孔104cから排出される。熱流体は熱流体供給孔101bから供給され熱流体排出孔104bから排出される。
【0051】
次に、図5に示す燃料電池スタックの配置に対して、めっき処理時に用いるめっきユニット20の構成を、図6を用いて説明する。ここでは、燃料、熱流体や空気を流す流路に対峙させるように陽極板16を挿入する。この陽極板16は、図7に示すように、対向電極部16aと、その縁部に設けられたパッキング部16bとから構成される。更に、陽極板16には、流路板と同様に、供給孔(101a、101b、101c)や排出孔(104a、104b、104c)が形成されている。このパッキング部16bの形状は、対峙する流路板の分配路102の形状に合わせて形成されている。
【0052】
次に、図8を用いて、めっき処理時の陽極板16とセパレータとの位置関係を説明する。セパレータには、セパレータの流路部分のみをプレス成形したタイプと、セパレータの流路への分配(マニフォールド)と流路部分をプレス成形したタイプとがある。前者のタイプでは、プレス板の縁部が、図8(a1)に示すように流路103の凹部と同じ高さになるように構成される。また、後者のタイプでは、プレス板の縁部が、図8(b1)に示すように流路103の凸部と同じ高さになるように構成される。燃料電池においては、MEAのガス拡散層とセパレータとが接するように、セパレータとMEAとを積層するため、図8(a1)のセパレータを製造する場合には、金属板に流路103のみをプレス加工して、プレス張り合わせ、縁部にパッキングp1を用いて、流路103の凸部と同じ高さにして内部マニフォールドを形成する。一方、図8(b1)のセパレータを製造する場合には、金属板に流路103とマニフォールド部分を、プレス加工により形成し、マニフォールド部分をセパレータ用金属枠m1により強化する。セパレータ用金属枠m1は、積層ユニットの内部において、プレス合体したセパレータに強度を与え、各流路のシールを確実にし、積層プレート間の高さを調整することで、内部の流路寸法を確実にし、さらに、積層MEAとセパレータの面接触を確実にするものでもある。なお、このようなセパレータを用いて燃料電池を構成する場合は、MEAのガス拡散層とセパレータとが接するように薄いパッキングを介してセパレータとMEAとを積層させる。
【0053】
次に、両タイプのセパレータのめっき処理の配置を以下に説明する。めっきの際には、図8(a2)及び(b2)に示すように、対極とのクリアランスを大きく取るように、厚いパッキング部16bを介して、セパレータと対極を積層させる。このパッキング部16bはスペーサとして機能し、図8(a3)及び(b3)に示すように、対向電極部16aと流路との間にめっき分散体等を流す流体流路16cが形成される。この流体流路16cにおいては、流路103の凹部領域と凸部領域で対極との距離が異なる。なお、パッキング部16bは絶縁材料を用いて構成し、その厚みは流体流路16cが所定の厚さを確保できるように定める。本実施形態では、この絶縁材料として、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン;poly Ether Ether Ketone )を用いる。この他、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン;polytetrafluoroethylene )、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂;Tetrafluoroethylene perfluoroalkoxyvinyl ether copolymer)等を用いることができる。
【0054】
ここで、めっき処理時のパッキングの役割と燃料電池におけるパッキングの役割とを詳述する。めっき処理の場合は、パッキングの相手は陽極板16であり、流体の流れを分配し、制御し、シールし、セパレータと陽極板16の間の距離をめっきに適するように調整する。そして、陽極板16に対して電気的に絶縁し、陽極板16とセパレータとの接触による電気の短絡を回避する。
【0055】
一方、燃料電池の場合は、パッキングの相手はMEAであり、流体の流れを分配し、制御し、シールし、セパレータとMEAとが均一に低い接触抵抗で接するように調整する。更に、MEAの外周部分で発電に関与しない電解質膜露出部分は、電解質(イオン交換)膜がむき出しになる場合があり、パッキングはこの部分とセパレータとが直接接触しないように絶縁する。電解質膜は強酸であるため、直接接触すると金属セパレータにおいて腐食が生じたり、電解質膜において溶出金属イオンによりイオン交換してプロトン導電性の喪失が生じたりする。このため、パッキングを用いることにより、これらを抑制することができる。さらに、電解質膜は濡れているため、セパレータと接触するとその部分から電気が漏電し内部で短絡が生じるため、パッキングを用いることにより、この短絡電流を抑制することができる。
【0056】
次に、めっきユニット20の作製方法について説明する。この場合、セパレータと対極にそれぞれガイドを設ける。集電棒を用意してガイドに通すことで、セパレータ群17、陽極板群18を作製する。次に、これらを交互に交錯するようにあわせて積層する。この両端に装着するユニット端板19はフランジになっておりボルトナットで外から両端のユニット端板19を固定する。上述のように、本実施形態では、めっきユニット全体を高圧容器であるめっき槽70に入れるので、動かない程度の固定とする。
【0057】
そして、図9に示すように、セパレータと陽極板とが相互に配置するように、陽極板群18にセパレータ群17を挿入する。更に、両側には、ユニット端板19が配置される。このユニット端板19には、セパレータや陽極板の供給孔(101a、101b、101c)や排出孔(104a、104b、104c)にそれぞれ連通する流体導入口が設けられている。そして、ユニット端板19、セパレータ群17、陽極板群18を積層して装着させためっきユニット20が完成する。
【0058】
図10は、このめっきユニット20を、ユニット端板19側から見た図面である。このユニット端板19には、流体導入口(19a、19b、19c)、流体排出口(19e、19f、19g)を備える。本実施形態では、流体導入口(19a、19c)にはめっき分散体を導入し、流体導入口19bには圧力バランサ(例えば、イオン交換水)を導入する。具体的には、後述するように、熱流体の流路にはイオン交換水を供給し、めっきユニット20内に展開させる。そして、イオン交換水の充填後、流体排出口19fを閉じる。流体導入口19bはめっき槽70の内部で開放のままにして、圧力の導通を保持する。これにより、この圧力バランサは、めっきユニット20に導入されるめっき分散体と同等の圧力になる。
【0059】
この場合、各流路板の供給孔(101a、101c)を介して、めっき分散体がめっきユニット20に展開される。また、圧力バランサにより、めっき分散体の熱流体流路への混入が抑止される。このめっき分散体は、排出孔(104a、104c)を介して、対向するユニット端板19の流体排出口(19e、19g)から排出される。
【0060】
(めっき装置の構成)
次に、セパレータを製造する場合に使用するめっき装置について、図11を参照して説明する。ここで、本実施形態では、拡散流体として、超臨界流体の二酸化炭素(以下、「CO2」と記載する)を用いて電解めっきを行なうめっき装置を想定して説明する。なお、CO2の臨界点は、31℃で7.4MPaである。
【0061】
図11に示すように、本実施形態のめっき装置は、CO2タンク50、高純度CO2タンク51、分散促進剤タンク52、Auめっき液タンク54、純水タンク55を備えている。更に、このめっき装置は、混合分散部60、めっき槽70及び分離槽80を備えている。
【0062】
次に、このめっき装置の配管について詳述する。
CO2タンク50は、超臨界状態として用いるCO2を液体状態で収容する。このCO2タンク50は、混合分散部60に、供給管を介して接続される。この供給管には、液ポンプ及び加熱部が設けられており、これらによりCO2を加圧及び加熱して超臨界状態にする。また、この供給管の液ポンプとCO2タンク50との間には、切換弁が設けられており、この切換弁と液ポンプの間には、別の切換弁が設けられた供給管を介して、高純度CO2タンク51が接続される。この高純度CO2タンク51は、高純度のCO2が収容されている。これら切換弁の開閉を制御することにより、CO2タンク50からのCO2又は高純度CO2タンク51からのCO2が選択的に混合分散部60に供給可能になっている。更に、混合分散部60に至る直前の供給管には、供給弁が設けられている。この供給弁は、開閉制御されることにより、CO2タンク50又は高純度CO2タンク51と混合分散部60との連通・遮断を行なって、混合分散部60へのCO2の供給又は供給停止を制御する。
【0063】
分散促進剤タンク52は、分散促進剤を収容する。本実施形態では、分散促進剤としてフッ素系化合物を用いる。
フッ素系化合物は、フッ素基と親水性基とを有する。本発明で使用されるフッ素系化合物として望ましいものには、非イオン性親水性基を有するフッ素化合物が挙げられる。この非イオン性親水性基を有するフッ素化合物は高圧CO2中で良好な分散促進機能を発現する。
【0064】
また、フッ素基としては、直鎖或いは枝分かれを有するペルフルオロアルキル基、またはペルフルオロポリエーテル基を始めとした炭素鎖中にヘテロ原子を含むものが挙げられる。これらのうちでも炭素鎖長がペルフルオロアルキル基では3〜15程度、炭素鎖中にヘテロ原子を含むものでは3〜50程度のものが使用可能である。
【0065】
また、親水性基にはエーテル、エステル、アルコール、チオエーテル、チオエステル、アミド等の極性基が挙げられる。これらのうちでも本実施例で挙げたフッ素基がペルフルオロポリエーテル基であり、親水性基が短鎖のポリエチレングリコール基であるものが特に優れている。
【0066】
また、従来の分散促進剤である炭化水素系の界面活性剤は長鎖のポリエチレングリコール基を有しているため化学的な安定性に課題があった。これに比べて、フッ素系化合物はより安定なため、長期間の繰り返し使用に対する耐久性を期待できる。また炭化水素系界面活性剤の分解物に由来する異物混入の可能性も少なくなる。
【0067】
フッ素系化合物は、疎水性のフッ素基を有しているため、CO2とめっき液とが安定した分散状態を維持している時間(分散保持時間)が短く、めっき液とCO2との分離が容易であり、操作性の面でも優れている。このフッ素系化合物を用いた場合、分散操作を停止すると例えば数秒〜数十秒程度で、めっき分散体はCO2とめっき液に分離する。
【0068】
分散促進剤タンク52は、混合分散部60に供給管を介して接続されている。この供給管には、分散促進剤を加圧するための液ポンプと加熱するための加熱部と、混合分散部60への分散促進剤の供給又は供給停止の制御を行なう供給弁とが設けられている。
【0069】
Auめっき液タンク54は、Auめっき液を収容する。このAuめっき液タンク54は、加熱・保温手段を備え、Auめっき液を所定の温度になるように加熱し保温する。このAuめっき液タンク54は、混合分散部60にAuめっき液供給管を介して接続されている。このAuめっき液供給管には、Auめっき液を加圧するための液ポンプと、混合分散部60へのAuめっき液の供給又は供給停止を制御するための供給弁とが設けられている。なお、Auめっき液供給管は、通過するAuめっき液の成分が析出しない温度以上に常時保温されている。
【0070】
更に、純水タンク55は、洗浄液としての純水を収容する。この純水タンク55は、混合分散部60に純水供給管を介して接続されている。この純水供給管には、純水を加圧するための液ポンプと加熱するための加熱部と、混合分散部60への純水の供給又は供給停止を制御する供給弁とが設けられている。なお、ここで、純水の代わりにイオン交換水を利用することも可能である。
【0071】
一方、各タンク50〜55が接続されている混合分散部60は、めっき液、CO2及び分散促進剤を混合して、めっき処理に使用するめっき混合液を生成し、これを分散状態に攪拌してめっき分散体を形成する。本実施形態では、この混合分散部60は、上流側の混合器と、これに接続された下流側の分散機とを含んで構成されている。混合器は、供給弁のうち2つ以上が選択されて開かれると、純水を含む洗浄混合液、Auめっき液を含むAuめっき混合液のいずれかを生成する。なお、洗浄乾燥工程には、水あるいはCO2だけを流す場合もある。分散機は、励磁されたソレノイドによって回転する攪拌子を備え、この攪拌子を容器内部で回転させることにより、混合器で生成された混合液をその成分が均一になるように分散させて分散体にする。
【0072】
混合分散部60は、めっき槽70に接続されている。めっき槽70は、混合分散部60において混合分散されためっき分散体を用いて、めっき処理を行なうための槽である。具体的には、めっき槽70は、供給口71と排出口72とを有する。供給口71は、混合分散部60からめっき槽70内のめっきユニット20にめっき分散体が供給される。なお、この供給口71には、公知の前洗浄に用いる各種洗浄液を収容した洗浄液タンクが接続されている。ここで、各種洗浄液としては、アルカリや酸などの洗浄液、数種の分散促進剤、脱イオン水等がある。一方、めっき槽70内のめっきユニット20に接続された排出口72は分離槽80に接続されている。この分離槽80には、使用しためっき分散体が排出される。
【0073】
更に、めっき槽70内のめっきユニット20には、電解めっきを行なうために、電源から電力が供給される。
一方、めっき槽70の排出口72に接続されている分離槽80は、めっき槽70において使用されためっき分散体から、CO2とめっき液とを分離する。なお、めっき分散体に分散促進剤が含まれている場合には、この分散促進剤はCO2に混在して、めっき液から分離される。分離槽80は、CO2タンク50及び図示しないめっき液排出部に接続されている。分離された分散促進剤を含むCO2は、これに含まれている水素や酸素などのガス及び有機物などの不純物が除去された後、圧力が調整されて、CO2タンク50に還流される。
【0074】
分離槽80からめっき液が排出されて貯蓄可能なめっき液排出部は、Auめっき液再生装置又は廃液タンクに連通可能になっている。Auめっき液再生装置は、Auめっき液から不純物を除去し、その成分を調整して、Auめっき液を再び使用可能となるように再生する。このめっき液再生装置は、Auめっき液タンク54に接続されて、再生したAuめっき液をAuめっき液タンク54に還流する。廃液タンクには、分離槽80から排出された洗浄液や再生できないめっき液などが排出される。
【0075】
なお、分離槽80から混合分散部60に対して循環ポンプを設けたリサイクルパスを設置して、めっき槽70から排出されるめっき流体の一部をリサイクルしてもよい。この場合、めっき分散体を、混合分散部60から、めっき槽70の供給口71、排出口72、分離槽80を介して、混合分散部60に循環させる。
【0076】
更に、本実施形態のめっき装置は、制御部を備える。この制御部は、CPU、RAM、ROM等から構成され、格納されたプログラムにより、各供給管に設けられた液ポンプ、加熱部及び供給弁や、めっき槽70の電源等についての制御を実行する。
【0077】
(燃料電池の製造)
次に、本実施形態における燃料電池を構成するセルの製造方法について、図12を用いて説明する。
【0078】
まず、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32となる基板をプレス加工して、ガス供給路となる溝部を形成した流路板を製造する。また、冷却板も、通路を形成するためにプレス加工した流路板を製造する。
【0079】
次に、上述のように、流路板を燃料電池内の配置順に配置し、これら流路板をガイド17aで固定してセパレータ群17を製造する(図12のステップS1−1)。
そして、図9に示すように、ガイド17aで固定されたセパレータ群17と、ガイド18aを取り付け連結した陽極板群18とを組み合わせて、めっきユニット20を作製する(ステップS1−2)。
【0080】
次に、めっきユニット20を、図11に示すように、めっき槽70に導入する(ステップS1−3)。ここでは、まず、内部に空気が残留しないように、熱流体のための流体導入口19bを開けたままの状態で、流体排出口19fからイオン交換水を供給し、内部の空気を追い出しながら、熱流体排出孔104bを介してめっきユニット20内に展開させて、内部にイオン交換水を充填する。イオン交換水の充填後、流体排出口19fを閉じる。そして、流体導入口19bからイオン交換水が流出しないようにしながら、めっき槽70の内部で開放状態にする。更に、めっきユニット20の流体導入口(19a、19b、19c)は圧力管を介して供給口71に接続する。但し、熱流体のための流体排出口19fは閉じられており、イオン交換水が充填されているため、めっき分散体の熱流体のための流路への侵入は抑止される。なお、ここで、完全にセパレータ内部を水封した後に流体導入口19bと流体排出口19fの両方を閉じてもよい。また、流体排出口(19e、19g)は圧力管を介して排出口72に接続する。更に、セパレータ群17のガイド17aはマイナス、陽極板群18のガイド18aはプラスになるように、電源端子にそれぞれ接続する。
【0081】
そして、めっき槽70において、めっきユニット20の各流路の前洗浄を行なう(ステップS2−1)。具体的には、アルカリや酸などの洗浄液、数種の界面活性剤、脱イオン水等を順次、供給口71を介してめっき槽70内のめっきユニット20に供給する。
【0082】
次に、めっき前処理を行なう(ステップS2−2)。具体的には、超臨界CO2と純水を用いた超臨界洗浄処理を行なう。ここで、制御部は、高純度CO2タンク51の供給管及び純水タンク55の供給管にそれぞれ設けられた液ポンプを駆動し、加熱部において加熱を行ない、供給弁を開く。これにより、混合分散部60には、高純度CO2タンク51からのCO2が加熱及び加圧されて超臨界状態となったCO2と、純水タンク55からの加熱及び加圧された純水とが供給される。混合分散部60は、供給された超臨界CO2と純水とを混合及び攪拌し、この洗浄混合液をめっき槽70内のめっきユニット20に供給する。
【0083】
次に、超臨界CO2を用いてAu膜を形成するためのめっき処理を行なう(ステップS2−3)。具体的には、制御部は、純水の供給弁を閉じ、純水の供給を停止する。そして、制御部は切換弁を切り換えて、高純度CO2タンク51の代わりに、CO2タンク50を混合分散部60に接続する。これにより、CO2タンク50からのCO2が混合分散部60に供給されて、めっき槽70内のめっきユニット20から純水を排出する。その後、制御部は、分散促進剤タンク52の供給管及びAuめっき液タンク54の供給管に設けられた供給弁を開くとともに、液ポンプを駆動して、分散促進剤及びAuめっき液を、加圧及び加熱された状態で混合分散部60に供給する。このとき、混合分散部60にはCO2タンク50からのCO2が超臨界状態となって供給され続けているので、混合分散部60において、超臨界CO2と分散促進剤とAuめっき液とを混合・攪拌しためっき分散体が形成され、めっき槽70内のめっきユニット20に供給される。なお、本実施形態では、制御部は、超臨界CO2、分散促進剤及びAuめっき液の分散状態の分散保持時間が短いため、混合器で形成されためっき分散体が、分散を保持している時間内にめっきユニット20内の流路を通過するように、供給管の各液ポンプの駆動を制御する。
【0084】
めっき槽70に供給されためっき分散体は、供給口71を介してめっきユニット20の内部に導入される。このとき、めっき分散体は、流体流路16cを通過して、排出口72に流れる。
【0085】
このとき、めっきユニット20においては、セパレータ群17、陽極板16に電圧が印加されている。このため、ガイド17aを介してマイナス極となっているセパレータ群17には、めっき分散体が通過する面に電解めっきが行なわれ、Au膜が形成される。なお、このとき、Auめっき液を含むめっき分散体は、分散保持時間を経過する前にめっきユニット20から分離槽80に排出される。これにより、めっき処理によりめっき分散体中に溶解した水素ガスや各流路板の表面から剥離した不純物等は速やかにめっきユニット20から排出される。
【0086】
そして、排出口72から排出された流体は、分離槽80に流入する。分離槽80においては、めっき液と、CO2及び分散促進剤とに分離される。分離されたCO2は、不要なガスが除去される等の再生処理が行なわれて、CO2タンク50に戻される。また、分離されたAuめっき液は、Auめっき液再生装置を通過することにより再生されて、Auめっき液タンク54に戻される。
【0087】
その後、各液ポンプの駆動、加熱部における加熱を継続して、めっき分散体をめっきユニット20に連続的に供給する。そして、所定の厚さのAu膜を形成するための要する時間のめっき処理を継続する。
【0088】
次に、洗浄及び乾燥の後処理工程を行なう(ステップS2−4)。具体的には、制御部は、はじめに、分散促進剤タンク52及びAuめっき液タンク54にそれぞれ接続されている供給管の供給弁を閉じる。そして、切換弁を切り換えてCO2タンク50の代わりに、高純度CO2タンク51からのCO2を混合分散部60に供給して混合分散部60からめっきユニット20、並びにめっき槽70の各部分に残留するめっき液を排出・回収する。続いて、純水タンク55に接続される供給管の供給弁を開く。この場合、純水が混合分散部60に供給される。以上により、CO2でAuめっき液を混合分散部60からめっき槽70に至る部分より排出・回収するとともに、超臨界CO2と純水とが混合された混合純水による洗浄を行なう。
【0089】
その後、洗浄が完了すると、乾燥を行なうために、純水タンク55に接続される供給管の供給弁を閉じる。これにより、純水タンク55からの純水の供給が停止する。そして、CO2のみが超臨界状態でめっき槽70に供給され、めっきユニット20の各流路にAu膜が形成された表面を流れる。このCO2の流れにより、表面に形成されたAu膜に付着した純水を洗い流すとともに、超臨界状態となっているCO2に溶解させて除去する。そして、CO2のみを所定時間、供給して乾燥を完了すると、高純度CO2タンク51に接続される接続管の供給弁を閉じ、CO2の供給を停止する。更に、液ポンプの駆動及び加熱部の加熱を停止し、めっき槽70からCO2を排気する。以上により、めっきの後処理が完了する。
【0090】
そして、めっきユニット20をめっき槽70から取り出し、めっきユニット20からセパレータ群17を取り外す(ステップS3−1)。
次に、セパレータ群17の所定の位置にMEA30を挿入する(ステップS3−2)。更に、各セパレータの周囲にシール部材を設けた後、密着させて全体を一体化する。以上により、燃料電池に用いる平板スタック構造のセルが完成する。
【0091】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
・ 本実施形態では、燃料側セパレータ31、空気側セパレータ32において、MEA30と対向する面にAuのめっき皮膜を形成する。このめっき皮膜の形成には、めっき液と超臨界CO2とを混合・分散させためっき分散体を用いる。このため、超臨界CO2によりめっき液の拡散力が高くなり、燃料側セパレータ31、空気側セパレータ32のMEA30側に、薄膜であっても腐食の原因となるクラックやピンホールのない良好なAuめっき皮膜を形成することができる。めっき皮膜としてAuを用いた場合、母材金属の腐食電流を抑制できる。更に、Au自体はイオンになり難く、母材金属のイオン溶出が押さえられるので、金属イオンによる電極や電解質膜の汚染、内部抵抗の増加を回避できる。更に、母材の表面を覆うAuは酸化され難く、セパレータ表面に酸化皮膜ができないので電気抵抗の増加を抑制できる。従って、高性能な燃料電池を実現する平板スタック構造を製造することができる。
【0092】
・ 本実施形態では、燃料電池スタック構造を応用してめっきを行なう。MEAを陽極板に替えて、燃料や空気を流す流路を用いて、各ガスの代わりに、めっき分散体を流すことによりめっきを行なう。具体的には、まず、燃料、熱流体や空気を流す流路に対峙させるように陽極板16を挿入する。この陽極板16は、対向電極部16aと、その縁部に設けられたパッキング部16bとから構成される。このパッキングは陽極板と流路板の間にめっき流体を供給するために適するクリアランス(厚さ)とする。更に、陽極板16には、流路板と同様に、供給孔(101a、101b、101c)や排出孔(104a、104b、104c)が形成されている。この場合、めっきユニット20に導入されためっき分散体は、各流路板の供給孔(101a、101c)を介して展開され、排出孔(104a、104c)を介して排出される。このため、MEA30との接触抵抗を低減し、腐食を防止すべき領域にのみに、効率的にめっき皮膜を形成することができる。
【0093】
・ 本実施形態では、熱流体や空気を流す流路に対峙させるように陽極板16を挿入する。具体的には、各セパレータにガイド17aを取り付けたセパレータ群17を作製する。また、陽極板16にもガイド18aを取り付け連結した陽極板群18を作製する。このガイドは、セパレータ群17や陽極板群18に電圧を印加し通電するための電極端子として機能する。そして、セパレータと陽極板とが相互に配置するように、陽極板群18にセパレータ群17を挿入する。ユニット端板19、セパレータ群17、陽極板群18を積層して装着させためっきユニット20を作製する。そして、流路を用いてめっき分散体を流しながら、ガイド(17a、18a)に電圧を印加し、流路板と陽極板16との間で電解めっきを行なう。このため、流路内において、効率的に電解めっきを行なうことができる。
【0094】
・ 本実施形態では、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32の表面にめっき皮膜を形成する場合には、めっき分散体を連続的に供給する。このため、めっき処理中に発生した水素が溶解したCO2や表面から剥離した不純物は、速やかにめっき槽70から排出されるので、これらがめっき槽70内で再付着することを抑制できる。従って、めっき皮膜に残留する水素が原因となっていたピンホールの発生を抑制し、ゴミや汚れ等の付着が起因するめっき皮膜の剥離、割れを低減することができる。この結果、めっき皮膜を薄くした場合にも、良好なめっき被覆率(カバレッジ)を得ることができる。
【0095】
・ 本実施形態では、流体導入口19bには圧力バランサ(例えば、イオン交換水)を導入する。具体的には、内部に空気が残留しないように、流体導入口19bを開けたまま流体排出口19fからイオン交換水を供給し、内部の空気を追い出し、内部に熱流体排出孔104bを介して、イオン交換水をめっきユニット20内に展開させる。イオン交換水の充填後、熱流体のための流体排出口19fは閉じる。流体導入口19bはめっき槽70の内部で開放のままにして、圧力の導通を保持する。これにより、この圧力バランサは、めっきユニット20に導入されるめっき分散体と同等の圧力になる。しかも、内部は水封されるので、めっきのマスクにもなる。なお、ここで、完全にセパレータ内部を水封した後に、流体導入口19bと流体排出口19fの両方を閉じても良い。燃料電池において、この熱流体供給孔101bに接続される流路には熱流体を流すため、めっきを行なう必要はない。従って、めっき処理時には、めっき分散体と圧力バランサとの圧力平衡により、流路板の変形を防止することができる。更に、めっき分散体が熱流体流路への混入を回避し、不必要な領域へのめっきを抑制することができる。
【0096】
・ 本実施形態では、製造する燃料電池には、空気側セパレータ32のガス供給路に供給するための空気を外部から取り込むための空気取込口が設けられ、この空気取込口にはフィルタが設けられている。従って、このフィルタを空気が通過することにより、空気中に含まれる塵埃を除去することができる。このため、ガス供給路には、エロージョンやコロージョンなどの原因となる塵埃が少ない空気を導入することができ、エロージョンやコロージョンによるめっき皮膜の腐食を抑制することができる。
【0097】
・ 本実施形態では、めっきの際には、対極とのクリアランスを大きく取るように、厚いパッキング部16bを介して、セパレータと対極を積層させる。この場合、この流体流路16cにおいては、流路103の凹部領域と凸部領域で対極との距離が異なり、凸部領域が凹部領域より陽極板16に近くなる。このため、めっき処理時には、凹部領域の方が凸部領域より電流が流れやすくなり、凹部領域に凸部領域より厚いめっき皮膜を形成することができる。燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32の電極に接触する部分(凸部領域)は、振動を受けると、電極と繰り返し擦りあわされることがあり、めっき皮膜が削れて腐食が生じる可能性がある。このような部分のめっき皮膜を厚くすることにより、磨耗や剥離の発生を抑制することができる。
【0098】
また、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 上記実施形態においては、流路103の凹部領域又は凸部領域と対極との距離により、それぞれの領域に形成されるめっき皮膜の膜厚を調節した。この場合、めっき処理時に、めっき液の流量、電気量の操作条件を調整し、燃料側セパレータ31がガス拡散層303と接触する部分及び空気側セパレータ32がガス拡散層304と接触する部分のAu膜を厚くするように調節してもよい。これによっても、凸部領域に厚いめっき皮膜を形成し、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32の電極に接触する部分のめっき皮膜の磨耗や剥離の発生を抑制することができる。また、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32の電極に接触する部分の膜厚にかかわらず、ガス拡散層303及び304を、例えば、柔軟なカーボンクロスを用いて燃料電池を構成してもよい。この場合でも、スタッキング荷重や内部構成部材の振動を原因とするめっき皮膜とガス拡散層303,304との摩擦を軽減できるので、腐食の発生を効果的に抑制することができる。
【0099】
○ 上記実施形態においては、燃料側セパレータ31のガス供給路の溝部の延在方向と、空気側セパレータ32のガス供給路の溝部の延在方向とが直交する十字流型を用いて、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32を配置した燃料電池を製造した。燃料電池の構成は、これに限られるものではなく、他の構成(並行流型や向流型)の燃料電池を製造する場合に適用してもよい。この場合にも、第1、第2のガス供給路を利用しながら、それぞれ独立してめっき分散体を流すことにより、めっき皮膜を形成する。
【0100】
○ 上記実施形態では、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32は、例えば、ステンレス鋼(SUS鋼)等の金属材料から形成されている。例えば、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32の材質を、樹脂材料とカーボン等の導電性材料とを複合化した導電性樹脂材料に変更してもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32のガス流路は、プレス加工等により形成されている。ガス流路は、モールド加工、切削加工等の加工方法によって形成してもよい。上記実施形態によれば、いずれの方法でガス流路が形成された場合であっても、効率的に燃料電池を製造することができる。
【0102】
○ 上記実施形態においては、めっき槽70において電解めっきによりAu膜のめっき皮膜を形成した。これに代えて、めっき槽70内で無電解めっきを行なって、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32のガス供給路を形成する表面にめっき皮膜を形成してもよい。この場合には、第1のセパレータと第2のセパレータとを、陽極板を用いずにスペーサを介して直接、積層させる。この場合、スペーサは両セパレータ間に流体を流すためのクリアランスを調整するために用い、流路を確保できるものであればよい。
【0103】
○ 上記実施形態においては、流体排出口(19e、19g)からめっき分散体を導出する。これに代えて、各流路板に設けられた分配路102から直接、外部にめっき分散体を排出しても良い。この場合には、流体排出口(19e、19g)近傍のシール材を除去しておき、この除去部からめっき分散体を排出する。これにより、流体抵抗を低減でき、めっき分散体を効率的に供給することができる。
【0104】
○ 上記実施形態においては、SUS材からなるセパレータにAuのめっき皮膜を形成した。これに代えて、ニッケル(Ni)等の下地ストライクめっきを行なってから、上述のAuめっきを行なってもよい。この場合には、めっき装置にNiめっき液を収容するNiめっき液タンク53を設ける。このNiめっき液タンク53を混合分散部60にNiめっき液供給管を介して接続する。そして、Auめっき液に代えてNiめっき液を用いて、上述のAuめっき処理時と同様に、めっき分散体を形成してめっき処理を行なう。その後で、Auめっきを行なう。Au膜は耐食性に優れているが高価である。従って、ピンホールのない良好なNi膜を下地として形成することにより、Au膜を薄くしても、耐食性に優れためっき皮膜を形成することができる。
【0105】
○ 上記実施形態においては、めっき皮膜として、貴金属のAu膜を形成した。これに限らず、めっき皮膜は、接触抵抗を低減できる材料、例えば、パラジウム(Pd)などの白金系金属などにより形成してもよい。
【0106】
○ 上記実施形態においては、フッ素系化合物を介して、CO2とめっき液とは短い時間だけ分散状態となるめっき分散体を用いた。CO2とめっき液を混合分散させるために用いる分散促進剤は、これに限られるものではない。例えば、従来の炭化水素系界面活性剤を分散促進剤として用いてもよいし、分散保持時間がもっと長い分散促進剤を用いてもよい。後者の場合には、めっき処理を行なうめっき槽70を流れるめっき分散体の速度を上記実施形態よりも遅くすることもできる。また、分散促進剤を省略してもよい。
【0107】
○ 上記実施形態においては、拡散流体として超臨界状態のCO2を用いた。これに限らず、亜臨界状態のCO2を用いてもよい。更に、CO2に限らず、超臨界状態又は亜臨界状態(臨界点近傍で液相状態)の他の流体(超臨界流体又は亜臨界流体)を用いてもよい。
【0108】
○ 上記実施形態においては、内部マニフォールド型を用いて説明したが、外部マニフォールド型を用いてもよい。この場合には、外部マニフォールドを用いてめっき分散体等を導入する。
【0109】
○ 上記実施形態においては、流体導入口(19a、19c)には、同じめっき液から形成しためっき分散体が導入され、そのめっき分散体は流体排出口(19e、19g)から導出されている。このとき、第1のガス供給路におけるめっき分散体の線速と、第2のガス供給路におけるめっき分散体の線速とを異なる線速に設定してもよい。このように設定した場合、各セパレータのめっき皮膜の厚さや皮膜の形態が異なるものを形成することができる。
【0110】
また、流体導入口19aには、第1のめっき分散体を導入し、流体導入口19cに第1のめっき分散体とは異なる第2のめっき分散体を導入するとともに、流体排出口(19e、19g)から各めっき分散体を導出してもよい。第1、第2のガス供給路を利用しながら、それぞれ独立してめっき分散体を流すため、燃料側と空気側で異なる金属種のめっき皮膜を形成することができる。またこの場合では、第1のセパレータのめっき皮膜と、第2のセパレータのめっき皮膜との厚さを異なる厚さに形成することができる。第1のめっき分散体と、第2のめっき分散体とが異なるとは、各めっき分散体の化学的性質や物理的性質が異なることをいう。すなわち、第1のめっき分散体と、第2のめっき分散体とは、組成又は分散状態が異なる。組成の異なる各めっき分散体は、例えばめっき液の組成を変更することに加え、分散促進剤の種類及び配合量、並びに拡散流体の種類及び配合量等を変更することにより構成することができる。分散状態の異なる各めっき分散体は、例えば混合分散部60における混合器及び分散部に備えられた攪拌機の構造又は攪拌機の形状、その攪拌機の回転数、混合分散部60におけるめっき分散体の滞留時間等を変更することにより構成することができる。このように異なるめっき分散体を用いるとともに複数の混合分散部60を設けることにより、各セパレータに異なるめっき皮膜を同時に形成することができる。また、一つの混合分散部60によって各セパレータにめっき皮膜を逐次に形成してもよい。各セパレータのめっき皮膜は、例えば、空気側セパレータ32の表面にはAu膜を形成し、燃料側セパレータ31の表面にはNi膜のみを形成してもよい。燃料側セパレータ31のガス供給路は、燃料が通過するために還元性雰囲気となるので、燃料側セパレータ31のガス供給路よりも腐食が生じ難い。また、流体導入口19a、流体導入口19cに異なる流量でめっき分散体を流すことで、Auめっきの膜厚、めっき形態等を燃料側と空気側で別々に制御できる。これにより、めっき皮膜の形成を効率よく行なうことができるとともに、貴金属であるAu膜の使用量を抑えることができる。
【実施例】
【0111】
次に、実施例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。
(実施例1)
図12に示されるステップS1−1からステップS1−3、ステップS2−1からステップS2−4、及びステップS3−1を順に行うことにより、ステンレス鋼製セパレータにAuめっき皮膜を形成した。Auめっき液として、市販の酸性金めっき浴((株)高純度化学研究所、Auメッキ液、K−24EA)を使用し、拡散流体として超臨界状態のCO2を使用した。また、酸性金めっき浴には、フッ素系化合物としてのF(CF(CF3)CF2O)3 CF(CF3)COOCH2CH2OCH3をCO2に対して0.5重量%加えた。超臨界CO2と酸性金めっき浴との配合比は、体積比率で7対3である。Auめっき処理の条件は、めっき槽の温度50℃、めっき槽の圧力10MPa、電流密度0.5A/dm2、及びめっき時間200秒である。形成されたAu膜の厚さは約1μmであった。
【0112】
(比較例1)
拡散流体を省略するとともにめっき槽内を加圧せずにめっき処理工程を行った。それ以外は、実施例1と同様にして、ステンレス鋼製セパレータにAuめっき皮膜を形成した。
【0113】
各例によってめっき処理が施されたステンレス鋼製セパレータについて、走査型電子顕微鏡で観察した。実施例1のステンレス鋼製セパレータでは、ピンホールが確認されなかった。これに対し、比較例1のステンレス鋼製セパレータでは、多数のピンホールが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】実施形態における燃料電池のセルの構成を示す概略斜視図。
【図2】燃料電池に用いる流路板の説明図。
【図3】燃料電池に用いる流路板の組み合わせ方の説明図。
【図4】燃料電池に用いるセパレータの説明図。
【図5】燃料電池におけるガス又は熱流体の流し方の説明図。
【図6】実施形態におけるめっき分散体の流し方の説明図。
【図7】実施形態における陽極板とセパレータとの組み合わせ方の説明図。
【図8】実施形態における陽極板とセパレータとの配置の説明図。
【図9】実施形態におけるめっきユニットの製造過程の説明図。
【図10】実施形態におけるめっきユニットの側面図。
【図11】実施形態におけるめっき装置の概略配管図。
【図12】実施形態におけるセル製造工程の手順を説明する流れ図。
【図13】燃料電池の構成を示す概略構成図。
【図14】従来技術における燃料電池のセルの構成を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0115】
15a,15b,15c,15d,20…ユニット、16…陽極板、31…第2のセパレータとしての燃料側セパレータ、32…第1のセパレータとしての空気側セパレータ、70…めっき槽、300…電解質層、301…第1の電極を構成する燃料極触媒層、302…第2の電極を構成する空気極触媒層、303…第2の電極を構成するガス拡散層、304…第1の電極を構成するガス拡散層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素と酸素とを化学反応させて生成した電気を取り出す燃料電池用セパレータ、燃料電池、燃料電池用セパレータの製造方法及び燃料電池用セパレータのめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護の観点から、大気汚染の原因となるものを排出せずに、電力を発生させる技術が開発されつつある。この技術に1つとして、エネルギー変換効率が高い燃料電池がある。この燃料電池は、電気分解の逆反応で、水素と酸素とを化学反応させて、水以外の排出物を出さずに発電を行なう。
【0003】
燃料電池の構成には、いくつか種類がある。例えば、平板スタックと呼ばれる構成があり、これは図13に示すようにセル500が複数積層されている。このセル500は、図14に示すように、支燃性と可燃性の物質(燃料ガスと空気)が混合しないように分離し、MEA(membrane electrode assembly;膜・電極接合体)のガス拡散層の全面にまんべんなくガスが供給されるようにガス流れのガイドするためのセパレータを備える。このセパレータはガス拡散層を介して、MEAで発生する電流を集電、セル接続の端子も兼ねる。セパレータには内部に熱流体の流路を持ち、発電時、MEAの冷加熱を行なうものもある。MEAは、水素を取り込む燃料極(第1の電極)と、空気から酸素を取り込む空気極(第2の電極)との間に、電解質層を介在させて構成される。燃料極は、燃料極触媒層と、ガス拡散層とから構成される。ガス拡散層は、カーボンメッシュ、カーボンクロス、カーボンペーパ等で、ガスを透過しやすいように多くの空隙を持つ構造を有する。このガス拡散層には、繊維状やファイバー状の導電性カーボンの不織布等が用いられる。
【0004】
また、空気極は、空気極触媒層とガス拡散層とから構成される。そして、燃料極から取り込まれた水素と、空気極から取り込まれた酸素とが、電解質層を介して化学反応することにより、空気極から燃料極へと流れる電流が発生する。
【0005】
従来、燃料電池のセパレータには、緻密性カーボンセパレータが用いられていた。しかし、低コスト化や小型・軽量化のために、金属セパレータが用いられるようになってきている(例えば特許文献1参照。)。この金属セパレータにおいてステンレス鋼等を用いた場合、表面に不動態皮膜が形成されると、電極との接触抵抗が大きくなり、エネルギー変換効率が低下する。そこで、耐食性向上のためにめっき処理が行なわれていた。また、形成されためっき皮膜にピンホールが生じている場合には、このピンホールを介して腐食が生じることがある。そこで、特許文献1においては、耐食性を向上させるために、めっき処理により生じたピンホールを削除する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−68129号公報(第1頁〜第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、めっき処理により生じたピンホールを押し潰したり酸化膜で覆ったりすることにより、ピンホールを削除している。このため、特許文献1記載の技術では、ピンホールの削除のために、めっき処理とは別の処理工程を行なう必要があり、燃料電池の生産性の向上を図ることができなかった。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされ、その目的は、ピンホールなどの発生を抑制し、効率的に燃料電池を製造することができる燃料電池用セパレータ、燃料電池、燃料電池用セパレータの製造方法及び燃料電池用セパレータのめっき装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ガス供給路を設けた第1のセパレータと、第1の電極、電解質層、第2の電極と、前記第2の電極に接続させたガス供給路を設けた第2のセパレータとを備えた燃料電池に用いるセパレータであって、前記第1のセパレータを前記第1の電極に接触させるために、前記第1のセパレータのガス供給路の表面に、めっき液と、めっき液の拡散力を高める拡散流体とを用いて形成しためっき皮膜を設けたことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料電池用セパレータにおいて、前記ガス供給路は、前記第1の電極に接する凸部と、ガスを供給する溝部とを有し、前記凸部に形成されためっき皮膜の膜厚を、前記溝部の膜厚より厚くしたことを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池用セパレータにおいて、前記第2のセパレータを前記第2の電極に接触させるために、前記第2のセパレータのガス供給路の表面に、めっき液と、めっき液の拡散力を高める拡散流体とを用いて形成しためっき皮膜を設けたことを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の燃料電池用セパレータにおいて、前記ガス供給路は、前記第2の電極に接する凸部と、ガスを供給する溝部とを有し、前記凸部に形成されためっき皮膜の膜厚を、前記溝部の膜厚より厚くしたことを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータにおいて、前記めっき皮膜の形成において、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤を更に用いることを要旨とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、めっき液と、めっき液の拡散力を高める拡散流体とを用いてめっき皮膜が形成されたガス供給路を設けた第1のセパレータと、前記めっき皮膜に接触させた第1の電極、電解質層、第2の電極と、前記第2の電極に接続させたガス供給路を設けた第2のセパレータとを備えたことを要旨とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の燃料電池において、前記第1のセパレータのガス供給路には空気を供給する空気取込口を備え、前記空気取込口にはフィルタを備えたことを要旨とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の燃料電池において、前記めっき皮膜の形成において、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤を更に用いることを要旨とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、第1のガス供給路を設けた第1のセパレータと、第2のガス供給路を設けた第2のセパレータとを備えた燃料電池に用いる燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記第1のガス供給路と前記第2のガス供給路とを対向させて配置した状態の前記各セパレータ間に、当該各セパレータ間のクリアランスを調整するスペーサを配置することにより、前記各セパレータを積層し、前記第1又は第2のガス供給路に、めっき液とこのめっき液の拡散力を高める拡散流体とを含むめっき分散体を連続的に供給することにより、前記第1又は第2のセパレータにめっき皮膜を形成することを要旨とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記スペーサを介して、前記第1のセパレータと第2のセパレータとの間に陽極板を設け、前記第1又は第2のセパレータを陰極板として用いて、前記第1又は第2のセパレータと前記陽極板との間に通電した電解めっきによりめっき皮膜を形成することを要旨とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は請求項10に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記第1のガス供給路に第1のめっき分散体を導入し、前記第2のガス供給路に、前記第1のめっき分散体を導入するとともにめっきの条件を変更すること、又は前記第1のめっき分散体と異なる第2のめっき分散体を導入することを要旨とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記めっき分散体には、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤が更に含まれることを要旨とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、第1のガス供給路を設けた第1のセパレータと、第2のガス供給路を設けた第2のセパレータとを備えた燃料電池に用いる燃料電池用セパレータのめっき装置であって、前記第1のガス供給路と前記第2のガス供給路とを対向させて配置した状態の前記各セパレータ間に、当該各セパレータ間のクリアランスを調整するスペーサを配置することにより、前記各セパレータを積層しためっきユニットと、前記第1又は第2のガス供給路に、めっき液とこのめっき液の拡散力を高める拡散流体とを含むめっき分散体を連続的に供給するめっき分散体供給手段とを備え、前記第1又は第2のセパレータにめっき皮膜を形成することを要旨とする。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の燃料電池用セパレータのめっき装置において、前記スペーサを介して、前記第1のセパレータと第2のセパレータとの間に陽極板を設け、前記第1又は第2のセパレータを陰極とする通電手段を備えたことを要旨とする。
【0022】
請求項15に記載の発明は、請求項13又は請求項14に記載の燃料電池用セパレータのめっき装置において、前記めっき分散体供給手段は、前記第1のガス供給路に第1のめっき分散体を導入する第1導入手段と、前記第1のめっき分散体とは異なる第2のめっき分散体を前記第2のガス供給路に導入する第2導入手段とから構成されていること、又は、前記めっき分散体供給手段は、前記第1及び第2のガス供給路に第1のめっき分散体を導入する導入手段を有し、第1のガス供給路におけるめっき条件と、第2のガス供給路におけるめっき条件とを変えることによって、第1のセパレータと第2のセパレータとに異なるめっき皮膜を形成することを要旨とする。
【0023】
請求項16に記載の発明は、請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータのめっき装置において、前記めっき分散体には、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤が更に含まれることを要旨とする。
【0024】
(作用)
請求項1又は6に記載の発明によれば、拡散流体を用いることにより、めっき液の拡散力が高くなるため、めっき皮膜の付き回りが良好になる。従って、腐食されやすい第1のセパレータのガス供給路の表面に、腐食の原因となるクラックやピンホールがない良好なめっき皮膜を形成することができる。例えば、めっき皮膜として貴金属(例えば金)を用いて、クラック、ピンホールがないように母材の金属を覆うと、母材金属の腐食電流を抑制できる。更に、貴金属自体はイオンになり難く、母材金属のイオン溶出を抑制できるので、電極や電解質膜を金属イオンによる汚染、内部抵抗の増加を回避できる。更に、母材の表面を覆う貴金属は酸化され難く、セパレータ表面に酸化皮膜ができないので電気抵抗の増加を抑制できる。従って、高効率の燃料電池を製造することができる。
【0025】
請求項2又は4に記載の発明によれば、ガス供給路は、電極に接する凸部とガスを供給する溝部とを有し、凸部に形成されためっき皮膜の膜厚を溝部の膜厚より厚くする。これにより、ガス供給路に形成されためっき皮膜において、電極に接触する部分の膜厚を、他の部分の膜厚より厚くすることができる。セパレータのめっき皮膜において、電極に接触する部分は、振動を受けると、繰り返し電極と擦り合わされることがあり、めっき皮膜が削れて腐食が生じるおそれがある。このような部分のめっき皮膜を厚くすることにより、腐食の発生を効率的に抑制することができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、前記第2のセパレータのガス供給路においても、母材金属の腐食電流を抑制することができる。更に、めっき皮膜として貴金属を用いた場合、貴金属自体はイオンになり難く、母材金属のイオン溶出を抑制でき、金属イオンによる電極や電解質膜の汚染、内部抵抗の増加を抑制できる。更に、母材の表面を覆う貴金属は酸化され難く、セパレータ表面に酸化皮膜ができないので、電気抵抗の増加を抑制できる。従って、高効率の燃料電池を製造することができる。
【0027】
請求項5、8、12又は16の発明によれば、フッ素系化合物により、拡散流体に対するめっき液の分散が促進されることで、皮膜の付き回りが更に良好となり、皮膜におけるピンホールの形成を抑制することが更に容易になる。従って、めっき膜の表面を更に平滑にすることが可能であり、良好なめっき皮膜を得ることができる。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、空気取込口にフィルタを設ける。このフィルタを空気が通過することにより、空気中に含まれる塵埃を除去することができる。従って、ガス供給路には、エロージョンやコロージョンなどの原因となる塵埃が少ない空気を導入することができ、めっき皮膜の腐食を抑制することができる。
【0029】
請求項9又は13に記載の発明によれば、燃料電池を構成する複数のセパレータの表面を一括してめっきすることができる。また、配置される順番に積層されるので、めっき皮膜を形成した後に、例えばMEAなどを挿入することにより、効率よく燃料電池の組み立てを行なうことができる。更に、めっきに用いられるめっき分散体は、めっき液と、このめっき液の拡散力を高めるための拡散流体とを含むため、めっき皮膜の付き回りが良好になる。従って、めっき皮膜を薄くした場合にも、良好なめっき被覆率(カバレッジ)を得ることができる。また、めっき分散体を連続的に供給するため、めっきの副反応により生じる、ピンホールの原因となる水素及び不純物を迅速に排出することができる。従って、更に良好なめっき皮膜を形成することができる。
【0030】
請求項10又は14に記載の発明によれば、電解めっきを行なうことにより、高速にめっき皮膜を形成することができる。
請求項11又は15に記載の発明によれば、第1のガス供給路と第2のガス供給路とに異なる属性(材質や膜厚等)のめっき皮膜を形成することができる。燃料電池においては、第1のガス供給路に導入するガスと、第2のガス供給路に導入するガスの種類が異なるために、そのガスの性質に応じてめっき皮膜を使い分けることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ピンホールを抑制しためっき処理によりめっき皮膜をセパレータに形成することができるので、効率的に高性能な燃料電池を製造し、提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図12を用いて説明する。本実施形態では、内部フォールド型電池のスタックを用いて説明する。
(燃料電池の構成)
まず、燃料電池を構成する1つのセルの要部構造40について説明する。ここでは、内部マニフォールド型電池について説明する。この内部マニフォールド型電池のセパレータにおいては、発電領域の他に、後述するようにガスや熱流体を分配する機構(内部マニフォールド)が設けられている。図1は、セルの中央部の発電領域の要部構造40の一部を切り出して説明した図である。この図1に示すように、要部構造40は、MEA30と、この一方に設けられた燃料側セパレータ31と、その他方に設けられた空気側セパレータ32とから構成されている。
【0033】
第2のセパレータとしての燃料側セパレータ31及び第1のセパレータとしての空気側セパレータ32は、例えば、ステンレス鋼(SUS鋼)などで構成される基板からなる。この基板の断面形状は、プレス加工等により台形形状の凸部と溝部が形成され、この溝部はガスを拡散させるためのガス流路となる。燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32においては、MEA30側に対向する全面に金(Au)膜が形成されている。そして、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32と、MEA30との間に形成される溝が、水素又は空気を供給するガス供給路を構成する。
【0034】
詳述すると、燃料側セパレータ31においては、図1における基板の下面にAu膜を形成する。この燃料側セパレータ31において、上に凸となった部分とMEA30との間の空間に水素を通過させる。一方、空気側セパレータ32においては、基板の上面にAu膜を形成する。この空気側セパレータ32において、下に凸となった部分とMEA30との間の空間に空気を通過させる。
【0035】
なお、図1に示す要部構造40は、燃料側セパレータ31のガス供給路の溝部の延在方向と、空気側セパレータ32のガス供給路の溝部の延在方向とが直交するように、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32を配置してなる十字流(直交流)型構造である。この他に、燃料側セパレータ31のガス供給路の溝部の延在方向と、空気側セパレータ32のガス供給路の溝部の延在方向が平行になる並流型構造や向流型構造がある。
【0036】
一方、燃料側セパレータ31と空気側セパレータ32との間に介在するMEA30は、電解質層300と、これの一方の面に設けられた第2の電極としての燃料極触媒層301と、他方の面に設けられた第1の電極としての空気極触媒層302と、ガス拡散層303,304とを一体化させたものである。
【0037】
燃料極触媒層301は、燃料に含まれる水素ガスから水素イオンを生成するための層である。ここでは、白金(Pt)等の触媒金属を担持させる。電解質層300は、燃料極触媒層301で発生した水素イオン(プロトン)を空気極触媒層302に伝達する層である。空気極触媒層302は、酸素と、電解質層300を介して拡散された水素イオンとを反応させて水を生成する層である。
【0038】
ガス拡散層303は燃料極触媒層301に接して形成され、上述した燃料側セパレータ31のガス供給路の溝部を通過する燃料をMEA30の全面に拡散させる機能を有する。また、ガス拡散層304は空気極触媒層302に接して形成され、空気側セパレータ32のガス供給路の溝部を通過する空気を、MEA30の全面に拡散させる機能を有する。これらガス拡散層303及び304は、例えば、カーボンペーパやカーボンクロスにより構成される。
【0039】
以上のような要部構造40を備えた燃料側セパレータ31と空気側セパレータ32においては、後述するように縁部においてガスや熱流体を分配する機構が設けられている。このように構成されたセル500を積層させることにより燃料電池のスタックが構成される。なお、スタックの端に位置する燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32には、このスタックにより発生した電気を取り出すための電気出力端子が設けられたセパレータエンド板が取り付けられる。また、スタック内には、例えば数個毎に、隣り合ったセルの燃料側セパレータ31と空気側セパレータ32との間に冷却板を挿入する。この冷却板は、化学反応により生じる熱を冷却するための熱流体を流通させる通路を形成するためにプレス加工されている。更に、燃料電池には、燃料側セパレータ31のガス供給路に供給するための燃料を外部から取り込むための燃料ガス取込口が設けられている。また、この燃料電池には、空気側セパレータ32のガス供給路に供給するための空気を外部から取り込むための空気取込口が設けられている。この空気取込口には、塵埃を除去するためのフィルタが設けられている。
【0040】
(セパレータを構成する流路板の組み合わせ)
次に、セパレータの構成について説明する。上述のような燃料電池においては、内部に発電のための燃料ガスとしての水素ガス、酸素ガスを含んだ空気を流すためのガス供給路、冷却のための熱流体を流すための流路が設けられている。この場合、複数種類の流路板を組み合わせて構成されるが、内部フォールド型電池においては、これらの燃料、空気、熱流体を分配するためのマニフォールドが、各流路板に設けられている。この流路板の一例を、図2を用いて説明する。
【0041】
図2に、燃料を流すための溝部として縦溝を設けた流路板11aの一例を示す。この流路板11aには、燃料供給孔101a、熱流体供給孔101b、空気供給孔101cが設けられている。更に、この供給孔(101a、101b、101c)に対応して、燃料排出孔104a、熱流体排出孔104b、空気排出孔104cが設けられている。これらの供給孔(101a、101b、101c)や排出孔(104a、104b、104c)は、すべての流路板に同じ位置に共通して設けられる。この流路板11aは燃料を流すために、燃料供給孔101aから分配路102が設けられている。この分配路102には、前述のプレス加工等で作製された凹凸部により燃料を流すため縦溝からなる流路103が設けられている。そして、この分配路102は、燃料排出孔104aに接続される。
【0042】
燃料電池においては、このように供給孔(101a、101b、101c)や排出孔(104a、104b、104c)、各孔に接続された分配路102、各分配路102に設けられた各種流路を備えた流路板を組み合わせて各種セパレータを構成する。この流路板の組み合わせ方を、図3を用いて説明する。各セパレータは3枚又は2枚の流路板等を組み合わせて構成する。ここでは、3枚又は2枚の組み合わせを、便宜上、表面側、内部、裏面側に分けて説明する。そして、表面側において燃料又は熱流体、裏面側において空気又は熱流体を流す場合を説明する。
【0043】
表面側においては、上述の流路板11aの他に、燃料を流す流路を90度回転させた横溝からなる流路板11bを用いることも可能である。また、熱流体供給孔101bと熱流体排出孔104bとの間に分配路102が設けられた流路を備える流路板11cを用いることも可能である。更に、セルの最表面側には、燃料、熱流体排出、空気の入口となる供給孔(101a、101b、101c)や排出孔(104a、104b、104c)、電気出力端子が設けられたセパレータエンド板11dを用いる。
【0044】
また、内部においては、セパレータ用金属枠m1や、熱流体供給孔101bと熱流体排出孔104bとの間に分配路102が設けられた流路板12bを用いる。また、2枚の流路板を組み合わせて構成する場合には、内部には流路板を挿入しない。
【0045】
一方、裏面側には、空気を流すための縦溝からなる流路を備えた流路板13aや横溝からなる流路板13bを用いる。これらの流路板(13a、13b)には、空気を流すために、空気供給孔101cと空気排出孔104cと間に分配路102が設けられている。また、熱流体供給孔101bと熱流体排出孔104bとの間に分配路102が設けられた流路を備える流路板13cを使用する場合もある。更に、セルの最裏面側には、燃料、熱流体排出、空気の出口となる供給孔(101a、101b、101c)や排出孔(104a、104b、104c)、電気出力端子が設けられたセパレータエンド板13dを用いる。
【0046】
このような流路板を適宜、組み合わせることにより、多様なセパレータを構成することができる。例えば、燃料や空気を同じ方向に流す並流には、表面側と裏面側で同じ向きの流路が形成された流路板を組み合わせる。図4に示すように、流路板11aとの組み合わせを考えた場合、内部にセパレータ用金属枠m1、裏面側に流路板13aに用いたユニット15aを構成することができる。また、内部に熱流体を流す流路板12bを用いた場合、冷却に用いるユニット15bを構成することができる。
【0047】
また、燃料や空気を、90度回転させた方向から流す十字流(直交流)の場合には、縦溝と横溝の流路が形成された流路板を組み合わせる。図4に示すように、流路板11aとの組み合わせを考えた場合、内部にセパレータ用金属枠m1、裏面側に流路板13bに用いたユニット15cを構成することができる。また、内部に熱流体を流す流路板12bを用いた場合、冷却に用いるユニット15dを構成することができる。なお、燃料や空気を反対方向から流す向流の場合には、一方のガスを排出孔から供給し、供給孔を介して排出すればよい。
【0048】
なお、上記の組み合わせの他、セパレータの構成には、「エンドプレート+燃料」、「エンドプレート+空気」、「エンドプレート+熱流体+エンドプレート」、「エンドプレート+熱流体+燃料」、「エンドプレート+熱流体+空気」等が考えられる。また、このエンドプレートに集電機能を持たせてもよい。なお、ここでは、スタック時に、流体の供給孔(101a、101b、101c)を水平方向に並べた例を説明したが、これに限られるものではなく、90度回転させて供給孔群を垂直に並べてスタッキングしてもよい。
【0049】
(めっきユニット20の構成)
以下に、めっき処理に用いるめっきユニット20の構成を説明する。ここでは、セパレータと対極にそれぞれガイドを設ける。集電棒を用意してガイドに通すことで、セパレータ群、対極群を簡便に作り、次に、これらを交互に交錯する様にあわせて積層する。この両端に装着するユニット端板19はフランジになっており、ボルトナットで外から両端のユニット端板19を固定する。なお、めっきユニット全体は高圧容器であるめっき槽70にいれるため、ここでは動かない程度の固定でもよい。このめっきユニット20は、各セパレータを用いて構成する。本実施形態は、燃料や空気を流す流路を用いて、各ガスの代わりに、後述するめっき分散体を流すことにより電解めっきを行なうことを特徴とする。このため、めっきユニット20の構成を説明するために、まず、内部マニフォールド型の燃料電池を構成した場合のセルの配置と、燃料、熱流体、空気の流し方とについて説明する。
【0050】
ここでは、図5に示すように、燃料と空気とを十字流(直交流)で流す燃料電池スタックの内部積層構造を用いて説明する。但し、溝を平行にした並流や向流においても同様に構成することができる。まず、最端部には、セパレータエンド板(11d、13d)が設けられる。そして、MEA30が、燃料用の流路板と空気用の流路板とを組み合わせた各ユニットに挟み込まれる。本実施形態では、各セパレータの表面側では、流路板11bによる燃料の流路が構成されている。一方、裏面側には、流路板13aによる空気の流路が構成されている。なお、複数枚毎に熱流体を流すためのユニットが挿入される。このユニットにおいては、流路板11bと流路板13aとの間の流路板12bにおいて熱流体が流される。ここで、各流体は、図2に示した供給孔(101a、101b、101c)から独立に供給され、排出孔(104a、104b、104c)から排出される。具体的には、燃料は燃料供給孔101aから供給され燃料排出孔104aから排出される。空気は空気供給孔101cから供給され空気排出孔104cから排出される。熱流体は熱流体供給孔101bから供給され熱流体排出孔104bから排出される。
【0051】
次に、図5に示す燃料電池スタックの配置に対して、めっき処理時に用いるめっきユニット20の構成を、図6を用いて説明する。ここでは、燃料、熱流体や空気を流す流路に対峙させるように陽極板16を挿入する。この陽極板16は、図7に示すように、対向電極部16aと、その縁部に設けられたパッキング部16bとから構成される。更に、陽極板16には、流路板と同様に、供給孔(101a、101b、101c)や排出孔(104a、104b、104c)が形成されている。このパッキング部16bの形状は、対峙する流路板の分配路102の形状に合わせて形成されている。
【0052】
次に、図8を用いて、めっき処理時の陽極板16とセパレータとの位置関係を説明する。セパレータには、セパレータの流路部分のみをプレス成形したタイプと、セパレータの流路への分配(マニフォールド)と流路部分をプレス成形したタイプとがある。前者のタイプでは、プレス板の縁部が、図8(a1)に示すように流路103の凹部と同じ高さになるように構成される。また、後者のタイプでは、プレス板の縁部が、図8(b1)に示すように流路103の凸部と同じ高さになるように構成される。燃料電池においては、MEAのガス拡散層とセパレータとが接するように、セパレータとMEAとを積層するため、図8(a1)のセパレータを製造する場合には、金属板に流路103のみをプレス加工して、プレス張り合わせ、縁部にパッキングp1を用いて、流路103の凸部と同じ高さにして内部マニフォールドを形成する。一方、図8(b1)のセパレータを製造する場合には、金属板に流路103とマニフォールド部分を、プレス加工により形成し、マニフォールド部分をセパレータ用金属枠m1により強化する。セパレータ用金属枠m1は、積層ユニットの内部において、プレス合体したセパレータに強度を与え、各流路のシールを確実にし、積層プレート間の高さを調整することで、内部の流路寸法を確実にし、さらに、積層MEAとセパレータの面接触を確実にするものでもある。なお、このようなセパレータを用いて燃料電池を構成する場合は、MEAのガス拡散層とセパレータとが接するように薄いパッキングを介してセパレータとMEAとを積層させる。
【0053】
次に、両タイプのセパレータのめっき処理の配置を以下に説明する。めっきの際には、図8(a2)及び(b2)に示すように、対極とのクリアランスを大きく取るように、厚いパッキング部16bを介して、セパレータと対極を積層させる。このパッキング部16bはスペーサとして機能し、図8(a3)及び(b3)に示すように、対向電極部16aと流路との間にめっき分散体等を流す流体流路16cが形成される。この流体流路16cにおいては、流路103の凹部領域と凸部領域で対極との距離が異なる。なお、パッキング部16bは絶縁材料を用いて構成し、その厚みは流体流路16cが所定の厚さを確保できるように定める。本実施形態では、この絶縁材料として、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン;poly Ether Ether Ketone )を用いる。この他、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン;polytetrafluoroethylene )、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂;Tetrafluoroethylene perfluoroalkoxyvinyl ether copolymer)等を用いることができる。
【0054】
ここで、めっき処理時のパッキングの役割と燃料電池におけるパッキングの役割とを詳述する。めっき処理の場合は、パッキングの相手は陽極板16であり、流体の流れを分配し、制御し、シールし、セパレータと陽極板16の間の距離をめっきに適するように調整する。そして、陽極板16に対して電気的に絶縁し、陽極板16とセパレータとの接触による電気の短絡を回避する。
【0055】
一方、燃料電池の場合は、パッキングの相手はMEAであり、流体の流れを分配し、制御し、シールし、セパレータとMEAとが均一に低い接触抵抗で接するように調整する。更に、MEAの外周部分で発電に関与しない電解質膜露出部分は、電解質(イオン交換)膜がむき出しになる場合があり、パッキングはこの部分とセパレータとが直接接触しないように絶縁する。電解質膜は強酸であるため、直接接触すると金属セパレータにおいて腐食が生じたり、電解質膜において溶出金属イオンによりイオン交換してプロトン導電性の喪失が生じたりする。このため、パッキングを用いることにより、これらを抑制することができる。さらに、電解質膜は濡れているため、セパレータと接触するとその部分から電気が漏電し内部で短絡が生じるため、パッキングを用いることにより、この短絡電流を抑制することができる。
【0056】
次に、めっきユニット20の作製方法について説明する。この場合、セパレータと対極にそれぞれガイドを設ける。集電棒を用意してガイドに通すことで、セパレータ群17、陽極板群18を作製する。次に、これらを交互に交錯するようにあわせて積層する。この両端に装着するユニット端板19はフランジになっておりボルトナットで外から両端のユニット端板19を固定する。上述のように、本実施形態では、めっきユニット全体を高圧容器であるめっき槽70に入れるので、動かない程度の固定とする。
【0057】
そして、図9に示すように、セパレータと陽極板とが相互に配置するように、陽極板群18にセパレータ群17を挿入する。更に、両側には、ユニット端板19が配置される。このユニット端板19には、セパレータや陽極板の供給孔(101a、101b、101c)や排出孔(104a、104b、104c)にそれぞれ連通する流体導入口が設けられている。そして、ユニット端板19、セパレータ群17、陽極板群18を積層して装着させためっきユニット20が完成する。
【0058】
図10は、このめっきユニット20を、ユニット端板19側から見た図面である。このユニット端板19には、流体導入口(19a、19b、19c)、流体排出口(19e、19f、19g)を備える。本実施形態では、流体導入口(19a、19c)にはめっき分散体を導入し、流体導入口19bには圧力バランサ(例えば、イオン交換水)を導入する。具体的には、後述するように、熱流体の流路にはイオン交換水を供給し、めっきユニット20内に展開させる。そして、イオン交換水の充填後、流体排出口19fを閉じる。流体導入口19bはめっき槽70の内部で開放のままにして、圧力の導通を保持する。これにより、この圧力バランサは、めっきユニット20に導入されるめっき分散体と同等の圧力になる。
【0059】
この場合、各流路板の供給孔(101a、101c)を介して、めっき分散体がめっきユニット20に展開される。また、圧力バランサにより、めっき分散体の熱流体流路への混入が抑止される。このめっき分散体は、排出孔(104a、104c)を介して、対向するユニット端板19の流体排出口(19e、19g)から排出される。
【0060】
(めっき装置の構成)
次に、セパレータを製造する場合に使用するめっき装置について、図11を参照して説明する。ここで、本実施形態では、拡散流体として、超臨界流体の二酸化炭素(以下、「CO2」と記載する)を用いて電解めっきを行なうめっき装置を想定して説明する。なお、CO2の臨界点は、31℃で7.4MPaである。
【0061】
図11に示すように、本実施形態のめっき装置は、CO2タンク50、高純度CO2タンク51、分散促進剤タンク52、Auめっき液タンク54、純水タンク55を備えている。更に、このめっき装置は、混合分散部60、めっき槽70及び分離槽80を備えている。
【0062】
次に、このめっき装置の配管について詳述する。
CO2タンク50は、超臨界状態として用いるCO2を液体状態で収容する。このCO2タンク50は、混合分散部60に、供給管を介して接続される。この供給管には、液ポンプ及び加熱部が設けられており、これらによりCO2を加圧及び加熱して超臨界状態にする。また、この供給管の液ポンプとCO2タンク50との間には、切換弁が設けられており、この切換弁と液ポンプの間には、別の切換弁が設けられた供給管を介して、高純度CO2タンク51が接続される。この高純度CO2タンク51は、高純度のCO2が収容されている。これら切換弁の開閉を制御することにより、CO2タンク50からのCO2又は高純度CO2タンク51からのCO2が選択的に混合分散部60に供給可能になっている。更に、混合分散部60に至る直前の供給管には、供給弁が設けられている。この供給弁は、開閉制御されることにより、CO2タンク50又は高純度CO2タンク51と混合分散部60との連通・遮断を行なって、混合分散部60へのCO2の供給又は供給停止を制御する。
【0063】
分散促進剤タンク52は、分散促進剤を収容する。本実施形態では、分散促進剤としてフッ素系化合物を用いる。
フッ素系化合物は、フッ素基と親水性基とを有する。本発明で使用されるフッ素系化合物として望ましいものには、非イオン性親水性基を有するフッ素化合物が挙げられる。この非イオン性親水性基を有するフッ素化合物は高圧CO2中で良好な分散促進機能を発現する。
【0064】
また、フッ素基としては、直鎖或いは枝分かれを有するペルフルオロアルキル基、またはペルフルオロポリエーテル基を始めとした炭素鎖中にヘテロ原子を含むものが挙げられる。これらのうちでも炭素鎖長がペルフルオロアルキル基では3〜15程度、炭素鎖中にヘテロ原子を含むものでは3〜50程度のものが使用可能である。
【0065】
また、親水性基にはエーテル、エステル、アルコール、チオエーテル、チオエステル、アミド等の極性基が挙げられる。これらのうちでも本実施例で挙げたフッ素基がペルフルオロポリエーテル基であり、親水性基が短鎖のポリエチレングリコール基であるものが特に優れている。
【0066】
また、従来の分散促進剤である炭化水素系の界面活性剤は長鎖のポリエチレングリコール基を有しているため化学的な安定性に課題があった。これに比べて、フッ素系化合物はより安定なため、長期間の繰り返し使用に対する耐久性を期待できる。また炭化水素系界面活性剤の分解物に由来する異物混入の可能性も少なくなる。
【0067】
フッ素系化合物は、疎水性のフッ素基を有しているため、CO2とめっき液とが安定した分散状態を維持している時間(分散保持時間)が短く、めっき液とCO2との分離が容易であり、操作性の面でも優れている。このフッ素系化合物を用いた場合、分散操作を停止すると例えば数秒〜数十秒程度で、めっき分散体はCO2とめっき液に分離する。
【0068】
分散促進剤タンク52は、混合分散部60に供給管を介して接続されている。この供給管には、分散促進剤を加圧するための液ポンプと加熱するための加熱部と、混合分散部60への分散促進剤の供給又は供給停止の制御を行なう供給弁とが設けられている。
【0069】
Auめっき液タンク54は、Auめっき液を収容する。このAuめっき液タンク54は、加熱・保温手段を備え、Auめっき液を所定の温度になるように加熱し保温する。このAuめっき液タンク54は、混合分散部60にAuめっき液供給管を介して接続されている。このAuめっき液供給管には、Auめっき液を加圧するための液ポンプと、混合分散部60へのAuめっき液の供給又は供給停止を制御するための供給弁とが設けられている。なお、Auめっき液供給管は、通過するAuめっき液の成分が析出しない温度以上に常時保温されている。
【0070】
更に、純水タンク55は、洗浄液としての純水を収容する。この純水タンク55は、混合分散部60に純水供給管を介して接続されている。この純水供給管には、純水を加圧するための液ポンプと加熱するための加熱部と、混合分散部60への純水の供給又は供給停止を制御する供給弁とが設けられている。なお、ここで、純水の代わりにイオン交換水を利用することも可能である。
【0071】
一方、各タンク50〜55が接続されている混合分散部60は、めっき液、CO2及び分散促進剤を混合して、めっき処理に使用するめっき混合液を生成し、これを分散状態に攪拌してめっき分散体を形成する。本実施形態では、この混合分散部60は、上流側の混合器と、これに接続された下流側の分散機とを含んで構成されている。混合器は、供給弁のうち2つ以上が選択されて開かれると、純水を含む洗浄混合液、Auめっき液を含むAuめっき混合液のいずれかを生成する。なお、洗浄乾燥工程には、水あるいはCO2だけを流す場合もある。分散機は、励磁されたソレノイドによって回転する攪拌子を備え、この攪拌子を容器内部で回転させることにより、混合器で生成された混合液をその成分が均一になるように分散させて分散体にする。
【0072】
混合分散部60は、めっき槽70に接続されている。めっき槽70は、混合分散部60において混合分散されためっき分散体を用いて、めっき処理を行なうための槽である。具体的には、めっき槽70は、供給口71と排出口72とを有する。供給口71は、混合分散部60からめっき槽70内のめっきユニット20にめっき分散体が供給される。なお、この供給口71には、公知の前洗浄に用いる各種洗浄液を収容した洗浄液タンクが接続されている。ここで、各種洗浄液としては、アルカリや酸などの洗浄液、数種の分散促進剤、脱イオン水等がある。一方、めっき槽70内のめっきユニット20に接続された排出口72は分離槽80に接続されている。この分離槽80には、使用しためっき分散体が排出される。
【0073】
更に、めっき槽70内のめっきユニット20には、電解めっきを行なうために、電源から電力が供給される。
一方、めっき槽70の排出口72に接続されている分離槽80は、めっき槽70において使用されためっき分散体から、CO2とめっき液とを分離する。なお、めっき分散体に分散促進剤が含まれている場合には、この分散促進剤はCO2に混在して、めっき液から分離される。分離槽80は、CO2タンク50及び図示しないめっき液排出部に接続されている。分離された分散促進剤を含むCO2は、これに含まれている水素や酸素などのガス及び有機物などの不純物が除去された後、圧力が調整されて、CO2タンク50に還流される。
【0074】
分離槽80からめっき液が排出されて貯蓄可能なめっき液排出部は、Auめっき液再生装置又は廃液タンクに連通可能になっている。Auめっき液再生装置は、Auめっき液から不純物を除去し、その成分を調整して、Auめっき液を再び使用可能となるように再生する。このめっき液再生装置は、Auめっき液タンク54に接続されて、再生したAuめっき液をAuめっき液タンク54に還流する。廃液タンクには、分離槽80から排出された洗浄液や再生できないめっき液などが排出される。
【0075】
なお、分離槽80から混合分散部60に対して循環ポンプを設けたリサイクルパスを設置して、めっき槽70から排出されるめっき流体の一部をリサイクルしてもよい。この場合、めっき分散体を、混合分散部60から、めっき槽70の供給口71、排出口72、分離槽80を介して、混合分散部60に循環させる。
【0076】
更に、本実施形態のめっき装置は、制御部を備える。この制御部は、CPU、RAM、ROM等から構成され、格納されたプログラムにより、各供給管に設けられた液ポンプ、加熱部及び供給弁や、めっき槽70の電源等についての制御を実行する。
【0077】
(燃料電池の製造)
次に、本実施形態における燃料電池を構成するセルの製造方法について、図12を用いて説明する。
【0078】
まず、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32となる基板をプレス加工して、ガス供給路となる溝部を形成した流路板を製造する。また、冷却板も、通路を形成するためにプレス加工した流路板を製造する。
【0079】
次に、上述のように、流路板を燃料電池内の配置順に配置し、これら流路板をガイド17aで固定してセパレータ群17を製造する(図12のステップS1−1)。
そして、図9に示すように、ガイド17aで固定されたセパレータ群17と、ガイド18aを取り付け連結した陽極板群18とを組み合わせて、めっきユニット20を作製する(ステップS1−2)。
【0080】
次に、めっきユニット20を、図11に示すように、めっき槽70に導入する(ステップS1−3)。ここでは、まず、内部に空気が残留しないように、熱流体のための流体導入口19bを開けたままの状態で、流体排出口19fからイオン交換水を供給し、内部の空気を追い出しながら、熱流体排出孔104bを介してめっきユニット20内に展開させて、内部にイオン交換水を充填する。イオン交換水の充填後、流体排出口19fを閉じる。そして、流体導入口19bからイオン交換水が流出しないようにしながら、めっき槽70の内部で開放状態にする。更に、めっきユニット20の流体導入口(19a、19b、19c)は圧力管を介して供給口71に接続する。但し、熱流体のための流体排出口19fは閉じられており、イオン交換水が充填されているため、めっき分散体の熱流体のための流路への侵入は抑止される。なお、ここで、完全にセパレータ内部を水封した後に流体導入口19bと流体排出口19fの両方を閉じてもよい。また、流体排出口(19e、19g)は圧力管を介して排出口72に接続する。更に、セパレータ群17のガイド17aはマイナス、陽極板群18のガイド18aはプラスになるように、電源端子にそれぞれ接続する。
【0081】
そして、めっき槽70において、めっきユニット20の各流路の前洗浄を行なう(ステップS2−1)。具体的には、アルカリや酸などの洗浄液、数種の界面活性剤、脱イオン水等を順次、供給口71を介してめっき槽70内のめっきユニット20に供給する。
【0082】
次に、めっき前処理を行なう(ステップS2−2)。具体的には、超臨界CO2と純水を用いた超臨界洗浄処理を行なう。ここで、制御部は、高純度CO2タンク51の供給管及び純水タンク55の供給管にそれぞれ設けられた液ポンプを駆動し、加熱部において加熱を行ない、供給弁を開く。これにより、混合分散部60には、高純度CO2タンク51からのCO2が加熱及び加圧されて超臨界状態となったCO2と、純水タンク55からの加熱及び加圧された純水とが供給される。混合分散部60は、供給された超臨界CO2と純水とを混合及び攪拌し、この洗浄混合液をめっき槽70内のめっきユニット20に供給する。
【0083】
次に、超臨界CO2を用いてAu膜を形成するためのめっき処理を行なう(ステップS2−3)。具体的には、制御部は、純水の供給弁を閉じ、純水の供給を停止する。そして、制御部は切換弁を切り換えて、高純度CO2タンク51の代わりに、CO2タンク50を混合分散部60に接続する。これにより、CO2タンク50からのCO2が混合分散部60に供給されて、めっき槽70内のめっきユニット20から純水を排出する。その後、制御部は、分散促進剤タンク52の供給管及びAuめっき液タンク54の供給管に設けられた供給弁を開くとともに、液ポンプを駆動して、分散促進剤及びAuめっき液を、加圧及び加熱された状態で混合分散部60に供給する。このとき、混合分散部60にはCO2タンク50からのCO2が超臨界状態となって供給され続けているので、混合分散部60において、超臨界CO2と分散促進剤とAuめっき液とを混合・攪拌しためっき分散体が形成され、めっき槽70内のめっきユニット20に供給される。なお、本実施形態では、制御部は、超臨界CO2、分散促進剤及びAuめっき液の分散状態の分散保持時間が短いため、混合器で形成されためっき分散体が、分散を保持している時間内にめっきユニット20内の流路を通過するように、供給管の各液ポンプの駆動を制御する。
【0084】
めっき槽70に供給されためっき分散体は、供給口71を介してめっきユニット20の内部に導入される。このとき、めっき分散体は、流体流路16cを通過して、排出口72に流れる。
【0085】
このとき、めっきユニット20においては、セパレータ群17、陽極板16に電圧が印加されている。このため、ガイド17aを介してマイナス極となっているセパレータ群17には、めっき分散体が通過する面に電解めっきが行なわれ、Au膜が形成される。なお、このとき、Auめっき液を含むめっき分散体は、分散保持時間を経過する前にめっきユニット20から分離槽80に排出される。これにより、めっき処理によりめっき分散体中に溶解した水素ガスや各流路板の表面から剥離した不純物等は速やかにめっきユニット20から排出される。
【0086】
そして、排出口72から排出された流体は、分離槽80に流入する。分離槽80においては、めっき液と、CO2及び分散促進剤とに分離される。分離されたCO2は、不要なガスが除去される等の再生処理が行なわれて、CO2タンク50に戻される。また、分離されたAuめっき液は、Auめっき液再生装置を通過することにより再生されて、Auめっき液タンク54に戻される。
【0087】
その後、各液ポンプの駆動、加熱部における加熱を継続して、めっき分散体をめっきユニット20に連続的に供給する。そして、所定の厚さのAu膜を形成するための要する時間のめっき処理を継続する。
【0088】
次に、洗浄及び乾燥の後処理工程を行なう(ステップS2−4)。具体的には、制御部は、はじめに、分散促進剤タンク52及びAuめっき液タンク54にそれぞれ接続されている供給管の供給弁を閉じる。そして、切換弁を切り換えてCO2タンク50の代わりに、高純度CO2タンク51からのCO2を混合分散部60に供給して混合分散部60からめっきユニット20、並びにめっき槽70の各部分に残留するめっき液を排出・回収する。続いて、純水タンク55に接続される供給管の供給弁を開く。この場合、純水が混合分散部60に供給される。以上により、CO2でAuめっき液を混合分散部60からめっき槽70に至る部分より排出・回収するとともに、超臨界CO2と純水とが混合された混合純水による洗浄を行なう。
【0089】
その後、洗浄が完了すると、乾燥を行なうために、純水タンク55に接続される供給管の供給弁を閉じる。これにより、純水タンク55からの純水の供給が停止する。そして、CO2のみが超臨界状態でめっき槽70に供給され、めっきユニット20の各流路にAu膜が形成された表面を流れる。このCO2の流れにより、表面に形成されたAu膜に付着した純水を洗い流すとともに、超臨界状態となっているCO2に溶解させて除去する。そして、CO2のみを所定時間、供給して乾燥を完了すると、高純度CO2タンク51に接続される接続管の供給弁を閉じ、CO2の供給を停止する。更に、液ポンプの駆動及び加熱部の加熱を停止し、めっき槽70からCO2を排気する。以上により、めっきの後処理が完了する。
【0090】
そして、めっきユニット20をめっき槽70から取り出し、めっきユニット20からセパレータ群17を取り外す(ステップS3−1)。
次に、セパレータ群17の所定の位置にMEA30を挿入する(ステップS3−2)。更に、各セパレータの周囲にシール部材を設けた後、密着させて全体を一体化する。以上により、燃料電池に用いる平板スタック構造のセルが完成する。
【0091】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
・ 本実施形態では、燃料側セパレータ31、空気側セパレータ32において、MEA30と対向する面にAuのめっき皮膜を形成する。このめっき皮膜の形成には、めっき液と超臨界CO2とを混合・分散させためっき分散体を用いる。このため、超臨界CO2によりめっき液の拡散力が高くなり、燃料側セパレータ31、空気側セパレータ32のMEA30側に、薄膜であっても腐食の原因となるクラックやピンホールのない良好なAuめっき皮膜を形成することができる。めっき皮膜としてAuを用いた場合、母材金属の腐食電流を抑制できる。更に、Au自体はイオンになり難く、母材金属のイオン溶出が押さえられるので、金属イオンによる電極や電解質膜の汚染、内部抵抗の増加を回避できる。更に、母材の表面を覆うAuは酸化され難く、セパレータ表面に酸化皮膜ができないので電気抵抗の増加を抑制できる。従って、高性能な燃料電池を実現する平板スタック構造を製造することができる。
【0092】
・ 本実施形態では、燃料電池スタック構造を応用してめっきを行なう。MEAを陽極板に替えて、燃料や空気を流す流路を用いて、各ガスの代わりに、めっき分散体を流すことによりめっきを行なう。具体的には、まず、燃料、熱流体や空気を流す流路に対峙させるように陽極板16を挿入する。この陽極板16は、対向電極部16aと、その縁部に設けられたパッキング部16bとから構成される。このパッキングは陽極板と流路板の間にめっき流体を供給するために適するクリアランス(厚さ)とする。更に、陽極板16には、流路板と同様に、供給孔(101a、101b、101c)や排出孔(104a、104b、104c)が形成されている。この場合、めっきユニット20に導入されためっき分散体は、各流路板の供給孔(101a、101c)を介して展開され、排出孔(104a、104c)を介して排出される。このため、MEA30との接触抵抗を低減し、腐食を防止すべき領域にのみに、効率的にめっき皮膜を形成することができる。
【0093】
・ 本実施形態では、熱流体や空気を流す流路に対峙させるように陽極板16を挿入する。具体的には、各セパレータにガイド17aを取り付けたセパレータ群17を作製する。また、陽極板16にもガイド18aを取り付け連結した陽極板群18を作製する。このガイドは、セパレータ群17や陽極板群18に電圧を印加し通電するための電極端子として機能する。そして、セパレータと陽極板とが相互に配置するように、陽極板群18にセパレータ群17を挿入する。ユニット端板19、セパレータ群17、陽極板群18を積層して装着させためっきユニット20を作製する。そして、流路を用いてめっき分散体を流しながら、ガイド(17a、18a)に電圧を印加し、流路板と陽極板16との間で電解めっきを行なう。このため、流路内において、効率的に電解めっきを行なうことができる。
【0094】
・ 本実施形態では、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32の表面にめっき皮膜を形成する場合には、めっき分散体を連続的に供給する。このため、めっき処理中に発生した水素が溶解したCO2や表面から剥離した不純物は、速やかにめっき槽70から排出されるので、これらがめっき槽70内で再付着することを抑制できる。従って、めっき皮膜に残留する水素が原因となっていたピンホールの発生を抑制し、ゴミや汚れ等の付着が起因するめっき皮膜の剥離、割れを低減することができる。この結果、めっき皮膜を薄くした場合にも、良好なめっき被覆率(カバレッジ)を得ることができる。
【0095】
・ 本実施形態では、流体導入口19bには圧力バランサ(例えば、イオン交換水)を導入する。具体的には、内部に空気が残留しないように、流体導入口19bを開けたまま流体排出口19fからイオン交換水を供給し、内部の空気を追い出し、内部に熱流体排出孔104bを介して、イオン交換水をめっきユニット20内に展開させる。イオン交換水の充填後、熱流体のための流体排出口19fは閉じる。流体導入口19bはめっき槽70の内部で開放のままにして、圧力の導通を保持する。これにより、この圧力バランサは、めっきユニット20に導入されるめっき分散体と同等の圧力になる。しかも、内部は水封されるので、めっきのマスクにもなる。なお、ここで、完全にセパレータ内部を水封した後に、流体導入口19bと流体排出口19fの両方を閉じても良い。燃料電池において、この熱流体供給孔101bに接続される流路には熱流体を流すため、めっきを行なう必要はない。従って、めっき処理時には、めっき分散体と圧力バランサとの圧力平衡により、流路板の変形を防止することができる。更に、めっき分散体が熱流体流路への混入を回避し、不必要な領域へのめっきを抑制することができる。
【0096】
・ 本実施形態では、製造する燃料電池には、空気側セパレータ32のガス供給路に供給するための空気を外部から取り込むための空気取込口が設けられ、この空気取込口にはフィルタが設けられている。従って、このフィルタを空気が通過することにより、空気中に含まれる塵埃を除去することができる。このため、ガス供給路には、エロージョンやコロージョンなどの原因となる塵埃が少ない空気を導入することができ、エロージョンやコロージョンによるめっき皮膜の腐食を抑制することができる。
【0097】
・ 本実施形態では、めっきの際には、対極とのクリアランスを大きく取るように、厚いパッキング部16bを介して、セパレータと対極を積層させる。この場合、この流体流路16cにおいては、流路103の凹部領域と凸部領域で対極との距離が異なり、凸部領域が凹部領域より陽極板16に近くなる。このため、めっき処理時には、凹部領域の方が凸部領域より電流が流れやすくなり、凹部領域に凸部領域より厚いめっき皮膜を形成することができる。燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32の電極に接触する部分(凸部領域)は、振動を受けると、電極と繰り返し擦りあわされることがあり、めっき皮膜が削れて腐食が生じる可能性がある。このような部分のめっき皮膜を厚くすることにより、磨耗や剥離の発生を抑制することができる。
【0098】
また、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 上記実施形態においては、流路103の凹部領域又は凸部領域と対極との距離により、それぞれの領域に形成されるめっき皮膜の膜厚を調節した。この場合、めっき処理時に、めっき液の流量、電気量の操作条件を調整し、燃料側セパレータ31がガス拡散層303と接触する部分及び空気側セパレータ32がガス拡散層304と接触する部分のAu膜を厚くするように調節してもよい。これによっても、凸部領域に厚いめっき皮膜を形成し、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32の電極に接触する部分のめっき皮膜の磨耗や剥離の発生を抑制することができる。また、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32の電極に接触する部分の膜厚にかかわらず、ガス拡散層303及び304を、例えば、柔軟なカーボンクロスを用いて燃料電池を構成してもよい。この場合でも、スタッキング荷重や内部構成部材の振動を原因とするめっき皮膜とガス拡散層303,304との摩擦を軽減できるので、腐食の発生を効果的に抑制することができる。
【0099】
○ 上記実施形態においては、燃料側セパレータ31のガス供給路の溝部の延在方向と、空気側セパレータ32のガス供給路の溝部の延在方向とが直交する十字流型を用いて、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32を配置した燃料電池を製造した。燃料電池の構成は、これに限られるものではなく、他の構成(並行流型や向流型)の燃料電池を製造する場合に適用してもよい。この場合にも、第1、第2のガス供給路を利用しながら、それぞれ独立してめっき分散体を流すことにより、めっき皮膜を形成する。
【0100】
○ 上記実施形態では、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32は、例えば、ステンレス鋼(SUS鋼)等の金属材料から形成されている。例えば、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32の材質を、樹脂材料とカーボン等の導電性材料とを複合化した導電性樹脂材料に変更してもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32のガス流路は、プレス加工等により形成されている。ガス流路は、モールド加工、切削加工等の加工方法によって形成してもよい。上記実施形態によれば、いずれの方法でガス流路が形成された場合であっても、効率的に燃料電池を製造することができる。
【0102】
○ 上記実施形態においては、めっき槽70において電解めっきによりAu膜のめっき皮膜を形成した。これに代えて、めっき槽70内で無電解めっきを行なって、燃料側セパレータ31及び空気側セパレータ32のガス供給路を形成する表面にめっき皮膜を形成してもよい。この場合には、第1のセパレータと第2のセパレータとを、陽極板を用いずにスペーサを介して直接、積層させる。この場合、スペーサは両セパレータ間に流体を流すためのクリアランスを調整するために用い、流路を確保できるものであればよい。
【0103】
○ 上記実施形態においては、流体排出口(19e、19g)からめっき分散体を導出する。これに代えて、各流路板に設けられた分配路102から直接、外部にめっき分散体を排出しても良い。この場合には、流体排出口(19e、19g)近傍のシール材を除去しておき、この除去部からめっき分散体を排出する。これにより、流体抵抗を低減でき、めっき分散体を効率的に供給することができる。
【0104】
○ 上記実施形態においては、SUS材からなるセパレータにAuのめっき皮膜を形成した。これに代えて、ニッケル(Ni)等の下地ストライクめっきを行なってから、上述のAuめっきを行なってもよい。この場合には、めっき装置にNiめっき液を収容するNiめっき液タンク53を設ける。このNiめっき液タンク53を混合分散部60にNiめっき液供給管を介して接続する。そして、Auめっき液に代えてNiめっき液を用いて、上述のAuめっき処理時と同様に、めっき分散体を形成してめっき処理を行なう。その後で、Auめっきを行なう。Au膜は耐食性に優れているが高価である。従って、ピンホールのない良好なNi膜を下地として形成することにより、Au膜を薄くしても、耐食性に優れためっき皮膜を形成することができる。
【0105】
○ 上記実施形態においては、めっき皮膜として、貴金属のAu膜を形成した。これに限らず、めっき皮膜は、接触抵抗を低減できる材料、例えば、パラジウム(Pd)などの白金系金属などにより形成してもよい。
【0106】
○ 上記実施形態においては、フッ素系化合物を介して、CO2とめっき液とは短い時間だけ分散状態となるめっき分散体を用いた。CO2とめっき液を混合分散させるために用いる分散促進剤は、これに限られるものではない。例えば、従来の炭化水素系界面活性剤を分散促進剤として用いてもよいし、分散保持時間がもっと長い分散促進剤を用いてもよい。後者の場合には、めっき処理を行なうめっき槽70を流れるめっき分散体の速度を上記実施形態よりも遅くすることもできる。また、分散促進剤を省略してもよい。
【0107】
○ 上記実施形態においては、拡散流体として超臨界状態のCO2を用いた。これに限らず、亜臨界状態のCO2を用いてもよい。更に、CO2に限らず、超臨界状態又は亜臨界状態(臨界点近傍で液相状態)の他の流体(超臨界流体又は亜臨界流体)を用いてもよい。
【0108】
○ 上記実施形態においては、内部マニフォールド型を用いて説明したが、外部マニフォールド型を用いてもよい。この場合には、外部マニフォールドを用いてめっき分散体等を導入する。
【0109】
○ 上記実施形態においては、流体導入口(19a、19c)には、同じめっき液から形成しためっき分散体が導入され、そのめっき分散体は流体排出口(19e、19g)から導出されている。このとき、第1のガス供給路におけるめっき分散体の線速と、第2のガス供給路におけるめっき分散体の線速とを異なる線速に設定してもよい。このように設定した場合、各セパレータのめっき皮膜の厚さや皮膜の形態が異なるものを形成することができる。
【0110】
また、流体導入口19aには、第1のめっき分散体を導入し、流体導入口19cに第1のめっき分散体とは異なる第2のめっき分散体を導入するとともに、流体排出口(19e、19g)から各めっき分散体を導出してもよい。第1、第2のガス供給路を利用しながら、それぞれ独立してめっき分散体を流すため、燃料側と空気側で異なる金属種のめっき皮膜を形成することができる。またこの場合では、第1のセパレータのめっき皮膜と、第2のセパレータのめっき皮膜との厚さを異なる厚さに形成することができる。第1のめっき分散体と、第2のめっき分散体とが異なるとは、各めっき分散体の化学的性質や物理的性質が異なることをいう。すなわち、第1のめっき分散体と、第2のめっき分散体とは、組成又は分散状態が異なる。組成の異なる各めっき分散体は、例えばめっき液の組成を変更することに加え、分散促進剤の種類及び配合量、並びに拡散流体の種類及び配合量等を変更することにより構成することができる。分散状態の異なる各めっき分散体は、例えば混合分散部60における混合器及び分散部に備えられた攪拌機の構造又は攪拌機の形状、その攪拌機の回転数、混合分散部60におけるめっき分散体の滞留時間等を変更することにより構成することができる。このように異なるめっき分散体を用いるとともに複数の混合分散部60を設けることにより、各セパレータに異なるめっき皮膜を同時に形成することができる。また、一つの混合分散部60によって各セパレータにめっき皮膜を逐次に形成してもよい。各セパレータのめっき皮膜は、例えば、空気側セパレータ32の表面にはAu膜を形成し、燃料側セパレータ31の表面にはNi膜のみを形成してもよい。燃料側セパレータ31のガス供給路は、燃料が通過するために還元性雰囲気となるので、燃料側セパレータ31のガス供給路よりも腐食が生じ難い。また、流体導入口19a、流体導入口19cに異なる流量でめっき分散体を流すことで、Auめっきの膜厚、めっき形態等を燃料側と空気側で別々に制御できる。これにより、めっき皮膜の形成を効率よく行なうことができるとともに、貴金属であるAu膜の使用量を抑えることができる。
【実施例】
【0111】
次に、実施例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。
(実施例1)
図12に示されるステップS1−1からステップS1−3、ステップS2−1からステップS2−4、及びステップS3−1を順に行うことにより、ステンレス鋼製セパレータにAuめっき皮膜を形成した。Auめっき液として、市販の酸性金めっき浴((株)高純度化学研究所、Auメッキ液、K−24EA)を使用し、拡散流体として超臨界状態のCO2を使用した。また、酸性金めっき浴には、フッ素系化合物としてのF(CF(CF3)CF2O)3 CF(CF3)COOCH2CH2OCH3をCO2に対して0.5重量%加えた。超臨界CO2と酸性金めっき浴との配合比は、体積比率で7対3である。Auめっき処理の条件は、めっき槽の温度50℃、めっき槽の圧力10MPa、電流密度0.5A/dm2、及びめっき時間200秒である。形成されたAu膜の厚さは約1μmであった。
【0112】
(比較例1)
拡散流体を省略するとともにめっき槽内を加圧せずにめっき処理工程を行った。それ以外は、実施例1と同様にして、ステンレス鋼製セパレータにAuめっき皮膜を形成した。
【0113】
各例によってめっき処理が施されたステンレス鋼製セパレータについて、走査型電子顕微鏡で観察した。実施例1のステンレス鋼製セパレータでは、ピンホールが確認されなかった。これに対し、比較例1のステンレス鋼製セパレータでは、多数のピンホールが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】実施形態における燃料電池のセルの構成を示す概略斜視図。
【図2】燃料電池に用いる流路板の説明図。
【図3】燃料電池に用いる流路板の組み合わせ方の説明図。
【図4】燃料電池に用いるセパレータの説明図。
【図5】燃料電池におけるガス又は熱流体の流し方の説明図。
【図6】実施形態におけるめっき分散体の流し方の説明図。
【図7】実施形態における陽極板とセパレータとの組み合わせ方の説明図。
【図8】実施形態における陽極板とセパレータとの配置の説明図。
【図9】実施形態におけるめっきユニットの製造過程の説明図。
【図10】実施形態におけるめっきユニットの側面図。
【図11】実施形態におけるめっき装置の概略配管図。
【図12】実施形態におけるセル製造工程の手順を説明する流れ図。
【図13】燃料電池の構成を示す概略構成図。
【図14】従来技術における燃料電池のセルの構成を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0115】
15a,15b,15c,15d,20…ユニット、16…陽極板、31…第2のセパレータとしての燃料側セパレータ、32…第1のセパレータとしての空気側セパレータ、70…めっき槽、300…電解質層、301…第1の電極を構成する燃料極触媒層、302…第2の電極を構成する空気極触媒層、303…第2の電極を構成するガス拡散層、304…第1の電極を構成するガス拡散層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給路を設けた第1のセパレータと、第1の電極、電解質層、第2の電極と、前記第2の電極に接続させたガス供給路を設けた第2のセパレータとを備えた燃料電池に用いるセパレータであって、
前記第1のセパレータを前記第1の電極に接触させるために、前記第1のセパレータのガス供給路の表面に、めっき液と、めっき液の拡散力を高める拡散流体とを用いて形成しためっき皮膜を設けたことを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
前記ガス供給路は、前記第1の電極に接する凸部と、ガスを供給する溝部とを有し、前記凸部に形成されためっき皮膜の膜厚を、前記溝部の膜厚より厚くしたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
前記第2のセパレータを前記第2の電極に接触させるために、前記第2のセパレータのガス供給路の表面に、めっき液と、めっき液の拡散力を高める拡散流体とを用いて形成しためっき皮膜を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
前記ガス供給路は、前記第2の電極に接する凸部と、ガスを供給する溝部とを有し、前記凸部に形成されためっき皮膜の膜厚を、前記溝部の膜厚より厚くしたことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項5】
前記めっき皮膜の形成において、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤を更に用いることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項6】
めっき液と、めっき液の拡散力を高める拡散流体とを用いてめっき皮膜が形成されたガス供給路を設けた第1のセパレータと、
前記めっき皮膜に接触させた第1の電極、電解質層、第2の電極と、
前記第2の電極に接続させたガス供給路を設けた第2のセパレータと
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項7】
前記第1のセパレータのガス供給路には空気を供給する空気取込口を備え、前記空気取込口にはフィルタを備えたことを特徴とする請求項6に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記めっき皮膜の形成において、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤を更に用いることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の燃料電池。
【請求項9】
第1のガス供給路を設けた第1のセパレータと、第2のガス供給路を設けた第2のセパレータとを備えた燃料電池に用いる燃料電池用セパレータの製造方法であって、
前記第1のガス供給路と前記第2のガス供給路とを対向させて配置した状態の前記各セパレータ間に、当該各セパレータ間のクリアランスを調整するスペーサを配置することにより、前記各セパレータを積層し、
前記第1又は第2のガス供給路に、めっき液とこのめっき液の拡散力を高める拡散流体とを含むめっき分散体を連続的に供給することにより、前記第1又は第2のセパレータにめっき皮膜を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項10】
前記スペーサを介して、前記第1のセパレータと第2のセパレータとの間に陽極板を設け、前記第1又は第2のセパレータを陰極板として用いて、前記第1又は第2のセパレータと前記陽極板との間に通電した電解めっきによりめっき皮膜を形成することを特徴とする請求項9に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項11】
前記第1のガス供給路に第1のめっき分散体を導入し、
前記第2のガス供給路に、前記第1のめっき分散体を導入するとともにめっきの条件を変更すること、又は前記第1のめっき分散体と異なる第2のめっき分散体を導入することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項12】
前記めっき分散体には、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤が更に含まれることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項13】
第1のガス供給路を設けた第1のセパレータと、第2のガス供給路を設けた第2のセパレータとを備えた燃料電池に用いる燃料電池用セパレータのめっき装置であって、
前記第1のガス供給路と前記第2のガス供給路とを対向させて配置した状態の前記各セパレータ間に、当該各セパレータ間のクリアランスを調整するスペーサを配置することにより、前記各セパレータを積層しためっきユニットと、
前記第1又は第2のガス供給路に、めっき液とこのめっき液の拡散力を高める拡散流体とを含むめっき分散体を連続的に供給するめっき分散体供給手段とを備え、前記第1又は第2のセパレータにめっき皮膜を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータのめっき装置。
【請求項14】
前記スペーサを介して、前記第1のセパレータと第2のセパレータとの間に陽極板を設け、前記第1又は第2のセパレータを陰極とする通電手段を備えたことを特徴とする請求項13に記載の燃料電池用セパレータのめっき装置。
【請求項15】
前記めっき分散体供給手段は、
前記第1のガス供給路に第1のめっき分散体を導入する第1導入手段と、
前記第1のめっき分散体とは異なる第2のめっき分散体を前記第2のガス供給路に導入する第2導入手段とから構成されていること、又は、
前記めっき分散体供給手段は、
前記第1及び第2のガス供給路に第1のめっき分散体を導入する導入手段を有し、第1のガス供給路におけるめっき条件と、第2のガス供給路におけるめっき条件とを変えることによって、第1のセパレータと第2のセパレータとに異なるめっき皮膜を形成することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の燃料電池用セパレータのめっき装置。
【請求項16】
前記めっき分散体には、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤が更に含まれることを特徴とする請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータのめっき装置。
【請求項1】
ガス供給路を設けた第1のセパレータと、第1の電極、電解質層、第2の電極と、前記第2の電極に接続させたガス供給路を設けた第2のセパレータとを備えた燃料電池に用いるセパレータであって、
前記第1のセパレータを前記第1の電極に接触させるために、前記第1のセパレータのガス供給路の表面に、めっき液と、めっき液の拡散力を高める拡散流体とを用いて形成しためっき皮膜を設けたことを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
前記ガス供給路は、前記第1の電極に接する凸部と、ガスを供給する溝部とを有し、前記凸部に形成されためっき皮膜の膜厚を、前記溝部の膜厚より厚くしたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
前記第2のセパレータを前記第2の電極に接触させるために、前記第2のセパレータのガス供給路の表面に、めっき液と、めっき液の拡散力を高める拡散流体とを用いて形成しためっき皮膜を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
前記ガス供給路は、前記第2の電極に接する凸部と、ガスを供給する溝部とを有し、前記凸部に形成されためっき皮膜の膜厚を、前記溝部の膜厚より厚くしたことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項5】
前記めっき皮膜の形成において、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤を更に用いることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項6】
めっき液と、めっき液の拡散力を高める拡散流体とを用いてめっき皮膜が形成されたガス供給路を設けた第1のセパレータと、
前記めっき皮膜に接触させた第1の電極、電解質層、第2の電極と、
前記第2の電極に接続させたガス供給路を設けた第2のセパレータと
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項7】
前記第1のセパレータのガス供給路には空気を供給する空気取込口を備え、前記空気取込口にはフィルタを備えたことを特徴とする請求項6に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記めっき皮膜の形成において、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤を更に用いることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の燃料電池。
【請求項9】
第1のガス供給路を設けた第1のセパレータと、第2のガス供給路を設けた第2のセパレータとを備えた燃料電池に用いる燃料電池用セパレータの製造方法であって、
前記第1のガス供給路と前記第2のガス供給路とを対向させて配置した状態の前記各セパレータ間に、当該各セパレータ間のクリアランスを調整するスペーサを配置することにより、前記各セパレータを積層し、
前記第1又は第2のガス供給路に、めっき液とこのめっき液の拡散力を高める拡散流体とを含むめっき分散体を連続的に供給することにより、前記第1又は第2のセパレータにめっき皮膜を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項10】
前記スペーサを介して、前記第1のセパレータと第2のセパレータとの間に陽極板を設け、前記第1又は第2のセパレータを陰極板として用いて、前記第1又は第2のセパレータと前記陽極板との間に通電した電解めっきによりめっき皮膜を形成することを特徴とする請求項9に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項11】
前記第1のガス供給路に第1のめっき分散体を導入し、
前記第2のガス供給路に、前記第1のめっき分散体を導入するとともにめっきの条件を変更すること、又は前記第1のめっき分散体と異なる第2のめっき分散体を導入することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項12】
前記めっき分散体には、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤が更に含まれることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項13】
第1のガス供給路を設けた第1のセパレータと、第2のガス供給路を設けた第2のセパレータとを備えた燃料電池に用いる燃料電池用セパレータのめっき装置であって、
前記第1のガス供給路と前記第2のガス供給路とを対向させて配置した状態の前記各セパレータ間に、当該各セパレータ間のクリアランスを調整するスペーサを配置することにより、前記各セパレータを積層しためっきユニットと、
前記第1又は第2のガス供給路に、めっき液とこのめっき液の拡散力を高める拡散流体とを含むめっき分散体を連続的に供給するめっき分散体供給手段とを備え、前記第1又は第2のセパレータにめっき皮膜を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータのめっき装置。
【請求項14】
前記スペーサを介して、前記第1のセパレータと第2のセパレータとの間に陽極板を設け、前記第1又は第2のセパレータを陰極とする通電手段を備えたことを特徴とする請求項13に記載の燃料電池用セパレータのめっき装置。
【請求項15】
前記めっき分散体供給手段は、
前記第1のガス供給路に第1のめっき分散体を導入する第1導入手段と、
前記第1のめっき分散体とは異なる第2のめっき分散体を前記第2のガス供給路に導入する第2導入手段とから構成されていること、又は、
前記めっき分散体供給手段は、
前記第1及び第2のガス供給路に第1のめっき分散体を導入する導入手段を有し、第1のガス供給路におけるめっき条件と、第2のガス供給路におけるめっき条件とを変えることによって、第1のセパレータと第2のセパレータとに異なるめっき皮膜を形成することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の燃料電池用セパレータのめっき装置。
【請求項16】
前記めっき分散体には、フッ素系化合物からなり、めっき液の分散を促進する分散促進剤が更に含まれることを特徴とする請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータのめっき装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−18998(P2007−18998A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45960(P2006−45960)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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