説明

燃料電池用燃料容器

液体燃料を収容する液体燃料室及び該液体燃料を吐出する手段を収容する吐出手段収容室を備えた容器本体と、 前記容器本体に設けられ、前記液体燃料を吐出させ又は遮断するバルブと、 該容器本体の内部で摺動自在に設けられた隔壁部材とを備え、上記隔壁部材は、上記容器本体の内部を前記液体燃料室と前記吐出手段収容室とに隔て、前記液体燃料室と吐出手段収容室は、上記隔壁部材を介して連通しており、前記容器本体と前記隔壁部材との摺動面の少なくとも一方は、低摩擦係数材を含むことを特徴とする燃料電池用燃料容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接メタノール型燃料電池(以下、DMFC(Direct Methanol Fuel Cell)という)などの燃料電池を内蔵する機器に装着され、メタノール水溶液などの液体燃料を燃料電池又は燃料電池の燃料容器に液体燃料を供給する燃料電池用燃料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を収容する容器としては、例えば、エアゾール容器、化粧品容器等が知られており、その容器は、ガラス、金属、プラスチック等の材料から形成されている。これら容器の内部には、前記液体の他に圧縮ガス(いわゆるプロペラントガス)が封入されている。そして、容器のノズルを開作動したときに、前記液体と圧縮ガスが混合し、噴霧状となって噴出する。
【0003】
これに対して、液体のみを噴出させたい場合には、ピストン等を備えた二重構造の容器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ところで、近年、ノートパソコン、PDA(Personal Data Assistant)等の小型の携帯端末の小型電源として燃料電池が検討されつつある。そして、この燃料電池に燃料を供給する手段として、燃料容器(燃料カートリッジ)が提案されている。この燃料容器に充填される燃料としては、例えば燃料電池がDMFCである場合、メタノールと純水またはエタノールと純水の混合された液体燃料が検討されている。
【0004】
また、ノートパソコン等の小型機器は、その大きさの制約から、燃料供給用ポンプ、調圧機構、燃料残量検知機構などを搭載しないことが望まれており、これに加え、利用者側の利便性向上のため、安価、小型軽量な燃料容器の開発が期待されている。
【0005】
さらに、液体燃料が充填された燃料容器によって、液体燃料を噴出供給するには、ピストン状の隔壁部材が、確実に作動する必要がある。特に、携帯端末が燃料供給用ポンプ及び調圧機構を備えず、吐出圧力を最大0.3MPaG(ゲージ圧)以下のように低く設定する場合、低い吐出圧力であっても、隔壁部材が確実に移動するようにしなければならない。
【0006】
そこで、一般には、ピストン状の隔壁部材が確実に移動するように、隔壁部材の周面にシリコーンオイル等の潤滑油を塗布し、隔壁部材の摺動性を高めている。
【0007】
【特許文献1】特公平5−20148号公報(第2頁右欄第1行目〜第3頁左欄第39行目、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記シリコーンオイル等の潤滑油を使用すると、この潤滑油が液体燃料に溶出してしまうという問題があった。そして、このように不純物である潤滑油が液体燃料に混入してしまうと、燃料電池の発電機能が低下してしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、液体燃料に不純物を混入させずに、隔壁部材の確実な摺動性を確保し、液体燃料を供給可能とする燃料電池用燃料容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、液体燃料を収容する液体燃料室及び該液体燃料を吐出する手段を収容する吐出手段収容室を備えた容器本体と、前記容器本体に設けられ、前記液体燃料を吐出させ又は遮断するバルブと、該容器本体の内部で摺動自在に設けられた隔壁部材とを備え、上記隔壁部材は、上記容器本体の内部を前記液体燃料室と前記吐出手段収容室とに隔て、前記液体燃料室と吐出手段収容室は、上記隔壁部材を介して連通しており、前記容器本体と前記隔壁部材との摺動面の少なくとも一方は、低摩擦係数材を含むことを特徴とする燃料電池用燃料容器が提供される。
【0011】
上記容器本体は、上記バルブを燃料電池に接続するための接続部を有することが好ましい。また、上記容器本体は、上記バルブを燃料電池の液体燃料容器に接続するための接続部を有することが好ましい。更に、上記燃料電池を内蔵する機器に装着されるように構成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記低摩擦係数材は、前記液体燃料に対し非溶出性の材料であることが好ましい。前記非溶出性の材料が上記摺動面にコーティングされていることができる。前記非溶出性の材料は、ポリテトラフルオロエチレン又はダイヤモンド状カーボンが好ましい。
【0013】
前記吐出手段収容室に収容された圧縮ガスによって、前記隔壁部材に背圧を与えることができる。また、前記液体燃料室と前記圧縮ガス室は、隣接して配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液体燃料に不純物を混入させずに、隔壁部材の確実な摺動性を確保し、液体燃料を供給可能とする燃料電池用燃料容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る燃料電池用燃料容器の取り付け状況を説明する図である。
【図2】(a)は、本実施形態に係る燃料電池用燃料容器の平面図であり、(b)は同中央断面正面図である。
【図3】図2に示す燃料電池用燃料容器のX−X断面図である。
【図4】(a)、(b)共に、図2に示すバルブを拡大して示す図であり、(a)はバルブが閉鎖した状態を示し、(b)はバルブが開放した状態を示す。
【図5】本実施形態に係る燃料電池用燃料容器の変形例の断面図である。
【図6】本実施形態に係る燃料電池用燃料容器の変形例の中央断面正面図である。
【符号の説明】
【0016】
1A、1B、1C 燃料容器、10 容器本体、11 容器本体部材、 11a 内部壁、 11b 接続口、 20、20A 隔壁部材、21 シール部材
30 バルブ、FR1、FR2、FR3 液体燃料室、GR1、GR2、GR3 圧縮ガス室(押出手段収容室)、 P 携帯端末(機器)
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の燃料容器は燃料電池を内蔵する機器に装着しても良いし、燃料電池に内蔵された燃料容器に液体燃料を供給する燃料容器として用いられる。液体燃料及び当該液体燃料を押し出す又は吐出手段を収容し、前記燃料電池に接続するための接続部を有する容器本体を有する。また、該容器本体の内部で摺動自在であると共に、該内部を前記液体燃料が収容される液体燃料室と前記押出手段が収容される押出手段収容室とに隔てる隔壁部材を備える。また、前記接続部に設けられ、前記液体燃料の流通を開放または遮断するバルブを備える。前記容器本体と前記隔壁部材との摺動面の少なくとも一方は、前記隔壁部材の摺動により当該隔壁部材と前記容器本体との間で生じる摩擦力を低下させる、低摩擦係数材を含有しあるいは低摩擦係数材が摺動面の表面に塗布される。
【0018】
燃料電池を内蔵する機器に装着され、液体燃料及びこの液体燃料を押し出す圧縮ガス(押出手段)を収容し、燃料電池に接続するための接続部11bを有する容器本体10と、容器本体10の内部を摺動自在であると共に、この内部を液体燃料が収容される液体燃料室FR1と圧縮ガスが収容される圧縮ガス室GR1(押出手段収容室)とに隔てる隔壁部材20と、接続口11bに設けられ、液体燃料の流通を開放または遮断するバルブ30を備え、液体燃料を燃料電池に供給する燃料電池用燃料容器1Aであって、容器本体10と隔壁部材20とが摺接する面の少なくとも一方は、隔壁部材20の摺動により隔壁部材20と容器本体10との間で生じる摩擦力を低下させる、低摩擦面である。
【0019】
このような燃料電池用燃料容器によれば、容器本体と隔壁部材とが摺接する面の少なくとも一方が、低摩擦面であることによって、隔壁部材の摺動により、この隔壁部材と容器本体との間で生じる摩擦力は低下する。すなわち、潤滑油を使用せずに、隔壁部材の確実な摺動性を確保することができる。また、潤滑油を使用しないため、液体燃料に燃料電池の発電機能を低下させる不純物である潤滑油が混入することもない。
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
参照する図面において、図1は、本実施形態に係る燃料電池用燃料容器の取り付け状況を説明する図である。図2(a)は、本実施形態に係る燃料電池用燃料容器の平面図であり、図2(b)は同中央断面正面図である。図3は、図2に示す燃料電池用燃料容器のX−X断面図である。図4(a)及び図4(b)は、図2(b)に示すバルブを拡大して示す図であり、図4(a)はバルブが閉鎖した状態を示し、図4(b)はバルブが開放した状態を示す。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る燃料電池用燃料容器1A(以下、燃料容器と略称する)は、液体燃料を液体燃料室FR1(図2(b)参照)に収容し、ノートパソコン、携帯電話、音楽・データの記録再生装置、電子手帳、電子辞書、時計等の携帯端末P(機器)に装着されることで、携帯端末Pに内蔵されたDMFCに液体燃料を供給する燃料容器である。
【0023】
また、本実施形態に係る燃料容器1Aは、断面が略楕円状を呈する柱体である。ここで、説明の都合上、図1に示すように、燃料容器1Aについて、幅方向、厚さ方向、高さ方向を設定する。
【0024】
図2(b)に示すように、燃料容器1Aは、容器本体10と、隔壁部材20と、バルブ30とを備えて構成されている。
(容器本体)
容器本体10は、外形が略楕円状(図1、図2(a)参照)を呈する柱体であり、容器本体部材11と底蓋部材12とから構成されている。容器本体10は、その内部に液体燃料、圧縮ガスが充填される空洞を有している。また、容器本体部材11は、その内部に内部壁11aを有している。
【0025】
内部壁11aは、前記空洞を、液体燃料が充填(収容)される液体燃料室FR1と、隔壁部材20を介し液体燃料を押し出す押出手段である圧縮ガスが封入(収容)される圧縮ガス室GR1(押出手段収容室)とに、完全に遮断することなく不完全に仕切っている。液体燃料室FR1と圧縮ガス室GR1とは、燃料容器1Aの幅方向に並んで配置していると共に、液体燃料室FR1と圧縮ガス室GR1とは、底側(一端部側)の連通路Cを介し連通している。言い換えれば、液体燃料室FR1と圧縮ガス室GR1とは、幅方向中心から互いに逆方向にオフセットして(ずれて)配置している。
【0026】
このように液体燃料室FR1と圧縮ガス室GR1とは、略分離した状態で配置しているため、落下等の衝撃に対し、液体燃料は漏れにくくなっている。また、液体燃料室FR1と圧縮ガス室GR1とを幅方向に並べて配置したため、燃料容器1Aは高さ方向(図1参照)に短くなり、ノートパソコン、PDA等の携帯端末Pに要求される高いスペース効率に対応可能である。
【0027】
また、液体燃料室FR1は、図3に示すように、断面円形であり、後記隔壁部材20の断面も円形である。したがって、隔壁部材20により、液体燃料室FR1に充填された液体燃料を、安定して吐出しやすくなっている。
【0028】
なお、詳細には隔壁部材20の位置によって、液体燃料室FR1と圧縮ガス室GR1との比率は変動し、液体燃料が消費されて隔壁部材20が上昇すると、圧縮ガス室GR1の一部が液体燃料室FR1の下方に配置することになる。
【0029】
液体燃料室FR1に充填される液体燃料は、本実施形態では、燃料容器1AはDMFCを内蔵する携帯端末Pに装着されるため、所定濃度のメタノールと純水、またはエタノールと純水の混合液である。ただし、液体燃料の種類はこれに限定されず、燃料電池の種類に応じて適宜変更自由である。
【0030】
圧縮ガス室GR1に封入されるガスとしては、窒素、炭酸ガス、脱酸素空気などの酸素を含まないガスを用いることが好ましい。このように酸素を含まないガスを使用すれば、燃料電池での反応に悪影響を及ぼす酸素が液体燃料へ混入すること、及び液体燃料が酸化することを防止できる。
【0031】
また、圧縮ガスの圧力は、液体燃料室FR1に充填された液体燃料が少なくなっても押し出し又は吐出しきれれば特に制限はない。さらに、例えば携帯端末Pが、燃料供給用ポンプ、調圧機構等を備えていない場合には、ガスの最大圧力が0.3MPaG以下となるよう設定することが好ましい。このように0.3MPaG以下に設定する場合は、液体燃料の充填量が最大の状態(液体燃料室FR1の容積が最大であって、圧縮ガス室GR1の容積が最小の場合)において、圧縮ガスの圧力が0.3MPaGとなるように設定する。
【0032】
さらにまた、圧縮ガスの圧力変動を極力低減するために、圧縮ガス室GR1の容積は、可及的に大きくすることが好ましい。
【0033】
また、容器本体部材11には、外部から液体燃料室FR1に連通し、燃料電池に接続するための接続口11bが形成されている。
【0034】
さらに、容器本体部材11は、透明材料からなる窓部11cを部分的に有しており(図1参照)、燃料容器1Aが携帯端末Pに装着されたままであっても、隔壁部材20の位置を視認し、液体燃料の残量を把握可能となっている。さらにまた、窓部11cには、事前試験等により求められた目盛11dが付されており、液体燃料の残量をより正確に視認可能となっている。
(隔壁部材)
隔壁部材20は、容器本体10内の高さ方向(図1参照)に摺動自在に収容されると共に、容器本体10の内部の空洞を、液体燃料室FR1と圧縮ガス室GR1とに隔てている。
【0035】
隔壁部材20は、シール部材21と、芯部材22とから構成されている。シール部材21は、芯部材22を覆うようにして、芯部材22と一体化している。これにより隔壁部材20は、所定の姿勢を保持しながら、容器本体11の液体燃料室FR1内部を摺動可能となっている。
【0036】
シール部材21は、その上部周面と下部周面において、容器本体10の内面と気密に接触しながら、摺動自在となっている。
【0037】
シール部材21は、ゴム等の弾性を有する材料から形成されたシール部材本体と、この外表面側に薄膜状で形成された低摩擦コーティング層(図示しない)とから構成されている。すなわち、隔壁部材20は、その外表面(容器本体と隔壁部材とが摺接する面(容器本体側の摺接面及び隔壁部材側の摺接面)の少なくとも一方)に、低摩擦面を有している。
【0038】
この低摩擦コーティング層によって、隔壁部材20と容器本体10との間で生じる摩擦力は低下するため、隔壁部材20が、摩擦による移動抵抗をほとんど受けることなく、容器本体10内部を摺動可能となっている。すなわち、圧縮ガス室GR1に封入されたガスの圧力が低くても、隔壁部材20が容器本体10内部を作動(摺動)し、液体燃料を吐出することが可能となっている。
【0039】
また、低摩擦コーティング層は、液体燃料に対して非溶出性の材料で形成されているため、低摩擦コーティング剤が溶出し、液体燃料に不純物が混入することもない。
【0040】
このような低摩擦コーティング層としては、例えば、PTFE(Poly−Tetra Fluoro Ethylene)よって形成されたPTFEコーティング層、または、DLC(Diamond Like Carbon)コーティング層などが挙げられる。
【0041】
このうちPTFEコーティング層を形成した場合は、シール部材21と容器本体10との間で生ずる摩擦係数及び摩擦力が特に低くなるため、隔壁部材20の移動抵抗が低減する。
【0042】
また、DLCコーティング層は、例えば、高周波プラズマCVDによりメタンガスを原料にして、前記シール部材本体の表面に成膜されることによって形成され、この成膜工程はDLCコーティングと言われる。DLCコーティングは、厚みを高精度で制御可能であると共に、均一な処理が可能であるため、シール部材21による気密性を保持しつつ、摩擦係数を低減させることができる。
(バルブ)
バルブ30は、前記接続口11bに取り付けられており、液体燃料の流通を開放または遮断する機器である。バルブ30は、図4(a)、図4(b)に示すように、円筒状のス
ペーサ31と、圧縮コイルバネ32と、リング状のガスケット33と、中空部34a及び連通孔34bを有する略有底円筒状のバルブステム34と、止着部材35とから構成されている。
【0043】
また、バルブ30を構成するこれら各部材は、後記するようにバルブ30が開放状態となったとき、液体燃料と直接接触するため、PTEF等の非金属材料で形成されるか、または、PTFE等でコーティングされることが好ましい。
【0044】
圧縮コイルバネ32は、接続口11bの底周壁部に配置するスペーサ31でガイドされ、接続口11bの底部に配置している。ガスケット33は、スペーサ31の上に配置している。バルブステム34は、ガスケット33に挿通されると共に、圧縮コイルバネ32の上に配置している。そして、止着部材35は周面に刻まれたネジ部(図示しない)により
、容器本体部材11に刻まれたネジ部(図示しない)と螺着していると共に、バルブステム34を、圧縮コイルバネ32に抗して、接続口11bの底側に押し付けている。
【0045】
ここで、燃料容器1Aが、携帯端末Pに装着されていない場合は、図4(a)に示すように、バルブステム34の連通孔34bは、ガスケット33によって遮断されており、バルブ30は閉鎖状態となる。
【0046】
一方、燃料容器1Aが、携帯端末Pに装着された場合は、図4(b)に示すように、バルブステム34が押し下げられることによってガスケット33が変形し、連通孔34bが開放する(開放状態)。そして、圧縮ガス室GR1に封入されたガスの圧力に起因して、
液体燃料室FR1に充填された液体燃料は、連通孔34b及び中空部34aを経由して、燃料容器1Aの外部に噴出し、携帯端末Pに内蔵された燃料電池(図示しない)に供給可能となっている。
【0047】
したがって、このような燃料容器1Aによれば、隔壁部材20は、低摩擦面によって容器本体10と摺接しているため、圧縮ガス室GR1に封入される圧縮ガスの圧力が低くても摺動し、液体燃料を押し出すことができる。
【0048】
また、燃料容器1Aは、シリコーンオイル等の潤滑油を使用していないため、液体燃料に不純物である潤滑油が混入するおそれは全くなく、これにより燃料電池の発電機能が低下することも全くない。
【0049】
さらに、燃料容器1Aは、携帯端末Pに装着され、携帯端末Pに内蔵される燃料電池に液体燃料を供給するものであるが、圧縮ガスの圧力を高め、液体燃料を再注入可能な燃料容器としても使用可能である。
【0050】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は前記一実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば以下のように変更することができる。
【0051】
前記した実施形態では、燃料容器1Aは断面が円形の液体燃料室FR1を有するとしたが(図3参照)、その他に例えば図5に示すように、断面が長円形(略楕円形)である液体燃料室FR2を有する燃料容器1Bとしてもよい。このような燃料容器1Bによれば、燃料容器1Aと比較して、厚さ方向にさらに薄くすることができ、薄型のノートパソコン等の携帯端末P(図1参照)に容易に装着可能となる。
【0052】
なお、このような液体燃料室FR2とした場合は、圧縮ガス室GR1は対応して薄型の圧縮ガス室GR2とし、隔壁部材20も対応して変更させる。また、このような液体燃料室FR2とした場合には、隔壁部材が周方向に回転しないので、圧縮ガスによって、液体燃料をさらに安定して押し出すことができる。
【0053】
前記した実施形態に係る燃料容器1Aは、液体燃料室FR1と圧縮ガス室GR1とを、幅方向に並列的に並んで配置したが、液体燃料室と圧縮ガス室の配置はこれに限定されず、例えば図6に示すように、液体燃料室FR3と圧縮ガス室GR3とが、高さ方向に直列的(直線的)に配置した細長の燃料容器1Cであってもよい。
【0054】
前記した実施形態では、シール部材21の表面に低摩擦コーティング層が形成されたとしたが、本発明ではこれに限定されず、低摩擦コーティング層は、容器本体部材11に形成されていてもよいし、シール部材21と容器本体部材11の両方に形成されていてもよい。
【0055】
前記した実施形態では、シール部材21の表面に低摩擦コーティング層が形成されたことによって、隔壁部材20は低摩擦面を有するとしたが、この他に例えば図6に示すように、PTFEで形成された隔壁部材20Aを備えたことにより、隔壁部材20Aが低摩擦面を有するとしてもよい。
【0056】
前記した実施形態では、液体燃料を押し出す押出手段は圧縮ガスであるとしたが、押出手段はこれに限定されず、その他に例えば、圧縮コイルバネ等であってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を収容する液体燃料室及び該液体燃料を吐出する手段を収容する吐出手段収容室を備えた容器本体と、
前記容器本体に設けられ、前記液体燃料を吐出させ又は遮断するバルブと、
該容器本体の内部で摺動自在に設けられた隔壁部材とを備え、
上記隔壁部材は、上記容器本体の内部を前記液体燃料室と前記吐出手段収容室とに隔て、前記液体燃料室と吐出手段収容室は、上記隔壁部材を介して連通しており、
前記容器本体と前記隔壁部材との摺動面の少なくとも一方は、前記液体燃料に対し非溶出性の低摩擦係数の材料を含むことを特徴とする燃料電池用燃料容器。
【請求項2】
上記容器本体は、上記バルブを燃料電池に接続するための接続部を有することを特徴とする請求項1記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項3】
上記容器本体は、上記バルブを燃料電池の液体燃料容器に接続するための接続部を有することを特徴とする請求項1記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項4】
上記燃料電池を内蔵する機器に装着されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項5】
前記バルブは、バネによってノズル出口方向に付勢されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項6】
前記非溶出性の材料が上記摺動面にコーティングされていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項7】
前記非溶出性の材料は、ポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項8】
前記非溶出性の材料は、ダイヤモンド状カーボンであることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項9】
前記吐出手段収容室に収容された圧縮ガスによって、前記隔壁部材に背圧を与えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項10】
前記液体燃料室と前記圧縮ガス室は、隣接して配置されていることを特徴とする請求項9に記載の燃料電池用燃料容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【国際公開番号】WO2005/069419
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【発行日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517095(P2005−517095)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000488
【国際出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000151265)株式会社東海 (45)
【Fターム(参考)】