説明

爆砕発酵処理食物繊維含有組成物

【課題】ヒト腸内有用菌増殖を向上させるがクロストゥリジウム菌,病原性大腸菌のような有害菌を減少させる、安全で副作用のない、ヒト腸内環境改善用組成物や、内臓(腹部)肥満、高脂血症、高血圧、血糖値の上昇などの病態を呈するメタボリックシンドロームの改善用組成物、ヒト用抗酸化組成物、及び前記作用を有する組成物を配合した食品を提供する。
【解決手段】ヘミセルロース含有植物資源を蒸煮爆砕処理し、この蒸煮爆砕処理物に発酵基質を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、麹菌により製麹し、得られた麹に加水し、麹が水に分散した麹分散液に前記蒸煮爆砕処理物を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、発酵することにより得られる爆砕発酵処理食物繊維を含有する、前記作用を有する組成物、前記組成物を含有する、各作用を有する食品とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バガス等のヘミセルロース含有植物資源から得られるキシロオリゴ糖、食物繊維等を含有する爆砕発酵処理食物繊維の有効な用途に利用する発明に関し、より詳しくは前記爆砕発酵処理食物繊維を含有する、ヒト腸内環境改善用組成物、ヒトメタボリックシンドローム改善用組成物、ヒト用抗酸化組成物、及び爆砕発酵処理食物繊維を含有する前記用途を有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会においては、多くの人が自然界の営みからかけ離れた、特に都会では人工的な環境の中で生活し、また、情報機器、制御機器を使うことが多い仕事や営業等の仕事の過多からくる強いストレス、運動不足、食生活の影響等により、腸内の細菌叢の変化による胃腸炎や肥満体となるヒトが増加している。近年、腸内細菌が、ヒトの健康と深い関わりを有し、ヒトの生理状態に影響を及ぼしていることが明らかにされている。
【0003】
これらの腸内細菌は食物や薬物に由来するさまざまな物質や内因性物質の代謝に関与していて、ヒトの栄養、生理機能、感染免疫、発癌、老化、薬効等に重要な役割を果たしているといわれており、これらの腸内細菌の中には、ビフィズス菌や乳酸菌のようにヒトの病原菌,ウイルス等に対する感染防御,栄養,有害菌増殖抑制等の面で有利に働く有用菌や、クロストゥリディウム菌,病原性大腸菌のように発癌,肝臓疾患,動脈硬化症,高血圧症,感染症等に関係している有害菌がある。
【0004】
このようなことから、ヒトの腸内で有用菌を定着させ、増殖させることが最適な腸内細菌叢であると考えられている。このために、腸内の有用菌を増加させるために種々のビフィズス菌製剤や、ヨーグルトなどが開発されているが、ヒトの生体内での胃酸,胆汁酸などの上部消化管のバリヤーの通過、増殖部位としての下部消化管における増殖可能性といった生菌の定着ならびに増殖能力が大きな問題となっている。
【0005】
腸内における有用菌の増殖に必要な因子として最も重要なものは糖類であると考えられ、ラクチュロース,パラチノース,フラクトオリゴ糖,ラフィノース,スタキオース,キシロオリゴ糖などの種々の糖類が有用菌の増殖にとって有効であるとされており、これらを含有した飲食物も提案されているが、これらの糖類は、一部の大腸菌,クロストゥリディウム属細菌等の有害菌に対しても資化性があり、それらの増殖にも関与している。従って、上記糖類が有用菌に選択的に資化されるわけではなく、ヒトの腸内で有用菌の菌数のみが特異的には増加しないのが現状である。以上のことより、未だ満足のいく結果が得られていない。
【0006】
腸内有用菌増殖の向上のため、マンノース直鎖の鎖長が30〜200単位の範囲内に80%以上分布するように低分子化したガラクトマンナンを添加する腸内有用菌増殖効果を有する粉末飲料及びその製造方法(例えば、特許文献1参照)や、フルクトオリゴ糖(FOS)及びガラクトオリゴ糖(GOS)を含む栄養または医薬組成物(例えば、特許文献2参照)や、分子量10,000以上120,000以下であって、その30%(w/v)水溶液の粘度が5〜15mPa・s(25℃,B型粘度計)、1%(w/v)水溶液のpHが5〜7であるポリガラクトース及び/又はポリガラクトース誘導体を含有する腸内環境改善用組成物(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0007】
一方、最近の調査によると、メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome 代謝症候群)の疑いが強いか、その予備群とみられる人が40歳を過ぎると急増し、40〜74歳の男性の約半数に上ることが報告され、女性も同じ年代で5人に1人が当てはまり、該当者は全国で約1960万人と推計されている。メタボリックシンドロームの根本的原因として肥満、運動不足、遺伝因子の3つがあげられ、これらがインスリン抵抗性と結びつき、内臓(腹部)肥満、高脂血症、高血圧、血糖値の上昇などが特徴的である病態となり、こうした病態が動脈硬化、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)などの強い危険因子となるといわれ、生活習慣の改善が重要とされている。
【0008】
メタボリックシンドローム(代謝症候群)の治療及び予防剤としての技術が最近増加しており、特定の化学物質を使用するもの(例えば、特許文献4〜6参照)や、体内の生理活性物質と関連した活性物質を用いるもの(例えば、特許文献7〜10参照)や、繊維と蛋白質からなる、例えば粘稠性可溶性繊維と粘度低下性タンパク質を含む組成物(例えば、特許文献11参照)等が知られている。
【0009】
ヒトは常時呼吸をし、体に酸素を取り入れている。呼吸によって摂取した酸素のうち約2%〜4%が不安定な不対電子をもつ活性酸素となり活性酸素には、体内に侵入してきた細菌などから身を守る役割もあるが、大量に活性酸素が発生した場合、不飽和脂肪酸が体内で活性酸素によって酸化され、「過酸化脂質」になる。細胞の一番外側にある細胞膜は「不飽和脂肪酸」でできており、その不飽和脂肪酸が酸化して、過酸化脂質となり、細胞膜がボロボロになると、さらに細胞膜内にあるタンパク質までもが巻き込まれて酸化し、もっと有害な二次酸化物ができる。これによって、老化、脳卒中、自己免疫疾患、ガン、白内障、脂肪肝、心筋梗塞、虚血性心疾患、アルツハイマー症候群、糖尿病、糖尿病性腎症、動脈硬化、アレルギー、花粉症のような様々な疾病や皮膚のしわ形成や皮膚の弾力性低下等の老化、炎症、肌の色素沈着が引き起こされている。しかし、体内のSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)をはじめ、カタラーゼ、グルタチオン・パーオキシターゼなどの抗酸化物質が備わっており、これによって、この活性酸素を消しさってくれるがこれにも限界がある。
【0010】
抗酸化剤として、例えば、果実等の自然のものを利用する技術として、甘味および抗酸化作用を有する羅漢果配糖体を含有する抗酸化組成物(例えば、特許文献12参照)や、ノブドウ抽出物を有効成分として含有する抗酸化組成物(例えば、特許文献13参照)や、アムラー又はその抽出物を含有する抗酸化組成物(例えば、特許文献14参照)が知られている。
【0011】
【特許文献1】特開平6−225734号公報
【特許文献2】特表2006−509797号公報
【特許文献3】特開2005−47819号公報
【特許文献4】特表2003−521528号公報
【特許文献5】再公表特許WO2004−80943号公報
【特許文献6】特開2006−131559号公報
【特許文献7】特開2005−232150号公報
【特許文献8】特開2005−097216号公報
【特許文献9】特表2005−526032号公報
【特許文献10】特表2005−501096号公報
【特許文献11】特表2005−534667号公報
【特許文献12】特開2001−322934号公報
【特許文献13】特開2004−15364号公報
【特許文献14】特開2006−57012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、ヒト腸内有用菌増殖を向上させるがクロストゥリディウム菌,病原性大腸菌のような有害菌を減少させる、安全で副作用のない、ヒト腸内環境改善用組成物や、内臓(腹部)肥満、高脂血症、高血圧、血糖値の上昇などの病態を呈するメタボリックシンドロームの改善用組成物、ヒト用抗酸化組成物、及び前記作用を有する組成物を配合した食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、サトウキビの絞りカスであるバガスの有効利用について鋭意研究しており、その製造方法として、バガスを蒸煮爆砕処理し、この蒸煮爆砕処理バガスに発酵基質を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、麹菌により製麹し、原料となる蒸煮爆砕処理バガスの一部を用いて製麹し、得られた麹に加水し、麹が水に分散した麹分散液に蒸煮爆砕処理バガスを混合し、この混合物の水分含量を調整した後、発酵して爆砕発酵処理バガスを得る方法を先に開発した。そして、得られた爆砕発酵処理バガスには、キシロビオースとキシロトリオ−ス等のキシロオリゴ糖、フェルラ酸等の抗酸化性物質、食物繊維に富むものであった。このように爆砕発酵処理バガスは、糖類、抗酸化性物質及び食物繊維を含有することから、医薬又は有用な食品素材として利用可能性が高いと思われたが、ヒトへ投与し、その結果を確認するまでには至らなかった。その後、実際にヒトへ適用し、種々の医薬効果について鋭意研究した結果、ヒトの腸内環境改善作用、ヒトメタボリックシンドローム改善作用、ヒト用抗酸化作用を有することを確認し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、[1]ヘミセルロース含有植物資源を蒸煮爆砕処理し、この蒸煮爆砕処理物に発酵基質を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、麹菌により製麹し、得られた麹に加水し、麹が水に分散した麹分散液に前記蒸煮爆砕処理物を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、発酵することにより得られる爆砕発酵処理食物繊維を含有することを特徴とするヒト腸内環境改善用組成物や、[2]ヘミセルロース含有植物資源がバガスであることを特徴とする上記[1]記載のヒト腸内環境改善用組成物や、[3]爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有することを特徴とする上記[1]又は[2]記載のヒト腸内環境改善用組成物や、[4]爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有し、キシロビオースとキシロトリオースを0.5%以上含有することを特徴とする上記[3]記載のヒト腸内環境改善用組成物や、[5]爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有し、100g中にフェルラ酸を1mg以上含有することを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれか記載のヒト腸内環境改善用組成物に関する。
【0015】
また本発明は、[6]ヘミセルロース含有植物資源を蒸煮爆砕処理し、この蒸煮爆砕処理物に発酵基質を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、麹菌により製麹し、得られた麹に加水し、麹が水に分散した麹分散液に前記蒸煮爆砕処理物を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、発酵することにより得られる爆砕発酵処理食物繊維を含有することを特徴とするヒトメタボリックシンドローム改善用組成物や、[7]ヘミセルロース含有植物資源がバガスであることを特徴とする上記[6]記載のヒトメタボリックシンドローム改善用組成物や、[8]爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有することを特徴とする上記[6]又は[7]記載のヒトメタボリックシンドローム改善用組成物や、[9]爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有し、キシロビオースとキシロトリオースを0.5%以上含有することを特徴とする上記[8]記載のヒトメタボリックシンドローム改善用組成物に関する。
【0016】
本発明はまた、[10]爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有し、100g中にフェルラ酸を1mg以上含有することを特徴とする上記[6]〜[9]のいずれか記載のヒトメタボリックシンドローム改善用組成物や、[11]ヘミセルロース含有植物資源を蒸煮爆砕処理し、この蒸煮爆砕処理物に発酵基質を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、麹菌により製麹し、得られた麹に加水し、麹が水に分散した麹分散液に前記蒸煮爆砕処理物を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、発酵することにより得られる爆砕発酵処理食物繊維を含有することを特徴とするヒト用抗酸化組成物や、[12]ヘミセルロース含有植物資源がバガスであることを特徴とする上記[11]記載のヒト用抗酸化組成物や、[13]爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有することを特徴とする上記[11]又は[12]記載のヒト用抗酸化組成物に関する。
【0017】
さらに本発明は、[14]爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有し、キシロビオースとキシロトリオースを0.5%以上含有することを特徴とする上記[13]記載のヒト用抗酸化組成物や、[15]爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有し、100g中にフェルラ酸を1mg以上含有することを特徴とする上記[11]〜[14]のいずれか記載のヒト用抗酸化組成物や、[16]上記[1]〜[5]のいずれか記載のヒト腸内環境改善用組成物を添加・配合した食品や、[17]上記[6]〜[10]のいずれか記載のヒトメタボリックシンドローム改善用組成物を添加・配合した飲食品や、[18]上記[11]〜[15]のいずれか記載のヒト用抗酸化組成物を添加・配合した飲食品に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の爆砕発酵処理食物繊維を含有する組成物は、何ら副作用を伴うことなくヒト腸内細菌の中でビフィズス菌等の有用菌を増殖させ、クロストゥリディウム菌,病原性大腸菌のような有害菌の増殖を抑制するヒト腸内環境改善作用、内臓(腹部)肥満、高脂血症、高血圧、血糖値の上昇などが特徴的な病態を伴うヒトメタボリックシンドローム改善作用、及びヒト抗酸化作用に顕著な効果を奏することができ、また、黒糖に似たフレーバーを有するので、食品に添加して一般食品として食することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のヒト腸内環境改善用組成物、ヒトメタボリックシンドローム改善用組成物、ヒト用抗酸化組成物としては、ヘミセルロース含有植物資源を蒸煮爆砕処理し、この蒸煮爆砕処理物に発酵基質を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、麹菌により製麹し、得られた麹に加水し、麹が水に分散した麹分散液に前記蒸煮爆砕処理物を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、発酵することにより得られる爆砕発酵処理食物繊維を含有する組成物であれば、発酵処理後の液状物やその乾燥物など特に制限されるものではなく、上記ヘミセルロース含有植物資源としては、サトウキビから砂糖を製造する過程で複製されるサトウキビの圧搾カスであるバガスの他、イネやトウモロコシの芯、木等の不溶性キシランを含む他の植物資源を挙げることができる。以下、ヘミセルロース含有植物資源としてバガスを用いた場合を例にとって説明する。
【0020】
ヘミセルロース含有植物資源としてバガスを用いた場合、本発明の爆砕発酵処理食物繊維を爆砕発酵処理バガスといい、かかる爆砕発酵処理バガスは、バガスを蒸煮爆砕処理し、この蒸煮爆砕処理物に発酵基質を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、麹菌により製麹し、得られた麹に加水し、麹が水に分散した麹分散液に前記蒸煮爆砕処理物を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、発酵する方法により得られることになる。
【0021】
上記蒸煮爆砕処理としては、耐圧反応容器内で、高温・高圧の水蒸気によりバガスを蒸煮し、キシランをある程度加水分解させた後、耐圧反応容器に設けられたバルブを一気に開放し、瞬間的に大気圧に放出する処理であれば特に制限されず、この蒸煮爆砕処理により、加水分解による化学的反応と、水の断熱膨張による物理的反応の相乗効果によって、バガスを粉砕することができる。この蒸煮爆砕処理条件としては、1.0Mpa〜3.0Mpaで30秒〜10分、好ましくは2.0Mpa〜2.8Mpaで1〜5分、より好ましくは2.4Mpa〜2.6Mpaで60〜80秒を例示することができる。また、バガスをあらかじめ粉砕処理した後、蒸煮爆砕処理を行うことが好ましく、粉砕の程度としては、平均粒径2〜5mm、特に3〜4mm、中でも3.5mmの長さに粗粉砕することが好ましい。
【0022】
蒸煮爆砕処理されたバガスは発酵基質と混合される。かかる発酵基質としては、小麦フスマ、米ヌカ、廃糖蜜等を例示することができるが、小麦フスマが好ましい。例えば、発酵基質として小麦フスマを用いる場合、蒸煮爆砕処理されたバガス100重量部に対して、小麦フスマを1〜50重量部、好ましくは10〜50重量部、より好ましくは40〜45重量部配合することができる。製麹にあたっては、この混合物に加水して、水分含量を調整することが必要であり、水分含量が40〜60%、好ましくは45〜55%、より好ましくは約50%になるように加水する。
【0023】
製麹に使用する麹菌としては、通常の製麹に用いられる麹菌を挙げることができ、具体的には、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)等を例示することができる。使用する麹菌としては、キシロオリゴ糖を多く含有する食品素材を得ることができることから、高キシラナーゼ活性を有する株が好ましい。このキシラナーゼによりヘミセルロースからキシロオリゴ糖が産生される。高キシラナーゼ活性株の調製方法として、紫外線や変異誘発剤を用いた変異株の調製方法も利用しうるが、安全性の点で単胞子分離を実施して得られる自然変異株が好ましい。キシラナーゼ活性は、キシランから40℃で1分間に1μmolのキシロースを遊離する活性を1単位として定義し、その測定方法としては、公知方法を利用することができる。高キシラナーゼ活性を有する麹菌としては、この条件により、0.35単位/g以上であることが好ましい。また、キシロオリゴ糖の中でも、キシロビオースやキシロトリオースを主として含むものが、キシロオリゴ糖の中でも胃酸に対する抵抗性が他のオリゴ糖に比べて高いことから、分解されず腸内に到達することから好ましい。爆砕発酵処理バガスに含有されるキシロビオースやキシロトリオースを主成分とするキシロオリゴ糖は、整腸作用等の観点から、3.9%以上が好ましく、かかるキシロビオースやキシロトリオースを主とするキシロオリゴ糖を3.9%以上含む爆砕発酵処理バガスを製造するため、麹菌として、アスペルギルス・ソーヤ(NFRI1147)から単胞子分離を実施して得られるキシラナーゼ活性の高い麹菌を用いることが好ましい。製麹は、28〜32℃、特に30℃で5〜7日培養することにより行うことが好ましい。
【0024】
次いで、製麹した麹を水に分散し、この麹分散液に前記蒸煮爆砕処理バガスを混合し、この混合物の水分含量を調整した後、発酵する。麹分散液に混合する蒸煮爆砕処理物として、製麹に用いた蒸煮爆砕処理物の5〜10倍量、好ましくは8〜9倍量を用いることができる。麹分散液に蒸煮爆砕処理バガスを混合した混合物に加水して、水分含量を調整することが必要であり、水分含量が40〜60%、好ましくは45〜55%、より好ましくは略50%になるように加水する。発酵は、28〜32℃、特に30℃で48〜72時間培養することにより行うことが好ましい。発酵後、発酵停止処理を実施することが、過発酵防止の点で好ましい。かかる発酵停止処理としては、80〜100℃の蒸気に30分間暴露する方法を具体的に例示することができる。
【0025】
上記爆砕発酵処理バガスとしては、乾燥品が好ましく、特に乾燥微粉末が好ましい。この乾燥微粉末の平均粒径としては、1mm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは200〜300μmを好適に例示することができる。また、本発明の製造方法によって得られる爆砕発酵処理バガスとしては、キシロビオースやキシロトリオースを主成分とするキシロオリゴ糖を3.9%以上含有するものや、フェルラ酸等の抗酸化活性物質を含有して抗酸化活性を示すものや、酵素法により測定した食物繊維を50重量%以上含むものが好ましい。
【0026】
次に、爆砕発酵処理食物繊維(爆砕発酵処理バガス)としては、食物繊維を50重量%以上含有するものや、食物繊維を50重量%以上含有し、キシロビオースとキシロトリオースを0.5%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、中でも3%以上、特に3.9%以上含有するものや、食物繊維を50重量%以上含有し、100g中にフェルラ酸を1mg以上含有するものや、食物繊維を50重量%以上含有し、キシロビオースとキシロトリオースを0.5%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、中でも3%以上、特に3.9%以上含有し、100g中にフェルラ酸を1mg以上含有するものが好ましい。
【0027】
本発明のヒト腸内環境改善用組成物、ヒトメタボリックシンドローム改善用組成物、及びヒト用抗酸化組成物は、それぞれ、ヒト腸内環境改善剤、ヒトメタボリックシンドローム改善剤、及びヒト用抗酸化剤として用いることができる。また、本発明のヒト腸内環境改善用組成物、ヒトメタボリックシンドローム改善用組成物、及びヒト用抗酸化組成物は、サプリメントや医薬品として、あるいは食品に添加・配合して摂取することができる。
【0028】
本発明のヒト腸内環境改善用組成物が有するヒト腸内環境改善作用とは、腸内における有用菌の増殖を促進し、有害菌の増殖を抑制する作用を意味し、このヒト腸内環境改善作用により、ビフィズス菌や乳酸菌のようにヒトの病原菌,ウイルス等に対する感染防御や,栄養,有害菌増殖抑制等の面で有利に働く有用菌の増殖を促進させることができ、一方、クロストゥリディウム菌のように発癌,肝臓疾患,動脈硬化症,高血圧症,自発性感染症等に関係している有害菌の増殖を抑制することができる。また、本発明のヒト腸内環境改善用組成物は、腸内細菌(腸内細菌の数、腸内細菌種のバランス等)を正常な状態にすることの他、腸内細菌叢が正常である状態を積極的に維持すること、あるいは腸内細菌を補うことをも含み、整腸作用、排便への好影響、滋養強壮作用、体力増進・維持、美容健康等広範な作用をも有する。
【0029】
本発明のヒトメタボリックシンドローム改善用組成物を用いることにより改善されるヒトメタボリックシンドロームについて説明すると、2002年10月のWHO World Health Reportによれば、世界の全死亡のうち30%までがcardiovascular disease(心血管疾患)に起因するとされ、心血管疾患発症の背景には高血圧,脂質代謝異常,肥満など複数の危険因子が重複して存在し、しかもこれらの危険因子は成因上密接に関連していると考えられている。このように複数の危険因子が重複して高頻度に生じる病態は「メタボリックシンドローム」と呼ばれ,WHOや米国のAdult Treatment Panel IIIによって診断基準が提唱されている。
【0030】
メタボリックシンドロームは、耐糖能異常,高脂血症,高血圧を合併する動脈硬化易発症状態である。高コレステロール血症に対する対策がほぼ確立された現在、動脈硬化疾患の重要な予防ターゲットとなっていることに加え,ライフスタイルが関与する多くの病態を含むことから,多数の分野から注目され、海外でも複数の診断基準が発表されており、病態を正しく認識し,日本人に即した診断基準を作成することが日本人の予防医学上重要である。
【0031】
2005年4月に、日本肥満学会、日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本循環器学会、日本腎臓病学会、日本血栓止血学会、日本内科学会の8学会が日本におけるメタボリックシンドロームの診断基準をまとめ、公表した。本診断基準では、必須項目となる内臓脂肪蓄積(内臓脂肪面積100平方cm以上)のマーカーとして、ウエスト周囲径が男性で85cm、女性で90cm以上を「要注意」とし、その中で(1)血清脂質異常(トリグリセリド値150mg/dL以上、またはHDLコレステロール値40mg/dL未満)(2)血圧高値(最高血圧130mmHg以上、または最低血圧85mmHg以上)(3)高血糖(空腹時血糖値110mg/dL)の3項目のうち2つ以上を有する場合をメタボリックシンドロームと診断する、と規定している。
【0032】
次に、本発明のヒト用抗酸化組成物が有する抗酸化作用について説明する。不対電子を持っている原子や分子をフリーラジカルといい、フリーラジカルは他の物質から電子を奪って安定化するが、電子を奪われた物質(酸化された物質)はフリーラジカルとなってさらに他の物質から電子を奪うようになる。フリーラジカルの代表は活性酸素であり、ヒトが呼吸によって取り込んだ酸素がエネルギーを産生する過程でスーパーオキシド・ラジカル(O)という活性酸素が発生する。ふつうの酸素分子は16個の電子を持っているが、スーパーオキシド・ラジカルは17個の電子をもっており、そのうち1個が不対電子になりフリーラジカルとなる。スーパーオキシド・ラジカルは体内の消去酵素(スーパーオキシド・ジスムターゼ;SOD)によって過酸化水素(H)に変わり、過酸化水素はカタラーゼやグルタチオン・ペルオキシダーゼによって除去される。しかし、活性酸素の一部は微量元素(鉄イオンや銅イオン)やスーパーオキシドと反応して、ヒドロキシルラジカル(・OH)が発生し、ヒドロキシルラジカルも一つの不対電子をもち、その酸化力は活性酸素のなかで最も強力で、細胞を構成する全ての物質をランダムに酸化して障害をおこすといわれている。また、呼吸により取り入れられた酸素の約2%が活性酸素になるといわれており、白血球が有害な細菌を殺す過程でも活性酸素が発生し、活性酸素以外に一酸化窒素も細菌を殺すために白血球やマクロファージという貪食細胞から産生され、一酸化窒素と活性酸素が反応して極めて強力なフリーラジカルが発生することも知られている。さらに、免疫細胞が産生するフリーラジカルは生体防御に必要であるが、炎症における過剰なフリーラジカル生成は、ガン細胞の発生や老化を促進する要因ともなっている。本発明のヒト用抗酸化組成物は抗酸化作用を有し、体内のラジカルを消去する、あるいは体内のラジカルの消去を促進する。
【0033】
本発明の爆砕発酵処理食物繊維を含有するヒト腸内環境改善用組成物、ヒトメタボリックシンドローム改善用組成物、ヒト用抗酸化組成物は、常法により錠剤、顆粒、カプセル、シロップ等製剤化して、健康サプリメントや医薬品として用いることができる。サプリメントや医薬品として用いる場合、それらの分野で通常用いられている賦形剤を配合することが好ましい。また、摂取量は、ヒトの体重、年齢、性別、症状等により異なり、特に症状に応じて1日当たりの投与量を決定するが、長期に服用することもできる。
【0034】
本発明のヒト腸内環境改善用組成物、ヒトメタボリックシンドローム改善用組成物、ヒト用抗酸化組成物や、これらに含まれる爆砕発酵処理食物繊維(爆砕発酵処理バガス)は、黒糖に似たフレーバーを有し、一般食品に含有してもその食品の風味を損なうことがないので、食品に添加・配合して用いることができ、ヒト腸内環境改善作用、ヒトメタボリックシンドローム改善作用、ヒト用抗酸化作用を奏する食品を容易に提供することができる。添加される食品としては、例えば、麺類、飴、クッキー、シリアル類、菓子類(スナック類)、ふりかけ類、畜産加工品類、魚肉加工品類、缶詰類、ジュース類、清涼飲料、栄養ドリンク剤等を挙げることができる。
【0035】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
[爆砕発酵処理バガスの製造方法]
(麹菌の選択)
独立行政法人食品総合研究所の保存菌株であるアスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)NFRI1147株の単胞子分離を実施し、各単胞子をPAD培地で生育させ、培養後の培養液中のキシラナーゼ活性を測定することにより、キシラナーゼ活性の高い自然変異株を選択した。3000rpmで10分間の遠心分離後の培養上清1g当たりのキシラナーゼ活性は、単胞子分離を実施する前の0.254Uから、0.351Uに上昇した。
【0037】
上記キシラナーゼ活性の測定は、1%濃度の可溶性キシラン(シグマ社製)を含む100mMリン酸緩衝液(pH7.0)0.1mlに、同じ緩衝液に適当に希釈した培養上清0.1mlを加え、37℃、10分間反応させ銅試薬1.0mlを添加して反応を停止した。それに0.8mlの同緩衝液を加えて全量を2.0mlとし、生成した還元糖をソモギー・ネルソン(Somogyi-Nelson)法で測定した。すなわち、これを100℃、15分間加熱した後、流水で急冷し次いでネルソン液1.0mlを加え室温で20分間静置して発色させた。そこへ、純水7.0mlを加えて不溶物を遠心分離(3000rpm、10分間)により除去した後、500nmの吸光度を測定した。還元糖量は、キシロースを同様の系で測定して作成した検量線により求めた。なお、培養上清を加える前に銅試薬をあらかじめ加えて同様に発色させたものをブランクとした。また酵素活性単位は、1分間に1mmolの還元糖(キシロースとして)を生成する酵素量を1単位(U)とした。
【0038】
(製麹工程)
乾燥バガス粉砕機を用いて平均粒径3.5mmの長さに粗粉砕し、反応釜(オートクレーブ)内に収容した後、反応釜に加熱水蒸気を送り込み、2.5Mpa(220℃),70秒間の蒸煮処理を行った後、反応釜から急激に水蒸気を排出し、圧力を瞬時に大気圧にまで戻すことにより爆砕処理を行った。この蒸煮爆砕処理を行ったバガス35kgに小麦フスマ15kgを混合し、水50Lを加水して水分が約50重量%となるように調整した後、単胞子分離により選択した麹菌を接種し、30℃、6日間培養して麹を製造した。
【0039】
(発酵工程)
この製麹した麹を水70Lに分散し、麹の製造で用いた爆砕処理したバガス300kgに混合した。そして、水分が全体の50重量%となるように加水し調整した後、30℃、60時間の発酵処理した後、80〜100℃の蒸気に30分間暴露して発酵停止処理を行った。この発酵処理物をディスク型乾燥機(月島機械社製)を用い、乾燥温度80〜100℃(品温)で乾燥した後、微粉砕処理をして、平均粒径250μmの爆砕発酵処理バガスとした。この爆砕発酵処理バガスの栄養組成を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示されるように、爆砕発酵処理バガスは食物繊維に富み、キシロビオースとキシロトリオ−スを約4%含んでいる。なお、キシロビオースやキシロトリオ−スのキシロオリゴ糖の測定は、DX−500を用いHPLC法(日本ダイオネクス社製)に則り測定した。また、別法として、同じHPLC法であるが、カラム:Biorad Aminex Carbohydrate HPX-42A 300×7.8、flow rate1.0ml/minで移動相を水とし、カラム温度80℃にて測定した。
【実施例2】
【0042】
[実験方法]
(乳酸菌培養培地)
LBS(Lactobacillus選択培地)84gと、Lab-lemco powder8gと、蒸留水1000mLとを混合し、該混合物を118℃、15分間オートクレーブにて滅菌し、これに酢酸ナトリウム15g及び酢酸3.7mLを添加し、そのうちの約20mLをシャーレに入れ、固まった後、菌の培養培地とする。
【0043】
(総嫌気性菌培養培地)
trypticate soy agar30gと、寒天15gと、蒸留水1000mLとを混合し、該混合物を121℃、15分間オートクレーブにて滅菌し、これに馬脱線維血50mLを添加し、そのうちの約20mLをシャーレに入れ、固まった後、菌の培養培地とする。
【0044】
(糞便中の腸内細菌培養方法)
糞便1gを滅菌水9mLに溶かし、適宜希釈して培養に用いる。上記の方法により作成した各種の選択培地に、希釈した糞便液50μLを添加し、嫌気的条件で37℃、72時間培養し、生育したコロニーをカウント後、菌数を算出する。
【0045】
(糞便中のアンモニアの測定)
糞便1gを滅菌水9mLに溶かし、その上澄み液を試験液とし、アンモニア測定キット(アンモニアテストワコー)を用いて測定する。
【0046】
[ヒト腸内細菌叢への影響]
年齢34.0±3.5歳の、ビフィズス菌の菌数が少ない女性のボランティア6名に実施例1で製造された爆砕発酵処理バガス100%で打錠したもの10g/日(毎食後14粒)ずつ、2週間連続摂取してもらい、1週間毎に採便し、摂取前、1週間後、及び2週間後の腸内細菌叢の菌数(選択培地にてカウント)と便中のアンモニア含量(アンモニアテストワコーキット使用)を測定した。統計処理としてANOVA法(摂取前と比較)を採用した。
【0047】
腸内細菌叢における菌の調査としては、総嫌気性菌数、クロストゥリディウム菌数、ビフィドバクテリウム菌数、総嫌気性菌数中のビフィドバクテリウムの含有割合(%)を調べ、その結果を図1の1)、2)、3)、4)に示す。
【0048】
図1の2)より、腸内の嫌気性有害菌のクロストゥリディウム菌数は、1週目では減少し、一方、図1の3)、4)に示すように、腸内の嫌気性有用菌であるビフィドバクテリウム菌数は、本発明の爆砕発酵処理バガスを摂取して特に1週間後に摂取前と比べて増加していることがわかった。このように、クロストゥリディウムなどの有害菌を減少させ、ビフィドバクテリウムなどの有用菌を増殖させていることから、本発明の爆砕発酵処理バガスはヒト腸内環境改善作用を行っていることは明らかである。
【0049】
(便中アンモニアへの影響)
同時に便中アンモニア含量を測定した。その結果を図2に示す。図2から明らかなように、便中アンモニアは、徐々に減る傾向にあり、腸内細菌叢はよい環境に変化していることがわかった。
【実施例3】
【0050】
[爆砕発酵処理食物繊維のヒトでの試飲試験:安全性・有効性]
年齢35.13±10.4歳の男性11名、女性52名の健常者を対象とし、実施例1で製造された爆砕発酵処理バガス100%で打錠したもの10g/日(毎食後14粒)ずつ、4週間連続試飲してもらった。試飲前、2週間、4週間及び試飲停止1週間後に、被験者の便、血液、尿を取り、これらについて測定し、また、アンケート調査を行った。副作用の有無や、便についてはその排便量、排便回数、便の色、便のにおいなどを、また、血液については、血糖値、中性脂肪を、尿については抗酸化活性:尿中8−OHdG(8-hydroxy-2'-deoxyguanosine)測定(参考文献:日本臨床62巻増刊号11,p541−543,2004)を行った。統計処理は、対応のあるANOVA法(試飲前と比較)を採用した。排便量については、図3に示すとおりの結果が得られ、血液の血糖値及び中性脂肪については、図4及び図5に示すとおりの結果が得られた。さらに、抗酸化活性については、図6に示すとおりの結果が得られた。
【0051】
図3に示す結果より、排便量は、試飲開始から徐々に増加しており、排便状態がよいことがわかり、本発明の爆砕発酵処理バガスの効果が奏されていることは明らかである。
【0052】
次に、図4に示す結果より、血糖値が高い(平均約125mg/dl)6名については、試飲前と比べて2週間後、4週間後、試飲停止1週間後の血糖値のそれぞれは下がっており、これらの血糖値は、正常血糖値70〜109mg/dlの範囲にあり、本発明の爆砕発酵処理バガスは血糖値の上昇を有意に抑制していることがわかった。なお、正常者には何ら影響はなかった。
【0053】
また、図5に示す結果より、中性脂肪が高めの(平均約190mg/dl)8名については、試飲4週間目では、約125mg/dlまで下がり、この値は有意に下がっていることを示している。因みに正常値は50〜149mg/dlであることから、中性脂肪が高めであった8名の平均は、正常の範囲に下がった結果となった。図に示すとおり、4週目の試飲後、摂取しない1週目では上がっているが、本発明の爆砕発酵処理バガスを摂取することにより減少傾向を示していることは明らかである。
【0054】
さらに、図6に示す結果より、酸化活性の高めの9名(尿中8−OHdG量が平均値15.7ng/mg以上)は、本発明の爆砕発酵処理バガスを摂取することにより酸化活性は有意に下がり本発明の有効性が確かめられた。なお、副作用を訴えるヒトは誰もいなっかた。
【0055】
以上のとおり、本発明に係る爆砕発酵処理バガスを摂取することで、前記の病状を改善したことがわかり、即ち、爆砕発酵処理食物繊維含有物はヒトメタボリックシンドローム改善用組成物として有効であることを示すものであった。
【実施例4】
【0056】
[爆砕発酵処理バガス中の抗酸化活性成分]
実施例1により製造された爆砕発酵処理バガス及び生バガス中のポリフェノール含量を測定した。前記爆砕発酵処理バガス中に同定されたポリフェノール類としては、1)p-hydroxybenzoic acid、2)p-hydroxycinnamic acid、3)ferulic acid(含有量:34.9mg/100g)を挙げることができる。その結果を図7に示す。図7に示す結果より、生バガスに比べて、本発明の爆砕発酵処理バガスはポリフェノール含量が顕著に高いことが明らかであり、このポリフェノールを多く含むことより、抗酸化作用が顕著であることが理解できる。
【実施例5】
【0057】
(爆砕発酵処理バガス入り飴)
水飴と砂糖類(白砂糖、ザラメ、黒砂糖等を含む)とを飴材料とし、これに所要量の水を加えて150℃程度に加熱し、全体を撹拌しながら水飴状にした。その水飴状の材料を70℃以下に冷ました後に、未だ粘性がある間に掻き混ぜ又は混練するようにしながら、爆砕発酵処理バガス粉末10重量%を振りかけるようにして添加し、前記バガス粉末が全体に略均等に行き渡るようにする。その後に、飴材料を引き延ばすようにして適宜の型内に入れて成形し、冷ましてから離型して、ドロップ形状の飴菓子を形成し、ドロップ状の飴菓子を得た。
【実施例6】
【0058】
(爆砕発酵処理バガス入りクッキー)
表2に記載のとおりの原材料及び配合量を用意する。
以下のとおりの常法のクッキーの製造方法を採用して、クッキーを製造する。
(1)フラワー(小麦粉)とベーキングパウダーAを合わせてふるいにかける。
(2)Vマーガリンを室温まで下げて、クリーム状に練る。
(3)グラニュー糖CIMを数回に分けて(2)に入れ、入れるたびによく混ぜる。
(4)(3)に本発明の醗酵バガス末、そのほかの材料を加え、最後にフラワーを一度に加え、練らないようにして全体を混ぜる。
(5)天板にショートニングを塗り、180℃に温めたオーブンで、12、3分焼く。クッキーは、黒糖の香りがし、味も通常のクッキーと変わりがなく、誰にでも好まれるタイプの菓子であり、毎日のおやつとしても適するものであった。
【0059】
【表2】

【実施例7】
【0060】
(ドリンク)
表3に記載のとおり、本発明の醗酵バガス末と他の原料を、記載の配合量で、常法の製造方法により粉末ドリンクを製造した。該ドリンクは、粉末タイプでありお湯、水または低脂肪乳などに溶かして飲むことで食物繊維を摂取でき、飲みやすいものであった。
【0061】
【表3】

【実施例8】
【0062】
(爆砕発酵処理バガス入りクッキー及びドリンク摂取における効果)
平均年齢39.85±13.74の20人に、実施例6で得られたクッキー13個及び実施例7で得られたドリンクを1食として、1日1食または2食に置き換え2ヶ月間摂取してもらった。摂取後、20人の体重、体脂肪、排便回数、排便量、尿中8−OHdGについて測定した。その結果を表4に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
表4に示すとおり、本発明の爆砕発酵処理バガス入りクッキー及びドリンクを所定期間摂取することにより、体重については摂取後より有意に低下し、体脂肪に関しては有意差はないが摂取2ヶ月後で低下傾向にあり、また、排便回数に関しては有意差はないものの増加傾向にあった。さらに、尿中8−OHdGについては基準値異常の人4名については摂取1ヵ月後、2ヵ月後で有意差はないが低下傾向を示した。この結果は、本発明の爆砕発酵処理バガスを食品に添加し、摂取しやすい形態とすることにより、より肥満、高脂血症などメタボリックシンドローム改善作用、ヒト腸内環境改善作用、ヒト抗酸化作用に効果を有することを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の食物繊維投与による便中の1)総嫌気性細菌数、2)クロストゥリディム数(レシチナーゼ陽性)、3)ビフィドバクテリウム数、4)嫌気性細菌中のビフィドバクテリウムの割合(%)を示す図である。
【図2】本発明の食物繊維投与による便中アンモニア含量変化を示す図である。
【図3】本発明の食物繊維投与による排便量の変化を示す図である。
【図4】本発明の食物繊維投与による血糖値の高いヒトの血糖値の変化を示す図である。
【図5】本発明の食物繊維投与による中性脂肪が高めのヒトへの中性脂肪mg/dlの変化を示す図である。
【図6】本発明の食物繊維投与によるヒト体内での抗酸化活性の変化を示す図である。
【図7】本発明の爆砕発酵処理バガスと生バガスにおける抗酸化活性成分量の比較を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘミセルロース含有植物資源を蒸煮爆砕処理し、この蒸煮爆砕処理物に発酵基質を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、麹菌により製麹し、得られた麹に加水し、麹が水に分散した麹分散液に前記蒸煮爆砕処理物を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、発酵することにより得られる爆砕発酵処理食物繊維を含有することを特徴とするヒト腸内環境改善用組成物。
【請求項2】
ヘミセルロース含有植物資源がバガスであることを特徴とする請求項1記載のヒト腸内環境改善用組成物。
【請求項3】
爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有することを特徴とする請求項1又は2記載のヒト腸内環境改善用組成物。
【請求項4】
爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有し、キシロビオースとキシロトリオースを0.5%以上含有することを特徴とする請求項3記載のヒト腸内環境改善用組成物。
【請求項5】
爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有し、100g中にフェルラ酸を1mg以上含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のヒト腸内環境改善用組成物。
【請求項6】
ヘミセルロース含有植物資源を蒸煮爆砕処理し、この蒸煮爆砕処理物に発酵基質を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、麹菌により製麹し、得られた麹に加水し、麹が水に分散した麹分散液に前記蒸煮爆砕処理物を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、発酵することにより得られる爆砕発酵処理食物繊維を含有することを特徴とするヒトメタボリックシンドローム改善用組成物。
【請求項7】
ヘミセルロース含有植物資源がバガスであることを特徴とする請求項6記載のヒトメタボリックシンドローム改善用組成物。
【請求項8】
爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有することを特徴とする請求項6又は7記載のヒトメタボリックシンドローム改善用組成物。
【請求項9】
爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有し、キシロビオースとキシロトリオースを0.5%以上含有することを特徴とする請求項8記載のヒトメタボリックシンドローム改善用組成物。
【請求項10】
爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有し、100g中にフェルラ酸を1mg以上含有することを特徴とする請求項6〜9のいずれか記載のヒトメタボリックシンドローム改善用組成物。
【請求項11】
ヘミセルロース含有植物資源を蒸煮爆砕処理し、この蒸煮爆砕処理物に発酵基質を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、麹菌により製麹し、得られた麹に加水し、麹が水に分散した麹分散液に前記蒸煮爆砕処理物を混合し、この混合物の水分含量を調整した後、発酵することにより得られる爆砕発酵処理食物繊維を含有することを特徴とするヒト用抗酸化組成物。
【請求項12】
ヘミセルロース含有植物資源がバガスであることを特徴とする請求項11記載のヒト用抗酸化組成物。
【請求項13】
爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有することを特徴とする請求項11又は12記載のヒト用抗酸化組成物。
【請求項14】
爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有し、キシロビオースとキシロトリオースを0.5%以上含有することを特徴とする請求項13記載のヒト用抗酸化組成物。
【請求項15】
爆砕発酵処理食物繊維が、食物繊維を50重量%以上含有し、100g中にフェルラ酸を1mg以上含有することを特徴とする請求項11〜14のいずれか記載のヒト用抗酸化組成物。
【請求項16】
請求項1〜5のいずれか記載のヒト腸内環境改善用組成物を添加・配合した食品。
【請求項17】
請求項6〜10のいずれか記載のヒトメタボリックシンドローム改善用組成物を添加・配合した飲食品。
【請求項18】
請求項11〜15のいずれか記載のヒト用抗酸化組成物を添加・配合した飲食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−63246(P2008−63246A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240332(P2006−240332)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年3月5日 社団法人 日本農芸化学会発行の「日本農芸化学会2006年度(平成18年度)大会講演要旨集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年5月26日 インターネットアドレス「http://innovation.nikkeibp.co.jp/etb/20060526−01.html」に発表
【出願人】(397031784)株式会社琉球バイオリソース開発 (21)
【出願人】(501186173)独立行政法人森林総合研究所 (91)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】