説明

燃焼機

【課題】起動シーケンスの起動停止を短時間で繰り返した場合であっても、起動シーケンスの累積実行時間が安全範囲に留まるように制限する燃焼機およびその制御方法を提供する。
【解決手段】燃料ポンプ26の運転時間を計測積算する運転時間計測手段33及び運転時間積算手段35;燃焼センサ31が燃料の燃焼を検出すると運転時間積算手段35が積算する燃料ポンプ26の積算運転時間を0に戻す積算運転時間リセット手段36;及び、運転時間積算手段35が積算する燃料ポンプ26の積算運転時間が所定の閾値を超えた場合に、以後の燃料ポンプ26の起動を禁止する起動禁止手段37を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯油、軽油、重油等の液体燃料、プロパン、メタン等の気体燃料を使用する燃焼機、特に、点火の失敗を繰り返すことによって大量の生(未燃焼)の燃料が燃焼室内に滞留することを予防する安全装置を備えた燃焼機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
灯油、軽油等の液体燃料、プロパン、メタン等の気体燃料を使用する燃焼機は、家庭用の給湯機などの熱源として多用されている。この液体・気体燃料を使用する燃焼機を備えた給湯機は概略、次のように構成されている。
【0003】
すなわち前記給湯器は、缶体と、前記缶体の上部に配置された水管と、前記缶体の下部に配置された燃料噴射ノズルと、前記燃料噴射ノズルに燃料を供給する燃料供給手段と、前記燃料噴射ノズルの噴射口の近傍にある点火器と、前記燃料噴射ノズルの噴射口での燃料の燃焼を検出する燃焼センサ、及び前記缶体内に空気を吹き込む送風機とから構成されている。なお、前記水管は一種の熱交換器であり、一方の端から給水を送給して、燃料の燃焼熱を吸収して高温になった給水を他方の端から送出する。
【0004】
使用者が前記給湯器の起動スイッチを操作すると、前記給湯器は次のような起動シーケンスを実行する。
(1)まず、送風機を起動する。燃焼室の内部は前回の運転停止時の未燃焼ガスが滞留している可能性があるので、これらを排除して爆発着火を防止するためである。
(2)次に、点火器に通電する。なお点火器は燃料噴射ノズルから噴射する燃料を加熱して点火する加熱器であり、燃料の種類に応じてスパークプラグ、ニクロムヒータなど適したものを選ぶ。
(3)燃料供給手段を起動して、燃料噴射ノズルから燃料を噴射する。点火に成功して、燃焼センサが燃料の正常な燃焼を検出したら、起動シーケンスを終了し、連続運転シーケンスに制御を移す。
【0005】
点火器の通電と燃料の噴射を所定時間続けても、点火に成功しない場合は、送風機及び燃料供給手段の運転を停止するとともに点火器への通電も停止し、「点火失敗」旨の警報を発して次の操作を待つ。
【0006】
「点火失敗」の警報が示されると、使用者は点火失敗の原因を調べてそれを取り除いて、あるいは何もしないで、再度、起動スイッチを操作して前述の起動シーケンスを実行する。
【0007】
さて、点火失敗が続いて、前記起動シーケンスを徒に繰り返すと、燃料噴射ノズルから噴射された燃料は生(未燃焼)のまま缶体に滞留するので、つぎのような問題が生じる。
【0008】
缶体に滞留した燃料が気化して爆発雰囲気になった時に偶々点火に成功すると、爆発的な燃焼が行われ、給湯機を損壊する危険がある。あるいは、一時に大量の燃料が燃焼するので酸素不足の為に煤煙や一酸化炭素ガスが発生するおそれがある。また、缶体の内側には耐火物が貼られるが、この耐火物に染みこんだ燃料に火が付いた場合、その燃焼を制御することが出来ないので高温のため給湯機が破損するおそれがある。
【0009】
そこで、点火失敗の回数をカウントして、前記失敗回数が所定の回数に達した場合に、その後は起動シーケンスの実行が出来ないようにした燃焼機等が各種提案されている。
【0010】
例えば特許文献1には、燃料噴射ノズルと、この燃料噴射ノズルの燃焼を制御する燃焼制御部と、前記燃料噴射ノズルの燃焼状態を検出する燃焼センサと、前記燃料噴射ノズルの点火動作開始から、一定時間経過して、前記燃焼センサが燃焼を検出しなかったら、点火動作を停止する異常停止回路と、この異常停止状態をリセットし、再度点火動作に移る手動リセット手段と、異常停止の連続発生回数をカウントする異常カウンタとを備え、この異常カウンタのカウンタ値が、所定回数を越えると、手動リセットができないよう構成した燃焼機の制御回路が開示されている。
【0011】
また特許文献2には、操作部に設けた運転スイッチの操作に基づいて燃料噴射装置より燃料を噴射し、これを点火装置により点火して燃焼させるとともに、炎検知センサにより炎の有無を検知するようになした給湯機の運転制御方法であって前記燃料噴射装置による燃料噴射のための動作が、その後において炎の検知がないまま設定回数繰り返し行われたときに該給湯機を運転不能とすることを特徴とする給湯機の運転制御方法が開示されている。また、実施例の記載によれば、燃料供給手段の起動後10秒経過後に炎を検出できない場合を点火失敗と見なして警報表示を行い、使用者による運転スイッチの再操作を促している。
【0012】
また特許文献3には、点火制御手段が点火動作をしたにもかかわらず点火検出手段により点火の確認がなされなかった場合にはその回数をカウントするエラ−カウント手段と,点火エラ−をリセットして再点火動作を可能とする点火リセット手段と,前記点火リセット手段とは別に設けられ再点火動作を可能とする特別リセット手段と,前記エラ−カウント手段によるカウント値が所定回数までは前記点火リセット手段によるリセットを許容し,所定回数カウントした後は特別リセット手段によるリセットを許容して点火リセット手段によるリセットを受け付けないようにした点火制御装置が開示されている。
【0013】
また特許文献4には、入水した水を加熱燃焼して湯を給湯するために、燃料に点火させるための給湯器の点火制御装置であって、給湯開始時の点火の際に点火が行われるまでに行った点火動作回数をカウントする点火リサイクルカウンタと、給湯燃焼途中に消炎した際に給湯を継続するために行った再点火動作をカウントする途中消炎再点火カウンタとを別々に設け、これらカウンタ各々ごとに所定回数に達したことにより点火不良として安全動作に移行することを特徴とする給湯器の点火制御装置が開示されている。
【特許文献1】特許第2748630号公報
【特許文献2】特開平8−312945号公報
【特許文献3】特開平9−280556号公報
【特許文献4】特開平11−211080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、特許文献1乃至特許文献4に記載の発明は燃焼機の起動シーケンスの繰り返し回数を制限することによって、未燃焼の燃料が大量に缶体内に滞留することを防止しているので、爆発等のトラブルを予防する効果があるが、次のような問題がある。
【0015】
給湯機の保守のためにサービスマンが、燃焼状態を目視で確認しながら起動シーケンスを調整する場合があるが、このような場合、点火不良は目視によって即座に認識出来るから所定の時間が経過する前に、サービスマンは起動シーケンスを中断する。所定の時間が経過するまえに起動シーケンスを中断すると燃焼機の制御装置は点火失敗を認識しないから、起動シーケンスの繰り返し回数をカウントできない。したがって、サービスマンは起動シーケンスを無制限に繰り返すことができる。そのため、サービスマンの不注意により起動シーケンスを漫然と繰り返して、缶体の内部に大量の未燃焼燃料が滞留するというヒューマンエラーを排除できないという問題がある。
【0016】
本発明はこのような背景の下、起動シーケンスの起動停止を短時間で繰り返した場合であっても、燃料噴射ノズルから噴射される燃料の量が安全範囲に留まるように制限できる燃焼機およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る燃焼機の第1の構成は、燃焼室と、前記燃焼室内に向けて装置された燃料噴射ノズルと、前記燃料噴射ノズルに燃料を供給する燃料供給手段と、前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料に点火する点火器と、前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料の燃焼状態を検出する燃焼センサと、前記点火器と前記燃料供給手段を起動する点火スイッチと、前記燃料供給手段と前記点火器の起動及び停止を制御する制御手段とを備える燃焼機において、前記制御手段は前記燃料供給手段の運転時間又は前記燃料噴射ノズルに供給された燃料の供給量を計測して積算する計測積算手段;前記燃焼センサが前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料の正常な燃焼を検出すると前記計測積算手段が積算する前記燃料供給手段の運転時間(以下「積算運転時間」という。)又は供給量(以下「積算供給量」という。)を0に戻す積算量リセット手段;及び、前記計測積算手段が積算する前記燃料供給手段の積算運転時間又は積算供給量が所定の閾値を超えた場合に、以後の前記点火スイッチによる前記燃料供給手段の起動を禁止する起動禁止手段を備えることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、燃料供給手段の運転時間又は前記燃料噴射ノズルに供給された燃料の供給量を積算し、積算運転時間又は積算供給量が所定の閾値を超えた場合に、以後の点火スイッチによる燃料供給手段の起動を禁止するので、起動シーケンスを漫然と繰り返して、未燃焼の燃料を燃焼室内に滞留させることを防止できる。なお、ここで「正常な燃焼」とは連続的に安定した燃焼を意味し、断続的な燃焼や、点火後すぐに立ち消えするような状態を「不正常な燃焼」として除外する意である。
【0019】
なお、ここで燃料供給手段とは、燃料噴射ノズルに燃料を供給するとともに、前記燃料の供給を自在に遮断する手段であり、燃料供給手段の運転時間とは燃料供給手段が燃料噴射ノズルに燃料を供給している時間をいう。灯油等の液体燃料を使用する燃焼機にあっては、灯油等を加圧して燃料噴射ノズルに圧送する燃料ポンプ等が燃料供給手段に相当し、プロパン等の高圧ガスを使用する燃焼機にあっては、燃料噴射ノズルにプロパン等を供給する管路を開閉する電磁弁等が燃料供給手段に相当する。また、燃料ポンプの起動から停止までの経過時間あるいは電磁弁が管路を開放している時間が燃料供給手段の運転時間に相当する。
【0020】
本発明に係る燃焼機の第2の構成は、前記第1の構成において、前記起動禁止手段は、前記燃料供給手段の起動を禁止した旨を示す警報を表出する警報表出手段を有することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、燃料供給手段の起動を禁止した旨を示す警報を表出するので、積算運転時間の超過によって、起動シーケンスの実行が禁止されたことを容易に認識することができる。
【0022】
本発明に係る燃焼機の第3の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記起動禁止手段は、前記計測積算手段が積算する前記燃料供給手段の積算運転時間又は積算供給量が前記所定の閾値を超えた場合に、以後の前記点火スイッチによる前記点火器の起動を禁止することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、積算運転時間又は積算供給量が閾値を超過した場合に、燃料供給手段に加えて点火器の起動を禁止するので、燃焼室内に滞留した未燃焼の燃料に不用意に点火することを防止できる。
【0024】
本発明に係る燃焼機の第4の構成は、前記第1乃至第3のいずれかの構成において、前記制御手段は、前記燃料供給手段と前記点火器の起動後、前記燃焼センサが前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料の正常な燃焼を検出しないまま所定の時間が経過すると、前記燃料供給手段と前記点火器の運転を一旦中止し、前記点火スイッチの再度の操作を待つ起動中止手段を備えることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、燃料供給手段と点火器の起動後、燃焼センサが燃料噴射ノズルの燃焼を検出しないまま所定の時間が経過すると、燃料供給手段と点火器の運転を一旦中止するので、起動シーケンスを漫然と実行し続けることを防止できる。
【0026】
本発明に係る燃焼機の第5の構成は、前記第4の構成において、前記起動中止手段は、前記燃料供給手段と前記点火器の運転を一旦中止した旨を示す警報を表出する警報表出手段を有することを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、燃料供給手段と前記点火器の運転を一旦中止した旨を示す警報を表出するので、ユーザにその旨を容易に理解させることができる。
【0028】
本発明に係る燃焼機の制御方法の第1の構成は、燃焼室と、前記燃焼室内に向けて装置された燃料噴射ノズルと、前記燃料噴射ノズルに燃料を供給する燃料供給手段と、前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料に点火する点火器と、前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料の燃焼状態を検出する燃焼センサと、前記点火器と前記燃料供給手段を起動する点火スイッチと、前記燃料供給手段と前記点火器の起動及び停止を制御する制御手段とを備える燃焼機の制御方法において、前記燃料供給手段の運転時間又は前記燃料噴射ノズルに供給された燃料の供給量を計測して積算する計測積算ステップ;前記燃焼センサが前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料の正常な燃焼を検出した場合に前記計測積算ステップの実行を停止するとともに、前記燃料供給手段の運転時間の積算値(以下「積算運転時間」という。)又は供給量の積算値(以下「積算供給量」という。)を0に戻す積算量リセットステップ;及び、前記計測積算ステップが積算する前記燃料供給手段の積算運転時間又は積算供給量が所定の閾値を超えた場合に、以後の前記点火スイッチによる前記燃料供給手段の起動を禁止する起動禁止ステップを備えることを特徴とする。
【0029】
本発明に係る燃焼機の制御方法の第2の構成は、前記第1の構成において、前記起動禁止ステップは、前記燃料供給手段を禁止した旨を示す警報を警報表出手段に表出することを特徴とする。
【0030】
本発明に係る燃焼機の制御方法の第3の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記起動禁止ステップは、前記計測積算手段が積算する前記燃料供給手段の積算運転時間又は積算供給量が前記所定の閾値を超えた場合に、以後の前記点火スイッチによる前記点火器の起動を禁止することを特徴とする。
【0031】
本発明に係る燃焼機の制御方法の第4の構成は、前記第1乃至第3の何れかの構成において、前記燃料供給手段と前記点火器の起動後、前記燃焼センサが前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料の正常な燃焼を検出しないまま所定の時間が経過すると、前記燃料供給手段と前記点火器の運転を一旦中止し、前記点火スイッチの再度の操作を待つ起動中止ステップを備えることを特徴とする。
【0032】
本発明に係る燃焼機の制御方法の第5の構成は、前記第4の構成において、前記起動中止ステップは、前記燃料供給手段と前記点火器の運転を一旦中止した旨を示す警報を警報表出手段に表出することを特徴とする。
【0033】
本発明に係るプログラムは、コンピュータ上で実行する事により、前記コンピュータを前記第1乃至第5の構成に係る燃焼機の制御手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、本発明によれば、燃料供給手段の積算運転時間を未燃焼燃料の滞留が安全範囲に留まるように制限できるので、燃焼機の安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0036】
図1は本発明の実施例に係る給湯機の構成図である。図1から明らかなように、給湯機1は、給湯機本体2、制御盤3及びリモコン4から構成されている。給湯機本体2はいわゆる貯湯式のボイラであって、略二重円筒状を成して、内部円筒の内部の空間を燃焼室21とし、外部円筒と内部円筒の間の空間を貯湯槽22としている。貯湯槽22には図示しない給水管によって給水が行われ、燃焼室21内で焚かれる灯油の燃焼熱によって温水を調製する。前記温水は図示しない給湯管によってカランやシャワーヘッド等の消費端末(図示せず)に送給される。また燃焼室21の側壁には送風機23が装置されている。また送風機23の吹き出し口の内部には燃料噴射ノズル24が取り付けられて燃焼室21に臨んでいる。また燃料噴射ノズル24の近傍には点火器25が取り付けられている。なお、26は燃料噴射ノズル24に燃料の灯油を供給する燃料ポンプである。
【0037】
制御盤3はリモコン4から入力される操作指令とその内部に書き込まれた制御プログラムに従って給湯機本体2を制御するコンピュータである。つまり、制御盤3は前記操作指令と制御プログラムに従って、送風機23の起動/停止、燃料ポンプ26の起動/停止及び速度(=燃料送給量)調整、及び点火器25への通電/停止を指令する装置である。また31は燃焼センサである。燃焼センサ31はCdS等の光センサであり、燃料噴射ノズル24から噴出する灯油の燃焼による火炎を検出する。32は貯湯槽22内の温水の温度を検出する温度センサである。なお、制御盤3の詳細な構成は後述する。
【0038】
リモコン4は制御盤3に操作信号を入力するとともに、制御盤3から出力される制御情報を表示する装置であり、運転スイッチ41と表示器42を備えている。運転スイッチ41は給湯機1の起動及び停止を行う押しボタンスイッチであり、給湯機1の停止中に運転スイッチ41を押し下げると、起動シーケンスが起動され、送風機23、点火器25および燃料ポンプ26が起動し、給湯機1の運転中あるいは起動シーケンスの実行中に運転スイッチ41を押し下げると、送風機23、点火器25および燃料ポンプ26が停止する。表示器42は給湯機1の運転制御に係わる各種の情報を文字あるいは図形で表示する液晶やLEDを利用した表示装置である。
【0039】
図2は、制御盤3の構成を示す制御ブロック図である。図2において、33は運転時間計測手段、34は起動中止手段、35は運転時間積算手段、36は積算時間リセット手段、37は起動禁止手段である。
【0040】
運転時間計測手段33は、燃料ポンプ26が起動されると時間の計測を開始し、燃料ポンプ26が停止すると前記時間の計測を終了し、その結果を運転時間積算手段35に送信するとともに、その後計測結果を0にリセットする制御モジュールである。つまり、運転時間計測手段33は燃料ポンプ26の運転開始から停止までの時間を1回の運転毎に計測する。また、運転時間計測手段33は、常時、起動中止手段34に依ってモニタされている。
【0041】
起動中止手段34は運転時間計測手段33が計測する燃料ポンプ26の運転時間が所定の時間(例えば10秒)を超えた時に燃焼センサ31が灯油の正常燃焼を検出していなければ、点火器25、燃料ポンプ26及び送風機23の運転を停止し、運転スイッチ41をリセットして、次回の「運転入」の入力を可能にするとともに、表示器42に「点火失敗」のメッセージを表示する制御モジュールである。
【0042】
運転時間積算手段35は、運転時間計測手段33から送信される燃料ポンプ26の運転時間を逐次加算して燃料ポンプ26の積算運転時間を算出し保持する制御モジュールであり、燃料ポンプ26の運転時間が加算される度、つまり燃料ポンプ26の積算運転時間が更新される度にその値を起動禁止手段37に送信する。
【0043】
積算時間リセット手段36は、燃焼センサ31が灯油の正常燃焼を検出した場合に起動されて、運転時間積算手段35が保持している燃料ポンプ26の積算運転時間を0に戻す制御モジュールである。なお、積算時間リセット手段36は制御盤3への主電源の投入の際にも起動されて、燃料ポンプ26の積算運転時間を0に戻す。
【0044】
起動禁止手段37は、運転時間積算手段35が保持している燃料ポンプ26の積算運転時間が所定の閾値(例えば100秒)を超えた時に起動されて、点火器25と燃料ポンプ26を主電源から切り離して、以後、運転スイッチ41の操作による点火器25と燃料ポンプ26の起動を禁止するとともに、表示器42に「点火失敗」のメッセージを表示する制御モジュールである。
【0045】
図3は制御盤3によって実行される給湯機1の起動シーケンスを示すフローチャートである。以下、図3に付したステップ番号を引用しながら、この起動シーケンスを説明する
【0046】
(ステップ1)起動シーケンスは制御盤3への主電源の投入によって開始される。前記主電源が投入されると、積算時間リセット手段36が起動されて、運転時間積算手段35が保持している燃料ポンプ26の積算運転時間Tを0に戻す。
【0047】
(ステップ2)運転スイッチ41の操作による起動指令が入力されるのを待つ。起動指示が入力されたらステップ3に進む。
【0048】
(ステップ3)起動シーケンスを実行する。すなわち、送風機23を起動して燃焼室21内の掃気を行い、点火器25に通電してスパークを発生させ、最後に燃料ポンプ26を起動して、燃料噴射ノズル24から灯油を噴射するともに、運転時間計測手段33を起動する。
【0049】
(ステップ4)燃焼センサ31が安定した火炎を検出したら、正常に点火されたと判断して、ステップ5に進む。所定時間内に燃焼センサ31が火炎を検出できなかった場合、あるいは、運転スイッチ41の操作によって起動シーケンスの中止が指令された場合は、ステップ6に進む。
【0050】
(ステップ5)積算時間リセット手段36を起動して、運転時間積算手段35が保持している燃料ポンプ26の積算運転時間Tを0に戻し、その後、給湯機1の制御を燃焼制御シーケンスに移す。
【0051】
(ステップ6)表示器42に「点火失敗」の警報を表示するとともに、送風機23及び燃料ポンプ26を停止し、点火器25の通電を停止し、更に運転時間計測手段33を停止する。
【0052】
(ステップ7)何回かの点火失敗によって、運転時間積算手段35が保持している燃料ポンプ26の積算運転時間Tが所定の閾値Tmaxより大きければ、ステップ8に進み、そうでなければステップ2に進んで、リモコン4の操作による運転スイッチ41よる起動指令が再入力されるのを待つ。
【0053】
(ステップ8)起動禁止手段37を起動して、点火器25と燃料ポンプ26への電力の供給を遮断するとともに。表示器42に「点火不能」の警報を表示して、起動シーケンスを停止する。これにより、以後の運転スイッチ41の操作による起動シーケンスの起動は無効になる。
【0054】
図4は、本発明による給湯機1の起動運転停止の例を説明する図である。図4において横軸は、燃料ポンプ26の最初の起動時を起点とする時間tの経過を、縦軸は燃料ポンプ26の積算運転時間Tをそれぞれ示している。この図では給湯機1の起動(点火)を4回試み、4回とも失敗し、4回目で燃料ポンプ26の積算運転時間Tが閾値Tmaxを超えたので、5回目以降の起動が禁止されたことを示している。
【0055】
図5は、リモコン4の具体的な設計例を示す図である。表示器42はバックライト付の液晶表示器であり、通常の運転時には時刻及び給湯設定温度を表示するが、点火失敗時には「点火失敗」を意味するエラーコード”E7”を点滅表示し、点火不能(起動禁止)時には「点火不能」を意味するエラーコード”E9”を点滅表示する。
【0056】
なお、本実施例では燃料ポンプ26の積算運転時間Tが閾値Tmaxを超えた場合に、以後の運転スイッチ41の操作による起動シーケンスの起動を無効にする構成を示したが、起動シーケンスの調整に当たっては、点火を試行する度に燃料ポンプ26の速度(=燃料送給量)を変更して燃料ポンプ26の速度の最適化を行う場合がある。このような場合に燃料ポンプ26の積算運転時間Tを起動シーケンスの起動の制限に用いるのは適当ではない。そこで、燃料ポンプ26による燃料の供給量を積算して、その積算値が所定の閾値を超えた場合に、以後の運転スイッチ41の操作による起動シーケンスの起動を無効にするようにしてもよい。この場合、燃料の供給量は燃料ポンプ26と燃料噴射ノズル24の間に専用の流量計を備えて計測してもよいし、燃料ポンプ26の運転時間に速度(=燃料送給量)を乗じて求めてもよい。
【0057】
また、運転スイッチ41による点火器25及び燃料ポンプ26の起動が禁止された場合は、制御盤3の主電源を一旦遮断し再度投入すれば、制御盤3の制御パラメータが初期値にもどるので、前記起動禁止は解除される。あるいは、起動禁止解除用のリセットスイッチを備えてもよい。またあるいは、所定の時間(例えば24時間)経過すると自動的に起動禁止が解除されるようなタイマを備えてもよい。
【0058】
また、本実施例は「点火失敗」「点火不能」の警報を表示器42に文字で表示する例を示したが、警報の表示は文字に限られるものではない、図形、記号、音声等の各種の表示手段を選択することができる。
【0059】
また、本実施例では灯油を燃料とする燃焼機を取り上げたが、本発明はこれに限られるのではなく、軽油、重油等の液体燃料、プロパン、メタン等の気体燃料を使用する燃焼機にも適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例に係る給湯機の構成図である。
【図2】前記給湯機の制御盤の構成を示す制御ブロック図である。
【図3】前記制御盤によって実行される給湯機の起動シーケンスを示すフローチャートである。
【図4】本発明による給湯機の起動運転停止の例を説明する図である。
【図5】リモコンの具体的な設計例を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 給湯機
2 給湯機本体
3 制御盤
4 リモコン
21 燃焼室
22 貯湯槽
23 送風機
24 燃料噴射ノズル
25 点火器
26 燃料ポンプ(燃料供給手段)
31 燃焼センサ
32 温度センサ
33 運転時間計測手段(計測手段)
34 起動中止手段
35 運転時間積算手段(積算手段)
36 積算時間リセット手段
37 起動禁止手段
41 運転スイッチ(点火スイッチ)
42 表示器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室と、
前記燃焼室内に向けて装置された燃料噴射ノズルと、
前記燃料噴射ノズルに燃料を供給する燃料供給手段と、
前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料に点火する点火器と、
前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料の燃焼状態を検出する燃焼センサと、
前記点火器と前記燃料供給手段を起動する点火スイッチと、
前記燃料供給手段と前記点火器の起動及び停止を制御する制御手段
とを備える燃焼機において、
前記制御手段は
前記燃料供給手段の運転時間又は前記燃料噴射ノズルに供給された燃料の供給量を計測して積算する計測積算手段;
前記燃焼センサが前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料の正常な燃焼を検出すると前記計測積算手段が積算する前記燃料供給手段の運転時間(以下「積算運転時間」という。)又は供給量(以下「積算供給量」という。)を0に戻す積算量リセット手段;
及び、前記計測積算手段が積算する前記燃料供給手段の積算運転時間又は積算供給量が所定の閾値を超えた場合に、以後の前記点火スイッチによる前記燃料供給手段の起動を禁止する起動禁止手段
を備えることを特徴とする燃焼機。
【請求項2】
前記起動禁止手段は、前記燃料供給手段の起動を禁止した旨を示す警報を表出する警報表出手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の燃焼機。
【請求項3】
前記起動禁止手段は、前記計測積算手段が積算する前記燃料供給手段の積算運転時間又は積算供給量が前記所定の閾値を超えた場合に、以後の前記点火スイッチによる前記点火器の起動を禁止すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃焼機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記燃料供給手段と前記点火器の起動後、前記燃焼センサが前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料の正常な燃焼を検出しないまま所定の時間が経過すると、前記燃料供給手段と前記点火器の運転を一旦中止して、前記点火スイッチの再度の操作を待つ起動中止手段を備えること
を特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の給湯機。
【請求項5】
前記起動中止手段は、前記燃料供給手段と前記点火器の運転を一旦中止した旨を示す警報を表出する警報表出手段を有すること
を特徴とする請求項4に記載の燃焼機。
【請求項6】
燃焼室と、
前記燃焼室内に向けて装置された燃料噴射ノズルと、
前記燃料噴射ノズルに燃料を供給する燃料供給手段と、
前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料に点火する点火器と、
前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料の燃焼状態を検出する燃焼センサと、
前記点火器と前記燃料供給手段を起動する点火スイッチと、
前記燃料供給手段と前記点火器の起動及び停止を制御する制御手段とを備える燃焼機の制御方法において、
前記燃料供給手段の運転時間又は前記燃料噴射ノズルに供給された燃料の供給量を計測して積算する計測積算ステップ;
前記燃焼センサが前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料の正常な燃焼を検出した場合に前記計測積算ステップの実行を停止するとともに、前記燃料供給手段の運転時間の積算値(以下「積算運転時間」という。)又は供給量の積算値(以下「積算供給量」という。)を0に戻す積算量リセットステップ;
及び、前記計測積算ステップが積算する前記燃料供給手段の積算運転時間又は積算供給量が所定の閾値を超えた場合に、以後の前記点火スイッチによる前記燃料供給手段の起動を禁止する起動禁止ステップ
を備えることを特徴とする燃焼機の制御方法。
【請求項7】
前記起動禁止ステップは、前記燃料供給手段の起動を禁止した旨を示す警報を警報表出手段に表出すること
を特徴とする請求項6に記載の燃焼機の制御方法。
【請求項8】
前記起動禁止ステップは、前記計測積算手段が積算する前記燃料供給手段の積算運転時間又は積算供給量が前記所定の閾値を超えた場合に、以後の前記点火スイッチによる前記点火器の起動を禁止すること
を特徴とする請求項6又は請求項7に記載の燃焼機の制御方法。
【請求項9】
前記燃料供給手段と前記点火器の起動後、前記燃焼センサが前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料の正常な燃焼を検出しないまま所定の時間が経過すると、前記燃料供給手段と前記点火器の運転を一旦中止し、前記点火スイッチの再度の操作を待つ起動中止ステップを備える
ことを特徴とする請求項6乃至請求項8の何れかに記載の給湯機の制御方法。
【請求項10】
前記起動中止ステップは、前記燃料供給手段と前記点火器の運転を一旦中止した旨を示す警報を警報表出手段に表出すること
を特徴とする請求項9に記載の燃焼機。
【請求項11】
コンピュータ上で実行する事により、前記コンピュータを請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の制御手段として機能させること
を特徴とするプログラム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−127324(P2007−127324A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320035(P2005−320035)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(390002886)株式会社長府製作所 (197)
【Fターム(参考)】