説明

燃料電池発電システムおよびその冷却方法

【課題】冷却水系流路と水処理水系流路との両方の流路に対して空気溜りの発生を防止する。
【解決手段】第1の冷却水タンク41は、燃料電池スタック1のスタック内冷却水流路12からの冷却水を溜め、第2の冷却水タンク42は、イオン交換樹脂5により不純物イオンが取り除かれた冷却水を溜める。冷却水系流路20は、第2の冷却水タンク42から冷却水ポンプ2およびスタック内冷却水流路12を介して第1の冷却水タンク41に通じ、水処理水系流路60は、第1の冷却水タンク41から水処理水ポンプ6およびイオン交換樹脂5を介して第2の冷却水タンク42に通じる。制御部7は、冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の出力を第1の出力値に維持する第1処理と、冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の出力を第1の出力値とは異なる第2の出力値に変更する第2処理とを実行するのを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池発電システムおよびその冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池発電システムにおいて、燃料電池スタックは、カソード極に供給される酸化剤ガスとアノード極に供給される改質燃料ガスとが電気化学的に反応することにより、酸素と水素から水を生成する過程で電気エネルギーを発生させる。この電気化学反応は発熱反応であるため、燃料電池スタックの温度が上昇する。このため、燃料電池発電システムでは、燃料電池スタックに冷却水を循環させて、燃料電池スタックを冷却している。
【0003】
その燃料電池発電システムは、燃料電池スタックと、冷却水ポンプと、第1および第2の冷却水タンクと、水処理水ポンプと、冷却水系流路と、水処理水系流路と、を具備している。
【0004】
冷却水系流路は、第2の冷却水タンクから冷却水ポンプおよび燃料電池スタックの冷却水流路であるスタック内冷却水流路を介して第1の冷却水タンクに通じる流路である。水処理水系流路は、第1の冷却水タンクから水処理水ポンプおよびイオン交換樹脂を介して第2の冷却水タンクに通じる流路である。
【0005】
第1の冷却水タンクには、スタック内冷却水流路から冷却水系流路を介して冷却水が流れ、第1の冷却水タンクは、その冷却水を溜める。イオン交換樹脂には、第1の冷却水タンクから水処理水系流路を介して冷却水が流れ、イオン交換樹脂は、その冷却水から不純物イオンを取り除く。第2の冷却水タンクには、イオン交換樹脂から水処理水系流路を介して不純物イオンが取り除かれた冷却水が流れ、第2の冷却水タンクは、その冷却水を溜める。
【0006】
冷却水ポンプは、第2の冷却水タンクからスタック内冷却水流路を通して第1の冷却水タンクに冷却水を循環させ、水処理水ポンプは、第1の冷却水タンク内の冷却水をイオン交換樹脂から第2の冷却水タンクに循環させる。
【0007】
このような燃料電池発電システムにおいては、長期間にわたって運転する場合、次のような問題がある。それは、冷却水ポンプおよび水処理水ポンプからの気泡の発生や、冷却水系流路および水処理水系流路の配管の圧力損失の変化などにより、いわゆる「空気溜り」が発生することである。この空気溜りにより冷却能力が低下した場合、システムが故障したり停止したりする可能性がある。
【0008】
そこで、冷却水系流路内の空気溜りの発生を防止するために、冷却水系流路内の冷却水を常時脈動させたり、起動時、運転時および停止時に、冷却水系流路に対して圧力変動および流動変動を複数回与えたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−282764号公報
【特許文献2】特開2006−179334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
冷却水系流路内の空気溜りの発生を防止するためには、あるタイミングで冷却水系流路内の空気溜りの発生を防止できればよく、長期にわたる運転では常時脈動させる必要はない。
【0011】
また、冷却水系流路内の空気溜りの発生を防止するために、起動時、運転時および停止時に、冷却水系流路に対して圧力変動および流動変動を複数回与えているが、冷却水系流路と水処理水系流路との両方の流路を用いたシステムではない。すなわち、冷却水系流路だけを考慮したシステムであって、水処理水系流路の空気溜りについては考慮されていない。具体的には、第1の冷却水タンクから水処理水ポンプおよびイオン交換樹脂を介して第2の冷却水タンクに冷却水が流れるときの気泡の発生や、水処理水系流路そのものの圧力損失の変化のことまでは考慮されていない。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、冷却水系流路と水処理水系流路との両方の流路に対して空気溜りの発生を防止または低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態の燃料電池発電システムは、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックのスタック内冷却水流路からの冷却水を溜める第1の冷却水タンクと、前記第1の冷却水タンク内の前記冷却水から不純物イオンを取り除くイオン交換樹脂と、前記不純物イオンが取り除かれた前記冷却水を溜める第2の冷却水タンクと、前記第2の冷却水タンクから前記スタック内冷却水流路を通して前記第1の冷却水タンクに前記冷却水を循環させる冷却水ポンプと、前記第1の冷却水タンク内の前記冷却水を前記イオン交換樹脂から前記第2の冷却水タンクに循環させる水処理水ポンプと、前記冷却水ポンプおよび前記水処理水ポンプの出力を第1の出力値に維持する第1処理と前記冷却水ポンプおよび前記水処理水ポンプの出力を前記第1の出力値とは異なる第2の出力値に変更する第2処理とを実行するのを制御する制御部と、を具備することを特徴とする。
【0014】
また、実施形態の燃料電池発電システムの冷却方法は、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックのスタック内冷却水流路からの冷却水を溜める第1の冷却水タンクと、前記第1の冷却水タンク内の前記冷却水から不純物イオンを取り除くイオン交換樹脂と、前記不純物イオンが取り除かれた前記冷却水を溜める第2の冷却水タンクと、冷却水ポンプと、水処理水ポンプと、を具備する燃料電池発電システムの冷却方法において、前記冷却水ポンプが、前記第2の冷却水タンクから前記スタック内冷却水流路を通して前記第1の冷却水タンクに前記冷却水を循環させるステップと、前記水処理水ポンプが、前記第1の冷却水タンク内の前記冷却水を前記イオン交換樹脂から前記第2の冷却水タンクに循環させるステップと、前記冷却水ポンプおよび前記水処理水ポンプの出力を第1の出力値に維持する第1処理と前記冷却水ポンプおよび前記水処理水ポンプの出力を前記第1の出力値とは異なる第2の出力値に変更する第2処理とを実行するのを制御するステップと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷却水系流路と水処理水系流路との両方の流路に対して空気溜りの発生を防止または低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係る燃料電池発電システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る燃料電池発電システムの中央制御部の動作を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態に係る燃料電池発電システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る燃料電池発電システムの制御部の動作を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施形態に係る燃料電池発電システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図6】第3の実施形態に係る燃料電池発電システムの構成を示すブロック図である。
【図7】第3の実施形態に係る燃料電池発電システムの中央制御部の動作を示すフローチャートである。
【図8】第4の実施形態に係る燃料電池発電システムの中央制御部の動作を示すフローチャートである。
【図9】図8の異常検出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る燃料電池発電システムの実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る燃料電池発電システムの構成を示すブロック図である。図2は、第1の実施形態に係る燃料電池発電システムの中央制御部7の動作を示すフローチャートである。図3は、第1の実施形態に係る燃料電池発電システムの動作を示すタイミングチャートである。
【0019】
図1に示されるように、第1の実施形態に係る燃料電池発電システムは、燃料電池スタック1と、冷却水ポンプ2と、燃料処理装置3と、複合冷却水タンク4と、水処理水ポンプ6と、中央制御部7と、冷却水ポンプ制御部8と、水処理水ポンプ制御部9と、冷却水系流路20と、水処理水系流路60と、を具備している。
【0020】
燃料電池スタック1は、カソード極11とスタック内冷却水流路12とアノード極13とを備えている。カソード極11には、酸素を含む酸化剤ガス(空気)が供給される。アノード極13には、水素を含む改質燃料ガスが供給される。燃料電池スタック1は、カソード極11に供給される酸化剤ガスとアノード極13に供給される改質燃料ガスとが電気化学的に反応することにより、酸素と水素から水を生成する過程で電気エネルギーを発生させる。
【0021】
複合冷却水タンク4には仕切りが設けられ、複合冷却水タンク4は2つの冷却タンクに分けられている。2つの冷却タンクをそれぞれ第1の冷却水タンク41および第2の冷却水タンク42と称する。
【0022】
冷却水系流路20は、第2の冷却水タンク42から冷却水ポンプ2およびスタック内冷却水流路12を介して第1の冷却水タンク41に通じる流路である。水処理水系流路60は、第1の冷却水タンク41から水処理水ポンプ6およびイオン交換樹脂5を介して第2の冷却水タンク42に通じる流路である。
【0023】
第1の冷却水タンク41には、スタック内冷却水流路12から冷却水系流路20を介して冷却水が流れ、第1の冷却水タンク41は、その冷却水を溜める。イオン交換樹脂5には、第1の冷却水タンク41から水処理水系流路60を介して冷却水が流れ、イオン交換樹脂5は、その冷却水から不純物イオンを取り除く。第2の冷却水タンク42には、イオン交換樹脂5から水処理水系流路60を介して不純物イオンが取り除かれた冷却水が流れ、第2の冷却水タンク42は、その冷却水を溜める。
【0024】
燃料処理装置3は、原燃料ガスと空気とを取り入れて、原燃料ガスと空気と燃料電池スタック1のアノード極13から循環されたガス(残燃料ガス)と第2の冷却水タンク42内の冷却水により、水素を含む改質燃料ガスを生成する。燃料処理装置3は、その改質燃料ガスを燃料電池スタック1のアノード極13に供給する。
【0025】
冷却水ポンプ2は、第2の冷却水タンク42からスタック内冷却水流路12を通して第1の冷却水タンク41に冷却水を循環させる。水処理水ポンプ6は、第1の冷却水タンク41内の冷却水をイオン交換樹脂5から第2の冷却水タンク42に循環させる。
【0026】
中央制御部7と冷却水ポンプ制御部8と水処理水ポンプ制御部9は、ハードウェアまたはソフトウェアにより構成されている。たとえば、それらがソフトウェアである場合、第1の実施形態に係る燃料電池発電システムは、さらに、コンピュータを具備し、そのコンピュータは、記憶部と、中央制御部7と冷却水ポンプ制御部8と水処理水ポンプ制御部9との機能を有するCPU(Central Processing Unit)とを備えている。記憶部にはコンピュータプログラムが格納され、CPUは、コンピュータプログラムを記憶部から読み出して、そのコンピュータプログラムを実行する。
【0027】
上述の中央制御部7と冷却水ポンプ制御部8と水処理水ポンプ制御部9の動作について図2を参照して説明する。
【0028】
中央制御部7は、システムが起動したとき(ステップS1)、後述する第1処理(ステップS2)と第2処理(ステップS3)とを行う。中央制御部7は、システムが運転停止しない場合(ステップS4−NO)、第1処理(ステップS2)と第2処理(ステップS3)とを交互に繰り返す。
【0029】
第1処理において、中央制御部7は、冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の出力を第1の出力値に設定するための第1制御信号71をそれぞれ冷却水ポンプ制御部8および水処理水ポンプ制御部9に出力する。このとき、冷却水ポンプ制御部8および水処理水ポンプ制御部9は、第1制御信号71に応じて、それぞれ冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の出力を第1の出力値に維持する。
【0030】
第2処理において、中央制御部7は、冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の出力を第2の出力値に設定するための第2制御信号72をそれぞれ冷却水ポンプ制御部8および水処理水ポンプ制御部9に出力する。冷却水ポンプ制御部8および水処理水ポンプ制御部9は、第2制御信号72に応じて、それぞれ冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の出力を第1の出力値とは異なる第2の出力値に変更する。
【0031】
冷却水系流路20および水処理水系流路60内の空気溜りの発生を防止または低減するために、第2の出力値は、第1の出力値よりも高い値である。または、第2の出力値は、第1の出力値に対して脈動した値である。この場合、正弦波変動でも方形波変動でもよい。本実施形態では、冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の特性や冷却水系流路20および水処理水系流路60の特性を考慮して、第1処理および第2処理に対する最適な値が決定され、その値が第1の出力値および第2の出力値として中央制御部7に予め設定されている。
【0032】
第2処理は、冷却水系流路20および水処理水系流路60内の空気溜りの発生を防止または低減するために設定されているため、長期にわたる運転では常時必要はない。そのため、図3に示されるように、第2処理の所要時間は、第1処理の所要時間よりもはるかに短い。
【0033】
また、第1制御信号71と第2制御信号72とが切り替えられるタイミングは、冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の特性や冷却水系流路20および水処理水系流路60の特性を考慮して決定され、中央制御部7に予め設定されている。この場合、図3に示されるように、第1制御信号71と第2制御信号72は定周期で切り替わる。すなわち、第1処理と第2処理は定周期で切り替わる。
【0034】
このように、本実施形態によれば、中央制御部7、冷却水ポンプ制御部8および水処理水ポンプ制御部9により、冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の出力を第1の出力値に維持する第1処理と、冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の出力を第1の出力値とは異なる第2の出力値に変更する第2処理とを交互に繰り返す。このため、長期間にわたって運転する場合、第2の冷却水タンク42から冷却水ポンプ2およびスタック内冷却水流路12を介して第1の冷却水タンク41に通じる冷却水系流路20と、第1の冷却水タンク41から水処理水ポンプ6およびイオン交換樹脂5を介して第2の冷却水タンク42に通じる水処理水系流路60との両方の流路に対して、空気溜りの発生を防止または低減することができる。
【0035】
[第2の実施形態]
図4は、第2の実施形態に係る燃料電池発電システムの中央制御部7の動作を示すフローチャートである。図5は、第2の実施形態に係る燃料電池発電システムの動作を示すタイミングチャートである。
【0036】
第2の実施形態に係る燃料電池発電システムでは、空気溜りが発生しやすい時間を予め計測しておき、それを設定時間としてポンプ出力を変更する。本実施形態について、第1の実施形態からの変更点のみ説明する。
【0037】
中央制御部7と冷却水ポンプ制御部8と水処理水ポンプ制御部9の動作について図4を参照して説明する。
【0038】
中央制御部7は、システムが起動したとき(ステップS11)、第1設定時間が経過するまで(ステップS13−NO)、上述の第1処理を行う(ステップS12)。中央制御部7は、第1設定時間が経過した場合(ステップS13−YES)、第2設定時間が経過するまで(ステップS15−NO)、上述の第2処理を行う(ステップS14)。中央制御部7は、第2設定時間が経過した場合(ステップS15−YES)、システムが運転停止しない場合(ステップS16−NO)、第1処理(ステップS12)と第2処理(ステップS14)とを交互に繰り返す。
【0039】
第1処理において、中央制御部7は、第1制御信号71を冷却水ポンプ制御部8および水処理水ポンプ制御部9に出力する。このとき、冷却水ポンプ制御部8および水処理水ポンプ制御部9は、第1制御信号71に応じて、それぞれ冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の出力を第1の出力値に維持する。
【0040】
第2処理において、中央制御部7は、第2制御信号72を冷却水ポンプ制御部8および水処理水ポンプ制御部9に出力する。冷却水ポンプ制御部8および水処理水ポンプ制御部9は、第2制御信号72に応じて、それぞれ冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の出力を第2の出力値に変更する。
【0041】
第2処理は、冷却水系流路20および水処理水系流路60内の空気溜りの発生を防止または低減するために設定されているため、長期にわたる運転では常時必要はない。そのため、図5に示されるように、第2設定時間は、第1設定時間よりもはるかに短い。
【0042】
また、第1制御信号71と第2制御信号72とが切り替えられるタイミングは、冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の特性や冷却水系流路20および水処理水系流路60の特性を考慮して決定され、中央制御部7に予め設定されている。たとえば、空気溜りが発生しやすい時間を予め計測しておき、この時間が5000時間、10000時間、15000時間、…である場合、これを第1設定時間として中央制御部7に予め設定しておく。
【0043】
この場合、図3に示されるように、第2制御信号72は、起動時、および、起動時から第1設定時間が経過する度に中央制御部7から出力され、第1制御信号71は、第2設定時間が経過する度に中央制御部7から出力される。すなわち、第2処理は、起動時、および、起動時から第1設定時間が経過する度に第2設定時間だけ行われ、第1処理は、第2設定時間が経過する度に行われる。
【0044】
このように、本実施形態によれば、空気溜りが発生しやすい時間を予め計測しておき、それを設定時間としてポンプ出力を変更することにより、第1の実施形態に対して省電力化を図ることができる。
【0045】
[第3の実施形態]
図6は、第3の実施形態に係る燃料電池発電システムの構成を示すブロック図である。図7は、第3の実施形態に係る燃料電池発電システムの中央制御部7の動作を示すフローチャート図である。
【0046】
第3の実施形態に係る燃料電池発電システムでは、空気溜りが発生する要因となるパラメータ(圧力および流量)をリアルタイムに計測し、その計測結果に基づいてポンプ出力を変更する。本実施形態について、第1および第2の実施形態からの変更点のみ説明する。
【0047】
図6に示されるように、第3の実施形態に係る燃料電池発電システムは、第1の実施形態の構成に対して、さらに、冷却水系監視部31と、水処理水系監視部32と、を具備している。
【0048】
冷却水系監視部31は、冷却水系流路20内の冷却水の圧力を監視し、その監視結果を表す第1監視信号33を出力する。水処理水系監視部32は、水処理水系流路60内の冷却水の圧力の値を監視し、その監視結果を表す第2監視信号34を出力する。
【0049】
冷却水系監視部31および水処理水系監視部32は、計測器35を備えている。計測器35は、たとえば、圧力スイッチ、圧力計および流量計の少なくとも1つの計測器である。
【0050】
計測器35が圧力スイッチである場合、冷却水系監視部31の圧力スイッチは、冷却水系流路20内の冷却水の圧力が許容範囲内ではないときに動作し、その旨を表す第1監視信号33を中央制御部7に出力する。水処理水系監視部32の圧力スイッチは、水処理水系流路60内の冷却水の圧力が許容範囲内ではないときに動作し、その旨を表す第2監視信号34を中央制御部7に出力する。たとえば、圧力スイッチが動作していない状態において、第1監視信号33および第2監視信号34が表す値を「0」とした場合、圧力スイッチが動作した状態においては、それぞれ、第1監視信号33および第2監視信号34が表す値を「1」とする。そこで、冷却水系監視部31および水処理水系監視部32の圧力スイッチの動作状態を表す第1許容範囲を上記「0」とし、中央制御部7には、その第1許容範囲「0」が所定の許容範囲として予め設定されている。
【0051】
計測器35が圧力計である場合、冷却水系監視部31の圧力計は、冷却水系流路20内の冷却水の圧力を計測し、その旨を表す第1監視信号33を中央制御部7に出力する。水処理水系監視部32の圧力計は、水処理水系流路60内の冷却水の圧力を計測し、その旨を表す第2監視信号34を中央制御部7に出力する。中央制御部7には、冷却水系流路20および水処理水系流路60内の冷却水の圧力の許容範囲を表す第2許容範囲が所定の許容範囲として予め設定されている。
【0052】
計測器35が流量計である場合、冷却水系監視部31の流量計は、冷却水系流路20内の冷却水の流量を計測し、その旨を表す第1監視信号33を中央制御部7に出力する。水処理水系監視部32の流量計は、水処理水系流路60内の冷却水の流量を計測し、その旨を表す第2監視信号34を中央制御部7に出力する。中央制御部7には、冷却水系流路20および水処理水系流路60内の冷却水の流量の許容範囲を表す第3許容範囲が所定の許容範囲として予め設定されている。
【0053】
次に、中央制御部7と冷却水ポンプ制御部8と水処理水ポンプ制御部9の動作について図7を参照して説明する。ここで、圧力スイッチ、圧力計および流量計の具体例として、冷却水系監視部31および水処理水系監視部32の計測器35は、圧力スイッチ、圧力計および流量計を含んでいるものとする。
【0054】
中央制御部7は、システムが起動したとき(ステップS21)、上述の第1処理を行う(ステップS22)。
【0055】
第1処理において、中央制御部7は、第1制御信号71を冷却水ポンプ制御部8および水処理水ポンプ制御部9に出力する。このとき、冷却水ポンプ制御部8および水処理水ポンプ制御部9は、第1制御信号71に応じて、それぞれ冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の出力を第1の出力値に維持する。
【0056】
中央制御部7は、冷却水系監視部31からの第1監視信号33が表す値(圧力スイッチの動作状態、圧力および流量)および水処理水系監視部32からの第2監視信号34が表す値(圧力スイッチの動作状態、圧力および流量)が、それぞれ、所定の許容範囲(第1許容範囲「0」、第2許容範囲および第3許容範囲)内である場合(ステップS23−YES)、第1処理を継続する(ステップS22)。また、中央制御部7は、第1監視信号33が表す値および第2監視信号34が表す値が許容範囲内にない状態でも、その状態を第3設定時間継続しない場合(ステップS23−NO、S24−NO)、第1処理を継続する(ステップS22)。
【0057】
中央制御部7は、冷却水系監視部31からの第1監視信号33が表す値および水処理水系監視部32からの第2監視信号34が表す値のうちの少なくとも一方の値が許容範囲内にない状態であり、その状態を第3設定時間継続しているときに(ステップS23−NO、S24−YES)、システムが運転停止しない場合(ステップS25−NO)、上述の第2処理を行う(ステップS26)。第3設定時間は、通常、前述の第1設定時間よりもはるかに短い。
【0058】
第2処理において、中央制御部7は、第2制御信号72を冷却水ポンプ制御部8および水処理水ポンプ制御部9に出力する。冷却水ポンプ制御部8および水処理水ポンプ制御部9は、第2制御信号72に応じて、それぞれ冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の出力を第2の出力値に変更する。
【0059】
中央制御部7は、冷却水系監視部31からの第1監視信号33が表す値および水処理水系監視部32からの第2監視信号34が表す値のうちの少なくとも一方の値が許容範囲内にない状態である場合(ステップS27−NO)、第2処理を継続する(ステップS26)。中央制御部7は、第1監視信号33が表す値および第2監視信号34が表す値が許容範囲内にある状態であり、その状態を第4設定時間継続していないときに、システムが運転停止しない場合(ステップS29−NO)、第2処理を継続する(ステップS26)。
【0060】
中央制御部7は、冷却水系監視部31からの第1監視信号33が表す値および水処理水系監視部32からの第2監視信号34が表す値が許容範囲内にある状態であり、その状態を第4設定時間継続した場合(ステップS27−YES、S28−YES)、第1処理として、冷却水ポンプ2および水処理水ポンプ6の出力を第1の出力値に復帰させる(ステップS22)。第4設定時間は、通常、前述の第1設定時間よりもはるかに短い。
【0061】
このように、本実施形態によれば、空気溜りが発生する要因となるパラメータ(圧力および流量)をリアルタイムに計測し、その計測結果に基づいてポンプ出力を変更することにより、第1および第2の実施形態に対して省電力化を図ることができる上に、第1および第2の実施形態よりも空気溜りを確実に抑制することができる。
【0062】
[第4の実施形態]
図8は、第4の実施形態に係る燃料電池発電システムの中央制御部7の動作を示すフローチャートである。図9は、図8の異常検出処理を示すフローチャートである。
【0063】
第4の実施形態に係る燃料電池発電システムでは、第2処理が行われたときに冷却水系監視部31からの第1監視信号33が表す値および水処理水系監視部32からの第2監視信号34が表す値が許容範囲内にある状態を第5設定時間継続できない場合、ポンプや流路に異常があるものと判断し、その旨を表す異常判断結果を出力し、システムの運転を停止させる。本実施形態について、第1〜第3の実施形態からの変更点のみ説明する。
【0064】
第3の実施形態では、中央制御部7は、第2処理を行ったときに(ステップS26)、冷却水系監視部31からの第1監視信号33が表す値および水処理水系監視部32からの第2監視信号34が表す値のうちの少なくとも一方の値が許容範囲内にない状態である場合(ステップS27−NO)、第2処理を継続している(ステップS26)。
【0065】
一方、本実施形態では、図8に示されるように、中央制御部7は、第2処理を行ったときに(ステップS26)、冷却水系監視部31からの第1監視信号33が表す値および水処理水系監視部32からの第2監視信号34が表す値のうちの少なくとも一方の値が許容範囲内にない状態である場合(ステップS27−NO)、後述する異常検出処理を行う(ステップS30)。
【0066】
図8および図9に示されるように、中央制御部7は、異常検出処理において上述の状態を第5設定時間継続していない場合(ステップS31−NO)、第2処理を継続する(ステップS26)。
【0067】
一方、中央制御部7は、異常検出処理において上述の状態を第5設定時間継続している場合(ステップS31−YES)、冷却水ポンプ2、水処理水ポンプ6、冷却水系流路20および水処理水系流路60の少なくとも1つに異常があるものと判断し、その旨を表す異常判断結果を生成し、その異常判断結果を出力装置に出力する(ステップS32)。出力装置としては、表示装置、印刷装置および記憶装置が例示される。
【0068】
中央制御部7は、異常判断結果を出力装置に出力した後、または、同時に、速やかにシステムの運転を停止させる(ステップS33)。
【0069】
このように、本実施形態によれば、第2処理が行われたときに冷却水系監視部31からの第1監視信号33が表す値および水処理水系監視部32からの第2監視信号34が表す値が許容範囲内にある状態を第5設定時間継続できない場合、ポンプや流路に異常があるものと判断し、その旨を表す異常判断結果を出力することにより、空気溜りの原因がポンプや流路の異常という旨を迅速に通知することができる。また、システムの運転を停止させることにより、ポンプや流路に異常が発生した場合でも安全性を確保できる。
【0070】
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、また各実施形態の特徴を組み合わせることができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 … 燃料電池スタック
2 … 冷却水ポンプ
3 … 燃料処理装置
4 … 複合冷却水タンク
5 … イオン交換樹脂
6 … 水処理水ポンプ
7 … 中央制御部
8 … 冷却水ポンプ制御部
9 … 水処理水ポンプ制御部
11 … カソード極
12 … スタック内冷却水流路
13 … アノード極
20 … 冷却水系流路
31 … 冷却水系監視部
32 … 水処理水系監視部
33 … 第1監視信号
34 … 第2監視信号
35 … 計測器(圧力スイッチ、圧力計および流量計)
41 … 第1の冷却水タンク
42 … 第2の冷却水タンク
60 … 水処理水系流路
71 … 第1制御信号
72 … 第2制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックの冷却水流路であるスタック内冷却水流路からの冷却水を溜める第1の冷却水タンクと、
前記第1の冷却水タンク内の前記冷却水から不純物イオンを取り除くイオン交換樹脂と、
前記不純物イオンが取り除かれた前記冷却水を溜める第2の冷却水タンクと、
前記第2の冷却水タンクから前記燃料電池スタックの冷却水流路を通して前記第1の冷却水タンクに前記冷却水を循環させる冷却水ポンプと、
前記第1の冷却水タンク内の前記冷却水を前記イオン交換樹脂から前記第2の冷却水タンクに循環させる水処理水ポンプと、
前記冷却水ポンプおよび前記水処理水ポンプの出力を第1の出力値に維持する第1処理と、前記冷却水ポンプおよび前記水処理水ポンプの出力を前記第1の出力値とは異なる第2の出力値に変更する第2処理とを実行するのを制御する制御部と、
を具備することを特徴とする燃料電池発電システム。
【請求項2】
前記第2処理の所要時間は、前記第1処理の所要時間よりも短く、
前記第1処理と前記第2処理とを交互に繰り返し、
前記第1処理と前記第2処理は、定周期で切り替わる、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項3】
前記第2処理は、起動時から第1設定時間が経過する度に、前記第1設定時間よりも短い第2設定時間だけ行われ、
前記第1処理は、前記第2設定時間が経過する度に行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項4】
前記第2の冷却水タンクから前記冷却水ポンプおよび前記燃料電池スタックの冷却水流路を介して前記第1の冷却水タンクに通じる冷却水系流路と、
前記第1の冷却水タンクから前記水処理水ポンプおよび前記イオン交換樹脂を介して前記第2の冷却水タンクに通じる水処理水系流路と、
前記冷却水系流路内の前記冷却水の圧力および流量の少なくとも一方の値を表す第1監視信号を前記制御部に出力する冷却水系監視部と、
前記水処理水系流路内の前記冷却水の圧力および流量の少なくとも一方の値を表す第2監視信号を前記制御部に出力する水処理水系監視部と、
をさらに具備し、
前記制御部は、
前記第1監視信号および前記第2監視信号が表す値のうちの少なくとも一方の値が所定の許容範囲内にない状態を第3設定時間継続した場合、前記第2処理として、前記冷却水ポンプおよび前記水処理水ポンプの出力を前記第1の出力値から前記第2の出力値に変更し、
前記第1監視信号および前記第2監視信号が表す値が前記許容範囲内にある状態を第4設定時間継続した場合、前記第1処理として、前記冷却水ポンプおよび前記水処理水ポンプの出力を前記第1の出力値に復帰させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項5】
前記冷却水系監視部および前記水処理水系監視部は、
それぞれ、前記冷却水系流路および前記水処理水系流路内の前記冷却水の圧力が前記許容範囲内ではないときに動作し、その旨を表す値を前記第1監視信号および前記第2監視信号として出力する圧力スイッチ、
を備えていることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池発電システム。
【請求項6】
前記冷却水系監視部および前記水処理水系監視部は、
それぞれ、前記冷却水系流路、前記水処理水系流路内の前記冷却水の圧力を計測し、その値を前記第1監視信号および前記第2監視信号として出力する圧力計、
を備えていることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池発電システム。
【請求項7】
前記冷却水系監視部および前記水処理水系監視部は、
それぞれ、前記冷却水系流路、前記水処理水系流路内の前記冷却水の流量を計測し、その値を前記第1監視信号および前記第2監視信号として出力する流量計、
を備えていることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池発電システム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第2処理が行われたときに前記第1監視信号および前記第2監視信号が表す値が前記許容範囲内にある状態を第5設定時間継続できない場合、前記冷却水ポンプ、前記水処理水ポンプ、前記冷却水系流路および前記水処理水系流路の少なくとも1つに異常があるものと判断し、その旨を表す異常判断結果を出力し、システムの運転を停止させる、
ことを特徴とする請求項4ないし請求項7のいずれか一項に記載の燃料電池発電システム。
【請求項9】
燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックの冷却水流路からの冷却水を溜める第1の冷却水タンクと、前記第1の冷却水タンク内の前記冷却水から不純物イオンを取り除くイオン交換樹脂と、前記不純物イオンが取り除かれた前記冷却水を溜める第2の冷却水タンクと、冷却水ポンプと、水処理水ポンプと、を具備する燃料電池発電システムの冷却方法において、
前記冷却水ポンプが、前記第2の冷却水タンクから前記燃料電池スタックの冷却水流路を通して前記第1の冷却水タンクに前記冷却水を循環させるステップと、
前記水処理水ポンプが、前記第1の冷却水タンク内の前記冷却水を前記イオン交換樹脂から前記第2の冷却水タンクに循環させるステップと、
前記冷却水ポンプおよび前記水処理水ポンプの出力を第1の出力値に維持する第1処理と、前記冷却水ポンプおよび前記水処理水ポンプの出力を前記第1の出力値とは異なる第2の出力値に変更する第2処理とを実行するのを制御するステップと、
を具備することを特徴とする燃料電池発電システムの冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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