燃焼制御装置
【課題】燃焼切替時等において適切な燃焼を実現することができる燃焼制御装置を提供する。
【解決手段】ECUは、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差を算出し、空燃比偏差がリーン側にずれている場合に、空燃比偏差が遅角用閾値よりも小さいときは、1回目及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角し、更に空燃比偏差がプレ噴射用閾値よりも小さいときは、プレ燃料噴射の燃料噴射量を決定する。また、ECUは、空燃比偏差がリッチ側にずれている場合に、空燃比偏差が進角用閾値よりも大きいときは、1回目及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角する。そして、ECUは、必要に応じてプレ燃料噴射を実施するように各インジェクタ5を制御した後、1回目及び2回目のメイン燃料噴射を順次実施するように各インジェクタ5を制御する。
【解決手段】ECUは、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差を算出し、空燃比偏差がリーン側にずれている場合に、空燃比偏差が遅角用閾値よりも小さいときは、1回目及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角し、更に空燃比偏差がプレ噴射用閾値よりも小さいときは、プレ燃料噴射の燃料噴射量を決定する。また、ECUは、空燃比偏差がリッチ側にずれている場合に、空燃比偏差が進角用閾値よりも大きいときは、1回目及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角する。そして、ECUは、必要に応じてプレ燃料噴射を実施するように各インジェクタ5を制御した後、1回目及び2回目のメイン燃料噴射を順次実施するように各インジェクタ5を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予混合圧縮着火(PCCI)燃焼を行うエンジンの燃焼制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
予混合圧縮着火燃焼を行うエンジンの燃焼制御装置としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の燃焼制御装置は、低温予混合圧縮着火燃焼に入ってからの経過時間が所定値以下であるときは、通常燃焼から低温予混合圧縮着火燃焼に移行した直後の酸素濃度の高い状態にあると判断し、燃料のパイロット噴射を行うというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−90595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、酸素濃度が高い期間にパイロット噴射を行うことで、燃焼騒音を低減することは可能となる。しかし、パイロット噴射の追加だけでは、NOxの排出量増加を十分に抑制することはできない。また、上記従来技術では、予混合圧縮着火燃焼から通常燃焼への燃焼切替時等に発生しやすい失火等の不具合については、何ら考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、燃焼切替時等において適切な燃焼を実現することができる燃焼制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、予混合圧縮着火燃焼を行うエンジンの燃焼制御装置において、エンジンの燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、メイン燃料噴射を実施するように燃料噴射弁を制御するメイン噴射制御手段と、燃焼室内の空燃比を検出する空燃比検出手段と、目標空燃比と空燃比検出手段により得られた検出空燃比との偏差を算出する偏差算出手段とを備え、メイン噴射制御手段は、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を決定する噴射時期決定手段と、偏差算出手段により算出された目標空燃比と検出空燃比との偏差に応じて、噴射時期決定手段により決定されたメイン燃料噴射の燃料噴射時期を変更する噴射時期変更手段とを有することを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明の燃焼制御装置においては、燃焼室内の空燃比を検出し、目標空燃比と検出空燃比との偏差を算出し、その偏差に応じてメイン燃料噴射の燃料噴射時期を変更することにより、燃焼切替時等において適切な燃焼を実現することができる。例えば、通常燃焼から予混合圧縮着火燃焼への燃焼切替時には、燃焼室内の空燃比が予混合圧縮着火燃焼を行う目標空燃比に対してリーンとなる場合があるが、この場合にはメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角することにより、燃焼騒音を低減しつつ、NOxの排出量増加を十分に抑制することができる。また、予混合圧縮着火燃焼から通常燃焼への燃焼切替時には、燃焼室内の空燃比が通常燃焼を行う目標空燃比に対してリッチとなる場合があるが、この場合にはメイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角することにより、燃料と空気との予混合気の失火を抑制することができる。
【0008】
好ましくは、噴射時期変更手段は、目標空燃比と検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が予め決められた遅角用閾値の絶対値よりも大きいかどうかを判断し、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が遅角用閾値の絶対値よりも大きいと判断されると、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角する手段である。
【0009】
このように目標空燃比と検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が遅角用閾値の絶対値よりも大きいときは、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角することにより、燃料と空気との予混合気の早期着火が抑制される。これにより、通常燃焼から予混合圧縮着火燃焼への燃焼切替時に、燃焼騒音を低減しつつ、NOxの排出量増加を十分に抑制することができる。
【0010】
また、好ましくは、メイン燃料噴射を実施する前に補助的なプレ燃料噴射を実施するように燃料噴射弁を制御するプレ噴射制御手段を更に備え、プレ噴射制御手段は、目標空燃比と検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が予め決められたプレ噴射用閾値の絶対値よりも大きいかどうかを判断する手段を有し、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値がプレ噴射用閾値の絶対値よりも大きいと判断されたときに、プレ燃料噴射を実施するように燃料噴射弁を制御する。
【0011】
このように目標空燃比と検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値がプレ噴射用閾値の絶対値よりも大きいときに、補助的なプレ燃料噴射を実施することにより、通常燃焼から予混合圧縮着火燃焼への燃焼切替時に、燃焼騒音を低減することができる。また、燃料と空気との予混合気の失火に対する耐性を高くし、燃焼安定性を向上させることができる。
【0012】
このとき、プレ噴射用閾値の絶対値が遅角用閾値の絶対値よりも大きいことが好ましい。このような構成では、目標空燃比と検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、目標空燃比と空燃比との偏差の絶対値がプレ噴射用閾値の絶対値よりも大きいときは、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角すると共に、プレ燃料噴射を実施することになる。これにより、燃焼騒音を十分に低減しつつ、NOxの排出量増加を十分に抑制することができると共に、燃料と空気との予混合気の失火に対する耐性を高くし、燃焼安定性を向上させることができる。
【0013】
また、メイン噴射制御手段は、メイン燃料噴射を複数回に分けて実施するように燃料噴射弁を制御し、プレ噴射制御手段は、1回目のメイン燃料噴射の燃料噴射量を減量して、プレ燃料噴射の燃料噴射量を設定する手段を更に有することが好ましい。この場合には、プレ燃料噴射による燃焼と1回目のメイン燃料噴射による燃焼とが同時に行われる際に生じる燃焼騒音の増加を抑制することができる。
【0014】
さらに、好ましくは、噴射時期変更手段は、目標空燃比と検出空燃比との偏差がリッチ側にずれている場合に、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が予め決められた進角用閾値の絶対値よりも大きいかどうかを判断し、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が進角用閾値の絶対値よりも大きいと判断されると、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角する手段である。
【0015】
このように目標空燃比と検出空燃比との偏差がリッチ側にずれている場合に、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が進角用閾値の絶対値よりも大きいときは、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角することにより、燃料と空気との予混合気の着火時期の遅角が抑制される。これにより、予混合圧縮着火燃焼から通常燃焼への燃焼切替時に、予混合気の失火を抑制することができる。
【0016】
また、好ましくは、エンジンのクランク角を検出するクランク角検出手段を更に備え、偏差算出手段は、クランク角検出手段により検出されたクランク角が所定角度になった時点で、目標空燃比と検出空燃比との偏差を算出する。
【0017】
目標空燃比と検出空燃比との偏差の算出を時間同期で周期的に行うと、偏差の算出から燃料噴射までの期間が長く且つ一定でないため、偏差の算出精度が悪化する。そこで、エンジンのクランク角を検出し、クランク角が所定角度になった時点で、目標空燃比と検出空燃比との偏差を算出することにより、偏差の算出から燃料噴射までの期間が短く且つ一定となるため、偏差の算出精度が良くなる。これにより、燃焼切替等において、燃焼騒音の低減効果、NOxの排出量増加の抑制効果、失火の抑制効果を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、通常燃焼から予混合圧縮着火燃焼への燃焼切替時や、予混合圧縮着火燃焼から通常燃焼への燃焼切替時等において、適切な燃焼を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係わる燃焼制御装置の一実施形態を備えたディーゼルエンジンを示す概略構成図である。
【図2】図1に示したECUにより実行される処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図2に示した予混合圧縮着火燃焼制御の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図4】図3に示した偏差算出処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図5】噴射時期調整マップの一例を示すグラフである。
【図6】プレ噴射追加マップの一例を示すグラフである。
【図7】メイン燃料噴射の燃料噴射時期と燃焼騒音及び図示平均有効圧(Pi)変動率との関係の一例を示すグラフである。
【図8】プレ燃料噴射の実施時におけるメイン燃料噴射の燃料噴射時期と燃焼騒音、NOx排出濃度及び図示平均有効圧(Pi)変動率との関係の一例を示すグラフである。
【図9】EGR率を0%とした場合の熱発生率波形の一例を様々な条件で比較して示すグラフである。
【図10】プレ燃料噴射を実施した場合にEGR率を変更したときの熱発生率波形の一例を比較して示すグラフである。
【図11】メイン燃料噴射の燃料噴射時期と図示平均有効圧(Pi)変動率との関係の一例を示すグラフである。
【図12】燃焼モードが通常燃焼から予混合圧縮着火燃焼に切り替わるときの空燃比偏差の算出タイミングの一例を時間同期と角度同期とで比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係わる燃焼制御装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係わる燃焼制御装置の一実施形態を備えたディーゼルエンジンを示す概略構成図である。同図において、本実施形態に係るディーゼルエンジン1は、予混合圧縮着火(PCCI)を行う4気筒直列ディーゼルエンジンであり、コモンレール式の燃料噴射装置を備えている。ディーゼルエンジン1はエンジン本体2を備え、このエンジン本体2には4つのシリンダ3が設けられている。
【0022】
各シリンダ3には、燃焼室4内に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)5がそれぞれ配設されている。インジェクタ5は、噴射ノズル5aから放射状に燃料を噴射する。各インジェクタ5はコモンレール6に接続されており、コモンレール6に貯留された高圧燃料が各インジェクタ5に常時供給されている。
【0023】
エンジン本体2には、燃焼室4内に空気を吸入するための吸気通路7がインテークマニホールド8を介して接続されている。また、エンジン本体2には、燃焼後の排気ガスを排出するための排気通路9がエキゾーストマニホールド10を介して接続されている。
【0024】
吸気通路7には、上流側から下流側に向けてエアクリーナー11、ターボ過給機12のコンプレッサ13、インタークーラー14及びスロットルバルブ15が設けられている。スロットルバルブ15は、吸気通路7の通路面積を絞り、吸気通路7を通過する空気量を減少させると共に下流側の圧力を低下させる。排気通路9には、ターボ過給機12のタービン16及び触媒付きDPF17が設けられている。
【0025】
また、ディーゼルエンジン1は、燃焼後の排気ガスの一部を排気再循環ガス(EGRガス)として燃焼室4内に還流する排気再循環(EGR)装置18を備えている。EGR装置18は、吸気通路7とエキゾーストマニホールド10とを繋ぐように設けられ、EGRガスを還流するためのEGR通路19と、エキゾーストマニホールド10から吸気通路7へのEGRガスの還流量を調整するEGRバルブ20と、EGR通路19を通るEGRガスを冷却するEGRクーラ21と、このEGRクーラ21をバイパスするようにEGR通路19に接続されたバイパス通路22と、EGRガスの流路をEGRクーラ21側またはバイパス通路22側に切り替える切替弁23とを有している。
【0026】
上記の各インジェクタ5、スロットルバルブ15、EGRバルブ20及び切替弁23は、電子制御ユニット(ECU)24によって制御される。ECU24には、クランク角センサ25、アクセル開度センサ26及びエアーフローメータ27が接続されている。
【0027】
クランク角センサ25は、図示しないピストンが連結されるクランク軸の回転角度(クランク角)を検出することで、エンジン本体2の回転数(エンジン回転数)を算出可能とするためのセンサである。アクセル開度センサ26は、エンジン本体2の負荷(エンジン負荷)の代替値として、アクセルペダルの踏込み角(アクセル開度)を検出するセンサ(負荷検出手段)である。なお、コモンレール式燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジンでは、燃料噴射量を電子制御しており、エンジン負荷の代替値として燃料噴射量を用いることも可能である。エアーフローメータ27は、燃焼室4内に吸入される空気量を検出するセンサであり、吸気通路7に配置されている。
【0028】
ECU24は、クランク角センサ25、アクセル開度センサ26、エアーフローメータ27の検出信号を入力し、所定の処理を行い、インジェクタ5、スロットルバルブ15、EGRバルブ20及び切替弁23を制御する。
【0029】
ここで、インジェクタ5、スロットルバルブ15、排気再循環装置18、ECU24、クランク角センサ25、アクセル開度センサ26及びエアーフローメータ27は、本実施形態の燃焼制御装置28を構成している。このような燃焼制御装置28は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程という1サイクルにおいて、燃焼室4内に空気を吸入すると共に各インジェクタ5から燃焼室4内に燃料を複数回に分けて噴射(分割噴射)して、予混合圧縮着火燃焼を行うように制御する。
【0030】
図2は、ECU24により実行される処理手順を示すフローチャートである。本処理は、クランク角センサ25、アクセル開度センサ26及びエアーフローメータ27の検出信号に基づいてインジェクタ5を制御する処理である。
【0031】
同図において、まず燃焼モードが予混合圧縮着火燃焼モードであるかどうかを判断し(手順S101)、燃焼モードが予混合圧縮着火燃焼モードであるときは、予混合圧縮着火燃焼制御を実行し(手順S102)、燃焼モードが予混合圧縮着火燃焼モードでないときは、通常燃焼制御を実行する(手順S103)。
【0032】
図3は、上記の予混合圧縮着火燃焼制御の処理手順の詳細を示すフローチャートである。同図において、まずプレ噴射追加フラグFを0に初期設定する(手順S111)。続いて、クランク角センサ25により検出・算出されたエンジン回転数とアクセル開度センサ26により検出されたアクセル開度(エンジン負荷)とに基づいて、1回目のメイン燃料噴射及びこの後に実施される2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射量及び燃料噴射時期を決定する(手順S112)。
【0033】
続いて、アクセル開度センサ26により検出されたエンジン負荷が所定値以下であるかどうかを判断する(手順S113)。エンジン負荷が所定値以下であるときは、1回目のメイン燃料噴射の前に実施される補助的なプレ燃料噴射の燃料噴射量を決定する(手順S114)。この時の燃料噴射量は、例えばエンジン負荷に応じた量としても良いし、予め設定された一定量としても良い。そして、プレ噴射追加フラグFを1にセットする(手順S115)。エンジン負荷が所定値以下でないときは、手順S114,S115を実行しない。
【0034】
続いて、目標空燃比(目標A/F)と検出空燃比(検出A/F)との空燃比偏差(ΔA/F)を算出する(手順S116)。目標空燃比は、例えば予め設定されたマップを用いて、エンジン回転数及びアクセル開度等から得られる。この空燃比偏差算出処理手順の詳細を図4に示す。
【0035】
図4において、クランク角センサ25により検出されたクランク角が燃料噴射を行う角度よりも所定角度(例えば80度)だけ手前の偏差算出クランク角に達したかどうかを判断する(手順S151)。
【0036】
クランク角が偏差算出クランク角に達したときは、次気筒の燃料噴射量を算出する(手順S152)。次気筒の燃料噴射量は、例えば上記手順S112で決定された1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射量から算出する。続いて、エアーフローメータ27により検出された吸入空気量に基づいて、次気筒の空気量を算出する(手順S153)。そして、次気筒の空気量を次気筒の燃料噴射量で除することで、検出空燃比を算出する(手順S154)。続いて、次気筒における目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差(ΔA/F=目標A/F−検出A/F)を算出する(手順S155)。
【0037】
図3に戻り、上記の手順S116を実行した後、空燃比偏差がリーン側にずれている(ΔA/F<0)かどうかを判断する(手順S117)。空燃比偏差がリーン側にずれているときは、空燃比偏差が予め決められた遅角用閾値A0(図5参照)よりも小さいかどうか、つまり空燃比偏差の絶対値が遅角用閾値A0の絶対値よりも大きいかどうかを判断する(手順S118)。
【0038】
空燃比偏差が遅角用閾値A0よりも小さいときは、図5に示す噴射時期調整マップに従って、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角する(手順S119)。空燃比偏差が遅角用閾値A0よりも小さくないときは、手順S119を実行しない。
【0039】
噴射時期調整マップは、図5に示すように、空燃比偏差と燃料噴射時期との関係を表すマップである。噴射時期調整マップは、空燃比偏差がリーン側にずれている(ΔA/F<0)ときは、燃料噴射時期を遅角させ、空燃比偏差がリッチ側にずれている(ΔA/F>0)ときは、燃料噴射時期を進角させるように設定されている。具体的には、噴射時期調整マップは、空燃比偏差が遅角用閾値A0よりも小さいときに、空燃比偏差に応じて遅角量が比例的に大きくなり、空燃比偏差が遅角限界値A1よりも小さくなると、遅角量が一定になるように設定されている。また、噴射時期調整マップは、空燃比偏差が進角用閾値B0よりも大きときに、空燃比偏差に応じて進角量が比例的に大きくなり、空燃比偏差が進角限界値B1よりも大きくなると、進角量が一定になるように設定されている。
【0040】
続いて、空燃比偏差がプレ噴射用閾値C(図6参照)よりも小さいかどうか、つまり空燃比偏差の絶対値がプレ噴射用閾値Cの絶対値よりも大きいかどうかを判断する(手順S120)。プレ噴射用閾値Cは、遅角用閾値A0よりも小さな値である。従って、プレ噴射用閾値Cの絶対値は、遅角用閾値A0の絶対値よりも大きい。空燃比偏差がプレ噴射用閾値Cよりも小さいときは、プレ噴射追加フラグFが0であるかどうかを判断する(手順S121)。
【0041】
プレ噴射追加フラグFが0であるときは、図6に示すプレ噴射追加マップを従って、1回目のメイン燃料噴射の前に実施される補助的なプレ燃料噴射の燃料噴射量を決定する(手順S122)。プレ噴射追加マップは、図6に示すように、空燃比偏差と燃料噴射量との関係を表すマップである。プレ噴射追加マップは、空燃比偏差がプレ噴射用閾値Cよりも小さいときに、空燃比偏差に応じて燃料噴射量が段階的に大きくなるように設定されている。
【0042】
続いて、プレ噴射追加フラグFを1にセットする(手順S123)。そして、1回目のメイン燃料噴射の燃料噴射量からプレ燃料噴射の燃料噴射量分を減量する(手順S124)。
【0043】
手順S120で空燃比偏差がプレ噴射用閾値Cよりも小さくないと判断されたとき、手順S121でプレ噴射追加フラグFが0でなく1であると判断されたときは、手順S122〜S124を実行しない。
【0044】
手順S117で空燃比偏差がリーン側ではなくリッチ側にずれている(ΔA/F>0)と判断されたときは、空燃比偏差が進角用閾値B0(図5参照)よりも大きいかどうかを判断する(手順S125)。
【0045】
空燃比偏差が進角用閾値B0よりも大きいときは、図5に示す噴射時期調整マップに従って、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角する(手順S126)。噴射時期調整マップは、上述した通りである。空燃比偏差が進角用閾値B0よりも大きくないときは、手順S126を実行しない。
【0046】
手順S124または手順S126を実行した後、プレ噴射追加フラグFが1であるかどうかを判断する(手順S127)。プレ噴射追加フラグFが1であるときは、手順S114または手順S122で決定された燃料噴射量に従ってプレ燃料噴射を実施するように、各インジェクタ5を制御する(手順S128)。プレ噴射追加フラグFが1でなく0であるときは、手順S128を実行しない。
【0047】
続いて、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射を順次実施するように、各インジェクタ5を制御する(手順S129)。このとき、手順S119,S124,S126を実行していないときは、手順S112で決定された燃料噴射量及び燃料噴射時期に従って各メイン燃料噴射を実施する。手順S119を実行したときは、手順S119で補正された燃料噴射時期に従って各メイン燃料噴射を実施する。手順S124を実行したときは、手順S124で補正された燃料噴射量に従って1回目のメイン燃料噴射を実施すると共に、手順S112で決定された燃料噴射量に従って2回目のメイン燃料噴射を実施する。手順S126を実行したときは、手順S126で補正された燃料噴射時期に従って各メイン燃料噴射を実施する。
【0048】
以上において、ECU24の上記手順S112,S117〜S119,S125,S126,S129は、メイン燃料噴射を実施するように燃料噴射弁5を制御するメイン噴射制御手段を構成する。エアーフローメータ27及びECU24の上記手順S116の一部(上記手順S151〜S154)は、燃焼室4内の空燃比を検出する空燃比検出手段を構成する。ECU24の上記手順S116の他の一部(上記手順S155)は、目標空燃比と空燃比検出手段により得られた検出空燃比との偏差を算出する偏差算出手段を構成する。ECU24の上記手順S117,S120,S122〜S124,S127,S128は、メイン燃料噴射を実施する前に補助的なプレ燃料噴射を実施するように燃料噴射弁5を制御するプレ噴射制御手段を構成する。クランク角センサ25は、エンジンのクランク角を検出するクランク角検出手段を構成する。
【0049】
このとき、上記手順S112は、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を決定する噴射時期決定手段を構成し、S117〜S119,S125,S126は、偏差算出手段により算出された目標空燃比と検出空燃比との偏差に応じて、噴射時期決定手段により決定されたメイン燃料噴射の燃料噴射時期を変更する噴射時期変更手段を構成する。また、手順S117,S120は、目標空燃比と検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が予め決められたプレ噴射用閾値Cの絶対値よりも大きいかどうかを判断する手段を構成する。手順S124は、1回目のメイン燃料噴射の燃料噴射量を減量して、プレ燃料噴射の燃料噴射量を設定する手段を構成する。
【0050】
ところで、通常燃焼から予混合圧縮着火燃焼への燃焼切替時や、減速やシフトチェンジ等の燃料噴射カット時には、EGR還流遅れにより燃焼室4内に吸入される空気量が多くなり、燃焼室4内の空燃比がリーンとなる場合があるため、目標空燃比と検出空燃比とのズレが発生し、燃焼騒音やNOx排出量が増加する可能性がある。一方、予混合圧縮着火燃焼から通常燃焼への燃焼切替時や、加速の際の過給遅れ時には、逆に燃焼室4内の空燃比がリッチとなる場合があるため、目標空燃比と検出空燃比とのズレが発生し、失火が生じる可能性がある。
【0051】
これに対し本実施形態では、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差がリーン側にずれている場合に、空燃比偏差が遅角用閾値A0よりも小さいときは、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角するようにしたので、燃料と空気との予混合気の早期着火が抑制される。これにより、燃焼騒音を低減すると共に、NOxの排出量増加を抑制することができる。
【0052】
また、空燃比偏差がリーン側にずれている場合に、空燃比偏差がプレ噴射用閾値Cよりも小さいときは、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角すると共に、1回目のメイン燃料噴射の前にプレ燃料噴射を実施するようにしたので、上記と同様に、燃焼騒音を低減すると共に、NOxの排出量増加を抑制することができる。このとき、1回目のメイン燃料噴射の燃料噴射量をプレ燃料噴射の燃料噴射量分だけ減量することにより、プレ燃料噴射による燃焼と1回目のメイン燃料噴射による燃焼が同時に行われる際に発生する燃焼騒音の増大が抑制されるようになる。
【0053】
さらに、上記のプレ燃料噴射を実施することにより、失火耐性が向上するため、燃焼安定性が良くなることに加え、メイン燃料噴射の燃料噴射時期の遅角量を十分確保することができる。従って、燃焼騒音の低減効果及びNOxの排出量増加の抑制効果を高めることができる。
【0054】
また、空燃比偏差がリッチ側にずれている場合に、空燃比偏差が進角用閾値B0よりも大きいときは、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角するようにしたので、予混合気の着火時期の遅角が抑制される。これにより、失火を防止し、燃焼安定性を良くすることができる。
【0055】
図7は、メイン燃料噴射の燃料噴射時期と燃焼騒音及び図示平均有効圧(Pi)変動率との関係の一例を示したものである。図中、丸印P、四角印Q及び三角印Rは、EGR率つまり空燃比(A/F)が異なっている。
【0056】
図7(a)から分かるように、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角するに従い、燃焼騒音が低くなる。また、図7(b)から分かるように、メイン燃料噴射の燃料噴射時期をある程度まで遅角しても、Pi変動率は殆ど変わらない。
【0057】
図8は、プレ燃料噴射の実施時におけるメイン燃料噴射の燃料噴射時期と燃焼騒音、NOx排出濃度及び図示平均有効圧(Pi)変動率との関係の一例を示したものである。図中、菱形印Sは、プレ燃料噴射を実施せず、EGR率を0%としたときのデータを示し、丸印Pは、プレ燃料噴射を実施し、EGR率を0%としたときのデータを示し、三角印Qは、プレ燃料噴射を実施し、EGR率を33%としたときのデータを示し、四角印Rは、プレ燃料噴射を実施し、EGR率を42%としたときのデータを示している。
【0058】
図8(a)から分かるように、プレ燃料噴射を実施することで、燃焼騒音が低くなる。また、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角するに従い、燃焼騒音が低くなる。また、図8(b)から分かるように、EGR率が低い(A/Fがリーン側にある)ときは、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角するに従い、NOxの発生率が低くなる。また、図8(c)から分かるように、EGR率が低いときは、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角しても、Pi変動率は殆ど変わらず、燃焼安定性が確保されている。
【0059】
図9は、EGR率を0%とした場合の熱発生率波形の一例を様々な条件で比較して示したものである。図中、太実線Pは、プレ燃料噴射を実施せず、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角しないときの波形を示し、細実線Qは、プレ燃料噴射を実施し、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角しないときの波形を示し、破線Rは、プレ燃料噴射を実施し、更にメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角したときの波形を示している。
【0060】
図9から分かるように、プレ燃料噴射を実施することで、3段着火の状態となり、燃焼騒音が十分低くなる。また、プレ燃料噴射の実施に加え、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角することで、着火時期が遅れるため、それに対応して熱発生率波形の山の位置がずれている。
【0061】
図10は、プレ燃料噴射を実施した場合にEGR率を変更したときの熱発生率波形の一例を比較して示したものである。図中、太実線Pは、EGR率を0%としたときの波形を示し、破線Qは、EGR率を33%としたときの波形を示し、細実線Rは、EGR率を42%としたときの波形を示している。図10から分かるように、プレ燃料噴射を実施する場合には、EGR率が0から高くなる、つまり燃焼室内の空燃比がリッチ側となる(空気量が少なくなる)ほど、熱発生率波形(燃焼状態)が狙いの波形に近づいている。
【0062】
図11は、メイン燃料噴射の燃料噴射時期と図示平均有効圧(Pi)変動率との関係の一例を示したものである。図中、黒丸印Pは、EGR率が所定値であるときのデータを示し、白丸印Qは、EGR率が所定値よりも3%高いときのデータを示している。図11から分かるように、EGR率が高くなる、つまり燃焼室内の空燃比がリッチ側となると、燃焼安定領域が進角側にシフトしている(矢印参照)。
【0063】
ところで、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差の算出を、時間同期で周期的に行う場合には、図12に示すように、空燃比偏差の算出から燃料噴射までの期間が長く且つ一定でないため、空燃比偏差の算出精度が悪化する。このため、例えば燃焼モードが通常燃焼から予混合圧縮着火燃焼に切り替わったときに、以下の不具合が生じる。
【0064】
即ち、実際の空燃比が目標空燃比に近づいているために本来ならばプレ燃料噴射の実施が不要な状況で、プレ燃料噴射が実施されると、スモークの発生量が多くなる。また、検出空燃比が実際の空燃比より大きい(リーン)側にずれた状況で、空燃比偏差が算出されると、メイン燃料噴射の燃料噴射時期が遅角され過ぎて、燃焼が不安定となり失火する可能性もある。一方、検出空燃比が実際の空燃比より小さい(リッチ)側にずれた状況で、空燃比偏差が算出されると、メイン燃料噴射の燃料噴射時期の遅角量が不足し、燃料と空気との予混合気が早期着火して燃焼音が大きくなる。
【0065】
これに対し本実施形態では、クランク角センサ25により検出されたクランク角が燃料噴射を行う角度よりも所定角度だけ手前の偏差算出クランク角に達した時点で、つまりクランク角に同期して、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差を算出するようにしたので、空燃比偏差の算出から燃料噴射までの期間が短く且つ一定となる。従って、各気筒毎に燃料噴射直前で、空燃比偏差を高精度に算出することができる。これにより、各気筒毎の空気状態に応じて最適な燃料噴射補正(上記のメイン燃料噴射の燃料噴射時期の変更及びプレ燃料噴射の追加)を行うことができる。その結果、空燃比偏差の算出を時間同期で行うときの不具合を解消することが可能となる。
【0066】
以上のように本実施形態によれば、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差に応じて、メイン燃料噴射の燃料噴射時期の変更及びプレ燃料噴射の追加を行うので、燃焼切替時などに生じる燃焼騒音の増大、失火、エミッションの悪化を抑制することができる。また、空燃比偏差の算出精度が高いので、そのような抑制効果を安定化させることができる。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、エンジン負荷が所定値より低いためにプレ燃料噴射を実施する場合には、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差がプレ噴射用閾値Cよりも小さいときに、新たなプレ燃料噴射を実施しないようにしたが、特にそれには限られず、エンジン負荷が所定値より低いためにプレ燃料噴射を実施する場合に、空燃比偏差がプレ噴射用閾値Cよりも小さいときは、プレ燃料噴射の燃料噴射量を増やすようにしても良い。この場合には、エンジン負荷が極低負荷状態にあっても、プレ燃料噴射の燃料噴射量が増加するため、燃焼安定性が向上するようになる。
【0068】
また、上記実施形態では、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差以外の要因によるプレ燃料噴射の実施の要否として、エンジン負荷が所定値以下であるか否かを判断したが、これに限られず、プレ燃料噴射を実施するための既知の他の制御内容によってプレ燃料噴射の実施の要否を判断しても良い。
【0069】
また、エンジン負荷が所定値より低いときに、プレ燃料噴射を実施しないこととしても良い。この場合には、空燃比偏差がプレ噴射用閾値Cよりも小さいときには、エンジン負荷にかかわらずプレ燃料噴射を実施することとなる。
【0070】
さらに、上記実施形態では、空燃比偏差が遅角用閾値A0よりも小さいか否かを判断し、空燃比偏差が遅角用閾値A0よりも小さいときに、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角するように制御したが、遅角用閾値A0を設けずに、空燃比偏差に応じて1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角するようにしても良い。また、上記実施形態では、空燃比偏差が進角用閾値B0よりも大きいか否かを判断し、空燃比偏差が進角用閾値B0よりも大きいときに、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角するように制御したが、進角用閾値B0を設けずに、空燃比偏差に応じて1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角するようにしても良い。
【0071】
また、上記実施形態では、メイン燃料噴射を2回に分けて行うようにしたが、メイン燃料噴射を1回だけ行っても良いし、メイン燃料噴射を3回以上に分けて行うようにしても良い。
【0072】
さらに、上記実施形態では、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差を算出する際に、エアーフローメータ27により検出された吸入空気量に基づいて空気量を算出し、その空気量を燃料噴射量で除して検出空燃比を算出するようにしたが、特にそれに限られず、燃焼室4内の空燃比を直接検出する空燃比センサを設け、この空燃比センサにより検出された空燃比を検出空燃比としても良い。
【0073】
また、上記実施形態では、エアーフローメータ27により燃焼室4内への吸入空気量を検出するようにしたが、吸入空気量を含む空気状態を検出するセンサとしては、インテークマニホールド11に取り付けられる酸素濃度センサを使用することも可能である。
【0074】
さらに、上記実施形態では、EGRバルブ20によりEGRガスの流量を調整することで、燃焼室4内の空燃比を制御するようにしたが、空燃比の制御方法としては特にそれには限られず、例えばターボ過給機12の過給圧を調整するようにしても良い。
【0075】
また、本発明は、燃焼切替時、燃料噴射カット時、加速時以外にも、LPL(ロープレッシャーループ)EGRなどEGR還流遅れが生じるものであれば、適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…ディーゼルエンジン、4…燃焼室、5…インジェクタ(燃料噴射弁)、24…ECU(メイン噴射制御手段、空燃比検出手段、偏差算出手段、プレ噴射制御手段、噴射時期決定手段、噴射時期変更手段)、25…クランク角センサ(クランク角検出手段)、27…エアーフローメータ(空燃比検出手段)、28…燃焼制御装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、予混合圧縮着火(PCCI)燃焼を行うエンジンの燃焼制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
予混合圧縮着火燃焼を行うエンジンの燃焼制御装置としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の燃焼制御装置は、低温予混合圧縮着火燃焼に入ってからの経過時間が所定値以下であるときは、通常燃焼から低温予混合圧縮着火燃焼に移行した直後の酸素濃度の高い状態にあると判断し、燃料のパイロット噴射を行うというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−90595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、酸素濃度が高い期間にパイロット噴射を行うことで、燃焼騒音を低減することは可能となる。しかし、パイロット噴射の追加だけでは、NOxの排出量増加を十分に抑制することはできない。また、上記従来技術では、予混合圧縮着火燃焼から通常燃焼への燃焼切替時等に発生しやすい失火等の不具合については、何ら考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、燃焼切替時等において適切な燃焼を実現することができる燃焼制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、予混合圧縮着火燃焼を行うエンジンの燃焼制御装置において、エンジンの燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、メイン燃料噴射を実施するように燃料噴射弁を制御するメイン噴射制御手段と、燃焼室内の空燃比を検出する空燃比検出手段と、目標空燃比と空燃比検出手段により得られた検出空燃比との偏差を算出する偏差算出手段とを備え、メイン噴射制御手段は、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を決定する噴射時期決定手段と、偏差算出手段により算出された目標空燃比と検出空燃比との偏差に応じて、噴射時期決定手段により決定されたメイン燃料噴射の燃料噴射時期を変更する噴射時期変更手段とを有することを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明の燃焼制御装置においては、燃焼室内の空燃比を検出し、目標空燃比と検出空燃比との偏差を算出し、その偏差に応じてメイン燃料噴射の燃料噴射時期を変更することにより、燃焼切替時等において適切な燃焼を実現することができる。例えば、通常燃焼から予混合圧縮着火燃焼への燃焼切替時には、燃焼室内の空燃比が予混合圧縮着火燃焼を行う目標空燃比に対してリーンとなる場合があるが、この場合にはメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角することにより、燃焼騒音を低減しつつ、NOxの排出量増加を十分に抑制することができる。また、予混合圧縮着火燃焼から通常燃焼への燃焼切替時には、燃焼室内の空燃比が通常燃焼を行う目標空燃比に対してリッチとなる場合があるが、この場合にはメイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角することにより、燃料と空気との予混合気の失火を抑制することができる。
【0008】
好ましくは、噴射時期変更手段は、目標空燃比と検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が予め決められた遅角用閾値の絶対値よりも大きいかどうかを判断し、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が遅角用閾値の絶対値よりも大きいと判断されると、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角する手段である。
【0009】
このように目標空燃比と検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が遅角用閾値の絶対値よりも大きいときは、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角することにより、燃料と空気との予混合気の早期着火が抑制される。これにより、通常燃焼から予混合圧縮着火燃焼への燃焼切替時に、燃焼騒音を低減しつつ、NOxの排出量増加を十分に抑制することができる。
【0010】
また、好ましくは、メイン燃料噴射を実施する前に補助的なプレ燃料噴射を実施するように燃料噴射弁を制御するプレ噴射制御手段を更に備え、プレ噴射制御手段は、目標空燃比と検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が予め決められたプレ噴射用閾値の絶対値よりも大きいかどうかを判断する手段を有し、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値がプレ噴射用閾値の絶対値よりも大きいと判断されたときに、プレ燃料噴射を実施するように燃料噴射弁を制御する。
【0011】
このように目標空燃比と検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値がプレ噴射用閾値の絶対値よりも大きいときに、補助的なプレ燃料噴射を実施することにより、通常燃焼から予混合圧縮着火燃焼への燃焼切替時に、燃焼騒音を低減することができる。また、燃料と空気との予混合気の失火に対する耐性を高くし、燃焼安定性を向上させることができる。
【0012】
このとき、プレ噴射用閾値の絶対値が遅角用閾値の絶対値よりも大きいことが好ましい。このような構成では、目標空燃比と検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、目標空燃比と空燃比との偏差の絶対値がプレ噴射用閾値の絶対値よりも大きいときは、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角すると共に、プレ燃料噴射を実施することになる。これにより、燃焼騒音を十分に低減しつつ、NOxの排出量増加を十分に抑制することができると共に、燃料と空気との予混合気の失火に対する耐性を高くし、燃焼安定性を向上させることができる。
【0013】
また、メイン噴射制御手段は、メイン燃料噴射を複数回に分けて実施するように燃料噴射弁を制御し、プレ噴射制御手段は、1回目のメイン燃料噴射の燃料噴射量を減量して、プレ燃料噴射の燃料噴射量を設定する手段を更に有することが好ましい。この場合には、プレ燃料噴射による燃焼と1回目のメイン燃料噴射による燃焼とが同時に行われる際に生じる燃焼騒音の増加を抑制することができる。
【0014】
さらに、好ましくは、噴射時期変更手段は、目標空燃比と検出空燃比との偏差がリッチ側にずれている場合に、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が予め決められた進角用閾値の絶対値よりも大きいかどうかを判断し、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が進角用閾値の絶対値よりも大きいと判断されると、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角する手段である。
【0015】
このように目標空燃比と検出空燃比との偏差がリッチ側にずれている場合に、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が進角用閾値の絶対値よりも大きいときは、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角することにより、燃料と空気との予混合気の着火時期の遅角が抑制される。これにより、予混合圧縮着火燃焼から通常燃焼への燃焼切替時に、予混合気の失火を抑制することができる。
【0016】
また、好ましくは、エンジンのクランク角を検出するクランク角検出手段を更に備え、偏差算出手段は、クランク角検出手段により検出されたクランク角が所定角度になった時点で、目標空燃比と検出空燃比との偏差を算出する。
【0017】
目標空燃比と検出空燃比との偏差の算出を時間同期で周期的に行うと、偏差の算出から燃料噴射までの期間が長く且つ一定でないため、偏差の算出精度が悪化する。そこで、エンジンのクランク角を検出し、クランク角が所定角度になった時点で、目標空燃比と検出空燃比との偏差を算出することにより、偏差の算出から燃料噴射までの期間が短く且つ一定となるため、偏差の算出精度が良くなる。これにより、燃焼切替等において、燃焼騒音の低減効果、NOxの排出量増加の抑制効果、失火の抑制効果を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、通常燃焼から予混合圧縮着火燃焼への燃焼切替時や、予混合圧縮着火燃焼から通常燃焼への燃焼切替時等において、適切な燃焼を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係わる燃焼制御装置の一実施形態を備えたディーゼルエンジンを示す概略構成図である。
【図2】図1に示したECUにより実行される処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図2に示した予混合圧縮着火燃焼制御の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図4】図3に示した偏差算出処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図5】噴射時期調整マップの一例を示すグラフである。
【図6】プレ噴射追加マップの一例を示すグラフである。
【図7】メイン燃料噴射の燃料噴射時期と燃焼騒音及び図示平均有効圧(Pi)変動率との関係の一例を示すグラフである。
【図8】プレ燃料噴射の実施時におけるメイン燃料噴射の燃料噴射時期と燃焼騒音、NOx排出濃度及び図示平均有効圧(Pi)変動率との関係の一例を示すグラフである。
【図9】EGR率を0%とした場合の熱発生率波形の一例を様々な条件で比較して示すグラフである。
【図10】プレ燃料噴射を実施した場合にEGR率を変更したときの熱発生率波形の一例を比較して示すグラフである。
【図11】メイン燃料噴射の燃料噴射時期と図示平均有効圧(Pi)変動率との関係の一例を示すグラフである。
【図12】燃焼モードが通常燃焼から予混合圧縮着火燃焼に切り替わるときの空燃比偏差の算出タイミングの一例を時間同期と角度同期とで比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係わる燃焼制御装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係わる燃焼制御装置の一実施形態を備えたディーゼルエンジンを示す概略構成図である。同図において、本実施形態に係るディーゼルエンジン1は、予混合圧縮着火(PCCI)を行う4気筒直列ディーゼルエンジンであり、コモンレール式の燃料噴射装置を備えている。ディーゼルエンジン1はエンジン本体2を備え、このエンジン本体2には4つのシリンダ3が設けられている。
【0022】
各シリンダ3には、燃焼室4内に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)5がそれぞれ配設されている。インジェクタ5は、噴射ノズル5aから放射状に燃料を噴射する。各インジェクタ5はコモンレール6に接続されており、コモンレール6に貯留された高圧燃料が各インジェクタ5に常時供給されている。
【0023】
エンジン本体2には、燃焼室4内に空気を吸入するための吸気通路7がインテークマニホールド8を介して接続されている。また、エンジン本体2には、燃焼後の排気ガスを排出するための排気通路9がエキゾーストマニホールド10を介して接続されている。
【0024】
吸気通路7には、上流側から下流側に向けてエアクリーナー11、ターボ過給機12のコンプレッサ13、インタークーラー14及びスロットルバルブ15が設けられている。スロットルバルブ15は、吸気通路7の通路面積を絞り、吸気通路7を通過する空気量を減少させると共に下流側の圧力を低下させる。排気通路9には、ターボ過給機12のタービン16及び触媒付きDPF17が設けられている。
【0025】
また、ディーゼルエンジン1は、燃焼後の排気ガスの一部を排気再循環ガス(EGRガス)として燃焼室4内に還流する排気再循環(EGR)装置18を備えている。EGR装置18は、吸気通路7とエキゾーストマニホールド10とを繋ぐように設けられ、EGRガスを還流するためのEGR通路19と、エキゾーストマニホールド10から吸気通路7へのEGRガスの還流量を調整するEGRバルブ20と、EGR通路19を通るEGRガスを冷却するEGRクーラ21と、このEGRクーラ21をバイパスするようにEGR通路19に接続されたバイパス通路22と、EGRガスの流路をEGRクーラ21側またはバイパス通路22側に切り替える切替弁23とを有している。
【0026】
上記の各インジェクタ5、スロットルバルブ15、EGRバルブ20及び切替弁23は、電子制御ユニット(ECU)24によって制御される。ECU24には、クランク角センサ25、アクセル開度センサ26及びエアーフローメータ27が接続されている。
【0027】
クランク角センサ25は、図示しないピストンが連結されるクランク軸の回転角度(クランク角)を検出することで、エンジン本体2の回転数(エンジン回転数)を算出可能とするためのセンサである。アクセル開度センサ26は、エンジン本体2の負荷(エンジン負荷)の代替値として、アクセルペダルの踏込み角(アクセル開度)を検出するセンサ(負荷検出手段)である。なお、コモンレール式燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジンでは、燃料噴射量を電子制御しており、エンジン負荷の代替値として燃料噴射量を用いることも可能である。エアーフローメータ27は、燃焼室4内に吸入される空気量を検出するセンサであり、吸気通路7に配置されている。
【0028】
ECU24は、クランク角センサ25、アクセル開度センサ26、エアーフローメータ27の検出信号を入力し、所定の処理を行い、インジェクタ5、スロットルバルブ15、EGRバルブ20及び切替弁23を制御する。
【0029】
ここで、インジェクタ5、スロットルバルブ15、排気再循環装置18、ECU24、クランク角センサ25、アクセル開度センサ26及びエアーフローメータ27は、本実施形態の燃焼制御装置28を構成している。このような燃焼制御装置28は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程という1サイクルにおいて、燃焼室4内に空気を吸入すると共に各インジェクタ5から燃焼室4内に燃料を複数回に分けて噴射(分割噴射)して、予混合圧縮着火燃焼を行うように制御する。
【0030】
図2は、ECU24により実行される処理手順を示すフローチャートである。本処理は、クランク角センサ25、アクセル開度センサ26及びエアーフローメータ27の検出信号に基づいてインジェクタ5を制御する処理である。
【0031】
同図において、まず燃焼モードが予混合圧縮着火燃焼モードであるかどうかを判断し(手順S101)、燃焼モードが予混合圧縮着火燃焼モードであるときは、予混合圧縮着火燃焼制御を実行し(手順S102)、燃焼モードが予混合圧縮着火燃焼モードでないときは、通常燃焼制御を実行する(手順S103)。
【0032】
図3は、上記の予混合圧縮着火燃焼制御の処理手順の詳細を示すフローチャートである。同図において、まずプレ噴射追加フラグFを0に初期設定する(手順S111)。続いて、クランク角センサ25により検出・算出されたエンジン回転数とアクセル開度センサ26により検出されたアクセル開度(エンジン負荷)とに基づいて、1回目のメイン燃料噴射及びこの後に実施される2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射量及び燃料噴射時期を決定する(手順S112)。
【0033】
続いて、アクセル開度センサ26により検出されたエンジン負荷が所定値以下であるかどうかを判断する(手順S113)。エンジン負荷が所定値以下であるときは、1回目のメイン燃料噴射の前に実施される補助的なプレ燃料噴射の燃料噴射量を決定する(手順S114)。この時の燃料噴射量は、例えばエンジン負荷に応じた量としても良いし、予め設定された一定量としても良い。そして、プレ噴射追加フラグFを1にセットする(手順S115)。エンジン負荷が所定値以下でないときは、手順S114,S115を実行しない。
【0034】
続いて、目標空燃比(目標A/F)と検出空燃比(検出A/F)との空燃比偏差(ΔA/F)を算出する(手順S116)。目標空燃比は、例えば予め設定されたマップを用いて、エンジン回転数及びアクセル開度等から得られる。この空燃比偏差算出処理手順の詳細を図4に示す。
【0035】
図4において、クランク角センサ25により検出されたクランク角が燃料噴射を行う角度よりも所定角度(例えば80度)だけ手前の偏差算出クランク角に達したかどうかを判断する(手順S151)。
【0036】
クランク角が偏差算出クランク角に達したときは、次気筒の燃料噴射量を算出する(手順S152)。次気筒の燃料噴射量は、例えば上記手順S112で決定された1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射量から算出する。続いて、エアーフローメータ27により検出された吸入空気量に基づいて、次気筒の空気量を算出する(手順S153)。そして、次気筒の空気量を次気筒の燃料噴射量で除することで、検出空燃比を算出する(手順S154)。続いて、次気筒における目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差(ΔA/F=目標A/F−検出A/F)を算出する(手順S155)。
【0037】
図3に戻り、上記の手順S116を実行した後、空燃比偏差がリーン側にずれている(ΔA/F<0)かどうかを判断する(手順S117)。空燃比偏差がリーン側にずれているときは、空燃比偏差が予め決められた遅角用閾値A0(図5参照)よりも小さいかどうか、つまり空燃比偏差の絶対値が遅角用閾値A0の絶対値よりも大きいかどうかを判断する(手順S118)。
【0038】
空燃比偏差が遅角用閾値A0よりも小さいときは、図5に示す噴射時期調整マップに従って、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角する(手順S119)。空燃比偏差が遅角用閾値A0よりも小さくないときは、手順S119を実行しない。
【0039】
噴射時期調整マップは、図5に示すように、空燃比偏差と燃料噴射時期との関係を表すマップである。噴射時期調整マップは、空燃比偏差がリーン側にずれている(ΔA/F<0)ときは、燃料噴射時期を遅角させ、空燃比偏差がリッチ側にずれている(ΔA/F>0)ときは、燃料噴射時期を進角させるように設定されている。具体的には、噴射時期調整マップは、空燃比偏差が遅角用閾値A0よりも小さいときに、空燃比偏差に応じて遅角量が比例的に大きくなり、空燃比偏差が遅角限界値A1よりも小さくなると、遅角量が一定になるように設定されている。また、噴射時期調整マップは、空燃比偏差が進角用閾値B0よりも大きときに、空燃比偏差に応じて進角量が比例的に大きくなり、空燃比偏差が進角限界値B1よりも大きくなると、進角量が一定になるように設定されている。
【0040】
続いて、空燃比偏差がプレ噴射用閾値C(図6参照)よりも小さいかどうか、つまり空燃比偏差の絶対値がプレ噴射用閾値Cの絶対値よりも大きいかどうかを判断する(手順S120)。プレ噴射用閾値Cは、遅角用閾値A0よりも小さな値である。従って、プレ噴射用閾値Cの絶対値は、遅角用閾値A0の絶対値よりも大きい。空燃比偏差がプレ噴射用閾値Cよりも小さいときは、プレ噴射追加フラグFが0であるかどうかを判断する(手順S121)。
【0041】
プレ噴射追加フラグFが0であるときは、図6に示すプレ噴射追加マップを従って、1回目のメイン燃料噴射の前に実施される補助的なプレ燃料噴射の燃料噴射量を決定する(手順S122)。プレ噴射追加マップは、図6に示すように、空燃比偏差と燃料噴射量との関係を表すマップである。プレ噴射追加マップは、空燃比偏差がプレ噴射用閾値Cよりも小さいときに、空燃比偏差に応じて燃料噴射量が段階的に大きくなるように設定されている。
【0042】
続いて、プレ噴射追加フラグFを1にセットする(手順S123)。そして、1回目のメイン燃料噴射の燃料噴射量からプレ燃料噴射の燃料噴射量分を減量する(手順S124)。
【0043】
手順S120で空燃比偏差がプレ噴射用閾値Cよりも小さくないと判断されたとき、手順S121でプレ噴射追加フラグFが0でなく1であると判断されたときは、手順S122〜S124を実行しない。
【0044】
手順S117で空燃比偏差がリーン側ではなくリッチ側にずれている(ΔA/F>0)と判断されたときは、空燃比偏差が進角用閾値B0(図5参照)よりも大きいかどうかを判断する(手順S125)。
【0045】
空燃比偏差が進角用閾値B0よりも大きいときは、図5に示す噴射時期調整マップに従って、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角する(手順S126)。噴射時期調整マップは、上述した通りである。空燃比偏差が進角用閾値B0よりも大きくないときは、手順S126を実行しない。
【0046】
手順S124または手順S126を実行した後、プレ噴射追加フラグFが1であるかどうかを判断する(手順S127)。プレ噴射追加フラグFが1であるときは、手順S114または手順S122で決定された燃料噴射量に従ってプレ燃料噴射を実施するように、各インジェクタ5を制御する(手順S128)。プレ噴射追加フラグFが1でなく0であるときは、手順S128を実行しない。
【0047】
続いて、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射を順次実施するように、各インジェクタ5を制御する(手順S129)。このとき、手順S119,S124,S126を実行していないときは、手順S112で決定された燃料噴射量及び燃料噴射時期に従って各メイン燃料噴射を実施する。手順S119を実行したときは、手順S119で補正された燃料噴射時期に従って各メイン燃料噴射を実施する。手順S124を実行したときは、手順S124で補正された燃料噴射量に従って1回目のメイン燃料噴射を実施すると共に、手順S112で決定された燃料噴射量に従って2回目のメイン燃料噴射を実施する。手順S126を実行したときは、手順S126で補正された燃料噴射時期に従って各メイン燃料噴射を実施する。
【0048】
以上において、ECU24の上記手順S112,S117〜S119,S125,S126,S129は、メイン燃料噴射を実施するように燃料噴射弁5を制御するメイン噴射制御手段を構成する。エアーフローメータ27及びECU24の上記手順S116の一部(上記手順S151〜S154)は、燃焼室4内の空燃比を検出する空燃比検出手段を構成する。ECU24の上記手順S116の他の一部(上記手順S155)は、目標空燃比と空燃比検出手段により得られた検出空燃比との偏差を算出する偏差算出手段を構成する。ECU24の上記手順S117,S120,S122〜S124,S127,S128は、メイン燃料噴射を実施する前に補助的なプレ燃料噴射を実施するように燃料噴射弁5を制御するプレ噴射制御手段を構成する。クランク角センサ25は、エンジンのクランク角を検出するクランク角検出手段を構成する。
【0049】
このとき、上記手順S112は、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を決定する噴射時期決定手段を構成し、S117〜S119,S125,S126は、偏差算出手段により算出された目標空燃比と検出空燃比との偏差に応じて、噴射時期決定手段により決定されたメイン燃料噴射の燃料噴射時期を変更する噴射時期変更手段を構成する。また、手順S117,S120は、目標空燃比と検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、目標空燃比と検出空燃比との偏差の絶対値が予め決められたプレ噴射用閾値Cの絶対値よりも大きいかどうかを判断する手段を構成する。手順S124は、1回目のメイン燃料噴射の燃料噴射量を減量して、プレ燃料噴射の燃料噴射量を設定する手段を構成する。
【0050】
ところで、通常燃焼から予混合圧縮着火燃焼への燃焼切替時や、減速やシフトチェンジ等の燃料噴射カット時には、EGR還流遅れにより燃焼室4内に吸入される空気量が多くなり、燃焼室4内の空燃比がリーンとなる場合があるため、目標空燃比と検出空燃比とのズレが発生し、燃焼騒音やNOx排出量が増加する可能性がある。一方、予混合圧縮着火燃焼から通常燃焼への燃焼切替時や、加速の際の過給遅れ時には、逆に燃焼室4内の空燃比がリッチとなる場合があるため、目標空燃比と検出空燃比とのズレが発生し、失火が生じる可能性がある。
【0051】
これに対し本実施形態では、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差がリーン側にずれている場合に、空燃比偏差が遅角用閾値A0よりも小さいときは、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角するようにしたので、燃料と空気との予混合気の早期着火が抑制される。これにより、燃焼騒音を低減すると共に、NOxの排出量増加を抑制することができる。
【0052】
また、空燃比偏差がリーン側にずれている場合に、空燃比偏差がプレ噴射用閾値Cよりも小さいときは、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角すると共に、1回目のメイン燃料噴射の前にプレ燃料噴射を実施するようにしたので、上記と同様に、燃焼騒音を低減すると共に、NOxの排出量増加を抑制することができる。このとき、1回目のメイン燃料噴射の燃料噴射量をプレ燃料噴射の燃料噴射量分だけ減量することにより、プレ燃料噴射による燃焼と1回目のメイン燃料噴射による燃焼が同時に行われる際に発生する燃焼騒音の増大が抑制されるようになる。
【0053】
さらに、上記のプレ燃料噴射を実施することにより、失火耐性が向上するため、燃焼安定性が良くなることに加え、メイン燃料噴射の燃料噴射時期の遅角量を十分確保することができる。従って、燃焼騒音の低減効果及びNOxの排出量増加の抑制効果を高めることができる。
【0054】
また、空燃比偏差がリッチ側にずれている場合に、空燃比偏差が進角用閾値B0よりも大きいときは、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角するようにしたので、予混合気の着火時期の遅角が抑制される。これにより、失火を防止し、燃焼安定性を良くすることができる。
【0055】
図7は、メイン燃料噴射の燃料噴射時期と燃焼騒音及び図示平均有効圧(Pi)変動率との関係の一例を示したものである。図中、丸印P、四角印Q及び三角印Rは、EGR率つまり空燃比(A/F)が異なっている。
【0056】
図7(a)から分かるように、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角するに従い、燃焼騒音が低くなる。また、図7(b)から分かるように、メイン燃料噴射の燃料噴射時期をある程度まで遅角しても、Pi変動率は殆ど変わらない。
【0057】
図8は、プレ燃料噴射の実施時におけるメイン燃料噴射の燃料噴射時期と燃焼騒音、NOx排出濃度及び図示平均有効圧(Pi)変動率との関係の一例を示したものである。図中、菱形印Sは、プレ燃料噴射を実施せず、EGR率を0%としたときのデータを示し、丸印Pは、プレ燃料噴射を実施し、EGR率を0%としたときのデータを示し、三角印Qは、プレ燃料噴射を実施し、EGR率を33%としたときのデータを示し、四角印Rは、プレ燃料噴射を実施し、EGR率を42%としたときのデータを示している。
【0058】
図8(a)から分かるように、プレ燃料噴射を実施することで、燃焼騒音が低くなる。また、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角するに従い、燃焼騒音が低くなる。また、図8(b)から分かるように、EGR率が低い(A/Fがリーン側にある)ときは、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角するに従い、NOxの発生率が低くなる。また、図8(c)から分かるように、EGR率が低いときは、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角しても、Pi変動率は殆ど変わらず、燃焼安定性が確保されている。
【0059】
図9は、EGR率を0%とした場合の熱発生率波形の一例を様々な条件で比較して示したものである。図中、太実線Pは、プレ燃料噴射を実施せず、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角しないときの波形を示し、細実線Qは、プレ燃料噴射を実施し、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角しないときの波形を示し、破線Rは、プレ燃料噴射を実施し、更にメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角したときの波形を示している。
【0060】
図9から分かるように、プレ燃料噴射を実施することで、3段着火の状態となり、燃焼騒音が十分低くなる。また、プレ燃料噴射の実施に加え、メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角することで、着火時期が遅れるため、それに対応して熱発生率波形の山の位置がずれている。
【0061】
図10は、プレ燃料噴射を実施した場合にEGR率を変更したときの熱発生率波形の一例を比較して示したものである。図中、太実線Pは、EGR率を0%としたときの波形を示し、破線Qは、EGR率を33%としたときの波形を示し、細実線Rは、EGR率を42%としたときの波形を示している。図10から分かるように、プレ燃料噴射を実施する場合には、EGR率が0から高くなる、つまり燃焼室内の空燃比がリッチ側となる(空気量が少なくなる)ほど、熱発生率波形(燃焼状態)が狙いの波形に近づいている。
【0062】
図11は、メイン燃料噴射の燃料噴射時期と図示平均有効圧(Pi)変動率との関係の一例を示したものである。図中、黒丸印Pは、EGR率が所定値であるときのデータを示し、白丸印Qは、EGR率が所定値よりも3%高いときのデータを示している。図11から分かるように、EGR率が高くなる、つまり燃焼室内の空燃比がリッチ側となると、燃焼安定領域が進角側にシフトしている(矢印参照)。
【0063】
ところで、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差の算出を、時間同期で周期的に行う場合には、図12に示すように、空燃比偏差の算出から燃料噴射までの期間が長く且つ一定でないため、空燃比偏差の算出精度が悪化する。このため、例えば燃焼モードが通常燃焼から予混合圧縮着火燃焼に切り替わったときに、以下の不具合が生じる。
【0064】
即ち、実際の空燃比が目標空燃比に近づいているために本来ならばプレ燃料噴射の実施が不要な状況で、プレ燃料噴射が実施されると、スモークの発生量が多くなる。また、検出空燃比が実際の空燃比より大きい(リーン)側にずれた状況で、空燃比偏差が算出されると、メイン燃料噴射の燃料噴射時期が遅角され過ぎて、燃焼が不安定となり失火する可能性もある。一方、検出空燃比が実際の空燃比より小さい(リッチ)側にずれた状況で、空燃比偏差が算出されると、メイン燃料噴射の燃料噴射時期の遅角量が不足し、燃料と空気との予混合気が早期着火して燃焼音が大きくなる。
【0065】
これに対し本実施形態では、クランク角センサ25により検出されたクランク角が燃料噴射を行う角度よりも所定角度だけ手前の偏差算出クランク角に達した時点で、つまりクランク角に同期して、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差を算出するようにしたので、空燃比偏差の算出から燃料噴射までの期間が短く且つ一定となる。従って、各気筒毎に燃料噴射直前で、空燃比偏差を高精度に算出することができる。これにより、各気筒毎の空気状態に応じて最適な燃料噴射補正(上記のメイン燃料噴射の燃料噴射時期の変更及びプレ燃料噴射の追加)を行うことができる。その結果、空燃比偏差の算出を時間同期で行うときの不具合を解消することが可能となる。
【0066】
以上のように本実施形態によれば、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差に応じて、メイン燃料噴射の燃料噴射時期の変更及びプレ燃料噴射の追加を行うので、燃焼切替時などに生じる燃焼騒音の増大、失火、エミッションの悪化を抑制することができる。また、空燃比偏差の算出精度が高いので、そのような抑制効果を安定化させることができる。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、エンジン負荷が所定値より低いためにプレ燃料噴射を実施する場合には、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差がプレ噴射用閾値Cよりも小さいときに、新たなプレ燃料噴射を実施しないようにしたが、特にそれには限られず、エンジン負荷が所定値より低いためにプレ燃料噴射を実施する場合に、空燃比偏差がプレ噴射用閾値Cよりも小さいときは、プレ燃料噴射の燃料噴射量を増やすようにしても良い。この場合には、エンジン負荷が極低負荷状態にあっても、プレ燃料噴射の燃料噴射量が増加するため、燃焼安定性が向上するようになる。
【0068】
また、上記実施形態では、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差以外の要因によるプレ燃料噴射の実施の要否として、エンジン負荷が所定値以下であるか否かを判断したが、これに限られず、プレ燃料噴射を実施するための既知の他の制御内容によってプレ燃料噴射の実施の要否を判断しても良い。
【0069】
また、エンジン負荷が所定値より低いときに、プレ燃料噴射を実施しないこととしても良い。この場合には、空燃比偏差がプレ噴射用閾値Cよりも小さいときには、エンジン負荷にかかわらずプレ燃料噴射を実施することとなる。
【0070】
さらに、上記実施形態では、空燃比偏差が遅角用閾値A0よりも小さいか否かを判断し、空燃比偏差が遅角用閾値A0よりも小さいときに、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角するように制御したが、遅角用閾値A0を設けずに、空燃比偏差に応じて1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角するようにしても良い。また、上記実施形態では、空燃比偏差が進角用閾値B0よりも大きいか否かを判断し、空燃比偏差が進角用閾値B0よりも大きいときに、1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角するように制御したが、進角用閾値B0を設けずに、空燃比偏差に応じて1回目のメイン燃料噴射及び2回目のメイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角するようにしても良い。
【0071】
また、上記実施形態では、メイン燃料噴射を2回に分けて行うようにしたが、メイン燃料噴射を1回だけ行っても良いし、メイン燃料噴射を3回以上に分けて行うようにしても良い。
【0072】
さらに、上記実施形態では、目標空燃比と検出空燃比との空燃比偏差を算出する際に、エアーフローメータ27により検出された吸入空気量に基づいて空気量を算出し、その空気量を燃料噴射量で除して検出空燃比を算出するようにしたが、特にそれに限られず、燃焼室4内の空燃比を直接検出する空燃比センサを設け、この空燃比センサにより検出された空燃比を検出空燃比としても良い。
【0073】
また、上記実施形態では、エアーフローメータ27により燃焼室4内への吸入空気量を検出するようにしたが、吸入空気量を含む空気状態を検出するセンサとしては、インテークマニホールド11に取り付けられる酸素濃度センサを使用することも可能である。
【0074】
さらに、上記実施形態では、EGRバルブ20によりEGRガスの流量を調整することで、燃焼室4内の空燃比を制御するようにしたが、空燃比の制御方法としては特にそれには限られず、例えばターボ過給機12の過給圧を調整するようにしても良い。
【0075】
また、本発明は、燃焼切替時、燃料噴射カット時、加速時以外にも、LPL(ロープレッシャーループ)EGRなどEGR還流遅れが生じるものであれば、適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…ディーゼルエンジン、4…燃焼室、5…インジェクタ(燃料噴射弁)、24…ECU(メイン噴射制御手段、空燃比検出手段、偏差算出手段、プレ噴射制御手段、噴射時期決定手段、噴射時期変更手段)、25…クランク角センサ(クランク角検出手段)、27…エアーフローメータ(空燃比検出手段)、28…燃焼制御装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予混合圧縮着火燃焼を行うエンジンの燃焼制御装置において、
前記エンジンの燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
メイン燃料噴射を実施するように前記燃料噴射弁を制御するメイン噴射制御手段と、
前記燃焼室内の空燃比を検出する空燃比検出手段と、
目標空燃比と前記空燃比検出手段により得られた検出空燃比との偏差を算出する偏差算出手段とを備え、
前記メイン噴射制御手段は、前記メイン燃料噴射の燃料噴射時期を決定する噴射時期決定手段と、前記偏差算出手段により算出された前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差に応じて、前記噴射時期決定手段により決定された前記メイン燃料噴射の燃料噴射時期を変更する噴射時期変更手段とを有することを特徴とする燃焼制御装置。
【請求項2】
前記噴射時期変更手段は、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差の絶対値が予め決められた遅角用閾値の絶対値よりも大きいかどうかを判断し、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差の絶対値が前記遅角用閾値の絶対値よりも大きいと判断されると、前記メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角する手段であることを特徴とする請求項1記載の燃焼制御装置。
【請求項3】
前記メイン燃料噴射を実施する前に補助的なプレ燃料噴射を実施するように前記燃料噴射弁を制御するプレ噴射制御手段を更に備え、
前記プレ噴射制御手段は、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差の絶対値が予め決められたプレ噴射用閾値の絶対値よりも大きいかどうかを判断する手段を有し、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差の絶対値が前記プレ噴射用閾値の絶対値よりも大きいと判断されたときに、前記プレ燃料噴射を実施するように前記燃料噴射弁を制御することを特徴とする請求項2記載の燃焼制御装置。
【請求項4】
前記プレ噴射用閾値の絶対値が前記遅角用閾値の絶対値よりも大きいことを特徴とする請求項3記載の燃焼制御装置。
【請求項5】
前記メイン噴射制御手段は、前記メイン燃料噴射を複数回に分けて実施するように前記燃料噴射弁を制御し、
前記プレ噴射制御手段は、1回目の前記メイン燃料噴射の燃料噴射量を減量して、前記プレ燃料噴射の燃料噴射量を設定する手段を更に有することを特徴とする請求項3または4記載の燃焼制御装置。
【請求項6】
前記噴射時期変更手段は、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差がリッチ側にずれている場合に、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差の絶対値が予め決められた進角用閾値の絶対値よりも大きいかどうかを判断し、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差の絶対値が前記進角用閾値の絶対値よりも大きいと判断されると、前記メイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角する手段であることを特徴とする請求項1記載の燃焼制御装置。
【請求項7】
前記エンジンのクランク角を検出するクランク角検出手段を更に備え、
前記偏差算出手段は、前記クランク角検出手段により検出された前記クランク角が所定角度になった時点で、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差を算出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の燃焼制御装置。
【請求項1】
予混合圧縮着火燃焼を行うエンジンの燃焼制御装置において、
前記エンジンの燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
メイン燃料噴射を実施するように前記燃料噴射弁を制御するメイン噴射制御手段と、
前記燃焼室内の空燃比を検出する空燃比検出手段と、
目標空燃比と前記空燃比検出手段により得られた検出空燃比との偏差を算出する偏差算出手段とを備え、
前記メイン噴射制御手段は、前記メイン燃料噴射の燃料噴射時期を決定する噴射時期決定手段と、前記偏差算出手段により算出された前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差に応じて、前記噴射時期決定手段により決定された前記メイン燃料噴射の燃料噴射時期を変更する噴射時期変更手段とを有することを特徴とする燃焼制御装置。
【請求項2】
前記噴射時期変更手段は、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差の絶対値が予め決められた遅角用閾値の絶対値よりも大きいかどうかを判断し、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差の絶対値が前記遅角用閾値の絶対値よりも大きいと判断されると、前記メイン燃料噴射の燃料噴射時期を遅角する手段であることを特徴とする請求項1記載の燃焼制御装置。
【請求項3】
前記メイン燃料噴射を実施する前に補助的なプレ燃料噴射を実施するように前記燃料噴射弁を制御するプレ噴射制御手段を更に備え、
前記プレ噴射制御手段は、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差がリーン側にずれている場合に、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差の絶対値が予め決められたプレ噴射用閾値の絶対値よりも大きいかどうかを判断する手段を有し、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差の絶対値が前記プレ噴射用閾値の絶対値よりも大きいと判断されたときに、前記プレ燃料噴射を実施するように前記燃料噴射弁を制御することを特徴とする請求項2記載の燃焼制御装置。
【請求項4】
前記プレ噴射用閾値の絶対値が前記遅角用閾値の絶対値よりも大きいことを特徴とする請求項3記載の燃焼制御装置。
【請求項5】
前記メイン噴射制御手段は、前記メイン燃料噴射を複数回に分けて実施するように前記燃料噴射弁を制御し、
前記プレ噴射制御手段は、1回目の前記メイン燃料噴射の燃料噴射量を減量して、前記プレ燃料噴射の燃料噴射量を設定する手段を更に有することを特徴とする請求項3または4記載の燃焼制御装置。
【請求項6】
前記噴射時期変更手段は、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差がリッチ側にずれている場合に、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差の絶対値が予め決められた進角用閾値の絶対値よりも大きいかどうかを判断し、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差の絶対値が前記進角用閾値の絶対値よりも大きいと判断されると、前記メイン燃料噴射の燃料噴射時期を進角する手段であることを特徴とする請求項1記載の燃焼制御装置。
【請求項7】
前記エンジンのクランク角を検出するクランク角検出手段を更に備え、
前記偏差算出手段は、前記クランク角検出手段により検出された前記クランク角が所定角度になった時点で、前記目標空燃比と前記検出空燃比との偏差を算出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の燃焼制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−50092(P2013−50092A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189331(P2011−189331)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【特許番号】特許第5141807号(P5141807)
【特許公報発行日】平成25年2月13日(2013.2.13)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【特許番号】特許第5141807号(P5141807)
【特許公報発行日】平成25年2月13日(2013.2.13)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
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