説明

物体を狭持する人工ハンドの指構造及び物体の人工ハンド狭持方法

【課題】様々な形状の物体、特に床面等に密着した紙等の薄い物ならびにクリップ等の小さく且つ端面が曲面である物を安定性良く把持することが可能で、簡単な構成要素の人工ハンドの指構造と人工ハンド狭持方法を提供すること。
【解決手段】二本の指の少なくとも一方の指を動かして平面に載置された物体を狭持する人工ハンドの指構造であって、前記一方の指1は、前記物体に当接される先端部に前記物体を掬い上げる凹曲面部12を持ち、他方の指2は、前記物体に当接される先端部に前記物体を押圧する凸曲面部22を持つ、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を狭持する人工ハンドの指構造及び物体の狭持方法に関する。詳しくは、二本の人工指で平面上に載置された物体を狭持・把持するロボットハンド、マニピュレータ及びマジックハンド等の人工ハンドの指構造と狭持方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の把持・狭持作業を行うロボットは、産業用ロボットとして各種工場の生産ライン等で使用されており、扱う対象物体に合わせて、物体に適したハンドを取り付けて使用する(例えば、特許文献1参照。)。もし対象物体が多種であれば、対象物に合わせてオートツールチェンジャによりハンドを取り替えて使用するのが通常である。
【0003】
あるいは一つのハンドで、大小多種の対象物を把持することを目的として、3本の指を利用し、その組み合わせにより多種の対象物を把持するハンド(例えば、特許文献2参照。)や、ロボットハンドにおける指機構の先端に位置する指部材に、人間に似せた爪を設けて、爪と指の部分を使い分けて大小の対象物を把持するハンドが考案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平5−253880号公報
【特許文献2】特開2004−90134号公報
【特許文献3】特開2005−335025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人と共存する空間において物体の把持等を行うロボットを利用する場合、掴む物体は大小多種であるばかりでなく、置かれている状態も様々である。そのため、対象物に合わせてオートツールチェンジャによりハンドを取り替えて使用することはコスト面で困難であり、出来るだけ少ないハンドあるいは指によって種々の対象物を把持・狭持できることが好ましい。
【0005】
特に従来のロボットハンドでは、床面等の平面に載置された紙等の薄い物を、傷や折り目を付けることなく把持することや、クリップ等の小さく且つ端面が曲面である物を狭持することが困難である。
【0006】
また、上記従来のロボットハンドは、例えば、車椅子に乗った障害者が使用するマジックハンドとしては、複雑、高価である。
【0007】
本発明は、上記従来のロボットハンドの問題に鑑みてなされたものであり、人と共存する空間で、様々な形状の物体、特に床面等に密着した紙等の薄い物ならびにクリップ等の小さく且つ端面が曲面である物を安定性良く把持することが可能で、且つ簡単な構成要素の人工ハンドの指構造と人工ハンド狭持方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明の物体を狭持する人工ハンドの指構造は、二本の指の少なくとも一方の指を動かして平面に載置された物体を狭持する人工ハンドの指構造であって、前記一方の指は、前記物体に当接される先端部に前記物体を掬い上げる凹曲面部を持ち、他方の指は、前記物体に当接される先端部に前記物体を押圧する凸曲面部を持つ、ことを特徴としている。
【0009】
また、上記指構造において、前記一方の指の前記凹曲面部は弾性材で形成され、前記平面に当接されて弾性変形することで凹曲面になるものとするとよい。
【0010】
また、前記凹曲面部の先端がナイフエッジ状であることが好ましい。
【0011】
また、前記凸曲面部と前記凹曲面部との曲率半径が略同一であることが好ましい。
【0012】
また、前記凸曲面部は、摩擦材で形成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記凸曲面部は、弾性材で形成されていることが好ましい。
【0014】
また、前記一方の指は後端部にアクチュエータの回転軸が挿嵌される穴を持ち、前記他方の指は後端部に前記アクチュエータの回転軸に平行な別の回転軸が挿嵌される穴を持ち、前記一方の指と前記他方の指とを同一面内で動かすことができるものとするとよい。
【0015】
上記の課題を解決するためになされた本発明の物体を狭持する人工ハンドの狭持方法は、二本の指の少なくとも一方の指を動かして平面に載置された物体を狭持する人工ハンド狭持方法であって、先端部に凹曲面部を持つ一方の指の該凹曲面部を前記物体の端部に前記平面上で対峙させ、先端部に凸曲面部を持つ他方の指の該凸曲面部で前記物体の端部を押圧する対峙押圧ステップと、前記一方の指と前記他方の指との間隔が狭まるように前記一方の指及び又は他方の指を前記平面に平行に動かして、前記一方の指の前記凸曲面部で押圧された前記物体の前記端部を前記他方の指の前記凹曲面部で掬い上げる掬い上げステップと、を有することを特徴としている。
【0016】
また、上記の狭持方法において、前記他方の指の前記凹曲面部は弾性材で形成され、前記平面に当接されて弾性変形することで凹曲面になり、曲率半径検出手段で前記凹曲面部の曲率半径を検出する曲率半径検出ステップを有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る人工ハンドの指構造の一方の指は、物体に当接される先端部に前記物体を掬い上げる凹曲面部を持ち、他方の指は、前記物体に当接される先端部に前記物体を押圧する凸曲面部を持つので、凸曲面部で押さえられた平面上の物体の下側に凹曲面部を容易に潜り込ませることができる。その結果、平面上の紙等の薄いシート物を傷や折り目を付けることなく狭持・把持することができる。また、平面上のクリップ等の小さく且つ端面が曲面の小物を狭持・把持することができる。
【0018】
凹曲面部が平面に当接されて弾性変形することで凹曲面に形成されるものとすることで、人に接触した際の安全性が高くなる。また、凹曲面部が紙などを掬い上げるのに適した曲率半径となるように、凹曲面部による反力を駆動モータの電流等で検出し平面方向に対し高さを制御することができる。
【0019】
凹曲面部の先端がナイフエッジ状であるようにすることで、凸曲面部で押さえられた平面上の物体の下側に凹曲面部を一層容易に潜り込ませることができる。
【0020】
凸曲面部と凹曲面部との曲率半径が略同一であるようにすることで、凸曲面部と凹曲面部とで物体を均一に狭持することができる。その結果、紙などの薄いシート物を傷つけたり折り目を付けたりすることがなくなる。
【0021】
凸曲面部が摩擦材で形成されていると、凸曲面部で平面上の物体を確実に押さえつけて平面上を凹曲面部の方に滑らせることができる。その結果、凹曲面部で物体を確実に掬い上げることができる。
【0022】
凸曲面部が弾性材で形成されていると、凹曲面部と凸曲面部で物体を狭持する際、凸曲面部が凹曲面部に沿うように変形するので、薄いシート物を接触面積が大きい状態で狭持することができる。
【0023】
一方の指が後端部にアクチュエータの回転軸が挿嵌支される穴を持ち、他方の指が後端部に前記アクチュエータの回転軸に平行な別の回転軸が挿嵌される穴を持ち、前記一方の指と前記他方の指とを同一面内で動かすことができるので、自由度1の所謂グリッパ型指構造とすることができる。その結果、アクチュエータをモータと歯車だけで構成することができる。
【0024】
本発明に係る人工ハンドの狭持方法は、先端部に凹曲面部を持つ一方の指の該凹曲面部を前記物体の端部に前記平面上で対峙させ、先端部に凸曲面部を持つ他方の指の該凸曲面部で前記物体の端部を押圧する対峙押圧ステップと、前記一方の指と前記他方の指との間隔が狭まるように前記一方の指及び又は他方の指を前記平面に平行に動かして、前記他方の指の前記凸曲面部で押圧された前記物体の前記端部を前記一方の指の前記凹曲面部で掬い上げる掬い上げステップと、を有するので、平面上の紙等の薄いシート物を傷や折り目を付けることなく狭持・把持することができる。また、平面上のクリップ等の小さく且つ端面が曲面の小物を狭持・把持することができる。
【0025】
一方の指の前記凹曲面部は弾性材で形成され、前記平面に当接されて弾性変形することで凹曲面になり、曲率半径検出手段で前記凹曲面部の曲率半径を検出する曲率半径検出ステップを有するものとすることで、人に接触した際の安全性が高くなる。また、凹曲面部が紙などを掬い上げるのに適した曲率半径となるように、凹曲面部による反力を駆動モータの電流等で検出し平面方向に対し高さを制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る人工ハンドの指構造の実施形態について図面を参照して詳しく説明する。
(実施形態1)
図1は、本実施形態の指構造で平面上に載置された薄いシートを狭持・把持する状況を示す斜視図であり、図2は、図1の上面視図、図3は図1の側面視図である。
【0027】
本実施形態の指構造は、図1〜図3に示すように、指1と指2とを備えている。一方の指1は、物体(平面P上に載置されたシート状物体)Sを把持すべく例えばロボットハンド(図示せず)の一つの指の先端部に具備されている。同様に、他方の指2は、指1を具備するロボットハンドの指と異なる指の先端部に具備されている。
【0028】
指1を矢印A方向に、指2を矢印B方向にアクチュエータ(図示せず)で動かすことで指1と指2との間隔を狭めて物体を狭持するようになっている。
【0029】
指1は、指本体11と、その先端部に連結される凹曲面部12と、を備えている。指本体11の材質は特に問わないが、凹曲面部12は、金属或いは樹脂等で形成されることが好ましい。金属や樹脂の摩擦係数の場合、紙やクリップ等が滑って掬い上げられるからである。また、凹曲面部12は、剛体で形成されることが好ましい。紙やクリップ等と平面との間に潜り込む際、変形しないので皺や折り目などを作ることがない。凹曲面部12の凹曲面12aの曲率半径は、50〜200mmの範囲にあることが望ましい。これは、様々な曲率半径の凹曲面部12を作ってテストして、50〜200mmの範囲にあると、シート状物体やクリップ等を確実に把持できたことに基づいている。また、凹曲面部12の先端が床等の平面Pに斜めに接した場合でも先端と平面Pとが接するように、先端が曲線12bになっている。さらに、凹曲面部12の先端は、物体Sの下に潜り込んで掬い上げることができるように、先に行く程薄くなる所謂ナイフエッジ状をしている。
【0030】
指2は、指本体21と、その先端部に連結される凸曲面部22と、を備えている。指本体21の材質は特に問わないが、凸曲面部22は、ゴムやスポンジ等で形成されることが好ましい。ゴムやスポンジ等の摩擦係数の場合、紙やクリップ等を押さえつけて摩擦力で移動させることができるからである。また、凸曲面部22は、弾性体で形成されることが好ましい。凸曲面部22と凹曲面部12とで物体を狭持した際、凸曲面部22が凹曲面部12の凹曲面12aに沿うように変形するので物体を接触面積が大きい状態で狭持することができる。凸曲面部22の凸曲面22aの曲率半径は、凹曲面12aの曲率半径とほぼ同じである。
【0031】
次に、上記ロボットハンドの指構造を用いて平面P上のシート状物体Sを狭持する方法について説明する。
<対峙押圧ステップ>指1を凹曲面部12の先端12bがシート状物体Sを指す向きで平面Pに接触させて指1を物体Sの端部に対峙させ、指2をシート状物体Sの端部の上に凸曲面部22の凸曲面22aが指1を指す向きで、接触させて物体Sの端部を押圧する(図1(a)〜図3(a)参照。)。
<掬い上げステップ>指2を、指2で物体Sを平面Pに押圧しながら指1方向(矢印B方向)に移動させると、物体Sは摩擦力により指2と共に移動するため、指1の凹曲面12aに沿って掬い上げられる(図1(b)〜図3(b)参照。)。なお、このステップでは、指1は止まっていても良いし、指2の方向(矢印A方向)に平面Pと平行に移動しても良い。
<狭持ステップ>指2を、指2で物体Sを平面Pに押圧しながら更に指1方向に移動させ、指1と指2との間に物体Sを挟み込む(図1(c)〜図3(c)参照。)。このとき、指2の凸曲面部22が弾性体で形成されていると、指1の凹曲面12aに沿うように変形するので、シート状物体Sを接触面積が大きい状態で狭持することができる。なお、このステップでも、指1は止まっていても良いし、指2の方向に平面Pと平行に移動しても良い。
【0032】
本発明の狭持方法によれば、紙等の薄い物体Sに傷や折り目などを付けることなく指1と指2で狭持することが可能である。また各ステップを通じて、指1と指2の指先相対移動が、局所的に見れば同一平面上で向かい合う向きであるため、簡単な軸構成でハンドを形成することが可能である(後述の実施例参照。)。
【0033】
次に、本実施形態の指構造を用いて平面P上の小さくて端面が曲面のクリップ等小物(以下、クリップRと呼ぶ。)を狭持する方法について図4〜図6を参照して説明する。
【0034】
図4は、本実施形態の指構造で平面上に載置されたクリップを狭持・把持する過程を説明する斜視図であり、図5は、図4の上面視図、図6は図4の側面視図である。
<対峙押圧ステップ>指1を、凹曲面部12の先端12bがクリップRを指す向きで平面Pに接触させて、クリップRの端部に対峙させ、指2を、クリップRの指1から遠い方の端部の上に凸曲面部22の凸曲面22aが指1を指す向きで、接触させてクリップRの端部を押圧する(図4(a)〜図6(a)参照。)。
<掬い上げステップ>指2を、指2でクリップRを平面Pに押圧しながら指1方向(矢印B方向)に移動させると、クリップRは摩擦力により指2と共に移動するため、指1の凹曲面12aに沿って掬い上げられる(図4(b)〜図6(b)参照。)。なお、このステップでは、指1は止まっていても良いし、指2の方向(矢印A方向)に平面Pと平行に移動しても良い。
<狭持ステップ>指2を、指2でクリップRを平面Pに押圧しながら更に指1方向に移動させ、指1と指2との間にクリップRを挟み込む(図4(c)〜図6(c)参照。)。このとき、指2の凸曲面部22が弾性体で形成されていると、指1の凹曲面12aに沿うように変形するので、クリップRを接触面積が大きい状態で狭持することができる。なお、このステップでも、指1は止まっていても良いし、指2の方向に平面Pと平行に移動しても良い。
【0035】
本発明の狭持方法によれば、クリップや硬貨等の小さく且つ端面が曲面である物でも、接触面積が大きい向きに変えて狭持できるため、安定して狭持することが可能である。また各ステップを通じて、指1と指2の指先相対移動が、局所的に見れば同一平面上で向かい合う向きであるため、簡単な軸構成でハンドを形成することが可能である(後述の実施例参照。)。
(実施形態2)
本実施形態の指構造は、実施形態1の指1を図7及び図8に示す指1´に変更した以外は、実施形態1の指構造と同じである。図7(a)は、指1´の斜視図であり、図7(b)は、指1´の上面視図である。図8(a)は、図7(b)におけるC矢視図(正面視図)であり、図8(b)は、図7(b)におけるD矢視図(側面視図)である。
【0036】
指1´は、物体の狭持を可能とすべくロボットハンド(図示せず)の1つの指の先端部に、実施形態1の指1の代わりとして具備されており、同じく実施形態1の指2と対となって動作し物体の狭持・把持を可能とする。床面等の平面に置かれた紙等の薄い物を狭持する方法ならびにクリップ等の小さくなおかつ端面が曲面である物の狭持方法については、実施形態1の指1と指2を対にして狭持する方法と同じであるので説明は省略する。指1´は、形状、材料ならびに床面等の平面に接触させる制御方法が異なるので以下に記述する。
【0037】
指1´は、指本体11´と凹曲面部12´を有している。指本体11´の材料は特に問わないが、凹曲面部12´は、床面等の平面に鉛直方向から接触した時に曲面12´aが50〜200mm程度の曲率半径に変形するような弾性係数を持つゴム等の弾性体で形成されている。なお、一般にゴム等の弾性体は、硬さが柔軟になると摩擦係数が増大するため、表面処理や固体潤滑剤を配合するなどして低摩擦化した材料で凹曲面部12´が形成されている。
【0038】
また、凹曲面部12´の先端が床等に斜めに接した場合でも凹曲面部12´の先端と床等が接する部分を設けるために、先端は曲線12´bとなっている。さらに、凹曲面部12´の曲面12´aとそれに背向する面12´cとのなす角θは、鋭角である。
【0039】
図9に、指1´が床面等の平面Pに接触する様子を示す。凹曲面部12´が弾性体で形成され、曲面12´aとそれに背向する面12´cとのなす角θが鋭角であるので、指1´を鉛直方向から平面Pに接触させると、平面Pからの反力で曲面12´aが凹曲面になる。
【0040】
凹曲面部12´を弾性体とすることにより、人に接触した場合の安全性が高くなるばかりでなく、指先を接触させるための制御が容易になる。
【0041】
図10は、指1´を平面Pに接触させるための制御フローチャートである。あらかじめ、凹曲面部12´の曲面12´aが50〜200mm程度の曲率半径に変形するために必要な指駆動モータの電流値を測定し、コントローラに設定しておく。実際の制御では、指先を床面上方に移動し(S101)、次に床面に対し垂直に指を下降し(S102)、次に指駆動モータの電流値を測定し(S103)、電流値が設定値を超えるか判定し(S104)、設定値を超えるまで下降する。S102からS104までの制御ループは、過剰な衝突を避けるため、遅くとも数十m秒以内の制御周期で繰り返すことが望ましい。
【0042】
以上の制御により、指1´は、凹曲面部12´の曲面12´aが紙等を掬い上げることに適した曲率となるように位置制御される。なお、この制御ではモータの電流値により制御ループを形成しているが、歪ゲージを曲面12´aに貼るなどして曲率半径を直接測定して制御ループを形成してもよい。また、この制御ではアクチュエータとして電動モータを想定しているが、空圧や油圧のアクチュエータで駆動する場合は、圧力値により制御ループを形成してもよい。
(実施例1)
以下、本発明の実施例1について図面を参照して説明する。図11は、本発明に係るロボットハンドの指構造を適用したロボットハンドの斜視図で、床面P上に置かれた紙等の薄い物体Sを狭持する様子を示している。図12は、先端部に物体Sを掬い上げる凹曲面部32を持つ指3の上面図であり、図13(a)は、図12におけるE矢視図、図13(b)は、図12におけるF矢視図(側面図)である。また、図14は、先端部に物体Sを押圧する凸曲面部42を持つ指4の上面図であり、図15(a)は、図14のE矢視図、図15(b)は、図14におけるF矢視図(側面図)である。
【0043】
図11に示すように、本実施例のロボットハンドは、グリッパ型で、水平多関節ロボット(図示せず)の先端に水平に具備されており、2本の指3、4で物体を挟み込んで把持する。指3は、穴33に連結した回転軸(図示せず)を中心に回転し、指4は穴43に連結した回転軸(図示せず)を中心に回転し、各回転軸に取り付けた歯車(図示せず)を介して、各指は、指の間の鉛直面に対し対称に開閉動作を行う。1つのアクチュエータで開閉動作が可能である(自由度が1)。
【0044】
指3は、初め、くの字型に曲がり、先端が真っ直ぐになっており、その先端部分の下部に凹曲面部32を有している。凹曲面部32は紙等を掬い上げやすいように、曲率半径が70mm程の凹曲面32aを有しており、先端は曲線32bとなっている。また、窪んでいるボタン等を押せるように指3の長手方向先端は曲線31aとなっている。なお、指3は凹曲面部32を含めて、全て同じ樹脂材料で形成されている。
【0045】
指4は、初め、くの字型に曲がり、先端が真っ直ぐになっており、その先端部分の下部に凸曲面部42を有している。凸曲面部42は、指3の凹曲面32aに沿うように凸曲面42aを有している。また、窪んでいるボタン等を押せるように指4の長手方向先端は曲線41aとなっている。なお、指4は凸曲面部42を除いて、指3と同じ樹脂材料で形成されており、凸曲面部42は十分な摩擦力を得るために、ゴムで形成されている。
【0046】
上記の2本の指で構成されたロボットハンドを使用し、例えばコップ等のやや大きい円柱状の物を把持する際は、ハンド中央の“く”の字に曲がった部分で挟み込んで把持することができる。また、例えばペン立てに入っている鉛筆等の小さい棒状の物は、指3の先端の平らな部分31と指4の先端の平らな部分41で挟み込んで把持することができる。また、本発明による凹曲面部32と凸曲面部42を利用すれば図11に示すように平面P上の紙Sやクリップ等を把持することが可能である。
(実施例2)
本実施例は、手動で操作し落ちた物を拾う等の作業支援を行う福祉用具のマジックハンドへの適用例である。図16は、本実施例のマジックハンドの斜視図である。図17は、図16の指5及び指6の正面図と側面図である。
【0047】
マジックハンドは、指5と指6とを回転軸7で連結し、更に70cm程度の中空シャフトと操作部分を組み合わせて構成される(図示せず)。
【0048】
指5は、初め、くの字型に曲がり、先端部に凹曲面部52を有している。凹曲面部52は紙等を掬い上げやすいように、曲率半径が約50mmの凹曲面52aを有しており、先端は直線52bとなっている。ハンドを斜め上方から床面Pに接触させた時、直線52bが床面Pに線で接触するように、直線52bと指5の長手方向とのなす角が鋭角αとなっている。
【0049】
指6は、初め、くの字型に曲がり、先端部に凸曲面部62を有している。凸曲面部62は、指5の凹曲面52aに沿うように凸曲面62aを有しており、先端は直線62bとなっている。また、ハンドを斜め上方から床面Pに接触させた時、直線62bが床面Pに線で接触するように、直線62bと指6の長手方向とのなす角が鋭角αとなっている。
【0050】
本実施例のマジックハンドでは、上記のように凹曲面部52と凸曲面部62とを指先方向に(指の長手方向)対して斜めに連設している。これは、マジックハンドは、車椅子上から床の上に落ちてしまった物を取ることに利用されることが多いため、斜め方向から取りやすいように配慮したことによる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、人と共存する空間において物体の把持を行うロボットの、ロボットハンドに利用可能である。また、搬送作業等を行う産業用ロボットのロボットハンドに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施形態1の指構造で平面上に載置された薄いシートを狭持・把持する過程を示す斜視図である。
【図2】図1の上面視図である。
【図3】図1の側面視図である。
【図4】実施形態1の指構造で平面上に載置されたクリップを狭持・把持する過程を示す斜視図である。
【図5】図4の上面視図である。
【図6】図4の側面視図である。
【図7】(a)(b)は、実施形態2の指1´の斜視図、上面視図である。
【図8】(a)(b)は、図7(b)におけるC矢視図(正面視図)、D矢視図(側面視図)である。
【図9】実施形態2の指1´が平面Pに接触する様子を示す図である。
【図10】実施形態2の指1´を平面Pに接触させるための制御フローチャートである
【図11】実施例1の指構造を適用したロボットハンドの斜視図である。
【図12】実施例1の指3の上面図である。
【図13】(a)(b)は、図12におけるE矢視図、F矢視図である。
【図14】実施例1の指4の上面図である。
【図15】(a)(b)は、図14におけるE矢視図、F矢視図である。
【図16】実施例2の指構造を適用したマジックハンドの斜視図である。
【図17】(a)(b)は、図16の指6、指5の正面図、側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1、1´、3、5・・・・・・・・一方の指
12、12´、32、52・・・凹曲面部
33・・・・・・・・・・・・・穴
2、4、6・・・・・・・・・・・他方の指
22、42、62・・・・・・・凸曲面部
43・・・・・・・・・・・・・穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の指の少なくとも一方の指を動かして平面に載置された物体を狭持する人工ハンドの指構造であって、
前記一方の指は、前記物体に当接される先端部に前記物体を掬い上げる凹曲面部を持ち、
他方の指は、前記物体に当接される先端部に前記物体を押圧する凸曲面部を持つ、ことを特徴とする物体を狭持する人工ハンドの指構造。
【請求項2】
前記一方の指の前記凹曲面部は弾性材で形成され、前記平面に当接されて弾性変形することで凹曲面になる請求項1に記載の物体を狭持する人工ハンドの指構造。
【請求項3】
前記凹曲面部の先端がナイフエッジ状である請求項1または2に記載の物体を狭持する人工ハンドの指構造。
【請求項4】
前記凸曲面部と前記凹曲面部との曲率半径が略等しい請求項1から3のいずれか1項に記載の物体を狭持する人工ハンドの指構造。
【請求項5】
前記凸曲面部は、摩擦材で形成されている請求項1から4のいずれか1項に記載の物体を狭持する人工ハンドの指構造。
【請求項6】
前記凸曲面部は、弾性材で形成されている請求項1から5のいずれか1項に記載の物体を狭持する人工ハンドの指構造。
【請求項7】
前記一方の指は後端部にアクチュエータの回転軸が挿嵌される穴を持ち、前記他方の指は後端部に前記アクチュエータの回転軸に平行な別の回転軸が挿嵌される穴を持ち、前記一方の指と前記他方の指とを同一面内で動かすことができる請求項1から6のいずれか1項に記載の物体を狭持する人工ハンドの指構造。
【請求項8】
二本の指の少なくとも一方の指を動かして平面に載置された物体を狭持する人工ハンド狭持方法であって、
先端部に凹曲面部を持つ一方の指の該凹曲面部を前記物体の端部に前記平面上で対峙させ、先端部に凸曲面部を持つ他方の指の該凸曲面部で前記物体の端部を押圧する対峙押圧ステップと、
前記一方の指と前記他方の指との間隔が狭まるように前記一方の指及び又は他方の指を前記平面に平行に動かして、前記他方の指の前記凸曲面部で押圧された前記物体の前記端部を前記一方の指の前記凹曲面部で掬い上げる掬い上げステップと、
を有することを特徴とする物体の人工ハンド狭持方法。
【請求項9】
前記一方の指の前記凹面部は弾性材で形成され、前記平面に当接されて弾性変形することで凹面になり、
曲率半径検出手段で前記凹曲面部の曲率半径を検出する曲率半径検出ステップを有する請求項8に記載の物体の人工ハンド狭持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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