説明

物体検知システム

【課題】物体が放射する赤外線を検知することによって検知エリア内の物体の存在を検知する物体検知システムにおいて、検知エリア内の物体の存否だけでなく、物体の移動方向も判断することができるようにする。
【解決手段】物体検知システム1は、物体が放射する赤外線を検知すると検出信号s1を出力する検出部6Aと、検出信号s2を出力する検出部6Bと、検出信号s1及び検出信号s2の波形特性に基づいて物体の移動方向を判断する方向判断部54とを備える。方向判断部54は、検出信号s1及び検出信号s2が振幅する方向によって定められる正負信号と、検出信号s1と検出信号s2の振幅のタイミングによって定められる位相信号との組み合わせによって、物体の移動方向を判断する。これにより、物体検知システム1は、検知エリア内の物体の存否だけでなく、物体の移動方向を判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱線を検知する検出素子を用いて検知エリア内の物体の存否を検出する物体検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の物体検知システムは、PIR(Passive Infrared Ray)センサ、超音波センサ、又はミリ波センサなどを備える。例えば、PIRセンサを備えた物体検知システムは、PIRセンサが検知エリア内の温度の変化を検知することによって、物体の存否を検出する。しかし、PIRセンサを備えた物体検知システムでは、検知エリア内の状況によって物体を性格に検出できないことがあった。また、PIRセンサは、電気的な発熱によって発生するノイズによって正確に物体を検出できないことがあった。さらに、PIRセンサを備えた物体検知システムは、検知エリア内の物体が人体であるか小動物であるかを区別して検出することができなかった。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に示されるように、物体検知システムは、極性を有しない複数の赤外線素子が互いに横方向にずらされ、かつ縦方向に平行に配置されることによって、物体の移動方向及び移動速度を検出する構成が知られている。また、特許文献2に示されるように、物体検知システムが、焦電フィルムに集熱用兼電極用の受光面電極が形成されている赤外線検知エレメントを複数備える構成が知られている。また、特許文献3に示されるように、PIRセンサが、焦電効果を有する材料基板と、この材料基板が接着固定される支持部との接着面積が小さくなるように形成された構成が知られている。さらに、特許文献4に示されるように、物体検知システムが、3つの検知エリアにおいて物体が存在するか否かを検出する構成が知られている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される技術においては、複数の赤外線素子は、極性を有しないため、互いに横方向にずらされ、かつ縦方向に平行に配置されるため、物体検知システムの小型化を図ることができなかった。また、特許文献2に示される技術においては、物体検知システムは、検知エリア内の状況に影響されることなく、正確に物体の存否を検出することはできるが、物体の移動方向を判断することはできなかった。また、特許文献3に示される技術においては、PIRセンサの感度を向上させるものであって、検知した物体の移動方向を判断するものではない。さらに、特許文献4に示される技術においては、物体検知システムが、3つの検知エリアにおける物体の存否に基づいて、検知エリア内の物体が人体であるか小動物であるかを区別することができるが、これらの物体の移動方向を判断することはできなかった。
【特許文献1】特開平9−318442号公報
【特許文献2】特開平6−323913号公報
【特許文献3】特許第3829459号公報
【特許文献4】特開平6−11575号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、物体検知システムが、検知エリア内の物体を検知するだけでなく、物体の移動方向を判断することができ、さらに小型化を図ることができる物体検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、極性の異なる複数の検出素子を有する熱線センサと、この検出素子が出力する検出信号によって物体の存在を判断する判断部と、を備えた物体検知システムにおいて、複数の検出素子は、所定方向に並んで設けられており、判断部は、物体が移動する場合の検出素子からの検出信号の相異に基づいて物体の移動方向を判断するようにしたものである。
【0007】
請求項2の発明は、極性の異なる複数の検出素子を有する熱線センサと、この検出素子が出力する検出信号によって物体の存在を判断する判断部と、を備えた物体検知システムにおいて、熱線センサは、極性の異なる2つの検出素子を複数組備え、各組の検出素子は、物体を検知する検出エリアが異なるように所定方向に並んで設けられており、物体を検知すると複数の検出信号を出力し、判断部は、複数の検出素子が検出信号を出力したタイミングと検出信号の相異に基づいて物体の移動方向を判断するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、物体検知システムは、判断部が、極性の異なる2つの検出素子が検出した検出信号が、例えば、正の値であるか負の値であるかを判断することによって、物体の移動方向を判断することができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、物体検知システムは、検知領域が異なる2つの検出素子を2組有する熱線センサを備え、判断部が、熱線センサから入力された検出信号のタイミングと検出信号が、例えば、正の値であるか負の値であるかを判断することによって、物体の移動方向を判断することができ、さらに小型化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施形態に係る物体検知システムについて、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る物体検知システムの概略構成を示す。物体検知システム1は、人体や小動物などの物体が放射する赤外線を受光すること応じて検出信号s1を出力する熱線センサ2と、熱線センサ2に接続され検出信号s1を増幅する増幅回路3と、増幅回路3に接続され、増幅された検出信号s1が予め定められた閾値より大きいか否かに基づいて物体の移動方向の判断に用いられる方向信号を出力する出力部4と、出力部4に接続され方向信号に基づいて物体の移動方向を判断する判断部5とを備える。熱線センサ2は、赤外線を受光すると検出信号s1を出力する検出部6を備える。検出部6は、極性の異なる2つの検出素子を備え、物体が放射する赤外線を検出すると検出信号s1を出力するいわゆる2素子1出力構成となっている。ここで、熱線センサ2は、例えば、建造物や塀などの壁面に取り付けられ、人体や小動物などを検出する。また、小動物とは、例えば、鳥である。
【0011】
図2(a)(b)は、本実施形態に係る物体の移動方向と検出信号s1との関係を示す。図2(a)は、物体の検出部6に対する移動方向を示し、図2(b)は、物体の移動方向に応じた検出信号s1の波形を示す。図2(a)において、検出部6は、正の極性を有する検出素子61と負の極性を有する検出素子62を備え、検出素子61と検出素子62は、水平方向に左右に配置される。ここで、人体や小動物などの物体が、検出素子61から検出素子62へ向かう右方向R、また検出素子62から検出素子61へ向かう左方向Lへ移動するものとする。
【0012】
図2(b)において、縦軸は、検出信号s1及び検出信号s2の電圧を示し、横軸は時間を示す。物体が右方向Rへ移動すると、検出素子61が物体の放射する赤外線を検出する。検出素子61が赤外線を検出すると、検出部6は、検出信号s1として、赤外線を検出していない水平な定常値から正の方向に振幅した波形71を出力部4に出力する。一方、物体が左方向Lへ移動すると、検出素子62が赤外線を検出し、検出素子6は、検出信号s1として、赤外線を検出していない水平な定常値から負の方向に振幅した波形72を出力部4に出力する。
【0013】
出力部4は、検出信号s1が波形71のとき、検出信号s1が閾値より大きいと判断して方向信号「High」を判断部5に出力する。一方、検出信号s1が波形72のとき、検出信号s1が閾値より小さいと判断して方向信号「Low」を判断部5に出力する。判断部5は、出力部4から方向信号「High」が入力されると、物体の移動方向を右方向と判断する。一方、判断部5は、出力部4から方向信号「Low」が入力されると、物体の移動方向を左方向と判断する。これにより、物体検知システム1は、人体や小動物などの物体を検知するだけでなく、物体の左右への移動方向を判断することが可能となる。
【0014】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る物体検知システム1の概略構成を示す。物体検知システム1は、人体や小動物などの物体が放射する赤外線を受光すること応じて検出信号s1及び検出信号s2を出力する熱線センサ2と、熱線センサ2に接続され検出信号s1を増幅する増幅回路31と、熱線センサ2に接続され検出信号s2を増幅する増幅回路32と、増幅回路31に接続され、増幅された検出信号s1が予め定められた閾値より大きいか否かを判断した判断結果を出力する出力部41と、増幅回路32に接続され、増幅された検出信号s1が予め定められた閾値より大きいか否かを判断した判断結果を出力する出力部42と、出力部41及び出力部42に接続され、出力部41及び出力部42から入力された判断結果に基づいて物体の存否を判断する存否判断部51と、増幅回路31及び増幅回路32に接続され、検出信号s1及び検出信号s2の波形から正負を判断する正負判断部52と、増幅回路31及び増幅回路32に接続され、検出信号s1及び検出信号s2の波形から位相を判断する位相判断部53と、正負判断部52及び位相判断部53に接続され、物体の移動方向を判断する方向判断部54を備える。
【0015】
熱線センサ2は、4つの検出素子を備え、赤外線を受光すると検出信号s1と検出信号s2を出力するいわゆる4素子2出力構成となっている。ここで、赤外線を受光すると検出信号s1を出力する極性の異なる2つの検出素子を検出部6Aとし、赤外線を受光すると検出信号s2を出力する極性の異なる2つの検出素子を検出部6Bとする。
【0016】
図4は、本実施形態に係る熱線センサ2の概略構成を示す。熱線センサ2は、赤外線を検出する検知エリアが僅かに異なる検出部6Aと検出部6Bを備える。検出部6Aは、正の極性を有する検出素子6A1と負の極性を有する検出素子6A2とを備え、検出部6Bは、正の極性を有する検出素子6B1と負の極性を有する検出素子6B2とを備える。赤外線を検知すると、検出部6Aは、検出信号s1を出力し、検出部6Bは、検出信号s2を出力する。検出部6Aと検出部6Bは、検出素子6A1と検出素子6B1とが隣接し、検出素子6A1、検出素子6A2、検出素子6B1、及び検出素子6B2が田の字型を形成するように配置される。このように、検出素子6A1、検出素子6A2、検出素子6B1、及び検出素子6B2が田の字型に配置されることにより、物体検知システムは、小型化を図ることが可能となる。
【0017】
図5(a)〜(e)は、本実施形態に係る物体の移動方向と検出信号s1及び検出信号s2との関係を示す。図5(a)は、物体の移動方向を判断するための移動エリアを示し、図5(b)〜(e)は、移動方向に応じた検出信号s1の波形81及び検出信号s2の波形82を示す。図5(a)において、熱線センサ2は、図4に示す熱線センサ2が鉛直方向に対して右に45度傾けられた状態で配置されている。熱線センサ2は、物体が移動する移動エリアを4分割に分割して物体の移動方向を判断する。ここで、検出素子6A1が属するエリアを移動エリアAとし、検出素子6A2が属するエリアを移動エリアBとし、検出素子6B1が属するエリアを移動エリアCとし、検出素子6B2が属するエリアを移動エリアDとする。
【0018】
図5(b)〜(e)において、縦軸は、検出信号s1及び検出信号s2の電圧を示し、横軸は時間を示す。図5(b)は、物体が移動エリアDから移動エリアAに向かって移動したときの波形81及び波形82を示し、図5(c)は、物体が移動エリアBから移動エリアCに向かって移動したときの波形81及び波形82を示し、図5(d)は、物体が移動エリアCから移動エリアBに向かって移動したときの波形81及び波形82を示し、図5(e)は、物体が移動エリアAから移動エリアDに向かって移動したときの波形81及び波形82を示す。ここで、波形81及び波形82は、アナログ信号である。
【0019】
次に、物体が移動エリアDから移動エリアAに向かって移動する場合における波形81及び波形82について説明する。物体が移動エリアDから移動エリアAに向かって移動すると、先に検出素子6B2が物体の放射する赤外線を検出し、次に検出素子6A2が赤外線を検出する。図5(b)において、検出素子6B2が赤外線を検出すると、検出部6Bは、検出信号s2として、赤外線を検出していない水平な定常値から負の方向に振幅した波形82を出力部42、正負判断部52、及び位相判断部53に出力する。次に、検出素子6A2が赤外線を検出すると、検出部6Aは、検出信号s1として、赤外線を検出していない水平な定常値から負の方向に振幅した波形81を出力部41、正負判断部52、及び位相判断部53に出力する。出力部41及び出力部42は、波形81及び波形82が閾値より大きいか否かを判断し、判断結果を存否判断部51に出力する。ここで、出力部41及び出力部42は、波形81及び波形82の振幅が閾値より大きいとき、判断結果「H」を出力し、波形81及び波形82が閾値より小さいとき、判断結果「L」を出力する。存否判断部51は、出力部41または出力部42から判断結果が入力されると、検出部6A及び検出6Bの検知エリアに人や小動物などの物体が存在していると判断する。
【0020】
次に、正負判断部52の動作について説明する。正負判断部52は、波形81及び波形82を一定の時間間隔で読み取るタイマ付マイコン(図示しない)と、タイマ付マイコンが読み取ったアナログ信号である波形81及び波形82をデジタル信号に変換するAD変換器(図示しない)を備える。図6(a)(b)は、正負判断部52が読み取る波形81の一例を示す。図6(a)は、タイマ付マイコンが波形81を読み取る読取ポイントPの読取間隔を示し、図6(b)は、タイマ付マイコンが波形81を読み取った読取値と読取間隔との関係を示す。図6(a)において、波形81が水平な定常値を100とし、定常値が連続する状態は、検出部6Aが物体の放射する赤外線を検出していないことを示す。また、図6(a)は、定常値より上方向を正とし、下方向を負とする。
【0021】
タイマ付マイコンは、一定の読取間隔で波形81における読取ポイントPにおける値を読取値として読み取る。AD変換器は、図6(b)における読取値と読取間隔の関係からアナログ信号である波形81をデジタル信号に変換する。正負判断部52は、AD変換器によって変換されたデジタル信号から、波形81の元となった検出信号s1が定常値に対して正負のいずれにシフトしているかを判断する。正負判断部52は、検出信号s1が正にシフトしていると判断すると正負信号「H」を、検出信号s1が負にシフトしていると判断すると正負信号「L」を方向判断部54に出力する。
【0022】
次に、位相判断部53の動作について説明する。位相判断部53は、波形81及び波形82を一定の時間間隔で読み取るタイマ付マイコン(図示しない)と、タイマ付マイコンが読み取ったアナログ信号である波形81及び波形82をデジタル信号に変換するAD変換器(図示しない)を備える。図7(a)〜(c)は、本実施形態に係る位相判断部53が読み取る波形81及び波形82の一例を示す。図7(a)は、タイマ付マイコンが波形81を読み取る読取ポイントPの読取間隔を示し、図7(b)は、タイマ付マイコンが波形82を読み取る読取ポイントPを示し、図7(c)は、タイマ付マイコンが波形81及び波形82を読み取った読取値と読取間隔との関係を示す。図7(a)(b)において、波形81または波形82が水平な定常値を100とし、定常値が連続する状態は、検出部6Aまたは検出部6Bが物体の放射する赤外線を検出していないことを示す。また、図7(a)(b)は、定常値より上方向を正とし、下方向を負とする。
【0023】
タイマ付マイコンは、一定の読取間隔で波形81及び波形82における読取ポイントPにおける値をs1読取値及びs2読取値として読み取る。AD変換器は、図7(c)における読取値と読取間隔の関係からアナログ信号である波形81及び波形82をデジタル信号に変換する。位相判断部53は、AD変換器によって変換されたデジタル信号から、波形81の元となった検出信号s1と、波形82の元となった検出信号s2のいずれが先に定常値に対して正または負にシフトしたかを判断する。位相判断部53は、検出信号s1が検出信号s2より先に正または負にシフトしたと判断すると位相信号「H」を、検出信号s2が検出信号s1より先に正または負にシフトしたと判断すると位相信号「L」を方向判断部54に出力する。図7(c)において、位相判断部53は、位相信号「H」を方向判断部54に出力する。
【0024】
次に、方向判断部54の動作について説明する。方向判断部54は、正負判断部52から入力された正負信号と位相判断部53から入力された位相信号とに基づいて、検出部6A及び検出部6Bの検知エリア内に存在する物体の移動方向を判断する。図8は、方向判断部54が移動方向を判断するのに用いられる方向判断テーブルT1を示す。方向判断テーブルT1は、正負判断部52が出力する正負信号を保持する「正負信号」項目、位相判断部53が出力する位相信号を保持する「位相信号」項目、及び移動エリアA乃至移動エリアDを用いて表現された物体の移動方向を保持する「移動方向」項目から構成される。方向判断部54は、正負判断部52が正負信号「L」を出力し、かつ、位相判断部53が位相信号「L」を出力すると、方向判断テーブルT1から物体が移動エリアDから移動エリアAに移動したと判断する。同様に、正負判断部52が正負信号「L」を出力し、かつ、位相判断部53が位相信号「H」を出力すると、方向判断テーブルT1から物体が移動エリアBから移動エリアCに移動したと判断する。このように、物体検知システム1は、方向判断部54が、正負判断部52が出力する正負信号と、位相判断部53が出力する位相信号に基づいて物体の移動方向を判断することで、物体が検出部6A及び検出部6Bの検知エリア内に存在するだけでなく、物体の移動方向を判断することが可能となる。
【0025】
次に、本発明の第3の実施形態に係る物体検知システム1について説明する。本実施形態における物体検知システム1の構成及び動作は、第2の実施形態に係る物体検知システム1の構成及び動作とほぼ同じである。図9(a)〜(e)は、本実施形態に係る物体の移動方向と検出信号s1及び検出信号s2との関係を示す。図9(a)は、熱線センサ2が判断する物体の移動方向を示し、図9(b)〜(e)は、移動方向に応じた検出信号s1の波形81及び検出信号s2の波形82を示す。図9(a)において、熱線センサ2は、検出部6Aの下に検出部6Bが配置されるように、例えば、建造物の壁面に取り付けられている。また、熱線センサ2に向かって、検出素子6A1及び検出素子6B1は左側に、検出素子6A2及び検出素子6B2は右側に配置されている。図9(b)〜(e)において、縦軸は、検出信号s1及び検出信号s2の電圧を示し、横軸は時間を示す。
【0026】
ここで、物体検知システム1は、物体の上下方向、または左右方向への移動を判断する。物体の移動方向は、熱線センサ2に向かって、下から上への移動方向を上向き、上から下への移動方向を下向き、右から左への移動方向を左向き、左から右への移動方向を右向きとする。なお、存否判断部51は、出力部41及び出力部42から入力された判断結果がいずれも判断結果「H」であるとき、検出部6A及び検出6Bの検知エリアで検出された物体は人体であると判断する。
【0027】
図9(b)は、物体が上向きに移動したときの波形81及び波形82の一例を示し、図9(c)は、物体が下向きに移動したときの波形81及び波形82の一例を示し、図9(d)は、物体が右向きに移動したときの波形81及び波形82の一例を示し、図9(e)は、物体が左向きに移動したときの波形81及び波形82の一例を示す。図9(b)において、物体が上向きに移動したとき、波形81は、波形82よりも早く振幅する。一方、図9(c)において、物体が下向きに移動したとき、波形82が、波形81よりも早く振幅する。また、図9(d)において、物体が右向きに移動したとき、波形81及び波形82は、同時に正の方向へ振幅する。一方、図9(e)において、物体が左向きに移動したとき、波形81及び波形82は、同時に負の方向へ振幅する。ここで、図9(d)または図9(e)における波形81及び波形82のように、同時に正または負の方向に振幅するとき、位相判断部53は、位相信号として位相信号「M」を方向判断部54に出力する。
【0028】
図10は、本実施形態に係る方向判断部54が移動方向を判断するのに用いられる方向判断テーブルT2を示す。方向判断テーブルT2は、位相判断部53が出力する位相信号を保持する「位相信号」項目、正負判断部52が出力する正負信号を保持する「正負信号」項目、及び移動エリアA乃至移動エリアDを用いて表現された物体の移動方向を保持する「移動方向」項目から構成される。方向判断部54は、位相判断部53から位相信号「L」が入力されると、正負判断部52から入力される正負信号に関わらず、方向判断テーブルT2から物体の移動方向を上向きと判断する。一方、方向判断部54は、位相判断部53から位相信号「H」が入力されると、正負判断部52から入力される正負信号に関わらず、方向判断テーブルT2から物体の移動方向を下向きと判断する。
【0029】
また、方向判断部54は、位相判断部53から位相信号「M」が入力され、かつ、正負判断部52から正負信号「L」が入力されると、方向判断テーブルT2から物体の移動方向を左向きと判断する。一方、方向判断部54は、位相判断部53から位相信号「M」が入力され、かつ、正負判断部52から正負信号「H」が入力されると、方向判断テーブルT2から物体の移動方向を右向きと判断する。このように、物体検知システム1は、方向判断部54が、正負判断部52が出力する正負信号と、位相判断部53が出力する位相信号に基づいて物体の移動方向を判断することで、物体が検出部6A及び検出部6Bの検知エリア内に存在するだけでなく、物体の移動方向を判断することが可能となる。
【0030】
次に、本発明の第4の実施形態に係る物体検知システム1について説明する。本実施形態に係る物体検知システム1は、第2及び第3の実施形態に係る物体検知システム1が備える4素子2出力構成の熱線センサ2に変えて、第1の実施形態に係る物体検知システム1が備える2素子2出力構成の熱線センサ2を2つ備える。これにより、第2及び第3の実施形態に係る物体検知システム1と同様に、物体の移動方向を判断することが可能となる。
【0031】
このように、第1の実施形態においては、物体検知システム1は、極性の異なる検出素子61と検出素子62とを左右に並べて配置することにより、検出部6の検知エリア内に人体や小動物などの物体が存在していることを検知することができ、さらに、物体の左右への移動方向を判断することができる。また、第2乃至第4の実施形態においては、物体検知システム1は、4素子2出力構成の熱線センサ2を備えることにより、検出部6の検知エリア内に人体や小動物などの物体が存在していることを検知することができ、さらに、物体の移動方向を判断することができる。また、検出素子6A1、検出素子6A2、検出素子6B1、及び検出素子6B2が田の字型に配置されることにより、物体検知システムは、小型化を図ることが可能となる。
【0032】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能であり、第1乃至第4の実施形態において、例えば、存否判断部51、正負判断部52、位相判断部53、及び方向判断部54に変えて、1つの判断部が存否判断部51、正負判断部52、位相判断部53、及び方向判断部54の処理を実行する構成であっても構わない。また、第2または第3の実施形態において、例えば、位相判断部53は、タイマ付マイコンとAD変換器に変えて、タイマ及びAD変換器付マイコン、またはエッジ検出機能付マイコンを備える構成であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る物体検知システムの概略を示す構成図。
【図2】(a)(b)は本実施形態に係る物体の移動方向と検出信号との関係を示す図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る物体検知システムの概略を示す構成図。
【図4】本実施形態に係る熱線センサの概略を示す構成図。
【図5】(a)〜(e)は本実施形態に係る物体の移動方向と検出信号及び検出信号との関係を示す図。
【図6】(a)(b)は本実施形態に係る正負判断部が読み取る波形の一例を示す図。
【図7】(a)〜(c)は本実施形態に係る位相判断部が読み取る波形の一例を示す図。
【図8】本実施形態に係る方向判断部が移動方向を判断するのに用いられる方向判断テーブル。
【図9】(a)〜(e)は本発明の第3の実施形態に係る物体の移動方向と検出信号及び検出信号との関係を示す図。
【図10】本実施形態に係る方向判断部が移動方向を判断するのに用いられる方向判断テーブル。
【符号の説明】
【0034】
1 物体検知システム
2 熱線センサ
5 判断部
54 方向判断部
61 検出素子
62 検出素子
6A1 検出素子
6A2 検出素子
6B1 検出素子
6B2 検出素子
s1 検出信号
s2 検出信号


【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性の異なる複数の検出素子を有する熱線センサと、この検出素子が出力する検出信号によって物体の存在を判断する判断部と、を備えた物体検知システムにおいて、
前記複数の検出素子は、所定方向に並んで設けられており、
前記判断部は、物体が移動する場合の前記検出素子からの検出信号の相異に基づいて前記物体の移動方向を判断することを特徴とする物体検知システム。
【請求項2】
極性の異なる複数の検出素子を有する熱線センサと、この検出素子が出力する検出信号によって物体の存在を判断する判断部と、を備えた物体検知システムにおいて、
前記熱線センサは、極性の異なる2つの検出素子を複数組備え、
前記各組の検出素子は、物体を検知する検出エリアが異なるように所定方向に並んで設けられており、物体を検知すると複数の検出信号を出力し、
前記判断部は、前記複数の検出素子が検出信号を出力したタイミングと検出信号の相異に基づいて前記物体の移動方向を判断することを特徴とする物体検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−232715(P2008−232715A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70506(P2007−70506)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】