説明

燃焼器及びそれを備えた暖房機

【課題】燃焼用空気の供給の際の圧損が小さい、輝炎を含まない半球状の微小火炎を先端部に形成する炎口ノズルを備える燃焼器を提供する。
【解決手段】燃料ガスが流通可能な燃料ガス流通路24及び空気が流通可能な空気流通路23を内部に有する基材30と、基材30の表面上に設けられ、輝炎を含まない半球状の微小火炎を先端部21aに形成する炎口ノズル21とを備える燃焼器20であって、燃料ガス流通路24を流通する燃料ガスは、炎口ノズル21の内部を通って先端部21a側に供給され、空気流通路23を流通する空気は炎口ノズル21が設けられている基材30の表面から放出され、放出される空気の少なくとも一部により炎口ノズル21の先端部21aに微小火炎を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスが流通可能な燃料ガス流通路及び空気が流通可能な空気流通路を内部に有する基材と、当該基材表面上に設けられ、輝炎を含まない半球状の微小火炎を先端部に形成する炎口ノズルとを備える燃焼器、及び、その燃焼器を備える暖房機に関する。
【背景技術】
【0002】
開放燃焼対流型の暖房機の代表はいわゆるファンヒーターである。ファンヒーターにおいては、気体燃料または液体燃料の気化ガスを燃焼器において燃焼させて、その燃焼ガスで暖房する。具体的には、ファンヒーターが備える対流用ファンによって室内空気を燃焼ガスと混合して循環させることで、室内に温度分布の小さい快適暖房空間を実現している。ファンヒーターは開放型燃焼器具であるため、燃焼ガスを室内に放出する。従って、燃焼器は一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOx)等の有害ガスのエミッションの少ないものであることが望まれる。
【0003】
最近、微小な拡散火炎であるマイクロ火炎が、火炎形状が半球状であるという点と、煤やNOxの排出が少ないという点とで注目されている。例えば、特許文献1には、輝炎を含まない半球状の微小火炎を先端部に形成する炎口ノズルを有する燃焼器が記載されている。具体的には、特許文献1に記載の燃焼器の炎口ノズルは、内筒と外筒とを有する二重管構造であり、内筒の内側には燃料ガスが供給され、内筒と外筒とに挟まれる間には酸素又は空気が供給される。その結果、炎口ノズルの先端部で微小火炎が形成される。
【0004】
特許文献1に記載の炎口ノズルを備える燃焼器を搭載したファンヒーターも想定できる。ファンヒーターにおいては、燃焼室の大きさを燃焼中の火炎の大きさに応じて確保しなければならないが、特許文献1に記載のような、火炎形状が半球状である微小火炎であれば燃焼室を小型にできるという点で有利であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−192213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、二重管構造の炎口ノズルに対して空気を供給しようとしたときその圧損は大きくなるため、十分な流量の燃焼用空気を供給することは容易でない。特に、一般的なファンヒーターにおいては、上記対流用ファンを燃焼用空気の供給に兼用しているものも多いが、ファンヒーターにおいて通常用いられる対流用ファンによって十分な流量の燃焼用空気を供給することは困難である。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃焼用空気の供給の際の圧損が小さい、輝炎を含まない半球状の微小火炎を先端部に形成する炎口ノズルを備える燃焼器、及び、その燃焼器を備えた暖房機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る燃焼器の特徴構成は、燃料ガスが流通可能な燃料ガス流通路及び空気が流通可能な空気流通路を内部に有する基材と、当該基材表面上に設けられ、輝炎を含まない半球状の微小火炎を先端部に形成する炎口ノズルとを備える燃焼器であって、
前記燃料ガス流通路を流通する燃料ガスは、前記炎口ノズルの内部を通って前記先端部側に供給され、
前記空気流通路を流通する空気は、前記炎口ノズルが設けられている前記基材表面から放出され、放出される空気の少なくとも一部により前記炎口ノズルの先端部に微小火炎を形成する点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、炎口ノズルでの燃料ガスの燃焼に用いられる空気(燃焼用空気)は、炎口ノズルが設けられている基材表面から放出され、放出される空気の少なくとも一部により炎口ノズルの先端部に微小火炎の形成に寄与する。つまり、火炎が形成される炎口ノズルの先端部への燃焼用空気の供給能力は、基材に形成されている空気流通路の形状によって左右されるが、炎口ノズルの形状とは無関係である。よって、基材における空気流通路の形状設計を変えることで、燃焼用空気の供給の際の圧損を小さくすることができ、十分な流量の空気を炎口ノズルに対して供給できる。
従って、燃焼用空気の供給の際の圧損が小さい、輝炎を含まない半球状の微小火炎を先端部に形成する炎口ノズルを備える燃焼器を提供できる。
【0010】
本発明に係る燃焼器の別の特徴構成は、前記燃料ガス流通路が前記基材内を介して前記炎口ノズルに接続される流通路として構成され、前記空気流通路が前記基材裏面から前記基材表面に貫通して設けられる流通路として構成される点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、燃焼用空気は、基材裏面から基材表面に貫通して設けられる流通路を通って、炎口ノズルが設けられている基材表面へと放出されて炎口ノズルの先端部の近傍に到達する。そして、その燃焼用空気は、炎口ノズルの内部を通って先端部へ供給される燃料ガスの燃焼に用いられる。つまり、炎口ノズルに対する燃焼用空気の供給を、基材裏面から基材表面に貫通して設けられる空気流通路を用いて容易に且つ確実に行うことができる。このような空気流通路は、基材の厚み方向に孔を設けるだけであるため、容易に形成できる。また、基材を板状体の多層構造とする場合は、板状体それぞれに孔を設けるだけで形成できる。
【0012】
本発明に係る燃焼器の別の特徴構成は、前記基材は複数の基板が積み重ねられた複数層構造であり、前記複数の基板に形成される孔又は溝によって前記燃料ガス流通路及び前記空気流通路が形成されている点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、例えば、基板面に平行な方向及び垂直な方向に向かう孔又は溝を形成した上で複数の基板が積み重ねられるので、積み重ねられる複数の基板に形成される孔又は溝によって、基板の積み重ね方向だけでなく、基板の積み重ね方向と交差する方向へも延びる燃料ガス流通路及び空気流通路を三次元的に形成できる。
【0014】
本発明に係る燃焼器の別の特徴構成は、前記基材に設けられる複数の前記炎口ノズルの前記先端部のそれぞれが、火炎相互の干渉が生じず、かつ火移りの可能な距離に配置されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、複数の炎口ノズルの先端部のそれぞれが火移りの可能な距離に配置されることで、炎口ノズルの数が多く且つ広範囲に分散配置されていたとしても、炎口ノズルに点火するためのイグナイタの数を少なくできる。また、複数の炎口ノズルの先端部のそれぞれが火炎相互の干渉が生じない距離に配置されることで、半球状の火炎形状を維持したまま炎口ノズルの燃焼を継続させて、燃焼器の単位面積当たりの発生熱量(燃焼(面)負荷)を高くすることができる。
【0016】
本発明に係る燃焼器の別の特徴構成は、
前記基材に設けられる複数の前記炎口ノズルのそれぞれは、複数の炎口ノズル群の何れかに属し、
同一の炎口ノズル群に属する前記炎口ノズルに燃料ガスを供給する前記燃料ガス流通路同士は互いにガス流通可能に連絡され、
互いに異なる炎口ノズル群に属する前記炎口ノズルに燃料ガスを供給する前記燃料ガス流通路同士は互いにガス流通が不可能に隔離されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、複数の炎口ノズルのそれぞれが、複数の炎口ノズル群の何れかに属するように分けて、各炎口ノズル群への燃料ガス流通路を独立させることで、炎口ノズル群毎に、点火状態及び消火状態を調節できる。
【0018】
本発明に係る燃焼器の別の特徴構成は、同一の前記炎口ノズル群に属する前記炎口ノズルは、記号又は模様を形作る位置に配置されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、炎口ノズル群毎に点火状態及び消火状態を切り替えることで、複数の炎口ノズルの微小火炎により形成される記号又は模様の表示及び非表示を切り替えることができる。
【0020】
本発明に係る暖房機の特徴構成は、燃料ガスを室内空気にて燃焼させ、生じた燃焼ガスを室内空気と共に対流させて暖房する暖房機であって、
上記燃焼器と、前記燃焼器の前記燃料ガス流通路に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記燃焼器の前記空気流通路に空気を供給するとともに前記燃焼ガスと前記室内空気とを対流させる空気供給手段と、前記燃料ガス供給手段及び前記空気供給手段の作動を制御する制御手段とを備える点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、燃焼器における燃焼用空気の供給の際の圧損を小さくすることができるので、燃焼ガスと室内空気とを対流させる空気供給手段を、燃焼器への燃焼用空気の供給用途に兼用しても、十分な流量の空気を炎口ノズルに供給できる。その結果、燃焼器への燃焼用空気の供給用途に特別な装置は不要となるため、暖房機の大型化を抑制できる。
【0022】
本発明に係る暖房機の別の特徴構成は、燃料ガスを室内空気にて燃焼させ、生じた燃焼ガスを室内空気と共に対流させて暖房する暖房機であって、
上記燃焼器と、前記燃焼器の前記燃料ガス流通路に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記燃焼器の前記空気流通路に空気を供給するとともに前記燃焼ガスと前記室内空気とを対流させる空気供給手段と、前記燃料ガス供給手段及び前記空気供給手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、実際の室内温度と設定室内温度との差に応じて前記燃焼器における燃焼量を変化させるべく、前記燃料ガス供給手段によって前記炎口ノズル群毎に燃料ガスの供給量を調節する点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、燃焼器における燃焼用空気の供給の際の圧損を小さくすることができるので、燃焼ガスと室内空気とを対流させる空気供給手段を、燃焼器への燃焼用空気の供給用途に兼用しても、十分な流量の空気を炎口ノズルに供給できる。その結果、燃焼器への燃焼用空気の供給のための特別な装置は不要となるため、暖房機の大型化を抑制できる。
更に、燃焼器における燃焼量を炎口ノズル群毎の点火及び消火によって調節できる。
【0024】
本発明に係る暖房機の別の特徴構成は、前記基材表面へ向けて前記基材裏面から貫通している複数の前記空気流通路に空気を供給する共通空気供給路を、前記燃焼器の前記基材裏面側に有する点にある。
【0025】
上記特徴構成によれば、燃焼器の基材裏面側に設けた共通空気供給路を用いて、燃焼器の基材に設けられる空気流通路に対して、燃焼器の外部から燃焼用空気を良好に導入できる。即ち、例えば、基材の裏面側に単一又は少数の共通空気供給路を設けるだけで、多数の炎口ノズルのそれぞれに微小火炎を良好に形成できる。その結果、燃焼器が備える多数の炎口ノズルにおける燃料ガスの燃焼を簡単な構成で確実に実現できる。
【0026】
本発明に係る暖房機の別の特徴構成は、前記燃焼器の火炎を外部で視認可能に透過させる光透過部を備える点にある。
【0027】
上記特徴構成によれば、炎口ノズルの点火状態及び消火状態によって表される記号又は模様を外部から確認可能とすること、或いは、その記号又は模様の変化を確認可能とすることで、操作者に対する情報伝達を行える。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】暖房機の概略構成図である。
【図2】第1実施形態の燃焼器の分解斜視図である。
【図3】図2のIII−III断面の一部を示す図である。
【図4】燃焼器の点火状態例を示す図である。
【図5】第2実施形態の燃焼器の分解斜視図である。
【図6】第2実施形態の燃焼器の第2層の基板の表裏面を示す図である。
【図7】第2実施形態の燃焼器の第4層の基板の表裏面を示す図である。
【図8】図5のVII−VII断面の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の第1実施形態に係る燃焼器を備える暖房機について説明する。
図1は、本発明に係る暖房機としてのガスファンヒーターの概略構成図である。図2は、第1実施形態の燃焼器の分解斜視図であり、図3は、図2のIII−III断面の一部を示す図である。
図1〜図3に示すように、ガスファンヒーター100は、供給される燃料ガス(G)を燃焼する燃焼器20A(20)と、燃焼器20Aに燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段GSと、燃焼器20Aに空気を供給するとともに燃焼器20Aから排出される燃焼ガスと室内空気とを対流させる空気供給手段ASとしてのファン6と、燃料ガス供給手段GS及び空気供給手段ASの作動を制御する制御装置(制御手段の一例)15とを備える。燃料ガスは、例えば、メタンを主成分とする都市ガス13A等である。燃焼器20Aは、ガスファンヒーター100の筐体13の内部の燃焼室1に配置されている。
【0030】
燃焼室1には、燃料ガスを外部から導くガス供給管2、空気を燃焼器20Aへと導く共通空気供給路としてのウィンドボックス17、燃料ガスと空気との混合気を燃焼させる燃焼器20A、及び、燃焼器20Aを点火するイグナイタ5などが配置されている。共通空気供給路としてのウィンドボックス17は、燃焼器20Aの基材30の裏面側に設けられており、炎口ノズル21が設けられている基材30の表面へ向けて基材30の裏面から貫通している複数の空気流通路23に空気を供給する。つまり、単一のウィンドボックス17を用いて、空気流通路23に対して、燃焼器20Aの外部から燃焼用空気を良好に導入できるようになり、燃焼器20Aが備える多数の炎口ノズル21における燃料ガスの燃焼を確実に行えるようになる。例えば、ウィンドボックス17内における空気流量は、燃料流量の11倍〜13倍程度であればよい。
【0031】
筐体13は、背面に外気(室内空気)取り入れる吸気口7を有し、前面に吹出口9を有して、ファンヒーター100全体を外囲する形状に構成される。筐体13の内部には、外気(空気等)の一部を燃焼用空気として燃焼室1に導くと共に、その残部を燃焼室1から排出された燃焼ガスと混合して吹出口9から送り出すように、外気流通流路8が設けられている。このような、筐体13の内部における空気及び燃焼ガスの流れは、ファン6によって実現される。吸気口7には、異物等を除去するためのエアフィルタ14が設けられている。筐体13の背面には、外部から燃料ガスを導くガス管12の接続継手11と接続するプラグ10が設けられている。
【0032】
ガスファンヒーター100は、操作者からの操作指令を受け付ける操作入力部16と、その操作入力部16等からの信号に基づいてガスファンヒーター100の運転を制御する制御装置15とを備える。操作入力部16は、ファンヒーター100を起動及び停止する運転起動信号及び運転停止信号を制御装置15に送信する運転ボタン、目標とする設定室内温度に関する信号を制御装置15に送信する温度設定ボタン等を備える。ファンヒーター100は、吸気される室内空気の温度を検出するための室温センサ18を吸気口7の近傍に備える。
【0033】
制御装置15は、例えば、運転ボタンから運転起動信号を受信した場合、ファン6を回転駆動させ、ガス供給管2に設けられている制御弁3(図3を参照)の開度を調節して燃料ガスを燃焼器20Aに供給し、イグナイタ4を点火して燃焼器20Aを燃焼作動させる。一方、制御装置15は、運転ボタンから運転停止信号を受信した場合、ガス供給管2に設けられている制御弁3を閉状態として燃料ガスの燃焼器20Aへの供給を停止させ、ファン6の回転駆動を停止させる。
【0034】
次に、第1実施形態の燃焼器20Aについて説明する。
図2及び図3に示すように、燃焼器20Aは、燃料ガスが流通可能な燃料ガス流通路24及び空気が流通可能な空気流通路23を内部に有する基材30と、その基材30の表面上に設けられ、輝炎を含まない半球状の微小火炎(マイクロ火炎)を先端部21aに形成する炎口ノズル21とを備える。第1実施形態と同様に、基材30の表面には、複数の炎口ノズル21の列が複数並列して設けられている。燃料ガス流通路24を流通する燃料ガスは、炎口ノズル21の内部を通って先端部21a側に供給され、空気流通路23を流通する空気は、炎口ノズル21が設けられている基材30の表面から放出され、放出される空気の少なくとも一部により炎口ノズル21の先端部21aに微小火炎を形成する。
【0035】
炎口ノズル21は、例えば、内径0.7mmの管状に形成された極細のノズルである。炎口ノズル21は多重構造ではなく、燃料ガスが流通する1つの円柱状空間を有する。炎口ノズル21の材質としては、耐熱性が高く、熱伝導率の低い材質が好ましい。例えば、ステンレスやアルミナ主体のファインセラミックスなどを利用できる。炎口ノズル21の先端部21aには、輝炎を含まない半球状の微小火炎が形成される。輝炎とは、ろうそくの炎など、燃料が分解してできた細かい炭素粒(すす)が光っている炎のことをいう。この微小火炎は、別々に供給される燃料ガスと空気とにより形成される拡散火炎であり、一般には数mm程度の火炎を形成する。通常の火炎(層流火炎)は、向きによって浮力の影響を受けて変形するが、微小火炎は変形しない。つまり、炎口ノズル21をどの方向に向けても常に半球状の火炎を保持する。従って、図1に例示したように、燃焼器20Aをファンヒーター100の内部で水平位置から傾斜させて設置しても、炎口ノズル21は常に半球状の火炎を保持する。加えて、微小火炎は一般的な火炎のような乱流を起こさず、スケールも小さいので、燃え残りやすすといった有害物の発生が少ない点で有利である。
【0036】
本実施形態では、上述のような微小火炎を形成できる炎口ノズル21として、以下の関係式を満たすものとする。
無次元数であるフルード数をFr、レイノルズ数をRe、燃料ガスの噴出速度をU(m/sec)、管内径をL(m)、重力加速度をg(m/sec2)、動粘性係数ν(m2/sec)とした場合に、
Fr=U(Lg)-1/2>1、かつ
Re=ULν-1<100
である。
【0037】
複数の炎口ノズル21の先端部21aのそれぞれは、火炎相互の干渉が生じず、かつ火移りの可能な距離(本実施形態では、例えば、5mm〜7mm間隔)に、二次元的又は三次元的に配置されている。よって、炎口ノズル21の数が多く且つ広範囲に分散配置されていたとしても、炎口ノズル21に点火するためのイグナイタ5の数を少なくできる。そして、点火させるべき複数の炎口ノズル21のうちの近傍にある炎口ノズル21にイグナイタ5を用いて点火し、周囲にある他の点火させるべき炎口ノズル21に順次火移りさせて、最終的に点火させるべき全ての炎口ノズル21に着火させる。
【0038】
基材30は、金属製などの複数の基板31〜37が積み重ねられた複数層構造である。燃料ガス流通路24及び空気流通路23は、複数の基板31〜37にプレス加工や切削加工などを用いて形成される孔又は溝によって形成されている。つまり、基板面に平行な方向及び垂直な方向に向かう孔又は溝を形成した上で複数の基板31〜37が積み重ねられるので、積み重ねられる複数の基板31〜37に形成される孔又は溝によって、基板の積み重ね方向だけでなく、基板の積み重ね方向と交差する方向へも延びる燃料ガス流通路24及び空気流通路23を三次元的に形成できる。加えて、基材30の表面を構成する第1層の基板31とその下の第2層の基板32との間、及び、第4層の基板34と第5層の基板35との間には、ガス漏れを防ぐためのシール用シート部材38、39がそれぞれ介装されている。基板31〜37の周囲の6ヶ所及びシール用シート部材38、39の周囲の6ヶ所にはボルト(図示せず)を差し込み可能な貫通孔22が形成されている。よって、図示しないボルト及びナットを用いて各基板31〜37及びシール用シート部材38、39を互いに積み重ねて圧着させた状態で、基材30を構成できる。
【0039】
基材30の表面を構成する第1層の基板31には、空気流通路23として、複数の炎口ノズル21の列に沿った長手状に、第1層の基板31の表裏を貫通する空気流通孔23aが形成されている。具体的には、空気流通孔23aは、X軸方向に沿った長手状に形成されている。加えて、第1層の基板31には、燃料ガス流通路24として、複数の炎口ノズル21に対応した位置に、燃料ガス流通孔24eが形成されている。
【0040】
第2層の基板32には、空気流通路23として、第1層の基板31に形成される空気流通孔23aに対応する位置に、同形状の空気流通孔23aが形成されている。
加えて、第2層の基板32には、燃料ガス流通路24として、第1層の基板31に形成される燃料ガス流通孔24eに対応する位置に、同形状の燃料ガス流通孔24eが形成されている。
【0041】
第3層の基板33には、空気流通路23として、第2層の基板32に形成される空気流通孔23aに対応する位置に、同形状の空気流通孔23aが形成されている。
加えて、第3層の基板33には、燃料ガス流通路24として、第2層の基板32に形成される複数の燃料ガス流通孔24eのうち、隣接する2列の燃料ガス流通孔24eに対して一体で対応する形状の燃料ガス流通孔24fが形成されている。つまり、燃料ガス流通孔24fは、隣接する2列の燃料ガス流通孔24eを基板33内で互いにガス流通可能とするように、2列の燃料ガス流通孔24eを含む範囲にまで一体で溝切られた形状である。
【0042】
第4層の基板34には、空気流通路23として、第3層の基板33に形成される空気流通孔23aに対応する位置に、同形状の空気流通孔23aが形成されている。
加えて、第4層の基板34には、燃料ガス流通路24として、第1層の基板31に形成される燃料ガス流通孔24eに対応する位置に、同形状の燃料ガス流通孔24eが形成されている。
【0043】
第5層の基板35には、空気流通路23として、第4層の基板34に形成される空気流通孔23aに対応する位置に、同形状の空気流通孔23aが形成されている。
加えて、第5層の基板35には、燃料ガス流通路24として、第4層の基板34に形成される燃料ガス流通孔24eに対応する位置に、同形状の燃料ガス流通孔24eが形成されている。
【0044】
第6層の基板36には、空気流通路23として、第5層の基板35に形成される空気流通孔23aに対応する位置に、同形状の空気流通孔23aが形成されている。
加えて、第6層の基板36には、燃料ガス流通路24として、第5層の基板35に形成される複数の燃料ガス流通孔24eのうち、隣接する2列の燃料ガス流通孔24eに対して一体で対応する形状の燃料ガス流通孔24fが形成されている。つまり、燃料ガス流通孔24fは、隣接する2列の燃料ガス流通孔24eを基板36内で互いにガス流通可能とするように、2列の燃料ガス流通孔24eを含む範囲にまで一体で溝切られた形状である。
【0045】
第7層の基板37には、空気流通路23として、第6層の基板36に形成される空気流通孔23aに対応する位置に、同形状の空気流通孔23aが形成されている。
第7層の基板37には、上述した燃料ガス流通孔24e及び燃料ガス流通孔24fは形成されていない。
【0046】
基材30に形成される空気流通路23には、基材30の裏面側(第7層の基板37側)から空気が供給される。シール用シート部材38、39にも、上述した空気流通孔23aに対応する位置に貫通孔が形成されているため、基材30の裏面側が供給された空気は、基材30の表面側から吹き出す。
基材30に形成される燃料ガス流通路24にも、基材30の裏面側から燃料ガスが供給される。具体的には、基材30の裏面側を形成する第7層の基板37の一辺側には、燃料ガス分配孔24a、24bが形成されている。シール用シート部材39には、燃料ガス分配穴24bに対応する位置に貫通孔が形成されている。
【0047】
以下に、燃料ガス分配孔24aに供給された燃料ガスが一つの炎口ノズル群に至る経路と、燃料ガス分配孔24bに供給された燃料ガスが別の炎口ノズル群に至る経路とについて説明する。
【0048】
図2に示すように、第7層の基板37に形成されている燃料ガス分配孔24aは、第6層の基板36に形成されている複数の燃料ガス流通孔24fのうちの一つに対して互いにガス流通可能に連絡される。第5層の基板35に形成されている一つの燃料ガス分配孔24cはY軸方向に沿った長手状に形成され、第6層の基板36にX軸方向に沿って形成されている複数の燃料ガス流通孔24fと交差する。第6層の基板36に形成されている複数の燃料ガス流通孔24fの全ては、第5層の基板35に形成されている上記燃料ガス分配孔24cに対して互いにガス流通可能に連絡されている。
つまり、第7層の基板37に形成されている燃料ガス分配孔24aと、第6層の基板36に形成されている全ての燃料ガス流通孔24fと、第5層の基板35に形成されている燃料ガス分配孔24cとは、互いにガス流通可能に連絡されている。
【0049】
また、シール用シート部材39には燃料ガス分配孔24bに対応する位置に貫通孔が設けられているため、第7層の基板37に形成されている燃料ガス分配孔24bと、第6層の基板36に形成されている燃料ガス分配孔24bと、第5層の基板35に形成されている燃料ガス分配孔24bと、第4層の基板34に形成されている燃料ガス分配孔24bと、第3層の基板33に形成されている燃料ガス分配孔24bと、第2層の基板32に形成されている一つの燃料ガス分配孔24dとは、互いにガス流通可能に連絡されている。第2層の基板32に形成されている燃料ガス分配孔24dは、Y軸方向に沿った長手状に形成され、第3層の基板33に形成されている複数の燃料ガス流通孔24fと交差する。よって、第2層の基板32に形成されている燃料ガス分配孔24dと、第3層の基板33に形成されている全ての燃料ガス流通孔24fとは互いにガス流通可能に連絡されている。
【0050】
以上のように、図2及び図3に示すように、燃焼器20Aでは、燃料ガス流通路24は、燃料ガス分配孔24aから供給される燃料ガスが流通する燃料供給系統と、燃料ガス分配孔24bから供給される燃料ガスが流通する燃料供給系統という2系統に分けられる。
更に、図3に例示したように、複数の炎口ノズル21には、第2層の基板32に到達するまで挿入されることで、第2層の基板32に形成される燃料ガス流通孔24e及び第3層の基板33に形成される燃料ガス流通孔24fとの間でガス流通可能となっている炎口ノズル21の一群(A群)と、第5層の基板35に到達するまで挿入されることで、第5層の基板35に形成される燃料ガス流通孔24e及び第6層の基板36に形成される燃料ガス流通孔24fとの間でガス流通可能となっている炎口ノズル21の一群(B群)とに分けられる。言い換えると、燃焼器20Aでは、燃料ガス流通路24が基材30内を介して炎口ノズル21に接続される流通路として構成され、空気流通路23が基材30の裏面から基材30の表面に貫通して設けられる流通路として構成される。
尚、第1層の基板31と第2層の基板32との間に介装されているシール用シート部材38には、上記A群及びB群の全ての炎口ノズル21に対応する位置に貫通孔が設けられている。他方で、第4層の基板34と第5層の基板55との間に介装されているシール用シート部材39には、上記B群の炎口ノズル21に対応する位置に貫通孔が設けられている。
【0051】
つまり、基材30に設けられる複数の炎口ノズル21は、複数の炎口ノズル群の何れかに属し、同一の炎口ノズル群に属する炎口ノズルに燃料ガスを供給する燃料ガス流通路24同士は互いにガス流通可能に連絡され、異なる炎口ノズル群に属する炎口ノズルに燃料ガスを供給する燃料ガス流通路24同士は互いにガス流通が不可能に隔離されている。そして、各炎口ノズル群に対しては、上述した各燃料供給系統から各別に燃料ガスが供給される。
【0052】
次に、上述した燃焼器20Aを備えるファンヒーター100について説明する。
ファンヒーター100は、燃料ガスを室内空気にて燃焼させ、生じた燃焼ガスを室内空気と共に対流させて暖房する開放型対流暖房機である。本実施形態において、ファンヒーター100は、燃焼器20Aと、燃焼器20Aの燃料ガス流通路24に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段GSと、燃焼器20Aの空気流通路23に空気を供給するとともに燃焼ガスと室内空気とを対流させる空気供給手段ASと、燃料ガス供給手段GS及び空気供給手段ASの作動を制御する制御装置15とを備える。
【0053】
本実施形態では、燃料ガス供給手段GSとしての燃料ガス供給管2b及び制御弁3bは、第2層の基板32に形成される燃料ガス流通孔24e及び第3層の基板33に形成される燃料ガス流通孔24fとの間でガス流通可能となっている炎口ノズル21の一群(図3のA群)に対して燃料ガスを供給可能である。燃料ガス供給手段GSとしての燃料ガス供給管2a及び制御弁3aは、第5層の基板35に形成される燃料ガス流通孔24e及び第6層の基板36に形成される燃料ガス流通孔24fとの間でガス流通可能となっている炎口ノズル21の一群(図3のB群)に対して燃料ガスを供給可能である。従って、制御装置15が、制御弁3a、3bの開度を調節又は開閉することで、各群の炎口ノズル21の点火状態及び消火状態を各別に制御できる。
【0054】
例えば、ファンヒーター100が備える制御装置15は、実際の室内温度と設定室内温度との差に応じて燃焼器20Aにおける燃焼量を変化させるべく、燃料ガス供給手段GSによって炎口ノズル群毎に燃料ガスの供給量を調節する。具体的には、制御装置15は、操作者から操作入力部16を用いて予め入力されている設定室内温度に関する情報を取得して記憶しており、且つ、室温センサ18によって検出される実際の室内温度に関する情報を取得できる。そして、制御装置15は、例えば、実際の室内温度と設定室内温度との差に応じて燃焼器20Aの燃焼量を連続的又は段階的に制御することで、実際の室内温度を設定室内温度に近づけるような制御を行う。特に、本実施形態では、制御装置15は、燃料ガス供給手段GSを構成する制御弁3(3a、3b)の作動を各別に制御することで、炎口ノズル群毎に対応する燃料ガスの供給量を調節する。
【0055】
本実施形態において、同一の炎口ノズル群に属する炎口ノズル21は、微小火炎によって記号又は模様を形作る位置に配置されている。図4は、特定の炎口ノズル群に属する複数の炎口ノズル21を、アルファベットの「A」という記号(文字)を形作る位置に配置した燃焼器20の例である。具体的には、図4(a)は、「A」という文字を形作る位置に配置された炎口ノズル群を点火させ、他の炎口ノズル群を消火させた状態を示す図である。図4(b)は、「A」という文字を形作る位置に配置された炎口ノズル群を消火させ、他の炎口ノズル群を点火させた状態を示す図である。図4(c)は、全ての炎口ノズル群を点火させた状態を示す図である。
【0056】
図1に示すように、本実施形態のファンヒーター100は、燃焼室1に窓部1aを備え、筐体13に窓部13a、13bを備える。これら窓部1a、13a、13bはガラス(好ましくは耐熱ガラス)などで構成されており、燃焼器20Aの火炎を外部で視認可能に透過させる光透過部TPとして機能する。つまり、暖房機は、図4に示したような炎口ノズルの点火状態及び消火状態、即ち記号又は模様が外部から視認できるように構成されている。その結果、炎口ノズル21の点火状態及び消火状態によって表される記号又は模様を外部から確認可能とすること、或いは、その記号又は模様の変化を確認可能とすることで、操作者に対する情報伝達(例えば、省エネルギの喚起など)を行える。
【0057】
以上のように、炎口ノズル21での燃料ガスの燃焼に用いられる空気は、燃焼器20Aの基材30の表面から放出される。つまり、基材30に形成する空気流通路23の設計次第で燃焼器20Aにおける燃焼用空気の供給の際の圧損を小さくすることができるので、燃焼ガスと室内空気とを対流させるファン6を、燃焼器20Aへの燃焼用空気の供給用途に兼用しても、十分な流量の空気を炎口ノズル21に供給できる。その結果、燃焼器20Aへの燃焼用空気の供給用途に特別な装置は不要となるため、暖房機の大型化を抑制できる。
【0058】
<第2実施形態>
第2実施形態の燃焼器は、第1実施形態の燃焼器とは構造が異なっている。以下に第2実施形態の燃焼器について説明するが、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0059】
図5は、第2実施形態の燃焼器の分解斜視図である。図6は、第2実施形態の燃焼器の第2層の基板の表裏面を示す図であり、図7は、第4層の基板の表裏面を示す図である。図8は、図5のVII−VII断面の一部を示す図である。
図5〜図8に示すように、燃焼器20B(20)は、燃料ガスが流通可能な燃料ガス流通路54及び空気が流通可能な空気流通路53を内部に有する基材40と、その基材40の表面上に設けられ、輝炎を含まない半球状の微小火炎を先端部21aに形成する炎口ノズル21とを備える。本実施形態でも、基材40の表面には、複数の炎口ノズル21の列が複数並列して設けられている。燃料ガス流通路54を流通する燃料ガスは、炎口ノズル21の内部を通って先端部21a側に供給され、空気流通路53を流通する空気は、炎口ノズル21が設けられている基材40の表面から放出される。
【0060】
基材40は、複数の基板41〜45が積み重ねられた複数層構造である。燃料ガス流通路54及び空気流通路53は、複数の基板41〜45に形成される孔又は溝によって形成されている。加えて、基材40の表面を構成する第1層の基板41とその下の第2層の基板42との間、及び、第3層の基板43と第4層の基板44との間には、ガス漏れを防ぐためのシール用シート部材46、47がそれぞれ介装されている。基板41〜45の四隅及びシール用シート部材46、47の四隅にはボルト(図示せず)を差し込み可能な貫通孔52が形成されている。よって、図示しないボルト及びナットを用いて各基板41〜45及びシール用シート部材46、47を互いに積み重ねて圧着させた状態で、基材40を構成できる。
【0061】
基材40の表面を構成する第1層の基板41には、空気流通路53として、複数の炎口ノズル21の列に沿って、第1層の基板41の表裏を貫通する円孔形状の空気流通孔53aが配列して形成されている。このように、空気流通孔53aを例えば切削加工のみによる円孔形状とすることで、第1実施形態で示したような長手状の孔を空ける場合に比べて、各基板41〜45の加工時における変形を抑制できる。
加えて、第1層の基板41には、燃料ガス流通路54として、複数の炎口ノズル21に対応した位置に、燃料ガス流通孔54eが形成されている。
【0062】
第2層の基板42には、空気流通路53として、第1層の基板41に形成される空気流通孔53aに対応する位置に、同形状の空気流通孔53aが形成されている。
加えて、第2層の基板52には、燃料ガス流通路54として、第1層の基板41に形成される燃料ガス流通孔54eに対応する位置に、同形状の燃料ガス流通孔54eが形成されている。また、後述するように、第2層の基板52には、燃料ガス分配溝54d、54fも形成されている。
【0063】
第3層の基板43には、空気流通路53として、第2層の基板42に形成される空気流通孔53aに対応する位置に、同形状の空気流通孔53aが形成されている。
加えて、第3層の基板43には、燃料ガス流通路54として、第2層の基板42に形成される複数の燃料ガス流通孔54eに対応する位置に、同形状の燃料ガス流通孔24eが形成されている。
【0064】
第4層の基板44には、空気流通路53として、第3層の基板43に形成される空気流通孔53aに対応する位置に、同形状の空気流通孔53aが形成されている。
加えて、第4層の基板44には、燃料ガス流通路54として、第3層の基板43に形成される燃料ガス流通孔54eに対応する位置に、同形状の燃料ガス流通孔54eが形成されている。また、後述するように、第4層の基板44には、燃料ガス分配溝54c、54gも形成されている。
【0065】
第5層の基板45には、空気流通路53として、第4層の基板44に形成される空気流通孔53aに対応する位置に、同形状の空気流通孔53aが形成されている。
第5層の基板45には、上述した燃料ガス流通孔54eは形成されていない。
【0066】
基材40に形成される空気流通路53には、基材40の裏面側(第5層の基板45側)から空気が供給される。シール用シート部材46、47にも、上述した空気流通孔53aに対応する位置に貫通孔が形成されているため、基材40の裏面側が供給された空気は、基材40の表面側から吹き出す。
基材40に形成される燃料ガス流通路54にも、基材40の裏面側から燃料ガスが供給される。具体的には、基材40の裏面側を形成する第5層の基板45の中央部には、燃料ガス分配孔54aが形成され、及び、第5層の基板45の端部には、燃料ガス分配孔54bが形成されている。
【0067】
以下に、燃料ガス分配孔54aに供給された燃料ガスが一つの炎口ノズル群に至る経路と、燃料ガス分配孔54bに供給された燃料ガスが別の炎口ノズル群に至る経路とについて説明する。
【0068】
シール用シート部材47には燃料ガス分配孔54bに対応する位置に貫通孔が設けられているため、第5層の基板45に形成されている燃料ガス分配孔54bと、第4層の基板44に形成されている燃料ガス分配孔54bと、第3層の基板43に形成されている燃料ガス分配孔54bと、第2層の基板42に形成されている燃料ガス分配孔54bとは、互いにガス流通可能に連絡されている。また、図5、図6及び図8に示すように、第2層の基板42の表面側には、X軸方向に沿って燃料ガス分配溝54dが形成されており、この燃料ガス分配溝54dは、第2層の基板42に形成されている燃料ガス分配孔54bと連通している。
【0069】
更に、第2層の基板42の裏面側には、Y軸方向に沿って燃料ガス分配溝54fが形成されている。燃料ガス分配溝54fは、隣接する2列の燃料ガス流通孔54eを基板42内で互いにガス流通可能とするように、2列の燃料ガス流通孔54eを含む範囲にまで一体で溝切られた形状である。表面側の燃料ガス分配溝54dと裏面側の燃料ガス分配溝54fとは、交差する部分で互いにガス流通可能に連絡されている。つまり、燃料ガス分配溝54dに存在する燃料ガスと燃料ガス分配溝54fに存在するガスとは互いに行き来できる。
従って、燃料ガスが基材40の裏面側から燃料ガス分配溝54bに供給されたとき、その燃料ガスは、第5層の基板の燃料ガス分配孔54bと、第4層の基板44の燃料ガス分配孔54bと、第3層の基板43の燃料ガス分配孔54bと、第2層の基板42の燃料ガス分配孔54bと、第2層の基板42の燃料ガス分配溝54dと、第2層の基板42の燃料ガス分配溝54fと、第2層の基板42の燃料ガス流通孔54eとを経由して、後述するように特定の炎口ノズル21に供給される。
【0070】
第5層の基板45に形成されている燃料ガス分配孔54aと、第4層の基板44に形成されている燃料ガス分配孔54aとは、互いにガス流通可能に連絡されている。図5〜図7に示すように、第4層の基板44の表面側には、X軸方向に沿って燃料ガス分配溝54cが形成されており、この燃料ガス分配溝54cは第4層の基板44に形成されている燃料ガス分配孔54aと連通している。
【0071】
更に、第4層の基板44の裏面側には、Y軸方向に沿って燃料ガス分配溝54gが形成されている。燃料ガス分配溝54gは、隣接する2列の燃料ガス流通孔54eを基板44内で互いにガス流通可能とするように、2列の燃料ガス流通孔54eを含む範囲にまで一体で溝切られた形状である。表面側の燃料ガス分配溝54cと裏面側の燃料ガス分配溝54gとは、交差する部分で互いにガス流通可能に連絡されている。つまり、燃料ガス分配溝54cに存在する燃料ガスと燃料ガス分配溝54gに存在するガスとは互いに行き来できる。
従って、燃料ガスが基材40の裏面側から燃料ガス分配溝54aに供給されたとき、その燃料ガスは、第5層の基板の燃料ガス分配孔54aと、第4層の基板44の燃料ガス分配孔54aと、第4層の基板42の燃料ガス分配溝54cと、第4層の基板44の燃料ガス分配溝54gと、第4層の基板44の燃料ガス流通孔54eと、第3層の基板43の燃料ガス流通孔54eと、第2層の基板42の燃料ガス流通孔54eとを経由して、後述するように特定の炎口ノズル21に供給される。
【0072】
以上のように、図5及び図7に示したように、燃焼器20Bでは、燃料ガス流通路54は、燃料ガス分配孔24aから供給される燃料ガスが流通する燃料供給系統と、燃料ガス分配孔24bから供給される燃料ガスが流通する燃料供給系統という2系統に分けられる。
更に、図7に例示したように、複数の炎口ノズル21には、第2層の基板42に到達するまで挿入されることで、第2層の基板42に形成される燃料ガス流通孔54eとの間でガス流通可能となっている炎口ノズル21の一群(C群)と、第4層の基板44に到達するまで挿入されることで、第4層の基板44に形成される燃料ガス流通孔24eとの間でガス流通可能となっている炎口ノズル21の一群(D群)とに分けられる。
尚、第1層の基板41と第2層の基板42との間に介装されているシール用シート部材46には、上記C群及びD群の全ての炎口ノズル21と対応する位置に貫通孔が設けられている。他方で、第3層の基板43と第4層の基板44との間に介装されているシール用シート部材47には、上記D群の炎口ノズル21と対応する位置に貫通孔が設けられている。
【0073】
つまり、基材40に設けられる複数の炎口ノズル21は、複数の炎口ノズル群の何れかに属し、同一の炎口ノズル群に属する炎口ノズルに燃料ガスを供給する燃料ガス流通路54同士は互いにガス流通可能に連絡され、異なる炎口ノズル群に属する炎口ノズルに燃料ガスを供給する燃料ガス流通路54同士は互いにガス流通が不可能に隔離されている。そして、各炎口ノズル群に対しては、上述した各燃料供給系統から各別に燃料ガスが供給される。
【0074】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態において、複数の炎口ノズル21の配置形態は適宜変更可能である。また、空気流通路23(53)の配置形態も、炎口ノズル21に対して適切な流量の空気を供給できる範囲内で適宜変更可能である。
更に、複数の炎口ノズル21の高さ(即ち、基材30、40の表面から先端部21aまでの距離)を各別に設定してもよい。例えば、上記実施形態では、複数の炎口ノズル21の高さが全て同じである場合を例示したが、炎口ノズル21の高さを各別に設定することで、微小火炎によって三次元的な記号又は模様が形成されるように改変してもよい。
【0075】
<2>
上記実施形態では、炎口ノズル群が2つである場合(即ち、燃料供給系統が2系統である場合)を例示したが、基材を構成する基板数を変更する或いは各基板に形成する孔又は溝の配置を変更するなどして、炎口ノズル群を3つ以上にしてもよい(即ち、燃料供給系統を3系統以上にしてもよい)。
【0076】
<3>
上記実施形態では、燃焼器20を、図1に示したような傾斜角で暖房機に配置した状態を例示したが、その傾斜角は適宜変更可能である。
【0077】
<4>
上記実施形態では、本発明に係る燃焼器を開放型対流暖房機の一例としてのガスファンヒーターに搭載する例を説明したが、本発明に係る燃焼器を他の種類の暖房機に搭載してもよい。例えば、FF式(密閉型の強制給排気式)のストーブ(暖房機)に搭載してもよい。本発明に係る燃焼器は、炎口ノズルに形成されるのが微小火炎であり、狭い燃焼室でも完全燃焼可能である点(燃焼室(体積)負荷が大きく取れる点)で、FF式のストーブ用に適している。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、燃焼用空気の供給の際の圧損が小さい、輝炎を含まない半球状の微小火炎を先端部に形成する炎口ノズルを備える燃焼器、及び、その燃焼器を備えた暖房機に利用できる。
【符号の説明】
【0079】
1a 窓部(光透過部 TP)
2 燃料ガス供給管(燃料ガス供給手段 GS)
3 制御弁(燃料ガス供給手段 GS)
6 ファン(空気供給手段 AS)
13a 窓部(光透過部 TP)
13b 窓部(光透過部 TP)
15 制御装置(制御手段)
17 ウィンドボックス(空気供給手段 AS、共通空気供給路)
20 燃焼器
21 炎口ノズル
21a 先端部
23、53 空気流通路
24、54 燃料ガス流通路
30、40 基材
31〜37、41〜45 基板
100 ファンヒーター(暖房機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスが流通可能な燃料ガス流通路及び空気が流通可能な空気流通路を内部に有する基材と、当該基材表面上に設けられ、輝炎を含まない半球状の微小火炎を先端部に形成する炎口ノズルとを備える燃焼器であって、
前記燃料ガス流通路を流通する燃料ガスは前記炎口ノズルの内部を通って前記先端部側に供給され、前記空気流通路を流通する空気は前記炎口ノズルが設けられている前記基材表面から放出され、放出される空気の少なくとも一部により前記炎口ノズルの先端部に微小火炎を形成する燃焼器。
【請求項2】
前記燃料ガス流通路が前記基材内を介して前記炎口ノズルに接続される流通路として構成され、前記空気流通路が前記基材裏面から前記基材表面に貫通して設けられる流通路として構成される請求項1に記載の燃焼器。
【請求項3】
前記基材は複数の基板が積み重ねられた複数層構造であり、前記複数の基板に形成される孔又は溝によって前記燃料ガス流通路及び前記空気流通路が形成されている請求項1又は2に記載の燃焼器。
【請求項4】
前記基材に設けられる複数の前記炎口ノズルの前記先端部のそれぞれが、火炎相互の干渉が生じず、かつ火移りの可能な距離に配置されている請求項1〜3の何れか一項に記載の燃焼器。
【請求項5】
前記基材に設けられる複数の前記炎口ノズルのそれぞれは、複数の炎口ノズル群の何れかに属し、
同一の炎口ノズル群に属する前記炎口ノズルに燃料ガスを供給する前記燃料ガス流通路同士は互いにガス流通可能に連絡され、
互いに異なる炎口ノズル群に属する前記炎口ノズルに燃料ガスを供給する前記燃料ガス流通路同士は互いにガス流通が不可能に隔離されている請求項1〜4の何れか一項に記載の燃焼器。
【請求項6】
同一の前記炎口ノズル群に属する前記炎口ノズルは、記号又は模様を形作る位置に配置されている請求項5に記載の燃焼器。
【請求項7】
燃料ガスを室内空気にて燃焼させ、生じた燃焼ガスを室内空気と共に対流させて暖房する暖房機であって、
請求項1〜6の何れか一項に記載の燃焼器と、前記燃焼器の前記燃料ガス流通路に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記燃焼器の前記空気流通路に空気を供給するとともに前記燃焼ガスと前記室内空気とを対流させる空気供給手段と、前記燃料ガス供給手段及び前記空気供給手段の作動を制御する制御手段とを備える暖房機。
【請求項8】
燃料ガスを室内空気にて燃焼させ、生じた燃焼ガスを室内空気と共に対流させて暖房する暖房機であって、
請求項5に記載の燃焼器と、前記燃焼器の前記燃料ガス流通路に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記燃焼器の前記空気流通路に空気を供給するとともに前記燃焼ガスと前記室内空気とを対流させる空気供給手段と、前記燃料ガス供給手段及び前記空気供給手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、実際の室内温度と設定室内温度との差に応じて前記燃焼器における燃焼量を変化させるべく、前記燃料ガス供給手段によって前記炎口ノズル群毎に燃料ガスの供給量を調節する暖房機。
【請求項9】
前記基材表面へ向けて前記基材裏面から貫通している複数の前記空気流通路に空気を供給する共通空気供給路を、前記燃焼器の前記基材裏面側に有する請求項7又は8に記載の暖房機。
【請求項10】
前記燃焼器の火炎を外部で視認可能に透過させる光透過部を備える請求項7〜9の何れか一項に記載の暖房機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−21706(P2012−21706A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159914(P2010−159914)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(500433225)学校法人中部大学 (105)
【Fターム(参考)】