説明

燃焼装置

【課題】ファンの回転速度が変更されても望ましい空燃比を維持し、安定した燃焼を実現する。
【解決手段】低燃焼工程から高燃焼工程へ移行するときは、ファンの回転速度の高燃焼用回転速度への変更を開始するとともに、流量調整弁と移行弁は開弁状態とし、流量調整弁はファンの回転速度の増加と対応するように燃料供給量を無段階的に増加させ、移行弁が開かれた時点から所定時間経過後、移行弁が閉弁状態とするとともに第二燃料弁は開弁状態とする。高燃焼工程から低燃焼工程へ移行するときは、ファンの回転速度の低燃焼用回転速度への変更を開始するとともに、移行弁は開弁状態、第二燃料弁は閉弁状態とし、流量調整弁がファンの回転速度の減少と対応するように燃料供給量を無段階的に減少させ、移行弁が開かれた時点から所定時間経過後、移行弁は閉弁状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ファンの回転速度を制御することにより風量調整を行う送風装置を備えた燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃焼状態を高燃焼、低燃焼、停止の三位置など設定された複数の燃焼状態で燃焼制御を行う、ボイラなどの燃焼装置においては、各燃焼状態に応じて必要とされる空気量がそれぞれ異なる。そこで、送風装置を構成するファンを備えた電動機にインバータを接続し、ファン回転速度を増減することにより、各燃焼状態において必要とされる量の燃焼用空気を供給することが行われている。
【0003】
しかしながら、このような燃焼装置においては、送風装置がファン回転速度の変更を開始してから必要な風量に達するまでにある程度の時間を要するのに対し、燃料供給量の変更は弁の切替えにより瞬時に行われるため、燃料と空気量との比率(以下、「空燃比」と言う。)が崩れ、燃焼不良が発生するという問題があった。
【0004】
そこで、下記特許文献1に開示される燃焼装置が提案されている。特許文献1に記載の燃焼装置は、一定量の燃料を通過させる2つの電磁弁を備えており、図5に示すように、低燃焼においては第1電磁弁のみ開弁状態として燃料供給を行い、低燃焼から高燃焼へ燃焼工程を変更する場合には、まず送風装置がファン回転速度の増加を開始し、その増加開始から所定時間Ta経過後に第2電磁弁を開くというものである。また、高燃焼から低燃焼へ燃焼工程を変更する場合も同様に、まず送風装置がファンの回転速度の減少を開始し、その減少開始から所定時間経過後に第2電磁弁を閉じるように構成されている。すなわち、特許文献1に記載の燃焼装置は、第2電磁弁の開閉をファン回転速度の変更開始時点から所定時間遅らせて燃料供給量の変更を行うことにより、空燃比の崩れを極力抑えようとするものである。
【特許文献1】特開平9−210349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の燃焼装置においては、低燃焼工程と高燃焼工程との間で行われる燃料供給量の変更は、第2電磁弁の開閉のみで行われる2段階の変化であることから、ファン回転速度の変更開始から第2電磁弁が開閉されるまでの間は空燃比が大きく崩れてしまい、燃焼不良が発生する原因となっていた。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、送風装置のファン回転速度が変更されても常に望ましい空燃比を保つことができ、安定した燃焼を行うことのできる燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、ファンの回転速度を、少なくとも高燃焼用回転速度、または前記高燃焼用回転速度より低い回転速度の低燃焼用回転速度に制御することにより風量調整を行う送風装置と、燃料供給量を無段階的に変化させる燃料供給装置とを備えており、燃焼工程を変更する場合には、前記送風装置は前記ファンの回転速度の変更を行う一方、前記燃料供給装置は前記ファンの回転速度の変化と対応するように燃料供給量を無段階的に変化させることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、ファンの回転速度の移行時においても望ましい空燃比を維持することができ、安定した燃焼を行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成要件に加えて、前記燃料供給装置は、少なくとも低燃焼工程において開弁状態とされる第一燃料弁と、高燃焼工程において開弁状態とされる第二燃料弁と、燃料供給量を無段階的に変化させる流量調整弁と、前記流量調整弁を通過する燃料の供給の有無を切り替える移行弁とを備えており、低燃焼工程から高燃焼工程へ移行するときは、前記送風装置が前記ファンの回転速度の高燃焼用回転速度への変更を開始するとともに、前記移行弁は開弁状態とされ、前記流量調整弁は前記ファンの回転速度の増加と対応するように燃料供給量を無段階的に増加させ、前記移行弁が開かれた時点から所定時間経過後、前記移行弁が閉弁状態とされるとともに前記第二燃料弁は開弁状態とされ、高燃焼工程から低燃焼工程へ移行するときは、前記送風装置が前記ファンの回転速度の低燃焼用回転速度への変更を開始するとともに、前記移行弁は開弁状態、前記第二燃料弁は閉弁状態とされ、前記流量調整弁が前記ファンの回転速度の減少と対応するように燃料供給量を無段階的に減少させ、前記移行弁が開かれた時点から所定時間経過後、前記移行弁は閉弁状態とされることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、ファンの回転速度の移行時においても望ましい空燃比を維持することができ、安定した燃焼を行うことができるのに加え、流量調整弁に起因する流路の詰まりなどを効果的に防止することができ、故障の少ない安定した運転を可能とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成要件に加えて、前記燃料供給装置は、低燃焼工程において開弁状態とされる第一燃料弁と、高燃焼工程において開弁状態とされる第二燃料弁と、燃料供給量を無段階的に変化させる流量調整弁と、前記流量調整弁を通過する燃料の供給の有無を切り替える移行弁とを備えており、低燃焼工程から高燃焼工程へ移行するときは、前記送風装置が前記ファンの回転速度の高燃焼用回転速度への変更を開始するとともに、前記移行弁は開弁状態とされ、前記流量調整弁は前記ファンの回転速度の増加と対応するように燃料供給量を無段階的に増加させ、前記移行弁が開かれた時点から所定時間経過後、前記移行弁と前記第一燃料弁が閉弁状態とされるとともに、前記第二燃料弁は開弁状態とされ、高燃焼工程から低燃焼工程へ移行するときは、前記送風装置が前記ファンの回転速度の低燃焼用回転速度への変更を開始するとともに、前記第一燃料弁と前記移行弁は開弁状態、前記第二燃料弁は閉弁状態とされ、前記流量調整弁が前記ファンの回転速度の減少と対応するように燃料供給量を無段階的に減少させ、前記移行弁が開かれた時点から所定時間経過後、前記移行弁は閉弁状態とされることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、ファンの回転速度の移行時においても望ましい空燃比を維持することができ、安定した燃焼を行うことができるのに加え、流量調整弁に起因する流路の詰まりなどを効果的に防止することができ、故障の少ない安定した運転を可能とする。さらには、高燃焼用ノズルと低燃焼用ノズルとを設けた場合には、2つのノズルから燃焼室内へ噴霧される燃料が互いに干渉して燃焼不良を起こすことがなく、より良好な燃焼を実現することができる。
【0013】
さらに、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の構成要件に加えて、少なくとも高燃焼用風量位置、または前記高燃焼用風量位置より開度の小さい低燃焼用風量位置に配置されることにより、前記送風装置からの風量を制御するダンパを備え、燃焼工程の移行時には、前記ファンの回転速度の変化および前記ダンパの開度変化と対応するように燃料供給量を無段階的に変化させることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、さらにダンパを備えた場合でも、ファンの回転速度の移行時においても望ましい空燃比を維持することができ、安定した燃焼を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、送風装置のファン回転速度が変更されても望ましい空燃比を保ち続けることができ、安定した燃焼を実現できる燃焼装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。本発明は、高燃焼、低燃焼および停止の三段階で燃焼量を調整する三位置式燃焼制御などの多位置式燃焼制御を行う燃焼装置に用いられる。本発明の燃焼装置は、燃焼室へ燃焼用空気を供給する送風装置を備えている。この送風装置は、ファンを備えた電動機と、電動機に接続されファンの回転速度を制御する風量制御装置とを備えている。この風量制御装置としては、特に限定されないがインバータが好適に用いられる。前記送風装置は、ファンの回転速度を高燃焼用回転速度、着火用回転速度および低燃焼用回転速度に増減することにより、三段階の風量を供給する。この高燃焼用回転速度および着火用回転速度は、低燃焼用回転速度よりも速い回転速度に設定されている。この着火用回転速度は、簡単化のため高燃焼用回転速度と同一の回転速度として兼用させることもできる。ところで、三位置式燃焼制御以外の多位置式燃焼制御を採用する場合は、これらの回転速度に加えて他の回転速度を設定することもできる。
【0017】
まず、本発明の第一の実施形態は、燃焼工程を変更する場合には、送風装置はファンの回転速度の変更を行う一方、燃料供給装置は前記ファンの回転速度の変化と対応するように燃料供給量を無段階的に変化させる。ここで、燃料の種類は特に限定されない。また、ファンの回転速度の変化と対応するように燃料供給量を無段階的に変化させるとは、ファンの回転速度の変化に伴い増減する風量に対し、望ましい空燃比を維持するように燃料供給量を無段階的に変化させることをいい、ファンの回転速度が経過時間に比例して増減する場合に限られない。
【0018】
次に、本発明の第二の実施形態は、低燃焼工程から高燃焼工程へ移行するときは、前記送風装置が前記ファンの回転速度の高燃焼用回転速度への変更を開始するとともに、前記移行弁は開弁状態とされ、前記流量調整弁は前記ファンの回転速度の増加と対応するように燃料供給量を無段階的に増加させ、前記移行弁が開かれた時点から所定時間経過後、前記移行弁が閉弁状態とされるとともに前記第二燃料弁は開弁状態とされ、高燃焼工程から低燃焼工程へ移行するときは、前記送風装置が前記ファンの回転速度の低燃焼用回転速度への変更を開始するとともに、前記移行弁は開弁状態、前記第二燃料弁は閉弁状態とされ、前記流量調整弁が前記ファンの回転速度の減少と対応するように燃料供給量を無段階的に減少させ、前記移行弁が開かれた時点から所定時間経過後、前記移行弁は閉弁状態とされるというものである。
【0019】
ここで、第一燃料弁および第二燃料弁は、開閉の二動作で制御され、開弁状態において一定量の燃料を通過させるものである。この第二燃料弁は、高燃焼工程においてのみ開かれる。そして、第一燃料弁を通過して供給される燃料は、低燃焼工程において必要な燃料供給量に設定されている。また、前記流量調整弁は、通過して供給される燃料供給量を無段階的に変化させるものである。この流量調整弁としては、流路面積の大きさを無段階的に調節することにより燃料供給量を変化させるものがあるが、弁の種類は特に限定されない。前記移行弁は、開閉の二動作で制御されるものであって、前記流量調整弁を通過する燃料の供給の有無を切り替えるものである。このように、高燃焼工程において一定量の燃料を通過させる第二燃料弁を設け、流量調整弁をファン回転速度の移行時においてのみ使用するようにしたことにより、前記流量調整弁に起因する流路の詰まりなどを効果的に防ぐことができ、故障の少ない安定した運転が実現できる。
【0020】
また、前記移行弁は、低燃焼工程から高燃焼工程へ移行するときは、送風装置がファンの回転速度の高燃焼用回転速度への変更を開始するとともに開かれ、所定時間経過後に閉じられる。また、高燃焼工程から低燃焼工程へ移行するときは、前記移行弁は、送風装置がファンの回転速度の低燃焼用回転速度への変更を開始するとともに開かれ、所定時間経過後に閉じられる。なお、前記所定時間の経過を計測する手段としては、タイマー装置により時間を計測する手段のほか、タイマー装置に代えて、送風装置により供給された風量を検知する風圧センサ、インバータから電動機へ出力される周波数信号、流量調整弁を通過する燃料供給量を検知する流量センサなどの各種センサを用い、検出値が設定値に達した時点で移行弁を閉じるようにすることにより、所定時間経過後に閉じられるようにする手段を含む。ところで、低燃焼工程および高燃焼工程は、それぞれ低燃焼状態の工程,高燃焼状態の工程を意味する。
【0021】
本発明の第三の実施形態は、低燃焼工程から高燃焼工程へ移行するときは、前記送風装置が前記ファンの回転速度の高燃焼用回転速度への変更を開始するとともに、前記移行弁は開弁状態とされ、前記流量調整弁は前記ファンの回転速度の増加と対応するように燃料供給量を無段階的に増加させ、前記移行弁が開かれた時点から所定時間経過後、前記移行弁と前記第一燃料弁が閉弁状態とされるとともに、前記第二燃料弁は開弁状態とされ、高燃焼工程から低燃焼工程へ移行するときは、前記送風装置が前記ファンの回転速度の低燃焼用回転速度への変更を開始するとともに、前記第一燃料弁と前記移行弁は開弁状態、前記第二燃料弁は閉弁状態とされ、前記流量調整弁が前記ファンの回転速度の減少と対応するように燃料供給量を無段階的に減少させ、前記移行弁が開かれた時点から所定時間経過後、前記移行弁は閉弁状態とされるというものである。
【0022】
この第三の実施形態では、高燃焼工程において、第一燃料弁は閉弁状態とされ、第二燃料弁のみが開弁状態とされる。つまり、第一燃料弁を通過して供給される燃料は、低燃焼工程において必要な供給量に設定され、第二燃料弁を通過して供給される燃料は、高燃焼工程において必要な供給量に設定されている。
【0023】
さらに、本発明の第四の実施形態では、燃焼工程の移行時には、前記ファンの回転速度の変化および前記ダンパの開度変化と対応するように燃料供給量を無段階的に変化させるものである。
【0024】
ここで、前記ダンパは、送風装置により供給される燃焼用空気の風量を制御するものである。そして、燃焼工程の移行時においては、前記ファンの回転速度の変化および前記ダンパの開度変化に伴い増減する風量に対し、燃料供給装置は望ましい空燃比を維持するように燃料供給量を無段階的に変化させる。
【実施例1】
【0025】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、第一実施例の燃焼装置の概略構成図、図2は、第一実施例の燃焼装置における燃料供給装置の概略構成図であり、図3は、第一実施例の燃焼装置が実行する制御のタイムチャートである。
【0026】
本実施例の燃焼装置1は、図1に示すように、ファンの回転速度を制御することにより風量調整を行う送風装置2と、前記送風装置2により供給された燃焼用空気の風量を制御するダンパ3と、燃料供給量を無段階的に変化させる燃料供給装置4とを備え、燃焼室5内で燃焼を行う。前記送風装置2、ダンパ3、および燃料供給装置4は、制御部6からの制御信号に基づき制御されている。本発明において、燃料の種類は限定されないが、本実施例の燃焼装置1は油焚きボイラである。
【0027】
前記送風装置2は、ファン(図示せず)を備えた電動機7と、電動機7に接続されファン回転速度を制御するインバータ8とを備えており、制御部6からの制御信号に基づきインバータ8から出力される周波数信号を変化させることによりファン回転速度を制御する。本実施例では、この周波数信号として、高いほうから高燃焼用周波数、着火用周波数、および低燃焼用周波数が設定されており、各周波数により運転されるときのファン回転速度が、それぞれ高燃焼用回転速度、着火用回転速度、低燃焼用回転速度となる。ところで、高燃焼用周波数より着火用周波数を高い数値に設定してもよい。また、この実施例においては、パージ用の周波数は着火用周波数と同じに設定している。
【0028】
また、前記ダンパ3は、送風装置2により供給される燃焼用空気の流路となるダクト9内に設けられ、ダクト9の断面を一部閉じることにより前記燃焼用空気の風量を制御する。このダンパ開度として、高燃焼用風量位置(ダクト9の中心軸方向,すなわち空気の流れ方向に垂直の方向に対して90°)、前記高燃焼用風量位置より開度の小さい低燃焼用風量位置(ダクト9の中心軸方向に垂直の方向に対して25°)、および前記低燃焼用風量位置より更に開度の小さい着火用風量位置(ダクト9の中心軸方向に垂直の方向に対して20°)の3位置が設定されている。
【0029】
次に、図2を参照しながら、本実施例の燃料供給装置4について説明する。燃料供給装置4は、燃料ポンプ(図示せず)、燃料タンク(図示せず)、第一燃料弁10、第二燃料弁11、流量調整弁12、移行弁13、低燃焼用ノズル14および高燃焼用ノズル15を備え、これらは各燃料流路16,17,18により連結して設けられている。第一燃料流路16は、燃料ポンプ、燃料タンクと接続されており、燃料は、第一燃料流路16を矢印の方向へ流れる。第一燃料流路16には第一燃料弁10が設けられており、第一燃料弁10の下流側末端では低燃焼用ノズル14に繋がっている。燃料流路は、第一燃料弁10の上流側において、第一燃料流路16から第二燃料流路17と第三燃料流路18に分岐している。第二燃料流路17には第二燃料弁11が設けられており、第三燃料流路18には上流側から流量調整弁12と移行弁13が設けられ、流量調整弁12の上流側には、高燃焼用ノズル15への燃料供給量を調整するためオリフィス19が設けられている。第二燃料流路17と第三燃料流路18とは、第二燃料弁11および移行弁13の下流側で合流して1つとなり、末端で高燃焼用ノズル15に繋がっている。ところで、本実施例では、第三燃料流路18において移行弁13を流量調整弁12の下流側に配置しているが、移行弁13を流量調整弁12の上流側に配することもできる。
【0030】
前記第一燃料弁10、第二燃料弁11および移行弁13には、開閉の二動作で制御される電磁弁が用いられている。そして、前記流量調整弁12は、第三燃料流路18の流路断面積の大きさを無段階的に変化させることのできる弁装置であって、流量調整弁12を通過し高燃焼用ノズル15へ供給される燃料の量を無段階的に変化させることができる。
【0031】
次に、図3を参照しつつ、制御部6により実行される本実施例における制御方法を説明する。本実施例の燃焼装置1が起動されると、送風装置2が運転を開始し、ファン回転速度が着火用回転速度まで上げられ、プレパージが行われる。プレパージの間、ダンパ開度は高燃焼用風量位置とされる。
【0032】
プレパージが所定時間行われた後、送風装置2はファン回転速度を着火用回転速度に維持したまま、ダンパ3は着火用風量位置まで閉じられ、着火工程に移行する。着火工程においては、まず、着火装置が起動され、着火装置が起動されてから所定時間経過後に第一燃料弁10が開かれ、燃料の供給が開始される。この間、前記着火装置は継続して起動しており、燃料の供給が開始されてから所定時間経過後に停止される。ところで、着火装置が起動されてから燃料供給が開始されるまでの期間はプレイグニッション、燃料供給が開始されてから着火装置が停止されるまでの期間は着火トライと呼ばれ、これら2つの工程により着火工程が構成される。
【0033】
着火工程が終了した後、ファン回転速度を着火用回転速度、ダンパ開度を着火用風量位置とした状態が所定時間継続される。その後、低燃焼工程へと移行する。まず、送風装置2がファン回転速度の低燃焼用回転速度への変更を開始する。そして、ファン回転速度の変更開始時点からの経過時間を時間計測手段により計測し、その経過時間が設定時間T1に達したらダンパ3は低燃焼用風量位置まで開かれる。この実施例においては、ダンパ3の開閉速度が遅く、図3に示すように時間T1で着火用風量位置から低燃焼用風量位置まで変化するように構成されている。しかしながら、ダンパ3の開閉速度が速い場合は、ファン回転速度の変更途中で、ダンパ3を開くように構成することもできる。
【0034】
低燃焼工程においては、ファン回転速度は低燃焼用回転速度とされ、ダンパ開度は低燃焼用風量位置とされる。ここで、低燃焼用回転速度とは、ダンパを低燃焼用風量位置とした場合に、低燃焼工程に必要とされる量の燃焼用空気が供給されるように設定されたファンの回転速度であり、ダンパを全開位置とした状態で、低燃焼工程に必要な風量となるファンの回転速度よりも高速度とされる。また、前記ダンパの低燃焼用風量位置とは、低燃焼工程において、火炎により生ずる風圧がファンの方向へ伝播することを防止できる程度にまで閉じられた状態の開度であって、ファンの回転速度を低燃焼用回転速度とした場合に、低燃焼工程に必要とされる燃焼用空気が供給されるようなダンパ開度を意味する。このように、低燃焼工程においてファン回転速度を低燃焼用回転速度、ダンパを低燃焼用風量位置とすることにより、低燃焼工程に必要な風量の燃焼用空気が供給されるとともに、送風装置2側の吐出圧が火炎により生ずる風圧の影響をほとんど受けないようにすることができ、低燃焼工程においても安定した燃焼を行うことができる。また、低燃焼工程においては、第一燃料弁10を通じて、低燃焼工程に必要な量の燃料が低燃焼用ノズル14へ供給される。
【0035】
低燃焼工程から高燃焼工程ヘ移行する場合は、まず流量調整弁12および移行弁13が開かれ、時間計測手段が前記移行弁13が開かれた時点からの経過時間を計測し、設定時間T2に達したら送風装置2がファン回転速度の低燃焼用回転速度から高燃焼用回転速度への変更を開始する。この設定時間T2は、流量調整弁12の開弁動作開始時点から実際に高燃焼用ノズル15に燃料が供給されるまでに要する時間と同程度の時間に設定されている。ところで、前記流量調整弁12の開弁動作開始時点から実際に高燃焼用ノズル15に燃料が供給されるまでの時間差を無視できる場合は、この設定時間T2は設けなくてもよく、また、前記ファン回転速度の変更と前記流量調整弁12の開弁動作との前後は問わない。
【0036】
本実施例においては、風量制御装置としてインバータ8が使用されており、前記ファン回転速度は経過時間に比例して増加するように制御されている。前記流量調整弁12は、前記ファン回転速度の増加と対応して、望ましい空燃比を維持するように燃料供給量を無段階的に増加させる。そして、流量調整弁12を通過して高燃焼用ノズル15に供給される燃料は、ファン回転速度が高燃焼用回転速度に達した時点で、第一燃料弁10を通過して低燃焼用ノズル14に供給される燃料供給量と合計して高燃焼工程に必要な量となるように設定されている。
【0037】
また、時間計測手段により移行弁13が開かれた時点からの経過時間が計測され、その経過時間が設定時間T3に達すると移行弁13が閉じられる。前記設定時間T3は、前記設定時間T2とファン回転速度が低燃焼用回転速度から高燃焼用回転速度に達するまでに要する時間T4とを合計した時間と同程度の時間に設定されている。
【0038】
一方、前記流量調整弁12は、移行弁13が閉じられた後の高燃焼工程の間も開弁状態が維持される。また、本実施例では、前記移行弁13が閉じられると同時に、第一燃料弁10も閉じられ、第二燃料弁11が開かれる。すなわち、高燃焼工程においては、第二燃料流路17のみを通じて高燃焼工程に必要な量の燃料が高燃焼用ノズル15に供給されることになり、低燃焼用ノズル14への燃料の供給は行われない。このように、高燃焼工程において、高燃焼用ノズル15のみから燃焼室5内へ燃料が噴霧されるため、両ノズル14,15から噴霧される燃料が互いに干渉して燃焼不良を起こすことがなく、より良好な燃焼を行うことができる。また、このように、前記流量調整弁12をファン回転速度の移行時においてのみ使用するようにしたことにより、流量調整弁12に起因する流路の詰まりなどを効果的に防ぐことができ、故障の少ない安定した運転が実現できる。
【0039】
併せて、ファン回転速度の低燃焼用回転速度から高燃焼用回転速度への変更開始と同時に、ダンパ3は高燃焼用風量位置へ開かれる。この実施例においては、ダンパ3の開閉速度が遅く、図3に示すように時間T4で低燃焼用風量位置から高燃焼用風量位置まで開くように構成されている。このダンパ開度の変化とファン回転速度の変化により生ずる風量の漸増,すなわち滑らかに増加することに対応して、流量調整弁12により高燃焼用ノズル15への燃料供給量が漸増されるため、空燃比を崩すことなく安定した燃焼を行うことができる。この実施例では、ダンパ3を時間T4で低燃焼用風量位置から高燃焼用風量位置まで変化するように構成しているが、ダンパ3の開閉速度が速い場合には、ファン回転速度の変更の途中でダンパ3を開くように構成することもできる。
【0040】
高燃焼工程においては、ダンパ開度は高燃焼用風量位置とされた状態で、送風装置2のファン回転速度は高燃焼用回転速度に継続される。
【0041】
高燃焼工程から低燃焼工程ヘ移行する場合は、まず閉弁状態であった第一燃料弁10および移行弁13が開かれると同時に、第二燃料弁11が閉じられる。これにより、第二燃料流路17に代わって第一燃料流路16および第三燃料流路18を通じて燃料が各ノズル14,15へ供給されるようになる。そして、時間計測手段により前記移行弁13が開かれた時点からの経過時間が計測され、その経過時間が設定時間T5に達したら、送風装置2のファン回転速度の、高燃焼用回転速度から低燃焼用回転速度への移行が開始される。この設定時間T5は、前記移行弁13が開かれてから実際に高燃焼用ノズル15に燃料が供給されるまでに要する時間と同程度の時間とされる。ところで、前記移行弁13が開かれてから実際に高燃焼用ノズル15に燃料が供給されるまでの時間差が無視できる場合は、この設定時間T5は設けなくてもよく、また、前記ファン回転速度の変更と前記移行弁13の開弁動作との前後は問わない。
【0042】
前記ファン回転速度の変更は、インバータ8により経過時間に比例して減少するように制御される。そして、前記流量調整弁12は、前記ファン回転速度の減少と対応して、望ましい空燃比を維持するように燃料供給量を無段階的に減少させる。
【0043】
また、時間計測手段により移行弁13が開かれた時点からの経過時間が計測され、その経過時間が設定時間T6に達すると流量調整弁12および移行弁13は閉じられる。前記設定時間T6は、前記設定時間T5とファン回転速度が高燃焼用回転速度から低燃焼用回転速度に達するまでに要する時間T7とを合計した時間と同程度の時間に設定されている。
【0044】
併せて、前記ファン回転速度の高燃焼用回転速度から低燃焼用回転速度への変更開始と同時に、ダンパ3は低燃焼用風量位置まで閉じられる。この実施例においては、ダンパ3の開閉速度が遅く、図3に示すように時間T7で高燃焼用風量位置から低燃焼用風量位置まで閉じるように構成されている。このダンパ開度の変化とファン回転速度の変化により生ずる風量の漸減,すなわち滑らかに減少することに対応して、流量調整弁12により高燃焼用ノズル15への燃料供給量が漸減されるため、空燃比が崩れることなく安定した燃焼を行うことができる。この実施例では、ダンパ3を時間T7で高燃焼用風量位置から低燃焼用風量位置まで変化するように構成しているが、ダンパ3の開閉速度が速い場合には、ファン回転速度の変更の途中でダンパ3が閉じるように構成することもできる。
【0045】
燃焼の終了は、低燃焼工程に続いて行われ、第一燃料弁10が閉じられるとともに、送風装置2のファン回転速度が低燃焼用回転速度から着火用回転速度へ移行し、併せてダンパ開度が高燃焼用風量位置とされ、そのまま着火用回転速度とした状態を所定時間継続してポストパージを行う。その後、送風装置2が停止される。このようにして、燃焼装置1は運転を停止する。前記ポストパージは、必要に応じて省略できる。
【0046】
前記の実施例1によれば、着火工程から低燃焼工程への移行時および低燃焼工程において安定燃焼を実現でき、燃焼性に優れた燃焼装置1を提供できる。また、低燃焼工程における燃焼用空気の風量および燃料供給量を低減しても安定な燃焼が可能となり、ターンダウン比(低燃焼量に対する高燃焼量の比率)を大きくすることができる。また、高燃焼工程において、各ノズル14,15から燃焼室内へ噴霧される燃料が互いに干渉して燃焼不良を起こすことがなく、より良好な燃焼を実現することができる。さらに、着火工程とこれに続く低燃焼工程において、共通して第一燃料弁10を通じて燃料供給を行うことによって燃料供給量を同じとしているため、低燃焼工程の燃料供給量を低減すれば着火工程の燃料供給量をも同時に低減することができ、着火衝撃をより抑えることができる。
【実施例2】
【0047】
次に、本発明の第二実施例について説明する。図4は、第二実施例の燃焼装置が実行する制御のタイムチャートである。第二実施例において、図1に示す燃焼装置1の構成、図2に示す燃料供給装置4の構成については第一実施例の燃焼装置1と共通している。
【0048】
第二実施例においては、燃焼を行っている間、継続して第一燃料弁10が開弁状態とされる点で第一実施例と異なっている。したがって、高燃焼工程においては、第一実施例の燃焼装置1と異なり、第一燃料弁10は閉じられることはなく、第一燃料弁10を通過して低燃焼用ノズル14へ供給される燃料の量と第二燃料弁11を通過して高燃焼用ノズル15へ供給される燃料の量との合計が、高燃焼工程に必要とされる燃料供給量となる。この場合、低燃焼用ノズル14および高燃焼用ノズル15の双方から同時に燃焼室5内へ燃料が噴霧されることになるが、良好な燃焼を行うために、各ノズル14,15から噴霧される燃料が互いに干渉しないような方策をとることが望ましい。
【0049】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は前記実施例の構成に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、燃料供給装置4における第二燃料弁11が設けられた第二燃料流路17および移行弁13を設けず、高燃焼工程において第三燃料流路18を通じて燃料が供給されるようにすることもできる。また、前記実施例では、低燃焼工程においてダンパ3を低燃焼用風量位置としているが、高燃焼用風量位置とするように構成することもできる。さらに、本発明は、ガス燃料を燃焼させる燃焼装置においては、ノズルを一つとしてこれにモータ弁などの流量調整弁を接続し、この上流側にガバナなどの均圧弁を設けて、ガス流量制御する構成のものにもの適用可能であり、油燃料を燃焼させる燃焼装置においては、ノズルを一つとしてこれに流量調整弁を接続する構成のものにも適用可能である。ところで、燃焼停止時においてダンパ3を全閉するように構成し、ボイラの缶体(図示省略)からの放熱を防止するように構成してもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施例における燃焼装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例における燃料供給装置の概略構成図である。
【図3】本発明における第一実施例の制御チャートを示す図である。
【図4】本発明における第二実施例の制御チャートを示す図である。
【図5】従来の燃焼装置における制御チャートを示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 燃焼装置
2 送風装置
3 ダンパ
4 燃料供給装置
10 第一燃料弁
11 第二燃料弁
12 流量調整弁
13 移行弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンの回転速度を、少なくとも高燃焼用回転速度、または前記高燃焼用回転速度より低い回転速度の低燃焼用回転速度に制御することにより風量調整を行う送風装置(2)と、
燃料供給量を無段階的に変化させる燃料供給装置(4)とを備えており、
燃焼工程を変更する場合には、前記送風装置(2)は前記ファンの回転速度の変更を行う一方、前記燃料供給装置(4)は前記ファンの回転速度の変化と対応するように燃料供給量を無段階的に変化させる
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
前記燃料供給装置(4)は、
少なくとも低燃焼工程において開弁状態とされる第一燃料弁(10)と、
高燃焼工程において開弁状態とされる第二燃料弁(11)と、
燃料供給量を無段階的に変化させる流量調整弁(12)と、
前記流量調整弁を通過する燃料の供給の有無を切り替える移行弁(13)と
を備えており、
低燃焼工程から高燃焼工程へ移行するときは、前記送風装置(2)が前記ファンの回転速度の高燃焼用回転速度への変更を開始するとともに、前記移行弁(13)は開弁状態とされ、前記流量調整弁(12)は前記ファンの回転速度の増加と対応するように燃料供給量を無段階的に増加させ、前記移行弁(13)が開かれた時点から所定時間経過後、前記移行弁(13)が閉弁状態とされるとともに前記第二燃料弁(11)は開弁状態とされ、
高燃焼工程から低燃焼工程へ移行するときは、前記送風装置(2)が前記ファンの回転速度の低燃焼用回転速度への変更を開始するとともに、前記移行弁(13)は開弁状態、前記第二燃料弁(11)は閉弁状態とされ、前記流量調整弁(12)が前記ファンの回転速度の減少と対応するように燃料供給量を無段階的に減少させ、前記移行弁(13)が開かれた時点から所定時間経過後、前記移行弁(13)は閉弁状態とされる
ことを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記燃料供給装置(4)は、
低燃焼工程において開弁状態とされる第一燃料弁(10)と、
高燃焼工程において開弁状態とされる第二燃料弁(11)と、
燃料供給量を無段階的に変化させる流量調整弁(12)と、
前記流量調整弁を通過する燃料の供給の有無を切り替える移行弁(13)と
を備えており、
低燃焼工程から高燃焼工程へ移行するときは、前記送風装置(2)が前記ファンの回転速度の高燃焼用回転速度への変更を開始するとともに、前記移行弁(13)は開弁状態とされ、前記流量調整弁(12)は前記ファンの回転速度の増加と対応するように燃料供給量を無段階的に増加させ、前記移行弁(13)が開かれた時点から所定時間経過後、前記移行弁(13)と前記第一燃料弁(10)が閉弁状態とされるとともに、前記第二燃料弁(11)は開弁状態とされ、
高燃焼工程から低燃焼工程へ移行するときは、前記送風装置(2)が前記ファンの回転速度の低燃焼用回転速度への変更を開始するとともに、前記第一燃料弁(10)と前記移行弁(13)は開弁状態、前記第二燃料弁(11)は閉弁状態とされ、前記流量調整弁(12)が前記ファンの回転速度の減少と対応するように燃料供給量を無段階的に減少させ、前記移行弁(13)が開かれた時点から所定時間経過後、前記移行弁(13)は閉弁状態とされる
ことを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項4】
少なくとも高燃焼用風量位置、または前記高燃焼用風量位置より開度の小さい低燃焼用風量位置に配置されることにより、前記送風装置からの風量を制御するダンパ(3)を備え、
燃焼工程の移行時には、前記ファンの回転速度の変化および前記ダンパ(3)の開度変化と対応するように燃料供給量を無段階的に変化させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−145121(P2006−145121A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336416(P2004−336416)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】