説明

爪外用剤組成物

【課題】爪表皮への栄養補給、保湿を含む被覆保護、及び皮膜形成作用を有し、適用時の安全性が高く、使用感が良好でかつリムーバーによって傷ついた爪表皮をケアするネイルケア用化粧料又は医薬部外品として提供可能な爪外用剤組成物を得る。
【解決手段】傷ついた爪表皮の手入れをするために改善された爪外用剤組成物であって、剤型処方に応じて調製された爪外用基剤に対して、少なくともシスチンとイオン化カルシウム飽和水とユズオイル又はライムオイルとを配合したものである。好適な剤型は弱酸性の液状組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傷ついた爪表皮の手入れをするためのネイルケア用化粧料又は医薬部外品として使用され、イオン化カルシウム飽和水と植物由来のオイル抽出物(以下、植物オイル。)を配合した爪外用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マニキュアは、ニトロセルロースを皮膜形成剤としてアセトン、トルエン等の有機溶剤に溶かし、この溶液を手や足の爪に塗布して皮膜を形成するものが主流である。塗布されたマニキュアを除去する場合、ニトロセルロースを溶解しうるアセトン、トルエン等の有機溶剤の混合溶液を主成分としたリムーバー(除光液)をコットン(木綿)に吸着させ、このコットンにより爪上のマニキュアを拭き取っているのが一般的である。
【0003】
しかしながら、リムーバーは、マニキュア皮膜と同時に爪の水分や脂肪分も取り除いてしまうので、爪の表面はざらざらとして光沢のない状態になり、長期間使用した場合などにおいては、爪が脆くなり、爪の健康上好ましくない不具合がある。
【0004】
また、近年、マニキュアのネイルエナメルに使用されるトルエン等の有機溶剤に安全面、環境衛生面での問題点が指摘されはじめ、このような有機溶剤を使用していない水性ネイルエナメルの開発が盛んとなってきたが、水性ネイルエナメル専用のリムーバーの除去性能は未だ充分とは言いがたい。こうしたなかで、ネイルケア、ネイルトリーメントを目的効果とする化粧料(組成物)の提案が知られている(例えば、特許文献1、2、3及び4を参照)。しかしながら、本発明に関する少なくともイオン化カルシウム飽和水と植物オイルを配合した新たな成分系(組成)により、格別顕著な効果を見いだしたネイルケア用化粧料又は医薬部外品(本発明の爪外用剤組成物に同じ)の提案は見当たらない。
【特許文献1】特開2006−176456号公報
【特許文献2】特開2006−52514号公報
【特許文献3】特開2004−352718号公報
【特許文献4】特開2004−123638号公報
【0005】
ところで、爪は表皮細胞が変化したものであり、上述のとおり、マニキュアは皮膜形成剤としてニトロセルロースを使用し、化粧もち、速乾性、塗易性といった使用性の点に優れている反面、有機溶媒により脱水、脱脂作用による爪甲層状分裂現象や爪の黄変が引き起こされるという問題は今日的にも等閑視できない技術解決課題となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、前示の課題を解決するため、ネイルケア水やネイルケアクリームとして利用価値があるものを検討してきた。その結果、イオン化カルシウム飽和水と植物オイル、とりわけユズオイル又はライムオイルを配合した爪外用剤にネイルケア効果が高いことが判明した。
【0007】
本発明は上記知見に基づきなされたものであって、爪表皮への栄養補給、保湿を含む被覆保護、及び皮膜形成作用を有し、適用時の安全性が高く、使用感が良好でかつリムーバーによって傷ついた爪表皮をケアするネイルケア用化粧料又は医薬部外品としての爪外用剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するために本発明は、傷ついた爪表皮の手入れをするためのネイルケア用化粧料又は医薬部外品として使用される爪外用剤組成物であって、
剤型処方に応じて調製された爪外用基剤に対して、少なくともシスチンとイオン化カルシウム飽和水とユズオイル又はライムオイルとを配合してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
後述の実施例に示すように、イオン化カルシウム飽和水とユズオイル又はライムオイルを配合することによって、傷ついた爪をケア出来る爪外剤組成物を得ることができる。しかも、水溶液やクリーム等の剤型処方は可能であり、安全性が確認されている成分からなるので、使用時の安全性が高く、使用感も良好なネイルケア用化粧料又は医薬部外品を市場提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良形態のひとつは、ネイルケア成分としてシスチンとイオン化カルシウム飽和水とユズオイルを配合した爪外用剤組成物である。
【0011】
すなわち、エタノールを含む蒸留水にアルギニンとシスチンを添加した溶液にアスコルビン酸を加え、ついでカルシウム粉末を溶解したイオン化カルシウム飽和水を加えて混合溶液とし、さらにグリセリンを加えた後、ユズオイルを加えて調製した弱酸性の液状組成物であって、爪表皮への栄養補給、保湿を含む被覆保護、及び皮膜形成作用を有するものである。
【0012】
本発明を実施するための最良形態のもうひとつは、ネイルケア成分としてシスチンとイオン化カルシウム飽和水とライムオイルを配合した爪外用剤組成物である。
【0013】
すなわち、エタノールを含む蒸留水にアルギニンとシスチンを添加した溶液にアスコルビン酸を加え、ついでカルシウム粉末を溶解したイオン化カルシウム飽和水を加えて混合溶液とし、さらにグリセリンを加えた後、ライムオイルを加えて調製した弱酸性の液状組成物であって、爪表皮への栄養補給、保湿を含む被覆保護、及び皮膜形成作用をを有するものである。
【0014】
上記いずれかの爪外用組成物をネイルケア用化粧料又は医薬部外品としてその剤型を処方化するために、以下の原料を選択的に組み合わせて(必要に応じて配合して)製剤を得ることができる。
【0015】
天然動植物油脂を成分とする場合、例えば、オリーブ油、ミンク油、ヒマシ油、パーム油、牛脂、月見草油、ヤシ油、カカオ油、マカデミアナッツ油等が考慮される。
【0016】
蝋を成分とする場合、例えば、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等が考慮される。
【0017】
高級アルコールを成分とする場合、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール等が考慮される。
【0018】
高級脂肪酸を成分とする場合、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸等が考慮される。
【0019】
高級脂肪族炭化水素を成分とする場合、例えば、流動パラフィン、固形パラフィン、スクワラン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等が考慮される。
【0020】
合成エステル油を成分とする場合、例えば、ブチルステアレート、ヘキシルラウレート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケート、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソプロピルミリスレート、イソプロピルパルミテート、セチルイソオクタノエート、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等が考慮される。
【0021】
シリコーン誘導体を成分とする場合、例えば、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等のシリコーン油が考慮される。
【0022】
また、界面活性剤を成分とする場合、アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸塩や硫酸塩等が考慮される。
【0023】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が考慮される。
【0024】
両面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、ホスホベタイン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール及びこれらのリゾ体の他、ホスホァチジン酸とその塩が考慮される。
【0025】
ただし、界面活性剤については、配合しないことによってもひとつの利点があり(例えば、特開平3−83909号公報、特開平5−43416号公報、及び特開平6−9333号公報に記載がある)、目的によっては配合しない。
【0026】
また、多価アルコールを成分とする場合、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、それ以上のポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、それ以上のポリプロピレングリコール類、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール等のブチレングリコール類、グリセリン、ジグリセリン、それ以上のポリグリセリン類、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール等の糖アルコール類、グリセリン類のエチレンオキシド(以下、EOと略記)、プロピレンオキシド(以下、POと略記)付加物、糖アルコール類のEO、PO付加物、ガラクトース、グルコース、フルクトース等の単糖類とEO、PO付加物、マルトース、ラクトース等の多糖類のEO、PO付加物などの多価アルコールが考慮される。
【0027】
さらに、薬剤を成分とする場合、例えば、トコフェロール、酢酸トコフェロール、ビタミンC、アラントイン、胎盤抽出物、エラスチン、アルブチン、コラーゲン、トリクロサン、トリクロロカルバン、グリチルリチン酸ジカリウム等が考慮される。
【実施例】
【0028】
本発明の実施例を以下に説明するが、本発明の保護範囲を逸脱しない限り、実施例製剤に何ら限定されるものではないことはもちろんである。
【0029】
(実施例1)
本発明の一実施例は、表1に配合条件を示すように、ユズオイル入りネイルケア水溶液〔以下、第1実施例製剤。〕である。
【0030】
【表1】

【0031】
ここで、表掲の第1実施例製剤の製造方法は、エタノールを含む蒸留水20gにアルギニンとシスチンを添加した溶液にアスコルビン酸を加え、ついでカルシウム粉末を溶解したイオン化カルシウム飽和水を加えて混合溶液とし、さらにグリセリンと蒸留水44gを加えた後、ユズオイルを加えて調製し、これを濾過する。濾液は弱酸性の液状組成物である。その特徴的な性質は、爪表皮への栄養補給、保湿を含む被覆保護、及び皮膜形成作用を有している点にある。
【0032】
そこで、第1実施例製剤を、10名のパネリスト(ボランティア法)によるバッチ試験に供したところ、何ら問題も無く、使いやすく、爪表皮に改善が見られたとの良好な回答が得られた。
【0033】
(実施例2)
本発明の他の実施例は、表2に配合条件を示すように、ライムオイル入りネイルケア水溶液〔以下、第2実施例製剤。〕である。
【0034】
【表2】

【0035】
ここで、表掲の第2実施例製剤の製造方法は、エタノールを含む蒸留水20gにアルギニンとシスチンを添加した溶液にアスコルビン酸を加え、ついでカルシウム粉末を溶解したイオン化カルシウム飽和水を加えて混合溶液とし、さらにグリセリンと蒸留水44gを加えた後、ライムオイルを加えて調製し、これを濾過する。濾液は弱酸性の液状組成物である。その特徴的な性質は、爪表皮への栄養補給、保湿を含む被覆保護、及び皮膜形成作用を有している点にある。
【0036】
そこで、第2実施例製剤を、10名のパネリスト(ボランティア法)によるバッチ試験に供したところ、何ら問題も無く、使いやすく、爪表皮に改善が見られたとの良好な回答が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
ユズオイル又はライムオイルの抽出技術は確立しており、イオン化カルシウム飽和水の生成技術も公知であるので、本発明技術を知得すれば速やかに実施可能であり、斯界における産業上の利用価値は高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傷ついた爪表皮の手入れをするためのネイルケア用化粧料又は医薬部外品として使用され、植物由来のオイル抽出物(以下、植物オイル。)を配合した爪外用剤組成物であって、
剤型処方に応じて調製された爪外用基剤に対して、少なくともシスチンとイオン化カルシウム飽和水とユズオイル又はライムオイルとを配合してなることを特徴とする爪外用剤組成物。
【請求項2】
傷ついた爪表皮の手入れをするためのネイルケア用化粧料又は医薬部外品として使用され、植物オイルを配合した爪外用剤組成物であって、
エタノールを含む蒸留水にアルギニンとシスチンを添加した溶液にアスコルビン酸を加え、ついでカルシウム粉末を溶解したイオン化カルシウム飽和水を加えて混合溶液とし、さらにグリセリンを加えた後、ユズオイルを加えて調製した弱酸性の液状組成物であって、爪表皮への栄養補給、保湿を含む被覆保護、及び皮膜形成作用を有するものであることを特徴とする爪外用剤組成物。
【請求項3】
傷ついた爪表皮の手入れをするためのネイルケア用化粧料又は医薬部外品として使用され、植物オイルを配合した爪外用剤組成物であって、
エタノールを含む蒸留水にアルギニンとシスチンを添加した溶液にアスコルビン酸を加え、ついでカルシウム粉末を溶解したイオン化カルシウム飽和水を加えて混合溶液とし、さらにグリセリンを加えた後、ライムオイルを加えて調製した弱酸性の液状組成物であって、爪表皮への栄養補給、保湿を含む被覆保護、及び皮膜形成作用をを有するものであることを特徴とする爪外用剤組成物。

【公開番号】特開2008−127358(P2008−127358A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316172(P2006−316172)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(391045392)甲南化工株式会社 (6)
【Fターム(参考)】