説明

牛樟茸の子実体を培養する方法

【課題】牛樟茸の子実体を人為的に大量に培養する方法を提供する。
【解決手段】牛樟茸の子実体から子実層スライスを得るステップS1、分離された菌株を得るために子実層スライスを培養用の選択培地に移すステップS2、培養用のバガス培地に分離された菌株を移すステップS3、液体培養または固体培養によって大量の液体菌糸あるいは固体菌糸を得るために増殖させるステップS4、液体菌糸あるいは固体菌糸を木材セグメントに接種して、培養するステップS5、牛樟茸の混合単一胞子コロニーを木材セグメントに再接種して、子実体が生産されるまで培養するステップS6からなる牛樟茸の子実体培養方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛樟茸(Antrodia cinnamomea)の子実体の培養方法、特に木材セグメント(wood
segment)上で牛樟茸の子実体(fruiting body)を培養する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牛樟茸は、台湾、およびハヤタ(Hayata)が命名した台湾のクスノキ(Cinnamomum micranthum, Cinnamomum kanehirai Hayataとも呼ばれる)の中空の樹幹中の寄生虫だけに固有の菌種である。牛樟茸は、癌治療および農薬中毒の解毒に効果があると一般的に考えられているので、健康食品として広く使用されている。牛樟茸の原料は、一般に、野生の牛樟茸の子実体あるいは液体培養で培養された牛樟茸の菌糸体である。最近、トリテルペノイド(triterpenoids)、多糖および酸化防止剤を含んでいる牛樟茸の発酵製品を得るために、牛樟茸を培養する固体培養も開発されている。しかしながら、これらの製品の効果は、野生の牛樟茸の効果ほど良くない。
【0003】
牛樟茸の子実体の産業の溜めに解決する必要がある問題点がある。
最初に、野生の牛樟茸の子実体の供給は、市場の要求を満たすことができず、牛樟茸の価格はこの数年に急速に上がっている。その上、市場において利用可能な子実体は、ほとんど一年生の薄い子実体である。また、多年生の厚い子実体は非常に珍しくて高価で、例えば、子実体の中級品は、1キログラム当たり150,000台湾ドル(TWD)もする。その結果、多くの偽物が市場に出回り、本物で高級品を購入することは難しい。さらに、クスノキ(ハヤタ)ハヤタ(Cinnamomum micranthum
(Hayata)Hayata)の不法に伐採されたり、森林の副産物が何者かによって盗まれるので、いくつかの森林問題が起こっている。
【0004】
さらに、牛樟茸を接種されていないクスノキの木材セグメントは、2,000トン以上であるが、接種にかかる費用は、1トン当たり80,000 〜100,000台湾ドルであり、それは非常に高価であり、まだ十分に発達していない技術である。
一方、もしクスノキ科以外の木材セグメントに牛樟茸の子実体を培養する技術が発達すれば、木材セグメントに感染した時、野生の牛樟茸はクスノキの宿主であるので、巨大市場になる可能性がある。
【0005】
したがって、上述の問題点を解決するために、人為的に牛樟茸の子実体を大量に培養する接種技術を改良する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、牛樟茸の子実体を培養する方法を提供することである。その方法は、野生の牛樟茸から牛樟茸の汚れを分離して、木材セグメント上に牛樟茸の汚れを接種することである。さらに、混合された単一胞子コロニーを木材セグメントに再接種することによって、牛樟茸が実になる割合(fruiting rate)は増加する。
【0007】
本発明によれば、牛樟茸の子実体を培養する方法が提供される。その方法は、以下のステップから成る。
(a)牛樟茸の子実体から子実層スライスを得ること。
(b)分離株を得るために培養用の選択培地(selective culture medium)に子実層スライスを移すこと。
(c)
培養用のバガス培地に、上記分離株を移すこと。
(d)
大量の液体菌糸あるいは固体菌糸を得るために、液体培養または固体培養によって増殖すること。
(e)
液体菌糸あるいは固体菌糸を木材セグメントに接種して、培養すること。および、
(f)
牛樟茸の混合単一胞子コロニーを木材セグメントに再接種して、子実体が生産されるまで培養させること。
【0008】
具体的には、選択培地は抗生物質と樟脳油を含んでいる。また、樟脳油の濃度は0.15〜0.3%(vol/vol)である。
【0009】
具体的には、バガス培地は1〜3%(wt/vol)の麦芽エキス、5〜20%(wt/vol)のバガスおよび0.25〜0.7%(vol/vol)の樟脳油を含んでいる。
【0010】
ステップ(d)の液体培養については、ステップ(c)のバガス培地中の牛樟茸の菌株は、液体培地に移されて、培養される。ここで、液体培地は1〜3%(wt/vol)の麦芽エキスおよび0.5〜1%(wt/vol)のクエン酸を含む。その上、液体培養中に、空気を液体培養用の培養容器に送るための空気ポンプが設けられている。
【0011】
ステップ(d)の固体培養については、ステップ(c)のバガス培地中の牛樟茸の菌株は、バッグ培養用の培養バッグに接種される。
【0012】
具体的には、木材セグメントはクスノキ科(Lauraceae)、ブナ科(Fagaceae)あるいはスギ科(Taxodiaceae)から選ばれる。また、クスノキ科は、クスノキ(ハヤタ) ハヤタ(Cinnamomum micranthum(Hayata)Hayata)およびクスノキ(Cinnamomum camphora(L.) Presl)を含んでいる。
【0013】
具体的には、古く朽ちている木を取り除くために木材セグメントの表面に接種する前に、木材セグメントは前処理される。
【0014】
具体的には、単一胞子コロニーは選択培地によって分離される。
【0015】
具体的には、ステップ(f)は、さらに、次のステップから成る。
(f1)
選択培地から単一胞子コロニーの菌糸を削り取って、混合単一胞子コロニー菌糸を得るために増殖させること、および、(f2)液体菌糸あるいは固体菌糸を接種され、前記ステップ(e)で7〜30日間培養された木材セグメント上の混合単一胞子コロニーの菌糸をスプレーガンまたはブラシにより散布または塗布すること。
【0016】
本発明の上記目的および利点は、次の詳細な記述および添付図面によって当業者に容易に明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】牛樟茸の子実体を培養する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、次の実施例によってより詳細に記述される。本発明の実施例は、実例および記述のみの目的を表す。すなわち、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0019】
本発明は、牛樟茸の子実体を培養する方法である。図1のフローチャートで示されるように、牛樟茸の子実体を培養する方法は、以下のステップを含む。
(a)
牛樟茸の子実体から子実層スライスを得ること。(ステップS1)
(b)分離された菌株を得るために、上記子実層スライスを培養用の選択培地に移すこと。(ステップS2)
(c)
培養用のバガス培地に、分離株を移すこと。(ステップS3)
(d)大量の液体菌糸あるいは固体菌糸を得るために、液体培養または固体培養によって増殖させること。 (ステップS4)
(e)
液体菌糸あるいは固体菌糸を木材セグメントに接種して、培養すること。 (ステップS5)および、
(f)
牛樟茸の混合単一胞子コロニーを木材セグメントに再接種して、子実体が生産されるまで培養させること。(ステップS6)
以下、詳細に説明する。
【0020】
ステップS1:牛樟茸の子実体から子実層スライスを得ること。
最初に、クスノキ(ハヤタ)ハヤタの木で育った牛樟茸の野生株は、牛樟茸の子実を培養するための出所として使用される。子実層スライスは、牛樟茸の子実をナイフで横に薄く切断することにより、0.5〜1cm×0.1〜0.5cm(長さ×幅)のサイズを有する子実層の薄いスライスとして得られる。
【0021】
ステップS2:分離株を得るために、子実層スライスを培養用の選択培地に移すこと。
次に、牛樟茸の分離および精製は、さらに続けられる。ステップS1で得られた子実層スライスは、選択培地の中心に移されて置かれる。10〜20日間、20〜25度で培養後、オレンジレッド(orange-red)色の二核性菌糸体(dikaryotic)が、選択培地の中心の子実層のまわりに成長する。その上、選択培地の近く成長した色違いのオレンジレッド色の単一胞子コロニーがある。単一胞子コロニーは、子実から放出される担子胞子(basidiospores)から派生(derive)する。一方、選択培地上で育った白い単一胞子コロニーもいくつかある。
【0022】
具体的には、選択培地は、水に寒天と麦芽エキスを溶かして最初に準備される。寒天と麦芽エキスの濃度は、それぞれ天草1.5〜2.0%(wt/vol)、麦芽エキス1〜3%(wt/vol)である。オートクレーブ滅菌の後、上記溶液は40〜50度に冷やされて、抗生物質と樟脳油が加えられる。よく混合した後、溶液は所望のペトリ皿に注がれて、冷却および凝固され、選択培地を得る。抗生物質は、バクテリアの成長を抑制し、かつアンピシリン(ampicillin)とペニシリンG(これに限定するものではない)のようなペニシリン系抗生物質を封じ込める(include)ために使用される。樟脳油は、水カビ(water-mold)、ツチアオカビ(Trichoderma spp)およびアオカビ(Penicillium spp)のような菌類の成長を抑制するために使用されるが、牛樟茸の成長を抑制するために使用されない。
【0023】
例えば、選択培地は100〜200ppmのアンピシリン、100〜200ppmのペニシリンGおよび0.15〜0.3%(vol/vol)の樟脳油を含んでいる。しかし、これらのものに限定するものではない。
【0024】
さらに菌株を浄化するために、選択培地の中心にある子実層のまわりに成長するオレンジレッド色の二核性菌糸体は、選択培地上で、さらに、繰り返し培養することができる。このステップで浄化された二核性菌糸体は、より良い生存率を有し、急速に成長することができる。それは最初に木材セグメント上に接種されるのが適切である。
【0025】
あるいは、選択培地上の付近に成長した異なる色のオレンジレッド色の単一胞子コロニーが、遺伝的多様性を増加させるために2重の培養として採取されることもある。例えば、白いコロニー(white colonies)はオレンジレッド色の子実から取得してもよい。
【0026】
ステップS3:培養用のバガス培地に分離株を移すこと。
選択培地によってステップS2から得られた、分離された寒天培地は、培養フラスコ中の殺菌されたバガス培地に移され、分裂増殖用の菌類の菌株を得るために室温で20〜40日間培養する。
【0027】
具体的には、バガス培地は、まず水に麦芽エキスを溶かして準備される。ここに、麦芽エキスの濃度は、1〜3%(wt/vol)で、次に、バガスと樟脳油を加える。
好適には、バガス培地は1〜3%(wt/vol)の麦芽エキス、5〜20%(wt/vol)のバガスおよび0.25〜0.7%(vol/vol)の樟脳油を含む。
【0028】
このステップは、さらにツチアオカビの汚染を除去することである。ツチアオカビはバガス培地中の胞子を容易に生産し、暗いグリーンコロニーのように見えるので、ツチアオカビの汚染は裸眼によって観察することができ、ツチアオカビで汚染されたフラスコを廃棄することができる。
【0029】
ステップS4:液体培養または固体培養によって大量の液体菌糸あるいは固体菌糸を得るために増殖させること。
木材セグメントは大きな体積があるので、木材セグメントに接種する菌糸が大量に必要である。したがって、ステップS3から得られた牛樟茸の菌株は、液体培養または固体培養のいずれかによって、さらに増殖されなければならない。
【0030】
液体培養において、ステップS3から得られたバガス培地中の牛樟茸の菌株は、木材セグメントに接種するのに使用される大量の液体菌糸を得るために、殺菌された液体培地に移されて、培養される。
【0031】
具体的には、液体培地は、1〜3%(wt/vol)の麦芽エキスおよび0.5〜1%(wt/vol)のクエン酸を含む。クエン酸は、バシラス属(Bacillus spp)のようなバクテリアの成長を抑制するが、牛樟茸の成長を抑制するためには使用されない。
【0032】
液体培養は2つの段階に分けることができる。第1段階では、ステップS3から得られたバガス培地中の牛樟茸菌株は、50〜250mlの液体培地を含むフラスコに移され、静止の状態、あるいはシェーカーで7日間、室温で培養される。第2段階では、第1段階の培養液を、液体培地を含んでいて0.5〜5リットル入る血清ボトルに移す。空気ポンプによって空気が血清ボトルに送り込まれ、0.2μmのフィルターでろ過され、そして、2重のチューブ換気装置が血清ボトルのキャップ上に設けられる。牛樟茸は好気性の菌類であるので、血清ボトルに空気を送り込むと、牛樟茸の成長が促進される。空気ポンプで7〜14日間培養した後、大量の液体菌糸が生産され、木材セグメントに接種することができる。
【0033】
一方、牛樟茸の菌株は固体培養でも増殖することができる。すなわち、ステップ3から得られたバガス培地中の牛樟茸の菌株を培養用のバッグに移す方法である。
【0034】
具体的には、培養バッグの開口部分は、高密度スポンジがコンパクトに詰められていて、該開口部分の外部は輪ゴムで結ばれている。培養バッグの開口部分は、菌糸体の新陳代謝にとって不可欠な空気を与える為に、空気のフィルターと流路として役に立つ。培養バッグの容量の半分は菌糸体の成長用の培養基によって占められ、空間は、培養基および牛樟茸の菌株の混合物のために保たれる。培養バッグが殺菌され、培養バッグ中の培養基が室温に冷やされた後、スポンジは培養バッグの開口部から取り出されて、培養基の表面上に牛樟茸の菌株を接種し、そして、スポンジは培養バッグの開口部に戻され、輪ゴムで固定される。
【0035】
続いて、培養バッグ中の牛樟茸の菌株および培養基は、よく混合され、室温で培養される。牛樟茸の菌糸体が培養基の周りにからみつけられるか、培養基の表面が菌糸体によって完全に占められた時、固体菌糸を木材セグメントに接種する準備がなされる。
【0036】
ステップS5:液体菌糸あるいは固体菌糸を木材セグメントに接種して、培養すること。
ステップS4から得られた大量の液体菌糸あるいは固体菌糸は、さらに、このステップで木材セグメントに接種され、牛樟茸の菌株の接種用に使用される木材セグメントはクスノキ科、ブナ科あるいはスギ科から選ばれ、該クスノキ科は、クスノキ(ハヤタ)ハヤタおよびクスノキを含む。
【0037】
接種に使用される木材セグメントは、水に浸すことができず、前処理をする必要がある。前処理は、カンナやブラシで木材セグメントの表面を平らにし、古く朽ちている部分を取り除き、木材の中に残っているバクテリアや菌類を除去する。この処理は、殺菌装置で駆除するのが難しく、接種された牛樟茸で生育空間を競い合う。その後、木材セグメントを100℃以上で2時間殺菌する。木材セグメントを冷却した後、5〜10分間、室温で滅菌水に浸される。次に、水を木材セグメントから除去し、接種する準備が整う。
【0038】
液体菌糸を接種されると、前処理された木材セグメントは直ちにステップS4から得られた液体菌糸に浸され、液体菌糸は木材セグメントに付着する。その後、木材セグメントをプラスチック袋でカバーし、7〜30日間室温で培養する。
【0039】
液体菌糸を接種する以外に、木材セグメントは固体菌糸を接種することもできる。固体菌糸を接種する時、菌糸体でいっぱいの培養バッグ中の培養基は取り除かれ、木材セグメントの表面に直接塗り付けられる。代替方法は、1リットルの滅菌水に菌糸体を含ませた150gの培養基を加え、次に、その溶液は15gのメチルセルロースと混じり合って、クリーム混合物と混合させることである。クリーム混合物は、ブラシによって木材セグメントの表面に塗り付けられる。木材セグメントに固体菌糸を接種した後、木材セグメントをプラスチック袋でカバーし、7〜30日間室温で培養する。
【0040】
ステップS6:木材セグメントに牛樟茸の混合単一胞子コロニーを再接種すること及び、子実体が精製されるまで、培養すること。
牛樟茸の結実率を高くするために、本発明は再接種技術を利用する。それは、液体菌糸あるいは固体菌糸を接種し、7〜30日間培養した混合単一胞子コロニーを木材セグメントに再接種することである。単一胞子コロニーは、選択培地上で培養され、異なる場所(areas)で生じ(originated)るか、異なる木材セグメント上で育った牛樟茸の子実から分離された多数の単一胞子コロニーである。また、単一胞子コロニーは、ステップS2の選択培地上の近く培養された、異なる色に染まった単一胞子コロニーであってもよい。すなわち子実層から放出された胞子胞子(basidiospores)に由来してもよい。
【0041】
接種の前に、選択培地上の多数の単一胞子コロニーの菌糸体は、混合単一胞子コロニーの菌糸を得るために削り取られ、分裂増殖する。
例えば、削り取られた菌糸体は、7〜14日間、空気ポンプを備えた殺菌された液体培地の中で培養されるか、あるいはステップS4に記述されるような固体培養によって増殖される。そして、混合単一胞子コロニーの菌糸は、液体菌糸あるいは固体菌糸を接種された木材セグメント上にスプレーまたは塗り付けられ、ステップS5のようにスプレーガンまたはブラシによって7〜30日間培養される。その後、木材セグメントはプラスチック袋でカバーされ7〜14日間室温で培養される。次に、プラスチック袋を開き、子実体が生産されるまで、木材セグメントは連続的に培養される。ここでの子実体とは、顕微鏡で検査された時、担子器(basidia)と担子胞子(basidiospores)を既に有している体を意味する。
【0042】
結論として、本発明は、牛樟茸の子実体を培養する方法を提供することである。最初に、牛樟茸の野生株の子実体から得られた子実層スライスは、選択培地で培養される。選択培地に含まれている樟脳油は、水カビ、ツチアオカビおよびアオカビのような菌類の成長を抑制するが、牛樟茸の成長を抑制することはない。その後、ツチアオカビがバガス培地中に胞子を容易に生産し、肉眼で見えるダークグリーンのコロニーとして現れるので、ツチアオカビに汚染されないようにバガス培地で牛樟茸の菌株を培養する。液体培養または固体培養による増殖の後、菌糸は木材セグメント上に接種される。このステップで、接種された液体菌糸または固体菌糸は二核性菌糸体であり、それらは生存率が良く、成長が早いので、菌糸体は木材セグメント上でよく成長し、他のバクテリアあるいは菌類の成長を抑制するために木材セグメントの表面上でクローン化する。さらに、牛樟茸の有性株は四極性の異性株であるので、本発明は、交配率を増加させるため再接種技術を利用する。特に、液体菌糸あるいは固体菌糸を接種し、7〜30日間培養された木材セグメントは、さらに混合単一胞子コロニーを接種される。そして、この技術は、一核性菌糸体間を同系交配または、交配率を増加させる。一核性菌糸体は、子実体を結実させるために、二核性菌糸体の形成を促進させる。さらに、一核性菌糸体と二核性菌糸体の間には、一核性菌糸体は二核性菌糸体により二核化され、結実率を増加させるという密接な関係がある。したがって、本発明の技術によって、牛樟茸の子実体は、木材セグメント上で人為的に培養できる。それは巨大市場の可能性がある。
【0043】
本発明は、現在最も現実的で具体的な実施例と考えられる用語で記載されているが、本発明は、この実施例の記載に限定されない。それどころか、本発明は、修正や同様の構成をすべて包囲するように広く解釈すべき特許請求の範囲に含まれる色々な変更や同様の配置などをカバーするものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の各ステップ(a)〜(f)から成る牛樟茸の子実体を培養する方法。
(a)牛樟茸の子実体から子実層スライスを得ること。
(b)該子実層スライスを培養用の選択培地に移して、分離株を得ること。
(c)
該分離株を培養用のバガス培地に移すこと。
(d)大量の液体菌糸あるいは固体菌糸を得るために、液体培養または固体培養によって増殖すること。
(e)液体菌糸あるいは固体菌糸を木材セグメントに接種して、培養すること。および、
(f)牛樟茸の混合単一胞子コロニーを木材セグメントに再接種して、子実体が生産されるまで培養すること。
【請求項2】
前記選択培地が抗生物質と樟脳油を含んでいる、請求項1に記載の牛樟茸の子実体を培養する方法。
【請求項3】
前記樟脳油の濃度が0.15-0.3%(vol/vol)である、請求項2に記載の牛樟茸の子実体を培養する方法。
【請求項4】
前記バガス培地が1-3%(wt/vol)の麦芽エキス、5-20%(wt/vol)のバガスおよび0.25-0.7%(vol/vol)の樟脳油を含んでいる、請求項1に記載の牛樟茸の子実体を培養する方法。
【請求項5】
前記ステップ(d)の液体培養については、前記ステップ(c)のバガス培地中の牛樟茸の菌株が、液体培地に移されて培養される、請求項1に記載の牛樟茸の子実体を培養する方法。
【請求項6】
前記液体培地が、1-3%(wt/vol)の麦芽エキスおよび0.5-1%(wt/vol)のクエン酸を含む、請求項5に記載の牛樟茸の子実体を培養する方法。
【請求項7】
前記ステップ(d)の液体培養中に、空気を液体培養用の培養容器に送るために空気ポンプが設けられる、請求項1に記載の牛樟茸の子実体を培養する方法。
【請求項8】
前記ステップ(d)の固体培養については、前記ステップ(c)のバガス培地中の牛樟茸の菌株が、バッグ培養用の培養バッグに接種される、請求項1に記載の牛樟茸の子実体を培養する方法。
【請求項9】
前記木材セグメントが、クスノキ科、ブナ科あるいはヒノキ科から選ばれ。および、クスノキ科がクスノキおよびクスノキ(ハヤタ)ハヤタを含んでいる、請求項1に記載の牛樟茸の子実体を培養する方法。
【請求項10】
前記接種する前に、前記木材セグメントが前処理されて、その表面が滑らかにされ、古くて朽ちた木が取り除かれる、請求項1に記載の牛樟茸の子実体を培養する方法。
【請求項11】
前記単一胞子コロニーが、前記選択培地によって分離される、請求項1に記載の牛樟茸の子実体を培養する方法。
【請求項12】
前記ステップ(f)が、さらに、
(f1)
前記選択培地から単一胞子コロニーの菌糸を削り取って、混合単一胞子コロニー菌糸を得るために増殖させること、および、
(f2)液体菌糸あるいは固体菌糸を接種され、前記ステップ(e)で7〜30日間培養された木材セグメント上の混合単一胞子コロニーの菌糸をスプレーガンまたはブラシにより散布または塗布すること、から成る請求項11に記載の牛樟茸の子実体を培養する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−115145(P2011−115145A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−54560(P2010−54560)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(510068080)
【Fターム(参考)】