説明

燃焼装置

【課題】 植物油の効率的な燃焼を可能にする燃焼装置を提供することである。
【解決手段】 沸点が相対的に低い第1燃料(灯油)を利用して沸点が相対的に高い第2燃料(植物油)を燃焼させるための燃焼装置(10)は、燃焼筒(12)内に配置され、シャフト(14)によって回転されるようになったカップ(20)を備え、カップが、閉鎖した先端(20a)から開放した基部(20b)に向かって径が徐々に増加するカップ形状を有し、先端から基部に至る箇所の途中に、径の増加度が大きくなる段差部(20c)が形成されており、段差部に第1燃料が供給されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として植物油を効率的に燃焼させるための燃焼装置に関する。なお、本発明の燃焼装置は、植物油の他に、動物油、廃食油を含む廃油、鉱物油などの燃焼にも用いられる。
【背景技術】
【0002】
植物油を燃焼させる場合には、油温を300°C以上に上昇させないと、安定して燃焼しないという特徴を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
植物油の安定的な燃焼を確保すべく、油温を300°C以上にするのに電気ヒータを利用すると、電気ヒータの発熱部に油が焼きつくという不都合がある。また、電気ヒータを利用すると、消費電力が多くなり、コスト高になるという不都合もある。さらに、植物油は着火しにくいため、植物油を単独で着火させるのは難しいという課題もある。
【0004】
本発明は、このような状況に鑑みて案出されたものであって、燃焼させるのに上述のような種々の不都合を有する植物油の効率的な燃焼を可能にする燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載の、沸点が相対的に低い第1燃料を利用して沸点が相対的に高い第2燃料を燃焼させるための燃焼装置は、燃焼筒内に配置され、シャフトによって回転されるようになったカップを備え、前記カップが、閉鎖した先端から開放した基部に向かって径が徐々に増加するカップ形状を有し、前記先端から前記基部に至る箇所の途中に、径の増加度が大きくなる段差部が形成されており、前記カップの内部の前記段差部に前記第1燃料が供給されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0006】
本願請求項2に記載の燃焼装置は、前記請求項1の装置において、前記シャフトの先端に、前記カップの基部の方へ収束するようにテーパが付けられたテーパ部分が取り付けられ、前記カップの内部の前記テーパ部分に前記第2燃料が供給されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項3に記載の、沸点が相対的に低い第1燃料を利用して沸点が相対的に高い第2燃料を燃焼させるための燃焼装置は、燃焼筒内に配置され、前記第1及び/又は第2燃料を圧搾空気とともに噴射する圧搾空気噴霧ノズルと、前記圧搾空気噴霧ノズルの先端に隣接して配置され、燃焼時に燃焼空気が中央の開口部に収束するようになった火炎保持器と、前記火炎保持器の燃焼空気流入側に配置され、燃焼空気を前記火炎保持器に案内するための気流収束器とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項4に記載の燃焼装置は、前記請求項3の装置において、前記ノズルの先端に、中心軸線に対して外方に発散するように複数の小孔が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項5に記載の燃焼装置は、前記請求項3又は4の装置において、前記気流収束器が、燃焼空気が流入する側から前記開口部に向かって徐々に縮小するように形作られていることを特徴とするものである。
【0010】
本願請求項6に記載の燃焼装置は、前記請求項3から請求項5までのいずれか1項の装置において、前記圧搾空気噴霧ノズルの先端よりも1mm〜3mm後方に先端が位置するように、前記圧搾空気噴霧ノズルに隣接して配置された灯油噴霧ノズルを更に備えていることを特徴とするものである。
【0011】
本願請求項7に記載の燃焼装置は、前記請求項3から請求項6までのいずれか1項の装置において、前記燃焼筒に隣接して配置された蒸発筒を更に備え、前記蒸発筒が、一端が開放し、他端が前記燃焼筒の開放端と連通した、ほぼ円筒形の形状に形作られており、前記蒸発筒の内壁に1又は複数のインナーリングを配置することにより、蒸発筒の内部を、前記燃焼筒の側に位置する燃焼室と1又は複数のその他の部分とに分割し、前記1又は複数のその他の部分に、前記燃焼筒からの燃焼炎が前記蒸発筒の外部に直接放出されるのを阻止するためのバッフルが設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
本願請求項8に記載の燃焼装置は、前記請求項1から請求項7までのいずれか1項の装置において、前記燃焼筒における燃焼によって得られた温水を用いて、前記第2燃料を加温する加温手段を更に備えていることを特徴とするものである。
【0013】
本願請求項9に記載の燃焼装置は、前記請求項1から請求項8までのいずれか1項の装置において、前記第2燃料中の異物を除去するための異物除去手段を更に備え、前記異物除去手段が、入口および出口が設けられた本体と、前記本体に回転可能に配置された主軸と、前記主軸に一定間隔隔てて取り付けられ、異物を除去するための隙間が設けられた複数枚のフィルタプレートと、前記各フィルタプレート間に配置され、副軸に固定されたスペーサプレートと、前記フィルタプレートの周面に接触するように前記副軸に取り付けられたスクラバーとを有し、前記主軸を回転させて前記フィルタプレートを回転させることにより、前記スクラバーにより堆積した異物が掻き落とされるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
本願請求項10に記載の燃焼装置は、前記請求項1から請求項9までのいずれか1項の装置において、前記第1燃料が灯油であり、前記第2燃料が植物油、廃油、又は鉱物油であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、沸点が相対的に低い燃料を利用して沸点が相対的に高い燃料を効率的に燃焼させることができる。本発明の装置は、構造が比較的簡単であるので、安価に製造することができるとともに、高価な維持管理コストを要しない。また、本発明の装置では、圧搾空気噴霧ノズルの先端よりも1mm〜3mm後方に先端が位置するように灯油噴霧ノズルを設けたので、圧搾空気噴霧ノズルからの廃油の噴霧による灯油燃焼の吹き消えを防止することができ、廃油燃焼への円滑な移行が可能になる。さらに、本発明の装置では、蒸発筒を設けたので、廃油が完全燃焼し、黒煙排気の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る燃焼装置について詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る燃焼装置の全体を模式的に示した図、図2は、図1の部分2の拡大図である。図1において全体として参照符号10で示される本発明の第1の実施の形態に係る燃焼装置は、燃焼筒12を備えている。
【0017】
燃焼筒12は、図2に最も良く示されるように、間に空間12cが形成されるように配置された内筒12aと外筒12bとからなる二重構造を有しており、内筒12aと外筒12bはそれぞれ、一端が壁12a1、12b1で閉鎖されたほぼ円筒形の形状を有している。燃焼筒12の閉鎖壁12a1、12b1の中央には、開口部12a2、12b2がそれぞれ設けられている。また、内筒12aの他端は開放し、当該他端の近傍の側壁には、多孔板12a3が配置され、内筒12aと外筒12bとの間の空間12cの先端12c1は閉鎖している。
【0018】
燃焼筒12の開口部12a2、12b2を貫通するように、シャフト14が配置されている。シャフト14の一端がモータ16に固定されており、モータ16の作動に伴い、シャフト14が回転するようになっている。
【0019】
シャフト14の他端には、開口部12a2、12b2の方へ収束するようにテーパが付けられたテーパ部分18が取り付けられ、テーパ部分18に、カップ20の先端20aが固定されており、これによりモータ16を作動させると、カップ20が回転するようになっている。
【0020】
カップ20は、閉鎖した先端20aから開放した基部20bに向かって径が徐々に増加するカップ形状を有しており、先端20aから基部20bに至る箇所の途中に、径の増加度が大きくなる段差部20cが形成されている。
【0021】
燃焼筒12の内筒12aの開口部12a2には、カップ20の基部20bの付近の内壁面との間に空間22が形成されるように、内壁12dが配置されている。
【0022】
燃焼装置12は又、燃焼筒12内に燃焼用空気を供給するための送風機24と、カップ20の内部の段差部20cまで延びた灯油供給管26と、カップ20の内部のテーパ部分18まで延びた植物油供給管28とを備えている。なお、図2において、参照符号30、32は、燃料に着火するための着火電極、炎を検知するためのフレームアイをそれぞれ示している。
【0023】
燃焼装置10は又、燃焼筒12に隣接して配置された装置本体34を備えている。装置本体34内には、水槽34aが収容されており、燃焼筒12からの火炎により水槽34a内の水が加温されるようになっている。なお、図1において参照符号34b、34c、34d、34eは、給水口、出湯口、排気口、掃除口をそれぞれ示している。
【0024】
燃焼装置10は又、植物油を貯留するための貯油槽36を備えている。貯油槽36には、水槽34内で加温された温水が供給される温水供給管38が延びている。植物油は、温度が低下すると粘度が高くなって、燃焼筒12に圧送するのが困難になるため、温水供給管38からの熱によって植物油を加温し、圧送し易い粘度に保持するようになっている。
【0025】
燃焼装置10は更に、貯油槽36内に配置され、植物油内の異物を除去するための異物除去手段40を備えている。図3は、異物除去手段40を示した断面図、図4は、異物除去手段40の各部品を示した一連の図である。異物除去手段40は、植物油が流入する入口40bおよび植物油が流出する出口40cが設けられた本体40aと、本体40aに回転可能に配置された主軸40dと、主軸40dに一定間隔隔てて取り付けられた複数枚のフィルタプレート40e(図4(a)参照)と、各フィルタプレート40e間に配置され、副軸40hに固定されたスペーサプレート40f(図4(b)参照)と、最下段のフィルタプレート40eの下側に配置され、副軸40hに固定されたエンドプレート40g(図4(c)参照)と、フィルタプレート40e及びスペーサプレート40fの周面に接触するように副軸40hに取り付けられたスクラバー40i(図4(d)参照)とを有している。フィルタプレート40e、スペーサプレート40fには、植物油から異物(油カス、ゴミ等)を除去するための隙間40e1、40f1がそれぞれ設けられている。
【0026】
入口40aから進入した植物油は、フィルタプレート40e、スペーサプレート40fの隙間40e1、40f1を通過するとき異物が除去されるが、時間の経過とともに除去された異物が隙間40e1、40f1に徐々に堆積し濾過作用が低下する。そこで、一定時間毎に主軸40dを回転させてフィルタプレート40eを回転させると、フィルタプレート40e及びスペーサプレート40fの周面に接触するスクラバー40iにより堆積した異物が掻き落とされ、濾過能力を回復させることができる。なお、主軸40dは、モータで回転させてもよく、手動回転させてもよい。
【0027】
なお、図1において、参照符号26a、28a、36a、36bは、灯油供給ポンプ、植物油供給ポンプ、植物油投入口、ドレン口をそれぞれ示している。
【0028】
以上のように構成された本発明の燃焼装置10の作動について説明する。まずモータ16を作動させ、灯油供給管26を介してカップ20の段差部20cの付近に灯油を供給する。すると、カップ20の回転に伴う遠心力のため、灯油は、カップ20の基部20bの方へ移動し(遠心力により、径の大きな方、すなわち基部20bの方へ移動し)、基部20bから霧状になって内筒12aの閉鎖壁12a1に向かって振り出される。着火電極30により霧状になった灯油に着火する(灯油が霧状になっているので、容易に着火する)。灯油に着火すると、内筒12aの内部は短時間のうちに火炎で満たされ、カップ20が加熱される。このようにしてカップ20が加熱されると、灯油はカップ20内でガス化してカップ20から噴出するため、火炎はブルーになる。
【0029】
一方、カップ20が加熱されると、植物油供給管28を介して植物油をカップ20内のテーパ部分18に滴下する。すると、テーパ部分18の回転に伴う遠心力のため、植物油は、テーパ部分18に沿ってカップ20の先端20aに到達した後、カップ20の内面に沿ってカップ20の基部20bの方へ移動する。その際、灯油の燃焼によって加熱されたカップ20は、植物油によって冷却されるが、カップ20内を移動する植物油は、カップ20の熱により加熱されて急速に温度が上昇する。このようにして温度が上昇した植物油が回転するカップ20の基部20bから振り出されると、植物油は、容易に燃焼し始める。植物油が燃焼し始めると、灯油の供給を停止して、植物油のみの燃焼にする。灯油と植物油の供給量は、過剰燃焼しないように調整されている。また、植物油を貯油槽36からカップ20内に滴下するまで過熱しないように調整するため、配管内に油が焼きつく事態が回避される。
【0030】
植物油は、低温になると粘度が高くなるため、圧送しにくくなる。しかしながら、温水供給管(加温手段)38を通る温水で植物油を加温することにより、植物油を燃焼筒12に容易に供給することが可能になる。また、温水供給管38を通る温水は、燃焼筒12内の燃焼熱を利用したものであるため、エネルギーの省力化にも役立つ。
【0031】
植物油として、廃食油を利用することもできるが、廃食油には、天滓や焦げ等の燃焼不可な固形物が混入している場合がある。そこで、このような場合には、適宜、異物除去手段40を作動させることにより、異物を植物油から取り除く。
【0032】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る燃焼装置について説明する。図5は、本発明の第2の実施の形態に係る燃焼装置の全体を模式的に示した図、図6は、図5の部分6の拡大図である。本発明の第2の実施の形態に係る燃焼装置50は、燃焼筒内に後述する圧搾空気噴霧ノズル等が設けられている点を除いて、本発明の第1の実施の形態に係る燃焼装置10と実質的に同一の構成を有している。
【0033】
本発明の第2の実施の形態に係る燃焼装置50についてより詳細に説明すると、燃焼装置50は、一端が開放した燃焼筒52と、燃焼筒52内の中心軸線上に配置された圧搾空気噴霧ノズル54とを備えている。
【0034】
圧搾空気噴霧ノズル54は、図7に示されるように、先端に複数の小孔54aが設けられている。好ましくは、小孔54aは、圧搾空気噴霧ノズル54の中心軸線L−Lに対して角度αをなして外方に発散するように、設けられている。角度αは、40°から70°であるのが好ましい。これにより、中央付近で油滴が少なく、周辺付近で油滴が多くなるように廃油が噴霧される。圧搾空気噴霧ノズル54の圧搾空気供給口54bは、圧搾空気源55に連結され、廃油供給口54cは、後述する貯油槽66に連結されている。
【0035】
燃焼装置50は又、圧搾空気噴霧ノズル54の先端に隣接して配置された火炎保持器(保炎器)56を備えている。火炎保持器56は、圧搾空気噴霧ノズル54の先端から燃焼筒52の開放端に向かって徐々に拡大するように形作られている。また、火炎保持器56は、図6に示されるように、中央に開口部56aが設けられているとともに、中央から周縁に至る個所に多数のスリット56bが設けられている。
【0036】
燃焼装置50は又、火炎保持器56の燃焼空気流入側(即ち、圧搾空気噴霧ノズル54が設けられている側)に配置され、送風機57から供給される燃焼空気を、火炎保持器56に案内するための気流収束器58を備えている。気流収束器58は、燃焼空気を開口部56aに案内し易くするために、火炎保持器56の開口部56aから燃焼空気流入側に向かって徐々に拡大するように(換言すると、燃焼空気が流入する側58aから火炎保持器56の開口部56aに向かって徐々に縮小するように)形作られている。
【0037】
なお、火炎保持器56と空気収束器58は、両者を一体のものとして形成してもよく、或いは別々に形成して溶接等で互いに結合したり近接して設置したりしてもよい。
【0038】
燃焼装置50は又、圧搾空気噴霧ノズル54に隣接して配置された着火電極60を備えている。
【0039】
燃焼装置50は更に、燃焼筒52に隣接して配置された装置本体64と、廃油を貯留するための貯油槽66と、貯油槽66内に配置され、廃油内の異物を除去するための異物除去手段70とを備えている。装置本体64、貯油槽66、および異物除去手段70の構成は、燃焼装置10の装置本体34、貯油槽36、および異物除去手段40と実質的に同一である。
【0040】
なお、図5において、64a、64b、64c、64d、64e、59、59a、66a、66b、68、70dは、水槽、給水口、出湯口、排気口、掃除口、廃油供給管、廃油供給ポンプ、廃油投入口、ドレン口、温水供給管、水槽64a内で加温された温水を供給するための温水供給管、異物除去手段70の主軸をそれぞれ示している。なお、廃油供給管59には、図5に示されるように、灯油供給管が合流している。
【0041】
以上のように構成された本発明の燃焼装置50の作動について、図8を参照して説明する。まず圧搾空気噴霧ノズル54から圧搾空気とともに灯油を噴射させ、着火電極60に高電圧を加えて灯油に着火する。そして、フレームアイ(図示せず)で着火したことを示す光を検知すると、灯油の供給を止めて、廃油を供給する。廃油と灯油は、廃油供給管59内で混合され、次いで、ノズル54内で急速に混合され、霧状になって小孔54aから噴霧される(なお、灯油は、数秒で廃油に置換される)。廃油を圧搾空気とともに噴霧することにより、高粘性の廃油であっても微細な粒子として噴霧することができる。小孔54がノズル中心軸線L−Lに対して外方に発散するように配置されているため、中央付近で油滴が少なく、周辺付近で油滴が多くなるように噴霧される。ノズル54から噴霧された気液混合粒子は、近傍の空気と衝突することにより、更に小さな油滴となる。
【0042】
燃焼筒52を介して燃焼空気を供給すると、火炎保持器56に気流収束器58が設けられているため、燃焼空気の流速は、火炎保持器56のスリット56bから流出する空気流B及び火炎保持器56の外縁と燃焼筒52との間の領域から流出する空気流Cよりも、気流収束器58に沿って火炎保持器56の開口部56aから流出する空気流Aの方が速くなる。一方、中央付近の霧化油滴は、上述のように、油滴の量が少なく、しかも高流速の空気流Aにより強い攪拌作用を受けるので、高温で燃焼する。この中央付近の燃焼熱により、周辺部の油滴が急速に加熱され蒸発されるので、高密度の周辺部の油滴も容易に燃焼させることができる。なお、蒸発によって生じた可燃性ガスは、火炎保持器56で生ずる気流によって火炎保持器56に引き寄せられ、安定した火炎を保持する。
【0043】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る燃焼装置について説明する。図11は、本発明の第3の実施の形態に係る燃焼装置に設置される燃焼筒82を示した拡大図である。本発明の第3の実施の形態に係る燃焼装置は、燃焼筒82内に灯油噴霧ノズル85が設けられている点を除いて、本発明の第2の実施の形態に係る燃焼装置50の燃焼筒52と実質的に同一の構成を有している。
【0044】
図11において、参照符号84、86、86a、86b、87、88、89、90はそれぞれ、圧搾空気噴霧ノズル、火炎保持器(保炎器)、火炎保持器の開口、火炎保持器のスリット、送風機、気流収束器、廃油供給管、着火電極を示しており、これらの各部分は、燃焼筒52に設けられているものと同一である。
【0045】
燃焼筒82において、灯油噴霧ノズル85の先端は、圧搾空気噴霧ノズル84の先端よりもwだけ後方に位置決めされている。ここで、「後方」とは、燃焼筒82の開放端と反対の側を意味する。wは好ましくは、約1mm〜約3mmである。
【0046】
圧搾空気噴霧ノズル84から廃油が噴霧されると、その噴霧の勢いで、一旦着火した灯油が吹き消えてしまい、灯油から廃油への円滑な燃焼移行が行われなくなるおそれがある。そこで、第3の実施の形態に係る燃焼装置においては、圧縮空気噴霧ノズル84の先端より僅かに後方の箇所に灯油噴霧ノズル85の先端が位置するように構成し、圧搾空気噴霧ノズル84からの廃油の噴霧により、灯油の燃焼が影響を受けることのないようにした。
【0047】
次に、本発明の第4の実施の形態に係る燃焼装置について説明する。図12は、本発明の第4の実施の形態に係る燃焼装置の全体を模式的に示した図、図13(a)は、図12の部分13aの拡大図である。本発明の第4の実施の形態に係る燃焼装置100は、燃焼筒内に圧搾空気噴霧ノズルに隣接して灯油噴霧ノズルが設けられており、かつ、燃焼筒の先端に蒸発筒が設けられている点を除いて、本発明の第2の実施の形態に係る燃焼装置50と実質的に同一の構成を有している。
【0048】
本発明の第4の実施の形態に係る燃焼装置100についてより詳細に説明すると、燃焼装置100は、一端が開放した燃焼筒102と、燃焼筒102内のほぼ中心軸線上に配置された圧搾空気噴霧ノズル104と、圧搾空気噴霧ノズル104の先端よりも約1mm〜約3mm後方に先端が位置するように配置された灯油噴霧ノズル105と、圧搾空気噴霧ノズル104の先端に隣接して配置された火炎保持器(保炎器)106と、火炎保持器106の燃焼空気流入側に配置された気流収束器108とを備えている。燃焼筒102、圧搾空気噴霧ノズル104、火炎保持器106、および気流収束器108は、燃焼筒52、圧搾空気噴霧ノズル54、火炎保持器56、および気流収束器58とそれぞれ同一の構成のものである。
【0049】
燃焼装置100は又、燃焼筒102の開放端に隣接して配置された蒸発筒112を備えている。蒸発筒112は、一端112aが開放し、他端112bが燃焼筒102の開放端と連通した、ほぼ円筒形の形状に形作られている。蒸発筒112の内壁には、リング状の第1インナーリング114a、第2インナーリング114bが配置され、これにより、蒸発筒112の内部が、第1室(燃焼室)112c、第2室112d、第3室112eの3つの部分に分割されている。また、蒸発筒112には、第2室112dおよび第3室112eの内部に、燃焼筒102からの燃焼炎が蒸発筒112の外部に直接放出されるのを阻止するための第1バッフル116a、第2バッフル116bがそれぞれ設けられている。第1バッフル116aは、第1インナーリング114aと第2インナーリング114bとの間の箇所にインナーリングによって形成される開口よりも僅かに大きな円形板を配置することによって構成されている。また、第2バッフル116bも、第2インナーリング114bと蒸発筒112の開放端112aとの間の箇所にインナーリングによって形成される開口よりも僅かに大きな円形板を配置することによって構成されている。
【0050】
好ましくは、燃焼装置100は、蒸発筒112の他端(燃焼筒102の側に位置する端部)112bに隣接して配置されたエアヒータ111を備えており、圧搾空気供給管111aがエアヒータ111を経由して、管111bから圧搾空気噴霧ノズル104に通じている。これにより、蒸発筒112内のエアヒータ111によって加温された空気が圧搾空気噴霧ノズル104から噴霧されるので、難燃性の液体燃料であっても容易に燃焼させることができる。
【0051】
以上のように構成された本発明の燃焼装置100の作動について説明する。植物油のような引火点が高い油でも、上述のように、微細な霧状にして噴霧することにより、火炎保持器の近傍で火炎を形成して燃焼を継続させることができるが、噴霧した油の全量を燃焼させることは容易ではなく、油の一部は火炎領域を通過して燃焼装置の炉壁に付着して油溜まりが生ずることがある。そこで、燃焼筒102に隣接して蒸発筒112を設けると、噴霧された油は蒸発筒112内に吹き付けられるが、蒸発筒112自体が燃焼炎によって急速に加熱されるので、蒸発筒112内に吹き付けられた油は蒸発して燃焼を完結し、これにより黒煙排気の発生を極力防止することが可能になる。
【0052】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0053】
たとえば、前記第1実施の形態では、カップ20(従って、燃焼筒12)が水平方向に配向されているが、カップ20を上向き又は下向きに配向させてもよい。
【0054】
また、前記第2実施の形態では、気流収束器58が湾曲状の側面視を有するものとして示されているが、図9に示されるように、開口部56aに向かって直線的に縮小するように形作られた気流収束器58′を用いてもよい。また、図10(a)に示されるように、平らな板状の火炎保持器56′(中央の開口部56′a、スリット56′b)を用いてもよい。さらに、火炎保持器56′′のスリットを、例えば、図10(b)に示されるような小孔56′′bにしてもよい。
【0055】
また、前記実施の形態では、灯油の燃焼を利用して植物油又は廃油を燃焼させているが、沸点が相対的に低い第1燃料(例えば、重油、ガスなど)を利用して、沸点が相対的に高い第2燃料の燃焼に、本発明の燃焼装置を適用することができる。
【0056】
さらに、前記実施の形態では、本発明の燃焼装置が水を加温するのに用いられているが、本発明の燃焼装置を温風暖房機(図示せず)として使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る燃焼装置の全体を模式的に示した図である。
【図2】図1の部分2の拡大図である。
【図3】異物除去手段を模式的に示した断面図である。
【図4】図4(a)はフィルタープレートを示した図、図4(b)はスペーサプレートを示した図、図4(c)はエンドプレートを示した図、図4(d)はスクラバーを示した図、図4(e)はスクラバーがフィルタープレート及びスペーサプレートの周面に接触している状態を示した図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る燃焼装置の全体を模式的に示した断面図である。
【図6】図5の部分6の拡大図である。
【図7】図7(a)は図5の燃焼装置の圧搾空気噴霧ノズルの拡大断面図、図7(b)は図7(a)の線7b−7bに沿って見た図である。
【図8】図5の燃焼装置の作動状態を説明するための図である。
【図9】図5の燃焼装置に設けられる気流収束器の変形形態を示した図5と同様の図である。
【図10】図5の燃焼装置に設けられる火炎保持器の変形形態を示した図5と同様の図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る燃焼装置を示した図6と同様な図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る燃焼装置の全体を模式的に示した断面図である。
【図13】図13(a)は図12の部分13aの拡大図、図13(b)は図13(a)の線13b−13bに沿って見た図である。
【符号の説明】
【0058】
10 第1の実施の形態に係る燃焼装置
12 燃焼筒
14 シャフト
16 モータ
18 テーパ部分
20 カップ
22 空間
24 送風機
26 灯油供給管
28 植物油供給管
30 着火電極
32 フレームアイ
34 装置本体
36 貯油槽
38 温水供給管
40 異物除去手段
50 第2の実施の形態に係る燃焼装置
52 燃焼筒
54 圧搾空気噴霧ノズル
55 圧搾空気源
56 火炎保持器(保炎器)
56a 開口部
56b スリット
57 送風機
58 気流収束器
59 廃油供給管
60 着火電極
64 装置本体
66 貯油槽
68 温水供給管
70 異物除去手段
82 燃焼筒
84 圧搾空気噴霧ノズル
85 灯油噴霧ノズル
86 火炎保持器(保炎器)
86a 開口部
86b スリット
87 送風機
88 気流収束器
89 廃油供給管
90 着火電極
100 第4の実施の形態に係る燃焼装置
102 燃焼筒
104 圧搾空気噴霧ノズル
105 灯油噴霧ノズル
106 火炎保持器(保炎器)
106a 開口部
106b スリット
107 送風機
108 気流収束器
109 廃油供給管
110 着火電極
112 蒸発筒
114a、114b インナーリング
116a、116b バッフル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点が相対的に低い第1燃料を利用して沸点が相対的に高い第2燃料を燃焼させるための燃焼装置であって、
燃焼筒内に配置され、シャフトによって回転されるようになったカップを備え、
前記カップが、閉鎖した先端から開放した基部に向かって径が徐々に増加するカップ形状を有し、前記先端から前記基部に至る箇所の途中に、径の増加度が大きくなる段差部が形成されており、
前記カップの内部の前記段差部に前記第1燃料が供給されるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記シャフトの先端に、前記カップの基部の方へ収束するようにテーパが付けられたテーパ部分が取り付けられ、前記カップの内部の前記テーパ部分に前記第2燃料が供給されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
沸点が相対的に低い第1燃料を利用して沸点が相対的に高い第2燃料を燃焼させるための燃焼装置であって、
燃焼筒内に配置され、前記第1及び/又は第2燃料を圧搾空気とともに噴射する圧搾空気噴霧ノズルと、
前記圧搾空気噴霧ノズルの先端に隣接して配置され、燃焼時に燃焼空気が中央の開口部に収束するようになった火炎保持器と、
前記火炎保持器の燃焼空気流入側に配置され、燃焼空気を前記火炎保持器に案内するための気流収束器とを備えていることを特徴とする装置。
【請求項4】
前記ノズルの先端に、中心軸線に対して外方に発散するように複数の小孔が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記気流収束器が、燃焼空気が流入する側から前記開口部に向かって徐々に縮小するように形作られていることを特徴とする請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記圧搾空気噴霧ノズルの先端よりも1mm〜3mm後方に先端が位置するように、前記圧搾空気噴霧ノズルに隣接して配置された灯油噴霧ノズルを更に備えていることを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記燃焼筒に隣接して配置された蒸発筒を更に備え、
前記蒸発筒が、一端が開放し、他端が前記燃焼筒の開放端と連通した、ほぼ円筒形の形状に形作られており、
前記蒸発筒の内壁に1又は複数のインナーリングを配置することにより、蒸発筒の内部を、前記燃焼筒の側に位置する燃焼室と1又は複数のその他の部分とに分割し、前記1又は複数のその他の部分に、前記燃焼筒からの燃焼炎が前記蒸発筒の外部に直接放出されるのを阻止するためのバッフルが設けられていることを特徴とする請求項3から請求項6までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記燃焼筒における燃焼によって得られた温水を用いて、前記第2燃料を加温する加温手段を更に備えていることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第2燃料中の異物を除去するための異物除去手段を更に備え、前記異物除去手段が、入口および出口が設けられた本体と、前記本体に回転可能に配置された主軸と、前記主軸に一定間隔隔てて取り付けられ、異物を除去するための隙間が設けられた複数枚のフィルタプレートと、前記各フィルタプレート間に配置され、副軸に固定されたスペーサプレートと、前記フィルタプレートの周面に接触するように前記副軸に取り付けられたスクラバーとを有し、前記主軸を回転させて前記フィルタプレートを回転させることにより、前記スクラバーにより堆積した異物が掻き落とされるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1燃料が灯油であり、前記第2燃料が植物油、廃油、又は鉱物油であることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−281324(P2008−281324A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321477(P2007−321477)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(599047011)北海道オリンピア株式会社 (11)
【Fターム(参考)】