説明

燐−変性フェノールノボラック樹脂、これを含む硬化剤及びエポキシ樹脂組成物

本発明は、新規の燐-変性フェノールノボラック樹脂、これを、ハロゲン物質を含まないながらも難燃性を具現することができるエポキシ硬化剤で使用する方法及びこれを含んで多量のインを含むことができて難燃性と耐熱性が優秀なエポキシ樹脂組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燐-変性フェノールノボラック樹脂、これを含む硬化剤及びエポキシ樹脂組成物に関するものであり、より詳細には、新規の燐-変性フェノールノボラック樹脂と燐-変性フェノールノボラック樹脂を含むエポキシ樹脂硬化剤及び、燐-変性フェノールノボラック樹脂を硬化剤として含むエポキシ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気・電子関連産業は、現代産業の中心軸であると言う程度に関連市場及び技術は急激に発展しており、付加価値もかなり高い産業として現代社会において必須不可欠な産業の一つである。このような電気・電子関連産業の発達と併せて一番重要なことのうちの一つが関連素材産業であり、高度化されて行く電子産業を後から支えている。
【0003】
電気・電子産業分野に高価な熱硬化性樹脂が使用されるのは、基本的に硬化によって熱可塑性樹脂より優れた熱的、機械的及び電気的特性を有するためである。特に、印刷回路基板用銅箔積層板(CCLS、Copper Clad Laminate Sheet)分野では優秀な電気的、機械的特性故にマトリックス樹脂(Matrix Resin)としてエポキシ樹脂が主に使用されている。
【0004】
一般に、電気・電子製品に使用される印刷回路基板を製造するためには、ガラス繊維、クラフト紙(kraft paper)、不織布などにフェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させて、その樹脂を半硬化状態(B-stage)で乾燥してプリプレグ(prepreg)を作った後、その単面あるいは両面に銅箔を積層して、銅箔積層板(copper clad laminate、CCL)を製造する。また、多層印刷回路基板として分類される3層以上の銅箔積層板を製造する場合には、先ず、両側銅箔積層板の表面に導線を形成した内層基材を作って、その表面にプリプレグと銅箔を使用して、外層を形成する。最近、印刷回路基板のパッド(pad)大きさが減少して、回路幅が細くなる(fine pitch)など回路密度が増加して高集積化がなされるにつれて、内層及び外層銅箔積層板の間にマイクロビアホール(micro via hole)を形成することが一般化されている。このようなビアホールを形成する方法としては、レーザードリル加工やプラズマ加工が使用される。この時、銅箔積層板内にガラス繊維などの無機成分が補強材(reinforcement)として含有されていれば加工が容易ではない。そのため、補強材を含まない樹脂成分のみで絶縁層を構成する場合が多く、一般にこれを樹脂コーティング銅箔と称する。このように樹脂コーティング銅箔を使用して、多層印刷回路基板を製造することでレーザードリル加工を利用してビアホールを容易に形成することができるし、さらに安定した微細ピッチ(fine pitch)回路を形成することができるようになった。
【0005】
一方、銅箔積層板やプリプレグ、樹脂コーティング銅箔で構成された印刷回路基板は、火事時に発火現象を起こさないように難燃性を持たなければならないし、この難燃性に対する基準は通常UL規格に従い、UL-94V0等級の要求を受ける。したがって、ここに使用される樹脂組成物も難燃性が要求される。
【0006】
一方、エポキシ樹脂は多様な硬化剤との反応を通じて熱硬化性樹脂の特性を示すようになる。エポキシ樹脂は、一般に構成分子の化学的単位でオキシラン基を2個以上保有した高分子物質を称する。
【0007】
エポキシ樹脂は、単独で使用されることはほとんどないし、硬化剤との反応を通じて熱硬化性物質に変化させて使用される。一番常用化されている一般的な硬化システムは、アミン/エポキシ反応、アミド/エポキシ反応、酸無水物/エポキシ反応、フェノールノボラック/エポキシ反応などである。
【0008】
このうちフェノールノボラック/エポキシシステムは、卓越した耐熱性と寸法安定性、耐薬品性、優秀な電気的特性などによって、半導体パッケージングや印刷回路基板製造など電気・電子用途でたくさん使用されている。特に、印刷回路基板用銅箔積層板の場合、耐熱性向上のためにフェノールノボラック硬化剤の使用がますます増加している。
【0009】
前述したもののように銅箔積層板など各種の電気・電子製品の場合、難燃性が要求されて、これを具現するために多様な難燃化合物が使用されている。その一例で銅箔積層板にはハロゲン系、特に、テトラブロモビスフェノール-A(TBBA)が変性されたエポキシ樹脂が主に使用されている。また、赤燐(Red Phosphorus)などの添加型非ハロゲン系難燃剤も使用可能であるが、添加型難燃剤の場合銅箔積層板の物性低下を引き起こす問題点があってほとんど使用されない。ハロゲン系化合物は、燃焼時非常に有害なガス(HBr、HClなど)を放出するが、これにより人体有害性及び金属腐食などの問題点が提起されている。ヨーロッパ/日本を中心にハロゲン系化合物使用に対する規制が強化されていて使用がますます難しくなっている。したがって、これに対する解法として毒性が少ない燐系及び窒素系難燃化合物に対する要求が増加している。
【0010】
そのうちでも、燐系化合物である9、10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(9、10-dihydro-9-oxa-10-phosphaphenanthrene-10-oxide、以下、DOPOであると略称する)が銅箔積層板用として一番多く使用されている。DOPOは添加型としても使用可能であるが、エポキシ樹脂と反応して、燐-変性エポキシ樹脂を生成することができる。DOPOをエポキシ樹脂組成のうちで主剤で使用すると、難燃特性を付与することができる。DOPOがたくさん使用される理由は、燐含量が14.5%で非常に高くて、一側の方向が開かれている構造であるので、容易に難燃特性を示すためである。また、エポキシ基との反応性が良くて燐-変性エポキシ樹脂製造が容易であるという長所がある。しかし、現在までDOPOを含めた多くの難燃エポキシ樹脂に対する多様な研究結果が出ているが、DOPOをエポキシ樹脂組成中に含んで難燃性を充分に発現することに限界がある。実質的に硬化物中に含まれる燐含有量が適正水準以下の低いレベルであり、燐-変性エポキシ樹脂を主剤として使用しても添加型の難燃剤を併用する難燃システムを採用することが一般的である。
【発明が解決する課題】
【0011】
本発明の一具現例では新規の燐-変性フェノールノボラック樹脂を提供しようとする。
また、本発明の他の一具現例では、硬化物製造時に難燃性と耐熱性を同時に満足させることができる燐-変性フェノールノボラック樹脂のエポキシ硬化剤への用途を提供しようとする。
【0012】
本発明の他の一具現例では、燐-変性フェノールノボラック樹脂を硬化剤として併用して燐含有量を高めて難燃性を具現することができながらも耐熱性も満足するエポキシ樹脂組成物を提供しようとする。
【0013】
特に、エポキシ樹脂として燐-変性エポキシ樹脂を使用する場合、組成物の燐含有量を高めて難燃性具現が容易である。
本発明の例示的な一具現例では燐含量が高いながらも耐熱性を満足するエポキシ硬化物を提供しようとする。
【0014】
本発明の一具現例では次の化学式1で表示される繰り返し単位を含んで、重量平均分子量が400乃至4000である燐-変性フェノールノボラック樹脂を提供する。
【0015】
【化1】

・・・(化学式1)
【0016】
本発明の一具現例による燐-変性フェノールノボラック樹脂は、軟化点が50乃至200℃であることができる。
【0017】
本発明の一具現例による燐-変性フェノールノボラック樹脂は、燐含量が1重量%以上のものであることができる。
【0018】
本発明の一具現例による燐-変性フェノールノボラック樹脂は、2-メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール及びジメチルホルムアミドに可溶であることであることができるし、溶剤に対する溶解性は上の溶剤に限らない。
【0019】
本発明の他の一具現例では前記具現例らによる燐-変性フェノールノボラック樹脂を含むエポキシ硬化剤を提供する。
【0020】
本発明の他の一具現例ではエポキシ樹脂と、及び次の化学式1で表示される燐-変性フェノールノボラック樹脂を含む硬化剤と、を含むエポキシ樹脂組成物を提供する。
【0021】
【化2】

・・・(化学式1)
【技術的解決手段】
【0022】
本発明の一具現例によるエポキシ樹脂組成物において、燐-変性フェノールノボラック樹脂は、軟化点が50乃至200℃であることができる。
本発明の一具現例によるエポキシ樹脂組成物において、燐-変性フェノールノボラック樹脂は燐含量が1重量%以上であることができる。
【0023】
本発明の一具現例によるエポキシ樹脂組成物において、硬化剤は燐-変性フェノールノボラック樹脂と燐-変性されないフェノールノボラック樹脂の混合物であり、燐-変性フェノールノボラック樹脂を全体硬化剤のうちで20%以上を含むものであることができる。
【0024】
また、燐-変性フェノールノボラック樹脂は、2-メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール及びジメチルホルムアミドに可溶であるものであることができるし、溶剤に対する溶解性は上の溶剤に限らない。
【0025】
本発明の望ましい一具現例によるエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂は燐-変性エポキシ樹脂であることができる。
【0026】
本発明の一具現例では上述した具現例らによるエポキシ樹脂組成物の硬化物を提供して、これは燐含量が1重量%以上であることがあって、特に、燐含量が3重量%以上であることがある。また、硬化物はガラス転移温度が120℃以上であることがある。
【有利な効果】
【0027】
本発明の一具現例によって提供される燐-変性フェノールノボラック樹脂は、硬化剤として使用されて硬化物の燐含有量を高めるのに容易である。また、適正な分子量を有して耐熱性を阻害せず、エポキシ樹脂組成物のうちで、硬化剤として含まれて難燃性及び耐熱性を満足する硬化物を製造するようにできる。
【発明を実施するための最良の様態】
【0028】
本発明の一具現例では次の化学式1で表示される繰り返し単位を含んで、重量平均分子量が400乃至4000であるエポキシ樹脂硬化剤用燐-変性フェノールノボラック樹脂を提供する。
【0029】
【化3】

・・・(化学式1)
【0030】
このような燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PNと略称する)を製造する方法の一例は特に限定されるものではないが、4-ヒドロキシベンズアルデヒド(4-hydroxybenzaldehyde)とDOPOとの反応を通じて、DOPO-HBを生成して(反応式1)、これをアルデヒドと反応させて得られることができる(反応式2)。
【0031】
【化4】

・・・(反応式1)
【0032】
【化5】

・・・(反応式2)
【0033】
求核剤である-P(O)−H基とアルデヒドまたはケトン内の求電子剤であるC=O基との求核付加反応はよく知られた反応である。この反応を利用してDOPOと4-ヒドロキシベンズアルデヒドを反応させてOH基とリン成分を一緒に持ったDOPO-HBを合成する(反応式1参照)。
【0034】
この時、DOPOと4-ヒドロキシベンズアルデヒドは、DOPO1当量に対して4-ヒドロキシベンズアルデヒドが0.8乃至1.2当量比になるように反応させる。
【0035】
反応に使用することができる溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、キシレン、2-メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールなどを使用することができるし、反応条件は3時間乃至12時間の間に還流する方法を挙げることができる。
【0036】
このように得られるDOPO-HBとホルムアルデヒドを利用して、本発明の一具現例による新規の燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)を製造することができる。
【0037】
このような反応においてDOPO-HBとアルデヒドの反応比によって、得られる燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)の分子量が制御されることができる。反応比は、DOPO-HB1当量に対してホルムアルデヒド0.4乃至0.95当量比、望ましくは、0.5乃至0.9当量比であるものである。
【0038】
特に、DOPO-PNをエポキシ硬化剤として使用する場合、DOPO-PNの分子量にしたがって硬化物の特性が変わることができる側面を考慮する時、最も望ましい反応比は、DOPO-HB1当量に対してホルムアルデヒド0.6乃至0.85当量比である。
【0039】
このような反応時に、反応溶剤として最適なものはDMFであり、酸触媒としては多様な酸触媒を使用することができるが、望ましくは、硫酸ジエチルであることができる。
本発明の一具現例による燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)は、重量平均分子量が400乃至4000であるものが望ましい。もし分子量が低すぎればガラス転移温度が低くなり、分子量が高すぎれば硬化度の調節及び含浸に問題があり得る。
【0040】
得られる燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)は、軟化点が50乃至200℃であることができる。
【0041】
また、硬化剤として使用されて難燃性を発揮する側面と耐熱性を阻害しない側面をすべて考慮した時、燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)は、燐含量が1重量%以上、望ましくは5重量%以上、さらに望ましくは、8重量%以上のものであることができる。
【0042】
本発明の一具現例による燐-変性フェノールノボラック樹脂は、多様な有機溶媒、特に、具体的に2-メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、DMFなどに可溶であり、また、メチルエチルケトンにも一部可溶である。
【0043】
これは銅箔積層板用硬化剤として使用時に必須の主な溶剤であり、本発明の一具現例によって得られる燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)は、電子材料用として製品化することにおいてより容易である。
【0044】
このように得られる燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)は、特に、エポキシ硬化剤として有用することができる。エポキシ硬化剤として使用する時、DOPO-PNを単独で使用することもでき、他のエポキシ硬化剤と併用することもできる。他のエポキシ硬化剤の一例としては、ノボラック型硬化剤であることが望ましくて、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどであり得る。難燃性及び耐熱性をともに満足させることができる側面において、望ましくは、燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)と、燐-変性しない一般的なノボラック型硬化剤とを併用するものであることができる。他の硬化剤と併用する時、全体硬化剤のうちで20重量%以上程度、燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)を使用することが難燃性及び耐熱性側面で望ましいことがある。
【0045】
本発明の他の一具現例としては、エポキシ樹脂と、及び上述した燐-変性フェノールノボラック樹脂を含む硬化剤と、を含むエポキシ樹脂組成物を提供する。
【0046】
燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)を含む硬化剤をエポキシ樹脂組成物のうちで含む場合、燐-変性エポキシ樹脂を主剤にする場合に比べて硬化物のうちで燐含量を高めることができ、他の添加型難燃剤に比べて難燃性が優秀なことがある。
【0047】
特に、難燃性を付与しながらも耐熱性を阻害しない側面において、望ましくは、DOPO-PNは、燐-変性しない一般的なノボラック型エポキシ硬化剤で混合されることが望ましくて、この時の混合割合は、難燃性と耐熱性を適切に満たす範囲内で調節されることができることは勿論である。
【0048】
特に、望ましくは、燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)を全体硬化剤のうちで20重量%以上、望ましくは、25乃至75重量%で含むものである。硬化剤の中に燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)を過量に含むようになれば難燃性は向上するが、耐熱性が低下する。反面、燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)を一定量以下で含む場合には、難燃性を付与しようとする目的を達成し難い。
【0049】
特に、エポキシ樹脂組成物のうちで燐含有量をさらに増加させるために、望ましくは、エポキシ樹脂は燐-変性エポキシ樹脂を含むものであることができる。
【0050】
このようなエポキシ樹脂組成物によって得られる硬化物は、燐含有量が少なくとも1.0重量%、望ましくは3重量%である。エポキシ樹脂が燐-変性エポキシ樹脂を含有する場合には、燐含有量を少なくとも5重量%まで高めることができる。
【0051】
これにより、難燃性が向上した硬化物を提供することができる。
【0052】
また、本発明の燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)を硬化剤として含む硬化物は、ガラス転移温度が120℃以上で耐熱性も優れている。
【0053】
以下、本発明を実施例に基づいて詳しく説明すれば次のようであるが、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0054】
以下の実施例で分子量は、Waters GPC2414 Refractive index detectorを利用して求めた。具体的に、GPCconditionは次のようである;Column-Waters Styragel HR0.5、HR1、HR2、HR3
Oven-35℃ Isotherm
Carrier-THF
Injection-100μl、35℃
Detection-RI Detector
Flow-1ml/min
H NMR、spectrumはTMSまたはDMSO-dを内部標準物質としてVarian Germini300(300、75MHz)を利用して得た。DSC Thermogramは、TA Instruments DSC2910を利用して30〜300℃で1分当り20℃の過熱率で求め、Thermogravimetric分析は、TA TGA Q-500 Seriesを使用して1分当り10℃の過熱率で測定した。
UL-94難燃性は、Underwriter Laboratoryの標準に従って測定した。テスト試片は、長さ127mm、幅12.7mm、厚さ0.5mmの大きさで5個を使用し、Bunsen Burnerを使用して燃焼テストをした。
【0055】
実施例1
(1)DOPO-HBの合成
求核剤である-P(O)−H基とアルデヒドまたはケトン内の求電子剤であるC=O基との求核付加反応はよく知られた反応である。この反応を利用してDOPOと4-ヒドロキシベンズアルデヒド(4-Hydroxybenzaldehyde)を反応させて、OH基とリン成分を共に持ったDOPO-HBを合成した(反応式1参照)。
具体的に、DOPO(216g、1mol、Schill & Seilacher製)と4-ヒドロキシベンズアルデヒド(134g、1.1mol、Aldrich社の製)をトルエン(1000ml)に入れてよく溶解させた。
【0056】
反応混合物を120℃で5時間の間に加熱還流させた。常温で冷却した後、再びトルエンで洗浄した後、メタノールで再結晶させて生成物を得た。
収率:95%
Melting point:241℃
H NMR(300MHz、DMSO−d)δ5.01(1H、dd、J=5.7、6.0Hz)、5.18(1H、t、J=11.3Hz)、6.14-6.30(1H、m)、6.66-8.20(12H、m)、9.45(1H、d、J=14.5Hz)
(2)DOPO-PN合成
DOPO-HBとホルムアルデヒドを利用してDOPO-PNを合成した。
具体的に、DOPO-HB(101.56g、0.3mol)と89%ホルムアルデヒド(7.09g、0.21mol、工業用89%ホルマリン)をDMF(500ml)に入れてよく混合した。この混合物に硫酸ジエチル(0.51g、0.0033mol)を入れて125℃で8時間の間、加熱還流させた。反応が終わった後、真空度720mmHg減圧下で175℃まで減圧脱気を進行して溶剤をとり除いた。
得られた生成物の軟化点は81℃であり、燐含量は8.8%であった。2-メトキシメタノール及び1-メトキシ-2-プロパノールによく溶解された。
収率:90%
軟化点:81℃
重量平均分子量:923
H NMR(300MHz、DMSO-d6)δ3.50(2H、dd、J=3.0、4.4Hz)、4.32(1H、t、J=40.9Hz)、6.56-8.28(10H、m)、9.79(1H、s)
【0057】
実施例2
前記実施例1と同一な方法で燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)を製造するが、但し、(2)段階でDOPO-HBを101.56g、0.3molで使用し、ホルムアルデヒドを8.10g(0.24mol)で使用した。
得られた生成物の軟化点は94℃であり、燐含量は8.8%であり、重量平均分子量は1,024であった。
【0058】
実施例3
前記実施例1と同一な方法で燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)を製造するが、但し、DOPO-HBを101.56g、0.3molで使用し、ホルムアルデヒドを8.60g(0.255mol)で使用した。
得られた生成物の軟化点は108℃であり、燐含量は8.7%であり、重量平均分子量は1、870であった。
【0059】
実験例:溶剤に対する溶解性評価
前記実施例1から得られる燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)に対して多様な溶剤に対する溶解性を評価して、その結果を次の表1に示した。
それぞれの溶剤に対する溶解性の評価は、次のような方法で遂行した。樹脂と各溶剤を50:50重量比で混合した後、混合物を50℃で2時間の間、溶解させる。完全溶解された溶液を100mlバイアルに移し、常温(25℃)で24時間の間、保管する。24時間後、溶液に白濁、沈殿物または未溶解分が残っているかを肉眼で確認する。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例4
前記実施例1から得られた燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)を硬化剤として使用してエポキシ樹脂組成物を合成した。
【0062】
具体的に、主剤としての例えばフェノールノボラックエポキシ樹脂((株)コーロン製品、PNEKEP-1138:エポキシ当量=180)と硬化剤を硬化反応を進行させて硬化物を製造した。硬化剤は、DOPO-PNと、燐が含有されないヒドロキシル当量106、Mn=1200(n=11〜12)、軟化点=120℃のフェノールノボラック(PN)樹脂((株)コーロン製品)を混合して使用した。エポキシ樹脂対硬化剤の当量比は1:1にした。硬化剤混合割合は次の表2のようである。
【0063】
硬化促進剤はトリフェニルホスフィンを使用した。
【0064】
【表2】

【0065】
エポキシ樹脂と硬化剤であるDOPO-PN/PN混合物をよく混合した後、トリフェニルホスフィン(triphenylphosphine)をエポキシ対比0.5重量部で投入してよく混合する。混合物を鋳型枠に注いで、180℃のオーブンで1時間の間、硬化反応を進行した後、常温で冷却させて硬化物を製造する。
【0066】
エポキシ樹脂対硬化剤の当量比は1:1にした。
【0067】
得られた硬化物に対して次のように硬化物性を分析した。
【0068】
(1)ガラス転移温度(Glass transition temperature)の測定結果
硬化物のガラス転移温度(Tg)を、DSC分析を通じて得、その結果は次の表3のようである。
【0069】
【表3】

【0070】
前記表2の結果から、DOPO-PNを全然使わないでPN単独で硬化剤として使用したF1実験のガラス転移温度が一番高い結果を見せた。DOPO-PNのみを単独で使用したF5実験が一番低いガラス転移温度を示した。
【0071】
(2)熱分解温度(Decomposition Temperature)の測定
同一な配合物に対してTGAを使用して熱分解温度を測定して、その結果を次の表4に示した。
【0072】
【表4】

【0073】
ガラス転移温度に比べて相対的に偏差は少なかったが、類似した傾向を見せた。PN含量が一番多いF1実験の熱分解温度が一番高かく、F5実験が一番低い数値を示した。
【0074】
(3)UL-94難燃評価
硬化物の燐含量による難燃等級の傾向性を評価して、その結果を次の表5に示した。
【0075】
【表5】

【0076】
実験結果F1とF2は、試片が火に燃えてV-0等級を満足することができなかった。F3、4、5はV-0等級を満足した。特に、F5の場合、全然火に燃えなかった。燐の含量が増加することによって難燃性も共に増加した。
以上の結果から、燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)を含む硬化剤と、フェノールノボラックエポキシとの硬化反応を通じて硬化物を製造して、硬化物性を測定した結果、DOPO-PNとPNを1:1で混合した硬化剤を使用時にガラス転移温度の大きい減少なしにUL-94V-0等級の難燃性を満足することができ、最適であることが分かる。
【0077】
実施例5
前記実施例4と同一な方法でエポキシ樹脂組成物及び硬化物を製造するが、但し、実施例2で得られた燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)を使用して、実施例4のF4のような形態で硬化物を製造した。
得られた硬化物に対して前記実施例4のように、ガラス転移温度、熱分解温度、UL-94難燃評価を遂行して、その結果を次の表6に示した。
【0078】
実施例6
前記実施例4と同一な方法でエポキシ樹脂組成物及び硬化物を製造するが、但し、実施例3の燐-変性フェノールノボラック樹脂を使用して、実施例4のF4のような形態で硬化物を製造した。
【0079】
得られた硬化物に対して前記実施例4のように、燐含量、ガラス転移温度、熱分解温度、UL-94難燃評価を遂行して、その結果を次の表6に示した。
【0080】
【表6】

【0081】
実施例7
前記実施例5と同一な組成でエポキシ硬化剤組成物を造成して同一な方法で硬化物を製造するが、但し、主剤としてフェノールノボラックエポキシ樹脂の代りに燐-変性エポキシ樹脂(燐含量2.9%、エポキシ当量290、((株)コーロン製品)を利用した。
得られた硬化物に対して前記実施例4のように、燐含量、ガラス転移温度、熱分解温度、UL-94難燃評価を遂行して、その結果を次の表7に示した。この時、フェノールノボラック樹脂と燐-変性フェノールノボラック樹脂(DOPO-PN)の混合割合は、8:2にして硬化物の燐含量を実施例4のF3と同等な水準で調節した。
【0082】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の化学式1で表示される繰り返し単位を含んで、重量平均分子量が400乃至4000である燐-変性フェノールノボラック樹脂。
【化1】

・・・(化学式1)

【請求項2】
軟化点が50乃至200℃であることを特徴とする請求項1に記載の燐-変性フェノールノボラック樹脂。
【請求項3】
燐含量が1重量%以上のものであることを特徴とする請求項1に記載の燐-変性フェノールノボラック樹脂。
【請求項4】
2-メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール及びジメチルホルムアミドに可溶であることを特徴とする請求項1に記載の燐-変性フェノールノボラック樹脂。
【請求項5】
請求項1乃至4のうち何れか一つに記載の燐-変性フェノールノボラック樹脂を含むことを特徴とするエポキシ硬化剤。
【請求項6】
エポキシ樹脂と、及び
次の化学式1で表示される繰り返し単位を含んで重量平均分子量400乃至3,000である燐-変性フェノールノボラック樹脂を含む硬化剤と、
を含むエポキシ樹脂組成物。
【化2】

・・・(化学式1)

【請求項7】
燐-変性フェノールノボラック樹脂は、軟化点が50乃至200℃のものであることを特徴とする請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
燐-変性フェノールノボラック樹脂は、燐含量が1重量%以上のものであることを特徴とする請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
燐-変性フェノールノボラック樹脂は、2-メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール及びジメチルホルムアミドに可溶であることを特徴とする請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
硬化剤は、燐-変性フェノールノボラック樹脂と燐-変性されないフェノールノボラック樹脂の混合物であり、燐-変性フェノールノボラック樹脂を全体硬化剤のうちで20重量%以上含むものであることを特徴とする請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
エポキシ樹脂は、燐-変性エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
請求項6乃至10の何れか一つに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物。
【請求項13】
請求項11に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物。
【請求項14】
燐含量が1重量%以上であることを特徴とする請求項12に記載の硬化物。
【請求項15】
燐含量が3重量%以上であることを特徴とする請求項13に記載の硬化物。
【請求項16】
ガラス転移温度が120℃以上であることを特徴とする請求項12に記載の硬化物。
【請求項17】
ガラス転移温度が120℃以上であることを特徴とする請求項13に記載の硬化物。


【公表番号】特表2012−522100(P2012−522100A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503320(P2012−503320)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001930
【国際公開番号】WO2010/114279
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】