説明

燃焼制御方法および燃焼装置

【課題】 ガス燃料と廃食用油などの液体燃料との混焼をなすための燃焼制御方法および燃焼装置を提供する。
【解決手段】 液体燃料とガス燃料とを、リターン形圧力噴霧式バーナ10が一体的に形成されたガスバーナ30を備えた燃焼装置Aを用いて混焼させる場合、ガス燃料着火量をガス燃料着火空気量で着火し、空気量を一次着火空気量まで増加し、一次着火量の液体燃料を噴霧し、空気量を二次着火空気量まで増加し、二次着火量の液体燃料を噴霧して液体燃料を確実に着火させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃焼制御方法および燃焼装置に関する。さらに詳しくは、ガス燃料と液体燃料とを混焼するための燃焼制御方法および燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃焼方式の一種としてガス燃料と液体燃料とを同時に燃焼させる、いわゆる混焼方式が知られている。
【0003】
混焼方式においては、燃焼性の劣る液体燃料にその燃焼性が大きく左右されるため、混焼方式をボイラや冷温水機などに適用する場合、液体燃料の燃焼性を検討してその混焼割合を決定することがなされている。その上、安全性および燃焼性の良否の確認のため、燃焼試験がなされ、その結果に基づいて燃焼制御がなされている。したがって、この混焼方式は手軽に利用することができないところから、その適用は大型ボイラや大型冷温水機に限定されている。
【0004】
ところで、近年、一部の地方自治体においては、環境問題の意識高揚策として廃食用油の回収促進が図られている。この回収された廃食用油は、バイオディーゼル油に再合成され未利用のエネルギーの回収・利用が図られている。しかしながら、廃食用油をバイオディーゼル油に再合成する設備は高価であるところから、廃食用油の利用促進の妨げとなっている。かかる事情から、廃食用油の回収を行っている地方自治体から、ガス燃料と廃食用油とを手軽にしかも良好に混焼させ得る、小型のボイラや冷温水機に適用できる燃焼装置の出現が熱望されている。
【0005】
しかしながら、前述したように、混焼方式を小型のボイラや冷温水機に適用した例は存在しないところから、その燃焼制御を如何にするかが問題となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑みなされたものであって、ガス燃料と廃食用油などの液体燃料との混焼をなすための燃焼制御方法および燃焼装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃焼制御方法は、液体燃料とガス燃料とを圧力噴霧式バーナが一体的に組み込まれたガスバーナを用いて混焼させる場合の燃焼制御方法であって、ガス燃料着火量をガス燃料着火空気量で着火する手順と、空気量を一次着火空気量まで増加させる手順と、一次着火量の液体燃料を噴霧する手順と、空気量を二次着火空気量まで増加させる手順と、二次着火量の液体燃料を噴霧する手順とを含んでいることを特徴とする。
【0008】
本発明の燃焼装置は、前記燃焼制御方法に適用される燃焼装置であって、リターン形圧力噴霧式バーナと、該リターン形圧力噴霧式バーナに液体燃料を供給する液体燃料系統と、ガスバーナと、該ガスバーナにガス燃料を供給するガス燃料系統と、燃焼用空気を供給する燃焼用空気系統とを備え、前記液体燃料系統は、前記リターン形圧力噴霧式バーナに液体燃料を供給する液体燃料供給配管と、同リターン形圧力噴霧式バーナからの液体燃料を液体燃料供給配管に戻す戻し液体燃料戻し配管とを含み、前記液体燃料戻し配管は、並列配置された第1の止め弁および第2の止め弁と、オリフィスを有する前記止め弁をバイパスするバイパス配管とを備え、 前記燃焼用空気系統は、燃焼用空気量を制御する流量制御手段を備えてなることを特徴とする。
【0009】
本発明の燃焼装置においては、オリフィスの口径が、第1の止め弁および第2の止め弁が閉とされた状態で、圧力噴霧式バーナ側の圧力が所定圧力となるようにされてなるのが好ましい。
【0010】
また、本発明の燃焼装置においては、液体燃料供給配管が、液体燃料加熱手段を備え、液体燃料戻し配管が、温度検出手段を備えてなるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガス燃料を断火させることなく液体燃料を確実に着火させることができるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0013】
本発明の燃焼制御方法は、1)廃食用油の燃焼を受け持つ圧力噴霧式バーナにおいて、2)廃食用油の目詰まりを許容でき、かつ、適正な燃焼および噴霧が確保される上部および下部限界圧力を例えば試験的に求めてその範囲を廃食用油燃焼領域とし、3)ガス燃料の適正な燃焼が確保される領域をガス燃焼領域として例えば試験的に求め、4)ガス燃料の着火に必要な量(以下、ガス燃料着火量という)をガス燃料燃焼領域内で最低空気量、つまりガス燃料着火空気量にて着火させ、5)そのガス燃料着火量の安定燃焼を確認し、6)空気量を、ガス燃料着火量が廃食用油燃焼領域の圧力下限域で安定燃焼する最大まで増加させ、つまり一次着火空気量まで増加させ、7)廃食用油をその最低噴霧圧力で噴霧して、つまり廃食用油の一次着火量を噴霧してそれを着火(一次着火)させ、8)空気量を混焼開始に必要な量、つまり二次着火空気量まで増加させ、9)廃食用油の噴霧圧力を、混焼の開始がなし得る量を噴霧できるまで、つまり二次着火量を噴霧できるまで昇圧させ、その圧力により廃食用油を噴霧して着火(二次着火)させ、10)その後、所望量の廃食用油と所望量のガス燃料との混焼を開始する、つまり定格運転を開始するものである。
【0014】
より具体的には、ガス燃料と液体燃料とを混焼させる場合、従来、ガス燃料の最低燃焼量、つまりガス燃料着火量(定格量の約20%)で着火させ、ついで液体燃料の最低燃焼量、つまり液体燃料着火量(定格量の約30%)で着火させることがなされている。その場合、後で着火させる液体燃料は、安定燃焼する空気量まで先に増加させた後に着火する必要がある。しかしながら、空気量を先に増加させた場合には、先に着火させたガス燃料の空気量を必要量の2倍程度にしなければ液体燃料が一度で着火しないところから、ガス燃料の空気量を必要量に抑えると、未燃の黒煙を発生させることになる。その逆に、液体燃料を一度に着火させるに必要な空気量を供給すると、ガス燃料はガス燃料燃焼領域をはずれるため、未燃のCOガスを発生させるばかりでなく、保炎もできずに断火する(図1の破線参照)。
【0015】
そこで、本発明の燃焼制御方法においては、ガス燃料を従来と同様にして着火させた後、まず空気量を一次着火空気量まで増加させた後に、廃食用油を廃食用油燃焼領域における圧力噴霧式バーナの噴霧ノズルの適正な噴霧圧力の下限値である約0.1MPaにおける噴霧量(つまり一次着火量、定格量の約20%)で噴霧させて着火(一次着火)させ、ついで空気量をさらに廃食用油の所定量(つまり二次着火量、定格量の約30%)の燃焼に必要な量、つまり二次着火空気量まで増加させた後、廃食用油の圧力を二次着火量の噴霧が確保できる約0.18MPaまで昇圧して安定・確実な着火(つまり二次着火)が得られるようにしている。すなわち、廃食用油を1個の噴霧ノズルを用いて廃食用油燃焼領域を適宜利用して着火を2段階に分割するとともにそれに応じた昇圧をして、ガス燃料の過剰空気によるリフト炎断火およびCOガスの発生、ならびに廃食用油の未燃による黒煙の発生などを回避するものである(図1の実線参照)。
【0016】
図2に、かかる燃焼制御方法が適用された燃焼装置の燃料系統および燃焼用空気系統を示す。
【0017】
燃料系統Fは、液体燃料である廃食用油を供給する廃食用油系統LFと、ガス燃料であるガス燃料を供給するガス燃料系統GFとから構成されている。
【0018】
廃食用油系統LFは、燃焼装置Aの圧力噴霧式バーナ10に廃食用油を供給する廃食用油供給配管FPと、圧力噴霧式バーナ10に供給された廃食用油の一部を前記供給配管FPに戻す廃食用油戻し配管RPとを含む。つまり、圧力噴霧式バーナ10は、リターン形とされている。これは、ノンリターン形に比して比較的ターンダウンが大きくとれることによる。
【0019】
廃食用油供給配管FPには、図2に示すように、廃食用油が供給される上流側から入口止弁41、ストレーナ42、空気分離器43、噴霧ポンプ(昇圧手段)44、油加熱器(液体燃料加熱手段)45および主電磁弁46がこの順で介装され、その先端部が燃焼装置Aの圧力噴霧式バーナ10に接続されている。圧力噴霧式バーナ10は、公知の圧力噴霧式バーナと同様に、防滴弁11および噴霧ノズル12を備えてなるものとされる。
【0020】
噴霧ポンプ44は例えばトロコイドギァポンプとされ、廃食用油の圧力を例えば最大2.5MPaまで昇圧する能力を有するものとされる。
【0021】
また、燃焼装置Aの圧力噴霧式バーナ10からの戻し配管RPは、ストレーナ42と空気分離器43との間に戻されて供給配管FPに接合され、廃食用油を再循環する。戻し配管RPをこの位置に戻すのは、戻し配管RP内の圧力変化などにより戻し配管RP内に発生した気泡を空気分離器43により分離させるためである。
【0022】
この戻し配管RPには、図2に示すように、上流側(圧力噴霧式バーナ10側)から並列配置された第1戻り電磁弁51および第2戻り電磁弁52と、逆止弁53とがこの順で介装され、この第1戻り電磁弁51の上流側には温度スイッチ(温度検出手段)54が設けられている。また、第1戻り電磁弁51および第2戻り電磁弁52が介装された箇所には再循環オリフィス55を有するパイパス配管BPが設けられている。再循環オリフィス55は、第1戻り電磁弁51および第2戻り電磁弁52が共に閉とされた状態で、圧力噴霧式バーナ10側の圧力が所定圧力、例えば1.8MPaとなるようその口径が調整されている。
【0023】
圧力噴霧式バーナ10、廃食用油供給配管FPおよび戻し配管RPがかかる構成とされていることにより、冷温水機などの停止中における廃食用油の逆流は、逆止弁53、主電磁弁46および防滴弁11による二重遮断方式で防止される。
【0024】
ガス系統GFは、ガスバーナ30にガス燃料を供給するガス燃料供給配管GPと、パイロットバーナPBにガス燃料を供給するパイロットガス供給配管PPとを含む。
【0025】
ガス供給配管GPは、ガスストレーナ61、主ガスユニット弁62などを備えた公知構造のものとされ、ガスストレーナ61と主ガスユニット弁62との間からパイロットガス供給配管PPが分岐されている。パイロットガス供給配管PPは、パイロットガスユニット弁63などを備えた公知構造のものとされている。
【0026】
燃焼用空気系統FAは、送風機71と、空気流量を制御する空気流量制御弁72とを含む。なお、送風機71の回転数を制御することにより、空気流量を制御するようにしてもよい。つまり、燃焼用空気系統FAは、空気流量を制御する空気流量制御手段を備えて成るものとされる。
【0027】
なお、図2中、符号IGは点火装置を示す。
【0028】
次に、かかる構成とされた燃焼装置Aの燃焼制御について説明する。なお、この燃焼制御は、図示しない制御装置の制御によりなされる。また、起動開始前の初期状態においては、主電磁弁46は閉とされ、第1戻り電磁弁51および第2戻り電磁弁52はそれぞれ開とされ、主ガスユニット弁62は閉とされ、パイロットガスユニット弁63は閉とされ、空気制御弁72は閉とされている。
【0029】
手順1:冷温水機の起動指示に応答して、送風機71を起動するとともに、空気制御弁72を開として燃焼炉内(明瞭には図示されていない)を掃気する。また、油加熱器45を起動して廃食用油の加熱を開始する。
【0030】
手順2:掃気完了後、パイロットガスユニット弁63を開としてパイロットバーナPBにガス燃料を供給し、点火装置IGによりパイロットバーナPBを点火する。
【0031】
手順3:パイロット火炎の確実な着火の確認後、主ガスユニット弁62を開とし、ガスバーナ30からガス燃料着火量を供給してガス燃料着火空気量にて着火・燃焼させる。
【0032】
手順4:ガス燃料着火量の確実な着火の確認後、空気量を一次着火空気量まで増加させる。
【0033】
手順5:噴霧ポンプ44を起動するとともに主電磁弁46を開として、廃食用油を所定圧力、例えば0.4MPaで循環させて供給配管FPおよび戻し配管RPを含む廃食用油系を暖機する。
【0034】
手順6:温度スイッチ54により廃食用油の温度が所定温度、例えば95℃に到達したことが検知されると、第1戻り電磁弁51を閉とする。これにより、供給配管FPおよび圧力噴霧式バーナ10の圧力が上昇し、その圧力が防滴弁11の最低通過圧力、例えば0.6MPaになると噴霧ノズル12から廃食用油の一次着火量が噴霧され、既に着火されているガスバーナ30により着火(一次着火)される。
【0035】
手順7:一次着火量の確実な着火の確認後、空気量を二次着火空気量まで増加させる。
【0036】
手順8:第2戻り電磁弁52を閉とする。これにより、圧力噴霧式バーナ10側の圧力が所定圧力、例えば1.8MPaとなり、噴霧量が二次着火量まで増加する。この二次着火量も同様にガスバーナ30により着火(二次着火)される。
手順9:二次着火量の安定燃焼が確認されると、パイロットバーナPBを消火する。これにより、廃食用油の着火作業が終了する。
【0037】
この後、制御装置の制御により負荷に応じた燃焼制御がなされる。例えば、定格運転がなされる。
【0038】
このように、本実施形態においては、廃食用油の噴霧圧力を2段階に調整して噴霧させているので、廃食用油の確実な着火がなされるとともに、ガスバーナの断火も回避することができる。そのため、廃食用油をガス燃料と混焼させることができる。
【0039】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではなく、種々改変が可能である。例えば、実施形態では液体燃料として廃食用油が例にあげられているが、液体燃料は廃食用油に限定されるものではなく、各種液体燃料とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、ガス燃料と液体燃料との混焼方式が適用される燃焼装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る着火方法の説明図である。
【図2】同着火方法に用いられる燃焼装置周りの系統図である。
【符号の説明】
【0042】
10 圧力噴霧式バーナ
11 防滴弁
12 噴霧ノズル
30 ガスバーナ
43 空気分離器
44 噴霧ポンプ(昇圧手段)
45 油加熱器
46 主電磁弁
51 第1戻り電磁弁
52 第2戻り電磁弁
53 逆止弁
54 温度スイッチ
55 再循環オリフィス
71 送風機
72 空気制御弁
A 燃焼装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料とガス燃料とを圧力噴霧式バーナが一体的に組み込まれたガスバーナを用いて混焼させる場合の燃焼制御方法であって、
ガス燃料着火量をガス燃料着火空気量で着火する手順と、
空気量を一次着火空気量まで増加させる手順と、
一次着火量の液体燃料を噴霧する手順と、
空気量を二次着火空気量まで増加させる手順と、
二次着火量の液体燃料を噴霧する手順
とを含んでいることを特徴とする燃焼制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の燃焼制御方法に適用される燃焼装置であって、
リターン形圧力噴霧式バーナと、該リターン形圧力噴霧式バーナに液体燃料を供給する液体燃料系統と、ガスバーナと、該ガスバーナにガス燃料を供給するガス燃料系統と、燃焼用空気を供給する燃焼用空気系統とを備え、
前記液体燃料系統は、前記リターン形圧力噴霧式バーナに液体燃料を供給する液体燃料供給配管と、同リターン形圧力噴霧式バーナからの液体燃料を液体燃料供給配管に戻す戻し液体燃料戻し配管とを含み、
前記液体燃料戻し配管は、並列配置された第1の止め弁および第2の止め弁と、オリフィスを有する前記止め弁をバイパスするバイパス配管とを備え、
前記燃焼用空気系統は、燃焼用空気量を制御する流量制御手段を備えてなる
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項3】
オリフィスの口径が、第1の止め弁および第2の止め弁が閉とされた状態で、圧力噴霧式バーナ側の圧力が所定圧力となるようにされてなることを特徴とする請求項2記載の燃焼装置。
【請求項4】
液体燃料供給配管が、液体燃料加熱手段を備え、
液体燃料戻し配管が、温度検出手段を備えてなる
ことを特徴とする請求項2記載の燃焼装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−300419(P2006−300419A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123120(P2005−123120)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000199887)川重冷熱工業株式会社 (59)
【出願人】(597167748)財団法人新産業創造研究機構 (20)
【出願人】(000106597)サンレー冷熱株式会社 (8)
【Fターム(参考)】