説明

燃料電池発電装置のための、自力起動の方法および装置、ならびに自力起動能力を有する燃料電池発電装置

自力起動作動は、燃料電池システム作動をブートストラップするために、燃料電池スタックへパッシブにしみ出され、または拡散された燃料と周囲の酸化剤との反応の結果として生ずる電力の蓄積を利用する。燃料電池システムは、燃料電池スタックと、燃料電池スタックへ反応物を選択的に供給するための反応物供給システムと、燃料電池スタックへ酸化剤を選択的に供給するための酸化剤供給システムと、燃料電池スタックと電気的に結合される電気貯蔵装置とを備える。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自力起動(black start)能力を有する燃料電池発電装置、および燃料電池発電装置のための自力起動システムと方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は技術的に知られている。燃料電池は電流を生成するために、水素を含む燃料の流れおよび酸素を含む酸化剤の流れに電気化学的に反応を起こさせる。燃料電池電気発電装置は、輸送と携帯と据え置きの応用において利用される。
【0003】
据え置きと携帯の応用は、分散電力生成とバックアップ電力と無停電電源供給(UPS)システムを含む。分散電力生成は、公共電力網の替わりまたは補足として、住居用、商業用および/または工業上の顧客へ電力を供給することに関する。そのような応用において発電装置は、典型的に、継続的に作動する。それらは、電力網が利用できない、または十分に信頼できない状況に特にふさわしい。ピーク電力システムは、電力網を補うことを意図されており、十分な配電電力が利用し得ない場合または公共施設によって負担をかけられる割合が増加する場合、ピーク使用時期間の間、断続的に電力を供給する。バックアップ電力およびUPSシステムは、電力網または他の主電源が利用できない場合の期間の間に、電力を供給する。燃料電池発電装置は、車、トラック、バス、電車、船、飛行機を含む、輸送の応用に利用され得る。
【0004】
一つ以上の燃料電池スタックに加えて、燃料電池発電装置はまた、一般的にはバランスオブプラントと呼ばれる、関連する作動、監視、制御システムを含む。バランスオブプラントは典型的には反応物供給および電力制御システムを含み、および、例えば反応物加湿、温度調節、作動監視などのための様々な他のシステムをも含み得る。バランスオブプラントは、通常、発電装置の作動を制御するための制御システムをも含み得る。
【0005】
これらのシステムは、動作のための電源を必要とする様々な電気装置を含み、例えば送風機、圧縮器、調整装置、センサー、電力を供給されたバルブおよび電子機器などを含む。集合的には、これらの装置は、燃料電池発電装置が通常動作にて起動し得る前に、電力を供給されなければならない作動負荷を意味する。もちろん、一度燃料電池スタックが通常の出力を生成すると、作動負荷へ電力を供給し得る。
【0006】
既知の燃料電池電力発電装置は、燃料電池スタックが作動し、また作動するために十分な電力を供給し得る前に、作動負荷に電力を供給するために、二次電池またはスーパー蓄電器のような電力貯蔵装置を利用し得る。電気貯蔵装置は外部負荷にも電力を供給し得る。例えば、US6,266,576,B1(「Okadaら」)は、燃料電池、燃料電池コントローラー、および二重層蓄電器(または、他の電気エネルギー貯蔵手段)を含む燃料電池ユニットを開示している。燃料電池ユニットを始動させるために、燃料電池コントローラーは二重層蓄電器または外部電源から電気エネルギーを受け取る。二重層蓄電器がエネルギー源である場合、再起動においてコントローラーに電力を供給するために二重層蓄電器が十分なエネルギーを有することを確実にするために、作動中止前に燃料電池によって充電され、または燃料を再補給する。代替的には、外部電源は、二重層蓄電器を充電するために利用されるか、または直接コントローラーへ必要とされる電力を供給するために利用される。この解決は特定の応用のためにはふさわしい一方で、一部の不利な点を有する。
【0007】
例えば一部の応用において、発電装置は延長期間(extended period)のために利用され得ない。時の経過に従い、そのような電気貯蔵装置は自己放電のために電気エネルギーを失い、その結果、不十分な電力が、燃料電池スタックの作動負荷に供給するために利用され、発電装置は起動しない。損傷または欠陥のある電気貯蔵装置はまた、作動負荷のための十分な電力を生成することに失敗し得る。このように、外部電力供給なしでは、発電装置は始動することができない。別の実施例として、発電装置が始動されることが要求されるが、しかし、電気貯蔵装置が、適正に機能しているにもかかわらず、放電している状況が起こり得る。例えば発電装置がガスを使い果たすなど、発電装置の反応物供給が作動期間に遮断される場合、これは起こり得る。この状況において、電気貯蔵装置は、外部負荷へ電力を供給し放電し得、または燃料電池スタックが電力の生成を停止する前に十分に再充電をされ得ない。残念ながら、いったん反応物供給が復旧されても、発電装置は、作動負荷に電力を供給するための外部電力源なしでは、作動を回復することができない。バックアップ、携帯、および車の応用のために、特に、他の外部電力源が利用し得ない場合、これは重要な問題になり得る。
【0008】
例えば外部電力源を必要とせずに作動を開始することができるように、自力起動能力を有する燃料電池電力を有することが所望される。本発明は、従来の燃料電池発電の不利な点を取り組み、さらに関連される利点を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの局面において、燃料電池スタックと、燃料電池スタックへ反応物を選択的に供給する反応物供給システムと、燃料電池スタックへ酸化剤を選択的に供給する酸化剤供給システムと、燃料電池スタックに電気的に結合される電気貯蔵装置とを含む燃料電池システムを作動する方法であって、その方法は、燃料電池スタックへ反応物を供給する反応物供給システムを作動することと、電力を生成するために燃料電池スタックにおける反応物と周囲の空気との反応を起こさせることと、電気貯蔵装置において電力を蓄積することと、少なくとも酸化剤供給システムに電力を供給するために電気貯蔵装置において十分な電力が蓄積された後、燃料電池スタックに酸化剤を供給するための酸化剤供給システムを作動することとを含む、方法である。
【0010】
別の局面において、多数の内部および外部負荷に電力を供給するための燃料電池システムを作動する方法であって、反応物供給からの反応物を燃料電池スタックに供給するための反応物供給バルブを手動で開くことと、燃料電池スタックへパッシブに拡散される反応物と酸化剤との反応から電力を生成することと、電気貯蔵装置において燃料電池スタックへパッシブに拡散される反応物と酸化剤との間の反応から生成された電力を蓄積することと、少なくとも第1の内部負荷へ電力を供給するために電気貯蔵装置に十分な電力を蓄積した後であって、外部負荷へ電力を供給する前に、電気貯蔵装置から少なくとも第1の内部負荷へ電力を供給することとを含む、方法である。
【0011】
さらに別の局面において、燃料電池システムは、燃料電池スタックと、反応物の流れを供給するために燃料電池スタックに結合される反応物供給システムと、酸化物の流れを供給するために燃料電池スタックに結合される酸化剤供給システムと、燃料電池システムへパッシブに拡散された反応物と周囲の空気との反応から生成された電力を蓄積するために燃料電池スタックに電気的に結合可能である電気貯蔵装置であって、少なくとも酸化剤供給システムに電力を供給するために電気貯蔵装置において十分な電力が蓄積された後、蓄積された電力を供給するために、少なくとも酸化剤供給システムに電気的にさらに結合される電気貯蔵装置とを含む。
【0012】
さらなる局面において、内部および外部負荷へ電力を供給するための燃料電池システムであって、その燃料電池システムは、燃料電池スタックと、燃料電池スタックへ反応物の流れを供給するために手動で動作可能な、少なくとも第1の反応物供給バルブを含む反応物供給システムと、燃料電池スタックへ酸化剤の流れをアクティブに供給するために選択的に動作可能な、少なくとも一つの要素を選択的に有する酸化剤供給システムと、燃料電池スタックへパッシブに拡散された反応物と酸化剤との反応から生成された電力を蓄積するために、燃料電池スタックへ電気的に結合し得る電気貯蔵装置であって、燃料電池スタックから外部負荷へ電力を供給する前に、少なくとも第1の内部負荷へ電力を供給ために電気的にさらに結合される電気貯蔵装置とを、含む。
【0013】
いっそうさらなる局面において、燃料電池システムは、燃料電池スタックと、燃料電池スタックへ反応物を供給するために選択的に動作可能な反応物供給システムと、燃料電池スタックへ酸化剤の流れをアクティブに供給するために選択的に動作可能な酸化剤供給システムと、燃料電池スタックにおいて反応物と周囲の空気との反応から生成される電力を蓄積するための手段、および、十分な電力が蓄積された後、酸化剤の流れをアクティブに供給するために酸化剤供給システムに電力を供給するための手段とを、含む。
【0014】
そのうえさらなる局面において、燃料電池システムは、燃料電池スタックと、燃料電池スタックへ反応物を供給するために選択的に動作可能な反応物供給システムと、燃料電池スタックへ酸化剤の流れをアクティブに供給するために選択的に動作可能な酸化剤供給システムと、ならびに、燃料電池スタックへパッシブに拡散される反応物と酸化剤との反応によって生成される電力を蓄積するための手段、および、十分な電力が蓄積された後、酸化剤の流れをアクティブに供給するために酸化剤供給システムに電力を供給するための手段とを、含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に続く記述において、本発明における様々な実施形態についての綿密な理解を提供するために、その所定の特定の詳細が説明される。しかしながら、当業者は、本発明がこれらの詳細なしに実施され得ることを理解する。別の例においては、燃料電池、燃料電池スタック、バッテリー、そして燃料電池システムに関連して、よく知られた構造は、本発明の実施形態の記述を不必要に分かりにくくすることを避けるために、詳細に記述されていない。
【0016】
別段の要求がない限り、明細書および請求項の全てにおいて、“備える”という言葉および、“備える”や“備えている”といったような派生語は、“含むが限定されない”という、広く、包括的な意味に解釈される。
【0017】
ここに提供された冒頭は、便宜上でしかなく、本請求の範囲に記載されている発明の範囲もしくは、意味を説明しない。
【0018】
図1は、一つまたはそれ以上の外部負荷14へ電力を提供するために電気的に結合され得る燃料電池スタック12を有する燃料電池システム10を表している。燃料電池スタック12は、それぞれ、標準電子回路記号によって図示された、関連する、電気抵抗およびキャパシタンスを有する一つ以上の燃料電池を含み得る。
【0019】
使用において、燃料電池スタック12は、燃料の流れ、もしくは反応物供給システム16を介して反応物を受け取り、また、酸化剤供給システム18を介して、例えば空気といった酸化剤の流れを受け取る。反応剤供給システム16は、燃料電池システム10とともに一体化して形成され得る反応物貯蔵所20から反応物を供給し得、もしくは、適切なバルブおよびコネクタ22を経由して、燃料電池システム10へ選択的に結合され得る個別の装置の形態を取り得る。反応物供給システム16は、反応物貯蔵所20および、第1のバルブV1を含む燃料電池スタック12との間の第1の燃料通路および、反応物供給20および第2のバルブV2を含む燃料電池スタック12との間の第2の燃料通路を含む。第2のバルブV2は、例えば、ソレノイドSもしくは別のアクチュエーターを介して、燃料電池システム10のコントロール下で自動的に作動する。第1のバルブV1は、関連する点線の矢印によって図示されるように、第2のバルブV2をバイパスするために、手動で作動する始動スイッチS1を経由して、手動で作動され得る。酸化剤供給システム18は、例えば、コンプレッサー、送風機、ファンなどといった、燃料電池スタック12へ酸化剤を動的に供給するために、少なくとも一つのアクティブ装置24を含む。
【0020】
燃料電池スタック12に付け加えて、燃料電池システム10は、バランスオブプラント26と一般的に呼ばれる、関連するオペレイティング、モニタリング、およびコントロールシステムを典型的に含む。バランスオブプラント26は、反応物供給システム16、酸化剤供給システム18、および電力調整システムを含み得、および、反応物加湿、温度調整、および/またはは操作上のモニタリングのための様々な別のシステムを含み得る。例えば、バランスオブプラント26は、マイクロプロセッサー28のようなコントローラー、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)のようなメモリ30、および/または、読出専用メモリ(「ROM」)、および/または、温度、流量および/またはスイッチ位置のような様々な要素に関する操作条件の情報を提供するためにマイクロプロセッサー28へ結合されたセンサー32を含み得る。バランスオブプラントは、一般的に34において示されるアクチュエーターを含み得るが、しかしまた、燃料電池システム10の様々な要素をコントロールするために、例えばソレノイドSなどを、含んでいる。バランスオブプラント26の様々な要素は、燃料電池システム10の内部負荷を含み、燃料電池スタック12の電力、もしくはエネルギー貯蔵装置などからの電力のように、作動するための電力を必要としている。
【0021】
一部の実施形態において、燃料電池スタック12は、燃料電池スタック12のアノードをパージするために選択的に動作可能なアノードパージバルブV3を含み得る。少なくとも一実施形態において、アノードパージバルブV3は、十分な電力がアノードパージバルブV3を自動的に作動するために生成される前に、燃料電池スタック12のアノードをパージすることを許可するために、手動で作動され得る。少なくとも別の実施形態において、アノードパージバルブV3は、追加的にもしくは代替的に、例えばマイクロプロセッサー28を経由して、燃料電池システム10のコントロール下で自動的に作動する。
【0022】
燃料電池システム10は、燃料電池スタック12と電気的に並列に結合される、一つ以上のスーパー蓄電器のような電気貯蔵装置36を含む。当業者は、蓄電池などを含む他の電気貯蔵装置が、スーパー蓄電器の適した代用となり得ることを認識する。電気貯蔵装置36は電力を蓄積し、十分な電力が蓄積された後、電力をバランスオブプラントの一つ以上の要素へ供給する。例えば、電気貯蔵装置36は、燃料電池スタック12において、反応物と周囲の酸素(例えば、酸化剤供給システム24を介して燃料電池スタック12へとパッシブにしみ出し、または拡散される酸化剤など)との反応からの電力を蓄積し得る。次により十分に説明されるように、電気貯蔵装置36は、活発に酸化剤を供給するために酸化剤供給システム18のアクティブ装置24へ電力を提供し得、燃料電池スタック12に、内部および外部負荷を供給するための十分な電力を生産させる。このように、燃料電池システム10は自力で作動することができる。
【0023】
例えばディスクリート抵抗器のような任意の電気抵抗R1は、始動スイッチS1の手動での起動によって、電気貯蔵装置36をまたぎ、電気的に並列に結合され得、システム始動時の間、電気貯蔵装置36への電流の急増を制限する(例えば、電気貯蔵装置の充電)。いったん燃料電池スタック12が内部負荷の少なくとも一つに十分な電力を提供すれば、電気抵抗R1は電気貯蔵装置36を超えて電気的に結合され得ず、電気抵抗R1に関連した損失を除去することによって、燃料電池システム10の能率は増加する。
【0024】
ダイオードD1、D2は、電流i4の逆流を防ぐために、充電回路において電気的に結合され得る。充電回路スイッチS2は、例えば、関連した点線矢印で示されたマイクロプロセッサー28のコントロール下のように、バランスオブプラントのコントロールの下で電気貯蔵装置36を燃料電池スタック12へ電気的に結合させ、または結合させない。燃料電池スタック12が内部負荷に加え、外部負荷14に供給するための十分な電力を生産している場合、負荷スイッチS3は、負荷14を燃料電池スタック12へ電気的に結合する。負荷スイッチS3は、例えば関連した点線矢印で示されたマイクロプロセッサー28のコントロール下のように、パランスオブプラントのコントロール下で作動する。負荷キャパシタンスC1は、負荷14をまたいで、電気的に結合され得る。
【0025】
図2は、燃料電池システム10の代替の実施形態を示している。ここに説明されるこの代替の実施形態、およびそれらの代替の実施形態および別の実施形態は、以前説明された実施形態と実質的に類似し、また、共通のアクト(act)および構造は同じ参照番号によって同じものとみなす。動作および構造における重要な違いだけが次に記載されている。
【0026】
図2の燃料電池システム10は、例えば電圧をブーストすることなどにより、電気貯蔵装置36へ供給される電力を調整するために、フライバックもしくはブースト変換器38を用いる。ブースト変換器38は、電圧計42からの電圧読みおよび電流計44からの電流読みに基づいてブースト変換器スイッチS4を作動させるパルス幅変調を用いて、インダクタL1および電圧コントローラー40(例えば、とても低い動作電圧コントローラのように)を含み得る。ブーストおよびフライバック変換器は、良く知られる電気要素であり、簡潔さの利益のために、詳細に説明はしない。
【0027】
図3は、電気貯蔵装置36へ電圧をブーストさせるチャージポンプまたは電圧倍率回路を用いた燃料電池システム10を示している。特に、充電回路は、第1のタイミング信号に従った第1の発振器スイッチS4をコントロールし、また、第1のタイミング信号の反転である第2のタイミング信号に従った第2の発振器スイッチS5をもコントロールする発振器46を含み得る。キャパシタンスC2は、電流制限通路(例えば電気抵抗R1を含む)と、発振器スイッチS4、S5との間にある共通のノードとの間において電気的に結合される。
【0028】
図4は燃料電池システム10を操作する方法400を示している。402において、反応物供給システム16は、反応物貯蔵所20から燃料電池スタック12へ反応物を供給する。反応物供給システム16は、始動スイッチS1を経由し、バルブV1の手動による動作に反応して、反応物を供給し得る。始動スイッチS1の活性化はまた、電流の急増を制限するために、電気貯蔵装置36をまたぎ、電気的に電気抵抗R1を結合し得る。始動スイッチS1は、以上のように、一連の始動全体において、手動で始動される必要がある。代替的には、始動スイッチS1の手動の活性化は、始動スイッチS1を、通常の始動時間と同等の限定された時間の間、閉じたままにさせる。
【0029】
404において、燃料電池スタック12は、電力を生成するために反応物および周囲の酸化剤に反応を起こさせる。周囲の酸化剤は、浸出または拡散を介して(例えば酸化剤供給システム18または他の経路を介して)パッシブに燃料電池スタックに届き得る。
【0030】
406においては、燃料電池システム10の電気回路は、反応物および周囲の酸化剤との間の反応の結果として生じる電力を調整する。例えば、電気抵抗R1(図1)は、電流制限を遂行し得、および/または、ブーストまたはフライバック変換器(図2)またはチャージポンプ(図3)は、電圧をブーストし得る。
【0031】
必要に応じて、アノードパージバルブV3は、408において図示されるように、アノードをパージし得る。
【0032】
410において、電気貯蔵装置36は電力を蓄積する。いったん十分な電力が蓄積されると、電気貯蔵装置36は412におけるバランスオブプラントへ電力を供給する。例えば、電気貯蔵装置は、酸化剤供給システム18のアクティブ装置24のように、一つ以上の内部負荷へ電力を供給し得る。
【0033】
414において、燃料電池スタック12は、酸化剤供給システム18によってアクティブに供給された酸化剤とともに、反応物供給システム16によって供給された反応物に反応を起こさせ、内部および外部負荷のための十分な電力を生成する。416において、燃料電池システム10は、燃料電池スタック12へ負荷14を電気的に結合するためにスイッチS3を閉じ、首尾よく燃料電池システム10をブートストラップする。燃料電池システム10の効率を上げるために、いったん燃料電池スタックが外部負荷14へ供給するための十分な電力を生成すると、必要に応じて、起動スイッチS1は、電気貯蔵装置36をまたぐ電気抵抗R1の結合を電気的に解く。
【0034】
一実施例において、上の作動は、カナダ、バーナビーのバラードパワーシステムズ株式会社を介して利用できるNEXA(登録商標)燃料電池システムに関連して説明され得る。カソード空気ポンプの作動なしでも、一部の酸素または空気が燃料電池の流動領域へと拡散し、一部の窒素および/または水が流動領域から拡散し、燃料電池スタックにおよそ4ボルトの電圧で4アンペアの電流または16ワットの電力を生成させる。電力の量は、カソードが燃料電池スタックを取り囲む周囲の空気にどれくらい開放されているかに依存する。
【0035】
バランスオブプラントが、およそ5秒間、18ボルト以上で、およそ200ワットを要求する場合、トータルで1000ジュールが燃料電池システム10の起動に要求される。4.5ファラドのスーパー蓄電器は、16ワットの電力から、28ボルトまで充電するために、1764ジュールを必要とする。このように、スーパー蓄電器へ十分な電力を蓄えるためにはおよそ2分必要である。NEXA燃料電池システムを起動させた場合、エネルギーは、スーパー蓄電器の電圧が18ボルトに達するまで、スーパー蓄電器から引き抜かれ、およそ729ジュールがスーパー蓄電器に蓄えられる。このように、1035ジュールがバランスオブプラントを起動させるために利用できる。
【0036】
自力起動能力を有する燃料電池発電装置は、バランスオブプラントの起動または通常の作動を始めるために、外部電源を必要としない。このことはいくつかの以下の応用において重要な利点であり得、以下を含んでいる:
1.発電装置が使用され得ず、関連する電気貯蔵装置が自己放電のためにバランスオブプラントの始動し得ない応用において。
2.外部電源が利用できない場合の、消耗した反応物の再供給後に発電装置の継続作動のための、据え置き用および携帯用の応用において。
3.貯蔵バッテリーまたは他の電気的貯蔵装置がバランスオブプラントを始動させるために十分な電力を提供することを失敗する場合、緊急始動の性能を提供するための、輸送用の応用において。例えば、燃料電池動力を備えた乗り物の操作者が、「電気がなくなった」(dead)バッテリー(または、他の放電、欠陥または破損の電気的貯蔵装置)にもかかわらず、乗り物を始動させることが可能である。
【0037】
本明細書において参照される、および/または、出願データシートに記載される、前記の米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物は、その全体において、ここに援用され、米国特許出願番号第09/916,117号;第09/916,115号;第09/916,211号;第09/916,213号;および第09/916,240号、を含むが限定されず、それら全ては2001年7月25日に出願された。
【0038】
本発明の特定の実施形態は図示の目的のためにここに説明されているが、前述から、様々な変更が、本発明の趣旨と範囲から逸脱することなしになされ得ることを認められ得る。したがって、本発明は、添付された請求項による場合を除いて、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の一つの図示された実施形態に従って、反応物貯蔵所から反応物の供給を受け取るために、また、内部および外部負荷へ電力を供給するために、燃料電池スタックと適切なハードウェアとソフトウェアおよび/またはロジックとを含む燃料電池システムの略図である。
【図2】図2は、本発明の第2の図示された実施形態に従った、燃料電池システムの略図である。
【図3】図3は、本発明の第3の図示された実施形態に従った、燃料電池システムの略図である。
【図4】図4は、図1、図2、図3の燃料電池スタックを作動することの一つの例示的に図示された方法を表す流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、該燃料電池スタックへ反応物を選択的に供給するための反応物供給システムと、該燃料電池スタックへ酸化剤を選択的に供給するための酸化剤供給システムと、該燃料電池スタックと電気的に結合される電気貯蔵装置とを備える燃料電池システムを作動する方法であって、該方法は、
該燃料電池スタックへ該反応物を供給するための該反応物供給システムを作動することと、
該電力を生成するために該燃料電池スタックにおいて反応物および周囲の空気に反応を起こさせることと、
該電気貯蔵装置において電力を蓄積することと、
少なくとも該酸化剤供給システムに電力を供給するための該電気貯蔵装置において十分な電力が蓄積された後、該燃料電池スタックへ該酸化剤を供給するために該酸化剤供給システムを作動することを包含する、方法。
【請求項2】
前記燃料電池スタックへ前記反応物を供給するために前記反応物供給システムを作動することは、反応物供給貯蔵所および該燃料電池スタックとの間のバルブを手動で開くことを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気貯蔵装置において前記電力を蓄積することは、電気的に結合された多くのスーパー蓄電器において、電力を蓄積することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電気貯蔵装置において電力を蓄積する速度を制限することをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電気貯蔵装置において前記電力を蓄積する前に、該電力をブースト変換することをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記燃料電池スタックと前記電気貯蔵装置との間に電気的に結合されたスイッチモード充電回路を作動するために該燃料電池スタックから低電圧を供給することをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化剤供給システムを作動する前に、アノードパージバルブを手動で作動することをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化剤供給システムを作動する前に、アノードパージバルブを作動するために前記燃料電池スタックから低電圧を供給することをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記燃料電池スタックへ酸化剤を供給するために酸化剤供給システムを作動することは、該燃料電池スタックへアクティブに空気を供給するための、コンプレッサー、送風機およびファンのうちの少なくとも一つに電力を供給することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
多数の内部および外部負荷に電力を供給するために燃料電池システムを作動する方法であって、該方法は、
反応物供給から燃料電池スタックへと反応物を供給するための反応物供給バルブを手動で開くことと、
該燃料電池スタックへパッシブに拡散される該反応物および酸化剤の反応から電力を生成することと、
電気貯蔵装置において、該燃料電池スタックへパッシブに拡散される該反応物および該酸化剤の反応から生成された電力を蓄積することと、
少なくとも第1の内部負荷に電力を供給するために十分な電力が該電気貯蔵装置において蓄積された後であり、該外部負荷へ電力を供給する前に、該電気貯蔵装置から少なくとも該第1の内部負荷へ電力を供給することを包含する、方法。
【請求項11】
前記第1の内部負荷が酸化剤供給システムであり、前記電気貯蔵装置から少なくとも第1の内部負荷へ電力を供給することは、前記燃料電池スタックへアクティブに酸化剤を供給するために該電気貯蔵装置から該酸化剤供給システムの少なくとも一つの要素へ電力を供給することを包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも前記第1の内部負荷および第2の内部負荷に電力を供給するための前記電気貯蔵装置において十分な電力が蓄積された後であり、前記外部負荷へ電力を供給する前に、該電気貯蔵装置から少なくとも該第2の内部負荷へ電力を供給することをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記燃料電池スタックと前記電気貯蔵装置との間に電気的に結合される電力充電回路へ、該燃料電池スタックへアクティブに拡散された前記反応物および酸化剤の前記反応から生成される前記電力の少なくとも一部を供給することをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記電気貯蔵装置において前記電力を蓄積する速度を制限することをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記電気貯蔵装置において前記電力を蓄積する前に、前記燃料電池スタックへパッシブに拡散された前記反応物および前記酸化剤の前記反応から生成される該電力をブースト変換することをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記燃料電池スタックと前記電気貯蔵装置との間に電気的に結合し得るスイッチモード充電回路を作動するために、該燃料電池スタックから低電圧を供給することをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の内部負荷は酸化剤供給システムであり、
前記電気貯蔵装置から該酸化剤供給システムへ電力を供給する前に、前記燃料電池スタックからアノードパージバルブへ低電圧を供給することをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記酸化剤供給システムを作動する前に、アノードパージバルブを手動で作動することをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記電気貯蔵装置から前記第1の内部負荷へ電力を供給した後、前記燃料電池スタックへアクティブに供給される前記反応物および酸化剤の前記反応から生成される電力を、前記外部負荷の少なくとも主要な一つに供給することをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
燃料電池スタックと、
反応物の流れを供給するために、該燃料電池スタックに結合される反応物供給システムと、
酸化剤の流れを供給するために、該燃料電池スタックに結合される酸化剤供給システムと、
該燃料電池スタックへパッシブに拡散される前記反応物と周囲の空気との反応から生成される電力を蓄積するために該燃料電池スタックへ電気的に結合可能である電気貯蔵装置であって、該電気貯蔵装置は、少なくとも該酸化剤供給システムに電力を供給するために該電気貯蔵装置において十分な電力が蓄積された後、該蓄積された電力を供給するために、少なくとも該酸化剤供給システムに、さらに電気的に結合される、電気貯蔵装置と
を備える、燃料電池システム。
【請求項21】
前記反応物供給システムが、前記燃料電池スタックへ反応物の流れを選択的にコントロールするために手動で動作可能な反応物供給バルブを少なくとも一つ備える、請求項20に記載の燃料電池システム。
【請求項22】
前記反応物供給システムは、
第1の流路を介して前記燃料電池スタックへ反応物の前記流れを選択的にコントロールするために動作可能な該第1の流路および第1の反応物供給バルブと、
該第1の反応物供給バルブをバイパスする第2の流路を介して該燃料電池スタックへ該反応物の流れを選択的にコントロールするために手動で動作可能な該第2の流路および第2の反応物供給バルブ、とを備える、請求項20に記載の燃料電池システム。
【請求項23】
前記反応物供給システムに結合された、少なくとも一つの反応物供給貯蔵所をさらに備える、請求項20に記載の燃料電池システム。
【請求項24】
前記燃料電池スタックと前記電気貯蔵装置との間に電気的に結合されたフライバック変換器をさらに備える、請求項20に記載の燃料電池システム。
【請求項25】
前記燃料電池スタックと前記電気貯蔵装置との間に電気的に結合されたブースト変換器をさらに備える、請求項20に記載の燃料電池システム。
【請求項26】
前記燃料電池スタックと前記電気貯蔵装置との間に電気的に結合されたスイッチモード電流制限ソースをさらに備える、請求項20に記載の燃料電池システム。
【請求項27】
前記電気貯蔵装置が多数のスーパー蓄電器を備える、請求項20に記載の燃料電池システム。
【請求項28】
前記燃料電池スタックのアノードを選択的にパージするために、手動で動作可能なアノードパージバルブをさらに備える、請求項20に記載の燃料電池システム。
【請求項29】
内部および外部負荷へ電力を供給する燃料電池システムであって、該燃料電池システムは、
燃料電池スタックと、
該燃料電池スタックへ反応物の流れを供給するために手動で動作可能な少なくとも第1の反応物供給バルブを備える反応物供給システムと、
該燃料電池スタックへ酸化剤の流れをアクティブに供給するために選択的に動作可能な少なくとも一つの要素を選択的に有する酸化剤供給システムと、
該燃料電池スタックへパッシブに拡散される該反応物および酸化剤の反応から生成される電力を蓄積するために該燃料電池スタックへ電気的に結合可能な電気貯蔵装置であって、該燃料電池スタックから該外部負荷へ電力を供給する前に、電力を供給するために少なくとも第1の内部負荷へ電気的にさらに結合された、電気貯蔵装置と
を備える、燃料電池システム。
【請求項30】
前記酸化剤供給システムの少なくとも一つの前記要素が前記第1の内部負荷として前記電気貯蔵装置に電気的に結合される、請求項29の燃料電池システム。
【請求項31】
前記燃料電池スタックと前記電気貯蔵装置との間に電気的に結合された充電回路をさらに備える、請求項29に記載の燃料電池システム。
【請求項32】
前記燃料電池スタックと前記電気貯蔵装置との間に電気的に結合されたブースト変換器をさらに備える、請求項29に記載の燃料電池システム。
【請求項33】
前記燃料電池スタックと前記電気貯蔵装置との間に電気的に結合されるスイッチモード充電回路をさらに備え、
該スイッチモード充電回路は、該燃料電池スタックへパッシブに拡散される該反応物および酸化剤の該反応から生成される該電力の一部を受け取るために、第2の内部負荷として該燃料電池スタックに電気的に結合された発振器回路を備える、請求項29に記載の燃料電池システム。
【請求項34】
手動によって動作可能なアノードパージバルブをさらに備える、請求項29に記載の燃料電池システム。
【請求項35】
前記酸化剤供給システムの該要素の少なくとも一つが前記第1の内部負荷として前記電気貯蔵装置に電気的に結合され、
少なくとも該燃料電池システム作動の一部をコントロールするために動作可能に結合され、第2の内部負荷として該電気貯蔵装置に電気的に結合されるマイクロプロセッサーを、さらに備える、請求項29に記載の燃料電池システム。
【請求項36】
燃料電池スタックと、
該燃料電池スタックへ反応物を供給するために選択的に動作可能な反応物供給システムと、
該燃料電池スタックへ酸化剤の流れをアクティブに供給するために選択的に動作可能な酸化剤供給システムと、
該燃料電池スタックにおいて該反応物と周囲の酸化剤との反応によって生成された電力を蓄積するための、および、十分な電力が蓄積された後、該酸化剤の流れをアクティブに供給するために該酸化剤供給システムに電力を供給するための、手段と
を備える、燃料電池システム。
【請求項37】
前記電力を蓄積するための手段がスイッチモード電流制限回路を備える、請求項36に記載の燃料電池システム。
【請求項38】
前記電力を蓄積するための手段がブースト変換器を備える、請求項36に記載の燃料電池システム。
【請求項39】
燃料電池スタックと、
該燃料電池スタックへ反応物を供給するために選択的に動作可能な反応物供給システムと、
該燃料電池スタックへ酸化剤の流れをアクティブに供給するために選択的に動作可能な酸化剤供給システムと、
該燃料電池スタックへパッシブに拡散される該反応物と酸化剤との反応によって電力を蓄積するための、および、十分な電力が蓄積された後、該酸化剤の流れをアクティブに供給するために該酸化剤供給システムに電力を供給するための、手段と
を備える、燃料電池システム。
【請求項40】
前記電力を蓄積するための手段が、前記燃料電池スタックへパッシブに拡散される前記反応物と酸化剤との前記反応によって生成された電力を電圧コントロールし、電流制限するための手段を備える、請求項39に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−501504(P2007−501504A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529477(P2006−529477)
【出願日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000361
【国際公開番号】WO2004/102715
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(303026556)バラード パワー システムズ インコーポレイティド (28)
【Fターム(参考)】